登録日:2012/02/25 (土) 01:28:58
更新日:2023/08/07 Mon 13:54:21NEW!
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プロレス 全面対抗戦 10・9 uの落日 キレちゃいないよ ドラゴンスクリュー 歓声がお茶の水まで届いた 伝説 東京ドーム 新日本プロレス uwfインターナショナル
◆激突!!新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争
95年に東京ドームで行われた、日本プロレス界史上最大の団体対抗戦。
プロレスファンには「10・9」の呼び名で通じる伝説的な興行である。
当時の新日本プロレスの舵取りを担っていた長州力と、UWFインターナショナル(※以下、Uインター)のフロント陣との確執を発端として、
同年8月の長州とUインターの絶対エースにして社長であった高田延彦との緊急電話会談により電撃決定。
8月のUインター横浜アリーナ大会に長州力、永田裕志が参戦したのを皮切りに、この前代未聞の全面対抗戦の火蓋が切って落とされた。
従来のプロレスの在り方を否定し、熱狂的な信者を生み出した「UWF」の遺伝子を持つ団体の中でも、
直接的に「UWF」の名を掲げると共に、高田延彦の絶対的象徴化を目標として来たUインターと、
親許にして業界の盟主である王者・新日本との存亡を懸けた戦いは大いに世間の注目を集め、ドームに押し寄せた6万7000人もの観衆が怒号を交わした。
【二団体の概要】
◆新日本プロレス
不遇の時代を乗り越え、現在は再び業界の盟主に返り咲いた国内最大団体。
特に、この90年代当時は長州力の指揮の下、30代に入ったばかりの闘魂三銃士や佐々木健介と云ったトップレスラー以下、
ベテランから中堅、若手まで「他の団体に行けば次の日からトップになれる」とまで言われた程の強力な布陣が揃っていた。
事実、この全面対抗戦で勝ち星以上に団体としての基礎体力の違いを見せつけた新日本プロレスはこの後、
自分達の「プロレス」にUインターの選手を巻き込んだ末に96年1月のUインターの崩壊を呼び込むのである。
◆UWFインターナショナル
ファンにはUインターの呼称で親しまれた第2次UWFを母体とする格闘系プロレス団体。
第2次UWFの象徴の一人である高田延彦を絶対エースとして、大会場での興行を主体に人気を集めた。
そもそもの古巣である新日本プロレスとは、
92年に「世界最高峰のNWA王者ベルト」を獲得した蝶野正洋がリップサービスとして口にした「高田さんと戦いたい」という台詞に食い付いたのをキッカケに遺恨が発生。
会談の内容を漏らす等の掟破りで長州を怒らせていた所に、94年には一億円を餌に各団体のチャンピオンに一方的に挑戦状を叩き付けると云った行為により、
業界からも眉を顰められていた矢先の出来事であった。
当時のUインターは多額の負債を抱えていた為に、新日本の誘いに乗らざるを得なかったとの情報もある。
……当時はまだ「UWF」が見せた「最強幻想」が生きていた時代であり、Uインターの選手達が新日本のプロレスラーに圧倒される姿はファンに衝撃を与えたらしい。
後には第一次「UWF」から続くU系団体もまた格闘風のプロレスをやっていただけ、という認識がされるようになったが、それはそれとしてプロレスラーとしての完成度に於いて、矢張り層の厚さと懐の深さの差が露呈してしまったことも確かであったのだ。
【各試合】
新日本プロレス「激突!!新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争」
1995年10月9日 東京ドーム
観衆6万7000人(超満員札止め)
※選手名は新日本・UWFインターナショナルの順で表記。
1.30分1本勝負
○石沢常光 永田裕志(10:47秒 三角絞め)金原弘光 桜庭和志●
※大会の裏ベストバウトとされるが、実力派の若手同士による、この対戦が一番対抗戦の面白さを創出していた。
特に、後にケンドー・カシンとして人気を集める石沢と、一番の若手ながら既に光る物を見せる若き日の桜庭の動きはキレまくりである。
2.15分1本勝負
○大谷晋二郎(7:18秒 羽根折り腕固め)山本健一●
※ブッツン系の若い二人(23歳、19歳)の刺激的な顔合わせ。
……が、鋭い打撃でダウンを奪う場面こそあったものの、
全てに勝る大谷がカウンターのソバットからドロップキック、ドラゴンスープレック(×2)からチキンウィングアームロックに繋いで余裕の勝利。
3.30分1本勝負
●飯塚高史(7:39秒 腕ひしぎ逆十字固め)高山善廣○
※恵まれた体格を持ちながらも活かせず、一介の若手に甘んじていた高山と新日の道場主、飯塚の戦い。
今では信じられない程に線の細い高山だが、矢張り蹴りと膝の破壊力はUインターでも随一。
実力で勝る筈の飯塚が長い手足の攻略に手間取る中で、怪物性を発揮し出した高山が大金星を挙げる。
4.30分1本勝負
●獣神サンダーライガー(10:14秒 猛虎原爆固め)佐野直樹○
※嘗ては同期として、新日Jr戦線を賑わせていたライバルが再会。
実は格闘技にも精通しているライガーだが、この試合では佐野をプロレスに引きずり込むのに専念。
佐野がクールな態度を崩さないままに決めた矢の様なトペにドームが湧いた。
最後は「NOAH」マットで猛威を振るったカウンター式のソバットから急角度のドラゴン、
タイガースープレックスと畳み掛けた佐野が遺恨や対抗戦とは真逆の再会マッチを制した。
5.45分1本勝負
○長州力(4:45秒 サソリ固め)安生洋二●
※8月に続く長州とUインターのフロントの一人でもある“200%男”安生の、ある意味での興行を象徴した戦い。
選手としても高い実力を持つ安生だが、ヒクソンへの道場破りを敢行して破れた事や、前田日明との確執もあり当時は完全にファンからの反感を買いまくっていた。
試合も「UWF」である筈の安生が長州にグラウンドで押さえ込まれた挙げ句、強烈なラリアットでKOされると云う散々な結果で、U信者からの罵声も飛んだ。
長州の物真似で有名な「キレて無いですよ(※実際はキレちゃいないよ)」が飛び出したのはこの試合。
6.45分1本勝負
●佐々木健介(9:13秒 膝十字固め)垣原賢人○
※最大の大番狂わせとなった試合。
相手がゲーリー・オブライトを破った経験もある若手のホープとは云え、寧ろ「勝ち方」が求められる立場の健介であったが……。
実力で垣原を圧倒しながらも、何故か気持ちが入らない健介が一瞬のスキから敗北。
「ポカやった」のコメントが登場したのはこの試合。
7.45分1本勝負
○橋本真也(7:20秒 三角絞め)中野龍雄●
※Uインター問題でピリピリしていた橋本が、気負いからか若干甘い部分こそ見られた物の、同期の中野を圧倒的な力でねじ伏せた。
Uの中野を垂直落下式DDTから三角絞めのフルコースで料理。
8.IWGPヘビー級選手権(60分1本勝負)
○武藤敬司(16:16秒 足4の字固め)高田延彦●
武藤が4度目の防衛に成功。
※Uインターの絶対エース高田と、遂に新日の頂点(IWGP獲得、G1制覇)に立った天才、武藤の対決。
対抗戦にそぐわないキャラクターと言われた武藤ながら、柔道を経た格闘技の実力は高く、グラウンドで高田を圧倒。
高田も膝の悪い武藤へのローキックの連打から鋭い蹴りに活路を見出すが、今や伝説となった武藤の蹴り足を捉えてからのドラゴンスクリューで靱帯を損傷。
更に死に技と化していた筈のプロレスの古典技、足4の字固めに破れた。
緊張感のある戦いながら、プロレスにこだわった武藤にも注目。
※8戦5勝3敗で新日本が勝利。
【余談】
●そもそもの発端とも言える蝶野の相手には、当初はUインターの舵取りをしていた宮戸優光が挙げられていたが新日との提携を嫌い9月に退団している。
●高田は、翌96年の1・4東京ドーム大会にて武藤への雪辱を果たしIWGP王者を獲得している(流出したベルトは橋本が奪回)。
●翌年2月の新日本札幌大会では永田ら若手選手同士による対抗戦がメインイベントで行われた。現在でもヤングライオンがメインを務めることは極めて異例のことである。
●この興行でキャラクターが注目された安生、高山、山本は「ゴールデン・カップス」なるユニットを結成(※特に安生は蝶野正洋を破る等、大化けを果たす)。
新日本のタッグ戦線を大いに賑わす等の大人気を獲得し、アイドル声優の富沢美智恵さんとCDまで出しているそうな。
帝王・高山の大事な大事なルーツである。
●後に、高田のヒクソンへの挑戦から生まれた興行が「PRIDE」であり、
解散に追い込まれたとは云え、その後のプロレス、総合格闘技にUインターが与えた影響は非常に大きな物がある。
※DVDマガジン「燃えよ!新日本プロレスvol.10」に完全収録。
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- 「キレちゃいないよ」と「ポカした」って同じ日に生まれた語録だったのか -- 名無しさん (2022-01-06 10:48:39)
- 金原はキムケンに蹴りをバカスカ入れてる試合も面白い。その前にチャンプアとやってるから身体がキック仕様になってたんだよな。 -- 名無しさん (2022-12-14 23:42:20)
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