スタンド能力(ジョジョの奇妙な冒険)

ページ名:スタンド能力_ジョジョの奇妙な冒険_

登録日:2012/09/09 Sun 20:44:26
更新日:2026/03/22 Sun 17:03:42NEW!
所要時間:約 7 分で読めます



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ジョジョの奇妙な冒険 ジョジョ 3部 4部 5部 6部 7部 8部 幽波紋 スタンド スタンド使い 守護霊 悪霊 能力 超能力 異能力 特殊能力 近距離パワー型 遠隔操作型 遠隔自動操縦型 スタンド使いはスタンド使い同士で惹かれあう そばに立つもの 立ち向かうもの 形ある超能力 生命エネルギーが作り出すパワー 弓と矢 幽波絞 ひとり歩き




この巻から『スタンド』と呼ばれる新しい能力が出てきますが、
それは超能力を絵でイメージ化したものです。


従来の超能力はビルを崩したり
光や電気のようなものでパワーの強さを表現していました。
それ自体を表現できないかと思って考え出したのが『スタンド』です。


さあ!承太郎たちといっしょに新しい冒険の旅にでかけましょう。






「承太郎!おまえが悪霊だと思っていたのは、生命エネルギーが作り出す、パワーあるヴィジョンなのじゃ!
そばに現れ立つというところから、そのヴィジョンを名付けて・・・『幽波紋スタンド』!!」



スタンド能力とは、『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する能力。ここでは主に概念を記載する。



概要

生命エネルギーを元とする能力で、発現するとその能力者の傍にビジョンとして現れる。
その像は一体一体が形が異なり、人と殆ど変わらないものから亜人型、動物、機械等、千差万別である。


その像は本体が念じればその手足、または像の持つ物理法則を越えた超能力によって能力者を守ったり敵を攻撃したりする。


そのため、そこから『守護霊』と言われることもあるが、
時と場合、能力によっては周囲はおろか能力者自身にも命に関わる危害を及ぼすので『悪霊』と言われることもある。


スタンド能力者である登場人物(メタ的な意味では読者にも)には自分や他者のスタンドが見え、
スタンドの素養がまるっきり無い人間には(一部例外を除いて)スタンドは見えない。そのため一般の人間には何もないのに奇怪な現象が起きているように見える。
通常スタンドはスタンドにしか干渉されず、スタンドは人体や物質をすり抜けて行動できる。そのためスタンドはスタンドでしか倒せないのが定石。
一方スタンドからは意思次第で物に触ることが可能。スタンド側から物に触れた場合は、場合によっては物質からの影響を受けることもある*1
この辺りはかなり曖昧である。「魔術師の赤」の炎が普通の水で消火出来る一方「ラット」の針が空気抵抗を無視した弾道を取るなど。
しかしこれらについては、スタンドを操る本人が無意識下ででも認識しているイメージという形で説明できなくもない。


「スタンドの攻撃に対抗するには(基本的に)スタンドを用いるしかない」「スタンドを倒せばスタンド能力者も重大なダメージを負う(例外もあるが)」という点から、
『スタンド能力者しかスタンド能力者を倒せない』ということが、シリーズを通して敵味方双方の共通認識になっている*2


名前の由来は第3部では『傍に立つ (stand by me)』、第7部では『立ち向かう (stand up to)』の意味。


その名前に関しては同じ発想に至れるのか、どこかから仕入れて来たのか、
物語開始時点で命名者やその関係者と全く縁のないはずの人間(代表格が『パッショーネ』)も同じくずっと前からその呼称をこの能力に使っている。


この呼称の点に関しては、上記のメタ的な視点に通じるが、「スタンド」に当たる各種超能力を指す言葉が別個に存在し、多様に使用されてはいるが、
作者が我々読者のための共通言語として「スタンド(能力)」と統一して翻訳してくれていると解釈することもできるだろう。
(漫画やアニメ作品において、外国人や宇宙人といったキャラクターであっても特段の理由なく日本語でコミュニケーションを取るのと同じようなことである。)
なお、実写ドラマ版『岸辺露伴は動かない』では、『ジョジョ』未読の視聴者に対する配慮もあってか「スタンド」の言葉は登場せず*3
露伴の「スタンド」である「ヘブンズ・ドアー」は「天から授かった能力」ということで「ギフト」と呼称され、スタンド像が登場しない他、
原作では「スタンド」の能力であったものの一部は「妖怪」や「怪異」の類であると設定が変更される等、総じて『ジョジョ』を知らなくとも問題なくドラマを楽しめる構成となっている。


この能力を扱うことが出来る者を、「スタンド使い」、または「スタンド能力者」と呼ぶ。
またそれぞれのスタンドの持ち主を、そのスタンドの「本体」と呼ぶ。


スタンド名は第3部は主にタロットカードの大アルカナ関係(最初は名前にがついていたが途中でなくなった)とエジプト神話の神の名前、
第4部以降は洋楽のアーティスト名、バンド名、楽曲名、アルバム名から取られている。
他、第3部には一体だけ楽器名から、第7部では邦楽から取られているものもあるので、法則性は特に無い。
劇中では基本的に「本体」が名前を付けていると思われる。一部知人に付けてもらう、勝手に名付ける、スタンドが自分で名乗るといった例もある。
ちなみに、洋楽関係から取られたスタンド名に関しては、翻訳版やアニメの英語等の字幕といった海外向けのものでは商標上の問題等からか名前が変更されることが多く、
第5部の『スティッキィ・フィンガーズ』(『Zipper Man』に変更)等、一部スタンドに関してはもっと他になにかなかったのかと問いたくなるような名前に変更されている。


スタンドの発現

このスタンド能力は誰でも得られるという訳ではなく、獲得には素質が必要である。
この素質は遺伝するので、作中ではスタンド使いの血縁者がスタンド能力を得ている・覚醒した例も多々ある。
これは単にスタンド使いの親からスタンド使いの子が生まれるだけではなく、ある者が後天的にスタンド能力を得るとその血縁者にまでスタンド能力が突如発現するなど、超常的な縁である。
なお、素質は遺伝するが発現する能力が血縁者の間で類似するかはケースバイケース。
素質を持っていてもすぐにスタンド能力を得るとは限らず、何らかの精神を大きく揺さぶる体験を経て能力に目覚める例もある。
また「スタンドの矢」や「聖人の遺体」、「悪魔の手のひら」など、素質を引き出すアイテムや場所に「選ばれた」者は能力を得ることができる。
ただし、逆に素質の無い者は「選ばれ」なかった時点で死亡してしまう。*4


一方で虹村形兆は『凶悪な犯罪者ほどスタンド能力が目覚める可能性が高い』という発言をしており、その素質は先天的なものだけとは限らないことがうかがえる。
犯罪者の発現率が高い理由は不明だが、『天国』に行くための手段の一つに罪人の魂が必要だったことから、それに関連している可能性もある。


第3部はスタンド能力の発現経緯は『強いスタンド能力を得た者の血縁的な影響』か『生まれついて』が明らかになっていたが、
後に後天的にスタンド能力を発現するアイテム『弓と矢』『聖人の遺体』や別人に能力を移植できるスタンド『ホワイトスネイク』、
スタンド能力を発現させる『悪魔の手のひら』や『壁の目』等が次々に明らかになっている。


人間以外の動物も持つことができ、作中ではオランウータンハヤブサドブネズミ
果てはプランクトンまで、スタンド能力を持った動物が登場している。
彼等は共通して知能は高く、人語を介し、話すものもいる。また、一部のものは身体的特徴の部分的な変化が確認された場合もある。


基本的にスタンドは『闘争心』や『自分や誰かの身を守る』という意志で操るため、
性格が穏やか過ぎる人間は、スタンド能力の素質があり覚醒したとしても能力が害になって、高熱・衰弱を引き起こし最終的に死んでしまう。
(上述の犯罪者の発現率が高い理由はこのことが関係しているのかもしれない)
作中では元凶=発現の原因となった血縁者 を取り除くことで健康体に戻っている*5

また戦う意志でなくても、匹敵する強い意志があれば戦いに向かない人間でもスタンド能力を扱うことが出来るようである。*6


スタンド使いとスタンド使いは引かれ合うという性質もあり、それがどのようなきっかけであれ、どんな間柄であれ、いずれスタンド使い同士は出会うらしい。
特定の範囲内でスタンド使いの密度が濃かったり、同じ組織・建物内にいるなどの共通点があれば、その確率はさらに上昇する。
また、自覚する前より後の方がその遭遇率は高いようだ(実際にジョルノはスタンドを自覚した後に次々にスタンド使いに出会っている)。


スタンドの系統、性質

スタンドの種類は大きく分けて、

以上の3つが存在する。


スタンド攻撃を受けた際の対処方法を決めるにあたっては、相手の射程距離が極めて重要になるため、作中において特に言及されやすい分類である。すなわち、

  • 近距離型スタンドを本体ごと叩くか
  • 遠隔操作型スタンドをかわしつつ本体を探すか
  • スタンドをぶちのめす(無力化含む)か

遠隔自動操縦型は総じて射程距離が非常に長く本体を探すことがほぼ不可能なため、スタンドそのものに対処しなくてはならない。


使い手が死亡しても消滅しないタイプや使い手すら制御できない(ひどい場合は自身を殺しかねない)タイプも存在する。
こうした状態に陥ったスタンドは本体の精神力・身体能力といった制約が取り払われ性質や規模が凶悪化する傾向にあるため、使い手と対処する側どちらにとっても非常に危険。


遠隔自動操縦型に該当しない場合は、スタンドは本体の意思によって操作可能である。スタンドを操作する際はどこぞのガンダムのように本体が動かしたい動作を実際の体の動きで表す必要はなく、心の中で思うままに操作が可能である…はずだが、5部あたりから本体とスタンドが動きを同調させているかのような描写がチラホラ出てくるようになった*7
しかしスタンドは(パラメーターにもよるが)人間よりも素早い動きが可能なことも多いため、これは実際のスタンド操作に必要な動きではなく本体の闘志が絵的な表現として表れているだけと受け止めるべきであろう。


原則、スタンドが負ったダメージは本体のスタンド能力者にも反映される。ただしこのフィードバックの有無や程度には個体差がある。
「スタンドの頭が敵スタンドに吸い込まれたことでスタンド能力者が息が出来なくなって昏倒し再起不能」などの展開を見るに、痛みだけでなく感覚もリンクしているらしい。
本体のダメージがスタンド像に反映されることは少ないが、四肢の喪失などの重傷はそのままスタンドにも現れたり、記憶を失うとスタンド能力の一部も併せて封印されたりする。
また、「幽波紋」とも呼ばれるようにスタンドは波紋を伝達する事ができ、歴代で唯一波紋とスタンド両方を体得しているジョセフはスタンドに波紋を纏わせた戦法を披露しているほか、
ジョセフがそれを利用して波紋の罠を仕掛けた事に気付いたDIOがわざわざスタンドによる攻撃を中断した事から、スタンド越しに相手に波紋を流す事も可能なようだ。*8


能力の発動に条件が必要なものもいる。
傾向として割とみられるのが、「相手に何らかのルールを提示し、それを違反した場合に発動する」というもの。
この場合、相手はルールを違反してしまったという後ろめたさに付け入る形となっており、基本的に防御不可
倒すには、ルールの範囲内で相手を打ち負かす以外にない。


「発動の条件」では他に「依代になるもの」が必要という連中もいる(物質同化型)。
これらの場合依代があるためか非スタンド使いでも姿が見えるという特徴*9と、明確に言われているわけではないが、

  • スタンドの基本能力である物体をすり抜けることができない。*10
  • スタンド攻撃以外でも破壊できる、ただしこの際ダメージのフィールドバックはない。*11

「特定の能力を持った生物を生み出す」という能力などもある。
ゴールド・エクスペリエンスが代表的だが、パープル・ヘイズグリーン・デイなども自然界にはいないであろう生物を生成している点では同じ。一応ベイビィ・フェイスもこれに当たる。
これらの生物はスタンドによって生み出されたが生物的・物質的な側面を有しており、実体がある関係上、スタンド使いでない者にも見ることができる。
また、生物である以上、本体であっても完全には制御できないタイプもおり、例えばゴールド・エクスペリエンスで生み出した生物の行動は本体であるジョルノも大まかにしかコントロールできないし、
ベイビィ・フェイスの本体であるメローネも、スタンド(が生み出した生物)が実質暴走状態に陥ってしまったことが遠因となって敗北している。



スタンドのステータスは単行本で「破壊力」「スピード」「射程距離」「持続力」「精密動作性」「成長性」の6系統についてA(超スゴイ)~E(超ニガテ)*12まで評価されたものが掲載されている。
スタンド能力チャート(ジョジョの奇妙な冒険)
読者間でのスタンドの強弱議論はこのステータスが元になることも多い。
だが、ハッキリ言って作中の表現と矛盾しているところも多いため、スタンドの強弱を語る上ではあまり当てにはならない
例を挙げると……


  • 破壊力Cのゴールド・エクスペリエンスが自動車を破壊できるのに、破壊力Aのストーン・フリーが鉄格子を壊せない。同じ破壊力Aでもスタープラチナは鉄格子をひん曲げていた。
    • この辺は経験の差や成長の影響と思われる。
      • ジョルノはチョコラータ戦では自分のスタンドを「近距離パワー型」と、Cにしては過大評価にも程がある自己評価を下していたことから、Bくらいには成長していてもおかしくはない。
        なにより本人が「ギャング・スター」に憧れていることから、「立派なギャング・スターになる」と意気込んで体を鍛えていた可能性は否定できない。
      • 承太郎は言わずもがな、そのガタイの良さなどもあって本体も腕っぷしが強く、子供の姿で大人の男を叩きのめしたことも。
      • 一方徐倫は、回想シーンだけ見てもそれほど不良だったという訳でもないため、殴り合いの喧嘩をするほど荒れた生活は送っていなかったものと思われる。
  • クリーム」や「ザ・ハンド」の防御無視系スタンドの破壊力が「B」と低すぎる。
    • これらは「スタンド像単体の破壊力で能力は加味されていない」という考察はあるが…
  • 射程距離が「何の射程」を表しているのか不明。
    • ザ・ワールドは射程距離Cだが、能力の時間停止の射程は全宇宙が対象であり、Cでは到底収まらない。これはスタンド像の射程と思われる。
    • 一方キッスの射程距離はAだが、キッス自体は完全な近距離パワー型であり、スタンド像の射程距離はザ・ワールド以下。こちらは能力の射程なのだろう。
    • エコーズACT3パープル・ヘイズは同じ射程5mだがパープル・ヘイズの方が評価では上(アニメ版ではパープル・ヘイズに合わせる形で修正)

「物語を通してスタンドも成長する」という描写もあるので、このパラメーターで固定というわけではないのだろう。
ホワイトスネイクとか登場(紹介)が早すぎたせいでほとんどのステータスが不明状態だし。
精神エネルギーによって発現すると言われている通り、本体の精神状態によって設定されているステータス以上の能力を発揮している場面もあるため、
あくまでおおよそのスペックであり、状況・成長次第ではそれ以上の能力を発揮できると考えるべきだろう。
例えば、「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」は成長性なしのスタンドであるが、
初期設定では「拳銃には殺傷能力は無いため脅しにしかならない」と説明されていたが、物語後半では実体があって殺傷能力及び物理的な破壊力が備わっている。



スタンド能力は持ち主の精神と深い関わりがあり、本体の性格を反映していたり、本体の願望を叶えるような能力を持っていたりする。
例えば、ジョルノはグリーン・ディの引き起こした地獄を見て「心のブレーキが無いからここまで凶悪化した」と分析しており、実際にその推察は当たっていた。


また、明言こそされていないが、一部のスタンドはある程度の自立行動も可能なようで、

  • 第3部冒頭、承太郎がスタープラチナを使って、常人の眼では暗闇にしか見えない背景を分析し、捕捉したハエをスケッチさせるというシーンがあるが、
    本体の承太郎もスケッチを見るまで「何を捕捉したか」は分かっておらず、スタープラチナ自身が捕捉したものを見たままにスケッチさせている。
  • 明らかに人間の感覚では捌ききれないであろう、飛び散るガラスの破片やら拳での高速ラッシュ攻撃やらをスタンドを使って防御。
  • 人型でも、ましてや生物や機械ですらないホワイトアルバムに「一時冷却を解除しろ」と命令。
  • エコーズACT3やスパイスガールに至っては普通に喋る。
  • というかほとんどのスタンド使い達は叫んでスタンドに命令している。*13

この他、発現したばかりのスタンドが、危機に陥っている本体を独自に守ろうとしたり、自身の能力や使い方を本体に教えるようにふるまったりする場面もしばしば見受けられる。
スーツタイプ含むほぼ全てのスタンドにもれっきとした意思があり、必要性がないからラッシュくらいしか喋っていない・自分で勝手に行動していないだけ、という可能性がある*14
ただし基本的に出し入れは本体の意思でないと出来ない様子。


実際にスタンドの自我だけで自立行動する「一人歩き」型のスタンドも存在し*15
他にも特定の場所で起こる「自然現象」や「呪い」のような、本体も自我もないスタンドも確認されている。それが最早スタンドと言えるのかは謎だが、まぁ上に書いたように「漫画表現の都合でスタンドと表記しているだけ」の可能性もあるが。
またパープル・ヘイズも自我を持つことと能力の凶悪性から、「本体死亡後に一人歩きするのではないか?」と推測されたこともあるなど、一部のスタンドは自我だけで行動できるのは間違いないだろう。


ちなみに相手の能力のフィードバックによる弱体化とは別に、自身の意志でスタンド像を小型化する事も可能。ただしサイズ相応に弱体化する点は同じらしく、劇中で用いられたのは人体内に潜り込んだスタンドを早急に排除する必要があった時程度とごく僅か。



メタ的な視点から

日本のバトル漫画界の在り方を大きく変えた「発明」であり、現代の日本漫画のほぼすべてが「能力バトル」の様相を呈する理由。
「現在のバトルマンガは全て『ジョジョ』の影響下にあると言っても過言ではない」という分析もあるくらいで*16、人によってはバトルという条件さえ外れてスポーツ漫画などにもこの理屈を応用することがあるほど。


ジョジョ3部(幽波絞幽波紋能力が初登場)の連載前、荒木飛呂彦は壁にぶつかっていた。
当時のジャンプ漫画は「戦闘力」という概念による強さの数値化や、「ものすごく強い敵だと分かるようにする」「低い主人公が高い敵を圧倒する」「バトルがトーナメント制」という描写が主流だった。
荒木飛呂彦は「こんなことをしていたらキリのないインフレでそのうち限界を迎えてしまう」と戦闘力のインフレに非常に否定的であり、しかしインフレが流行るのはその方が読者のウケがいいからだということも理解していた。
担当編集者の椛島良介に「波紋からの卒業」「トーナメント制の禁止」の2つを提唱されたこともあってこのインフレの連鎖をどうにかして断ち切る方法を考えており、この連鎖を断ち切るハサミとして「スタンド能力」を発明した。
スタンドの設定は先述の通りだが、メタ的な観点からは「毎回特色の違う敵が出てくれば、とても強い敵のあとに弱い敵が出てきても演出的に不自然にならない」というもの。つまり漫画の人気が落ちる原因になる「敵の格落ち」をあまり気にしないで済むようになったのだ*17
そうなるとバトル漫画として前に進んでいる描写がなくなってしまうが、そこはジョースター御一行に世界旅行をさせることで前に進んでいる感覚を読者に与える。「敵をひとり倒せば次の土地へ行く」「敵の数を最初に明示しておく」ことで、ちゃんと旅が進んでいることを読者に訴えたのである。


それまでも特殊な能力を持つ敵というのは多かったが、それらはいずれも「卑劣漢」「戦闘力には劣る」「努力をサボった敵」のような要素がついてくるし、そうでない敵であったとしても結局大技同士のぶつかり合いに終始した。
そして単に戦闘力の高い敵との戦いは、ラスボスなら「信念や絆の力や覚醒で倒す」といったご都合主義が多くなるし、ラスボスの取り巻きのバトルはほとんど印象に残らないこともしばしばある。
しかしスタンド能力の場合、
「能力の特色を生かした心理戦や屁理屈合戦で二転三転するバトル」
「戦闘にあまり向いていない能力の存在を肯定でき、さらにこれをあえて戦闘に生かすことでバトル自体に深みを与える」
「最弱を自称したり、戦闘に非常に不向きなスタンド使いが搦め手を使い、強い主人公を徹底的に苦しめて追い詰めていく」
という形で、これまで力と力のぶつかり合いだったバトルに芳醇な心理戦の要素を持ち込むことに成功し、能力バトルの在り方や能力の魅せ方を非常に大きく変えた。
これまで主流だった「何もない荒野やリングでの戦い」だけでなく、市街戦をはじめとした特定の条件下でのバトル、映画のパロディ、「能力の謎を解く」という新しい方法のバトルなども肯定してくれるこのスタンド能力はまさに発明そのものであり、まさにバトル漫画に革命をもたらした。


そして読者の間でも
「このスタンドとこのスタンドが戦ったらどっちが勝つか?」
「使用者ないし対象がバカだからこういう結末になったが、もし作中でも賢いキャラクターがバカの代わりに戦ったらどうなるか?」
「ぼくのかんがえたさいきょうのスタンド発表会」
「ガバガバスタンドチャートとのすり合わせ」
「スタンド最強(最弱)議論」
といった形で大変に盛り上がっていくと、とにかくいいことづくめだったのだ*18
このwikiでもスタンド解説のところなんかは編集者の私見が結構載っているし、コメント欄にもたびたび聞いてもない私見の開陳が見受けられるが、それが残ることを肯定されるのはひとえに能力バトルというジャンルがそういうものだからだ。話が盛り上がるのである。


さらにこの「スタンドは一人一体」「本体の精神から生み出される」というルールが漫画のキャラクターの個性にもつながってくる。
たとえばジョセフの「隠者の紫」なら、パワーは弱いが他の正統派4人とは違った動きが可能というところが老境の策士感を醸す。
アバッキオの「ムーディー・ブルース」なら彼の過去と合わせてそこに皮肉な物語を見出すこともできる、といった具合。
実際に仗助の「クレイジー・ダイヤモンド」やフーゴの「パープル・ヘイズ」は、作中でも彼らのどのような性質が発現したかについて触れられている。


こういった性質がたいへんウケた結果、他の編集者に模倣された漫画家のみならず非常に多くの人間に影響を与え、バトルの主流が「能力バトル」へとシフトしていくことになる。
アルター、悪魔の実、核鉄、念、呼吸、個性などなど様々な名前にオミットされたスタンド能力は、その漫画の中で独自の設定を身に着けて進歩していき、それらが当たればまたそれに影響を受けた人が漫画に持ち込んでいく。
そしてたとえば単に日本刀を使う漫画の場合でも、「日本刀から繰り出される技を変える」「その日本刀自体に個性をつける」といった形になっていくし、
異能力を使わない格闘漫画の必殺技でも「特定流派の奥義」「特異体質ゆえの技」「隊一のナイフ使いだから」、
果てはオモチャのメディア展開などでも「○○の使うマシンやカード(デッキ)は××」という感じで事実上の固有能力のようになっていく。
スタンド能力よりもさらに複雑な能力を出して深い心理戦を行う漫画から、単なる美少女ゲームの演出を肯定するための雰囲気付け、果ては異能力が薄い本に応用されるなど、その裾野の広がりはとどまるところをしらない。


なお勘違いされがちだが、「異能力同士がぶつかりあう」というバトル自体はジョジョ以前から非常にポピュラーだった。そもそも神話の戦争とかそうだし、アメコミなんてもっと派手な能力が飛び交ってるし。
ジョジョの発明はこれを「1人1体」「長所はあるが弱点もある」「この超能力を用いて心理戦を行う」というところへ昇華させて少年漫画に輸入したことである。
4部ではさらにこれを「一般人が持ちうる」というところにまで拡張し、単なる高校生同士、ないしは高校生と不審者の喧嘩が能力バトルになるという新しいジャンルまで切り拓いた。


ちなみにスタンド名を叫ぶ演出は「必殺技の名前を叫ぶ」という少年漫画の王道演出に範を取っている。


この辺の話は一人のアニヲタの与太話というわけではなく、「荒木飛呂彦の漫画術」をはじめとした集英社新書の荒木飛呂彦が著した本に詳しく書いてあるし、漫画評論などの本でもたびたび載っているド定番の話題。「漫画に学ぶ人生論」だの「謎本」みたいなしょうもない手抜き本でない限りコーラを飲んだらゲップが出るくらいの確率で載っている。
読もう。めっちゃ面白いから。映画紹介の本などにも折に触れてインフレ否定論などを述べているぞ。




「アニヲタ!おまえが荒らしだと思っていたのは、パソコンとキーボードが作り出す、知識あるwiki篭りなのじゃ!
項目に書き加えたり直したりというところから、そのヴィジョンを名付けて・・・『追記・修正エディット』!!」



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*1 走行する車に立ちはだかって撥ね飛ばされるなど。
*2 6部や7部では舞台がアメリカということもあって警官や看守、敵に雇われた殺し屋などが銃で武装していることもあって非能力者が脅威となるシーンもあった
*3 原作漫画・小説では普通に登場する。
*4 しかし4部の序盤に形兆によって矢に貫かれた広瀬康一が、仗助の「クレイジー・ダイヤモンド」で治療された後、スタンド「エコーズ」を発現する現象が起きた。そのため、一部ファンでは「単純に死ななければ能力を身に付けるのではないか」という考察がなされている。
*5 具体例が空条ホリィしかないため、解決が能力の喪失、制御どちらによるものか等不明点が多い
*6 トニオの場合は「人々を自身の能力で健康にしたい」など。
*7 本体のパンチや手刀に合わせてスタンドもパンチや手刀を繰り出す、等
*8 一見不可解にも見えるが、波紋法はあくまでも特殊な呼吸によって血中に発生させた「太陽の光と同じ波長の波(=振動)」を対象に伝える事で起こる現象であり、その振動がダメージなどと同じようにスタンドから本体へフィードバックされれば直に波紋を流した場合と同じ現象が起こりうる……といった理屈と思われる。そうであれば、逆にフィードバックの無いタイプのスタンドには効果が無いかもしれない。
*9 第3部時点で「エボニーデビル」(人形)、「力」(船)、「黄の節制」(肉)、「女帝」(人面疽)、「運命の車輪」(自動車)、「ゲブ神」(水)、「アヌビス神」(刀)などを、非スタンド使いが目視している。
*10 「アヌビス神」は例外的にすり抜けが可能だったが、他は「女帝」→コールタールで固まって動けない、第4部の「レッド・ホット・チリ・ペッパー(電気と一体化)」→タイヤ(絶縁体のゴム)に閉じ込められると穴を開けないと出られない。など。
*11 例:第4部「サーフェス」が手首をちぎられても本体の間田は無事。「ラブ・デラックス」も燃焼やハサミによる切断で影響がなかったが、ザ・ハンドで削られても影響が見られないことや本体の毛髪と一体化なのでそもそもスタンド自身にダメージが返っている可能性あり。
*12 成長性の場合は「完成」「成長の余地なし」
*13 一方で、毎回いちいち言葉に出して命令しているわけでもないので、単に目的や意志を口に出して気合いを入れているだけという可能性や、その時何をしたか分かりやすく演出するための漫画的表現の一環に過ぎない可能性も十分あるが。
*14 事実、支配下に置けていなかったり、能力の把握が出来ていない本体にスタンドが解説してくれている。パープル・ヘイズは明確な自我があることも明らかになっている。
*15 スーパーフライといった(仮の)本体を必要とするものや、ノトーリアス・B・I・Gのように本体が死亡(本体不在)してから活動したものなど、「本体」自体が必要なのかはスタンドそれぞれ
*16 更科修一郎ほか著「JUMP CHRONICLE」など
*17 ジョジョならたとえば3部のDIOよりも4部の吉良吉影の方が明らかに弱いが、舞台設定などが大きく異なることもあってそこを気にする人はほとんどいない。
*18 最近ではこれらはノベライズやスピンオフという形で半公式化してきている。

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