登録日:2022/07/24 Sun 19:06:23
更新日:2024/06/24 Mon 13:30:15NEW!
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ヴァイオレット・エヴァーガーデン パラレルワールド ウンディーネ 名無し リナリア・ブーゲンビリア ヴァイオレット・エヴァーガーデンif ディートフリート・ブーゲンビリアif ライデンシャフトリヒのウンディーネ ブーゲンビリアの拳銃 「お前」 義手←ではない この恋に気付いて
捨てるべき時に、それを捨てなければ、未来は大きく変わったことだろう。
リナリア・ブーゲンビリアとは、暁佳奈の小説『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の登場人物。
登場したのは原作小説軸の物語であり、アニメ版には未登場。
劇場アニメ映画の入場特典冊子に収録されたエピソードの一本『ヴァイオレット・エヴァーガーデンif』、
並びに完全受注生産の単行本「ラスト・レター」に書下ろされた同エピソードの続編『ディートフリート・ブーゲンビリアif』に登場する。
キャラクター概要
早いが話、「ディートフリート・ブーゲンビリアが後にヴァイオレットと名付けられる少女を『手放さなかったら』」というIFの世界線上における
ヴァイオレット・エヴァーガーデンその人であり、正史世界とはまた違う運命の足取りを辿った彼女の「もう一つの可能性」とも言うべき鏡像的存在。
基本的な人間性は原作本編のヴァイオレットとそう変わらないと思われるが、ギルベルトと任務を共にしなかった事もあり両腕は[[義手>義手/義足]]ではなく生身のまま健在。
前述の通り、『ディートフリート・ブーゲンビリアif』ラストまで実質「名無しの少女」のままであり、リナリアの名はディートフリートから名付けられたもので、
それまでは彼からは名無しのまま「お前」などと呼ばれていた。
軍関係者からは、ディートフリートが彼女を利用して得意とした水上での奇襲戦法にちなんで「ライデンシャフトリヒのウンディーネ」と異名を付けられており、
ギルベルトやホッジンズといったディートフリートと知古の間柄の人物からもその異名にちなんだ「ウンディーネ」の愛称で呼ばれている。
軍内部では登録名なしの武器扱いにされており、途中から「ブーゲンビリアの拳銃」扱いになった。
関係者以外の外部の人間相手には、体面上「ディートフリートの秘書官」という呈ではぐらかしているとのこと。
概ねの人生はディートフリートに「捨てられるか否か」の境目前後まで(幾つかの差異はあれど)変わっておらず、重要なのはそれ以降。
ギルベルトの元で死線を共にして重傷を負う事が無かったため両腕を喪うことなく、ディートフリートの「道具」……実質彼の秘書に近い形で行動と生活を共にしている。
当初は戦闘絡み以外のスキルはからっきしであったが、ディートフリートとの生活の中で識字や言葉遣いなどを始め努力を怠らなかったが故に成長し、
『ヴァイオレット・エヴァーガーデンif』ラストの時代では実質ディートフリートを尻に敷くレベルで家事や秘書業務のスキルを向上させていた。
ただし、正史同様に淑女教育を受けたレベルに達しているかまでは不明。
少なくとも、他者への贈り物を選定する観察眼や芸術性については養われなかった模様。
またこの頃には紆余曲折での感情の変化を経た事で、ディートフリートもまた不器用ながらもリナリアに対して明確な「愛情」とも言うべき感情を抱いており、
もし名前を付けないまま彼女が死んでしまっていたら、何と呼びながら弔うつもりだったのかと述懐した事からも彼自身の変化がうかがえる。
作中での動向
『ヴァイオレット・エヴァーガーデンif』
概ねは正史通りに話が進みながらも、ディートフリートが手元に置いてから暫く経った「名無しの少女」と関わりあう中で、
彼自身が本当に欲しているものに気付き始めたのが大きな変化の切っ掛けとも言える。
この時点で彼女を「誰でもいいから“主”を欲しているだけ」を受け取ってしまい、煮え切らない想いを抱くようになってしまう。
次いで、正史とは異なる形でのディートフリートとギルベルトの兄弟の数年ぶりの再会。
高層建築の宿の最上階において、ディートフリートのみならず取り巻きの軍人からも嘲笑われながらギルベルトに引き取られた正史の物語とは対照的に、
『if』の世界線ではディートフリートが窃盗犯を返り討ちにした際、偶々居合わせたギルベルト並びにホッジンズと出会うという流れになっている。
こちらでもギルベルトが少女の置かれている境遇を知るや否や、当然ながら壮大な兄弟喧嘩に発展してしまったと地の文で言及されているが、
お互いに失望を抱えたまま離別してしまった正史に比べれば、感情を吐露して罵り合う事が出来た分まだマシと言えるかもしれない。
事実、ディートフリートはギルベルトに詰め寄られる中で、少女の存在が抜き身の刀身のようだった自分を揺らがせている事を自覚せざるを得なくなってしまう。
思い余ったディートフリートは、ギルベルトの住まうブーゲンビリア邸に赴き、少女を「自身に捨てられた」体裁で、正史同様にギルベルトの元へ引き取らせるべく仕向けようとする。
そしてそれは、弟を愛しており、また自覚こそしてないものの少女に対しても同じような感情を向けているが故のものだったのかもしれない。
だが、突き放すようなディートフリートの言葉を、少女は懸命に拒否する。
「……ひとりに、しないで、ください……」
そこに居たのは、初めて会った時の獣などではない、ディートフリートが言葉を教えた一人の少女だった。
彼女にとって主は誰でも良くなどなかった。誰でも良ければディートフリート以外にもたくさん人は居たはずであった。
けれども、彼を追いかけた。獣なりに本能的に感じ取ったのかもしれない。この人間ならば、この大人ならば、きっと、自分を離さないだろうと望みを抱いて。
「……傍に、いさせて、ください」
ディートフリートは、実際彼女を単なる道具としては扱わなかった。
言葉を与え、髪を梳かし、生活習慣を学ばせ、ディートフリートは知らずの内に、獣を人にしようとしてしまっていたのだ。
ディートフリートの怒鳴り声を聞いて邸宅から飛び出してきたギルベルトが見守る中、ディートフリートは少女に自分が必要かと問う。
頷いた少女の言葉に、ディートフリートはこれまで胸の中を蠢いていた昏い物が取り払われる感覚を知り、
彼女への憎しみに近い感情、そして自分への激しい怒り、世界への劣等感すらも薄れていった。
少女が自己を証明したがったように、ディートフリートもまた他人に、この獣だった少女に自身の事を認めて欲しかったとようやく理解できた。
本当に殺したいと思っていた時期も、道具として使い潰そうと思っていた時期すらもとっくに過ぎ、今は光ある方に変化していた。
二人は、そこで初めて自分達を認め合う朝を迎えた。
―――時は流れ数年後。大陸戦争が終結し、ライデンシャフトリヒ郊外に建てられた邸宅にディートフリートと少女は共に住んでいた。
男と少女、風変わりで齢の離れた二人は仲は良くなさそうだが、離れる気配もない。
この頃には少女もすっかり成長し、ディートフリートが朝一番に彼女の事を「美しい」と思って後悔してしまうぐらいには美人になっている模様。
ギルベルトやホッジンズらとも親密な間柄が続き、ディートフリートもそれにヤキモチを焼く感情を自覚するくらいには自身の想いを自覚しているようだった。
ディートフリートは色々不満を抱きながらも、もはやこの関係性に居心地の良さも感じており、
もはやかつての彼では無く、自身の存在証明である少女を手放せない、ただの一人の男になってしまっていた。
故に、手を伸ばし、彼女が自分の事を忘れないように、自らが付けた彼女の名を呼び、その頬を撫でた。
「■■■■」
「はい、お傍におります」
この物語で明かされなかった「この世界線の」少女の名前は、『ディートフリート・ブーゲンビリアif』にまで持ち越されることとなる。
『ディートフリート・ブーゲンビリアif』
人は何を以ってして、人になるのか。
時系列は『ヴァイオレット・エヴァーガーデンif』本編と「数年後」の間に位置する、大陸戦争が終わって然程経っていない頃。
ディートフリートの見立てに沿えばこの時点で14歳とのこと。
戦後はディートフリートの下、言語能力・一般教養・兵法の勉強を始め、いつしか彼にとって有能な秘書ともいえる立ち位置に。
この頃にはギルベルトから提案されたブーゲンビリア家の所有する土地の割譲を「ディートフリートは怒るだろう」と即答できるくらいには人間の情緒が理解できるようになっている。
冒頭では大陸戦争中の洋上戦で、少女を危うく失いかけ、その際にディートフリートが終ぞ名前を付けずにいた彼女が居なくなることを恐れる場面が挟まれ、
この一件は終戦後のディートフリートが「あの時彼女を失っていたら何と呼び弔うつもりだったのか」と思い返す流れにも繋がっている。
本編の時点ではディートフリートはボロボロに筆記帳に、少女の正式な名前とする候補を書き連ね、頭を抱える程の想いを持つようにまで至っている。
ディートフリートが終戦後に住む邸宅を見繕う中、彼が所持していたとある絵画の作者の遺族と会う約束を少女が勝手に休暇を申請して取り付けた事から、
遺族であった作者の母親と邂逅を果たし、その中で「今の自分達にできる事は後悔するかしないかの選択を延々とし続けることくらい」という想いをその母親と共有。
作者の遺作を管理する中で母親とも交流を続けるなど、少女との出会いでディートフリートの性格が年々丸くなっている事も明示された。
その後、ディートフリートはこの一件を経て知り合った画商から、とある資産家が持て余していた別荘を提供され、そこを自身の終の棲家とする事を決意。
少女に対し、自身が死んだ後は遺された邸宅の名義を譲ると言うも、彼女から返ってきた答えは全く異なるものだった。
「いやです」
「大佐は私が死なせません」
「あらゆる敵を、私が排除します」
彼を生かすためなら寿命とすら戦うと断言する少女に対し、
ディートフリートは「最後にお前を泣かせて死にたい」「看取る時くらい笑顔を見せろよ」と言いつつ、先の筆記帳を彼女に見せる。
その筆記帳の最後に記述された一つの名、「花の名前」に大きく丸が書かれていた。
その花は別荘の長らく手入れされていなかった庭にも咲いていた。
ディートフリート曰く、ブーゲンビリア家も植える花だそうで、迷いに迷って「うちの花」を選んだ、花の中で佇んでいる少女の姿が目に浮かんで、それでよいと思ったと少女に告げる。
その名は、「リナリア・ブーゲンビリア」。
美しい花と、ブーゲンビリア家の名前。以前なら結びつかなかった二つの名前が、まるで花束の様に少女の中に溶け込んだ。
自身の名前を復唱し、涙を流す少女―――否、リナリアに、ディートフリートは彼女に終身雇用という呈で、実質的なプロポーズを果たす。
ひどく不器用な愛し方ながらも、ディートフリートはただ、泣いている獣を慰め、必要とされる瞬間を味わいたいという気持ちを噛み締めていた―――
「リナリア、これでお前がもし孤独に死んでも墓は一緒だぞ」
これは、もしかしたらあったかもしれない愛の話だ。
余談
リナリア(姫金魚草)の花言葉は「この恋に気付いて」「幻想」など。
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