登録日:2020/06/10 Wed 10:15:49
更新日:2024/03/01 Fri 15:45:46NEW!
所要時間:約 40 分で読めます
▽タグ一覧
国家試験 システムエンジニア it 資格試験 ネットワーク fe 経営 所要時間30分以上の項目 資格 国家資格 ipa 情報科学 情報処理技術者試験
面接官「業務系アプリケーション開発のITエンジニア募集要項をご覧になったとのことで」
ワイ「よろしくお願いします」
面接官「PHPかJavaの業務経験は何年ほどですか?」
ワイ「扱える言語は、C言語とHTMLです」
面接官「フレームワークの使用経験は?」
ワイ「勉強不足で、良く分かりません」
面接官「そうですか。では、情報処理に関する資格をお持ちですか?」
ワイ「フッ……」
【基本情報技術者】
面接官「分かりました。それでは、趣味や特技について教えてください」
情報処理技術者試験(じょうほうしょりぎじゅつしゃしけん)とは、情報処理に関する日本の国家試験の一群を指す言葉。
特に、経済産業省所管の独立行政法人である情報処理推進機構(IPA)が実施している試験群についてを指すのが一般的。
●目次
情報処理の資格について
各資格について説明する前に述べておくが、実は、情報系の資格のなかで独占業務(これがないとできない仕事)が発生するものはほぼ存在しない。
というのも、ITエンジニアには作業に必須な免許というものがなく、なんら試験に合格していなくてもITエンジニアとして働くことが認められているのである。(看護師など医療系の資格や、危険物取扱者や電気工事士などIT以外の工業系資格との違いである)
究極を言えば、大手銀行の汎用機の開発・保守作業について一切の免許・資格なしで行おうと罰されることはない、ということ。
よって、情報処理の資格は厳密な意味での国家資格(免許)ではない。
簡単に言えば、簿記検定やTOEICなど能力認定試験の類なのだ。
しかし、昨今のITは、ピンからキリまであらゆる人・物・金を繋ぐ産業の要となっている。
そこで、現役のITエンジニアや、将来ITエンジニアを目指す人の資質を客観的に評価するために、情報処理に関する資格およびそれを取得するための試験が存在しているのだ。
すなわち、情報処理技術者試験とは、これ自体は単なる能力認定試験ながら、適当に通信教育や教本で勉強して取れるような資格とは一線を画す、自らの付加価値を示す重要なステータスになる資格なのである。
事実、企業によっては昇給・昇進の条件として情報処理技術者試験の合格を課している場合もあるし、情報系大学への進学や人事考課にも影響が及んでくる。
受験料はかつては5,700円だったが、スキルレベル3以上の区分は2021年(令和3年)10月から、スキルレベル2以下の区分は2022年(令和4年)4月から7,500円に引き上げられる予定である。学生や若手の社会人にとってこれは大きな痛手であろう。しかしこれでも海外の民間資格(シスコ、オラクルマスターなど)に比べればまだ安いほうである。ちなみに情報処理安全確保支援士試験のみ非課税で、それ以外の区分は全て消費税が含まれている。
免責事項
項目内に記載された難易度評価・社会的評価は、あくまで執筆者ないしは該当箇所追記者の個人的見解によるものです。言われた通り資格取ったのに選考落ちたーなんて言われても責任は取れません。
また、実際に資格を取得したいと思った場合、当Wikiを参考にしようとは思わずにネットを切って参考書を買うなり講座を受けるなりすることを激しくおススメします。
区分
IPAが定めた試験制度にはスキルレベルという区分が存在しており、レベルは1~4と分けられている。
ITパスポート試験がレベル1。情報セキュリティマネジメント試験と基本情報技術者試験がレベル2。応用情報技術者試験はレベル3。それより上のマネージャー系(ITストラテジスト試験など)やエンジニア系(情報セキュリティスペシャリスト試験など)などはレベル4。
全ての区分について、受験資格は特に設定されていない*1ため、基本情報を飛ばしていきなり応用情報を受けることも可能。また、基本情報はおろか応用情報すら飛ばしていきなり高度試験を受験しても構わない。
また、更新制度および有効期限はどの区分のどの資格にも存在しない(一生有効)。
レベル1 ITパスポート試験
お前はIT社会に適応できるか?
通称iパス。
2009年(平成21年)にスタート。
情報処理技術者試験の区分の一つであるが、エンジニア向けの試験ではなく、一般ユーザー向けの試験。
かつては初級システムアドミニストレータ(初級シスアド)という基本情報技術者の踏み台にあたる資格があったが、ITパスポートの前身となる資格は従来はなかった。
ITというものが専門業ではなく一般に浸透してきた証と言えるかもしれない。
詳細は当該項目を参照。
レベル2 基本情報技術者試験
お前はITを仕事にできるか?
概要
英語名はFundamental Information Technology Engineer Examination、略号はFE。
レベル2が意味する技能は
「ITエンジニアとして働く上で必要な基礎知識を会得している。プログラミングに関して、コードの読み書きから実際に動かしてみるまでの一連の作業を理解している。および、ITエンジニアとは何かを理解している」
といったところ。
いわばプログラマーやシステムエンジニアへの登竜門となる試験である。
試験概要
CBT方式なので受験者自身で予約して受験するが、2019年まで1回の試験を1日で午前/午後でペーパーテストを実施していた名残で、試験名称には「午前」「午後」が付いている。
※実際に受験する際には、ちゃんと公式の受験票を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で間違いが発生しても責任は取らないよ!
合格ラインは午前・午後の両方とも60%以上の正解率。
午前
試験時間150分(2時間30分)。問題数は全80問で、すべて必須解答。4択の多肢選択形式。48問以上正解で午前試験合格となる。
午前はそれほど難易度が高いわけではないが、とにかく出題範囲が広いため根性が必要。
4択なのでわからない問題でも何かしら埋めておけば正解できるかもしれないので、決して解答用紙に空欄を作らないこと!
午前では以下の3分野から出題される。内訳はテクノロジ系が全50問、マネジメント系が全10問、ストラテジ系が全20問である。
- テクノロジ系
コンピュータシステム(ハードウェア・ソフトウェア)、セキュリティ、ネットワーク、データベース、開発技術などIT全般について幅広い知識が要求される。特に近年はセキュリティ分野からの出題が多くなっている(10問程度)。
また、確率や統計、線形代数学など高校数学の問題も出題される。
- マネジメント系
プロジェクトマネジメント(企画)やサービスマネジメント(品質・運用管理)、システム監査についての知識が問われる。
- ストラテジ系
経営戦略や企業活動、簿記・会計、法務などビジネス系の知識について問われる分野。
「俺はデスクに向かってキーボード叩いていれば幸せなんだ!」というITエンジニアにとっては午後問より難所かもしれない。まあテクノロジ系とマネジメント系で高得点を取れば捨てられるんだけどね。
2009年(平成21年)からはこの分野の配点割合が大きくなっているため、さらにITエンジニア泣かせに。デスクにばかり向かっていないで、人を繋ぐ仕事をしているという自覚を持て、という戒めか。
ITパスポート試験と違って分野ごとの足切り制度はない*2が、マネジメント系とストラテジ系が全問(30問)正解だった場合でも、テクノロジ系で18問以上正解する必要がある。逆にテクノロジ系だけで48問以上正解できれば、仮にマネジメント系とストラテジ系が0点だったとしても午前は突破できる。
午後
試験時間150分(2時間30分)。60点以上で合格。
午前と同じく多肢選択だが、午前と異なり、長文形式の大問を複数解く形式となっている。午前を知識科目とするならば、午後は技能、応用力が問われる科目である。長文問題のため国語力が必要。
出題範囲は、セキュリティ、アルゴリズム、プログラミングが必須問題。その他、ハードウェアやデータベース、ネットワークなど、ITエンジニアならば必ず触れる技術の基礎知識を問う選択問題が用意されている。
特にアルゴリズムとプログラミングは記憶や暗記だけで覚えられるものではないため、実際にプログラムコードを書いてみるなどの実技の練習と慣れが攻略の鍵。
プログラミングはC言語、Java、Python(2020年より追加)、CASL、表計算ソフト(2009年より追加)の中から一つ選択する。2019年(令和元年)まではCOBOLが選択可能だったが、あんまり人気がなかったので出題されなくなった。
王道のC言語、どこに行っても使えるJava、平成末期ごろから流行りのPython、当試験のためにある言語CASL、Excelに馴染みがあるなら表計算ソフト、と、自分が専門にしたい分野を選ぶか、得意な分野を選ぶか、問題を全部見て楽そうなものを選ぶか……ある意味、淡泊な問題以上に、エンジニアとしての技量とセンスが問われてくる。
C言語、Java、Pythonに関してはプログラミング初心者は手を出さない方が無難。比較的楽に合格したいのであればCASLか表計算ソフトがオススメである。
ただし、表計算ソフトにもマクロがあるので注意が必要である。
受験者層
上述の概要の通り、受験資格は設定されていない。年間の受験者数は10万人超。特に学生や駆け出しエンジニアなど20代の若者に人気の資格試験。
情報学を専攻している大学生や、IT系に勤務している社会人は積極的にこれを受験にやってくる。
ただし、商業高校や工業高校の学生なども珍しくはないし、逆に65歳以上のお年寄りの受験者もいる。
難易度
「基本」という名前が含まれているので簡単な試験じゃね?
……と誤解する人が多いが、エンジニアとして働く基礎知識が余さず要求されるだけあって、その知識がない人が資格マニア的感覚で受けようとするとめちゃくちゃ難易度が高い。
合格率は例年20%台。これでもだいぶ易しくなった方で、昔は10%台だった。参考までに、下位区分のITパスポート試験が合格率40~50%。
覚悟がない者が受験しようとすると、先述した午前問題で心が折れ、後半の午後問題の際にはバックレるなんてことも珍しくない。
情報系や電子系の学生ならともかく、ITとの関りが薄い学生や社会人が合格できたら正直すごい。
ただし、一般人から見たら難関というだけであり、あくまでスキルレベル2の試験であるため、現役のITエンジニアから見たら基本中の基本というような内容しか出題されていない。
評価
名前が変わる前も含めると1970年からある歴史が長い資格試験であり、知名度が高い国家試験であることから、社会的評価を得られる場面が多い。
高校生
商業高校や工業高校では、基本情報技術者試験に合格できたらそこそこ優秀な部類である。クラスでも「割と勉強できるキャラ」として一目置かれるだろう。
高卒から就職活動を行う場合、この資格があれば情報分野で有利に働く他、公務員採用試験(警察官を含む)や大学入試(推薦、AO)でも加点対象となるなどメリットが大きい。
大学生
情報系でない学科の大学生の場合、基本情報技術者試験に合格できれば、新卒なら面接官に注目して貰えることも多く、あまり偏差値の高くない大学の出でも学歴フィルターを回避できる可能性もある*3。
IT業界を志望する場合はレベル1のITパスポート試験では少々パンチが足りないため、大変だろうが基本情報技術者の資格が欲しいところである。
逆に、情報系の大学を出てるのに基本情報技術者を取得していないとなると、勉強不足と言わざるを得ない。基本情報技術者試験の合格を卒業条件として課している学校もある。
社会人
基本情報技術者は新卒者がIT業界を狙う場合は十分評価対象になり得る資格であるが、逆に中途(転職)でIT業界を狙う場合は基本情報技術者はほぼ必須資格・最低ラインであり、特別に箔が付く資格というわけではない。中途でIT業界を狙う場合、せめて後述するレベル3の応用情報技術者の資格は欲しいところ(異業種からの転職の場合、応用情報技術者であっても必ずしも評価されるとは限らないことに注意)。
項目トップのワイがなんか滑ったような感じになっているのは、エンジニアで食べていくなら基本情報技術者を持っていること自体はほぼ当たり前だからである。*4
実務経験のある現役の情報系エンジニアが持っていないとなると、適性を疑われてしまうだろう。というか入社3年目まで(新人期間内)に取れなかったらむしろ問題視されるレベル。
とはいえ、概要にもある通り、基本情報技術者(を含む情報処理技術者試験全般)は国家資格ではあるものの、医療系の資格や電気工事士、危険物取扱者などのような業務独占資格(免許)ではないため、別にこの資格を持っていなくてもプログラマーやシステムエンジニアの仕事をすることは可能である。
事実、基本情報技術者の資格を持っていなくても、基本情報技術者試験に合格できるくらいの実力を持った人はIT業界では少なくない。
結局は実力次第といったところだが、人と資格の話をするたびに「業務が忙しすぎて資格取りに行く暇がないんスよハハハ」なんて苦笑いをしたくなければ、時間を作って基本情報技術者くらいは取りに行った方がいい。(もちろん飛び越して応用情報技術者を取っているならこの限りではないが)。
とはいえ、「持っていれば実務に役立つか?」というと必ずしもそうとは限らない。
この資格が必要になるのは主にインフラエンジニアや組み込みエンジニアと呼ばれる、機械に触れて電源や配線をつないだり弄ったりする工学系の職種であり、そちらの分野で仕事をするならまず間違いなく必要になる。この試験は主に低レベルの知識*5を問うてくるものであり、そうした知識が必要とされるのがこれらの職種だからである。
逆に、アプリケーションの開発や設計に携わるプログラマーやシステムエンジニアと呼ばれる人種……ようするにノートパソコン一台で仕事が成り立つタイプの職種では「資格を取ったところでその知識を使う場面がない」という理由で敬遠される傾向が強い。*6
上述の通りそこそこ難易度があるので、関係がない職種でも取っていれば取っていたで「必要な知識をしっかり勉強する姿勢がついている」という理由で評価してもらえることはあるが、それだけである。
なお、公共機関(警察、都道府県庁、市役所など)のIT関連職種では、基本情報技術者試験などの合格者しか採用しないケースが少なくない。
ただ、言ってしまえば「応募にあたって基本情報技術者の資格が必要」と同意義であり、特別有利になるような話ではない。他の受験者と同じく各自治体が実施する公務員採用試験に合格する必要がある。
余談
- なぜか午前は過去問の使い回しが多いことで有名(ただし直近の試験からは出題されない。)。丸暗記でも午前は何とか突破できなくもないのだが、知識の定着の観点からあまりオススメできない。
- 基本情報技術者試験には、科目免除制度(午前免除)がある。これは、情報学科などITを専門とする学校(多くの専門学校と一部の短期大学や4年制大学)で受講できる講座の修了試験に合格している場合に、午前の試験をスキップできるという制度である。
「要は学校で似たような試験をクリアしてるから、午前問はやらなくてもクリアしたようなもんでしょ」という証明を得ている状態になるのである。
この制度を利用できれば試験本番は午後対策に集中できるため非常に有利。午前免除の有効期間は1年間(本番2回分)。
そういった学校に通っていない場合でもこの制度を使うことは出来るが、各種民間の講座などを利用しなければならないので、受験料とは別に費用がかかる。 - スキルレベル2の試験は、2000年(平成12年)度以前は「第二種情報処理技術者試験」と呼ばれており、現在の名称になったのは平成13年度(2001年度)より。
これのせいで、ごっちゃになって「基本情報処理技術者試験」と間違えて呼ばれてしまうこともある。(情報系の人になら、多少誤っても通じるけど……) - 2023年度(令和5年度)から、現在の午前・午後から科目A・科目Bに変更される予定である。科目Aは現在の午前に相当する科目だが、問題数が60問に、試験時間は90分に短縮される予定である。
科目Bは現在の午後に相当する科目だが、従来の大問形式から大幅に変更され、午後で必須解答問題だったセキュリティとアルゴリズムの2つの分野を中心とした小問形式に変更され、試験時間も100分に短縮される予定である。また、個別のプログラミング言語の問題も(表計算を含め)廃止になる予定である。
なお午前免除の制度は今後も科目A免除制度として継続される予定である。
レベル2 情報セキュリティマネジメント試験
お前はITを安全に取り扱うことができるか?
概要
通称セキュマネ。
英語名はInformation Security Management Examination、略号はSG。
基本情報技術者試験と並ぶ、もう一つのレベル2区分の試験。
基本情報技術者試験がプログラミングを専門とすることが前提の試験であるのに対し、こちらは一般ユーザーのためのセキュリティ分野の試験である。ざっくり言えば「ITや情報資材を扱えるが、プログラマーやSEを目指しているわけではない」人向け。ITパスポート試験の上位区分と言える。
逆に言えば、ITエンジニアのプロを目指す場合は、これは受験せずに基本情報技術者→応用情報技術者→情報処理安全確保支援士と進むのが一般的。
2016年(平成28年)に始まった新しい資格試験で、同じく、あらゆる業界にITが浸透してきた証ともいえる資格である。
難易度
あくまでセキュリティ管理に関する知識を問う試験であるため、セキュリティ技術や開発の知識はほとんど問われない。
そのため、後述するエンジニア向けの情報処理安全確保支援士試験(レベル4)に比べると、一般常識の範囲で答えられる問いが多い。
試験概要
※実際に受験する際には、ちゃんと公式の受験票を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で間違いが発生しても責任は取らないよ!
合格ラインは午前・午後の両方とも60%以上の正解率。
科目免除制度(午前免除)は無い。
午前
試験時間90分(1時間30分)。問題数は全50問で、すべて必須解答。4択の多肢選択形式。30問以上正解で午前試験合格となる。
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験との違いは、セキュリティ管理に特化した問題(法規を含む)の出題が多いこと。これだけで出題比率は全体の7割以上を占める。
また、基本情報技術者試験などと違って、数学や開発技術に関する問題はほとんど出題されない。
ただし出題範囲が狭い分、セキュリティに関しては基本情報技術者試験より若干難易度の高い問題も出題されるため、油断しないこと。
午後
試験時間90分(1時間30分)。素点方式で採点され、60点以上で合格。
長文形式の大問を3問解く形式となっている。午前を知識科目とするならば、午後は技能、応用力が問われる科目である。
概要の説明通り、技術的な要素は問われないものの、大問1つあたりの問題文が基本情報技術者試験の午後よりも長くなっているため、国語が苦手な人だとむしろ基本情報技術者試験より大変に感じるかもしれない。
評価
セキュマネに合格すればPCを利用する一般ユーザーとしては十分な知識がある…という事で、IT系以外でなら結構いいアピールポイントになる。また、大学入試(推薦、AO)や公務員採用試験で加点対象となることもある。
だが所詮一般ユーザー向けの試験。IT系の職種に挑むにはまだまだレベル不足。
余談
- 合格率
初回の2016年(平成28年)4月の試験では合格率88%という、国家試験とは思えない驚異的な数値を記録したことがある(ちなみに初回のITパスポートでも合格率70%だった)。最近は合格率50%程度に落ち着いているのだが、それでも合格率20%程度の基本情報技術者に比べたら十分高い数値である。
レベル3 応用情報技術者試験
お前はITエンジニアとして生きていけるか?
英語名はApplied Information Technology Engineer Examination、略号はAP
根幹はレベル2の基本情報技術者と同じだが、基本情報技術者で問われた基礎知識だけでなく、業務を円滑に進める応用的な知識や技術を要求される。
ざっくり言えば、レベル2は「エンジニアとしてとりあえず働けるかどうか」で、レベル3は「エンジニアとして食っていくための最低限の素養があるかどうか」が問われていると考えればわかりやすい。
まぁ、IT技術は日進月歩である以上、ITエンジニアは知識のアップデートが一生要求されるので、応用情報技術者だからと言って一生IT職種で食っていけるとは全く限らないのだが。
ただ、応用情報技術者を持っていればおそらく技術の進歩にもついていけるだろう、という一つの目安にはなる。
試験概要
※実際に受験する際には、ちゃんと公式の受験票を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で間違いが発生しても責任は取らないよ!
合格ラインは午前、午後の2科目とも両方とも60%以上の正解率。
レベル2以下の区分と異なり、午後が記述式となるため、神頼みは通用せず、完全に実力勝負、真剣勝負になる。
科目免除制度(午前免除)は無い。
難易度
合格率だけを見ると基本情報技術者と同じく例年20%前後であり、一見、基本情報技術者と大差ないように思えるが、応用情報技術者の受験者の大部分は既に基本情報技術者に合格できるレベルの実力を持っており、さらに応用情報は後述するレベル4の試験群の前哨戦という位置付けであり、将来的にはより上位の資格(ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリストなど)を狙う人も多いことから、相対的に基本情報技術者より難易度が高いと言える。
応用情報技術者はITエンジニアじゃない人間(非エンジニア)が独学で合格を狙える限界のレベルと言われており、これより上の資格(後述の高度区分)は非エンジニアの場合は専門学校や資格予備校などでの対策が必要となる。
応用情報技術者試験の午後は必須問題はセキュリティのみで、それ以外はすべて自由選択問題である。つまり、プログラミングの本懐たるアルゴリズムが必須ではなく選択問題なので、選択問題をビジネスやマネジメントに関する問題で固めることが可能。
このため、人によってはむしろ基本情報技術者試験より簡単に感じる場合もある。というか文系の大学生だと基本情報を飛ばしていきなり応用情報を受験して合格する人も実際に存在する。*7
これにより、昔の第一種やソフトウェア開発技術者の頃よりはやや難易度が低くなったと言われている。(第一種およびソフトウェア開発技術者では午後のアルゴリズムが必須問題だった。)
こういう事情もあって、基本情報技術者を飛ばして応用情報技術者のみを持っていると
「この人、基本情報を飛ばしてラクしようとしたんじゃないの?本当にプログラミングの知識があるの?」と疑われかねない場合もあるので、両方とも取得しておく方が無難かもしれない。
評価
アドバンテージ
応用情報技術者試験に合格すると、
- 他の国家試験(弁理士、中小企業診断士)の一部科目免除制度を利用できる。
- 公務員採用試験(警察官、自衛隊など)で有利になる。
- 昇級の際に評価対象になる。
- 資格手当(ボーナス)が基本情報技術者より多くもらえる。
- (高校生で合格できた場合)大学の推薦、AO入試、就職活動で有利になる。
- (大学生の場合)単位が認定されたり、就職活動でアピールポイントになる。
基本情報技術者しか取っていない技術者にマウントを取れる。
など、基本情報技術者試験合格時よりも多くのメリットを受けることができる。
高校生
基本情報技術者は商業高校生や工業高校生の合格者も少なくないが、応用情報技術者は高校生で合格できたらスーパースター間違いなし。地方なら地元の新聞に名前が載るほどの大偉業である。学校でもちょっとした武勇伝として名を残せるだろう。
大学生
情報系の大学生であれば、早々に基本情報技術者を習得して、応用情報技術者に挑戦していくのが一般的。ライバルに差がつく大きな境界線と言える。
応用情報技術者を持っていれば出来る奴と評価される。が、入社してから取っても遅くはない。新卒なら「これから取ろうと思っています」と言っておくと良い評価がもらえるかも。
社会人
結局はITエンジニアとしての働き次第になってくるが、書類上で能力を計る際には、持っていれば「分かっている奴」、持っていなければ「普通な奴」といった評価になる。
若手がレベル3まで持っていれば、「こいつ、エンジニアとして生きる覚悟があるようだな……!」と認められ、契約の個別面談などがある場合もスムーズに通りやすくなるだろう。
逆に、これを持っていなければ契約しません、というのは、よほど窓口の倍率が高い仕事。
(そもそもITエンジニアは残業が前提の働き口が殆どなので、忙しくてとれない、という言い訳も大抵は普通に分かってもらえる)
試験内容がより応用的な技術であるという側面上、社会人になって仕事の要領を得てから挑戦して受かるというケースも普通にあるし、ちゃんと働いていても一生応用情報は取らなかったというケースも珍しくはない。
中には「就職してから取った方が資格手当を貰えて得」という理由で、学生の時点で既に取れる実力があってもあえて取る時期を遅らせる人もいるとか...大学卒業時から持っていても一向に仕事が出来るようにならない奴だって普通にいるしな!
一方、「若手でないなら持ってても別にすごくはない」という立ち位置でもあることには注意が必要。
特にIT系への転職を目指す未経験者が「応用情報さえ持ってれば何とかなる」と勘違いしがちだが、そこまで万能な資格ではない。武器になるスキルを他にも持っておくべきである。
余談
1970年~2000年は第一種情報処理技術者試験と呼ばれ、2001年(平成13年)にソフトウェア開発技術者試験に改名。その後、2009年(平成21年)から現在の名前に変更されている。
レベル4 高度情報処理技術者試験
お前はITにおける絶対的な得意分野を持っているか?
高度試験、高度系試験、高度区分とも呼ばれる。
IPAの試験制度の最高ランクに当たるスキルレベル4に設定されている複数の試験区分は、総称で高度情報処理技術者試験と呼ばれる。
かつてはスキルレベル5が最高ランクだったが制度改正により2009年からはスキルレベル4に統一されている。
試験実施は年1回であり、2019年以前と2021年で春期(4月)/秋期(10月)が逆になった。
現在は以下の8つの試験区分が実施されている。
- ネットワークスペシャリスト試験
略称はネスペ。通信技術に特化した区分。高度なセキュリティの知識も要求される。スキルレベル4。
昔はオンライン情報処理技術者、テクニカルエンジニア(ネットワーク)などと呼ばれていた。前身の試験を含めると1988年から実施されており、高度試験の中では比較的歴史の古い区分である。
年1回、春にしか試験が実施されない上に、受験者の大部分が既に基本情報技術者や応用情報技術者に合格できるレベルの人たちであるため、難易度は非常に高い。
超が付くほどの難関試験だが、一流のネットワークエンジニアを目指すなら是非取得しておきたい資格でもある。
- データベーススペシャリスト試験
データベース技術に特化した区分。高度なSQLの知識も要求される。スキルレベル4。
昔はテクニカルエンジニア(データベース)試験という名前で実施されていた。
年1回、秋にしか試験が実施されない上に、受験者の大部分が既に基本情報技術者や応用情報技術者に合格できるレベルの人たちであるため、難易度は非常に高い。
ネットワークスペシャリストと並ぶ超難関資格だが、一流のデータベースエンジニアを目指すのなら合格しておきたい試験だ。
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
スキルレベル4。昔はマイコン応用システムエンジニア試験という名前で実施されていた。
少し特殊な区分で、組み込みシステムに特化している。
組み込みシステムとは、テレビや洗濯機などの家電製品、自動車の自動運転システム、医療用機器などに実装される、特定の機能を持ったコンピュータシステムのことである。今話題のIoT(モノのインターネット)とも関連性が強い。
電子回路や電気の知識がないと合格するのは厳しい。
年1回、秋のみ実施。
- システムアーキテクト試験
応用情報技術者のさらに上位にあたる、スキルレベル4の区分。設計や開発部門のリーダーのための試験。
昔は特種情報処理技術者とかアプリケーションエンジニアとか言われていた。前身の試験を含めると1971年から実施されており、高度試験の中では最も歴史が古い区分である。
論文科目があるため非常に難しい。この論文は受験者の実務経験に基づいて書くため、実務のしようのない学生の合格はほぼ不可能。
最上級のシステムエンジニアの資格と呼ばれることも多い。
年1回、春のみ実施。
- ITサービスマネージャ試験
通称サビマネ。スキルレベル4。
昔はシステム運用管理エンジニア試験という名前で実施されていた。運用部門のリーダー、所謂サービスマネージャーのための資格。
サービスマネージャーの主な仕事は提供する情報サービスの品質管理である。万が一システムに故障や障害が発生した場合はいち早く復旧させるためにリーダーシップを発揮する立場の人である。
システムアーキテクトなどと同様、この試験でも論文が課される。
年1回、春のみ実施。
- プロジェクトマネージャ試験
略称はプロマネ。
応用情報技術者の上位区分。スキルレベル4。2008年まではスキルレベル5とされていた。
こちらは企画部門のリーダー、所謂プロジェクトマネージャーのための資格。
システムアーキテクト同様、論文が課されるため非常に難易度が高い。
エンジニアとしてだけでなく、中間管理職としてのスキルも要求される。
年1回、秋のみ実施。
- ITストラテジスト試験
応用情報技術者の上位区分。スキルレベル4。ITコンサルタントや企業の幹部候補のための資格。
昔はシステムアナリストと呼ばれており、それを母体にユーザー向けの最上位試験*9である上級システムアドミニストレータを吸収し改名。両試験とも元はスキルレベル5。
基本情報技術者や応用情報技術者のストラテジ分野の内容、経営戦略や計画立案などをさらに深く掘り下げた試験。
システムアーキテクトやプロマネなどと同様、論文が課されるため非常に難易度が高い。
理系の試験でありながら高度なビジネス知識も要求され、さらに受験者の大部分は既に他の高度区分にも複数合格しており、豊富な実務経験を有している場合が多いため、情報処理技術者試験の中で最高峰の区分であると名高い。
また、情報処理技術者試験のみならず、資格試験全体で見ても医師国家試験や司法試験、公認会計士試験、第一種電気主任技術者試験(電験一種)、英検1級と並ぶ最難関級の国家資格と言われることも多い。
そして、この試験の合格者に対して100万円を超える報奨金(合格祝い)をあげる企業も一部存在するとか…。
年1回、春のみ実施。
- システム監査技術者試験
システム監査人のための資格。スキルレベル4に区分されるが、こちらも元はスキルレベル5の試験だった。
システム監査人とは、企業の経営者の依頼を受け、独立した第三者の立場(外部)から、企業内部の情報システムに関してチェックを行う人のこと。
システムエンジニアのための試験というよりは、経営者向けの試験と言われることも多い。
公認会計士や中小企業診断士などの資格を持っている人がITに強くなるためにこの試験を受験することも多い。
プロマネなどと同様に、この区分でも論文試験が課されるため非常に難易度が高い。
理系の試験でありながら高度な法務の知識も要求されるため、ITストラテジスト(旧・システムアナリスト)と並び、情報処理技術者試験の最難関の区分と呼ばれることも多い。
現名称になったのが1994年と他の試験区分より早く、その前身も1986年からあった。
年1回、秋のみ実施。
- プロダクションエンジニア試験
かつて実施されていた試験区分。高度な設計技法についての知識が要求される。
第二種情報処理技術者試験(現:基本情報技術者試験)とは比較にならないほど複雑なアルゴリズムの問題が出題され、難易度が非常に高かった。
非公式だがアルゴリズムスペシャリストという別名もあったらしい。
試験区分としては廃止されたが、出題内容の一部はのちのアプリケーションエンジニア試験(現:システムアーキテクト試験)やソフトウェア開発技術者試験(現:応用情報技術者試験)に継承されている。
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験
通称セキュアド。2001年(平成13年)から2008年(平成20年)まで実施されていた試験。初級シスアドの上位区分。
一般ユーザー側のセキュリティの試験で、事実上のセキュマネの前身。ただし難易度は今のセキュマネとは比較にならないほど高く、合格率も10%台だった。
- 上級システムアドミニストレータ試験
上級シスアド。当時実施されていた一般ユーザー向けの試験区分としては最難関。スキルレベル5。
高度なビジネス知識が要求される上に論文課題があったため、非常に難易度の高い試験だった。
現在はシステムアナリスト試験と統合し、ITストラテジスト試験に生まれ変わった。
- 情報セキュリティスペシャリスト試験
2006年(平成18年)にテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験としてスタートし、2009年(平成21年)4月に改名。
2009年以降は高度区分で唯一、年2回春秋両方が開催される区分として人気が高かった。
現在は後述の情報処理安全確保支援士(登録情報セキュリティスペシャリスト)という別の国家資格に生まれ変わっている。
試験概要
※実際に受験する際には、ちゃんと公式の受験票を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で間違いが発生しても責任は取らないよ!
基本情報技術者や応用情報技術者と違って、各区分それぞれ年1回(4月または10月のどちらか)しか実施されない。
唯一、情報セキュリティスペシャリスト試験のみ4月と10月の年2回実施されていたが、情報処理技術者試験から独立した別の資格となってしまった。
レベル4の試験(後述の情報処理安全確保支援士試験を含む)では以下の4科目が課され(ただし午前1のみ免除制度がある)、当該区分の全ての科目に合格することで当該区分の資格が認定される。
午前1
レベル4全区分の共通科目。
試験時間50分。問題数は全30問で、すべて必須解答。4択のマークシート形式。
出題レベルは応用情報技術者試験の午前とほぼ同等(レベル3)であり、それほど深い内容ではないのだが、基本情報や応用情報と同様に出題範囲が広い(高校数学やストラテジ系を含めた全範囲)ため、基本や応用を飛ばしていきなりレベル4を受験する場合は面倒くさい。人によっては一番の鬼門とも…。
この午前1のみ科目免除制度がある。利用条件は、
- 過去2年以内に応用情報技術者試験で午前、午後ともに合格していること。
- 過去2年以内にいずれかのレベル4の区分に合格していること。
- 過去2年以内にいずれかのレベル4の区分の午前1で18問以上正解していること(最終的に当該区分の午前2、午後1、午後2で不合格になってしまっても構わない)。
のいずれかである。
午前1の正解数が17問以下の場合足切りとなり、午前2・午後1・午後2で優秀な成績を収めたとしても不合格となってしまうため、午前1は最優先で片付けよう。
午前2
それぞれの区分の専門家を名乗るために必要な基礎知識を測る科目。
試験時間40分。問題数は全25問で、すべて必須解答。4択のマークシート形式。
出題範囲自体は午前1より狭いが、その分問題のレベルは上昇する。
内訳としては各区分の専門分野(レベル4)がだいたい20問くらい、その他の関連分野(レベル3)が5問くらいという感じ。
15問以上正解で午前2突破となる。
午後1
各区分の専門家として必要な応用力があるかどうかを測る科目。
試験時間90分(1時間30分)。記述式。複数の大問が出題され、そのうち2問を選択する。
各区分の中規模な実務に関する短編物語風の問題が出題される。中規模というのは、後述の午後2よりは小さく、応用情報の午後問題よりは大きいということ。
午後1突破の条件は得点率60%以上。
ちなみにかつては情報セキュリティスペシャリスト試験(今の情報処理安全確保支援士試験)ではセキュアプログラミングに関する問題が出題されていた。
出題される言語はC++、Java、ECMAScriptのいずれか(初期はPerlもあった)。基本情報技術者試験と異なり受験者がお好きな言語を指定することはできず、記述式になるため難易度が高かった。
最近はセキュアプログラミングは出題されなくなっている。
午後2
各区分の専門家であることを認定できるかどうかを測る最終ステージ。ラスボス。
試験時間120分(2時間)。複数の大問が出題され、そのうち1問を選択する。
スペシャリスト系の区分(かつてテクニカルエンジニアと呼ばれていた区分)では大規模な実務に関する長編物語風の問題が出題される。
午後1との違いは、一つの大問の中に複数のテーマ(課題)が存在すること。そのため広い視野を持ってないと午後2合格は難しい。
ただし制限時間が長いため、人によっては午後1よりまだ楽という意見も。
プロジェクトマネージャなど管理職系の区分ではここで論文が課される。
論文は独学での対策がきわめて難しいため、IT業界のベテランであっても侮らずに、スクールの添削を推奨する。
難易度
合格率はどの区分も例年10%台であり、さらに受験者の大部分が既に基本情報技術者や応用情報技術者に合格できる実力を有していることから、超が付くほどの難関試験であることが容易に想像できるであろう。
どの区分も合格するためには、既に応用情報技術者試験合格レベルに達している場合でも、各区分の専門分野に関して十分な勉強が必要である。勿論、基本情報や応用情報を飛ばしていきなり高度を受験する場合はなおのこと。
区分によっては論文試験が課されるものも一部存在する。論文が課されるのは主に管理職(リーダー)向けの区分である。
一般的に論文が課される区分は、そうでない区分(ネットワークやデータベースなどのスペシャリスト系)よりも難易度が高いと言われている。
それを踏まえてざっくりと難易度が高い順番に並べると、
論文試験(旧レベル5試験)>論文試験(その他)>スペシャリスト系(テクニカルエンジニア)>応用(第一種)>基本(第二種)
という感じである。
基本的に論文が課される区分は実務経験が無い場合(学生など)の合格はほぼ不可能と言って良い。
特にITストラテジスト、システム監査技術者、プロジェクトマネージャの3区分は既に他の高度区分にも合格している猛者たちが受験する区分であるため、非常に激しい競争となるだろう。
また、ITストラテジストなどの合格者はIT業界での実務経験が10年以上のベテランがほとんどなので、ある意味、司法試験よりも対策しにくいと言われることも少なくない。
レベル4 情報処理安全確保支援士
お前はITの広大なネットワークを完全に掌握できるか?
概要
英語名はRegistered Information Security Specialist。略号はSC、RISS。
別名、登録情報セキュリティスペシャリスト。
サイバーセキュリティの専門家のための国家資格。
昔は情報セキュリティスペシャリスト試験という情報処理技術者試験の区分の一つだったが、2017年(平成29年)より登録制の国家資格(免許、士業)に格上げされており、IT系の資格では初の士業である。
弁護士や医師、電気工事士などと同様に士業の一つであるため、この資格を持っていない者が勝手に情報処理安全確保支援士を名乗ると、怒られるどころでは済まない事態になる。最悪、逮捕や罰金刑を課せられる可能性もあるのだ…。
評価
士業になってから資格の価値が上がったとされるが、反面、資格を維持(更新)するためには講習を受ける必要があり、しかもその受講料が高いこと、そしてその割にはメリットが少ない(情報処理安全確保支援士じゃないと出来ない仕事が少ない)ことから、試験に合格してもあえて登録しない人も多い。
しかし公務員採用試験では情報処理安全確保支援士の有資格者に対して大幅な加点を行うことも多く、特に都道府県警察(警視庁など)や自衛隊のIT関係の部署だとこの資格を持っているだけで面接前から採用候補として注目して貰える可能性さえある。もっとも、高額な維持費を払ってまで公共機関のIT系の部署に行きたいかどうかはまた別の話だが…。
ちなみに、支援士名簿に登録しなくても、試験に合格したという事実は一生残るため、合格するだけでも評価は非常に高い。
ただし先述の通り、情報処理安全確保支援士を名乗るためには試験の合格だけでなく、登録も必要である。
難易度
情報処理安全確保支援士(情報セキュリティスペシャリスト)試験は受験者の大部分が既に基本情報技術者試験や応用情報技術者試験に合格できるレベルの実力者であるため、難易度はとても高い。
合格率も僅か10%台である。
しかしスキルレベル4としては唯一、4月と10月の年2回試験が実施される区分であり、論文課題も課されないため、スキルレベル4の区分の中では最も簡単であると言われることも多い。
レベル2の情報セキュリティマネジメント試験とは名前が似ているが別の試験区分。
セキュマネはあくまで一般ユーザー側のセキュリティの知識を問う試験であり、難易度は情報処理安全確保支援士(情報セキュリティスペシャリスト)よりも遥かに低い。
その他IT系の資格
IPAが定めたスキルレベル区分に該当せずとも、取得していれば技術者ないし社会人としての箔がつく資格がある。
特に、IPAは国家試験であるため、特定の企業の製品に関する問題は出題されない。そのため、特定分野に特化したエンジニアの場合、情報処理技術者試験に合格するだけでなく、海外の有名IT企業の資格も併せて取得することが望ましい(例えば、ネットワークエンジニアならCCNA、データベースエンジニアならオラクルマスター、など。)。
- 初級システムアドミニストレータ試験(シスアド)
かつて存在した情報処理技術者試験の区分の1つ。
ITエンジニア向けではなくユーザー側企業のシステム担当者向けの区分。
実質は現材の基本情報技術者試験の踏み台となる試験で、ITパスポートのようなスキルレベル1に近い扱いだった。(ただし、初級シスアドはITパスポートと違って午前・午後の2部構成であった。)
1994年10月に最初の試験が実施され、以降、1998年までは年1回、1999年からは年2回試験が実施されるようになったが、2009年4月の実施を最後に廃止された。
ちなみに現在、基本情報技術者試験に出題されている表計算ソフトの問題も、元々は初級シスアドの午後科目に出題されていたものである。ただし、初級シスアドにはマクロに関する問題は無かった。
- 中小企業診断士
情報処理技術者試験と同じ経済産業省の認定資格。
経営コンサルタントとしては唯一の国家資格であり、非常に価値が高い。
厳密にはIT資格ではないのだが、試験内容で情報処理技術者と共通する項目が多いことから、IT業界出身者でこの資格の取得を目指す人も多い。
中小企業のお医者さんのような存在であり、企業の設立や経営戦略について助言してあげたり、企業の経営状態を診断してあげたりするのが主な仕事。
士業なので独立開業することも可能。(ただし、殆どの有資格者は独立せずに企業内に留まる企業内診断士である。)
中小企業診断士国家試験では様々な科目が課されるが、一次試験では経営情報システムという科目がある。
経営情報システムは問題レベル自体はITパスポート試験とほぼ同レベルなのでそれほど難しくない。しかし、診断士の受験者は文系の人が多いため、馴染みの薄い単語が多くて意外と苦労するとか…。
経営情報システムはシステムエンジニアなどIT業界の経験があると有利な科目である。
一応、情報処理技術者の一部の区分(応用、アーキテクト、プロマネ、ストラテジスト、監査技術者)の合格者は経営情報システムの科目免除を受けることができるが、問題自体簡単なのでむしろボーナスステージであり、免除するまでもないとの噂もある。
※実は診断士試験の科目免除制度(後述の科目合格も含む)には罠があり、科目免除を利用してしまうと、その分、他の科目で高得点を取らなくてはならないという仕組みになっている。そのため、自信のある科目はむしろ免除を使わないほうが良いという意見も多い。
また、診断士試験の一次試験には企業経営理論と経営法務という科目もあるが、それらはITパスポートのストラテジ分野(経営戦略、法務など)の内容を膨らませたような感じになっている。
そのため、前哨戦として(先述の経営情報システムの対策を含めて)ITパスポートを受験する人も多い。
ちなみに基本情報技術者にも経営や法務の問題は出題されるが、問題数が比較的少なく、ITエンジニア目線の問題が多いため、あまり相乗効果は期待できない。
一方でITパスポートは一般ユーザーやITコンサルタントの視点から問われる問題が多く、中小企業診断士の出題内容はこちらの方が近い。
診断士の一次試験では3年間有効な科目合格制度がある。しかし、先述の通り、科目免除には罠があるため、自信のない科目(たまたま合格した科目)以外では免除を申請しないほうが無難。
一応念のため書いておくと、総合的な難易度で言えば、中小企業診断士国家試験はITパスポートや基本情報技術者よりもずっと難関である。診断士試験では政治経済や財務会計の知識も要求されるし、二次試験では記述問題や面接も課されるからである。
- 工事担任者
電話回線やケーブルテレビ(CATV)の回線、光ファイバーなど電気通信設備の工事を行うために必要な資格。情報処理技術者試験に類似したネットワーク技術に関する知識も要求される。
インフラ系のエンジニアだとネットワークスペシャリストとともにこの資格を保有していることも多い。
電気工事士と名前が似ているが、全くの別物である。また、電気工事士試験と違って実技は課されず、筆記オンリーの試験である。
「工事担当者」は誤りである。
上位資格に電気通信主任技術者(電通主任)がある。こちらも電気主任技術者(電験)と名前は似ているが別物である。
ちなみに工事担任者と電通主任は総務省の認定資格、電気工事士と電験は情報処理技術者と同じ経済産業省の認定資格である。
- CCNA
ネットワーク業界では超有名な世界的大企業、シスコシステムズの認定資格。
ネットワークエンジニアを目指すならぜひ取っておきたい入門編の資格である。
上位の資格としてはCCNPやCCIEなどがある。
最上級のCCIEは実技試験が課される上に英語力も要求されるため、国家資格のネットワークスペシャリストも真っ青の、超難関資格である。
また、情報処理技術者試験はネットワークスペシャリストを含め日本国内とせいぜいアジアでしか通用しない*10のに対し、CCIEはアメリカやヨーロッパを含め世界中で通用する国際資格である。
CCIEを取得できたら文句なしで超一流のネットワークエンジニアだろう。
- オラクルマスター
オラクルという超有名なデータベースの会社の認定資格。
プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つの級がある。プラチナが一番難しく、ブロンズが一番やさしい。
いきなり上位の区分から受験できる情報処理技術者試験と異なり*11、オラクルマスターは必ず下位の級から順番に受験して合格していく必要がある。
(例えばシルバーはブロンズに合格していないと受験できない。)
国家資格のデータベーススペシャリストよりも、こちらのほうが実務では役に立つとされる。オラクル製品に特化した試験であるため、オラクル特有のSQLも出題される。
シルバー以上の合格者は世界でも通用するデータベースエンジニアと認定される。
最上級のプラチナは実技試験が課されるため、日本のデータベーススペシャリストをも凌駕する最難関のデータベースの資格である。
- 情報処理技術者能力認定試験
サーティファイという会社が実施している検定試験で、主にIT系の専門学校の学生が受験する。
1級、2級、3級がある。1級および2級は第一部と第二部の2科目構成になっており、第一部は基本情報技術者の午前に、第二部は基本情報技術者の午後に近い形式である。第二部では基本情報技術者と同様にプログラミングの問題も出される。
難易度は1級は基本情報技術者とほぼ同じくらい、2級は基本情報技術者よりやや簡単とされる。
なお2級は第一部または第二部に合格すれば科目合格と認められ、特に2級第一部に合格した人はその後講座を受けて修了試験に合格すると基本情報技術者の午前が1年間免除される特典がある。
というかほぼ基本情報技術者の前哨戦みたいなものである。
ちなみにシスコやオラクルなど海外企業の認定資格に共通する注意点として、(情報処理技術者試験と比較して)受験料が非常に高額であることがあげられる。
自分が働いている会社や、通っている専門学校で負担してくれる場合はあまり問題ないが、自腹で受ける場合は要注意である。
また、情報処理技術者試験は一度合格すれば(情報処理安全確保支援士を除いて)一生資格が有効であるが、例えばシスコの認定資格には有効期間が設定されており、オラクルは製品のバージョンが新しくなると昔に取った古い資格がほぼ無価値になってしまう点に注意が必要である。
IT系以外の資格
ITエンジニアはただプログラムコードに向き合っているだけならいいが、それ以外にも成すべき仕事はたくさんある。情報処理に関係なくとも、それらが出来ますよ、というアピールに有利な資格も存在している。
それらの一部を紹介する。
著名な資格保有者
実在の人物
- 声優の増谷康紀氏は基本情報技術者の前身である第二種情報処理技術者試験に合格している。
架空のキャラクター
- アニメ『ハイスクール・フリート』の登場人物である納沙幸子ちゃんは、データベーススペシャリストを取得している。
- TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の副主人公である津崎平匡はシステムエンジニアであり、基本情報技術者、応用情報技術者、データベーススペシャリストも保有しているという設定である。
- テレビ朝日ドラマ『相棒』のレギュラーキャラクターである青木年男は、情報処理安全確保支援士(情報セキュリティスペシャリスト)の資格を持っているという設定である。
余談
2020年の中止と試験の形式
情報処理技術者試験は2011年にいち早くCBT方式に移行していたITパスポート試験を除き、すべて共通でペーパー形式の試験が実施されていた。しかし、2020年に諸事情により試験の中止が相次ぎ、それを挟んでスキルレベル2の試験区分がCBT方式に移行された。
考えてみれば、情報処理の資格なのだから、それの開催側も当然アップデートをして然りである。
センター試験との比較
大学入試センター試験には情報関係基礎という科目があるが、基本情報技術者試験の問題はこれとは比べ物にならない。
センター試験の情報関係基礎はあくまで学生(アマチュア)向けだが、基本情報技術者試験はプロのITエンジニアを対象とした国家試験だからである。
情報関係基礎は主に商業高校や工業高校など職業系の学科の出身者で大学進学を希望する人が、普通科出身者が多く選択する数学2Bの代わりに選択する科目である。
なお情報関係基礎はあくまで数学をあまり学習していない職業系の学科出身者のための救済措置であり、普通科出身者の受験は認められていないことが多い。これは簿記会計も同じである。
また、慶應義塾大学のSFC*12では普通教科(数学、英語)の代わりに情報科目を選択することが可能となっている(看護医療学部を除く)。問題難易度は基本情報技術者試験の午後科目よりやや簡単なので、情報が得意な人は受けても良いだろう。
ただし、人気の非常に高い有名大学であるため、ボーダーラインは非常に高い(基本情報は6割)のと、これとは別に小論文課題も追加で課されるため、やはり難易度は高い。油断しないように。また、当然、他の私大を併願する際に使えないことが多いというリスクは承知の必要がある。
欠席者が多い
情報処理技術者試験はあらゆる国家試験の中でも特に欠席者が多いことで有名である。区分にもよるがだいたい申し込んだ人の3〜4割くらいは当日会場に来ない。
理由はいろいろあるが、「宅建士や電気工事士などと違って合格しても独占業務が発生しない」「ITエンジニアは激務であり、試験当日に突発で仕事が入って会場に行けなくなる」などが有力。
あとITエンジニアは夜遅くまで起きていられる一方で朝が弱い人が多く、遅刻して午前科目を受験できなかったなんて人も少なくない。このため、「朝早く起きて、会場に行くのが最難関の試験」なんていうジョークもあり、これを縮めて「起床試験」と呼んだりもする。
最後に
情報技術者の資格はITエンジニアの資質を計るうえで最も客観的になりうる物差しである。
しかし、ITエンジニアは実務経験、知識のアップデート、センスを問われ続ける業界である。(ついでに残業ばかりで資格とるのも大変)
資格の有無のみで技術者の質をとやかく評価するのは視野を狭める結果にもなるため、注意してほしいところである。それによる人格評価などもってのほかである。
上司「おい、ワイ。ビール注げや。ところでお前、情報資格はちゃんと持ってデスクに立ってんだろうな」
部下「はい。といっても、まだ応用情報しか取っていないんですけどね。ですが、来年にはDBスペシャリストと、できればオラクルあたりも取ってみようかなと……」
上司「楽しい飲みの席で資格自慢してんじゃねぇーよ!!!!」(←基本情報技術者までしか取ってない)
なんて上司になりたくないITエンジニアは速やかに応用情報技術者以上の取得を目指しつつ、追記修正なんかもよろしくお願いいたします。
[#include(name=テンプレ2)]
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- コメント欄リセットについて複数意見が挙がっていたため、をリセットしました。 -- 名無しさん (2020-12-26 14:52:03)
- 高度資格がほとんど上流工程とかマネジメントやる人向けで、プログラマが取るべき資格がない気がしてる。日本の業界的にいつまでもプログラマやってる人がほとんどいないからかもしれないけども。 -- 名無しさん (2021-01-09 21:03:15)
- 違反コメントを削除しました。 -- 名無しさん (2021-06-09 14:36:54)
- 冒頭の文章は一体どういう意味なんだろう。あんまり自分アピールをしないほうがいいと思いますけど(ワイっていうと自分ってことだと思いますが) -- 名無しさん (2021-06-09 21:42:36)
- ↑「項目トップのワイがなんか滑ったような感じになっているのは、エンジニアで食べていくなら基本情報技術者を持っていること自体はほぼ当たり前だからである。」と内容文でちゃんと補足されてますよ。冒頭文の無断削除の件で通報されているようですが、今後はこのようなことがないようお願いします。 -- 名無しさん (2021-06-09 21:56:07)
- ↑資格を持ってるくらいでドヤってるみたいなある種の偏見かのように見えたもので、申し訳ありません。 -- 名無しさん (2021-06-09 21:58:02)
- 上位試験の小論文は120分で3000文字くらい書かされるのが鬼畜。スペシャリストまでの試験とは難易度が全然違う。 -- 名無しさん (2021-06-13 18:09:18)
- 笑いと胃の痛みが込み上げてくる記事 -- 名無しさん (2021-06-14 18:42:11)
- システムアーキ取ったけど、嘘八百のエピソードでも要点さえ押さえときゃ -- 名無しさん (2022-11-30 02:06:43)
- プログラマが取るべきっつったらLinucとかかなあ。101あたりは「最低限の素養」だから、取るか同レベルの知識がないとそもそも会話が成り立たないとかある。 -- 名無しさん (2023-06-05 22:47:00)
- 基本情報とセキュマネは今年度から通年試験になったからITパスポートとほぼ同じ扱い。昔ほど価値が高い資格では無くなった。特に基本情報は出題範囲が狭くなった上にプログラミング言語(表計算を含む)も廃止されてしまったし…。 -- 名無しさん (2023-06-09 20:51:38)
- 今はどうか知らないが、昔の上位試験の多く(特にエンベデッド)は時間との戦いで、あまり現実的でないと言われていた。実際の仕事で120分で解く必要のある問題なんて、そうそうないわけでね。 -- (2023-06-09 21:55:35)
#comment
*2 ITパスポート試験では総合評価が得点率60%以上でも、3分野のうち1つでも得点率が30%未満だったものがあった場合は不合格となる。
*3 企業によっては採用試験で出身大学による足切りを行うことがある。しかし、偏差値があまり高くない大学でもある程度評価の高い資格を取得すれば学歴フィルターを回避できる可能性もある。
*4 加えて「C言語とHTMLしかできない」「フレームワークの知識がない」ということを見ても、ワイがお世辞にも技術をよく勉強しているとは言えないことが分かる。ぶっちゃけ、基本情報があったとしても企業次第では面接に通るか怪しいレベルである。
*5 簡単、という意味ではないので注意。ここで言う低レベルとは機械語に近い領域に関する知識のことで、難易度で言うならむしろ高レベルである
*6 ただし、こっちの職種は「ITの事聞いたらなんでも答えてくれるすごい人」としての役割を求められることが多いため、より広範な内容の学習が必要になり、学者ばりに勉強を継続しなければならないことも多い。中には「学んだ知識が古くなることが殆どないから、最初だけ頑張ればいいインフラの方が楽」という理由で基本情報を取りに行く人もいる。
*7 ただし応用情報技術者試験には午前免除制度が存在せず、午後が記述式である点に注意が必要。
*8 経済学部と法学部では応用情報技術者は出願条件の対象資格に含まれていない。商学部では応用情報技術者だけでなく日商簿記検定1級の合格者も出願条件の対象となっている。
*9 かつては上位試験もユーザー向けとエンジニア向けに分かれていた。
*10 あまり知られていないが、中国、韓国、東南アジア、インドにも日本の情報処理技術者試験に相当する国家資格が存在する。また、日本の国家試験とアジア各国の国家資格との互換制度も存在する。
*11 情報処理技術者試験ではITパスポートや基本情報技術者を飛ばして、いきなり応用情報技術者やデータベーススペシャリストなどに挑戦することが可能である。あまりオススメしないが。
*12 湘南藤沢キャンパス。総合政策学部、環境情報学部、看護医療学部がある。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧