セッション(映画)

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登録日:2023/01/10 Tue 16:57:00
更新日:2024/06/28 Fri 13:59:32NEW!
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映画 洋画 セッション ドラム バンド ジャズ ドラマー パワハラ 音楽 2014年 巨人の星 ギャガ マイルズ・テラー スパルタ教育 鬼教官 アカデミー賞受賞作 俳優の本気 陰キャvsハゲ 1.2.3.4(ペチン!) jvc音楽祭 ドラマ映画 デイミアン・チャゼル j・k・シモンズ



英語で最も危険な言葉はこの2語だ、"グッド・ジョブ(上出来だ)"



セッション(原題:Whiplash)は、2014年にアメリカで製作された映画である。
監督は今作が長編映画監督デビューとなるデイミアン・チャゼル。本作はチャゼル氏がインディーズ時代製作した短編映画の長編リメイク作である。
公開自体は2014年10月だが、日本での上映は翌2015年の4月17日からだった。
J・K・シモンズは本作での鬼気迫る演技によってアカデミー賞助演男優賞を受賞した。
原題のWhiplashは作中で使用される曲のタイトルであると同時に「鞭打ち症」も意味し、本作における肉体的・精神的な苦痛を強いる指導を表現した二重の意味が込められている。


〇あらすじ
主人公アンドリュー・ニーマンは、バディ・リッチ*1に憧れ、米国最高峰の音楽学校であるシェイファー音楽院に通っていた。
ある日、一人でドラムの演奏練習をしていると、たまたま通りかかった学内最高の指導者として有名だったテレンス・フレッチャーと出会う。彼はアンドリューの演奏を一通り聴くと立ち去るが、後日アンドリューのいる初等クラスに訪れると自身の上級クラスにヘッドハンティングする。
入る事すら難しいと学内で羨望の的となっていたフレッチャーの指揮下に入れたと心躍る彼だったが、練習初日に早速苛烈な罵詈雑言をバンドメンバーに浴びせ退場させる光景を見てしまう。更にその矛先は早速自分にも向けられ、ほんの僅かリズムが遅い事を理由に椅子を投げ飛ばされ、人格否定*2や暴力を受け何度もやり直しを命ぜられる。
だがここで折れず更なる特訓を積んだアンドリューに、ある日転機が訪れる。バンドがコンテストに出場した際、主奏ドラマーのカール・タナーの楽譜捲り要員として参加していたが、実質小間使いとして楽譜を預かっていた。しかし不備から楽譜を喪失し、暗譜していないタナーに代わってドラムを演奏。バンドがコンテストに優勝すると、主奏ドラマーに指名される。
ようやくプロドラマーとしての道を目指せると思ったが、音楽界に疎くスポーツマンばかり重宝する親族からは無関心どころか軽視の対象とされ、更にフレッチャーは今後のドラマー候補としてライバルだったライアン・コネリーを自らのクラスに招くようになる。ようやく確立した自分の立場が危ぶまれたアンドリューは、ガールフレンドに自ら別れを告げると共に、文字通り血の滲むほどのドラム練習に没頭するようになるが……。

重要なコンペティションが行われる中で始動演奏は激しさを増し、アンドリューを含めたドラマー3人には極端なまでの激しいテンポでの演奏を長時間続けるように要求される。"しごき"とも捉えられる苛烈な選抜は長時間に及び、他の演奏者は教室外に置いてけぼりにされ、当人らも手から血が滲むほどの演奏をさせられた。
結局最後の最後でフレッチャーからの要求に応えきったアンドリューが主奏に選抜されるが、コンペティション当日に「会場に向かうバスが故障→急いでレンタカーを借りて会場に向かう→レンタカー屋にドラムスティックを忘れて取りに戻る→会場へ向かう途中でトラックと衝突し負傷」というアクシデントに見舞われる。当然こんな状態で演奏ができるわけがないのだが、本人は頑として演奏するつもりで登壇するも失敗。フレッチャーから「お前は終わりだ」と見限られると激高し殴り掛かるが、即座に取り押さえられ退場させられる。
この騒動が元となって音楽院を退学させられ、本人も意気消沈として自前のドラム用品を全て物置に閉まってしまう。そんな中で父のジムを介してショーン・ケイシーの代理人を務める弁護士と接触。事故死と伝えられていた彼の死は、実はフレッチャーによる過剰な指導による精神的圧迫からの自殺だった事が告げられ、遺族の意向で今後の被害者を防ぐため匿名で告発してほしいと頼まれる。
当初はフレッチャーの技術から躊躇っていたアンドリューだが、他からの説得を受け承諾してしまう。
それから数カ月後、無気力なまま夏休みを迎えていた彼の目にジャズバーの看板が写る。そこには登壇予定のバンドメンバーにピアニストとしてテレンス・フレッチャーの名前が書かれており、店内で自分を見つけたフレッチャーに声をかけられると席を共にする。「匿名の密告でシェイファー音楽院を解雇された」と顛末を語ると同時に「自分が生徒を罵るのは、彼らにジャズ界の伝説になってほしいからだ。チャーリー・パーカーはジョー・ジョーンズにシンバルを投げられたが、それで彼の克己心に火がつき一流に至った」と信条を語る。
そして彼から、週末にJVC音楽祭に出演する自ら指揮するバンドにドラマーとして参加してほしいと請願されると、傲慢だった彼に頭を下げられた事、先ほど語られたジャズへの情熱、演目がシェイファー時代のレパートリーだったために承諾した。
そして当日。JVC音楽祭という多数のスカウトマンも集い今後の栄達も不可能ではない大きなチャンスがあるステージにおいて、フレッチャーが壇上で観客に紹介した演目はアンドリューに伝えられた演目とは全く違うものばかりだった。焦るアンドリューだが周りは楽譜を淡々と準備しており、直後にフレッチャーから「密告したのはお前だな」と見抜かれていた事を告げられる。
フレッチャーは最初から匿名の密告がアンドリューによるものだと知っており、その報復のためだけにJVC音楽祭に出演したのだ。当然、正規の演目を知らないアンドリューは曲に合わせた演奏などできるわけもなく、スカウトや観客に醜態を晒したうえ再度フレッチャーからの罵倒を受けステージを追われる。
一度は父と抱擁を交わし家へ帰る事を提案されるが、意を決して再度舞台に引き返すとフレッチャーの曲紹介を無視してキャラバンを演奏し始める。突然の演奏に他の奏者も戸惑うが、あまりの気迫に合わせざるを得ず一時的にバンドの主導権をフレッチャーから強奪する。その様相に躊躇していたフレッチャーも指揮を執り始めるが、次第に彼の鬼気迫る演奏の実力を認めざるを得ず、やがて満足したかのように歓びの顔を浮かべるのだった。


〇主要人物(俳優/日本語版声優)

  • アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー/内田夕夜)

本作主人公。ドラム一筋で幼い頃から練習を重ねてきた努力家だが、普段は大人しく引っ込み思案。
だがドラムに関係する事になると一変し、凄まじい根性と執念、更に図々しさまで見せるようになる。それらは人格否定までしてきたフレッチャーのしごきに最後まで付いてくる点や、あらゆるトラブルを介してもなお主奏ドラマーの座を諦めない点に出ているだろう。
実際にドラムのセンスは抜群で、フレッチャーの目に留まったのは偶然ではなく実力による正当なもの。また他人に対しても平等な評価を下せ、相当な嫌がらせを受けたにもかかわらずフレッチャーの技量を認めていた。
演者のマイルズ・テラーはこの撮影のため一日何時間もドラム練習を重ねており、劇中の出血の一部は本物。


  • テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ/壤晴彦)

イビリクソ禿指揮者。知る人には「巨人の星」の星一徹や、かつての富野由悠季のようだと思えば分かりやすいだろうか。
シェイファー音楽院きっての実力者として認知され、彼のバンドに参加するのは将来を嘱望されるのと同等とされるほどの名誉を持つ。
しかし実際に参加してみると、暴力を伴う過激な指導・人格否定を始めとするパワハラなどが日常茶飯事の現場なので、離脱者が後を絶たない。残っているメンバーもそんな光景を何度も見ているせいか、嘲笑や驚愕ではなく黙って目を伏せて時が過ぎるのを待っている。
彼もアンドリュー同様に他人の実力は素直に認める性格だが、非常に執念深く陰湿な側面も持ち合わせているので指揮者としては優秀だが人格面では最低という評価が大多数を占める。


蜘蛛男の宿敵として有名なJ・K・シモンズだが、本作では厳つい面構えも相まって文字通り悪魔が乗り移ったかのような熱演を見せており圧巻の一言。


  • ジム・ニーマン(ポール・ライザー/佐々木敏)

アンドリューの父にして唯一の理解者。
この映画の中では聖人の立場だが、妻には家を出ていかれているなど良くも悪くも凡庸な人間の代表。アンドリューとの仲は良好で、一緒に映画を観たりドラマーとしての将来を応援しているなど立派な父親なのは間違いないのだが、ドラマーとしての大成を夢見るアンドリューにとっては一種の反面教師でもある。ある意味ではアンドリューが夢破れても迎え入れてくれる「最後の居場所」のような存在でもあるが・・・


  • ニコル(メリッサ・ブノワ/横山友香)

アンドリューの恋人。
フォーダム大学の学生で、アンドリューが父と映画を観た時に売店でバイトをしているところをデートに誘われた。
顎が大きい事がコンプレックスで、あまり周囲の人から好かれていないのを気にする所や、時折ホームシックになるなどの思いを共有し仲を深める。
しかしアンドリューからドラムに集中したい=君が足枷なんだ、と告げられると激怒して別れる。その後暫くは出番が無いが、アンドリューから再度連絡を受けた時には別の彼氏ができていた。
ぶっちゃけ本編で一番かわいそうな子。


  • ライアン・コノリー(オースティン・ストウェル/赤坂柾之)
  • カール・タナー(ネイト・ラング/須藤翔)

どちらもドラマーで、フレッチャーのバンドで主奏ドラマーの座を争う。
ライアンは初等クラスでライバル的存在だったが、アンドリューがフレッチャーにスカウトされると一時出番が無くなる。しかしその後フレッチャーのスカウトを受けて再登場し、同じしごきを受け敗北する。
カールは元々フレッチャーのバンドにいた主奏ドラマーで、当初のコンテストではアンドリューを小間使いにしていた。だが彼に足元を掬われると立場が逆転してしまい、しごきによるレッスンでライアン共々敗北してしまう。一応その後のコンペティションで「俺がやる!」と代理を受け持つが、殆どアンドリューからは相手にされていない。
アンドリューが音楽院退学後はどちらもドラマーを辞めており、しかもライアンはフレッチャーからは「お前に危機感を抱かせるための当て馬だった」と散々な評価を下されている。






住人「1・2・3・4(ビタン!)」
住人「1・2・3・4(ビタン!)」
冥殿「キツいか、緩いか?」
住人「キツいです」
冥殿「ようやく500本入ったようだな!」


追記・修正は主奏ドラマーになってからお願いします。



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  • ブルーロックの絵心は好きな映画に今作を挙げていたな -- 名無しさん (2023-01-10 17:33:50)
  • 概要欄も無く、監督の名前すらないのはちょっとどうなんですかね?途中投稿? -- 名無しさん (2023-01-10 18:21:24)
  • ドラムは本当に特殊、絶対音感もっていても基本打撃音にしか聴こえないうえに音楽の心臓部になるからコンマのミスで曲が終わる -- 名無しさん (2023-01-10 19:40:56)
  • 天才の狂気を現代的視点で捉えつつ意図的に王道に描いた作品。 フレッチャーの異常性には充分に言及している一方で、最終的には体罰の有用性を描いたともとれてしまう危うい内容だからそこは冷静に見ないと。 -- 名無しさん (2023-01-10 20:02:56)
  • 教え子が病んで死んでも名指導者は地位をそのままに新しいスターを探しているのがリアル、こういった人種には成功作と失敗作しかなくて、1の成功作の前には100の失敗作があっても気にしなさそう -- 名無しさん (2023-01-10 20:03:54)
  • シモンズ演じるフレッチャーは「悪魔の皮をかぶった悪魔」という表現がシックリくる。 -- 名無しさん (2023-01-10 20:35:41)
  • 個人的にフレッチャーは星一徹やハートマン軍曹より暗殺教室の鷹岡明に近いイメージ -- 名無しさん (2023-01-10 20:43:42)
  • 監督はジャズ経験者だけど挫折組でジャズミュージシャンの菊池成孔氏がその辺りの機敏を感じた評論をしてた -- 名無しさん (2023-01-10 21:35:46)
  • ヒロインというか主人公の恋人役の女優はスーパーガールの主役。めちゃくちゃ可愛いけどこの映画では不憫だった -- 名無しさん (2023-01-10 22:52:39)
  • 初恐ろしい映画なんだけど、ラストシーンで「何か」を見たアンドリューについ嫉妬してしまう。羨む資格はないけど -- 名無しさん (2023-01-10 23:29:53)
  • フレッチャーが「本当は生徒思い」「あの指導にも実は意味があった」とかそういうの一切ない正真正銘のクズなのが逆に清々しい -- 名無しさん (2023-01-11 11:02:18)
  • ↑そういう設定にしたら体罰を肯定することになるからね -- 名無しさん (2023-01-11 14:17:11)
  • 「そのケツにスティックをぶち込んでやる!!」みたいなセリフが何故か印象に残った -- 名無しさん (2023-01-11 20:54:41)
  • どうしようもないカスに感化されたクズが才能を開花させる話だが、カスもクズも微塵も性格は治っていないという。そんなカスとクズでも最高の演奏はできるという歓喜に感動してしまう不思議な映画 -- 名無しさん (2023-01-12 09:26:43)
  • フレッチャーのヤバさばかり語られてるけど、普通にアンドリューも性格悪いし頭おかしいんだよな -- 名無しさん (2023-01-12 17:31:14)
  • フレッチャーに感化されて徐々に…とかじゃなく、元々バンドで孤立してたっぽい冒頭みるに素で性格がアレっぽいからな、アンドリュー -- 名無しさん (2023-01-13 10:24:15)
  • フレッチャーがニーマンに大恥かかせるため演目詐欺して、個人的復讐に音楽会を利用・台無しにしようとしたのは、パワハラ指導とは別に心底ムカついたわ。音楽にまで嘘つくクズ中のクズでしかなかったと。こいつが芸術に関わる資格はないわ -- 名無しさん (2023-01-14 03:34:06)
  • ニーマンはあの後音楽家としては大成するけどフレッチャーみたいなクズになって父親みたいな凡人を侮辱して勘当されるまでになってしまうのだろうか。 -- 名無しさん (2023-01-14 06:43:45)
  • なお「ラ・ラ・ランド」に登場したレストランの店長は音楽業界から追放されたフレッチャー本人という裏設定がある -- 名無しさん (2023-01-14 06:44:39)
  • ↑演者が同じってだけで別にそんな設定はないよ。コメンタリーのこと言ってるなら、あれは「そうだったら面白いよね」っていう監督のジョークみたいなもんだよ -- 名無しさん (2023-01-16 08:50:36)
  • 最後に元カノとの和解や音楽祭での成功という大団円の雰囲気を匂わせつつ、そのフラグをすべて折って孤高の狂気の5分間のラストに至る。 あの尖りまくったラストがあるからこそ本作は伝説になった。 -- 名無しさん (2023-01-27 07:43:39)
  • まだ映画は観てないんだが、フレッチャーは要するにゴブリンスレイヤーの師匠みたいなものかな? -- 名無しさん (2023-02-05 01:44:15)
  • ↑観てないのに印象だけの適当なことは言わない方がいいよ -- 名無しさん (2023-11-24 01:25:34)

#comment(striction)

*1 実際に存在したアメリカの偉大なドラマー
*2 詰られている内容は前日にアンドリューがフレッチャーに吐露したプライベートなものばかり

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