大威徳明王

ページ名:大威徳明王

登録日:2016/11/17 Thu 05:11:15
更新日:2024/01/29 Mon 13:45:57NEW!
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仏教 密教 明王 五大明王 水牛 阿弥陀如来 チベット 閻魔スレイヤー 文殊菩薩 大威徳明王



■大威徳明王

『大威徳明王』は大乗仏教(密教)の尊格の一つ。
明王部の中でも特に重要な役割を与えられた五大明王の一尊として知られる。
異名を“六足尊”と云い、これはその名の様に六本足をしているからである。
更に[[青い水牛>マヒシャ(インド神話)]]に乗ると云うそれ以上に特徴的な要素もあるので見分けやすい。
大威徳夜叉明王は阿弥陀如来の教令輪身として西方に配される。


【概要】

梵名をヤマーンタカと云い、これを訳すと「死神ヤマをも降した(殺した)者」となる。
ヤマはインド神話の最初の死者であるが故に冥府の支配者であり、仏教に於いては地獄の支配者たる閻魔天。
中国では道教思想と習合した結果、日本の民間伝承でもよく知られる閻魔大王となって両方の姿が伝えられた。
大威徳明王はこのヤマ(閻魔)をも殺す者とされる事から、梵名を音写(当て字)した“閻曼徳迦えんまんとくか”や“降閻魔尊ごうえんまそん”の異名も持つ。
中国では降した相手の閻魔とも同一視されたのか閻魔王となり、真言でも“死の神の姿をした尊者よ”と語りかけられている。


他の明王もそうであるが、誕生までに真逆の属性をも含む様々な要素が合体しているらしく、梵名の異名としても“ヴァジュラ・バイラヴァ(畏怖すべき金剛)”、“ヤマーリ(死神の天敵)”、“マヒシャ・サンヴァラ(水牛を抑える者)”と云った名前が挙げられる。


“ヤマーリ”は前述の通りヤマ(閻魔)の天敵と云う意味だが、


“ヴァジュラ・バイラヴァ”のバイラヴァはシヴァ神の異名。
特に仏教的に言えば明王の様な忿怒相のシヴァ=最も恐ろしい姿を指す。
金剛(ヴァジュラ)は仏教では元の意味から更に幅広い用法があり、絶対的や完全無欠の様な意味合いで広く使われる。


“マヒシャ・サンヴァラ”のマヒシャとはインド神話の強大なアスラ王マヒシャ(マヒシャースラ)*1の事であり、このアスラ(魔神)は水牛から生まれてきたと云う出自から水牛を象徴としている。
大威徳明王の乗る水牛はこのアスラの象徴とされる事から、神々をも倒したマヒシャを従え、畏怖させる程の力を持つ尊格とも言える。
因みに、前述のヤマも水牛に乗っており、仏教でも閻魔天の姿と名前では水牛に乗る姿のまま取り入れられている。


尊格のとにかく特徴的な姿な姿の解説としては他にも六つの頭で六道(天・人・修羅・餓鬼・畜生・地獄)を見渡し、六つの腕に携えた武器で仏の法を守護し、六つの足で六の波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若)を絶え間無く歩くと解説される。歩かされてるのは水牛さんだけどな!


“天神様”こと大宰府天満宮に祀られる菅原道真公の御霊ごりょうに贈られた神号である“日本太政威徳天”や“大聖威徳天”の呼び名はこの尊格に由来する名前である。
御霊の神号である“天満大自在天神”の呼び名も大自在天(シヴァ)に由来する辺り、如何に当時の祟り暴れっぷりが凄まじかったのかがうかがえる。


五大明王としては阿弥陀如来の教令輪身として西方に配される。
他の五大明王は正法輪身(菩薩形)の方は一般的にはそこまで強調されていないが、大威徳明王の場合は文殊菩薩の化身として広く信仰が見られる。
特に西蔵(チベット)密教ではインドの後期密教やヒンドゥーの影響もあってか、大威徳明王=ヤマーンタカを元に派生した尊格の姿が伝えられている。


【西蔵密教】

“ヤマーンタカ”(大威徳)は西蔵密教では護法神の一つであり、代表格が“マハーカーラ”(大黒)や“アチャラ=チャンダマハローシャナ”(不動)である等、矢張り日本での“明王”に近い。


四方・四維・上下を守る十忿怒尊の一つとして筆頭の東を守る他、異名である“ヴァジュラ・バイラヴァ”(怖畏金剛)の名で非常に重要な尊格としての信仰を集める。
“ヴァジュラ・バイラヴァ”がシヴァ神の異名に由来する事もあってか、強大な護法、更にはヒンドゥーのハタ・ヨーガの影響を受けて発展した無上兪伽タントラの重要尊格としても名が挙げられている。
“ヴァジュラ・バイラヴァ”は西蔵密教特有のヒンドゥーの影響を色濃く受けた姿で、男尊単体以上にヤブユム尊(男女が交合した姿の御仏)としての衝撃的な姿がよく紹介されている。
水牛の頭を中心に九面三十四臂十六足、持物にカルタリ(宝斧)・頭蓋骨杯・梵天(ブラフマー)の首・串刺しの人間を持つ淫欲相(フル勃起)の悍ましい姿を顕すという、中期密教から発展した日本密教や仏教の常識からは大きく外れた姿をしているヘールカ(守護尊)である。


幾つかのヘールカは降三世明王と同様にシヴァ神に由来する、或いは似た姿の尊格がシヴァとその妃を踏みつける姿で顕される。そしてブラフマーは首級をぶら下げられる。……ディーヴァ殺すべし、慈悲は無い。
ヘールカは西蔵密教の僧にとってはヒンドゥーの吸収と打倒を願った尊格であり、今となっては共産主義を打倒したい所であろう。僧侶が自身の守り神とした尊格でもあり“秘密仏”(イダム)とも呼ばれる。
最大宗派のゲルク派に於いては宗祖ツォンカパ大師の守護尊でもあるため、宗派の三大本尊の一つとして極めて重視される事からも解るように、西蔵密教では如来にも匹敵する尊格として扱われる事が多い。


西蔵密教に於けるヤマーンタカの誕生譚として、盗賊に襲われて悟りを妨げられた修行僧が水牛の頭をした悪鬼に堕ちた時に文殊菩薩(マンジュシュリー)が自らも更に恐ろしい三つ首の水牛の忿怒相を持って調伏したとする説話があり、この時の文殊菩薩の変身がヤマーンタカなのだと云う。
西蔵密教にはヤマーンタカの強力な行法により敵対者や異教徒を度脱(呪殺)したと云う逸話も残る。


一方、ヤマーンタカ(大威徳)は阿弥陀=無量寿如来(アミターユス)の化身でもあり、広く修行僧を見守るのだと云う。


この他“ヤマーリ”(降閻魔)の名を冠する尊格も伝えられており、この場合も守護尊として見なされると云う。


【像容】

六面六臂六足で水牛に乗る。
持物として戟・弓・索・剣・箭(矢)・宝棒が説かれるが、我が国では弓と矢の替わりに檀陀印を結ばせる姿が多い。
西蔵密教での姿からは遥かに物足りないが、中国~日本では多脚の仏尊は珍しいので前述の様に“六足尊”や“六足金剛”の異名がある。だから、歩かされてるのは下の水牛さんだけどな!


【真言】


■オン シュチリ キャラロハ ウン ケン ソワカ


【種字】


■キリク



追記修正は水牛に乗って六道を渡り歩きながらお願いします。


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  • グラブルとかのマヒシャの語源か。アイツ水牛だったんだな・・・ -- 名無しさん (2016-11-17 12:13:23)
  • ↑更に親父も水牛との間の子だから、マヒシャさんは水牛の血の方が濃いのだ。(そいつに負けたインドラ以下の神々はどうなんだって話だが) -- 名無しさん (2016-11-17 12:23:51)
  • ↑だいたいブラフマーのせい……とも言い難いんだよな。ようは真摯に修行した奴にはディーヴァもアスラも差別せずに加護を与えてるってだけだから。その加護を悪用するような奴には与えんなとも言えるが -- 名無しさん (2023-03-23 20:41:10)
  • ヴァジュラバイラヴァのタンカを見たけど、この世の獣性・暴力の象徴のような尊格だった。 -- 名無しさん (2023-03-26 19:01:07)
  • それでも体に対してごイチモツが控えめなのは仏画だからなんですかね -- 名無しさん (2023-03-26 23:49:18)
  • 前言撤回。イチモツのサイズは絵師によるとしか言えなかった。 -- 名無しさん (2023-03-27 20:15:50)

#comment

*1 ※ドゥルガー女神誕生譚に登場する水牛のアスラ。オッサン形態と使い分け可能。苦行によりブラフマーから神々や男に負けないという明らかに余計な祝福を与えられ、その力で神々を蹂躙。その祝福から外れた戦闘女神ドゥルガーを誕生させる事によりやっと倒された。

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