獣人雪男

ページ名:獣人雪男

登録日:2011/06/20 Mon 19:36:46
更新日:2023/08/10 Thu 14:57:56
所要時間:約 5 分で読めます



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雪男と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか?
ヒマラヤのイェティ? ロッキー山脈のビッグフット? それとも日本のヒバゴンだろうか。














しかし、今回紹介するのは、おそらく日本で初めて映像化された雪男である。




獣人雪男』は1955年8月14日に公開された東宝の特撮映画で、東宝では3作目の怪獣映画になる。



【あらすじ】

とある大学の山岳部は冬の日本アルプスにスキー合宿に来ていた。しかし部員2人が行方不明になり、1人は遺体で発見されたが1人は行方不明のままだった。そして山荘の周りには謎の足跡が残っていた。


その後夏になり、山岳部の飯島は有志を集め捜索隊を結成する。その中には行方不明の武野の妹道子、弟祐介、謎の動物を追いたい小泉博士がいた。そして噂を聞きつけた興行師の大場が後を付けていた。


テントを張った一向は謎の動物と遭遇し、その騒動で飯島は崖下に転落してしまう。飯島は崖下の閉ざされた部落に住む少女チカに助けられるが、村人は外者の飯島を崖に吊す。そんな飯島を助けたのは謎の動物=獣人雪男であった。



【概要】

1954年公開の『ゴジラ』に続き製作が決定した作品で、スタッフ・キャストの多くが同映画から引き続き投入されている。
実際には『ゴジラの逆襲』が製作されたため、怪獣映画3作目となった。


原作は『ゴジラ』に引き続き香山滋が担当し、本多猪四郎円谷英二の監督コンビが演出した。また、若き日の岡本喜八が助監督兼脇役として参加している。


本作は香山の持ち味である秘境物の持ち味を発揮した内容が特徴である。
また部落からは山の主と扱われていることが、『ゴジラ』ではゴジラが大戸島で海神と扱われていたことと関連付けて、怪獣=土地神という思想を受け継いだ作品であると論じる意見もある。



【封印扱いについて】

本作は2023年現在に至るまでVHSやDVDなどの映像ソフト化、配信が一切されていない作品として有名である。
また、ある会社により音声を収録したドラマCDを発売した後に、海賊版ビデオが大量に出回ったりと、きな臭い話の多い作品である。
一時期は東宝特撮を扱った本でもスチールが載らないこともあった。


メディア化されない理由としては、部落の描写に近親婚を繰り返し障害者が増えてしまったような場面があることが原因と指摘されている。
なお、日本にこういう部落があるという描写は、当時は山窩という山に住む民族がいるという考えが、少なくとも知識人には一般的であったためであると考えられる。


いわゆる東宝作品絡みの怪獣図鑑の類では映画のスチールが掲載される機会は多く、書籍によっては大々的に取り上げられることもあるが、未だにメディア化されない理由について東宝サイドからの公式見解は出ていない。


現在でも稀に劇場で公開されることがあり、予告編だけなら過去にビデオに収録されているため、正当な手段で映像を見るならこの2通りが主となる。



【獣人雪男】

山奥の秘境で生き長らえていた獣人の末裔。閉ざされた部落からは山の主と崇められていた。
少数ながら一族がいたが、毒キノコにより本作に登場する雪男親子以外は全滅する。


邪魔なものは殺す野蛮さと、武野や飯島を助ける優しさを持った生物である。
大場の策略で捕まえられ檻に閉じ込められるが、輸送中に子供が殺され逆上し大場を殺害し、人間への復讐に近場のチカの部落を襲う。
最後はチカと共に火山の火口へ落下した。


当初は大橋史典が造形を担当し、映画本編のアクターも担当した。大橋は戦前に『和製キングコング』という作品を製作し、日本の着ぐるみ製作、スーツアクターの第一人者の1人である。
造詣は途中から『ゴジラ』を担当した利光に変更されており、顔だけで複数のパターンがあるとのことである。
スーツは当初は高下駄を仕込んだが、危ないため却下となり、全体的に増量したような着ぐるみになっている。 



【登場人物】

◆飯島(演:宝田明)
大学の山岳部に所属する青年。仲間を捜索するために先陣をきって行動する。


◆道子(演:河内桃子)
行方不明になった武野の妹。飯島とは恋仲である。


◆小泉博士(演:中村伸郎)
動物学者で、謎の動物を調べるために捜索隊に同行した。


◆大場(演:小杉義男)
悪徳興行師。捜索隊の後を追い、謎の動物を捕まえて見せ物にして金儲けを企む。


◆チカ(演:根岸明美)
閉ざされた部落に住む原住民の少女。落下した飯島を助けるが、村には居なかった若い男性である飯島に惚れてしまう。
演じた根岸明美は後に黒澤作品等に参加している。



【原作について】

香山滋による原作では雪男は野生的になっており、また部落との関係も必要な時は助け合うが基本は不干渉となっている。
山の神とも取れる描写の映画と違い、絶滅したはずの生物の生き残りという描写が強く、香山が得意とする作風となっている。


香山によってプロットから執筆された小説があり、こちらは『ゴジラ』の原作と合わせて2004年頃にちくま文庫より書籍化されている。
2023年現在も版を重ねており新品での入手は容易なので、興味を持った方は一読をお勧めする。



【参考資料】

洋泉社『東宝特撮総進撃』
ちくま文庫『ゴジラ』(『獣人雪男』小説版を併録)
Wikipediaの作品項



『獣人雪男』を正当な手段で見た方は追記・修正をお願いします。


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  • 昭和ゴジラと同じ世界観の話です -- 名無しさん (2019-01-04 04:41:11)
  • 原作だと雪男の子供はラストぎりぎりまで生きていたのだが、「人間の見世物にはならず一族の誇りとともに死ぬ」ことを選択した父親に無理心中させられてしまう。したがって火口に身を投げるのはこの親子のみでチカは最後まで生き残る。 -- 名無しさん (2020-04-29 00:26:41)
  • 「洞窟に同族たちの遺骨がゴロゴロ」というのはひょっとして2005年版「キング・コング」で引用された?(あの作品も和製コングやその他関連作品の研究の産物だから) -- 名無しさん (2020-05-08 22:45:02)
  • 初歩的な質問ですみませんがモノクロ作品なのでしょうか? それともカラー作品なのでしょうか? -- 名無しさん (2021-07-23 04:33:14)
  • ↑モノクロです。1980年代に出た「東宝特撮大全集」なる各作品を10分のダイジェストにしたビデオテープが発売されたことがあり、この作品も当時はまだ「封印」されずに収録されていたのですが、おそらく円盤でも再発売はしてくれないんだろうなあ…ちくま文庫版の小説版でしのぶしか方法はないんだろうけど結末部分がかなり違っているので… -- 名無しさん (2021-08-25 17:13:37)

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