ラーメン発見伝シリーズ

ページ名:ラーメン発見伝シリーズ

登録日:2018/07/28 Sat 19:27:00
更新日:2024/03/21 Thu 12:10:55NEW!
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『ラーメン発見伝』とは、ビッグコミックスペリオールにて連載されていた原作・久部緑郎、作画・河合単による料理漫画である。
本項では続編である『らーめん才遊記』、『らーめん再遊記』についても取り扱う。


『ラーメン発見伝』は1999年から2009年まで(全26巻で完結)、『らーめん才遊記』は2009年から2014年まで(全11巻で完結)連載され、現在は3作目『らーめん再遊記』が2020年から連載されている。


ちなみに『発見伝』は2004年に2時間スペシャルドラマ化もされており、『才遊記』は2020年にテレビ東京系列で連続ドラマ化された。



【『ラーメン発見伝』概要】

ざっくり端的に言うとラーメン美味しんぼ
脱サラしてラーメン屋を持ちたいと考えるダイユウ商事のサラリーマン藤本浩平が、
同僚のOL佐倉祥子と北は北海道、南は沖縄、遠くは台湾まで全国津々浦々のラーメンを食べながら、
ライバル芹沢達也とラーメン勝負をしたり、様々な問題を抱えて閑古鳥が鳴くラーメン屋を立て直したりするグルメ漫画


しかし美味しいものを食べて終わる一般的なグルメ漫画と異なり、
コスト、立地条件、他店とのトラブル、サービスの質etc…と、「“リアルでビジネス的に成功するラーメン店”を目指す事」に物語の重点を置いて描かれている。
ラーメン店経営に関する教訓話的なエピソードも多く、グルメ漫画と言うより「まんがで読むラーメン屋ビジネス指南本」と例えるのが正しいかもしれない。


また、それまでのグルメ漫画で描かれる料理バトルでは、「主人公が珍しい食材を手に入れて調理する=勝ち」「何でもいいからとにかく美味しい料理を作る=勝ち」というパターンがありがちだったが、
本作は「いくら美味しい料理でも採算が取れなければ店で出せないし、珍しい食材を使ったメニューは安定して提供できない」というアンチテーゼを提示し、
料理バトルにおいても「店舗経営」という視点を重要視している点で、当時のグルメ漫画としてはかなり異色であった。
さらに、「いくら美味しくてもそれが食べ手に分かってもらえるとは限らない」という料理漫画らしからぬシビアな価値観も度々登場し、
これらのある種リアリズム的・多角的な視点がシリーズ全体を貫く大きなテーマとなっている。
業務用スープの使用や、激安チェーン店など、料理漫画では否定的に扱われがちな素材も、客を騙すようなアコギな売り方を除き*1、肯定している。


昨今ブームになっている多種多様なラーメンの細かなトレンドや、日本各地のラーメン文化がどのようなものかを詳しく紹介したり、
ラーメンという料理が抱える問題点、ラーメンを食べる側の人達の負の側面などもシビアに描かれている。
またラーメンのみならず、うどん蕎麦、台湾の牛肉面などラーメンとは一見関係のなさそうな麺料理も取り上げ、それらとラーメンの関係性についても詳しく描写されている。
加えてつけ麺・ラーメンチェーン店などへの批判や問題提起など、グルメ漫画でよくある料理批判要素もあるが、
それでもただの全否定に終わらず、そういったモノが持つプラス要素・改善要素・新たな可能性も提示するなど、
「ジャンルの単なる全否定では終わらない」所も魅力だろうか。


こう書くと堅苦しく感じられるかもしれないが、漫画内の文章はそこまで長くも多くもなく十分に読みやすいし、単純に漫画として面白い作品である。
ただし全26巻もあるので買い揃えるのが難しい点や、長編漫画の常として、中盤以降ネタ切れ・迷走気味な話もそこそこ見受けられる点は難点かもしれない。
ラーメンハゲこと芹沢達也(後述)の活躍が見たい人は、彼が登場する話を集めた傑作選コミックスが出ているので、そちらを読むのもアリ。
単発ストーリー形式が基本だが、3~4話以上から成る長編ストーリーもいくつかある。


単行本の巻末にはラーメンに関するコラムも記載(一部の電子書籍には未収録)。
読めば『ラーメン』という食文化についての認識、奥深さ、難しさ、そして美味しさが改めて理解できる漫画。
特に「ラーメンなんて安くて手軽なだけの大衆料理じゃんww」と考えている人ほど読んでほしい。
認識が180度変わること請け合いである。



【発見伝での主な登場人物】

ダイユウ商事の人々

  • 藤本浩平(演:国分太一)

本作の主人公。27歳男性。美味しんぼで言えば山岡士郎ポジション。
ダイユウ商事営業一課に勤務するサラリーマンで、少年的な顔立ちと太い眉が特徴。
「自分のラーメン屋を構える」という夢から兼業禁止の社則を密かに破ってひっそりラーメン屋台を営業している。
生粋のラーメンマニアで、ラーメン作りの腕、ラーメンや古今東西の食材に関する知識、ラーメンへの熱意共にずば抜けており、
その技量は芹沢すら度々驚愕させるほどだが、一方その反動で会社での働きはボロボロなダメ社員。自社が運営する「自然食レストラン 大地」から罪悪感無しに横領する場面も。
知識と技量こそ優れているが、一方でリアルな店の経営能力や、料理人としての独創性といった点では未熟な「典型的なラーメンマニア」という欠点も抱える。
その点は芹沢に散々指摘されており、特に「お題を与えられれば凄い物を作るが、自由に作らせるとそこそこの物しかできず、本当に作りたいラーメンがお前にはない」(要約)と言われた時は本気で落ち込んでラーメン屋の夢を諦めかけた程。
しかし芹沢の存在が藤本を成長させた事も間違いなく、後に自分から独創性のあるラーメン作りも成功させる等、これらの指摘をバネに成長していった。


仕事はラーメン店開設の費用を稼ぐための手段と割り切っており、ぐうたらでお調子者である。しかし、基本的には穏やかで常識的な性格。一方で、ことラーメンの話題になるととてつもなく積極的かつ遠慮を知らない性格になり、
時には山岡士郎のように挑発的な言動をしたり他人のラーメンの味や店を貶したりして、トラブルに発展させてしまうこともある。
ただ、最初こそ山岡のように、店主の目前でその面子を潰すような事もしていたが、すぐにそういった問題行動はあまりしなくなり、不味いという時も店主や他の客には聞かれないように配慮するようになった。


そのようなトラブルの一つがきっかけで芹沢と因縁を結び、度々衝突しては、知り合いのラーメン屋の店主小池さんに隠れ蓑を引き受けてもらいラーメン勝負をしている。
加えて営業の最中で様々な閑古鳥が鳴くラーメン屋と遭遇しやすい傾向にあり、その度に店再建のためのラーメン作りのサポートをするなど根はお人好し。


と、主人公としてのキャラクター造形は問題ない……のだが、
後述のラーメンハゲのキャラが濃すぎて主人公なのにこの作品の話をしてるとあまり話題にならないという欠点(?)も抱える。
作者のインタビューによると、(物語構成上仕方ないとはいえ)最終巻まで藤本の修行パートが延々と続くことから、作者が藤本を内心軽蔑している部分があり*2
芹沢に感情移入して描くようになってからはこれらのバランスが取れるようになり作品の人気も上がっていったとのこと。


  • 佐倉祥子(演:平山あや)

藤本の同僚で本作のヒロイン。美味しんぼで言えば栗田さんポジ。
美人のOLで藤本と同様無類のラーメン好き。
藤本の屋台の副業のことも知る理解者であり協力者でもある。
藤本に対しては当初、ラーメン関係の腕前には一目置いていたものの、「脳味噌がラーメンでできてる」と一切の恋愛感情を持っていなかった。
だが巻数を重ねるにつれ藤本にそこはかとなく惹かれるようになり、藤本に寄って来る女性達に対して焼き餅を焼く事も増えた。
いつもインターネットや情報誌などからラーメン店の情報を集めており有名店に関しては詳しいが、
地方のラーメンには疎かったり藤本と違って細かな味までは分からなかったりと、ラーメンに精通しているとは言い難いのが欠点。
とは言え、それは裏を返せば「一般客の目線で物を見れる」ということであり、彼女の意見が藤本を救ったことも少なくはない。
良くも悪くもお節介で、困ってる人を見ると手助けせずにはいられないところがある。彼女がトラブルに首を突っ込んで、藤本とともにラーメン店の改善に乗り出す話も多い。


  • 四谷匡史

藤本の上司で営業一課の課長。美味しんぼで言うなら谷村部長に近いポジション。
細目の男性で、一見穏やかでボンヤリしているように見えるが実は切れ者。藤本が、ラーメン屋台の副業をしていることにも、気づいているフシがある。
普段は常に笑みを浮かべており温厚だが締める時はきっちり締める優しくも厳しい上司。


自然食レストランチェーンやラーメン博物館などのプロジェクトを立ち上げ、藤本をプロジェクトのメンバーに抜擢。さらに、店のコンサルタントとして芹沢を招聘した。
結果藤本と芹沢が度々争う切っ掛けを生んだ。
ただし博多生まれなため博多ラーメンに非常に愛着が強く、博多ラーメンが関わってくると普段の冷静さを失い完全に私情丸出しになる。
特に久留米ラーメン編では、人が変わったように博多ラーメン第一主義の顔を見せ荒げていた。


  • 辻井信一

営業一課の係長で、藤本の上司。
グータラ社員の藤本に対しては厳しく当たる事が多く、嫌味な言動も多い。地方の取引先に向かって無神経な発言をして怒らせるなど、非常識気味な一面もある。
一方で、他の社員に対しては概ね普通に接している。残業で居残る部下達に夜食を奢るなど、気の良いところもある。
主人公によく当たり散らす問題上司という単純な立ち位置で言うなら、美味しんぼの富井副部長に近いが、あちらよりはまだマシな部類。
(問題行動こそ起こすが、警察沙汰になるほどの問題行動を取ったことはない。)
第169話で、仙台にある東北支社の営業課長として赴任し、後任として葉月が係長に昇進した。


  • 葉月玲

四谷のいた大阪支社から転勤して藤本の上司となった有能なキャリアウーマン。
かなりの肉食系女子で何事もズバズバ言い、良く言えば勝気で負けん気の強い(悪く言えばキツい性格の)眼鏡美人。
自身が仕事熱心なためか、勤務態度の悪い藤本には度々怒りを向けており、辻井係長のような嫌味な言動も多い。
ラーメンに関する知識は並程度だが、飲食業ビジネスの方面に関しては強い。
一方で、勝気すぎる性格が災いしてあまりにもストレートに物を言ってしまう悪癖があり、そのせいで営業先を怒らせて失敗してしまうこともある。
顔がそっくりな妹がいるが、そちらは更に性格がキツい。


キャラクター造形こそ違うものの、「主人公によく当たり散らす問題上司」という単純なポジションで言えば、辻井以上に美味しんぼの富井副部長に近い。
辻井が退場してからは彼の役回りを受け継いだことで、性格のキツさと問題行動にさらに拍車がかかり、
藤本と佐倉の仲を下ネタで茶化したり、酒に酔った勢いで後輩の男性に対して妹と共に飲食店内で腹パンをかましたりと、無神経・非常識気味な行動を見せるようになった。
そのため読者の好感度が高いとは言い難いのだが、『才遊記』での難波、さらには『銀平飯科帳*3の葉瑠など、同作者の作品には「キツい女性」が多く登場するので、そういう趣味なのかもしれない。



ラーメン関係の人々

  • 芹沢達也(演:鹿賀丈史(発見伝) / 鈴木京香(才遊記))

本作の裏主人公にして海原雄山ポジション。まず間違いなく1作目2作目の主人公2人分合わせたよりも知名度が抜群に高い御方。
人気・知名度から彼にフィーチャーしたセレクション版コミックスが出るくらいに有名。
ニューウェイブ系の大人気ラーメン店「らあめん清流房」の店主にしてフード・コーディネーター。


常に愛想笑いを浮かべたキツネ目でスキンヘッドな細身の男性で、性格は冷徹かつ傲慢、皮肉屋のリアリスト。
ラーメン作りの腕でも経営手腕でも無類の実力者だが、同時に利益第一主義でもあり、ラーメンマニアを利用した裏工作も平然と行う。
過去の苦い経験から、基本的に客の味覚を信じておらず、裏で「単純な味しか理解できない舌バカ」呼ばわりしてこき下ろすなど、お世辞にも人格者とは言い難いダーティな人物。
一方で、客の味覚を信じていないながらも、客に出すラーメンには決して妥協を許さないなど、単なる悪人でもない複雑な人物である。
名実ともに藤本の最大にして因縁のライバルであり、ある意味では師匠的存在。
読者からの愛称は「ラーメンハゲ」*4
2回目の実写化ではまさかの女体化を果たした。
詳細は個別項目を参照。


  • 小池さん(演:蛭子能収)

藤本や佐倉が懇意にする「ラーメンこいけ」の店主。脱サラ組であり藤本のよき仲間。
見た目は完全に藤子不二雄先生の漫画にでてくる小池さんそのもの。
頼りなさそうな見た目ながら性格も穏やかな好人物。
当初は気弱な性格からあの有栖に大魔神顔を出させるほど味を見失い店を潰しかけるが、藤本のアドバイスを受け店を再建。
以後はラーメン作りの腕を取り戻し、有栖も認める美味しい味の行列のできるラーメン屋に成長を遂げた。
物語では度々ラーメン勝負を引き受けてしまう藤本の隠れ蓑的存在*5として、藤本と一緒にラーメンを開発する。
藤本のラーメン作りの相談役も務めるなど、『ラーメン発見伝』での影の功労者。


  • 松永鳴人

「ラーメンこいけ」のアルバイト店員。通称「ナルト」。
大卒で就職浪人し紆余曲折の末に「こいけ」で働くことに。
当初はダメ社会人の藤本さえも呆れるほど、仕事を舐めきったダメアルバイトだったが、藤本や小池さんの指導の結果心を入れ替えた。
喧嘩っ早いがラーメン好きで店想いな誠実で明るい性格。味覚は悪くないらしく、他店のラーメンの欠点を的確に言い当てる場面もある。
小池さんと一緒に藤本のラーメン作りの手伝いもしている。


  • 片山晋二

「東京ラーメン花輪亭」店主。
市役所勤めから独学でラーメン屋に転身した脱サラ系の経営者。
眼鏡をかけた人の良さそうな風貌と性格だが、その実無駄にプライドが高く、あまりに他人や有名人の意見・発言に影響されて流されやすいという致命的欠点があり、度々奇行や問題行動を起こし藤本達や妻を辟易させている。
ラーメン作りの腕は中々だが経営者としての自覚がゼロどころかマイナス*6という作中屈指のトラブルメーカー。
「こういうタイプのラーメン屋になってはいけない」という教訓話の回で登場することが多い。


所謂二郎系ラーメンを売りにする「らーめん厨房どきゅん」の店主。
脱サラ系ラーメン店経営者で学生時代はラグビー部というテンプレ的な体育会系の大巨漢。豪快かつ粗暴で、藤本も呆れるほどに大雑把な性格。
自分と同じように腹を空かせた学生たちに腹一杯食べさせてやりたくて母校の近くに大盛りラーメンの店を開いた。
初期は、短気ながらも後輩思いの好漢として登場したが、回を追うごとに問題行動を起こしまくる迷キャラクターとなっていった。
レギュラーキャラではないものの、地味にシリーズ皆勤賞の1人。
詳細は個別項目を参照。


  • 天宮研司

東大を中退してラーメンの世界に飛び込んで来たラーメンマニアの青年。
しかしその実態は「美味いラーメンを作り自慢する事」のみを重要視している作中でも中々の問題児。
その上ある程度他人のラーメンを食べただけでそのラーメンの材料や隠し味に至るまで見抜ける優れた味覚と知識、そしてそのラーメンを完コピ・強化改良できるだけの技量を持つから始末に負えない。
なお本人は「味を見抜かれパクられる方が悪い」と全く悪びれる様子がなく、寧ろ見抜かれたラーメン屋側を見下す傲慢さも持つ。


当初はワゴン車を改造した屋台で有名店の近所に店を出店。
その店のラーメンの味や材料を根こそぎ見抜いて、欠点や長所を改善・強化して「その店より美味いラーメン」を作るやり方で客を引き付け、
あらかた客を奪ったら去って行く、という悪質な行為を繰り広げていたが藤本との戦いで敗北しライバル視。
その後も幾度か藤本と戦いを繰り広げる。


  • 千葉周児

東京・池袋にある有名店「神麺亭」の店主。
ラーメンに関する知識・味覚・経験・情熱全てにおいてハイレベルな妥協なきカリスマ職人。
過去に悪質なラーメンマニアとトラブルを起こしたことでネットで叩かれ炎上し店を閉店に追い込まれた経験からラーメンマニアを憎悪しており、
ラーメンマニアの存在そのものを徹底的に見下し嫌っていたが、TV番組「ラーメン・マニア・キング」で藤本との真剣勝負の末に敗北。
以後過激な主張は鳴りを潜め、藤本とは割と良好な関係を構築。幾度かラーメン関係の問題で付き合いを見せることになる。


『発見伝』から十数年が経った第3作『再遊記』では久しぶりに再登場(『才遊記』では店名等のみ)。
「黒字ではあるがかつてほどの勢いを失った」という現状を考えるにつれ己のラーメン職人としての衰えを自覚してしまい、好条件で引き継げるうちに「神麺亭」グループを売却して引退。
「今後は飲食関係をやるつもりはない」と芹沢・有栖に宣言し、物語の表舞台から去った。



一般の人々

  • 有栖涼(演:船越英一郎、石塚英彦)

名実ともに日本屈指の発言力を持つ売れっ子ラーメン評論家。劇中の審査員ポジション。
見た目はたらこ唇で肥満体の大巨漢。
自身の高い地位に驕らない温厚で誠実な人格者だが、「ラーメンが関わると人格が豹変する」「ラーメン界のジキルとハイド」と評されるほどオンオフが激しい。


美味いラーメンを食べると「大仏顔」と呼ばれる満面の笑顔*7をしながら独特な例えと言い回しで味を表現し、不味いラーメンを食べると「大魔神」と呼ばれる怒髪天を突くような形相をする変わった審査方法が特徴。
ただし物語が進むにつれ、大魔神顔は「ラーメンという『ジャンル』そのものを悪し様に言う」「ラーメンを利用して良からぬ事をする」輩に対して出すようになり、不味いラーメンを食べても出す事はなくなった。
芹沢から「ラーメン膨れのオタクデブ」と罵られたり、雑誌で自分の評論家としての仕事を貶されても怒りを表に出さないほどであり、出るとしたらラーメンを食べる以外の余りにマナーや態度の悪い人間くらいのもの。
自身でラーメンを作ることはないが、非常に優れた味覚、古今東西の調理法と食材及び日本全国のラーメンへの深い知識、美味いラーメンを食べるためなら全国どこにでも足を運ぶ行動力を併せ持つ。
藤本が気づかないところにも気づく観察眼の鋭さもあり、あの芹沢も万全の信頼を置く*8


続編の『才遊記』『再遊記』でも登場。
『才遊記』では「日本のラーメン・フリークの頂点」と呼ばれるほどの名声を得て相変わらず審査員役として度々登場。
終盤では大仏顔をいちいちしてると勝敗がすぐに分かってしまうというわかりやすい理由から意図的に大仏顔を封じて審査する場面も多くなった。
『再遊記』では、ネットの口コミサイトの普及で評論家の仕事が減ったためにメディア露出を止め、代わりに中秀大学食文化コースの教授に就任するほどに名声を上げた。
とはいえ美味しいラーメンのためならどこにでも足を運ぶフットワークの軽さは相変わらず。
レギュラーキャラとしてはシリーズ皆勤賞の1人。


  • 祐介

藤本の屋台を始め「こいけ」や「花輪亭」などの常連の小学生。
鍵っ子で家には両親がいない事が多く、そのため夕食はラーメン店を食べ歩いている。
大人やプロのラーメン屋相手でも「不味い」と思えば物怖じせずズバズバ言いたいことを言う胆力ある毒舌少年。
両親が共働きのため夕食は一人でラーメンを食べていることが多く、結果かなりのラーメン好きに成長。
ラーメンに点数をつけるものの毒舌気味なので採点も辛口傾向にあるが、下手な料理人よりも鋭敏な味覚は本物で藤本も信頼を置く。
その一方、片山の妻の瞳に片思いを抱き、恋心を隠して店の味の改善に付き合うという子供らしいうぶな一面も持つ。


大体片山が奇行に走るとこの子が藤本に教えに来るのがテンプレ。
オカルトじみた商売*9をしている胡散臭いラーメン店主に片山がかぶれてしまった際は、目を覚まさせるために女装させられたこともある。
当然本人は嫌がっていたものの、女装姿は中々に可愛く、その回のラストでは片山に惚れられてしまった。
片思いの相手が惚れた男に惚れられるとか、グルメ漫画なのに下手なラブコメより読者の性癖を歪ませに来ている。


  • 篠崎友哉

イケメン若手評論家にして敏腕フードプロデューサー。作中芹沢が認める審査員の1人。
女に甘くチャラい風貌ながら料理全般に精通し、有栖同様確かな味覚と知識を持ち審査員としての力量も確か。
駆け出し時代に芹沢に知ったかぶってインタビューした結果赤っ恥をかき、再度猛勉強の末に今の地位を築いたこともあって、芹沢のことは今も少し苦手。
佐倉に恋心を抱いており、しばしばアプローチを仕掛けるも中々成果が上がらず、時折藤本と対立することも。
発見伝後期での準レギュラーポジションとなり、彼も幾度か藤本とラーメン勝負を繰り広げた。
だが芹沢相手に藤本とタッグを組んで挑んでもなお完膚なきまでに敗北したことがきっかけとなり、傷をなめ合うように意気投合。
最終的には審査員役として落ち着いた。


  • 進藤マキ

ダイユウ商事の子会社であるラーメンタイムトンネルの社員。
和歌山出身で、兄は和歌山ラーメンの店を開いている。
その兄のラーメン店のトラブルを藤本に解決してもらったことがきっかけで、藤本に好意を抱いた。
一方、佐倉とは性格的に合わないところもあるようで、藤本をめぐり感情的にぶつかることも多い。
仕事はできる女性で、人格にも大きな問題はないが、現実主義的で計算高いところがある。藤本が脱サラを目指している事を知ったときには大きく呆れており、恋心は冷めたようだ。


  • ラーメンマニア

本作『発見伝』シリーズには多数の「ラーメンマニア」「ラーメン通」「ラーメンオタク」がモブとして登場するが、
その多くは舌が鋭くないにも関わらず知ったかぶりな知識を自慢し、店や他の客を顧みず迷惑行為や営業妨害を平気で働く「迷惑な客」だったり*10、迷惑行為をしないまでも「身の程を知らない愚かな人物」だったりすることがほとんどであり、
本作においては「ラーメンマニア」という人々は総じて否定的に描かれている*11
大体がデブや似非インテリ風の男性で、知ったかぶりな知識を披露しては藤本や有栖に完全論破され、すごすご退散するのがお決まりのパターン。
というか劇中まともなラーメンマニアが上の2人を加えても殆どいない。
要は完全なヒール役。唯一の救いとして、ラーメン・マニア・キング編で登場した宮部は人格者だった。
その後『才遊記』ではほぼ姿が消えたが、『再遊記』では久々にこのシリーズ定番の「迷惑なラーメンオタク」のテンプレみたいなラーメンオタクが現れた辺りこの手の輩はいつの時代も尽きない模様。



【『らーめん才遊記』概要】

前作『ラーメン発見伝』の正統続編。前作で人気を博した芹沢がサブ主人公となっているのが特徴。
芹沢が設立した新フード・コンサルティング会社「清流企画」と、実験的ラーメン発表の場として造られたアンテナショップ「麺屋せりざわ」が物語の舞台。


続編とは言ったが前作からレギュラーとして続投しているのは芹沢、有栖、武田のおっさんだけであり(あとは前作のゲストキャラが数名再登場するくらい)、
前作とのストーリー的な繋がりもほとんどないので*12、前作を知らなくても充分楽しめる内容となっている。
全11巻なので前作よりも比較的買い揃えやすいのも利点か。


前作『ラーメン発見伝』は、芹沢が「清流房」をオープンして5年後の話であるが、
本作は「清流房」オープンから約20年後の話。
つまり時系列的には、前作から10数年後の出来事*13ということになる。


「ラーメン版美味しんぼ」的要素が強かった前作と比べて、シナリオはより経営的な内容にシフトし、「いかに店をコンサルティングして繁盛させていくか」に焦点が置かれている(後半はネタ切れからかグルメバトル物にシフトしてしまうが)。
前作の歯に衣着せぬようなシビアなラーメンに関する内容も健在。
また女性ラーメン職人にスポットライトが当てられており、前作と比較して女っ気が著しく上昇した。



【才遊記での主な登場人物】

清流企画のメンバー

本編の主人公。年齢は22歳で有名料理研究家の汐見ようこを母に持つ。
母の英才教育により、古今東西の料理・食材に関する豊富な知識と調理技術、ずば抜けた味覚を持つ。
ただし味の表現を基本擬音で例えるため一見するとふざけてるようにしか見えない。
料理関係の能力に優れる反面社会人としては非常に問題が多く、そもそも物語開始直後だと半年前に初めてラーメンを食べたこともあってラーメンの事すら碌に知らない有様。
おおよそ社会常識や人間関係の機微を読むという能力に欠け、本人に悪気はなくとも率直すぎる発言が他人を苛々させることもしばしば。
また苦しくなるとタチの悪い嘘を吐く等、非常に子供っぽい性格。
一方で物事を取り組む情熱や熱意は誰よりも人一倍強くひたむきという長所を持つ。
『らーめん才遊記』とは社会人失格だった彼女が一人前の社会人及びラーメン職人に成長していく物語である。
だが彼女もまた藤本と同じく主人公なのに(ry


  • 須田正史

「清流企画」社員。所謂相棒枠で、前作の佐倉さんポジション。
気弱な性格の元ラーメンオタクで様々な土地のラーメンに関する知識が豊富。
ラーメンに関する知識が欠如しているゆとりの補佐に回ることが多い。
一方で社会人としての経験の薄さもあり人を見る目は非常に頼りない。
見かけに反して酒癖がとんでもなく悪く、あの武田のおっさんが「もう一緒に飲みたくない」と辟易するほどの絡み酒を拗らせる。


  • 河上堅吾

「清流企画」社員。
年齢は40歳で、あのハゲの部下だとは思えないほど温厚な常識人でゆとりに親身に接する人格者。
ゆとりを怒鳴る場面もあるが、ゆとりがあまりに非常識な行動をとったのが原因であり、普段は新入社員のゆとりにも敬語で接するほど穏やかで礼儀正しい。
その分物語の中では影が薄いが、「らあめん清流房」の看板メニュー「濃口らあめん」の弱点に気付いた数少ない人間の一人である。


  • 白坂隼人

「清流企画」社員。
気さくな人柄のイケメンだが、外回り中に人妻と不倫したりと女癖の悪いチャラ男。
なお本人は、あくまで「遊び」と形容している。
主婦層に対する知識が豊富で、女性向けのコンサルティングを得意とする。


  • 夏川彩

「清流企画」社員。ゆとり以外では唯一の女性社員。
かつて茨城の実家でラーメン屋「夏川食堂」を営んでいた両親の姿を見て育つも、父の死と共に店が潰れたことから、
一刻も早く夏川食堂をもう一度再開させることを目標にしている。
元々はラーメン職人としての修行のために「らあめん清流房」で働いていたが、人事異動で清流企画の所属となった。
だが本人はあくまでラーメン職人として店に立つことを希望しており、現場復帰を画策していたこともある。
当初は社会人としての常識が色々と欠如したゆとりに悪感情を持っており、そのせいで彼女への当たりが非常に強い嫌な性格の先輩として描かれていた。
しかし実際の性格は竹を割ったような切り替えの早い性格であり、後に関係が改善・和解。
ゆとりが辞めると聞いたときは号泣して辞めるのを説得しようとするなど彼女との仲を深めていった。
ラーメン職人としての技量は、天才肌なゆとりや真琴とは異なり凡人レベル。しかし凡人ならではのバイタリティと根性で困難に挑んでいくのが特徴。
因みに泣き上戸でこっちもとんでもなく酒癖が悪い。



その他登場人物

  • 難波倫子

「味惑コーポレーション」に勤務するフード・コンサルタント。
ショートヘアの温厚そうな見た目に反して性格は非常に勝気で短気、おまけに負けず嫌い。
対抗心を燃やした相手にはチンピラみたいにとんでもなく態度も口も悪くなる。
ゆとりに対し強烈な敵対心を燃やし、劇中幾度となく営業先で鉢合わせてはコンペでのラーメン対決にもつれ込むことになる。
一方でラーメン職人としての腕前はかなりのもの。フード・コンサルタントとしての能力もしっかりしている。


  • 相川鉄也

「ラーメン相川」店主。
テレビの情報番組の影響からラーメン店で一山当てようと、「(株)清流企画」に新規開店のコンサルティングを依頼した。
資金がほとんどなく、ラーメン作りの経験もない状況からラーメン店をいきなり始めようとするなど、思い立ったらすぐに行動に移す真っ直ぐな性格。
当初、反りが合わなかった須田とも和解し、汐見ゆとりとともにラーメンLOVEトリオを結成した。


  • 中原昌英

「麵房なかはら」店主。
かつてはニューウェイブ系ラーメン店の店主として芹沢とも並び称されるほどの大スターだった。
ラーメン集合施設である「ラーメン完食街」に新店を出店したものの、客入りが悪く「清流企画」にコンサルティングを依頼した。
問題解決後もゆとりの相談相手としてたびたび登場し、ベテランラーメン職人や店の主人としての立場でゆとりに助言している。


  • 石原真琴

とんでもないあがり症で接客能力は最低レベルだが、実家は練馬の伝説的名店「菜妙軒」というラーメンの申し子。
20歳という若さながらラーメン職人としての才能、味覚、知識、技量、情熱がとび抜けているアンバランスな女性。
店の期間限定メニューを開発し続けているのも実はほとんど彼女。
気弱な性格だが根は負けず嫌いにして極度の自信家であり、自分こそがナンバーワンと信じて疑っていない。
なおラーメン作りのアイデアが飛来すると「麺神降臨!」と叫ぶ癖があり、なぜか眼鏡のレンズが砕け散る。一人だけ世界観がおかしい
「なでしこラーメン選手権」でゆとりと終盤まで渡り合うことになるライバルポジション。


  • 石原玄二郎

真琴の父親で「菜妙軒」の店主。
ラーメン屋を始める前から芹沢が懇意にして足繁く通う、芹沢がお世辞抜きで尊敬する一流ラーメン職人。
この人の存在が芹沢がラーメン職人を志す切っ掛けになったという凄い人。
自らの悲願である「1杯1000円の壁」を越えることを娘に託し、厳しくも暖かく見守るいい父親。


  • 安本高治

十年前に閉店した「らーめん清流房品川店」元店長。現「麺獄グループ」社長。
味覚、要領、ラーメン作りの技量ともに優れていたが、本性は芹沢以上に金にがめつい金儲け優先主義の性格。
「鮎の煮干しの風味が牛脂の影響で隠し味程度にしか感じ取れない」という濃口らあめんの弱点を見抜いた上で、
スープに用いる出汁を鮎の煮干しではなくカタクチイワシの煮干しに変更し味を犠牲にコストカットすること、そして淡口らあめんそのものをメニューから消すことを提言。
芹沢に即却下されるも無許可で実際に実行し、更に鮎の煮干しを横流しして半年間多額の横領に手を染めたことがバレて店を追い出された。
内心そのことを逆恨みしており、その後都内の「らーめん清流房」の支店全ての近くに、濃口らあめんそっくりの味を再現して本家よりも価格を落としたラーメンを売り捌く「濃口醤油らあめんたかじ」をオープン。
カッコウ戦術により芹沢の店の客を根こそぎ奪い取って芹沢を追い落とそうと目論んだ。
しかしたった1つ、新しい味を創作する能力が致命的に欠けており、「麺獄グループ」もこれまでブームになったラーメンの後追い店舗を出しているだけであり、ジリ貧と言った有様。
そしてカッコウ戦術を濃口らあめん・解と濃厚煮干し麺の2本柱で完全に叩き潰された挙句出店した全店舗が閉店した*14事が致命傷となり、「麺獄グループ」自体が潰れる事が示唆される末路となった。


なお、芹沢に対しては逆恨みの憎悪を抱くと共に、その才能を正しく評価し、執着しているような描写が見受けられた。
読者に的確と評価された「冷徹なリアリストに見えて、実はビジネスという鎧で理想を守ってるロマンチスト」と言う芹沢評は、彼によるもの。
芹沢を追い落とす作戦が成功しつつ有った時は高笑いしつつも涙を流すなど、ただ憎んでいるだけとも思えない描写が散見される。
芹沢の方からもその才能を惜しまれ、ゆとりから「もしかしてウホウホですか~」と疑われる程度には、お互いに複雑な感情があった様子。


ドラマ版ではラスボスを務めており、芹沢が女体化された結果、彼が「芹沢の元カレだった」と言う設定になった。
それについて多くの原作読者から「納得する」「むしろ洒落になってない」と言われていた。


  • 喜久沢友恵

20年来の人気ラーメン店「ラーメン暖優亭」店主。
世話好きな気質とその風貌から「ラーメン界のおっかさん」と呼ばれており、あの芹沢ですら思いっきり「たっちゃん」呼ばわりし芹沢もおっかさんとこそ呼んではいないが完全にタジタジになるラーメン界の大先輩。
本来出るはずだった職人の急病欠場から急遽「なでしこラーメン選手権」に出場する事になるが、その腕前は芹沢が料理のうまさの両面と考える「未知への感動」と「既知への安堵」の二面性*15の両立センスがズバ抜けていると評し、
出場すると聞いた際は絶句した後に冷汗を流しながら「優勝最有力候補は誰かと問われたら喜久沢友恵の名を挙げる」と断言する程。
元々作中世界では「なでしこラーメン選手権」の司会者が「ご存知」と発言し、ラオタの中では大人気の存在。
緊急出場の際は同ブロックになる事となった夏川が「(まさかこの人が参戦して来るなんて)」難波も「(ホンマ勘弁して欲しいわ)」と心中感じる程の女性ラーメン店主界の大御所のようだ。


  • 西園寺由真

『麵屋XXX』店員。
日本初のラーメン・アイドルを目指しており、夢を実現すべく「ラーメンなでしこ選手権」に参加した。
調理の際もビキニエプロン姿で、当初は主催者からは数合わせのお色気要員と見做されていたが、実は高校生の頃から様々な店を食べ歩いてはそれを参考にオリジナルのラーメンを考案するなどラーメンの腕前は確か。
独学のためかセオリーに囚われない斬新なラーメンを得意としている。
実は白坂と交際している。


  • 汐見ようこ

ゆとりの母であり本作のラスボス。
「カリスマ」とまで形容される料理研究家。テレビなどにも度々出演する有名人。
ゆとりを自らの後継者にすると決めて、ジャンクフードなどは食べさせずに育てて来た。
ゆとりの進展を賭けて芹沢とラーメン勝負を行う。
ちなみに娘と違い、若い頃はラーメン含めジャンクフードも食べこんでいたのでラーメン知識は余裕で完備。ずるい。


  • 橋爪亮二

ゆとりの父親で、汐見ようこの元夫。
職業はカメラマンであり外国にも撮影の仕事でよく出張する。
ゆとり出産後に専業主婦だったようこが料理研究家になる夢を諦めきれず「料理コンテストで優勝したら離婚する」という約束を彼女としてしまい、彼女が優勝してしまった事で約束通り離婚。
当時の亮二は仕事で出張が多かったので、ゆとりはようこが引き取ることになる。
なお円満離婚みたいなものなので、離婚後もようことの仲は良好。肝心のゆとりからはようこに殺されたことにされたりもしたが
ゆとりが大学卒業の時にラーメンと出会ったのは、彼がお祝いを兼ねてラーメン屋に連れて行ったのがきっかけであり、彼女の将来を決める後押しをした存在である。
現在はようこの家から家出したゆとりと同居している。



【『らーめん再遊記』概要】

『らーめん才遊記』の続編。
元々は『才遊記』のドラマ化に合わせて開始された短期集中連載だったが、好評だったため予定を大幅に越えてドラマ終了後も連載が続いている*16
主役は遂にラーメンハゲこと芹沢達也本人になった。


序盤はまさかの大スランプに陥った芹沢と、新キャラ・米倉龍大との勝負が主軸。
スランプを脱すると同時に米倉を破った後は、清流房グループの頭目をゆとりに譲り勇退。
しかし、あの芹沢がそのまま隠居するはずもなく、「人口に広く膾炙し定着した、様々な『ラーメンの形式』」に注目し、2020年代の視点から昭和・平成のラーメンの歴史を振り返るとともに、
その『ラーメンの形式』を自らの手で新しく創り出すという前二作を上回るスケールの目標で、邁進する芹沢の日々が描かれている。


主人公となったことから、これまで明かされていなかった芹沢の過去についても深く掘り下げられており、「人気ラーメン店経営者兼フードコンサルタント」という縛りや柵が解け自由となった芹沢の活躍やプロレス談話や電動自転車での爆走が特徴的な作品。


『才遊記』とストーリーが直接繋がっている続編ではあるが、過去作に登場したキャラクターの登場は(芹沢・有栖を除けば)序盤程度で、ここから新しく読み始めても一応は楽しめる作りになっている。
とはいえ「芹沢の過去や人物像を掘り下げる」というストーリーである以上、『発見伝』や『才遊記』のあらすじ程度は把握しておくのがおすすめ。芹沢の登場する人気回を集めたセレクション版コミックスが2冊出ており、これを読んでおくのが良いだろう。
これまで通り数話完結の単発ストーリーが中心の形式だが、一つ一つの編の長さは3部作中最長。
一巻以上の話数に渡って物語が続く展開が基本となっている。



【再遊記での主な登場人物】

  • 米倉龍大

新世代系ラーメンの人気店『東京ガストロノメン』の若き店主。
世界最高権威のグルメガイド『ムシュロン』*17でラーメン界初の二つ星を取った『新世代系ラーメン』界のエース。
メディアの前では人当たりが良いが裏では過激な物言いも辞さないなど、『発見伝』時代の芹沢を彷彿とさせる高い理想を持ちながらも高慢かつクレバーな性格。
ただし口の悪さと若干調子に乗りやすい欠点があり、口の悪さが災いして試合の空気をアウェーにしてしまったりと若手故の詰めの甘さをうっかり見せてしまうこともある。
またSNSを通じて同じ新世代系ラーメン店の店主達とも知り合いで、店主同士仲も良い。


有栖の出版記念パーティーで対面した芹沢に「才能の枯渇したオールドウェイブに引導を渡してやる」と豪語してラーメン対決を挑んだ*18
「お酒を使ったラーメン」という課題で芹沢と対決し、結果は2対1で敗北。
その後、自分がかつて高校時代に『らあめん清流房』の「淡口らあめん」を食べ、その時の感動が切っ掛けでラーメン業界を志したこと、ラーメンに対する情熱を失って精彩を欠くようになった芹沢への失望から彼に発破をかける意味も込めて勝負を挑んだことを打ち明け、芹沢が自分を打ち負かしたことは悔しいが同時に喜びも感じていると語り、改めて芹沢への敬意を表明した。
最終的には負けてしまったが芹沢も驚くほどのラーメンを作り、新しい時代のラーメン界を引っ張っていく者の1人だと評されていることから実力は作中でもかなり高いと思われる。
その後もテレビ局に芹沢を巻き込んだ企画を持ち込むなど、クレバーな性格は相変わらずのまま精力的に活躍している。


恐らく元ネタは「ミシュランガイド東京2016」にて、ラーメン部門において世界初のミシュラン一つ星を獲得したラーメン店『Japanese Soba Noodles 蔦』のオーナーシェフ・大西祐貴。


  • 板倉和文

かつてトラブルから芹沢と確執を抱えた背脂チャッチャ系ラーメン店「大江戸せあぶら軒」店主の息子。大学生。
「グルタ」という名前でラーメンユーチューバーとして活動しており、「比較分析」をコンセプトに据えた動画を投稿している。
Z世代らしい穏やかで人の良い性格で、芹沢の性格を知ってからも純粋に尊敬している。その分ハゲの毒気にタジタジになるのもしょっちゅう。
反面ブチキレると怖い一面もあり、新幹線の迷惑客たちを通路に呼び寄せると推定暴力によって気絶させることで黙らせたこともある。


初登場では実家の経営難を憂いており、父親と芹沢の過去を知らないまま偶然知り合った芹沢に店の立て直しのアドバイスを求めた。
芹沢を通じて有栖とも交流を持つようになり、大江戸せあぶら軒の経営改善後はゲストキャラからレギュラーキャラに昇格。
藤本・ゆとりに次ぐ芹沢の第三の弟子とも言うべきキャラであり、その若さに見合わない知識と分析力は、芹沢から「優秀なラーメンユーチューバー」として一定の評価を得る一方、プロの視点から見た知見に欠けており、芹沢と有栖から度々レクチャーを貰っている。
また、幼いころからインスタント麺を愛食していたためか、カップラーメンやインスタント麺の知識においては芹沢と有栖を超えており*19、その話題が持ち上がった際には今までの人柄の良さとは正反対なこのシリーズではよくある悪い笑みを浮かべ、二人に様々なインスタント麺に関する情報を解説する側に回った。





追記・修正は、ラーメンではなく情報を食ってからお願いします。



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*1 「手作りと言いながら業務用を使ってる」「原価に対して、価格があまりに高すぎる」など。
*2 「やりたいことがあるんなら、さっさと会社なんか辞めちゃえよ、だらしない。俺はそうしたぞ」と思ってしまうとのこと。
*3 こちらは作画担当の河合のみの作品。
*4 鍋に毛髪が入らないようにきっちり剃り上げているスキンヘッドなのであって、ハゲではない。念のため。
*5 藤本は会社にラーメン屋台のことを隠しており、玄人はだしのラーメンを作れることがバレると周囲に怪しまれる恐れがあるため、表向きは「藤本がメニューを考え、それを小池さんに形にしてもらう」という体を取っている。
*6 一応劇中では支店を出したり、店舗をクリーンルームに改装する資金がある程度には繁盛している
*7 めったに見られないと言われた初登場時は口を閉じてニンマリとした感じの顔であったが、以降は味の表現を同時に行うためか、口を開けた状態がデフォルトになっており、他のキャラが大仏顔をするときも同様となっている。
*8 芹沢からは当初「ラーメン膨れのオタクデブ」と散々な言われ様だったが、味覚の確かさについては認められており、続編でも良好な関係が続いているあたり、その信頼は確かなものであることが窺える。
*9 来店した客の外見からその人の抱えている悩みを(勝手に)判断し、それを解決するような味付けを施したラーメンを提供する店。ジョジョ四部のトラサルディーを無理やり再現したような店であり、当然マズい
*10 中には「店員に注意されたことを逆恨みして、店の誹謗中傷をあちこちのネット掲示板に書き込む」という、現代の法律では明らかに犯罪にあたる行為をするとんでもない輩も登場する。
*11 ※念のため言っておくと、本作においてまともな人も含めたラーメン好きの人々全般は、そのままそう呼ばれるか「ラーメンフリーク」と呼ばれており、特に悪質な者のみを「ラーメンマニア」「ラーメンオタク」と呼び分けている節がある。
*12 前作主人公・藤本の話題がほとんど出ないため
*13 前作最終回から何年経っているかは不明。前作の連載期間は約10年なのでリアルタイムで時間経過しているとすれば5年前後だが、序盤で登場した祐介が最終回でも全く年格好が変わっておらず、若干サザエさん時空に入りかけているため。
*14 どう見ても店の建設費すら回収出来ていないレベル
*15 感動に突出しすぎると「冒険が過ぎて凝り過ぎ」と敬遠され安堵に突出しすぎると「ありきたり」と切って捨てられる
*16 河合単のツイートより
*17 言うまでもなく、ミシュランガイドのパロディ
*18 実際にはその場に居合わせた汐見が、スランプの芹沢に発破をかけるために嘘をついて米倉を挑発し、半ば強引に言質を取ったというところ
*19 二人とも外食としてのラーメンの知識や経験は豊富だったが、家庭用のインスタント麺には疎かった

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