登録日:2018/1/25 Thu 22:06:00
更新日:2024/02/16 Fri 14:26:51NEW!
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エアバスa380 航空機 旅客機 エアバス 飛行機 ジェット機
(画像出典:2016/8/10 編集者撮影)
エアバスA380は、エアバス社が開発した超大型旅客機である。
概要
エアバス社が開発した、世界初の総2階建てジェット機。
旅客用機としては、世界最大級を誇る。
総生産機数は251機。
登場まで
1989年、ジャンボジェットこと『ボーイング747』に対抗できる輸送力を持った機体として『UHCA(ウルトラ・ハイ・キャパシティ・エアクラフト、超大容量航空機ってところ)構想が登場。
1994年にはUHCAを『A3XX』として計画に着手。
当時の計画では550席クラスの-100型と、650席クラスの-200型が考えられていた。
ボーイング社のネガキャンにも負けず開発を進めていった、がボーイングも同様の大型機計画をぶつけていたりする。
ただしボーイングとしてはあくまでライバルへの牽制だったようで*1ボーイングとしてはA380規模の需要は複数社が参入するほどのものはないと判断していた。
マクドネル・ダグラス社も総2階建機MD-12を計画しておりこちらは本気だったようだが、MD-11販売不振などの事業失敗によって計画中止となり最終的にはボーイングに吸収された。
初号機は2005年1月に完成、その3か月後にテスト飛行を開始。
2年半に及ぶテストを経て、ローンチカスタマーであるシンガポール航空へ引き渡された。
特徴
・圧倒的な大きさ
後退角がついていて、エンジンをぶら下げた主翼、エンジンが突き刺さってるいるわけでもT字になっているわけでもない尾翼、小さな窓が多数連なる機体側面。
構成するパーツそれぞれは、通常の航空機と何ら変わりはない。
ただ、その1つ1つがあまりに巨大なのである。
大きな機体を浮かせるだけの揚力を生み出すため、翼幅は80mにも達する。
エンジンも直径が3m程のものを片翼に2発ずつ、計4発を装備する。
全高は約24mと、なんと8階建てのビルと同等。
他の航空機で言えば、B737を2機積んだのと同じくらいになる。
タイヤも自重に耐えるべく、胴体前部・中央・左右主翼の4か所に計22本が取り付けられている。
とにかく、圧倒的である。
これが1機空港にいると、大型機のB777やA330すら小型機に見えてくる。
……もっとも、貨物機にはAn-225とかいうもっと大型の機体も存在するのだが。
・強大な輸送力
総2階建てとしたことで、総床面積はライバルB747の約1.5倍となった。
座席数は、3クラス制で525席、単一クラス制にすれば850席に達する。
2クラス制では、エミレーツ航空が615席の機体を発注しており、これがかつての最高記録だった4クラス制575席を40席上回る結果となっている。
・サービス設備
客室が大きいことにより、様々な設備を設ける事が可能である、としている。
例として挙げられている物は、ラウンジ、バー、シャワールーム、そして滝。何かがおかしいが気にしてはいけない。
現在、エミレーツ航空によりシャワールームやバーは実現している。ここまで来たら滝も実現してほしかった。
販売不調
上述のように超大型機であるA380。
しかしあまりに巨大であるが故、採算が合う路線は限られてしまう。
その上、B777を皮切りにB787、A350などの経済性に優れた双発機の台頭に伴って、4発機そのものの販売も低迷している厳しい現状。
航空会社からの新規受注がなかった年もあり、2018年頭には生産中止も検討された。
これは大口顧客であるエミレーツ航空の新規確定発注により撤回されたが、ライバル共々今後の動向は不安である。
…がそのエミレーツも同じエアバス社のA350・A330neoへ変えるなど再び暗雲が立ち始め、カンタスも受注を全てキャンセル。
そして2019年2月14日に2021年をもって生産終了することが決定した。
予定されていた貨物型も747のようにノーズ開閉ができないため長い貨物の収容が出来ないために折角の長い全長を生かせない、2階部分には
専用ローダーが必要、そもそもその大きさに対して搭載量はそこまで多くない、更には開発遅延もありUPSやFedExも受注をキャンセル。
結局開発は中止、旅客から貨物転用も厳しいことは昨今初めから貨物機を導入することも多い航空会社にとって痛手でありこれがセールスに響いた。
エアバス社としては老朽化した747-400に代わる新たな4発大型機としての需要を見込んでいたが最終受注数は予想の1/3程度にとどまった。
いくつかの問題は挙げられるがかつて747で悩まされたように旅客数に見合うだけの路線が限られたことが大きいと思われる。
今日では747が無双できたような一度に大量輸送よりも旅客数減らしつつも多頻度輸送が主流となっており、定員数が500人を超える旅客機は
A380以外には日本国内で運用される777-300など世界的に見ても少ない。
これは世界中の航空会社でも同じ考えだったようで、747の後継に最新の747-8を選定した会社は貨物型はそれなりにあったものの旅客型は大幅減。
代わって777-300ER、それより若干減るものの燃費などが向上したB787・A350などの双発機を選定した航空会社が多かったことからも伺える。
またかつてのハブアンドスポークは効率観点以外にも当時の旅客機では航続距離が足りないがための苦肉の策という側面もあった。
だが現在の旅客機は双発旅客機でほぼ世界の主要な空港へはポイントツーポイントで行き来することができるほど性能が向上、ハブアンドスポーク方式は時代遅れになりつつあった。
そもそも機体が大きすぎて運用・維持できるのが大手航空会社くらいと課題は山済みであった。
なお閉鎖後のA380最終組立工場は現在エアバス社の主力機となっているA320・A321の生産工場に切り替えられることが決まっている。
引退するA380
平均6年ほどで機種変更を行うローンチカスタマーのシンガポール航空では自社購入した機体納入後に数年でリース会社に5機返却
機体の引受先を探し1機はポルトガルのハイフライ航空が引き取ったが他は見つからず、少なくとも2機は部品取り用に解体されたようである。
更にはエアバス社のお膝元であるフランスの航空会社エールフランスからも2022年までに全機退役することが確定、同じ欧州のルフトハンザからも
2022年から退役することが確定しそのうち6機はエアバス社が買取ることが決まるなど就航から10年ほどで退役させる航空会社も出始めていた。
だが2020年になり新型コロナウィルスの影響により世界的に航空需要が激減。
当初22年退役予定だったエールフランスは計画前倒しで20年に引退することが確定、同年6月に招待関係者を乗せたフライトを最後に引退してしまった。
ルフトハンザでもA340共々長期離脱となったことで事実上の引退とする見方も広がっていた。
経営破綻したタイ国際航空では747・A330と共に機材整理のために退役が確定している。
カンタス航空でも9月までに12機中8機、A380最大の顧客であり「100機単位で運用すればちゃんと利益が出る」とまで豪語していたエミレーツ航空ですらも
当時保有していた115機中最大46機の引退を検討するなど急速に引退が進んでいる。
ハイフライ航空では一階の大半を貨物を運搬できるコンビ仕様*2に変更することを計画、かつて計画頓挫しコンビとはいえ貨物型の改造案も出たことから
この初めての試みと今後大手航空会社から引退したA380の再利用も含め注目されてたが、こちらもリース期間延長をしなかったことで退役してしまっている。
一方ブリティッシュエアウェイズではA340や747といった機種を退役させたものの、2021年にはルフトハンザとA380整備契約を延長したことで少なくとも2027年までは運用される見通し。
ルフトハンザも同時に長期離脱となったA340のうち売却が決まっていなかった機体は羽田線などの路線に復帰、A380も状況次第では復帰させる可能性も示唆された。
カタール航空では順次退役予定だがA350で塗装に問題があったため代替としてA380を復帰させている。
カンタスでも経年機2機は退役が決まっているものの2022年から順次復帰を計画、エミレーツでも経年機の引退を進めつつ貨物運用や経年機の入れ替えを
新規のA380で賄うなど徐々にA380も復帰しつつあり、2021年12月には同社としては123機目となる最終生産機が引き渡された。
しかしそれでも売却・解体目的の長期保管で退役する数の方が遥かに多いため、コロナ前と比較するとその数は大きく減ることになる。
日本におけるA380
・乗り入れ空港
日本でA380を見るならば、2019年までは定期便が就航している成田国際空港に行くのが手っ取り早かった。
また、時期によっては関西国際空港にも乗り入れていた。
他に飛来実績のある空港としては、羽田空港(東京国際空港)と中部国際空港がある。
新千歳空港などにもA380の乗り入れは可能とされていたが後述のように乗り入れ自体は可能であることが証明されている。
羽田空港にはカンタス航空が乗り入れている747では供給不足でA380の定期運用を可能にすることを打診していたが、コロナの影響により計画は頓挫。
しかも上記のように保有数の削減どころか747は引退が決定、運用機材もA330へと変更されてしまい羽田乗り入れの可能性はほぼなくなってしまった。
2022年からはANAが運用するA380が定期運行しているため、見るのであればこれに頼るしかない。
・運用する航空会社
1社は、スカイマークが導入する予定……であった。
契約通りに行けば2014年に引き渡しが行われるはずだったのだが、スカイマークの経営状況が悪化。
契約の変更をエアバス社に申し出たが、同社がこれを拒否し交渉が決裂してしまう。
違約金騒動になってしまい、その後の経緯は不明だったが同社が発注し完成した2機については
最終的にはエミレーツ航空が引き取り同社で運行されている。
先んじでスカイマークでは同じエアバス社のA330を日本で唯一運用していたがこの経営悪化を受け、機材整理によって僅か1年程で引退してしまっている。*3
もう1社は、ANAこと全日本空輸。
2008年の金融危機の際に一度ライバル含む大型機の導入を凍結。
その6年後に様々な機材を導入することを決定し、この中に含まれていた大型機はB777シリーズの機体であった。
A380を導入することは無いのか……と思いきや更に2年後、A380を3機導入することが決定。
ANAは否定しているものの同社がA380を導入したのはスカイマーク救済でデルタ航空などとの小競り合いの末に
スカイマークのA380を一部肩代わりすることが条件だったという説が有力である。
2019年には、トリトンブルーの4発機が復活することとなる……と思われていたが導入は3機だけということもあってか
ハワイ路線専用として「フライングホヌ(ホヌはハワイ語でウミガメの意味)」と呼ばれる独自塗装が施されたため、今後塗装変更でトリトンブルーが復活するかは不明。
仮にハワイ路線から外れた場合には塗装変更される可能性は高いが機体の大きさと必要な滑走路の長さや需要などを考慮しても
他の国際線で旅客数が多い路線は中国・韓国などの近距離が多くそれらは短距離用機材の多頻度運行で事足りる。
国内で運用される場合は滑走路などを考慮すると前述の新千歳や羽田・那覇などごく一部の空港に限られる。*4
2020年にはコロナウイルスの影響に伴って3機目の受領延期とハワイ路線の運用から外れているものの、新たな試みとしてA380による遊覧飛行を実施している。
遊覧飛行は抽選予約で行われて飛行時間たソーシャルディスタンスの関係で搭乗率は6割ほどに抑えられたが、普段はハワイ路線でしか飛ばない専用機に乗れることや
格安でファーストクラスなど優等席に乗れることもあってか初号機の時は150倍、2号機の時でも110倍という高倍率となった。
その後度々遊覧飛行やチャーター運航が実施され新千歳や那覇へ飛来、今後ハワイ路線の運用から外れても国内で運用される可能性も出てきた。
3000mの滑走路を持つ空港では運用が可能なことが証明されたことで下地島へのフライトも実施されたため、地方空港への飛来も可能性が出てきた。*5
予定から1年以上遅れで大口顧客で最後の引き渡しが決まっているエミレーツに次ぐA380引き渡しが2021年10月に実施、日本にフェリーされたことでようやく3機揃うこととなった。
2022年7月にA380の2機体制(1機は機材整備中で、B777-300が代行)にて成田~ホノルル線の運行が再開。
2023年4月20日からは週7往復のすべてにA380が投入されるようになった。
事故・事件
・カンタス航空32便エンジン爆発事故
2010年10月、カンタス航空のA380がシンガポールからシドニーへ向けて離陸した数分後、第2エンジンが爆発。
この余波で多数の不具合が発生し、コックピットには膨大なエラーメッセージが表示されたが、
クルー達は冷静にエラーを分析することで安全な飛行を維持し、出発地のシンガポール・チャンギ空港への緊急着陸が無事に成功、乗客乗員469名全員は生還を果たした。
トラブルの原因はエンジンの製造ミスであり、事故後ただちに同型のエンジンを搭載する機体の緊急点検・部品交換が行われた。
その結果当時運行していたA380の約4割に欠陥のあるエンジンが使用されていたことが発覚した。
この事故は、FND!でお馴染みのあの番組で取り上げられている。
・大韓航空ナッツリターン事件
2014年12月、離陸のために滑走路へ向かっている大韓航空86便機内での出来事。
乗客であった同社の副社長が、客室乗務員に対しクレームをつけるわ、旅客機をゲートへ引き返させるわ、機内サービス責任者を同便から降ろすわとやりたい放題やり、運行を遅延させた。
結局、この副社長には懲役10ヶ月、執行猶予2年の判決が言い渡された。
・エールフランス66便エンジン爆発事故
2017年9月、パリからロサンゼルスへ向かっていたエールフランスのA380の第4エンジンが大西洋上で爆発。
残った3発のエンジンで大西洋を越え、カナダ東部の空軍基地へ緊急着陸した。
幸い、乗客乗員521名は無事であった。
エンジントラブルの詳細は、2019年現在も調査中であるが当初からファンハブに原因があるとされており
2019年5月になってようやくファンハブが発見された。
事故機はエンジンを換装し翌年の1月から運用に戻ったが事故の最終報告が出る前にA380が引退してしまった。
追記・修正はA380の中で滝に打たれながらお願いします。
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▷ コメント欄
- アニヲタ的にはクスィーガンダムよりちょっと低い程度の全高と思えば解りやすいか -- 名無しさん (2018-01-26 09:53:35)
- 執行猶予つきの実刑って、「体温は平熱で熱がある」「無傷で大怪我」みたいな矛盾した表現だな(実刑というのは執行猶予がないということ) -- 名無しさん (2018-01-26 10:37:29)
- 作成乙。かつての羽田大混雑時代なら国内線にも入ったんだろうけど…一回でいいからのってみたいなぁ -- 名無しさん (2018-01-26 12:25:26)
- そもそもA300みたいに経済性とハイテクでボーイングにチャレンジしてきたエアバスが、なんで自分らと航空会社の懐事情が滅ぼした市場に参入したのだろう -- 名無しさん (2018-01-26 17:06:37)
- ↑3 指摘どうも、修正しておきました。 -- 名無しさん (2018-01-26 20:00:48)
- ↑5(クスィーの実物を見た事が無いのでわから)ないです。せめて「お台場ガンダムより頭二つ三つデカい」とでもしてくれ。 -- 名無しさん (2018-01-26 21:01:02)
- 昔テレビで「個人購入が一件あった」って話があって驚いたわ -- 名無しさん (2019-03-12 11:35:13)
- ボーイングが737MAXでやらかしまくって、会社(とFAA)の体質に大問題ありそうってなってるけど、こっちの需要は増えるのだろうか -- 名無しさん (2019-08-06 16:26:38)
- カンタスのアレがカンタスで本当に良かった機体 -- 名無しさん (2022-12-24 17:49:44)
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*2 貨客混載型、日本ではRACのDHC-8くらいしかなく珍しいが世界的には大小様々な機種で存在する
*3 その後機材は737で統一され後継機には737MAXを視野に入れていたが墜落事故などを理由にこの計画は白紙化、同時に恩返しの意味も込めて再びエアバス社旅客機の再導入を試みている
*4 伊丹は新千歳や那覇同等の3000mだがチャーター機など不定期での飛来は可能なものの定期便では3発機以上の旅客機乗り入れが禁止されているため運用に入れない
*5 ただし3000mの滑走路を有していても三沢空港のような米軍・自衛隊との共用で民間の規模は小さく設備や駐機場の関係などで運用できないという可能性もあり、逆に3000m必要とされながらも同じように言われていた747は福岡など3000mに満たないどころか2500mの空港でも運用していたので安易に判断はできない、流石に2000mクラスでは747でも運用実績がないため不可能と見た方がいい
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