能面の人々
[ 短い旅路の続き、今ここは何処かの神社の境内です。 ]
[ 月は未だに頭上に輝いて、夜はまだ続くと言いたげです。 ]
セツナ
えーっと……石階段の脇に……。
……あった。
[ 屋台の主人の言葉通り、そこには抜け道があった ]
今日は少し明るいし、下山のための灯りはあまり使用しないと思う。
地図を見る限り、池もあるみたい。
早速行こう。いいかい?
[ 少女に話し掛ける ]
能面の人々
少女:うん。
[ そのまま返事が返ってくる。 ]
[ 木々に遮られているものの、山を照らす月明かりは、人がモノを見るのにちょうどいい明るさだった。 ]
[ そして抜道へと一歩踏み出すと、参道や神社とは違う空気になった。 ]
[ 温かみが薄れ、夏の夜の涼しくも生ぬるい感じが肌から伝わってくる。 ]
セツナ
うぉあっ…風。
[ 上着の裾を広げ、風を受ける ]
夏だなぁ…。
…こんな青春、味わいたかったなぁ。
[ 少し意味深な言葉を吐きながら足を進める ]
能面の人々
少女:私は夏をあんまり知らない気がするの。でも、思い出はこれからも作れると思ってるよ。
[ そんな事を言われる。 ]
[ 夜闇の中、歩みを進めるとどこからか水の流れる音が聞こえてくる。 ]
[ 恐らくは金魚の池が近いのだろう。気のせいか、ビニール袋の中の雪花がさっきよりか動きが良くなっている。 ]
セツナ
……来たね。
ここが金魚池か。
雪花の…故郷。
[ ビニール袋の中の存在に視線を配り、活発そうに泳ぐのを見ると ]
やっぱ帰りたかったんだね、この子。
能面の人々
[ 金魚池は少し大きめで、切り拓かれていて木が生えていないその場所は月光が差し込み、周囲より明るくなっていた。 ]
[ 池の中にはたくさんの金魚が泳いでいて、どこか幻想的である。 ]
セツナ
うわぁ……綺麗…!
こんなに金魚がいるのか。
さっきの水槽の比じゃないくらいだ。
[ 優雅に水の中を泳ぐ金魚たちに気を取られる ]
能面の人々
[ 雪花は、何かを懇願しているのか、ビニール袋の中にいるモノの、さらに動きが活発になった気がする。 ]
セツナ
あ、わかったわかった。すぐに帰してやるからな。
[ 少女からビニール袋を受け取り、袋の口を広げようとするが ]
…。
ちゃんと生きていけるかな?
喧嘩とか、やだなぁ…。
ちょっと不安だよ。
[ 先のことで躊躇してしまった ]
能面の人々
[ 雪花は、まだ帰りたがっている。 ]
[ 池の金魚達は優雅に泳いでいる者も居れば、青年の持つ袋を見ている者も居る。 ]
能面の人々
少女:う〜ん、たぶん雪花なら、大丈夫だと思うよ。
セツナ
…え?
[ 唐突な言葉に思わずマヌケな声がでる ]
だと、いいね。
でもいた頃とは違うかもしれない。
雪花を知ってる子はいるかは分からないね。
…それでも、僕らには……。
[ ビニール袋の口を持ち、そのまま池に水を注いだ ]
こうするしかないんだね。
能面の人々
[ 水が池に注がれ雪花が池に帰る。 ]
[ 池の真ん中まで泳いだ雪花は、何かを喜んだのか、鯉の様に一回跳ねた。 ]
[ すると、月光が注ぎ空を映していた水面が一度乱れ、そして再び落ち着いた後に、文字が浮かび上がって来た。 ]
『名前も知らぬ人よ、ありがとう。』
『お陰でもう少し、長くこの場に居られそうだ。』
セツナ
えっ……!
[ 文字が浮かび上がるなんて予想できない ]
ど、どういたしまして……。
[ 少し沈黙 ]
……。
名は、知らなくていい。
取るに足らない名さ。
今は、それでいいよ。
……また遭えたら、その時に。
[ 静かに、呟いた ]
能面の人々
『そうか、だが礼をしたい、その太刀を抜き、池に捧げてくれ。』
[ その文字の真下に泳いできた雪花は青年をじっと見つめるように、そこで止まっている。 ]
セツナ
これを……?
[ 手に携える太刀を見やり ]
…何かあるんだね?
雪花の気持ち、受け取らせて貰うよ。
[ 言われた通り、太刀を抜き池へと ]
さ、刺さらないようにね?
[ なるべく雪花の進行方向の妨げにならないよう注意を払いながら沈めていく ]
能面の人々
[ 太刀を沈めて数秒後のことだ ]
[ さっきまで鏡のような反射をしていた鋼は、まるで長い年月降り積もった雪から成った氷塊から切り出したような刃を、更にそれを初雪で染めたような白さを持つ刀身へと姿を変えた。鋼の良さを損なわず、いまだ映される刃紋は、散りばめられた雪の結晶を運ぶ波のように映る事であろう。池に捧げた太刀は、魅入りそうなほどに美しく全てを両断しそうな妖刀へと変化したのである。 ]
[ それは、妖怪のような神のような者の仕業であることに間違いがないが。 ]
[ 悪意などは一切感じられない。 ]
セツナ
!!
妖気?…いや、これはもっと何か違う…?
[ ゆっくりと、池から引き抜いていく ]
これは……まるで、雪。
[ その刃の綺麗さに見とれる ]
……ありがとう。雪花。
これで僕らは、安心して前に進めるよ。
能面の人々
『達者でな、青年。』
『私は、この恩を忘れないぞ…。』
[ 最後にその言葉を浮かべた後、雪花は他の金魚に混じって泳ぎ始め、その内見えなくなった。 ]
セツナ
君も元気に暮らしてね……。
[ 水の中に消え行く雪花を見つめながら ]
……。
妖刀……ふふ。
ふふふ……!
[ 月の光に刃を翳し、うっとりしている ]
カッコいい……!!
能面の人々
少女:わぁ………
[ 妖刀を眺めている。 ]
少女:カッコいいね。
セツナ
うん。
これで安心して下山できるね。
[ 鞘に刀身をしまう ]
さあ、行こっか。
まだまだ先は長いからね。
[ 少女の手を取る ]
能面の人々
少女:うん………、村はどんな場所なんだろう…。
[ 会話をしつつ山の道を下っていく。 ]
[ その途中で、村が見える。 ]
[ 水田と、幾つか民家のような物が見えるが、どれもこれも江戸時代以前の建築物の様に見えた。そして一軒も明りはともっていない。 ]
[ もうすぐだ。 ]
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