登録日:2011/01/11 Tue 00:29:05
更新日:2024/03/30 Sat 10:32:11NEW!
所要時間:約 20 分で読めます
▽タグ一覧
相棒 青木年男 マンション 橋本一 ネタバレ項目 マッチポンプ 伏線 新キャラ登場回 相棒14 相棒エピソード項目 2016年 season14 上杉祥三 澄音 下山葵 大澤あけみ 中山峻 面通し 警察嫌い 捜査妨害 令状 令状発行阻止 輿水康弘 浅利陽介 最終回への序章 不穏なラスト
だから警察は嫌いだ!
いったい何があなたをそうさせてしまったのでしょうねぇ。
あなたが今後二度と、犯罪に出くわさないことを願っていますよ。それがお互いのためでもあり何より…被害者のためですから。
「警察嫌い」は、2016年2月10日に放送された『相棒14』第15話のエピソードである。
監督:橋本一
脚本:輿水泰弘
その他のスタッフ・協力
エグゼクティブプロデューサー:桑田潔(tv asahi)
ゼネラルプロデューサー:佐藤涼一(tv asahi)
プロデューサー:伊東仁(tv asahi)、西平敦郎・土田真通(東映)
音楽:池頼広
撮影:宮本亘 編集:只野信也(J.S.E)
照明:中島淳司 録音:田村智昭
VE:石川友一 スクリプター:外川恵美子
美術:山崎秀満 装飾:田村康利
セット付:望月寿久 持道具:横山夏
衣裳:江橋綾子 スタイリスト:斎藤真喜子(水谷豊担当)・二村毅(反町隆史担当)
ヘアメイク:山北真佐美
選曲:谷川義春(SPOT) MA:藤沢信介
音響効果:大野義彦 EED:横田勇一
殺陣:二家本辰己(アーバンアクターズ) 劇用車:インペリアル
プログラミング:高山元勝 車輌:ストロングワーク
宣伝:西尾浩太郎(tv asahi)
制作デスク・橋本憲 スチール:阿部昌弘
プロデューサー補:増田玲介 タイトルバック:朝日広告社、岩下みどり(ILCA)
編成:平泉季里子(tv asahi) コンテンツビジネス:白倉由紀子(tv asahi)
ホームページ:メディプレ
助監督:安養寺工 制作担当:松原剛
ラインプロデューサー:今村勝範
協力
アップサイド/紀和美建/東京衣装
東京美工/高津装飾美術/WEST FURIE
東映ラボ・テック/東映デジタルラボ
衣装協力
ピースクラウン/フレックスジャパン
株式会社守屋/アラ商事株式会社/AINEXX/鈴乃屋
TOMORROWLAND/堀越ネクタイ/GRL
ヘアメイク協力
ACSEINE/BOBBI BROUN/株式会社岡本商會
装飾協力
LAVIE/TOSHIBA/タムラ厨房調理器
OAランド/brother/メイジテクノ株式会社
aiohs/IWATSU/警察時報社
持道具協力
GIRARD PERREGAUX/HAMILTON/I Next GE Inc.
RALPH LAUREN/SAN FLAME
JACOB JENSEN/マスダ増/SoftBank
撮影協力
国立市/ラ・カーザ・ニキ/リーガロイヤルホテル東京
しゃぶ禅渋谷店/(株)クレアクレイス/川崎マリエン/天王洲セントラルタワー
制作
tv asahi/東映
←Before 第14話「スポットライト」
→Next 第16話「右京の同級生」
☆目次
概要
後のS.15からS.20までレギュラーとして出演し、警察学校の教官へと異動になった米沢守に代わって特命係の情報提供者になった、サイバーセキュリティ対策本部の特別捜査官・青木年男。
そんな彼が初登場したエピソードであるとともに、ある出来事からS.15以降の流れを大きく決定づけた回でもある。
以下、ネタバレにご注意ください。
あらすじ
殺人事件発生!!…しかし唯一の目撃者は捜査協力を完全拒否!?
3人の被疑者と警察嫌いの目撃者が捜査を翻弄する!
マンションの一室で女子大生・色川真子が絞殺される事件が発生。真子は、広域暴力団の組長・伊縫が愛人に産ませた娘で、伊縫は組対五課の角田から情報を引き出そうとするなど、不穏な動きを見せる。一方、事件に興味を持った亘は、強引なやり方で右京を捜査に引っ張り出す。亘と共に現場にやってきた右京は、向いのマンションから男性が現場を注視しているのに気づく。気になって事情を聞きに行くと、男性は青木という公務員で、犯行の一部始終を目撃したが、警察の捜査に協力する義務はないと、一切の証言を拒否してしまう。そんな中、捜査一課が3人の被疑者を拘束する。しかし、状況証拠を見るとそれぞれが極めて怪しく、犯人の特定は難航。改めて、“目撃者”である青木の存在が重要になってくるが…!?
警察嫌いの目撃者が証言を拒否し続ける本当の理由は?
3人の被疑者の中に真犯人はいるのか、それとも…!?
さらに今回の事件が、右京と亘の関係に大きな波紋をもたらす!
(公式サイトより引用)
登場人物
レギュラーキャラクター
- 杉下右京(すぎした うきょう)
演 - 水谷豊
おなじみ主人公で庁内一の窓際部署「特命係」の係長。警部。東京大学法学部を首席で卒業し、キャリアとして警察庁に入庁したエリートだが、ある事件を機に特命係に左遷。以後、彼の個性的な性格もあって配属された者が次々と退職していったことから「人材の墓場」とも揶揄されていたが、亀山薫・神戸尊・甲斐享の3人だけは長期間在籍していた。
しかし、享が起こした連続傷害事件の責任を問われ、長らく無期限停職中の身だったが、刑務官殺人事件を解決した功績により復職。以降、特命係の部屋に住み着いていた亘と奇妙な共同生活を送る。
警視庁一の変人だが抜群の推理力・知識と決して権力に迎合しない強い正義感を持ち、非公式ながらもこれまでに数々の難事件を解決してきた。
しかし、今回はどうにもアンテナに引っかからなかったからか、珍しく「我々の出る幕はない」と捜査には消極的な姿勢を見せるが…。
- 冠城亘(かぶらぎ わたる)
演 - 反町隆史
法務省刑事局総務課企画調査室長。人事交流で警視庁に警務部付として出向中のキャリア官僚で、特命係の部屋に住み着いており、右京からは「同居人」、伊丹や角田などからは「お客様」という扱いである。
本来なら都道府県警察を指揮監督する警察庁のところ、あえて捜査機関である警視庁の方を希望したのも「現場に興味がある」という理由からで*1、右京や伊丹に警察の捜査手法を尋ねるなど彼なりに勉強している一方、同時に事件捜査を「暇つぶし」「アトラクション」感覚で楽しんでいる節もある。
右京とは対照的に、捜査をしたくてたまらない様子を見せるが、今回彼が取ったある行動が後々大きな影響をもたらすことに…。
- 月本幸子(つきもと さちこ)
演 - 鈴木杏樹
特命係行きつけの小料理屋「花の里」の2代目女将。かつては暴力団の情婦で、夫の復讐を果たした後海外に逃亡しようとするも右京に逮捕された、自他ともに認める「ついてない女」。出所後、右京のすすめを受けて花の里の女将を引き継いだ。
右京から事件のあらすじを聞かされた際には、「杉下さんが燃えそうなシチュエーションじゃないですか?」と彼にこれからどう出るのか尋ねたほか、亘からは「今度食事行きませんか?」と誘われるも、終始困惑した表情を見せていた。
- 伊丹憲一(いたみ けんいち)
- 芹沢慶二(せりざわ けいじ)
演 - 川原和久(伊丹)、山中崇史(芹沢)
警視庁刑事部捜査第一課7係の刑事2人組。巡査部長。捜査権もないのに勝手に捜査に入ってくる右京を疎ましく思っているが、その能力は認めており、渋々ながら協力することも多い。亘に対しては「お客様」ということで、やや慇懃無礼に接している。
第一発見者であり被疑者でもある谷寿一郎を取り調べて自白を引き出したが、同様に他の2人も自白していたことが判明し、内村と中園に叱られる。
右京と亘から青木の存在を聞いて話を聞きに行った際、証拠のビデオがあることを知り、盗撮容疑で裁判所に令状を申請しようとするが…。
- 角田六郎(かくた ろくろう)
演 - 山西惇
特命係の隣にあり、暴力団や違法薬物・拳銃の捜査を行う組織犯罪対策部組織犯罪対策第5課(組対5課)の課長。警視。特命係の能力を高く評価し、さまざまな面で協力する数少ない人物で、よくコーヒーを飲みにやってくる。
隠し子だった娘が殺害されたことから、その父である伊縫から相談を受け、2人に伝える。普段は温厚な彼であるが、暴力団嫌いを公言するなど職務には厳しく向き合っており、それだけに亘があることをした際は珍しく激高する一面を見せ、大木に八つ当たりするほどだった。
- 大木長十郎(おおき ちょうじゅうろう)
- 小松真琴(こまつ まこと)
演 - 志水正義(大木)、久保田龍吉(小松)
組対5課の一員で角田の部下。巡査部長。名前に反し、小さい方が大木、大きい方が小松。
今回は珍しくセリフがあり、2人に伊縫および銀龍会について説明するほか、大木は激高した角田から八つ当たりされる場面も。
- 米沢守(よねざわ まもる)
演 - 六角精児
刑事部鑑識課。巡査部長。角田と同じく特命係に協力的な人物の1人。
鑑識室を訪れた2人に、3人の被疑者について説明する。
- 内村完爾(うちむら かんじ)
演 - 片桐竜次
警視庁刑事部長。警視長。勝手な捜査を行う特命係を目の敵に思っており、体裁や面子を重視する頑固者だが、今回は伊丹たちとの絡みが多く、右京たちに説教する場面はない。
3人とも自白を引き出した伊丹ら捜査一課の刑事たちに対し、「よくやった」と皮肉めいた賛辞を贈る。それが記事にすっぱ抜かれたことでビデオ差し押えの令状申請が許可されなかった際は、火消しの意味でも早く事件を解決しろと伊丹たちに迫った。
- 中園照生(なかぞの てるお)
演 - 小野了
警視庁刑事部参事官で内村の腰巾着。警視正。3人被疑者が挙がるも決定打不足の状況に頭を悩ませ、伊丹たちが3人とも犯行を認めさせてしまった際には、ツッコミを入れるように「3人とも自白を引き出してどうする!?」と怒鳴り、ビデオ押収の令状許可が下りなかった時は、新聞を取ろうした際に内村のお茶をこぼしてしまいつつ、「強制的に押収するわけにはいかないから他の方法を考えろ」と命じた。
- 日下部彌彦(くさかべ やひこ)
演 - 榎木孝明
法務事務次官。検事の資格は持たないものの、前任者の急逝により次へのつなぎとして急きょ例外的に起用された経緯がある。本来であれば検事総長をゴールとするさらなる出世コースが用意されているが、検事の資格がない彼はこれ以上の出世は見込めないため、その分どんな圧力にも屈することなく自らの信念に従って思い通りの行動を取っている*2。
元部下である亘とはしゃぶしゃぶを食べに行くほどの親しい仲。彼が警視庁で自由に行動できるのは日下部の後ろ盾があってのことで、互いに信頼関係にある。
亘から幸子のことを聞かされた際には「お前は女の趣味が悪い」と釘を刺しつつも、その表情から「よほど充実な日々を過ごしているみたいだな」と感心している。
その後、偶然にもあることをしたばかりの亘に電話をかけ、「ほどほどにしろ」と忠告した。
ゲストキャラクター
- 青木年男(あおき としお)
演 - 浅利陽介
区役所に勤める公務員。彼のデスクの反対側には「出納係長」のプレートがあることから、出納係所属と思われる。
前述の通り初登場で、ある意味今回の主役である。東京都大田区大森東6丁目12-4にある「レガロ大森」の一室に在住。
事件を目撃していたことで右京と亘や捜査一課に協力を求められるが、「捜査に協力しなければならない決まりはないし、協力を断ったところで罰せられるわけでもない」という屁理屈をつけ、警察への協力を一切拒否する警察嫌いの男。
しかし、決して嫌い一辺倒というわけではなく、捜査に協力しない割には暴力団に因縁つけられた際に助けを求めようとするなど、警察という存在を自分にとって実に都合よく利用しようとしている側面も持ち合わせており、極めて利己的な性格。
とはいえ、警察の捜査が困窮しているのを嘲笑し、日常的に他人の部屋をのぞき見て、食事をしながらその映像(殺人の一部始終)を楽しむなど、警察嫌い以前に反社会的でモラルの低い言動が目立つ。
その裏には、警察官である彼の父親が関係しているようだが…。
浅利氏はS.6-10にも出演している。
- 色川真子(いろかわ まこ)
演 - 澄音
協和堂大学政経学部3年生で、今回の事件の被害者。 1994年9月17日生まれ。21歳。両性愛者。伊縫の隠し子でもある。
2月6日~7日の午後11時~午前1時の間に風呂上がりのところを何者かによって絞殺され、自室で遺体になって発見された。
大田区にある高級マンションの4階に住んでおり、週に2回ほどペットショップでアルバイトするなど、女子大生の割にはなかなか充実した生活を送っていたという。
部屋は無施錠だったらしく、カーテンを開けたまま生活していたことからもプライバシーやセキュリティにはやや甘かった節がある。
ちなみに、殺人事件の被害者とはいえ生前のシーンは殺害される場面のみと非常に少なく、音声もなかったことから彼女が発言するシーンはない。
- 伊縫剛(いぬい ごう)
演 - 上杉祥三
伊縫組組長。広域暴力団「銀龍会」の若頭でもある。
彼自身何かしら思うところがあったのか、正妻との間に子どもがいなかったからか、愛人に産ませた娘である真子を認知するなど愛情を持っており、彼女の死が気になって角田から情報を聞き出そうとするなど、事件の裏で不穏な動きを見せる。
口調こそ穏やかで感情を露わにする場面はなければ犯人への復讐心も持っておらず、あくまで事件解決を心から願うなど基本的には温和でその親心も本物ではあるが、やはり組長としての凄みはあり、他者に対して常に強気な言動を隠さない青木もさすがの彼には恐怖していた。
上杉氏はS.6-18にて、特命係に高圧的な態度で接する東調布署の刑事役でも出演しており、今回とは真逆な役柄と言える。後のS.19-18にも科学警察研究所(科警研)の主任研究官役で出演しており、やはり彼とは正反対な役柄である。
また、上杉氏の妻である長野里美氏も後のS.16-12に出演している。
- 谷寿一郎(たに じゅいちろう)
演 - 下山葵
協和堂大学政経学部3年生で、第一発見者。真子の同級生。1994年10月8日生まれ。21歳。
いわゆるアッシー君だったことから被疑者の1人に数えられ、伊丹と芹沢から取り調べを受けるが…。
- 森下澪(もりした みお)
演 - 大澤あけみ
被疑者の1人。協和堂大学社会学部3年生で、真子の恋人。1994年4月18日生まれ。21歳。少なくとも同性愛者なのは確かだが、異性愛もあるかは不明。
真子とは不仲のようであり、別れ話がこじれたことから殺害したのではないかと疑いを向けられるが…。
- 石川圭三(いしかわ けいぞう)
演 - 中山峻
被疑者の1人。真子のバイト先であるペットショップの常連で、芸能プロダクション社長。1967年11月1日生まれ。48歳。
谷よりも早く遺体を発見していたものの、SM道具を持っていたことから疑われることを恐れて逃走したとのことだが…。
中山氏はS.9-2にも出演している。
- 捜査一課の刑事たち
演 - 藤原シンユウ・田中啓三・児島功一・千葉誠樹(取り調べ組)、上野龍之介・山中良弘・太田了輔(面通し組)
捜査一課の刑事たちで、伊丹・芹沢の同僚。字幕でも名前は確認できないため、順に刑事A~Gとする。CとDは2人も眼鏡を着用している。
2人と同じようにAとB・CとDのコンビで行動しており、前者は澪を、後者は石川をそれぞれ取り調べるが…。
右京による「面通し」の際にはE・F・Gの3人も登場し、Eから順に谷・澪・石川と一緒に歩いた。
なお、田中氏はS.11-11にも出演しており、S.15-10と劇場版IVでは同じく捜査一課刑事の吉田剛役で出演しているが、今回の刑事と同一人物かは不明。
児島氏はS.4-最終話・S.9-7・『X DAY』にも出演している。PS.3と後のS.14-最終話・S.20-17でも名無しの刑事役で登場しており、S.15-10以降は同じく捜査一課の刑事である綿貫肇役でたびたび登場することになるが、いずれも今回と同一人物かは不明。
千葉氏はS.1-1, S.4-11, S.6-8, 『鑑識・米沢守の事件簿』, S.10-4, S.12-1, S.13-11にも出演しており、後のS.15-7と劇場版IVでも同じく捜査一課刑事役で出演しているが、やはり同一人物かは不明。
上野氏と太田氏はS.13-10にも出演している。山中氏はS.13-1と後のS.18-11でも同じく捜査一課刑事で出演しているが、これまた同一人物かは不明。
- 青木の上司
演 - 金井節
青木が務める区役所の出納係長。名前は言及されていないが、名札を見る限りでは「○谷登」とも読める。
彼には親しげに接しているが、彼のひねくれた言動にはやや呆れている様子。
- 色川真子を殺害した犯人
風呂上がりの真子と出くわし、ガウンの紐で首を絞めて殺害した今回の事件の犯人。その素性は不明だが、ただ1人青木だけには犯行の一部始終を目撃されていた。
捜査一課は顔見知りによる犯行、あるいは入浴中に窃盗目的で侵入した見ず知らずの何者かの犯行の両面で捜査を進めている。
- その他
前川和也(伊縫組構成員)、宇都宮一基、草野速仁、芸優、テアトルアカデミー、古賀プロダクション、ウェスタ、オフィスエルアール
草野氏は後のS.15-3にも登場する。
用語解説
- 銀龍会
広域暴力団。S.13-13では朝井(演 - 土平ドンペイ)や安田(演 - 平塚真介)をはじめとする構成員が数名登場しており、伊縫剛は組の若頭である傍ら、直系の中でも武闘派集団として知られる「伊縫組」を率いている。
後のS.18-12には組長の黒川龍蔵(演 - 鈴木隆仁)をはじめ、息子でもある若頭の黒川龍臣(演 - 黒石高大)、構成員の相良治夫(演 - 荒谷清水)や河野(演 - コガケースケ)などが登場しており、「金狼会」とは対立関係にある。
その後もさまざまな形で登場しており、少なからず本作の裏で暗躍している模様。
- アッシー君
バブル期に流行した言葉で、本来は「女性のために車を運転する人」の意味。転じて「恋人や恋愛対象ではないが、交友関係を維持していた男性」を指しており、作中では「思いを果たさず悶々としている男子」という解釈になっている。
いずれにしても2016年の放送当時ではほとんど死語と化しており、懐かしいと感じた視聴者も多かった様子。
詳細なあらすじ
早期解決を心から願う父親
2016年2月7日の朝、大田区のあるマンション前には多くの警察車両が並び、刑事や鑑識たちでごった返していた。何か事件が発生したことを思わせるには十分な現象である。
覆面パトカーを降りた警視庁刑事部捜査一課7係の伊丹憲一と芹沢慶二は、白手袋をつけながら階段を上って現場へと向かう。
4階の部屋の窓がブルーシートで覆われ、ベランダを刑事や鑑識たちが慌ただしく動き回っている。
その様子を、向かいのマンションからスーツ姿のサラリーマン風の男がネクタイをしながら眺めていた。
現場では、先着していた鑑識の米沢守が写真を撮るなどして検証を行っていた。その傍らには、ナイトガウン姿で前をはだけ、足をむき出しにした姿勢で倒れている若い女性の遺体が。到着した伊丹たちに、米沢は被害者について説明する。
名前は色川真子、21歳。協和堂大学政経学部の3年生である。
近くには外れたカーテンがあり、被害者が首を絞められた際にとっさに掴んだのだと推測された。
部屋の中を物色した2人は、ハンガーラックに洋服がびっしりつり下がっているのを見て、女子大生の割に金回りがいいと舌を巻く。
一方、区役所では先ほど事件をのぞいていた男が書類を見ていた。青木年男という彼は上司から事件の話を聞かれる。やはり被害者の向かいのマンションに住んでいるという。
その様子は妙に不機嫌そうだったが…。
その頃、組織犯罪対策部組織犯罪対策第5課(組対5課)課長の角田六郎は、あるホテルのラウンジで食事をしながら男性と密会していた。
捜査への協力を求められていたようだが、「あのな、軽はずみに捜査情報を流すわけないだろ。それにだ、そもそも我々のヤマじゃないからな」と拒否する。
「本当に召し上がりませんか? うまいですよここの」とカレーを食べる男性に対し、角田は「俺はこれで結構。ヤクザと食う飯は消化に悪い」ときっぱり断り、コーヒーで十分な態度を示す。どうやら相手は暴力団員のようだ。
「僕、角田さんのそういうところ、好きです」「俺は、ヤクザは大嫌いだ」とやりとりが続き、ヤクザは「親父さんがぼやいてますよ。昔はそちらとこちら、持ちつ持たれつそれなりに平和にやってきたのに」と残念そうな表情を見せる。
「それより」と角田は本題に入る。
なんで今朝の事件の捜査状況が気になるんだ?
勝手に懐いて気を許すのは勝手だが、返答次第だとそっちのそれなりに痛い腹を探ることになるぞ。
彼はヤクザがなぜ事件の捜査状況に興味を示しているのか問いただす。相手は「変に勘繰らないでくださいよ。まったく個人的なことですから」と言いつつ、こう答えた。
殺された色川真子ですけどね…
ああ…
実は…僕の…
はぁ!?
驚きのあまり、角田は思わず大きな声を出しながら立ち上がり、周囲にいた客たちが一斉に彼を囲む。
どうやら全員組員だったようだ。
娘?
12時55分。警視庁一ヒマな窓際部署「特命係」の部屋にて角田が昼食をとっている。法務省から出向中の同居人・冠城亘が聞き返す。
どうやら真子は、角田と話していた暴力団員、それも組長の娘であるという。正確には愛人に産ませた子のようだが、認知しているかられっきとした娘であるとのこと。
そこに角田の部下の大木長十郎と小松真琴が入ってきて説明する。
角田と話していたのは、伊縫組組長の伊縫剛。広域暴力団「銀龍会」の若頭であり、伊縫組は直系の中でも武闘派集団として名を馳せているらしい。
娘が殺されたとなれば、捜査の進捗状況が気になっても無理はありませんねぇ。
と係長の杉下右京が感心し、角田も「早期解決を心から願ってるとさ。ヤクザも人の子、人の親だ」と同調する。
しかし、亘は「その組長、よからぬことを企んでいるんじゃありません?」と、犯人への復讐を考えているのではないかと不安を表す。角田も一瞬そのような懸念がよぎったようで、「挙がったホシに万が一のことがあったら、真っ先にお前を疑うぞ」と念のため釘を刺したというが、右京は「もしも復讐などたくらんでいるとしたら、そもそも課長と会ったりしないでしょう」とその可能性を否定する。
復讐でないのであれば、その額面通り受け取っていいということ、つまり純粋に事件の早期解決を心から願っていることになる。「事件を担当している捜査一課のみなさんによろしく伝えてくれ」と言っていたが、せめてもの気持ちとして何か差し入れをしたいという申し出はさすがに断ったという。
なら、我々も協力しますか?
はい?
組長さんの真摯な願いを一刻も早く叶えてあげるために、我々も捜査に協力しましょうって言ってるんです。
組長の真摯な親心に同情したからか、亘は右京に対し我々も捜査に協力しようと提案する。
しかし、
事件捜査は君の暇つぶしじゃありませんよ。
右京はあくまで「暇つぶし」感覚で捜査にのぞもうとする亘の態度を批判する。
だが、
右京さんだって参加したいでしょう?
ここのところ暇だったし、素敵な脳細胞が衰えちゃいますよ。
と、亘は全く聞く耳を持たない。そんな彼に対し、「いいですか?」と前置きした上で、
今後、僕の気持ちを勝手に推察するようなまねは慎んでください。
あっそれから、僕の脳細胞の心配も、結構です。
と、やや真剣な口調で忠告する。
亘は手で虫眼鏡を作り、右京の脳細胞をのぞき込む仕草をしながら「失礼しました」と詫びる。右京が振り向いたので、慌ててそっぽを向く。
警察嫌いの男
その夜、被害者の現場にて、右京と亘が犯行の様子を推理している。
真子は風呂上がりに何者かに襲われ、ベランダから助けを呼ぼうとするも、背後からガウンの紐で首を絞められる。そのまま後ろへ引きずられる形で部屋の奥へ戻され、掴んだカーテンが外れて床に落ちたとされた。
死亡推定時刻は、昨夜の午後11時から午前1時までの2時間。そんな夜中に部屋にいたとなると顔見知りの犯行である可能性が高いが、犯行が風呂上がりであることから、入浴中に見ず知らずの人物が侵入したことも否定できない。
「やっぱり、第一発見者はシロなのかな?」と亘はうなる。第一発見者を疑うのが捜査のセオリーではあるが…。
第一発見者は、被害者の大学の同級生。彼女を迎えにきたがなかなか降りて来ず、携帯にも出ないので部屋に上がってみたら、死んでいる真子を発見したとのこと。
もっとも、迎えにきたと言っても彼氏というわけではない。思いを果たさず悶々としている「アッシー君」であるらしく、その欲求不満がついに爆発して犯行に至った可能性もあると亘は推測する。
しかし、
その程度の想像は一課もしてると思いますよ。いずれにしても、彼女の交友関係を丹念に当たっていけばそう時間はかからずに、犯人検挙! ということになるのではありませんかねぇ。
つまり…
我々の出る幕はないということですよ。
右京はあいも変わらず、捜査に消極的な態度を崩さない。
捜一に任せておけばいい。
少なくとも僕は君のように、遊園地のアトラクションにでも参加するような了見で事件に取り組むことはできませんねぇ。
右京は半ば呆れながら亘の態度を非難するが、彼は確かに事件捜査を楽しんでいることは認める。
まあまあまあまあ確かに。事件捜査を楽しんでることは認めます。
全てが新鮮で刺激的で…面白い。
浮ついた気持ちで取り組んでいると、いつか手痛いしっぺ返しを食らうことになりますよ。くれぐれも気をつけてください。
再度亘に釘を刺した右京。すると、向かいのマンションの一室に明かりがついたことに気がつき、中からスーツ姿の男が出てきたのを発見する。
その人物こそ青木で、こちらの様子を凝視していた。
気になった右京は、さっそく青木のもとを訪ねることに。その道中、なぜ気になったのか亘が聞く。
どうしてわざわざ?
いいじゃありませんか。ついでです。
なんかピンときました?
そうではありませんが、いささか気にはなりました。
こっちを見てたから?
ええ。
確かに事件のあった部屋だからということもあるが、右京はある点に気づいたという。
例えば、洗濯物を取り込むとか置いてある鉢植えの手入れをするとか、そういった用事のためにベランダへ出てきて、「たまたま事件のあった部屋の明かりが目に入ったのでこちらを見た」というのならばそれほど気にはならなかったかもしれない
しかし、このマンションの住人は最初から明らかに、あの部屋を見るためにベランダへ出てきた
住人の部屋の明かりがともった時からずっと見ていたから、それは間違いない
やじ馬根性旺盛で事件に興味があるからずっとベランダを見張っているのだろうか。そうなると右京たちが知らない情報を知っている可能性もある。
青木の部屋を訪ねた2人。彼は事件のことを当然知っていたといい、「お茶でも淹れますから上がりませんか?」と快く中へ招き入れる。
「で、何が聞きたいんですか?」と尋ねる青木に対し、右京は「むしろ、あなたの方が何か話したいのではありませんか?(ダイニングに招かれてお茶まで用意されて)こんな風に歓待されるのは、そういうことではないかと…」と聞き返す。
すると青木は、犯行の一部始終を目撃したと答える。向こうの部屋のベランダからあの部屋がよく見えるのだといい、犯人も目撃したという。
「犯行位置の一部始終を目撃したなら、どうして通報しなかったんですか?」と亘が問う。すると、
逆に聞きますけど、どうして通報しなきゃいけないんですか?
と、青木の口から耳を疑うような一言が飛び出す。
亘は真剣な声で「殺人事件を目撃したんですよ? ならば通報するのが…」と反論するが、
国民の義務とでも言うんですか? 我が国には犯行を目撃したら通報しなきゃいけないという決まりでもあるんですか?
青木は亘の発言を遮るように反論し、席を立って彼に詰め寄りながら答える。
いえ、そういう決まりはありませんねぇ。
右京の発言を受け、青木は亘に「でしょう?」と余裕の表情を見せつける。
とはいえ、今さら通報についてあれこれ言っても仕方がない。「改めてお願いしますが、あなたの目撃談を詳しくお聞きすることはできますかね?」と頼む右京だったが、青木から「それって、捜査に協力してほしいということですか?」と返される。もちろん、警察の捜査に協力するという義務もない。
ですよね? だから僕の答えもノーです。捜査には協力しません。
世間一般、何となく警察の捜査には協力しなきゃいけないみたいに思ってるけど、そんな決まりはない。協力を断ったところで、罰せられるわけでもない。
断固として協力を拒否する青木。その偏屈な態度とは裏腹に、特に警察に何か恨みがあるわけではないという。
これ以上は時間の無駄と、2人はその場を立ち去ろうとする。そんな彼らに青木は、「お疲れ様です。1日も早い犯人検挙を期待しています」と慇懃無礼に労った。
3人の被疑者
18時36分。特命係の部屋へ戻った2人。角田がこの事件を大々的に報じる「東京サーチ」の夕刊紙を読みながら待っており*3、「どうだった? なんか収穫あったか?」と尋ねられる。亘は「自称目撃者」として青木の存在を伝える。
もっとも、本当に目撃したかどうかは分からない。単に警察をからかっているだけの可能性もある。
一方、行きがかり上やはり気になった角田はそれとなく捜査一課のことを監視していたといい、早くも被疑者が挙がったという。
それも…3人。
僕が犯人だなんて、そんな…。
警察はいったいどこに目つけてんの?
俺はやってない! 断固やってない!
取調室では、3人の男女が無実を主張していた。
1人も被疑者が挙がらないのも困るが、たくさん挙がればいいってものでもない!
どこも決定打不足か…。
捜査本部にて、刑事部参事官の中園照生はこの状況に頭を悩ませる。いずれも状況証拠的にはクロであるらしく、伊丹だけでなく他の刑事たちも同意する。
状況証拠的にはクロが3人、しかし真犯人は1人である。中園は「困ったもんだな…」と頭を抱える。
「なんとか絞り上げてゲロさせます(=自白させます)」と意気込む芹沢に対し、「自白偏重は冤罪の元だぞ。気をつけろ」と刑事Bが注意する。2人は「そっちこそ気をつけてください」「何を?」と張り合うが、「まあまあ。仲間内でいがみ合っても仕方ねえだろ」と刑事Dが仲裁に入り、「どいつがホンボシ(=真犯人)か、いずれはっきりさせるさ」と意気込む。
19時36~37分ごろ。鑑識課にて、右京と亘は米沢から被疑者3人のことについて聞かされていた。1人は案の定、第一発見者であった。
名前は谷寿一郎、21歳。被害者の同級生である。「セオリー通りですね」と亘はつぶやきつつ、次の人物に目を向ける。
2人目は森下澪、21歳。被害者の恋人である。「恋人?」と聞き返す亘に「ええ、同性の恋人。異性の恋人は現在いなかったようですが…」と米沢が答える。
どうやら被害者は両性愛者だったようだ。「男も女もなんて、人生倍楽しそうですね」と羨ましそうに述べる亘だったが、右京から「さあどうでしょうねぇ? 苦悩も倍に増えるのではありませんか?」と指摘される。
3人目は2人に比べて年齢が高い人物である。名前は石川圭三、48歳。被害者が週に2回程度アルバイトしていたペットショップの常連であるという。もっとも、働いていたのは特に金に困っていたわけではなく、趣味がてらとのこと。
出勤時には必ず現れており、かなり仲もよくバイト終わりに食事に行くこともたびたびだったそうである。ちなみに職業は芸能プロダクション社長というが、米沢は自称と見ている。
3人が3人とも、夕べは犯行をうかがわせる行動をとっていたという。
なんで嘘ついたんだ?
谷を取り調べる伊丹と芹沢は、彼のある嘘を指摘する。
そんな…。だから、何度も言ってるじゃありませんか。
何度だって聞くんだよ。
そう。正直に犯行を認めるまで。
そんな…。
谷が彼女の部屋に上がったのは、朝遺体を発見した時が初めてだと証言していたが、実は前日の夜に彼女の部屋に上がり込んでいたことが判明する。トイレを借りて用を足すためだけだったというが、ではなぜ彼女の着ていたガウンに谷の指紋と汗があったのか。
答えは簡単。バスルームにあった彼女のガウンに頬ずりしたから。トイレを済ませた後、バスルームでそれを見つけて思わず…。
ムラムラっと来ちゃったか。
伊丹の言葉に谷は唾を飲み込み、俯きながら股間で両手を組み合わせる。
そもそもさ、トイレなんかコンビニで借りてもよかったわけだし、夜中にわざわざ女性の部屋に上がり込むって、なにか邪な目的があったんじゃないの?
と芹沢に追及されるが、否定する。
別の部屋では、澪が刑事AとBから取り調べを受けていた。Aは彼女が被害者に送ったというメールを提示し「何回も確認して申し訳ないけどね、これは間違いなく、君が色川真子に送ったメールだよね?」と確認する。「声に出して読んでくれる?」と要求するがなかなか読もうとしないため、Bが「早く読め!」と怒鳴って迫る。
そこには『おまえ、ぶち殺してやるかな!』と書かれていた。
だが、
こんなの本気なわけないでしょ?
と、あくまでその時の勢いで本当に殺したわけではないと一蹴するが、「さあ、どうかな? 現実に色川真子は殺されてるからね」と反論される。
実は、澪は昨夜被害者の部屋を訪れていた(())。私物を取りに行っただけで、入浴中だったから会わずに帰ったという。彼女は「何べん言ったらわかるの?」と呆れ気味だが、Aはなおも「別れ話がこじれて殺害に及んだ。実はそういうことなんじゃないの?」と追及する。
だが、澪は「違うってば!」と断固否定する。
刑事CとDから取り調べを受ける石川。Cは「部屋で遺体を発見したならば、どうしてその場で通報しなかった?」と指摘するが、彼は「疑われるのが嫌だったんだよ。同じこと何度も言わせるなよ!」と主張する。もちろん、警察もむやみに疑ったりするわけではないが、石川には疑われる心当たりがあった。
なぜなら、彼は被害者の部屋を訪れる前に、街のショップでSM道具をどっさり買い込んでいたからである。彼女が興味を持っていたから一度試してみることになったらしく、ただの遊びだったと主張する。
だが、真子の部屋に行ってみると、彼女はすでに息をしていなかった。
俺は怖くなってその場から逃げ出した。今となっては失敗だったと思ってる。通報すべきだった!
石川は無実を主張するも、「…というあなたの言い分はもう耳にタコ。そろそろ…真実を聞かせてくださいよ」と効果はなく、「それが真実だよ~」と肩を落とす。
特命係行きつけの小料理屋「花の里」にて、亘が感想を述べる。
それぞれ怪しいっちゃ怪しいですけども、どれも「帯に短し襷に長し」って感じですかね。
いずれにしても、3人が3人とも怪しいが決定打に欠けており、非常に悩ましい状況である。
で? どうなさるんですか?
女将の月本幸子が右京に尋ねる。
どうなさるとは?
決定打のない被疑者3人。杉下さんが燃えそうなシチュエーションじゃないですか?
幸子は右京がどう打って出るのか興味を示すも、彼はあいも変わらず、
僕がしゃしゃり出るまでもなく、早晩犯人は絞り込まれますよ。そのための取り調べですから。
と、傍観の立場を崩さない。その様子を見て、さすがの亘も「やはり、我々の出る幕はなしって感じですかね」と半ば諦めつつある。
「そうだ」と切り出した亘は、「女将さん、僕と今度食事でもどうですか? できればサシで」と幸子にアプローチする。突然の誘いに、幸子は困惑した様子。亘は右京を意識しつつ「どなたか、決まった人がいらっしゃらないのならば、ぜひ」と誘うも、「ああ…」と幸子は苦笑する。
回想。あるしゃぶしゃぶの店にて、亘が法務事務次官で元上司の日下部彌彦と会食している。彼から幸子のことを聞かされたようで、日下部は「美人なのか」と尋ねる。
美人ですよ。俗に言う「きれいなバラには棘がある」ってやつですかね。それも…とびきり鋭い棘が。
よせよ。
よせって?
お前は女の趣味が悪い。
日下部が亘の女癖を指摘する。
ちょっかい出したりしませんよ~。杉下さんの、ですから。たぶん…うん。
彼は小指を立てながら、あくまで幸子は右京のものであると否定する。
そんなこと一向に気にするお前じゃないだろ。
「やめてください。そうやって人の獲物を横取りするハイエナみたいに…」と主張する亘に対し、日下部は「横取りするのはライオンだ。ハイエナはむしろ、優秀なハンターだそうだぞ」と雑学を披露する。
日下部さんといると、いろいろと勉強になります。
楽しそうだな。よほど、充実した日々を過ごしているみたいだな。
亘の生き生きとした表情から、日下部は楽しい毎日が過ごせていて何よりだと感心する。
現実に戻り、再び「花の里」にて。「食事でしたら、ここでよろしいんじゃないですか?」という幸子の提案を受け、亘は「じゃあ貸し切りにして、僕とサシで。それで手を打ちましょう」と決めた。
その様子を、右京は涼しい顔をしながら眺めていた。
証拠のビデオ
次の朝、伊丹たち6人は刑事部長の内村完爾から呼び出されていた。彼は拍手をしながら伊丹たちの"功績"を称賛する。
さすがだ! 見事としか言いようがない。優秀なる諸君に、惜しみない拍手を送ろう。この短時間に自白を引き出すとは。
しかも…被疑者全員から。
3人とも犯行を認めさせてどうする!? 犯人は1人だけで十分なんだ!!
ツッコミを入れるように中園が怒鳴る。なんと、3人全員から自白を引き出してしまったらしい。
これでは捜査は振り出しに。
まさしくカオス。なんか楽しくなってきましたね。
8時38~39分。亘はコーヒーを飲みながら、この混沌とした状況に笑みを浮かべる。
そこへ「おはようございます」と伊丹と芹沢がやってきた。角田の存在に驚きつつも、亘自慢のコーヒーをオーダーする。どうやら角田のようにコーヒーを飲みに来たらしい。「お安いご用ですよ」とさっそく準備に取りかかる。
そして話題は事件の話へ。犯行を否認していた被疑者3人が一転して容疑を認めたというただならぬ状況に亘は、
右京さんだって参加したいでしょういろいろ噂には聞いていましたが、取調室という密室で何が行われているのか、想像するだに恐ろしい気がします。
と取り調べの怖さを述べる*3。
芹沢は、
無理やり自供させてるわけじゃないんすけどね~。
あくまで任意の自供であるとやんわり否定する。
そこで右京は、
ひとつ提案ですが、この際担当を変えて、取り調べをやり直してみたらどうですか?
と提案する。それぞれ自分の挙げた被疑者が真犯人だと信じるあまり、どうしても取り調べにも無理が出てしまう。だから今度は担当を入れ替えて、むしろ「この人物は真犯人ではない」という視点から、改めて取り調べを行ってみるのもいいだろう、と。亘も「それ名案。仲間の手柄をつぶすとなるとより一層力も入るでしょうね」と同調する。
だが、
貴重なご意見、ありがたく承ります。
いいえ。
がそんなことより、目撃者を発見したそうで…。
伊丹は2人の提案を丁寧にスルーし、青木の存在を出してきた。どうやら角田からの情報のようだ。
まったくなんでもかんでも首突っ込んでくるんですね~。
やや呆れ気味な表情を示す芹沢に対し、亘は、
我々も微力ながらご協力と思ったんですけどね。早々と被疑者が挙がり、これは我々の出る幕はないねとゆうべ話したところなんです。
でも被疑者3人そろって犯行を自供したとなると、振り出しですね。
と、昨夜の花の里での会話を述べる。
伊丹たちは青木に面通しをさせるつもりらしい。2人は青木が警察に一切協力しない旨を述べるものの、伊丹は、
ハッハッハ…そんなことで天下の警察が引き下がってどうするんです、かっ?
と、やや及び腰な姿勢の2人に自信たっぷりの態度を示す。芹沢は、なぜ青木が警察に非協力的な態度を取るのか推測する。右京たちはひと通り彼の身辺を調べたようだが前科前歴はなく、警察に何か恨みがあるというわけではなさそうだという。
一方、角田は、
いや、そういう性格なんだよ。いるだろう? やたらに逆らいたがる天邪鬼なやつ。理由もなく国家権力を敵視してて、反体制を気取ってる輩だよ!
と自身の見解を述べる。
青木のもとを訪れた4人。彼はため息をつきながら姿を現し、「困るんですよね。警察手帳振りかざして職場に来られても」と不満を募らせる。右京と亘には会釈しつつ、「警察手帳見せれば何でも自由になるみたいに勘違いしてません?」と伊丹と芹沢に早くも文句を言う。
前置きはほどほどに、さっそく事件の話へ。伊丹は被疑者が挙がったから確認してほしいと頼み込み、芹沢も丁寧な態度で申し出る。
しかし、やはり青木は「嫌です。まっぴらごめんです」と断固拒否。その様子に、強気だった2人の自信がみるみるなくなっていく。「他を当たってください」と言い残して立ち去る青木に、
本当に目撃したんですか?
と亘が挑発する。確かに目撃したのかもしれないが、実際には結構距離がある。犯人の顔もしっかり見たと言っていたが、実はそれほどはっきり見てないのではないか。「挑発したって無駄ですよ」と反論する青木だが、亘はあくまで事実確認としつつ、要するに証言しようにも自信がないと推測する。
すると、彼の口から驚くべき一言が。
目撃だけじゃなくて、ビデオもありますから。
ビデオ?
ビ…。
その場にいた4人の表情が変わる。なんと、犯行の一部始終を撮影したビデオがあるという。ズームを駆使して撮ったから、犯人の顔もばっちり映っているとのこと。青木は勝ち誇ったような表情で去っていく。
その様子を見ていた右京は、何か考えているような表情をしていて…。
職場に戻った青木は、「警察来てたよね? 何の用?」と上司から声をかけられる。
あいつら所詮ハエですよ。う○こ発見するとその周りをブンブン飛び回ってうるさいったらありゃしない!
彼はハエみたいに自分にまとわりつく警察を強く非難する。自分をう○こであると言っていることは否定しないようだ。
上司は「それはちょっと言いすぎじゃないかい?」と注意しつつ、「確か青木くんのお父さんも警察官だったよね?」と尋ねるが、青木はそれに答えることなくノートパソコンを開いて仕事を再開した。
一方、オープンカフェで休憩中の4人。伊丹と芹沢は、ビデオの存在を知って呆然としていた。
ビデオか…。
もし本当なら、決定的な証拠だよな…。
いずれにしろ、このまま放っとけねえな。
ええ。
そんな2人に対し、「こういう時、警察はどうするんですかね?」と聞く亘だが、「教えませ~ん」「捜査協力はお気持ちだけで結構で~す」と逃げられ、「聞きたくありませ~ん」と返した。2人に逃げられた彼は、右京に尋ねる。
恐らく、ビデオを押収するつもりでしょう。
伊丹たちはビデオを押収しに行くようだ。亘は「押収? 捜査協力を拒んでるからって、無理やり取り上げることなんかできないでしょう」と反論するものの、右京は「もちろん。ですから令状を取ってですよ」と説明する。
しかし、
どんな容疑で令状取るっていうんですか? 彼は別に犯罪を犯してるわけじゃないでしょう。
と、亘は特に犯罪を犯していない青木からどうやってビデオを押収するのか疑問に思っている様子。そんな彼に対し、右京は、
さしずめ、盗撮容疑か何かで、裁判所に令状を申請するのではありませんかねぇ。
犯罪を目撃した時、とっさに撮影ができたということは常に機材を準備し、日常的に盗撮をしていた疑いがあるということで…。
と独自の見解を述べる。もっとも、それで裁判所が令状を発行するかどうかは分からないともつけ足す。
汚くありません? そういうのって。
いくら重要とはいえ、一般人に何らかの容疑をかけて無理やりにでも証拠を押収しようとする警察の手法に、亘はなお納得がいかない様子。右京は「証拠の重みから考えれば、なりふり構っていられないということでしょうかねぇ」と述べつつ、「まあ僕はそういうやり方は好みませんがね」と、あまり賛同していない様子も見せる。お前が言うな。
右京さんならここは、正攻法で行くでしょう?
はい?
協力を拒んでる目撃者なんか当てにしない。仮にどんなに決定的な証拠を握っていようと、そんなものは無視して別の証拠を挙げる。お得意の推理で。
その方が賢いかもしれません。彼は警察が困っているのを見て喜んでいるわけですから、相手にすればするほど、向こうの思うつぼです。
右京の推理に期待する亘。右京は「確かに、君の言う通りですねぇ」と認めつつも、
しかし、あからさまにああいう態度を取られると、意地でも一泡吹かせたい、そういう気分になりますねぇ。
どうにかして青木に目にもの見せてやりたいと意気込む右京。「大人げない」と亘にからかわれるも「君に言われたくありませんよ」と即座に反論。
当の亘は、何のことやらと言わんばかりの表情でそっぽを向いた。
特命係の部屋では、角田が「東京サーチ」の夕刊紙を読んでいた。帰ってきた2人にその内容を見せる。
そこには、「美人女子大生殺し 浮上した容疑者3名全員犯行を自供?」などと被疑者が3人とも自白した旨が記載されていた*4。どうやらすっぱ抜かれたようだ。記者クラブに入っていない独立系の新聞であるらしく、他の紙には記載されていない。
幸い被疑者の人数だけで、それ以上の個人情報は載っていない様子。冤罪をうたっている以上、さすがに詳しい情報は載せられないのだろう。
その夜、青木はざまあ見ろと言わんばかりの嘲笑をしつつ、部屋で例の新聞を読みながら弁当を食べていた。ビデオカメラからSDカードを抜き出してパソコンに接続し、マウスを操作して犯行のビデオを再生する。
やはり彼は真子の部屋を隠し撮りしていたようである。そこには窓のそばで誰かともみ合いになり、後ろから首を絞められる彼女の姿が映っていた。彼は食事をしながら食い入るように犯行の一部始終を見ている。
そこには犯人の顔まで詳細に映っていたようだが…。
亘の捜査妨害
翌朝、刑事部長室にて。開口一番に芹沢が聞き返す。
下りなかった?
どうしてですか? あの…いつもいろいろと便宜を図ってくれてる裁判官ですよね?
なんと、青木のビデオを押収するための令状許可が下りなかったらしい。いつもは何かと便宜を図ってくれる裁判官の態度の変化に、伊丹も疑問を隠せない。
内村は、昨日の新聞が影響していると推測する。
確かに、この記事がさい…あっ…
中園が新聞を取ろうとした際、内村のお茶を取る動作と重なってしまい、こぼしてしまう。
裁判官の心証に影響している可能性はあると思います…。
いずれにしても、許可が下りなかった以上は強制的に押収することはできない。「その証拠にこだわるなら他の方法を考えろ」と伊丹たちに命じる。
内村も、「それも早急にだ。火消しの意味でも、一刻も早くホンボシを特定しろ」と濡れた夕刊紙を芹沢に投げつけ迫る。
その報は右京と角田の耳にも届いていた。それぞれ紅茶とコーヒーを飲みつつ、「裁判官の判断だから仕方がない」と2人は残念そうに述べる。
角田と入れ替わりに亘が登庁してきた。名札を返し、コーヒーを淹れながら、右京からその知らせを聞く。
そうですか…令状の発行拒否られましたか。
「どうすんのかな? 伊丹さんたち」と捜査一課を一瞬心配しつつも、「まあよそんちのことは放っといて、算段はつきましたか?」と右京に尋ねる。
一晩考えましたが、やはり君の言う通りいささか大人げないかと…。
右京には青木を目にもの見せられる方法があるというが、あまり乗り気ではない様子。亘は「今さらそりゃないでしょう? 右京さんがどう出るのか楽しみにしていたのに」と不満タラタラである。「それはおあいにく様でしたね」と語る右京に、彼は意味深なことを言う。
そういうことだと、せっかくのお膳立てがなぁ…。
お膳立てとは?
お膳立て? 言っている意味が分からない右京に対し、亘の口から衝撃的な言葉が飛び出した。
実は、令状の発行を阻止したのは僕です。
なんと、ビデオ押収の令状の発行を止めたのは亘の仕業だったようだ。「はい?」と右京は聞き返す。
申請を受けた裁判官に直談判して発行を踏みとどまってもらいました。
君正気ですか?
むしろこっちのセリフです。何の罪もない一般市民に別件容疑をかけて証拠物件を押収しようなんて、どう考えてもアウトでしょう。
だから特に、悪いことしたと思ってません。正義はこっちにある。とはいえ、令状が下りてあっさり証拠ビデオが押収されてしまうと右京さんの出る幕がなくなってしまうから、そうならないために邪魔をしたというのも事実です。
もっと言えば、右京さんのために邪魔をした。
つまり、右京に事件を解決してほしいがために、亘は令状を握りつぶすという暴挙に出たという。そのやり口と極めて個人的な動機に、右京は信じられないというように「ハッ…」と漏らす。
方法はどうあれ、証拠ビデオ押収のチャンスをつぶした以上、その埋め合わせをしないといけませんよね?
亘は右京に対し、もう後には引けないから作戦を実行するよう促す。
しかし、
自分でまいた種、自分でケリをつけたらいかがですか?
右京は亘に、自分でけじめをつけろと命じる。
自宅マンションの前。仕事帰りの青木は、車から降りてきたある男性に声をかけられる。被害者の父、伊縫組長である。もちろん彼は伊縫の正体を知らない。
職業を伏せて名前と被害者の父であることを告げ、
私、1日も早く娘を殺した犯人が捕まってほしいと願ってます。ところが夕べの新聞を見ると妙な具合になってる。気をもんでましてね。いてもたってもいられないっていうか…。
と頼み込むが、話が終わる前に事件と無関係だと言って逃げようとする青木の腕を掴む。
最後まで聞いてくださいよ。
そういうことなら警察の方に相談した方がいいですよ。
まあまあそうおっしゃらずに…。
2人はお互い一歩も譲らない。
すると、傍らに駐車していた車から亘が出てくる。その姿を見てひと安心した青木は、彼を「こちら、警察の方ですよ」と伊縫に紹介し、亘には伊縫が被害者の父親だと教える。
じゃあ、伊縫組の組長さんですね。
組長…。
亘から伊縫の「職業」を明かされ、青木は戦慄する。
ええ。銀龍会直系「伊縫組」組長、伊縫剛さんです。
私の職業は今、関係ないでしょう?
伊縫の表情が険しくなっていく。
何だって言うんです?
お願いがあるとか…。
亘は青木を引き寄せ、何が起きているのか尋ねる。伊縫は彼に対し、青木が犯人を目撃したと聞き、「なんとか娘を殺した犯人の検挙にお力を貸していただけないかと、お願いに上がったんです」と説明する。
いろいろご事情はあると思いますが、そこを何とか、娘を思う父親の気持ちに免じて、お願いできませんかね?
伊縫は青木に、父親の気持ちに免じて犯人逮捕に協力してほしいと懇願する。
「そんな情報どこから?」と警戒する亘に、伊縫は「蛇の道は蛇ですよ」と主張する。断ったらひどい目に遭うのかと危惧する青木に対し、彼はあくまでお願いであると強調する。
おとなしく引き揚げた方がいいですよ。代紋ちらつかせて一般市民を脅したら、一発で捕まります。
これ以上はやめた方がいい。亘は伊縫にそう忠告するが、
そんなものいつ、私がちらつかせました?
「職業」を明かしたのはそっちだと言わんばかりの伊縫。だが、
とにかく大事になる前に。
このままだと、娘が浮かばれないんでね。
悔しそうにしつつも、この場は諦めて退散した伊縫。「それじゃ、僕も…」と何食わぬ顔で立ち去ろうとする青木に対し、
ヤクザにつきまとわれたら嫌でしょう? 素直に警察に協力した方がいいんじゃありません?
身の安全のためにも警察に協力すべきであると亘は警告するが、
つきまとってくるようだったら、取っ捕まえてくださいよ。暴対法以降、ヤクザ捕まえるのなんか簡単でしょ。
ちなみに…
ストーリーの本筋とは特に関係のない余談ではあるが、後のS.18-11にて、同法の成立に関わった生みの親という設定の元警察庁刑事局長・蓮見恭一郎(演 - 長谷川初範)が登場。ただし、彼は69歳であるため、実際に成立した1991年5月当時には40代だったことになってしまう。
刑事局長は俸給面では次長に次ぎ、長官官房長や警備局長と同等という数ある警視監の役職の中でも特に高位ポストで、状況によっては次期警視総監の可能性すらあり得るため、どんなに優秀なキャリアであっても40代で就任できる代物ではない(そもそも、40代で警視監に昇任すること自体があり得ない話である)。
一応、同局の『おかしな刑事』に登場した上野忠明(演 - 矢島健一)は警視正で就任していた*5ため、現実を無視したフィクションならではの人事と言えばそれまでだが、それなら「作中世界では2000年台に入ってから成立した」と考える方がまだ自然ではある。
また、S11-4「バーター」に登場した元警察庁警備局長・潮弘道も警視正で就任していた*6。
と、彼は警察に協力しない割には助けは求めるという図々しさを見せる。亘は「警察には協力しないけど、助けは求めるわけですね。そういうのってどうですかね」と批判するが、
こちらには(市民が捜査に協力しなければならない)義務はないけど、そちらには(警察として市民を守らなければならない)義務がある。それだけのことですよ。
と言い残し、彼はマンションに入って行った。
車に乗り込もうとした亘の前に右京が現れる。どうやら一部始終を見ていたようだ。警視庁からわざわざ電車で来たのだろうか。
なんですか
君のお手並みを拝見していました。
…どうぞ。
とりあえず右京を車へエスコート*7。
マッチポンプ?
ええ。君のやりそうなことです。
その夜、特命係の部屋にて。右京が亘の行動を批判する。
なんと、全ては彼のマッチポンプだったようだ。しかし、
何を証拠に? むやみやたらと人を疑うのはよくありません。
と、あくまで彼は全くのデタラメであると否定する。
そこに角田がやってきた。部屋に入って右京と会釈するなり、珍しく烈火のごとく亘を叱りつける。
勘弁してよ冠城さん! ヤクザに捜査協力頼んでどうするの!? シャレにならんよ。
伊縫に青木の存在を伝え、暴力団の威を用いてでもビデオを提出させる。それが彼の作戦であった。
暴力団をも用いてまで事件を解決するというあまりに問題外な亘の手法に、角田は怒り心頭である。
ヤクザに頼んだつもりはありません。被害者の父親です。
あくまで「被害者の父親」であることを強調する亘だが、
それを詭弁といいます。
右京がすぐさま否定する。
知ってるよね? 今は組の名前出すだけで脅迫になりかねない。奴らも危うい立場なんだから。
少なくとも伊縫氏は組の名前なんか出してません。もちろんそれで脅そうともしてない。組の名前を出したのも僕ですし、それで脅そうとしたのも僕です。
それを屁理屈といいます。
屁理屈も理屈の親戚でしたっけ?
右京の指摘にすぐさま反論する亘だが、実際には単なる情けない言い訳である*8。
ああ…伊縫が言ってましたよ。『あの目撃者は簡単に落ちる輩じゃない。多少揺さぶる程度じゃ効き目はないだろう』って。
まあまあ確かに。
『なんなら、自分らのやり方で改めて協力しますがいかがですか?』って言われたよ。それなら確実だと。
#00BFFF){断ったでしょう?
反省の念が全く見られない亘に、角田の怒りが爆発する。
当たり前だよ!! あんたね、自分のやったこと少しは反省しなさいよ! ただでさえややこしいのに、もっとややこしいのを連れ込んでどうするつもり!?
…申し訳ない。
怒り心頭の角田は、その矛先を右京にも向ける。
あんたもあんただよ! もったいぶってないで、とっとと今回の件にケリつけろ! そうしないと、この先生、何やらかすかわからんぞ!? 連帯責任だよ!!
連帯責任…?
なおも怒りが収まらない角田は、近くにいた大木に八つ当たりして出ていく。「邪魔!」「あっ! なんで?」。
意味が分からなげな亘を、右京は後ろから睨みつけていた。
右京の面通し
夜、マンションで夕食を食べている亘に電話がかかってきた。相手は公用車で移動中の日下部である。
羽を伸ばすのは構わないが、伸ばしすぎるとあちこち当たって骨折するぞ。気がついた時には羽はボロボロ、飛べなくなってるのがオチだ。
意味ありげな言葉に「なんか耳に入りました?」と尋ねる。
どうせろくなことしてないだろうから、先回りして釘を刺してるんだよ。
どうやら亘の身を案じて釘を刺しにきたようである。
意味深な内容に彼は一瞬電話を離し、「誰がチクるのかな?」と考え込む。日下部は「まあとにかく、ほどほどにしろ」と忠告し、電話を切った。
昼休み、右京は例のカフェで青木と会っていた。
せっかくの昼休みに、申し訳ありませんでしたねぇ。
本当ですよ。でもまあ、藁にもすがる思いなんて言われてしまうとね。話ぐらいは聞いてもいいかなと。
彼は青木に「ちなみに、新聞はお読みになってらっしゃいますよね? 被疑者が3人挙がっているという記事」と尋ねる。青木は「3人とも犯行を自供したんでしょう? いやはや警察ってとこは怖いですね」と述べ、右京も取り調べに行き過ぎがあったのかもしれないと推測する。
しかし、犯人は3人のうちの誰かに間違いなく、つまり1人は真実の自白をしていることについて、右京は自信を持っていると語る。
そこに禿げ頭のメガネの男、白髪交じりの髭面の男、強面の男の3枚の写真を並べる。
無理やり面通しですか。ずるいなあ。
藁にもすがる思いだと申し上げたじゃありませんか。
「僕は何も証言しませんよ」と、青木はなお協力を固辞する姿勢を崩さない。そんな彼に対し、
もちろん名前は伏せますが、全員被害者の女性と関係を持っていました。ちなみに関係というのは…肉体的な関係です。
「被害者が被疑者3人とも関係を持っていた」という事実を聞いた青木の表情が少し変わり、多少なりとも興味を示したかのような顔を見せる。
彼は3人の被疑者をひと通り一瞥し、右京はその表情をじっと観察している。青木はなぜか笑みをこぼす。
あなたの目撃証言が決定打なんです。チラッとでもその人物を指していただければ、我々は心置きなく送検できるんです。
どうか、助けていただけませんか。
右京の懇願を受け、ようやく青木は指を出して犯人を指そうとする…もののやっぱりやめ、「まあせいぜい頑張ってください」と店を出ていく。
「残念ですねぇ…」と落胆する右京だったが、その言葉とは裏腹に、顔には意味深な表情を浮かべていて…。
店を出た青木は、2人連れの3組と順にすれ違っていく。右京もおもむろに立ち上がり、ガラス越しに彼の後ろ姿を店内から見つめている。
1組目、男性の2人連れ。彼は目もくれずに通り過ぎていく。
2組目、男女の2人連れ。こちらも無表情で歩き続ける。
そして3組目とすれ違おうとした時、青木の足が一瞬止まり、表情も一変する。それは中年男性だった。
青木は思わず目をそらし、硬い表情ですれ違う。その前に亘が現れた。
いい天気。ご協力、どうも。
やはり驚きますよねぇ。突然、あなたの目撃した犯人が目の前に現れれば。ごく自然な反応でした。
後ろから右京もやってきた。
これにて面通しは終了。ありがとうございました。
面通しって?
青木は未だに何が起こったのか気づいていない様子。
あなたはここで、被疑者3人とニアミスをしたんですよ。
全ては右京の策略だった。青木とすれ違った人物とは、被疑者である谷寿一郎・森下澪・石川圭三の3名(と刑事)だった。そして明らかに3人目…石川に反応した。
つまり、事件の犯人は石川であった。谷と澪に謝罪する刑事たち。そして石川が連行されていく*9。
さっきあなたが見せた3人の被疑者っていうのは…。
もちろん、右京のフェイクだった。青木の目撃した犯人がまだ警察に拘束されていないと思わせるためのトリックであり*10、そうしなければ突然目の前に犯人が現れても、警察の策略だとバレてしまい具合が悪い。ごく自然な反応を見るための仕掛けであった。
そのため、写真は角田・大木・小松の組対トリオをダミーに用いたのである(笑)。
汚いなやり方が…!
まあ、それはお互い様ってことで。
だから警察は嫌いだ!
青木は警察への嫌悪感を隠そうともしない。
いったい何があなたをそうさせてしまったのでしょうねぇ。
青木がそうなった経緯を察するとともに、右京は「あなたのお父様は警察官のようですねぇ」と父親の話題も振る。
いいか。他人のプライベートにズカズカ踏み込んで来るんじゃねえよ。あんたに何の権利があるんだ!! このクズ野郎がっ!!
自分の行いを棚に上げ、青木は右京を指さしながら憎々しげに睨みつけるが、「まあまあ落ち着きましょう」と亘が制止する。
クズ呼ばわりは甚だ心外ですが、まあそれはさておき。
あなたが今後二度と、犯罪に出くわさないことを願っていますよ。それがお互いのためでもあり何より…被害者のためですから。
その夜。青木の部屋にて、2人が証拠のビデオを確認している。
そこには犯行の一部始終が記録されており、真子の首を絞めている石川の姿が映っていた。彼女はカーテンを引きちぎりながら床に倒れる。
そんなに欲しけりゃどうぞ。
ひと通り再生し終わった後、青木はSDカードを抜き取り、2人に渡すふりをしてへし折ろうとする。
あっあっあっあ
あーあそれやっちゃうとなぁ…。
証拠隠滅の罪に問われる可能性がありますよ。
はあ? 証拠隠滅って、僕は犯人でもなんでもないぞ。
なぜ犯人でもないのに証拠隠滅罪が適用されるのか、素朴な疑問を口にする青木。
勘違いしてる人も多いけど、証拠隠滅罪は犯人以外に適用される。そもそも犯人が証拠を隠滅しても罪にはならない。むしろ犯人はそうするのが当たり前って考え方です。*11
2年以下の懲役、または20万円以下の罰金です。
証拠隠滅罪について教える2人。諦めたのか、青木はようやくカードを渡す。
渡すなり、
だから警察は嫌いだよ!!
と憎々しげに非難し、降参したかのように着席するのであった。お互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべる2人。
一方、取調室では伊丹たち6人が集まり、改めて石川の取り調べが行われようとしていた。思わぬ人口密度に身を縮める石川。
やれやれですね。女将んとこでも行きますか?
名札を返し、何食わぬ顔でいつものように花の里へ行こうとする亘だったが、
その前に。君にはいろいろと話しておきたいことがあります。
右京がいつになく真剣な声で呼び止める。
お説教ですか?
覚悟はいいですか?
望むとこです。
とても長くなりますよ。
対峙する2人。組対5課の面々も帰宅し、部屋も消灯する中、唯一特命係の部屋だけが煌々と輝いていたのだった…。
ロケ地
- 警視庁…川崎マリエン
- 事件現場のマンション…東京都大田区大森北4丁目2-7「ジャルディーノ大森」
- 青木の住むマンション…東京都大田区大森北4丁目2-3「コペル大森」*12
- 青木が働く区役所…国立市役所
- 角田と伊縫が密会していたラウンジ…リーガロイヤルホテル東京
- 亘と日下部が食事をしていた店…しゃぶ禅渋谷店
- 右京・亘と伊丹・芹沢が休憩していたカフェ、および青木に面通しをさせたカフェ…ラ・カーザ・ニキ(天王洲セントラルタワー1F)
- 伊縫が青木に目撃証言をお願いした場所…入新井西公園
- 日下部の車が走っていた通り…新宿区西新宿2丁目
時系列
青木のビデオに表示されていた日付より、2016年2月7日からの出来事であることが分かるため、それをもとにすると以下のような流れになる。
- 事件発生から花の里までのシーンが7日
- 内村の叱責から青木の食事シーンまでが8日
- 令状が下りなかったシーンから亘の夕食までが9日
- 面通し以降が10日
ちなみに、澪が真子に送ったメールの送信日時は5日である。
余談
今回は珍しく右京が捜査に消極的だったこともあり、推理をする場面がほとんどない。強いて言えば青木がベランダに出てきた際の違和感を亘に説明したことや、トリックを用いた面通し程度である。
何より、ストーリーは「一貫して警察への協力を拒否する青木からどうやって目撃証言を得るか?」という点に終始しており、「犯行の動機」「真子が裕福な暮らしをしていた理由」など不明な点も多々存在する。視聴者の解釈や想像次第と言えばそれまでだが、いかんせん判断材料が乏しいため、何を根拠にするかによってどうとでも言えることも否めない。
視聴率は12.8%と、S.13の衝撃の結末により支持率が若干減少したS.14の中でも第11話に次ぐワースト2だったが、視聴者からは「容疑者が変人しかいない笑」「面通しの写真w」「後々再登場orレギュラー化しそう」「次週に続くと思った」「お説教の内容が気になる」などといった声が多く、概ね高評価だったようだ。
一方、「どうもスッキリしない」「動機や警察嫌いの理由は何だったのか?」といった内容の不明瞭さに疑問を感じる声や、「最終回の伏線か?」「手痛いしっぺ返し←今後のフラグ?」といった今後を案ずる声もあった。
何より青木の存在は視聴者に大きなインパクトを残したようで、当初はその陰湿な性格や腐った性根に反感を抱く声も散見されたが、シーズンが進むにつれて嫌味な言動は相変わらずながらもどこかコミカルな面も見せるようになり、いつしかコメディリリーフ要因になっていった。
彼が警察嫌いの性格を形成するに至った詳しい原因については「警察官の父との確執」以外の情報がなく、S.20をもって亘ともども卒業したため、結局全容が明かされることはなかったが、代わりに衣笠の持っていた写真の中としてではあるが、初めて父・綱一郎が登場した。年男と同じく浅利氏の兼役になっている。
本エピソードで犯人役を演じた中山峻氏は、S9‐1.2にも出演しており、「一連の殺人事件の実行犯を裏で操っていた元大物政治家の秘書の男」を演じており、やはり犯人側のキャラクターであった。
ちなみに、S.5-6に登場した北之口秀一(演 - 川崎麻世)も女性の部屋を盗撮中に偶然殺人事件を目撃しているが、こちらは近距離だったこともあって殺人犯に顔を見られてしまった点で青木とは異なる*13。
また、北之口は「プライドが許さない」という理由でたとえ殺人犯の汚名を着てでも盗撮を否定していたが、青木については盗撮かどうかの明確な言及はされていない。
そして…
前述の通り、描写不足や右京の消極さなど不可解な点が目立ち、「最終回への序章」と銘打たれた通り今後の伏線になるのかと予想する視聴者も多かったが、やはり亘の捜査妨害が最終話において警察上層部に知られてしまった*14。事後報告で黙認していた右京は謹慎を言い渡され、亘も法務省に戻った上で北海道への左遷が決定的になり、その直後に起こった警察学校でのテロ事件を「最後の事件」と覚悟していたが、最終的には日下部の計らいで法務省を退職した上で正式に警視庁に入庁することになり、警察官として一から出直すことになる*15。
S.14中のある事件を描いたS.15-13~14は2月23日付近の出来事であることが描写されているため、今回の事件の後に起きた話になっている。
一方の青木も、今回2人によってハメられたことを根に持って区役所を辞め、父親の親友である衣笠藤治副総監のコネで警視庁に入庁し、亘と同期のサイバーポリスマンとして表向きは友好に接しつつ、裏では密かに2人への復讐をうかがおうとしていたが、諦めたのか警察官としての職務にやりがいを覚えたのか、上記の通り最終的には2人にいいように利用されるコメディリリーフ要因と化した。
このように、このエピソードは亘と青木、ひいては後のストーリーの流れを大きく決める遠因になったとも言うことができる。
なお、輿水氏はS.15以降、脚本担当が初回・最終回や300回記念(S.16-13~14)といったスペシャル回に限られており、S.19-10で4年ぶりに純粋な通常回を担当した*16。
ちなみに、山西氏は面通しの角田の顔が結構気に入っているらしい(自身のTwitterより)。
少なくとも僕は君のように、遊園地のアトラクションにでも参加するような了見で追記・修正に取り組むことはできませんねぇ。
まあまあまあまあ確かに。追記・修正を楽しんでることは認めます。
全てが新鮮で刺激的で…面白い。
追記・修正は裁判所の令状発行を阻止した人がお願いします。
コメント欄
- これイラっとしたわー。そしてまさか奴がレギュラーになるとはね -- 名無しさん (2019-03-15 19:29:37)
- ↑同感・・・なんでコイツがなんて思ってた。最終回スペシャルのアレ、この件のツケが回ってきたモノだったりして。 -- 名無しさん (2019-03-15 20:41:51)
- イラッとするキャラだけど右京に完全に出し抜かれたのがかえって面白く感じる良回 -- 名無しさん (2019-03-15 21:03:30)
- あの憎たらしさ、当時はイライラするってレベルを超えてたなー・・・そしてS.16最終回で少し溜飲が下がったと思ったらあの展開よ -- 名無しさん (2019-03-15 23:51:02)
- …この事件の場合だと青木の屁理屈って犯人隠匿にあたりかねないから言う義務じゃなくて言わないと最悪逮捕されかねないんだけどね -- 名無しさん (2019-03-16 11:54:21)
- 捜査協力を断るメリットもないって記事本文で書いてるが、ビデオみたいな物証の提供はともかく証言なら裁判に呼ばれる可能性は十分にあるわけで()、そのへんの労力を費やすのを回避できるのはメリットじゃねえかなあ。 -- 名無しさん (2019-03-16 18:50:55)
- 青木がレギュラーなんて夢にも思ってなかったよ。だって人が殺されるのビデオに撮って警察に協力しないどころか、それ見ながらにやついて飯食ってるような奴だよ? ヤクザの親に殺される展開だって別にいいと思ってたくらいだしあのオチには拍子抜けしたくらいだったのに -- 名無しさん (2019-03-23 08:13:54)
- ↑2いやだから犯人隠匿って犯罪行為になりかねないからその場合逮捕される可能性もあるわけで…なんというのか警察憎しのあまりそこらへんがおざなりなのよね彼… -- 名無しさん (2019-04-29 12:13:58)
- 何か青木って『憎めない小悪党』にすらなれていないイマイチなキャラ。役には立つものの、ただただ根性悪な可愛げの無い性格で愛されないクズどまりというか。 -- 名無しさん (2020-02-10 23:20:51)
- いい奴か悪い奴かで言えば判断に困る人もいるだろうが、全員こう結論付けるだろうな 「イヤな奴」 -- 名無しさん (2021-02-04 20:33:33)
- イヤな奴ではあるけど最近はだんだん面白いキャラになりつつあって嫌いではなくなってきた。 -- 名無しさん (2021-03-19 17:22:22)
- ヤクザに絡まれて助けを求めるのはあまりにもダサすぎる -- 名無しさん (2021-04-05 20:44:03)
- 別件逮捕で令状取るよりヤクザけしかける方が問題だも思うけどね。目的不明の撮影をしていた事は青木も自白してたし別件逮捕は立派な手段だと思うが -- 名無しさん (2022-11-06 03:09:51)
- この話の内容も青木のキャラもこの項目の主観の入り様も本当酷いな -- 名無しさん (2022-11-08 20:22:02)
- お、おう -- 名無しさん (2022-12-18 06:34:57)
- 青木に対しては -- 名無しさん (2022-12-18 07:34:00)
- 青木は所謂『憎めない小悪党』にしようとして失敗した感じ。イタミンみたいにそれなりの矜持や信念があったらまた違ったんだろうけど、ただただ陰湿で陰険な心根しか無かったのがどうもね。 -- 名無しさん (2023-02-07 00:55:17)
- 今は役者本人は出なくなってもなんだかんだ右京さんに協力してくれる味方として定着した感じだな -- 名無しさん (2023-04-15 11:29:30)
*2 本来、事務次官というのは官僚トップの役職であるが、法務省に関しては検察庁に呑み込まれる特殊な人事体系で、事務次官を経て検事長・次長検事・検事総長といった検察トップに進んでいくのが慣例になっているため、これまでに事務次官を最後に退職したのは津田實氏のみである。そのため、省内外の管理職はほとんどが検察官(判検交流により裁判官から任用された人を含む)で占められており、彼のような法務省キャリアが就任するのは極めて異例で、検察庁法の規定によりこれ以上の出世は不可能になっている(ただし、事務次官在任中は職務上の必要性の観点から検事の地位を離れるのが通例で、検事総長・次長検事・検事長の指揮監督下には置かれない)。ちなみに、亘が所属する刑事局総務課企画調査室は「検察庁の組織および運営に関する事務のうち基本的方針にかかわるものを調査し、企画する事務をつかさどる」ことが任務になっており、こちらも検事ではない彼にとっては本来無縁の部署である。
*3 伊丹が「ほお~、もう耳に入ってますか」と言いながら角田の方を見ているため、彼から伝えられた模様。
*4 他の見出しも「取調室の恐怖」「誘導・脅しによる自白強要か」などと散々な酷評になっている。
*5 上野は2作から5作まで登場。6作目からは警視監の田中孝典が刑事局長のポストに就いている。ちなみに彼を演じているのは上杉氏。
*6 潮は1958年生まれと記載されていたため、就任時の年齢は50歳となる。
*7 ちなみに、公式サイトの画像の1つに「青木・伊縫・亘のやりとりを右京が眺めている」ものがあるが、上記の通り彼がやってきたのは事が終わってからである。もちろん彼は一部始終を見ていたので間違ってはいないが、あくまで「陰から密かに」であることからイメージに過ぎない(そもそも彼と伊縫が顔を合わせたシーンはない)。
*8 なお、右京は今季の第1話で「屁理屈も理屈の親戚。何も考えないよりはマシ」と亘に語っており、それを受けた発言である。
*9 このシーンをよく見ると、屋外にいた客が全て同行しているため、全員刑事であることが分かる。奇しくも、冒頭で角田が「真子が伊縫の娘」と知って驚いた際に周囲の客(全員組員)が彼を包囲したシーンに似ており、伊縫の「蛇の道は蛇ですよ」(同類のすることは容易に推測ができるという意味)という発言も含め、「警察と暴力団は一見正反対に見えて、本質的には大差ない同じ穴の貉」という暗示ではないかとする声もある。
*10 例の新聞に記載されていたのは人数だけであり、名前などの個人情報が載っていなかったからこそできた芸当でもある。
*11 ただし、いくら犯人の正当な権利(?)と言っても心証が悪くなる可能性はあり、実際に逮捕や勾留・保釈も「証拠隠滅の可能性の有無」が条件の1つになっている。
*12 劇中では「レガロ大森」という名前で、大森東6丁目12-4にある設定。
*13 もっとも、彼はそれを利用して犯人に自らのアリバイを証明させるなど一種の共犯関係にもなっており、青木自身も結果的には石川を見逃していたことから、一方的か双方的かの違いがあるとはいえ「殺人犯の正体を知りながら黙っていた」点では共通している。
*14 亘はなぜ自分の動きが発覚したのか疑問に思っており、劇中でも「誰がチクるのかな?」と考え込み、最終話でも「けど、どっから耳に入ったんですかね? いったい誰が…」としきりに気にしていたが、右京は裁判官から報告を受けた日下部が警察上層部にリークしたと推測している。実際にこれは正しく、日下部は「警視庁で生きがいを覚えた彼の背中を押してやった」(意訳)という趣旨の発言を峯秋にしている。
*15 同話ではさらに、事件解決のために右京と亘が逆に被疑者に別件容疑をかけて逮捕しようとしたものの、今回のことを根に持った伊丹と芹沢に拒否されてしまった。
*16 偶然か否か、視聴率も全く同じ12.8%で、歴代でもこの2回のみの数字である。
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