黄蘭青(鉄鍋のジャン!)

ページ名:黄蘭青_鉄鍋のジャン__

登録日:2017/09/14 (木) 19:37:00
更新日:2024/02/09 Fri 13:50:30NEW!
所要時間:約 9 分で読めます



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鉄鍋のジャン! 料理人 陸一族 ラスボス 食感 傲慢 慢心 作中最強候補 野心家 チート ダジャレ好き ダジャレ 中国人 百蘭王 黄蘭青





ボクは―――どんな料理人も敵だと思った事はないんだ


誰が作ったものでもより良くなれば日本の中華料理界の発展にもつながるだろ


わかってほしいな!


いい料理を作るためならボクはいくらでも知恵を貸すよ!!



こう蘭青らんせいとは『鉄鍋のジャン!』の登場人物の名称である。



【概要】

笑顔を絶やさず寒いダジャレを連発する、穏やかな物腰の細目の中国人青年。
普段は他人をおちょくるような言動と飄々とした態度で周囲を煙に巻いているが、その正体はアジアの中華料理界は愚か食に関わる全てを牛耳る百蘭王パイランワンの孫*1であり、彼の後継者に指名されている青年。
そして(事実上の)無印でのラスボス
彼の生まれである陸一族については個別項目を参照。



【性格】

恵まれた将来が約束された黄だが、しかし黄本人は百蘭王の称号を継ぐ気など全く無く自分の名前である『黄蘭青』を新たな称号として世界の食を牛耳るつもりでいる野心家。
普段の穏やかで飄々とした態度も実際は「自分が最も優れている」「食感を使い熟せない奴等に負ける筈が無い」という不遜な自信家の本性を隠す仮面に過ぎない。
本気になったり普段のお調子者の仮面が剥がれると野心的な鋭い眼光が顔を出す。


幼少の頃から階一郎による厳しい英才教育を受けてきたジャンと同様に、祖父の百蘭王から徹底的に料理の修行をさせられてきた。
その修行の内容は、暴れる巨大真鯛を素手で掴まされたり、大雨の降る中青龍刀の上で小石の入った鍋を振るわせられるなどと言った、お前はどこの世紀末だと言わんばかりの別漫画裏料理界ばりの人権無視の荒行ばかり。
その為ジャンの背中と同じくほぼ全身に傷痕が残っている。
だが、不器用ながらも確かな絆のあった階一郎とジャンとは違い、過去に自分のことを「お前の代わりなどいくらでもいる」と言い放った百蘭王のことを毛嫌いしており、「暴君のあなたが死んでも誰も悲しまないでしょう」と笑顔で電話越しに皮肉っているなど、祖父と孫としての感情など1ミリも持ち合わせていない。まぁ残念でもないし当然。
それでも、「百蘭王」の称号と陸一族に関しては彼なりに誇りを持っており、後にジャンが「いらねぇんなら百蘭王の称号オレにくれよ(要約)」と言った時は、心の中で「百蘭王の称号はいらないけど、陸一族以外に継がせるわけにはいかないよ!!」とマジギレしていた。
……続編の『2nd』では結局、「百蘭王」の称号を引き継いだ。



【料理人として】

「料理は半歩先」を信念として掲げており、幼少からの拷問じみた修練と豊富な料理への知識から相手がどんな料理を作るのかを盛り付けも含め簡単に見抜く観察眼を持ち、その上で相手よりも美味い料理を簡単に作る事が出来る。
要するに、後のジャンプ漫画に出てくるストーキング野郎の綺麗Ver。
ただしあまりに常識外の発想の料理に対しては自身の観察眼も上手く働かない欠点を持つ。
なお自身の信条も睦十によると「ヤツ独特の謙遜」「食感を極め、他の料理人よりも一段高いレベルにいるという自信が言わせた言葉」と見ている。


しかし普段の笑顔や大らかで飄々とした態度から誤魔化されがちだが、内心の傲慢さが滲み出ているのか本性はかなり腹黒く素行も意外とよろしくない。
一見笑顔と優しい言葉で人のいいことを嘯くが、内心は他者を露骨に舐め腐っている上に強か。度々出る慇懃無礼さはジャンもキレるほど。
試合相手の調理に度々アドバイスするかのように口や手を出して、自分の思ったような料理に改竄する*2ことで相手の料理人としてのプライドをズタズタにして心をへし折ったり、楊との対決では対戦相手であった楊の存在を無視してジャンと調味料対決を持ちかけること*3さえあった。
またこうした言動は料理を勝負と捉える思想の表れであり、キリコからもジャンの同類として嫌悪されている。



まあボクもキミの料理が読めなかったけどさ


でもね―――料理の先を読むとか相手の裏をかくとか実はそんなのはボクの料理にはあんまり関係ないんだ


本当の強者はそんな小さな事とは関係なく勝ち進むんだからね!!



と語るように、普段の笑顔の仮面を取り払った素顔は自身を絶対強者と考え他料理人全てを見下す傲岸不遜な若き帝王である。
また、調理の途中までの段階を見れば料理の完成系までわかる、という驚異的な能力を持っていながらそれは単に自分の才覚の一端にすぎず、「読まれない料理を作ること自体は可能だがそれができたとしても自分のレベルに届くわけではない」という意味でもある。
要するに「料理は半歩先」という理念は「自分は誰にも負けない」という最強宣言の言い換えなのである。


そんな彼だが、睦十に対しては(決勝後に自分の料理を味を改良された上で完コピさせられたせいか)普通に実力を認め本心から敬意を表しており、墓参りにも訪れている。


なお、料理のセンスは抜きん出てるが、ダジャレのセンスは正直おっさんである。
……流石に天は二物を与えなかった、という事か……。




【制作料理】

主に「料理の食感」と「料理の見た目のインパクト」を重視しており、「まず視覚で圧倒する」と語るように彼の作る料理はどれも豊かな食感に溢れ、ビジュアル的にもダイナミックな作品ばかりである。
そして自分が得意とする「食感」を(料理人にとっての)第四の武器と考えており、食感を使い熟せない他の料理人の事は内心露骨に格下と見下している。
曰く「所詮三つの武器しか持たない料理人が四つ目の武器「食感」を持つボクに勝てるわけがないんだよ!!」*4


間違いなくジャンが戦ってきた相手の中では最強クラスの実力者だが、自らの十八番である食感に頼りすぎたり、自分の流儀を食べる者に押しつける無意識の傲慢さが黄の最大の欠点。
実際、それらが災いし最終決戦では二回連続で不覚を取ってしまった。


大会予選「指定された種類の米を使った日本人好みの炒飯」という課題で作成。
作中で黄が最初に作った料理で、炒飯を蓮の葉でくるんで蒸すことで中華風ちまきみたいな食感に仕上げた一皿。
古々米*5のパサつきを打ち消しつつ食欲を高める清々しい香りを炒飯に与えている。



  • 黄金脆鱗樟茶鴨(燻製アヒルと豆腐の包み揚げ)

「豆腐料理」という課題で製作した料理。
アヒルの燻製を開いて蒸した後骨を取り、アヒルの中に粗微塵切りにした皮蛋・鹹蛋の黄身、香菜を入れた豆腐を塗りつけ、更に豆腐の上に酥炸スーザーの衣*6を付け揚げた料理。
味はあっさりとした味。サクサクした衣に柔らかい豆腐部分、柔らかくもパリッとしたアヒル肉の食感がハーモニーを奏でる。また肉の油分も燻製にしてから蒸すことで程よく落ちているため栄養面でも高評価を得た。
加えて付けダレにレモン汁やリーペリンソース*7を採用することで色んな味を出している。



  • 桂林三層塔炸餃子(バクダンの三重包み蜂の巣揚げギョーザ)

「餃子」という課題で製作した料理。
内部が三重構造になった巨大揚げ餃子で、蜂の巣のようなサクサクの皮、ねっとりとしたタロイモやタケノコの餡、チリメンキャベツのシャッキリ感。
これらの多彩な食感を一度に味わえる、まさに大食感と呼ぶべき料理。
そして餃子の中には海苔を巻かれて封された紅酢のタレが仕込まれており、油を吸った皮のクドさを抑えている。 切り分けた瞬間中のタレが弾けるように流れ出すのでインパクトも強い。


なおこの餃子を作る際、材料からどんな餃子を作るかを読み、対戦相手に対し的確なアドバイスを送り盛り付けまで指摘して自分の良い様に変えてしまい、その上で僅差でこの餃子が勝った。
自分以外の料理人を舐め腐った黄の本性が見え隠れした料理である。



  • 透明の極辛ラー油/特辣玻璃龍蝦(伊勢エビの透明ラー油炒めマジックドラゴン盛り)

「21世紀の新しいオリジナル調味料」という課題の元、黄が楊との対決で作った調味料及び料理。
ラー油の方は、青唐辛子の色が出ないよう慎重に同じ油を使い回して何度も三種類の青唐辛子の成分を抽出・濃縮したもの。
作る際には

  1. 生の青唐辛子が入った大きなガラス瓶のような容器に熱した油を注いで漬け込み、香り付けとしてレモングラス、エゴマの葉、クミンを一緒に容器の中に加える。
  2. (1)で使った油を青唐辛子の辣粉と微塵切りにした生の青唐辛子がたっぷり入った寸胴鍋の中に注いで通常のラー油作りの要領で熱する。
  3. 大量の塩漬け青唐辛子と(2)で使った油を中華鍋で一緒に炒める。

という工程を踏んでおり非常に手間暇がかかっている。
この調味料は、「ラー油(や辛い調味料)は赤いモノ」という料理の常識・固定観念を完全にひっくり返した点が最大のポイント。
透明なので食材本来の色も最大限活かせるのもポイントの一つ。
他にも生・乾燥させたもの・塩漬けにした物の各三種類の青唐辛子を使って青唐辛子の味を最大まで引き出した為、ジャンとの間で勝手に行っていたラー油対決においては調味料の純粋な旨味という面でも勝っている。


『特辣玻璃龍蝦』の方は、上記のラー油でクワイと伊勢海老を炒めた非常にシンプルなもの。
大谷が「まるで透明なエビチリと例えた程の喉が焼けてしまうほどの凄まじい辛さを誇るが、その分伊勢海老の甘さが強調されてより甘みを感じられる事が出来、プリプリした伊勢海老と合わせたクワイのシャキシャキ食感により極上の美味さを感じる事が出来る。
また料理の異常なまでの辛さは、付け合わせの無塩バターを食べることで和らげることが可能。
伊勢海老の殻で作った龍のディスプレイを透明な支柱で支え、更に土台にドライアイスを仕込む事で空飛ぶ龍を彷彿とさせるなど、ビジュアル面でもド迫力のインパクトを与えている料理。
対戦相手の楊も料理の予測をさせず、素晴らしい出来の料理だったが、そんなことお構い無しとばかりに上記の「本当の強者はそんな小さな事とは関係なく勝ち進むんだからね」と言わしめ、ほとんど舐めプ状態で100点満点で圧勝してみせた。
なお、楊の公式戦はこれで最後。可哀想なんてもんじゃ……。


ただしジャンの『飲めるラー油』と比較して「『調味料として』全てにおいて勝っているか」と言われると、実際のところは正直言って微妙
黄のラー油の欠点はとにかく辛過ぎる事。これだけ辛過ぎると、下手に扱うと素材の味を全てぶち壊しにしかねない。
それに上記の「素材の色も活かせる」メリットも、逆を言うとこの極辛ラー油を使った料理は一見すると辛い料理だと分からないというデメリットにもなる事になり、辛味の苦手な人が間違えて食べてしまい、大惨事になる可能性も否定はできない。正直、「辛い料理が見た目で辛いと分からない」というのはかなり問題ある気がする……。
実際、「ただの伊勢海老の油炒め」と勘違いして油断していた特別審査員達は、あまりの辛さに*8一時期大パニックになってしまい、ミケロッティはオネエキャラを完全に崩壊させて水をねだり、大谷に至ってはゴジラの如く火を吹いてぶっ倒れてしまった。崔会長よくショック死しなかったな……。
コンセプト的にはジャンが以前作った激熱ゼラチンスープ入り春巻と似ており、使うには料理人の腕が大きく左右される、かなりのキワモノ調味料である。
それに極辛調味料故に「普通の人にも親しまれるか」という点に関しても非常に際どいラインである。*9
上記の通り調味料としてはかなりシビアな部類であり、腕のある料理人でないと扱いが難しい(=一般の家庭レベルではとても扱えない)代物。
劇中で100点満点を出せたのは、ぶっちゃけ言えば「食感」という武器を持ち、素材と調味料の相性を完璧に使いこなせる黄蘭青だからである。
もしも両方を出されたら、恐らく一般の人は大多数がジャンのラー油を支持する可能性が高いだろう。
もちろん、霧子のようにプロの人は黄のラー油を推す人も多いと思われる為、二人のラー油の総合的な出来は(事実上)全くの互角と思われる。
睦十は「二人のラー油は実質的には100点同士の引き分けじゃが、1000点満点ではどうかのう」と評価したが、実に的を得ていると言えるだろう。*10



準決勝「サメ料理」の課題で作った料理。黄曰く「皇帝の料理」
サメ肉は新鮮なものをワインビネガーに漬け込む事で、臭み抜きも完璧に行っている。


前菜はサメ肉の煮こごり。
クコの実の入ったゼラチン、牛肉、押し豆腐、サメ皮の千切りを混ぜたそぼろ状のサメ肉といった、各種具材の食感が渾然一体となって主張して来る一品。
形も四層のケーキのようで美しく、煮こごりは薄い醤油味。


主菜はサメ肉のシャブシャブ。
その名の通り、新鮮なサメ肉と心臓の刺身、そして生のフカヒレと魚肚*11、野菜を、中国の鍋「火鍋子」を使用する寄せ鍋形式で食する。
サメの刺身はきっかり『2秒』上湯スープの湯に通すことで、口の中で雲の様な軽い食感を楽しむことが出来る。
付けダレはピリ辛ソースとクルミのソースで、肉の水っぽさを消し美味しく食べられる。
メインディッシュとなる貴重なサメの心臓は箸で掴んだ途端に巻きついてくる程に力強いが、上湯スープにくぐらせると口の中で踊る様な繊細な食感を楽しむことが出来る。
更に生フカヒレのコリコリシャキシャキした歯応えや、魚肚のプルプルとした食感まで味わえる。


デザート八宝飯*12のアレンジ。
フワフワのサメ肉のミンチと下のねっとりしたもち米、中心のザクロを混ぜた緑豆あんに加えて、ドライフルーツと熱いシロップに混ぜたフカヒレによって、食感も味も抜群。


……と、このように素晴らしい出来の料理ではあるが、本当の目的は、複数の品目を作ることで緻密に計算された多数の食感を生み出し、怒涛の食感の波状攻撃で人を魅了して圧倒・支配し、100満点しか出さなくさせてしまうようにする事。
かつての五行道士同様に人の心を支配する事を目的とした、看板に偽りなしの『皇帝(支配者)の料理』である。*13
しかもわざわざアジア料理界の皇帝たる『百蘭王』の名を冠した辺り、この料理こそが『皇帝(百蘭王)』であり、それ以外の料理は皇帝の下僕であるという、日本の料理人など(ジャンや霧子達ですら)引き立て役の噛ませ犬としか思っていない、黄の傲慢で傲岸不遜な本性が現れた料理と言える。*14


その完成度の高さ故に黄とついでに大谷は結果前から完全に勝利宣言し、ジャンも内心敗北を感じたほどであったが、実は要となるメインのサメ肉は『2秒ジャスト』湯に通さないと身がパサパサ又はブヨブヨになってしまい、味が大幅に劣化するという致命的な弱点がある。
しかも「100点満点で勝てる」とタカをくくっていた黄はその欠点を無自覚で見落とし、更に扱いがシビアな食材を食い手の好みに任せる「シャブシャブ」という形で出してしまうという痛恨のミスを犯してしまった。
このミスのせいで

「生に近い方が好きだから『2秒より早く』湯から引き上げた」
「よく火が通ってないと嫌だから『2秒より長く』湯に通した」

……という捻くれた観客(一般審査員)が少数いた*15為に、黄の思惑は見事に崩れ去り、あわや敗退の危機に陥った。*16
そもそも問題の5人のうち2人の一般審査員からは「シャブシャブなんだから自由に食わせろ(要約)」と黄の命令には不満を露わにし、今更「2秒を守らなかったのか?」と焦る黄に「こいつ何言ってんの?」と言わんばかりの表情で「(肉の火加減の好みがあるんだから)当たり前じゃん!」と平然と言い返していた。このぐらいで捻くれ者扱いされるのもあんまりな気がする。


この欠点は舌が肥えていてかつ完璧な美味い料理を求める大谷などの特別審査員では気が付かず、基本的に味の素人である一般審査員だからこそ陥る欠点。
事実ジャンも霧子も、睦十からこの欠点を指摘されるまで気が付くことはなかった。
1秒でもズレたら台無しになってしまう際どい料理を作っておきながら50人もいる一般審査員に「2秒ぴったりで鍋から上げてください」一言言っただけで全員が守ることを期待するのは、もし日頃から大勢の一般客を相手にしている料理店で働いていれば出てこない甘い考えである。
この点は閉鎖的な環境でしか料理をさせた事がない、百蘭王含めた陸一族のスパルタ英才教育がマイナスになってしまったと言えるだろう。*17
作中で睦十が突っ込んでいたが、このルールならばちゃんと自分で適切に火を通してから客に提供するか、せめてもっと念入りに2秒を守るように伝えるべきだった。
これにより今まで舐めプ試合ばかりしてきた黄も完全に鼻っ柱をヘシ折られ、「ボクの料理も簡単には人の心を支配できない」と悟る。そして決勝では舐めずに本気で取り組む事を誓ったのだった。
劇中チートクラスの料理人である黄の鼻っ柱を折ったのが、ジャン達ライバル料理人でもなく、大谷みたいなプロの食通でもなく、ただの一般人だったのだから、実に皮肉であると言えるだろう。
また余談だが、直前に霧子は同じく食い手の好みで味を左右される(トッピングを自由にできる)サメ肉の炊き込みご飯を出しており、なおかつ100点満点を取っている。



  • 水芙蓉蓮藕(黄蘭青風 21世紀のレンコンの詰め物)

大会決勝の課題「21世紀に相応しいダチョウ料理」で出した料理。
すりおろした蓮根を元の蓮根の形に成型し直し、ダチョウの生卵を混ぜたダチョウの挽肉、油で戻した鹿のアキレス腱、ボラの卵、蒸した金華豚を成形した蓮根の穴に詰めて薄い餡を掛けたもの。
全ての食材の食感を全く同じ柔らかさにすることで、ソフトクリームよりもなお柔らかいクリームのようなふわふわとした食感を実現しており、食べれば口の中で儚く溶けていく。
当然それぞれの食材が持つ存在感は薄れさせることなく維持。
「21世紀の人類は歯と顎が退化するから、それでも食べられる美味しいもの」 というコンセプトの通り、喉越しそのものが美味しく感じられる。
中国の崋山に見立てた巨大な蓮根の山を二つも並べる壮大な盛り付けが成されており、ビジュアル面でのインパクトや美しさも優れている。


なお現実の2020年代には食材を柔らかくすりおろしたものを3Dプリンタで再形成して味・栄養素・見た目は元の食材とできるだけ同等のまま固さだけは大きく落とした介護食品が実用化されて、噛み砕いて嚥下する力が衰えた人にも美味しいものを食べてもらえるような製品が生まれている。
監修のこやま氏のアイディアだろうが「ガチで21世紀の未来人のための料理を編み出していた」と話題になった。


しかし一般審査員にはそのテーマの高尚さは理解されず、むしろ蓮根らしからぬ歯ごたえの無さが「カスミか雲でも食ってるみたいで楽しくない」と大不評だった。


やっぱり…………そう思う?
フフッ ボクがなぜ同じ山を二つ作ったと思う?


皆さんはまだボクの料理のテーマをよく理解してないみたいですね!!評価するのは早すぎますよ!



  • 荷華蓮藕蓬(黄蘭青風 現代人のためのレンコンの詰め物)

黄が「水芙蓉蓮藕」と一緒に出した料理。
見た目や材料・蓮根以外の食材を蓮根の穴に詰めるという手法は全く同じだが、調理法を変えることによって同じ材料から全く違う食感を出した恐るべき一品。
こちらは蓮根やその他食材が持つ本来の食感を最大限に活かした、強烈ながらも心地良い歯ごたえを楽しむことができる。
そのために蓮根はそのまま使い、ダチョウ肉は青椒肉絲のように細切りにした上でダチョウの卵で作った皮蛋・鹹蛋を混ぜ、鹿のアキレス腱は水で戻して弾力を出し、ボラの卵は干してカラスミに、金華豚は千切りにしている。
「歯が退化していない20世紀の人類には水芙蓉蓮藕は早すぎる」という欠点を予め予見し、なおかつ頭の悪い審査員が柔らかい蓮根に文句を付けると踏んでその評価を覆させるために作った、「料理は半歩先」の真髄というべき一皿である。


厳密に言えば「21世紀の料理」ではなく「審査員のための料理」であるが、二品を食べ比べる事で味と食感の違いを大いに楽しませ、2品を交互に食べさせることで食べる人間に「哲学」をも考えさせる脅威の品であった。


どちらも凄まじい出来の料理だったが、二品共「『21世紀の料理』の課題にこだわり過ぎてテーマ食材の『ダチョウ肉』があまり活きていない=この料理ならば別にわざわざ『ダチョウ肉』を使わなくても成り立つ」という事が唯一の欠点。
この事を「大嫌いなジャンはもちろんだが、蘭青を優勝させて目障りな百蘭王勢力を日本に台頭させたくもない」と思っていた大谷につけこまれ、「いい料理やが、満点をくれてやるわけにはいかんな」と1点だけ減点された。
もっとも大谷曰く、「蘭青の料理に欠点があったのは事実だから、普通に(=打算無しで純粋に)審査しても9点ぐらいやった」そうだが。



ねえ Wiki篭りクン 「追記・修正は半歩先」なんだよ わかってる?
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読む人の予想の半歩先を行く項目を作ることこそが 21世紀のアニヲタWikiなんだ!!



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  • 読んだのは大分前だから覚えていないけど、コイツ強かった気?伍行の方が記憶に残っている -- 名無しさん (2017-09-14 19:48:28)
  • 作成乙です、鮫シャブは食感が一瞬しかもたないとかならともかく、変に遊び見すぎなんだよ -- 名無しさん (2017-09-14 19:53:20)
  • 強かったとは思うが、陸十が評するほど圧倒的には見えなかった。途中から相手の料理の先読みもできなくなったし -- 名無しさん (2017-09-14 19:57:59)
  • 自分の料理を客観的に見られないのが弱点という印象 -- 名無しさん (2017-09-14 21:20:33)
  • まぁそこまで圧倒的ではないにせよ、真正面から戦うって事に関しては敵対した奴の中では最高峰だろうな、技量はジャン相手にも最後まで引けを取らなかったし。自己本位で考えがちな欠点をどうにかしたら完璧だったろうに。 -- 名無しさん (2017-09-14 21:38:24)
  • 実際決勝もダチョウというより蓮根料理っぽい印象ではあったな -- 名無しさん (2017-09-20 19:20:51)
  • 続編ではこいつの後継者とか弟子が出てくるのかな? -- 名無しさん (2018-01-23 17:59:02)
  • 黄とジャンの一騎打ち見たかった -- 名無しさん (2019-08-26 13:23:18)
  • 優れた調理技術の持ち主しかいない環境でもっとも優れた調理人だけを求められ育てられたから「調理過程の最後を振る舞う相手自身に任せる必要のあるしゃぶしゃぶは調理過程をきっちり守ってもらえないと成立しない」欠点を示されるとはなんとも因果な…… -- 名無しさん (2022-03-09 13:39:01)
  • Rとか2ndではあまり触れられないのは強すぎて迂闊に出せないためかな -- 名無しさん (2022-03-09 13:42:29)

#comment

*1 「百蘭王」の名は陸一族による襲名制であるが、苗字が違う為、恐らく母方の祖父であると考えられる。
*2 おまけに出来上がった料理は元々対戦相手が作ろうとした料理より全てにおいて遥かに出来がいい
*3 当然ながら楊は怒り心頭。
*4 三つの武器:「味」「香り」「盛り付けの美しさ」のこと
*5 収穫年度から2年経過したお米のこと。炊くと粘りがあまりなく、あっさりした味わいとなる。
*6 小麦粉・浮き粉(片栗粉やベーキングパウダーも可)・塩と水と卵白と油でといて作った衣。浮き粉と油の作用によりサクサク(酥)した食感になる。言わば中華版フリッターで、「酥炸蝦仁(中華風エビのフリッター)」が有名
*7 ウスターソースの源流。考案者であるイギリスの薬剤師リー氏とペリンズ氏が名前の由来。中華とは無縁の調味料をも使いこなす黄の引き出しの多さを物語っている
*8 前がジャンの辛そうで辛くない飲めるラー油だったので余計に。
*9 ジャンの飲めるラー油はいわゆる現実で言う「食べるラー油」の為、よほど辛味がダメな人以外は食べられる。
*10 ちなみに霧子はやたらと黄のラー油を推していたが、これは半分はジャンが大嫌いだからというヤッカミである。それでいいのか五番町飯店の跡取り娘。
*11 魚の浮き袋の事。この場合はサメの浮き袋を使ったと思われる。
*12 簡単に言えば中国版おはぎ。砂糖で甘く炊いたもち米の表面にドライフルーツを飾った中国の古いお菓子。
*13 五行はかつて仏跳牆によって香りで人の心を支配した。黄の場合は食感で同じ事をやってのけようとした訳である。
*14 実際、ジャンはここで脱落すると思っていたので、決勝で霧子を噛ませにする気満々であった。
*15 言うなれば、ステーキが人によってレアが好きだったりウェルダンが好みだったりと、好みがバラバラなのと同じ理屈。
*16 幸い5人だけだったので5点だけの減点で済んだ。睦十の言う通りヘソ曲がりがあと一人いたらジャンに負けていたし、10人いたらザザビーにも負けていた。黄にとってヒヤヒヤものの勝負だったと言えるだろう。
*17 ジャンも初期の頃、祖父・階一郎とマンツーマン指導しかされなかった為、大衆向けの料理で凡ミスした、似たような展開があった。

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