ラー/アメン・ラー(神名)

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登録日:2015/11/24 Tue 09:49:13
更新日:2024/01/16 Tue 13:06:02NEW!
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■ラー/アメン・ラー


「ラー(Ra)」または「レー(Re)」は、古代エジプトの太陽神。
太陽(ラー、レー)と云う、非常に解りやすいモチーフの神であった為か古くから最高位の神格を獲得し、原初の創造神アトゥムとも習合しアトゥム・ラーと呼ばれるようになる。
これによって、後にはアトゥムはラーの一側面の顕れだと考えられる様になった。
神系譜では世界の創造よりも以前に存在していた規格外の神*1
アトゥムと習合した事により大気シュウ湿気テフヌトの父にしてヌウト大地ゲブの祖父とされた。
天地創造は抱き合ったまま離れようとしないヌウトとゲブをラーに命じられたシュウが無理矢理に引き離した事で起きたとされる。
信仰的な精神的規範を神格化した正義マアト女神の父ともされ、それ故に神々の裁判官の役割を果たす神話もある。
後には悪神としての側面が強調されたセトとも関係が深く、一説には従者は疎かラーの息子であるとまでされる。


別の神話では太陽その物の化身としてヌウトから生まれ、太陽の船マンジェトに乗り昼には現世を、夜の船メスケトに乗り夜には冥界を渡るともされており、こちらの方が太陽神の原型の姿に近いのかもしれない。
稀に起こる日蝕はラーの旅路を邪魔する蛇神アペプが太陽の船を呑み込む為だと考えられていたが、その企みの成功の確立が極めて低いのは日蝕が天体ショーとしてわざわざニュースになる事からもご存知の通り。
共に船に乗り込む従者は月神トートとされるのが一般的だが、以前はセトの役目であったと云う。



太陽神学

下エジプトに於ける一大学術センターであったへリオポリス神官団の仰ぐ主神であり、紀元前3000年頃に歴史上初めて上下エジプトを統一した上エジプトのメネス王は同地の支配力を高めるべく自らの氏神であった天空神ホルスとラーを習合させてラー・ホルアクティとし信仰の基盤とした。
これ以降、現人神たるファラオは自らを「ラーの息子」と称する様になっていった*2


ここから、王権とへリオポリス神官団は強い結びつきにより共に権威を獲得していく事になる。
そして、第4王朝時代には神官ウセル・カア・フが自らファラオの地位を簒奪し新たに第5王朝を築くに至った。


……こうして、天界の王ラーと、その化身にして地上の王たるファラオを中心に据えた「太陽神学」が確立し、以降のエジプト全土に及ぶ信仰の基盤となる。
この第3~第6王朝時代を「古王国時代」と呼び、ピラミッド群はこの時期に建造された*3
上部が尖っているピラミッドとオベリスクは太陽から放たれる放射光を顕し、地上に於けるラーの依代たる象徴である。



これぞ正に、地上に再現された神の世界。
不滅のラーの化身たる永遠の支配であるファラオが死後一時的な旅路の試練の後にラーと合一し、再び地上に還る証なのであった。




追記修正お願いします。




[#include(name=テンプレ2)]












イシス「おじいちゃんお口開けてね~いい子だからご飯食べましょうね~、ほらよだれも拭き拭きしましょうね~(暗黒微笑)」


ラー「……んあ~……」






……さて、太陽神ラーが統一王朝以前からの力を持った神であり、メネス王による統一王朝樹立以降には完全に最高神として定着すると共に、第30王朝の滅亡から前3世紀のローマ帝国による併合を受けるまでの長い時を信仰上は疎か、実際の政治の場に於いても重要な神であった事は間違いない。


……が、実は「エジプト」と一括りにされたり、海が邪魔で殆ど遠方の地域からの侵略者が来なかったので忘れられがちだが、エジプトは同地域内に住む部族や土地による共存と争いの歴史を繰り返しており、更に彼らは各々が信仰する氏神も持っている……と、割とカオスな土台があるのである。*4


この複雑な土台は、時代が降るにつれて信仰が統合、神学が体系化されても尚、前述のへリオポリスを含めて4つもの総本山(へリオポリス、ヘルモポリス、メンフィス、テーベ)が存在していた事からも窺える*5



……つまり、ラーは統一王朝により選ばれた神ではあったが、その支配はあくまでも暫定的な物であり、根強い他地域の信仰までは崩せなかったし、地域によっては権威を妥協せざるを得なかったであろう事が神話からも窺えるのである。


ラーの地位を確立させた統一王朝の安寧は第6王朝を以て終了し、第7~第10王朝は再び国内が乱れる事になる。
そして、ラーの権威を脅かすような以降のdis神話もまた生まれていったのかもしれない。



①ラー爺ちゃん人類を滅ぼしかける

天地創造の神であるラーだが、年老いた神をナメきった人間達はラーに反抗的になるばかりか、謀叛(?)まで企てた。
そこで、ラーは牝牛の角を持つ勇猛な女神ハトホル(セクメト)に人類の皆殺しを命じた。


ハトホル「“殺”ってきます!(純真)」


……しかし、無慈悲さは命じたラーが引くほどに凄まじく……。



ハトホル「アタシ今体温何度あるのかなーッ!?(大地を真っ赤に染める大暴れ)」


ラー「アイエエエエエエエエ!?(失禁)」



そこで、ラーはハトホルを酔わせて記憶をすっ飛ばし人類滅亡を阻止したと云う……。


ハトホル「あれ~?アタシ何してたっけ~!?」


ラー「埃及埃及埃及埃及埃及埃及埃及……(必死)」



……ジジイ、反省しろ。



②耄碌じいさん「秘密の名前」を奪われる


農耕神にして、今は冥府の神となったオシリスの妻であるイシスは、息子ホルスと共に宿敵セトへの復讐を遂げて平穏に暮らしていたものの、夫のいない家庭の暮らしを安泰させたかったのか自らの邪な野望の為かホルスに曾祖父のラーが持つ天地を支配する「秘密の名」の権利を与えようと思い立った。


母子家庭を支える技能として魔術を極めていた彼女は、権威ばかりあって皆に尊敬されているが既に耄碌しているラーの下を訪れ、よだれを採取する事に成功した。


……そして、ラーのよだれと土を混ぜ合わせてラーの嫌いな毒蛇(アペプ)を創ると、それを玉座にけしかけた。
無論、耄碌していたラーはなすすべもなく咬まれて苦しんだ。


そして、頃合いを見計らって何食わぬ顔で再訪したハトホルは治療を条件にラーの「秘密の名前」を聞き出し、母子で玉座に就く事が出来たと云う



……めでたしめでた……し?




※後の神系譜とは食い違いがあるが、イシスをラーの娘として父から主権を奪おうとする神話がある為、その変型とも考えられる。




余談


この他のへリオポリス以外の神学センターにもラーの主権を奪う神話が残る。
例えば、メンフィス神話の主神プタハはラーをも含めたへリオポリスの語るエジプト9柱神の本性であると主張されているし、エジプト神話を代表する知恵の神として名高い月神トートはヘルモポリス神話の主神であり、嘗てはラーの従者とされていたのをトートこそが創造神であると説いたのである。
ちなみに、後にギリシャ人がトートとヘルメスを同一視した事により誕生した概念が神智学上の最高の賢人ヘルメス・トリスメギストス(3倍に偉大なヘルメス)である。





追記修正お願いします。



[#include(name=テンプレ2)]
















???「茶番は終わりだ!若返ったし!!」












……さて、今日でも太陽神ラーの名前はエジプト神話の最高神として燦然と輝いている訳だが、現在のラーはもう一つの呼び名でもよく知られている。
……そう、偉大なる宇宙創造の至高神アメン・ラー(Amen ra)」……として。


混乱期を乗り越え第11王朝を樹立したのはテーベの豪族であった。
そして、元来のテーベの主神はメンチュと呼ばれる神だったのだが、第12王朝の王である官吏出身のアメン・エム・ハアト(アメンは先に在り)は、自らの氏神アメンを主神に据え変え、更にラーと習合させた至高神「アメン・ラー」として爆誕させたのである。


この効果は凄まじく、以降の「アメン・ラー」信仰は「中王国時代」「新王国時代」まで変わらずに続き、古代エジプトの絶頂期と共に内外にまで至高神「アメン・ラー」の名前を轟かせたと云う。
※そして、やっぱり「旧約聖書」で呪詛を吐かれている。


一応、第18王朝期には「アメン・ラー」信仰により力を持ち過ぎたテーベ神官団の力を嫌ったイクナートン王により唯一神「アトン(またはアテン)」なる神の信仰が強要された事があったが、この王の死によりあっさりと廃れている。
……が、この「アテン」信仰は後に現れるあの「」との関連も囁かれる(歴史的な観点から)。
因みに、アテン信仰を進めてもラーの威光は衰えなかったらしく、ちゃっかりとアテン・ラーとして習合したりしている。同じやないかい。


尚、アメンの名は「隠れた者」を意味するとされる。


アメン・ラー」の威光は凄まじく、ローマ帝国はエジプトの神々の王である事から自分達の主神であったユピテルとすら同一視した。
また、アメンがエジプトでは殆ど知られていなかったものの天空を支配する神とされる事から、その由来をセム語族の主神バアルと関連付けで語られる事もある。


ともかく以前から最高神であったラーだが、これによってエジプト神話中で最大の神としての権威が揺るぎないものとなったのであった。


アメン・ラー「成し遂げたぜ」




姿

■ラー
日輪を掲げた男神。
頭部は牡羊、スカラベで顕される。
ホルスと習合、または父神となってからは隼の頭でも顕された。
シンボルとしては単に日輪その物として顕され、習合した神と一緒に描かれた。


■アメン・ラー
冠を被った男神。
冠はホルスの2本の羽根とされる。
理想的な天上世界でのファラオの姿であり、今度こそ本当に不死不滅不老の存在である。



習合した神

前述の様に歴史の中で様々な神々と習合されている。
客観的には常にラー側からの事情で無いのが面白い所(それだけ人気があった神なのだろう)。



■アトゥム
へリオポリスの世界創造の神。
原初の水(ヌン)より立ち顕れ、思考により己と世界を創造した。
アトゥム・ラーとしては日没の象徴。


ホルス
隼の姿で描かれる場合も多い。
上エジプトで古くから信仰されていた天空神であり、ラーと習合した事によりファラオの化身にして守護者となった。
ラー・ホルアハティとしては日の出の象徴。
古く、人気のある神だけにオシリス信仰にも取り入れられ、そちらでは息子にしてセトに奪われた主権を取り戻す英雄神である。


オシリス
下エジプトで根強い信仰を集めていた冥府の神。
元来はシュメール系の人々が連れて来た外来の農耕神であったと考えられており、付属するバアル-ドゥムジ系統の「冥府下り」の信仰が冥界神としての属性の獲得に繋がったと思われる。
不死不滅のラーとは敵対する思想の神とされたが後に習合。
妻とされるイシスがラーの「秘密の名」を奪おうとする神話は敵対していた時代の創作なのかもしれない。






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  • ヲー・・・なんでもない -- 名無しさん (2015-11-24 10:36:33)
  • 初代ペルソナでヴィシュヌの存在が強すぎて主人公の最強ペルソナなのに存在感が薄い -- 名無しさん (2015-11-24 12:57:19)
  • どうしても遊戯王のあれが脳裏をよぎってしまうのはわかる。ドジリスちゃんの嫁がホルスさんとか思うと何かこう…w -- 名無しさん (2015-11-24 13:03:09)
  • やはりエジプトには古代ニンジャ真実が隠されていたようだな・・・ -- 名無しさん (2015-11-24 13:13:32)
  • ↑4 (ヲーについては)やめろ、ミザエル -- 名無しさん (2015-11-24 19:36:34)
  • なんか、必要以上にイシス夫人が悪く書かれているような......。.........あの人、かなりの良妻賢母なお方やんけ。夫が亡くなって、泣いて泣いて泣きすぎて、ナイル川大洪水にするくらいやし......。 -- 名無しさん (2015-11-24 20:27:24)
  • ↑それはいいことなのか…いや、あの一帯では一応恵みとはされてきたけども -- 名無しさん (2015-11-24 20:42:27)
  • 黄金の太陽で知ったなぁ -- 名無しさん (2015-11-24 23:37:02)
  • 黄金の太陽では岩男,exeみたいなパンチだったけどDSでスーパーロボットみたいな演出でかっこよくなってたw -- 名無しさん (2015-11-25 01:28:07)
  • なんでやついに不死鳥実装でキンタマーと合わせたら使いで出たやろ! しかしどこの神話でも神の改ざんは行われてるんだなあ -- 名無しさん (2015-11-26 00:31:24)
  • いかにも異国の神って感じの名前の語感が好きだw -- 名無しさん (2015-11-26 01:18:08)
  • ストライカーパック感 -- 名無しさん (2016-07-11 18:34:17)
  • 魔術師の赤のデザインの元ネタの一つでもあるんだよね -- 名無しさん (2016-07-11 19:04:47)
  • 遊戯王だけじゃなくて、原典でも超☆融☆合してたのか -- 名無しさん (2016-09-06 18:37:38)
  • 太陽神が月神と夜の世界を旅するという神話は月が太陽の光に照らされて輝くことを意味していた…? -- 名無しさん (2018-04-10 03:01:26)
  • やらかして人類滅ぼしかけたならば、神々の記でのスズメ(悪鳥)扱いも納得行くな。アメン神(メジェド様)掴んでアメン・ラー形態してるし -- 名無しさん (2019-12-08 18:42:45)
  • ラー/アメンの所だけ目に入ったからラーメンの項目かと思った -- 名無しさん (2021-12-20 19:51:43)

#comment

*1 世界すら生まれていないので
*2 この、初代~第2王朝までを「初期王朝時代」と呼ぶ
*3 近年の研究により異説も多い
*4 肥沃な下エジプトでは農耕のみで生活出来たが上エジプトは半農半牧が主流で、狩猟に長け好戦的だった上エジプトの民が下エジプトへの憧れを持っていた事が統一王朝の樹立に向かったとされている
*5 各所の神官達は異なる神による異なる教義まで発展させていたのだが、エジプトの民は全く異なる神話も「それはそれで」と受け入れる大らかな感覚を持っている為か余り疑問を持たなかったらしい

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