木島日記

ページ名:木島日記

登録日:2018/12/18 Tue 17:36:43
更新日:2024/03/28 Thu 13:25:54NEW!
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角川書店 オカルト 大塚英志 森美夏 多重人格探偵サイコ 木島日記



木島日記きじまにっき


『木島日記』は大塚英志 原作、森美夏 作画による漫画作品、及び原作者による小説化作品である。
漫画版は4巻まで刊行されている。
新装版は全3巻。


同コンビによる前作『北神伝綺』から続く、激動の昭和初期を舞台とした奇想譚。
1998年5月に『エースダッシュ』で連載を開始した後、03年まで『エースネクスト』『エース特濃』と掲載紙を変えたが構想途中で連載を終えた。


小説版は漫画とは微妙に世界観が違う内容で連載中に2冊が刊行されていたが、
2009年から16年まで、季刊『怪』誌にて『もどき開口 木島日記完結編』と銘打った小説作品が掲載されていた。


同時期に連載されていた『多重人格探偵サイコ』とは同一の世界観による過去の時代の物語となっており、一部の登場人物が共通している。
『北神伝綺』から『八雲百怪』までの同時代、同コンセプトで描かれたシリーズの第二作に当たるが、前作の時点では他の作品も含む世界観が完成していなかったこともあり、前作までとは世界観が一致していない。


【物語】

民俗学者 折口信夫は、迷い込んだ町中で見つけた古書店『八坂堂』で、自分の未発表の論文と同じタイトルの本を見つける。


しかし、仮面の店主に薦められて読んだその本の中身は、ある青年医師と“月”と名付けて彼が愛した白子の少女との奇妙で残酷な物語。


思わず本を取り落とした折口に、店主はそれは自分が折口の名前を勝手に使って書いた本だと言う。


物語は自身の回想であり、爆ぜた恋人の肉体の欠片が顔に張り付き剥がれなくなったために顔を隠したのだ、と語る男。


……それが『八坂堂』店主 木島平八郎と折口信夫の出会いであった。



【主要登場人物】


■折口信夫
元は柳田國男の門下であった高名な民俗学者。
気難しい性格で同性愛者。
偶然に迷い込んだ『八坂堂』での出会い以降、木島に様々な厄介事を持ち込まれたり、結果的にだが持ち込むようになる。
史実で男好きだったのを反映してか女人嫌いとのことだが、義理の娘となった美蘭に対してのみは彼女の本心を知っても尚、遠ざけるようなことはしていない。


■木島平八郎
古書店『八坂堂』の店主で、瀬条機関の“仕分け屋”として働く仮面の男。
本作の主人公だが、狂言回し的な立場での登場も多い。
元は瀬条機関に迎えられた普通の青年科学者であったが、恋人の“月”を復活させようとした一件により凡てを失うと共に仕分け屋となった。
その時の失敗によって爆ぜて四散した“月”の肉片が顔の半分程に貼り付いており、それを隠す(守る)為に仮面を付けるようになった。
一方、組織から離れた部分で“月”同様に、古代ムー大陸に関係していると思われる遺物や技術の研究も続けており、全ては、かつて失敗した“月”の復活にある。
“仕分け屋”となってからは飄々としたシニカルな態度を取るようになっていたが、己の弱点である“月”に関連した話題については、昔のように感情的になる面もある。
小説版では、折口の弟子であり恋人でもある春洋*1と同一人物ではないかと作中の語り部が推察する場面がある。


■月
瀬条機関に水死体と勘違いされて回収された白子の少女。
肉体構造が普通の人間と違っており魚に近く、比重が軽く水に浮く。
当初は知能の類を見せることがなく、自傷行為により己を傷つけるのを繰り返していた。
新人だった木島の預かりとなり、木島も結果を意図せずに行っていた知能の学習の蓄積により、成人女性と同程度以上の知識と人格を持つに至った。
会話を交わせるようになってからは、最初に言葉を発した時に彼女自身が口にした“月”の名で呼ばれるようになり、互いに心を通わせていくと共に尋常では無い恋仲とも呼ぶべき関係となる。
性質を理解してからは、木島により過去を思い出すための実験が施されていたが……。
機関より廃棄処分が出されたことで木島に連れられて逃げ出すが、空に浮かぶ満月を見たことが引き金となり、蓄積されていた実験の結果により凡ての記憶を思い出し、自らガラスで首を切り裂いて自殺。
……その後、木島が行った黄泉返しでも魂が返って来ることはなく、その肉体は爆ぜて散った。
後に、彼女にそっくりな赤子を食らう“女”が『水の女』のエピソードにて登場している。


美蘭メイファン
満州のサーカスで機関に見つけられた“巫女”の資質を持つ、美しいが異常な能力を持つ少女。
ミス アーヴィングによるサヴァン症候群の異常児を利用した未来予測の為の装置の中枢として日本に連れてこられ、その実験で他の子供達が死んでも生き残り、機関の預かりとなる。
その後で機関と接触する一ツ橋中尉の希望もあって、戸籍上は彼の妻となる。
また、結婚の為に最初に手違いにより保護された折口の義理の娘となっており、日本を離れることも多い一ツ橋よりも折口に預けられることが多いことあってか夫よりも義父に懐き、父娘としての関係を紡ぎながらも異性として好いている模様。
異常な精神的能力の作用の引き替えにか、生まれつきに異様に色が白く髪が赤。
足が悪く色盲である等、様々な障害を持つ。


■土玉
瀬条機関の医師(研究者)で、元は新人であった木島の先輩。
付き合いが続く中で立場を越えた親交を結んだらしく、現在でも“仕分け屋”となった木島の許を訪れ、手伝わされたり、手伝わせる関係となった。
木島曰く「無能だから下働きをやらされている」との事だが、結果的には“仕分け屋”である木島と組んだり、調査対象が被っている場合も少なくない。
また、木島への伝言役も務めている。
専門は水死体の研究で、元々“月”は彼に回されていた研究対象であった。
土玉(どたま)と呼ばれているが、本名は土玉 理(つちたま さとし)である。
眼の悪い奥方が居り、本人の言うようにいけ好かない印象とは違って、本当にフェミニストなのかもしれない。
『八雲百怪』にも登場する場面がある。


■根津
機関より、木島の助手兼監視役として付けられた青年。
相手が誰であっても無礼を崩さない剣の達人だが、本当の飼い主である瀬条は恐れる。
正体は、飢えに苦しむ寒村で村人達を次々と手にかけて食らい、子供を残すために母親を犯していた殺人鬼。
瀬条教授の掲げる超人の条件に合う試験体として教授に捕らえられており、木島とはその時から因縁がある。
成長するまでに諸々の実験として脳の一部を始めとして肉体を切り刻まれて奪われているらしく、本人には当時の記憶が無い。
作中では津山三十人殺しとして偽装された実験では、ターゲットとされた村人に交じっていた母親にも気づかず殺害している。


■一ツ橋光治
陸軍の青年将校で階級は中尉、後に大尉。
登場当初のみは切れ者将校といった雰囲気であったが、後にはデザインも含めて子供っぽい性格の人物へと変化していった。
出世の為に多くのコネを持つばかりか、怪しげな瀬条機関とも接触しており、美蘭との偽装結婚にも臨む。
皇族の御落胤との噂もあり、それが案外と勝手にやれている理由かも知れない。


■清水義秋
陸軍少尉で、二・二六事件の生き残り。
不本意ながら大義の為に死ねなかったことに鬱屈とした怒りを感じており、これまた不本意ながら自称友人の一ツ橋や、瀬条絡みの事件を通して知り合った安江大佐といった面々に重用されて瀬条との連絡係にされてしまい、本当に不本意ながら彼自身が軍でも重要な人間となっていった。
昭和を生きる中でかなりの地位と権力を得たらしく、後の『サイコ』の時代では昭和の怪物と呼ばれる等、時代の黒幕とまでなっていたが、瀬条機関を前身とするガクソの活動については表立って行動こそしないものの、反感を抱き続けていた。


■安江仙弘
陸軍大佐で関東軍特務機関長。
眉唾な日ユ同祖論を眉唾と知りながら堂々と持ち出して演説する危険人物ながら、ユダヤ問題の権威は権威であり、満州国に迫害を名目にユダヤ人を迎え入れ、その潤沢な資金を得ようという“毒を食らわば皿まで”を地で行く「河豚計画」を推進する。
目立つ位の斜視である等、性格も見た目も史実よりもかなりエキセントリックで、悪辣ながらも魅力的な人物となっており、原作者は最も自分が反映されているキャラクターとして名前を挙げている。
同盟国でもあるナチス・ドイツとの交渉にヒトラーの産湯を利用しようとした一件以来、瀬条機関との関わりが出来たようで、諸々の工作にも加担する。


■ミス・アーヴィング
東方協会の女性科学者でユダヤ人。
しかし、研究の為に現在進行形で同胞を虐殺しているナチス・ドイツに与して様々な研究を行っている。
同盟関係にある瀬条機関が見つけた美蘭を利用した実験にて来日して以来、日本に居残り木島達との因縁が続いていくことになった。
『サイコ』世界でも存命であり、何かしらの実験の成果からか外見年齢に変化が生じておらず、相変わらず瀬条機関と東方協会の現在の名であるガクソの陰謀を主導していた。


■瀬条景鏡
東京帝大教授で、軍にも顔が利く実力者。
彼自身も、古の魔術と科学の融合を目的としていた、ある結社の“仕分け屋”であったが、その指導者たる老人達を追放したことによって彼を主宰とする瀬条機関が誕生した。
まだ新人であった木島を気に入り、人食いの村に同行させて以来の師弟関係となっている。
露人の血が入っているとのことで非常に大柄で肉体も頑健だが、視力のみは悪いのか厚手のレンズの嵌まった特徴的な眼鏡を掛けている。
研究者としての信条は「人倫よりも知的好奇心を優先する」という、最悪の物であり人体実験は勿論、魂の領域をも研究対象としている。
……その信条は瀬条機関より発展した『学窓会(ガクソ)』にも引き継がれており、長年に渡る非人道的研究の礎となっている。







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*1 史実では養子となった。

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