登録日:2023/07/05 (水曜日) 22:45:00
更新日:2024/07/09 Tue 13:53:56NEW!
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架空戦記 太平洋戦争 中央公論社 角川文庫 kadokawa 角川書店 ラバウル烈風空戦録 川又千秋
ラバウル烈風空戦録は、川又千秋氏による架空戦記シリーズの名前である。通称は『ラバ空』。
架空戦記ブームの黎明期からのリアル志向派の一作で、現在でも名作として名をあげる人は多い。
史実よりもう少し遅い1947年終戦を目指し、1944年末頃までを描いた15巻で刊行が中断、
長いインターバルを経て最終的に「主人公が遺した日記を息子が取り纏めた」という体で「翼に日の丸」と名を変えて再出発、全3巻にて完結した。
残念ながらストーリーを端折り過ぎたため一転して凡作の評価が下され、ファンを残念がらせている。
【ストーリー】
日米の緊張が深まる1942年。
海軍三飛曹風間健児は大陸で九七艦戦を駆って初陣を飾って以来、開戦後は台湾、本土防空、アリューシャン、ラバウルへと転戦を続ける。
それは、零戦、双戦、雷電、そして烈風と目まぐるしく移り変わる名機たちと、多くの戦友たちとの出会いと別れを繰り返す熱い時代の物語であった。
【概要】
物語は、主人公の風間一飛の戦後の回想という形で送られる。
そのため大部分が一人称の文体で進むが、この方式は架空戦記では極めて珍しく、他にはほとんど類例を見ない。
歴史は開戦までは史実どおりだが、真珠湾でエンタープライズを撃沈し、ガダルカナルに大和を投入したりと日本に有利なように少しずつ変わってゆく。
ただし、日本の技術力というどうしようもない壁にぶつかる新型戦闘機開発に関しては「国立飛行機」という架空の航空会社によって新技術が開発されたという体になっている。
また、架空戦記初期の作品の特徴として、史実の人物は名前をもじって登場させている(例、山本五十六→山木八十八)。
空戦の描写の秀逸さもさることながら、風間健児の回想から、一パイロットの視線から見た太平洋戦争という形で作品の評価はとても高い。
中盤までがコミカライズ化もされている。
【登場人物】
- 風間健児
主人公。
航空兵として配属されたばかりの新人ながら、よき先輩たちに恵まれたことによりめきめき腕を上げていく、後の撃墜王。
本作は日記を書くことが習慣の彼の記録を用いての回想という形で進行する。
性格は、上に礼儀正しく下に優しい熱血漢。当初は調子に乗りやすい欠点もあったが、先輩の厳しい指導で改善していった。
情に厚く、戦友が戦死したさいの慟哭は同じ立場のパイロットならではの生々しさに満ちている。
嫌いなものは卑怯なこと。それゆえに戦争に勝つためには非道を辞さない欧米の実利最優先の価値観に嫌悪感を示す一面もある。
- 三田六郎
通称ミロクの中尉と呼ばれる天才的な撃墜王。
風間がもっとも慕い尊敬する先輩であり、風間を心身ともに一人前の戦闘機乗りに育て上げた恩人でもある。
上からは信頼され、下への配慮も怠らないと、人格面でも作中きっての完璧超人。
容姿は原作では女性的な美男子だったが、コミカライズ版ではなぜかキツネ目のコミカルなキャラになった(ちゃんとシリアスな場面では締める)。
- 山木八十八
史実の山本五十六。
史実では失敗した選択肢を切り替えることで日本を敗戦から救っていく。
だが護衛駆逐艦が急行しているというのに潜水艦に大和の主砲を撃ち込まさせるような無茶な命令をすることも。
【本作オリジナル、または史実から改変された兵器】
- 双発単座戦闘機
通称双戦。
海軍の「長距離侵攻用双発多座戦闘機」の失敗を元に、零戦のパーツをできるだけ流用して作られた双発戦闘機。
零戦の弱点であった機体の脆弱さや突っ込みの弱さを双発の大馬力で解消しており、ドゥーリットル隊の迎撃からアリューシャンを経てガダルカナルへと連戦活躍した。
しかし双発ゆえの装備の贅沢さがたたり、量産は少数で止まり、大戦中盤にはほぼ姿を消してしまった薄幸の名機である。
史実の雷電と違い、国立飛行機の改設計で淚滴風防になるなどの改良が施され、戦闘機としての完成度を高めている。しかし史実の雷電でも問題になった振動については本機でも解決しきれていない。
史実ではついに完成しなかった零戦の後継機であるが、本作では史実の日本軍機の泣き所であった誉発動機を改良した勲発動機が完成したことで大戦中盤の1943年に量産開始、本作中盤、メモリアルの10巻で描かれる大決戦「北太平洋海戦」で零戦に匹敵する鮮烈なデビューを飾った。
同時期に登場したアメリカのF6FヘルキャットやF4Uコルセアに優る空戦性能で、史実で失った制空権を保持することに成功。
しかしかつての零戦対F4FやP40程の圧倒的な優位は望めず、物量を投入してくる米軍相手にパイロットの練度低下もあって徐々に苦戦を強いられ、
F8Fベアキャットがデビューすると完全に遅れを取るようになるが、後述のジェット戦闘機「閃風」までの間を繋ぐ貴重な時間を稼ぎ、その後も数の少ない閃風を補い、終戦まで戦い続けた。
なお実用的な自動空戦フラップが早期に国立飛行機の貢献で実用化できたために史実より一回り小型化に成功したが、大飯ぐらいの勲エンジンを賄う燃料を機内に収めきれず、零戦よりはるかに巨大なドロップタンクを搭載することで対応したが、それでも航続距離は零戦の7割程に留まった(そしてこの巨大な増槽が簡単に補充できないということで烈風の泣き所となり、失うことを嫌って増槽をつけたまま空戦に突入して苦杯を舐めたパイロットも多かった)。
- 閃風
ドイツの名機メッサーシュミットMe262をベースとするジェット艦戦。
ご存じの通りMe262は双発戦闘機だが、閃風は単発なため、外形はMe262をさらに発展させた幻の戦闘機P.1101に似通っている。
原作は主人公がこの機体のテスト飛行を目撃したところで中断したが、大戦終盤、苦戦する烈風の後を継いで回天の大活躍を見せる・・・はずだった。
- 連山
日本が開発していた四発の大型爆撃機。元々一式陸攻や銀河と同様の対艦攻撃を考えていた出自もあり、ドイツからの誘導技術と日本の酸素魚雷を融合させた起死回生の秘密兵器「誘導魚雷『回天』」を搭載し、大戦終盤に恐るべき空母キラーとして活躍する・・・はずだった。
外伝においてその一端を垣間見ることができる。
主人公が最後に搭乗することになる戦闘機。名前でわかる通り、飛行機ファンには有名な幻のエンテ式戦闘機「震電」のエンジンを呂式=ジェットエンジンに換装した迎撃戦闘機で、大戦終盤に本土を襲うB-29を相手に獅子奮迅の活躍を見せる・・・はずだった。
- 零戦42乙型
外伝で登場。未熟練搭乗員が多くなったことを鑑みて、命中させるには肉薄が必要な20ミリ機銃を撤去して、機銃全てを7.7ミリに統一している。
余談だが、この回で架空戦記ファンには有名な「零戦100型という機体は存在し得ない」という文句が出た。
- 空母「剛龍」
元、英空母「インドミタブル」。インドミタブル=剛毅な、を意味する英語をそのまま和名にぶっ込んでいる。
マレー沖海戦で史実と異なりプリンス・オブ・ウェールズに同行し、激戦の末損傷、シンガポールで鹵獲され日本空母として生まれ変わる。
烈風と共に北太平洋海戦でデビューし、以後も日本機動部隊の中核として活躍する。
- 空母「伊吹」
史実で中断した、建造中の重巡を改造した軽空母。ただし史実にはないギミック、起倒式発艦用スキー・ジャンプ甲板を装備し、大型戦闘機の発着を円滑に行える工夫が施されている。
外伝にて伊吹、閃風、連山がそれぞれの見せ場を作りながら米空母相手に奮戦し、その戦いが後に再建なった米機動部隊にとって屈辱の大敗北となる
フィリピン沖海戦に繋がっていく・・・はずだった。
- 戦艦「紀伊」
史実でも構想された超大和型戦艦。50サンチ砲を搭載する史上最強艦として建造され、予定通り「紀伊」「尾張」の2艦が完成したことになっている。
しかし「尾張」は、米潜が気まぐれに放った雷撃を受け、あっけなく沈没してしまった。
- 駆逐艦「雪風」
史実通りの強運艦として数々の海戦に参加し、無傷で終戦を迎えた。その後様々な曲折を経て記念艦として残り、呉で静かに戦後日本の行く末を見守っている*1。
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- 懐かしい!途中でエタったけど、「翼に日の丸」でダイジェストだけど完結してくれてうれしかった。そのことも追記してくれると嬉しいな。 -- 名無しさん (2023-07-08 14:59:19)
- ちなみに、双戦は「二式」双発単座戦闘機ですぞ。 -- 名無しさん (2023-07-08 15:05:44)
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