登録日:2012/02/04(土) 01:00:40
更新日:2024/04/26 Fri 11:08:10NEW!
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金田一少年の事件簿 犯人たちの事件簿 松本版金田一 鬼畜な被害者 意外な結末 魔犬の森の殺人 金田一一 狂犬病 犬 野犬 意外な犯人 愛のある項目 壁に耳あり わんわんお ケルベロス 忠犬 旅行 悲劇 医学部 薬学部 ヤブ医者集団 金田一友人喪失シリーズ 命を「侮辱した」奴等 涙腺崩壊 オレガイチバンカクシタ 鬱展開 トラウマ回 哀しい解決編 余命半年の彼女 山梨県 魔犬 廃墟 研究所 森 ダイイング・メッセージ 心理トリック 数字 クローズドサークル 陸の孤島 犬笛 世界のナベアツ 秋 キノコ 毒キノコ 金田一恒例「屑な医療関係者」 救いがない 衝撃のラスト 古参ファン激怒 金田一恒例のクズ被害者 金田一恒例「性悪エリート」 金田一少年シリーズエピソード項目 鬼畜すぎる被害者 だいたい一のせい←ただし冒頭のみ 身勝手な人間達 救うべき加害者
萬屋さんたちを噛み殺したバケモノは――
俺たちが封鎖したこの建物の内側に残っちまったってことか!?
俺たちは今――
巨大な魔犬「ケルベロス」の檻の中にいるんだ!!
『魔犬の森の殺人』とは、『金田一少年の事件簿』で金田一一が解決した事件の一つ。
単行本がそれまでのFileシリーズからCaseシリーズへとリニューアルされてからの第一弾。全10話。
テレビドラマでは第3シーズン第7話として2001年9月1日に、テレビアニメでは第105話~第108話として1999年9月20日~10月25日にかけて放送された。
恐らく一が遭遇した事件で最も意外かつ、最大の悲劇と言える結末を迎えた事件の一つである。
また、本作以降原作者が金成陽三郎氏から天樹征丸氏へと交代されている。
アニメ版の容疑者リストの順番は上段が左から萬屋、千家、八尾、渡辺で、下段が十和田、二ノ宮、五十嵐、参道、百田でバックは水色。
登場する怪人は「ケルベロス」。
【あらすじ】
山梨へキノコ狩り旅行に行った一たち。
ところがアクシデントで泊まる家が無くなり、さ迷った末、廃棄された研究所を見つける。
建物に入ってみると大学のサークルがちょうど合宿を行っており、一緒に寝泊まりすることになる。
ところが翌朝、大学生の一人が喉を食い破られた血まみれの姿で発見され、さらに一の親友の千家が野犬に襲われる。
しかもその犬は行動から狂犬病の可能性が高かった…!!
さらに、廃墟の周囲は同じく狂犬病と思われる犬の群れに囲まれており、封鎖した研究所の内部に遺伝子操作の怪物犬「ケルベロス」がいると思われた。
一は、千家のためにも、廃墟から脱出する方法を探るため、捜査を開始する…。
果たしてこの事件は魔犬「ケルベロス」の仕業なのか…!?
【以下、ネタバレにご注意ください】
【事件関係者】
- 千家貴司(ドラマ版・千堂恭子)
CV:菊池正美/演:山田優
不動高校2年。
額のホクロが目印の、金田一の幼馴染。
首吊り学園殺人事件で初登場後、短編に1度登場し、長編には2度目の登場。
冒頭で一に幻覚性のあるベニテングタケ入りの味噌汁を飲まされた挙句、ラリっていた美雪が火をつけたのを見てあわてて文字通り火に油を注いでくれた、事件の中では犬に咬まれる。
さらに、その犬が狂犬病の疑いがあるとわかり、自暴自棄になりかけるが…。
メロン。
アニメ版では目印である額のホクロがない。
ドラマでは女性となっており、これ以前の事件にもちょくちょく登場している。
演じていたのはデビューしたばかりの山田優。
- 八尾徹平
CV:高橋直純
不動高校2年。
山梨の山奥に別荘を持っている(とは言っても古い民家)。
しかし一のせいで下痢を起こすキノコであるカキシメジを食わされ、幻覚キノコにラリッた美雪と千家の「ファイヤーダンス」で別荘を燃やされる可哀相なヤツ。(アニメでは別荘の内装を破壊されている。)もっとも、犯人のことを考えると、一が何もしなくても似たような目に遭っていた可能性は高い。
不動高校メンバー4人の中で唯一死体慣れしていない*1。
リンゴ。
- 参道麻衣
CV:松谷彼哉/演:三浦早苗
三城大医学部2年。20歳。
タバコをふかしたショートヘアーのギャル。萬屋のカノジョ。
最初に死亡し、「巨大な獣」に襲われたような姿で息絶えていた。何気にその死体がエロい。
漫画では軽薄だが気さくで人当たりは良く二ノ宮とも良好な関係だったが、ドラマ版では「色目を使っている」といいがかりをつけ、彼女を目の敵にしていた。
実は殺害されたのは2番目。
- 萬屋透
CV:竹若拓磨/演:スマイリーキクチ
三城大医学部4年。22歳。
サークルのリーダー格。
ノリのいい性格の大病院の跡取り息子だが、大学内ではとある黒い噂が…
廃墟も彼の家の持ち物。
アニメ版では一達に絡む十和田を追い払い、動物巨大化実験の調査の協力を一に依頼する等、原作以上に発言力のある人物として描かれている。
二番目に死亡。実は近視。
実はアリバイトリックの為に最初に殺害されていた。ちなみに生きてたらメロンに相当するのはこいつだった。
- 渡辺鐘
CV:中村秀利/演:岡本光太郎
三城大薬学部4年。22歳。うすらヒゲの男。
クイズ好き。態度は悪く、一と八尾は嫌悪感を抱いていた。大学では萬屋同様に黒い噂が絶えない。
三番目に撲殺され、死の間際にダイイング・メッセージを残すが…。
冒頭で一に対しあるクイズを出し、速攻で解かれて憮然としていた。だが、それがこの事件の重大なキーワードとなる。
「俺達の中で一人だけ仲間はずれがいる。そいつは誰だ?」
「俺が一番格下って事でしょ?」
名前と容姿のモデルは後の世界のナベアツ(現・桂三度)。
後に同じく数字を題材にしたギャグで全国的に大ブレイクする事になる。
同原作者の『サイコメトラーEIJI』のドラマ版にも端役として出演している。
ドラマ版では萬屋たちと同じ医大生になっている。
トマト。
- 百田梅男
CV:山崎たくみ/演:田口浩正
三城大医学部3年。23歳。原作のこのエピソードでのゲストキャラでは彼が最年長になる。
オカルトマニアのぽっちゃり系。萬屋たちよりひとつ年上だが後輩である事から、二度浪人(もしくは留年、あるいは各一回ずつ)していると思われる。
アニメ版では学年はそのままで21歳になっており、学年と実年齢の間に違和感がなくなっている。
「ケルベロス」に狙われる事に思い当たる節があるらしく、終始怯えた様子を見せていたが…。
不動高校の鷹島友代ほど重度ではないと思われるが、彼も潔癖症である。バナナ(ドラマ版は不明)。
- 五十嵐郁登
CV:千葉一伸/演:丹直樹
三城大理工学部3年。22歳。
丸眼鏡の喫煙者。廃研究所に入った一達をおどろかす。
黒い噂のある萬屋達に疑念を抱いており、他人に憎まれても仕方ないのではないかと指摘した。
父親が警視庁の公僕(階級や所属は不明)で、その関係で、一の事を知っていた。
アニメ版では医大生に設定が変更。また原作に比べ大幅に台詞・出番が追加された結果、殺人が起こる中で動物巨大化実験の調査を強行する、野心家かつ個人主義者として描かれている。
原作の一達に対する友好的な描写はほぼ削られたものの、二ノ宮と共に千家の為に狂犬病のワクチンを探したり、二ノ宮の涙ながらの説得に応じて調査を諦める等の描写も追加されており、二面性のある人物となっている。
ナシ。
- 二ノ宮朋子
CV:朴璐美/演:綾瀬はるか
優蘭女子大文学部2年で参道の友達。20歳。
松たか子似(八尾談)のおしとやかな美人。何か目的があって合宿に参加したらしい。
こっそりと飼い犬のユータ(アニメ版ではユージ)を合宿に連れてきていた。
五十嵐同様、アニメ版では大幅に台詞と出番が追加される。自分の欲望のために巨大化実験の検体に執着する五十嵐に動物の命の大切さを説く等、こちらは原作同様の心優しく芯の強い女性として描かれた。
ドラマ版の演者は後の超売れっ子女優だが、当時はグラビアが主戦場で、本作がドラマ初出演だった。
キウイ(ドラマ版ではアボカド)。
- 十和田清
CV:古川登志夫
アニメオリジナルキャラ。ベートーヴェン不気味な顔の老人。67歳。
研究所の元所員であり、遺伝子操作の実験を提案したが、研究所から追い出された。
何かを探しに古巣にやって来たらしく、入口で金田一達に突っかかってきたが、
次の日、死体となった参道の第一発見者になり、そしてケルベロスの騒ぎが起きてからは大人しく一行と行動を共にする。
知識が豊富であり、狂犬病などについても詳しかったり、事件中もケルベロス対策として火炎放射器を即席で作るなど、色々すごい奴。使う機会はなかったため、「汚物は消毒だ~!!」とはならなかったが。
萬屋や渡辺の黒い噂について、聞いたことがあるらしいが…。
対応するフルーツは不明。
- ユータ
二ノ宮のペットの子犬。かわいい。
アニメ版ではユージ。
一の背中にオシッコしたりするなどしていたが、彼の存在が事件の重大なヒントを与えることに…。
【その他の人物】
- 冴子
美雪の友人。一のことは大嫌い(1度でも一緒に事件に巻き込まれて、一の真剣な姿を知れば、考えが変わるかもしれない)。まあ%%グータラでアホなダメ男で有名%%だからね!
第1作に登場して以来、時々モブ出演した際も一の事をボロクソにけなしていた。
今回、一を放って美雪がキノコ狩りに参加することになったのも、彼女のゴリ押しの結果らしい。
本来は一ではなく彼女がキノコ狩りのメンバーだったが、一に列車の切符をスラれたうえ、トイレに監禁されて成り変わられてしまう。
だが事件の事を考えると、行けなくなって正解だっただろう。
今回の事件で美雪と疎遠になったのか、以後登場しない。
- 上山永生&中島保
美雪に告るも、手紙すら受け取ってもらえず、告った瞬間に断られ、見事に玉砕。
モデルはお笑いコンビ・コッキー。
- パパイヤ鈴木(ドラマ版のみ)
一の妄想内でわんこ蕎麦を食べすぎて太った一として登場し、ダンスを披露する。
【レギュラー陣】
毎度おなじみ主人公。
美雪が自分に内緒で他の男と旅行に行こうとしていたことを偶然知り、美雪との初エッチ狙いで冴子から列車の切符をスリ取り、
彼女をトイレに監禁して成り代わった(美雪の参加が冴子のゴリ押しによるものだろうとは考えていたが、それにしても彼女がOKしたことに不満を感じていた)。
序盤では下痢をするキノコ(カキシメジ)の味噌汁を八尾に、別々の幻覚キノコの味噌汁(美雪はオオシビレタケ、千家はベニテングダケ)を、それぞれ美雪と千家に飲ませる(実は美雪は一口も飲んでおらず匂いだけでラリっていたのだが)というシャレにならないことをやってしまうが、
その後彼にとって最大級の悲劇が待ち受けることに…。
ビワ(ドラマ版ではキウイ)。
今回、「怪盗紳士の殺人」のポアロ同様、犬の行動がヒントとなって謎を解く。
序盤こそ結構酷いことをしているが、事件発生後は、犯人が引き入れた野犬の1匹に美雪が咬まれそうになったところをすんでのところで防ぎ、
野犬の集団が廃墟内で暴れている間は一室に隠れて彼女を抱き寄せていて、しっかりと美雪を守る役目を果たしていた。
毎度おなじみヒロイン。
ブラモロのサービスシーンを披露するも、幻覚キノコであるオオシビレタケの味噌汁を一口も飲んでないのに匂いだけでラリっていた。
その時の顔がちょっと怖い。
だが、その後に一同様彼女にとっても悲劇が待ち受けることに…。
冴子にゴリ押しされたとはいえ、一に黙って他の男(千家、八尾)と旅行に行こうとしていたことについては、心底罪悪感を持っていた様子で、
キノコ汁による食事の際、彼に対して謝罪の言葉まで口にしていた。
なので、結果的に一が同行することになったことは、彼女にとっても願ったり叶ったりだったのではないだろうか。
ミカン(ドラマ版ではリンゴ)。
ちなみに、美雪は犯人が引き入れた野犬の1匹に咬まれそうになり、ギリギリのところで一に助けられている。
そのため、もし一がいなかったら、美雪はほぼ確実に野犬に咬まれていた。
その意味でも、彼女から見て非常時に最も頼れる一の同行が、結果として美雪にとって大きなプラスになっている。
ちなみに彼女に食べさせようとしたオオシビレタケは所謂マジックマッシュルームの一種。言い換えれば立派な薬物の材料である。
つまり食べさせる云々の前に所持そのものが犯罪である。(もっとも、この作品が出た頃はまだ非合法化はされていなかったが。)
渡辺の遺体の側には、果物が散らばっていた。
ビワ、ミカン、リンゴ、バナナ、ナシ、キウイ
そして、メロンに潰されたトマト
俺達の中で一人だけ仲間はずれがいる。そいつは誰だ?
今回の事件の関係者の共通事項は渡辺を除いて全員苗字に数字が入っている事。
(つまり、クイズの正解は一人だけ数字の入っていない渡辺)
その場にあった唯一の野菜であるトマトがその場にあった一番大きい果物であるメロンに潰されたという事は……
俺が一番格下― って事でしょ?
…え!?
オ レ ガ イ チ バ ン カ ク シ タ―――?
それじゃあ…犯人は―――
【以下、悲しい真相…更なるネタバレ注意】
金田一…
俺の…負けだよ…
『ケルベロス』をでっちあげて萬屋たちを殺したのは俺だ…
俺が全部やったんだよ
- 千家貴司(ドラマ版・千堂恭子)
この事件の真犯人「ケルベロス」。
犬笛で犬を巧みに操り、狂犬病に見せ掛けた上で研究所の周りに待機させることで、居合わせた面々の行動(特に脱出)を封じて殺害を決行。
実際にはすでに死んでいた萬屋がいかにもその場にいたように思わせる心理トリックを仕掛けた。
さらに死体が見つかるまでの時間に自分はワザとその犬に噛まれて看病を受けることでアリバイを確保した。
これには、噛ませる犬を故意に水を怖がるように訓練しておき、そのとおりに行動させることで、その犬を狂犬病だと誤認させ、
外にいる他の犬達も同じく狂犬病かもしれないという疑念を抱かせて、強行突破をさせないようにする狙いもあった
(ただの犬では、いくらたくさんいるといっても、強行突破される恐れがあったため。狂犬病とあっては、噛まれれば命にかかわるため、うかつに手が出せない)
3人の殺害後、渡辺の果物を使ったダイイングメッセージで犯人だと暴かれる。萬屋が板を窓に打ち付けている間に殺害されたと思わせるように仕組んだが、釘を打ち付けるという手元が危険になる作業を行っていたはずなのに、近視の萬屋がコンタクトレンズを眼につけてないことを明るみにされた。
それでも自分は犯人じゃないと言うが…一のとある行動により、とうとう観念した。
ある日、いつもの様に登校していた彼は、偶然一人の少女が道端で倒れていた犬に歩み寄る光景を目撃する。
少女はドッグトレーナーだった。名前は水沢利緒。千家は彼女に頼まれ、犬を助けることを手伝った。
千家は優しく可愛い彼女に一目惚れ。しかもその気持ちは、日に日に大きくなっていく。
ある日想いを決して告白する千家。しかし利緒は急に胸を押さえて苦しみだし、悲しい顔で拒絶する。
私、あと半年しか生きられないの……そういう病気なのよ
衝撃的な告白をする利緒。それでも千家は彼女を愛することを決めた。せめて半年の間だけでも、一生分愛してみせると。
彼女も「生まれて初めて受けた『愛の告白』なんだから、私。また生きるのが楽しくなっちゃった」と彼の気持ちを受け止めた。
しかし、その恋は突然の利緒の死により、半年よりも遥かに短い僅か2週間で幕を下ろしてしまう。
あと半年……あと半年あるはずじゃなかったのかよ?
彼女の亡骸と、その後発見した千家や彼の友人達との楽しい日々を想像して書いた「未来の日記」を見て号泣する千家。
そして思う。なぜ彼女は、検査のために入院した直後に容態が急変したのかと。
納得がいかなかった千家は必死に調べた結果、驚愕の事実を知った。
利緒の再入院の際彼女を担当していたのは、まだ医師免許も持っていない4人の大学生…萬屋達であった事。
彼女の死は院長である萬屋の父親が手を回し、病死にしてしまったのだという事。
行われた治療が医療行為とはとても呼べない、渡辺が作った新薬の人体実験台という、もはや人体実験に等しい行為だったということ。
そして、萬屋たちが通う大学に侵入した彼は…
あっ! おい! 渡辺!
あの女のカルテ始末しただろうな!?
あっ…忘れてた!
あの…それ…見つかるとヤバいッスよ?
たかが半年しか生きられない患者だったんだ!
そんなので捕まったらバカ見るぜ?
どーせ助かんねー患者がちっと早く死んだくれーで
イチイチ責任取らされていたら医者なんかやってらんねーよ
彼らの利緒の命の全てを侮辱した言葉を聞いてしまい、激怒した千家は復讐を決意した。
皮肉にも「恋人を殺され、揚句にその死を侮辱された」という動機は、彼のデビュー作の犯人と全く同じであった。
自白後、最後に百田を3人と同様に犬を操って殺害しようとしたが、利緒の気持ちを自身に重ねた一の説得と犬たちの健気な訴え、
そして利緒の幽霊の抱擁で心を動かされ、敗北を認めた。
翌朝に山梨県警が到着すると、一に笑顔で「ありがとう」と言って連行されていった。
現在は少年院に服役中。
しかし、狂犬病でないにせよ、千家が侵入させた犬達は決して安全とは言えず、実際、美雪はあわや噛まれる寸前までいったところを一に助けられている。
千家も、侵入させた犬達がターゲット以外の誰かを襲う可能性は、当然予見できたはずである。
最初に千家を噛んだ1匹だけならまだしも、途中であれだけの数の犬を廃墟内に侵入させた行為は、場合によっては美雪でなくても一や八尾などが襲われて噛まれていた可能性も十分に考えられ、自分が巻き込んだ無関係な友人達(もちろん、二ノ宮や五十嵐もだが)の安全を全く配慮していない。しかも、犬達は終盤まで狂犬病と思われていたため、もし1人でも噛まれていたら、千家という「前例」もあっただけに、その人のショックは相当なものだったろうという無責任さもある。
そもそも、渡辺殺しの際、犬達を引き入れて暴れさせる必要があったのかという問題もある。
渡辺が1人になったところを殺し、萬屋や参道のようにケルベロスの仕業に見せかければ、それで済んでいたのではないだろうか。*2
ただ、この時点で一が事件の裏に人間の真犯人がいると勘付きつつあったので、一の目を逸らす意図の方が強かったのかもしれない。
実際は逆にこの行動が一に「内部から犬が入りやすいように細工をしている人間がいる」と確信させる結果になったのだが。
八尾の別荘が全焼したことを機に、千家は目的地の研究所に向かうことが出来たわけだが、
全焼の件がなかった場合、どのような理由で研究所に行くつもりだったのか?という疑問が生じるが、
肝試しやらで一たちを煽って、研究所に向かったのかもしれない。
また、一は「懐中電灯を持って先頭を歩き、皆を誘導した」と推理したが…実際のその場面では誰も懐中電灯を持っておらず、
先頭を歩いていたのは八尾であり、研究所を見つけたのは他ならぬ一自身である。この辺は一が自分の犯罪がばれないようにごまかしていた可能性がある。
犯人視点でおもしろおかしく事件が描かれた『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』では最初から八尾の別荘を燃やすつもりだったと補完されている。
(元々原作でもよくよく考えると、なぜ灯油があそこに置かれていたのかという謎があった。)
- 水沢利緒
CV:岩男潤子
ドッグトレーナーの少女。可愛い。
千家と出会い、その優しさに惹かれた彼から告白されるが、その体は病魔(おそらく心臓の病気)に蝕まれており、余命半年の命だった。
それを知ってなお、千家は「その半年の時間を俺にくれ」と利緒の運命を受け入れて共に生きる事を望み、彼女もそれを承諾。2人は恋人同士になった。
しかし、利緒の病に目を付けた萬屋達に渡辺の作った薬を飲まされ、殺されてしまう…。
なお、特に何も説明されていないが、千家が事件で使っていた犬笛はおそらく彼女の遺品である。*3そんな大切なものをよりにもよって犬達に腕を噛ませてしまったせいでうっかり落とす羽目になるわけだが。
彼女の「未来の日記」とエピローグで幽霊となって千家の前に現れたシーンは涙腺崩壊必至。
ちなみに千家から一の事を聞いていたらしく、「未来の日記」に登場している。その中では一との初対面で(緊張して)ドキドキしてしまう事になっている。
…ありえん(笑)とか思ってても突っ込んではいけない。
おそらく何事もなければ創立祭で一と出会うはずだったのだろう。
- 利緒のペットの犬たち
元々は捨て犬だったが、利緒に救われた犬たち。品種も大きさもバラバラでいっぱいいる。
千家にも懐いており、彼の復讐に利用された。
もちろん、狂犬病というのもフェイクで、千家に噛みついた個体が水を怖がる様子を見せたのも、そうするように訓練されていたためである。
結果的には、操り手である千家以外は誰も傷つけなかった(一は多少ケガしたが)からまだ良かったが、
他の人間、特に殺人のターゲット以外の無関係な者を1人でも噛んだりしていたら、事件後に殺処分の対象になっていた怖れもあるし、
最悪、侵入させた犬のどれかが、メンバーの誰かの抵抗に遭って殴り殺されたりする可能性も当然あったわけなので、
千家の計画は、無関係な一達のみならず、犬にとってもはた迷惑な話と言わざるを得ない。
実際、1匹は美雪に咬みつこうとして、その寸前で一によって口の中に木材を突っ込まれて倒れ、その後どうなったかは不明。
「愛する利緒の忘れ形見達をこんなかたちで自身の殺人計画に利用して、千家自身の良心は痛まなかったのか」という疑問を抱いた読者も多かったのではないだろうか?
だが、彼らも今回の被害者たちに主を殺されてしまったのも事実。千家が百田を殺害しようとした時に「こいつらは利緒を殺したんだぞ!」と彼らに口にしていたことも考慮すると、「利緒の愛犬たちも、自分と同じように復讐を望んでいるはず」だと千家が本気で信じていたとしてもおかしくない。仮に良心ゆえに躊躇う気持ちがあったとしても、彼らを利用する大義名分には十分だったことだろう。
だが、彼らはご主人が愛した千家にもう罪を重ねてほしくないという気持ちからか、
最後のターゲットである百田を襲撃する命令を「お座り」して拒否した。みんなご主人に恥じない忠犬である。え…金田一には噛みついたのに…?ついさっき金田一にはバンバン噛みついてたけど?
事件の後にどうなったかは不明だが、ポアロの里親を探した一の事*4なので、きっと彼らの里親も探しただろう。
彼らを利用した事は一も言う様に千家自身の最大の落ち度だし、殺処分はないと願いたい。
『たかが半年』――。
あいつらはそう言ったんだ――!!
人ひとりの命の重さに――半年も50年も違いがあるのかよ!?
利緒の半年はあいつらの一生より、ずっとずっと大切な時間だったんだ!!
- 萬屋透
- 渡辺鐘
- 参道麻衣
とんでもない屑であり救いようのない最低最悪の外道どもだった今回の被害者達。
利緒が余命半年の命だからと目を付け、渡辺の作った怪しい薬を飲ませる実験台にして殺害。
そして人体実験への反省もなく上述のように言い放つなど、絶対に医者になってはいけない人間たちであった。
鬼畜生同然のその所業には、千家から聞かされた一も「俺だって絶対許せねーよ!!」と怒りを露わにした。
この一の発言は直前に百田を殺害しようとした千家の「お前らだけは―――絶対に許さない!!」に対応しており、
基本「罪を憎んで人を憎まず」のスタンスである一が事件の被害者側にここまで激しく怒りを露わにしたのは極めて珍しいケースである。
また、ここまでの間、萬屋達を「さん付け」で呼んでいたにも関わらず、この怒りを露わにした場面では萬屋を呼び捨てしている。
元々萬屋は解剖の検体の耳を切って壁にくっつけ「壁に耳あり」というギャグをとばしたり*5
ドラマ版では手術に失敗した事に対してせせら笑うなど、大病院の跡取り息子の自覚全くゼロな奴。四人の中で彼だけ「成功」に賭けていたが、「簡単なオペだったのにな~」という発言からして、
手術の成功を祈っていたとかそういう考えではないのだろう。
そしてその因果応報とばかりに、その『壁に耳あり』の言葉通りに壁越しから真実を聞いた千家の手によって葬られたと言う訳である。
渡辺は自分で作った「けっこーな薬」を後輩に飲ませてデータを取っているとんでもない奴。マッドサイエンティストレベルである。
事件の時も二ノ宮が連れて来た小犬のユータに対して、犬というだけで外にいた犬達と同類と考えて容赦なく棒で殴ろうとするなど、性根のゲスな人格が伺えた。
なおドラマ版では(千家に相当する)恭子が狂犬病になりかけている(フリをしている)という時に、「たかが一人に構って、全員を危険にさらすのかよ!」と緊急時とはいえ言い放って見殺しにしており、美雪からもマジギレされている。
参道は二人につき従っている様子であまり目立つ行動も少ない存在だったが、萬屋のギャグに大笑いしていた辺り、まともな神経じゃない点は同じ。ただ良識人の二ノ宮の友人という所から、萬屋の恋人になる前はまともな人間だっかもしれない。
以上のことから、&b(){千家によって抹殺されなければ患者を私物化し同じような事をこれから先も続けていたであろう事が容易に想像でき、
さらにでかい事件が起こる可能性も十二分に考えられたため、殺されたのは五十嵐の言う通り「当然の報い」といえるし、同情の余地は一切ないだろう。
余談だが、渡辺のダイイング・メッセージで千家より先に萬屋を連想した読者は多かったと思われる。
萬屋は渡辺と同じ標的側の人間であり、なにより渡辺より先に殺されているので、渡辺の死に際の「どうしてあいつが…!?」という台詞にも繋がるなど、
意図的なミスリードだった可能性もある。
尤も、一はそれに惑わされず、正しく意味を理解してしまったが。
ちなみに萬屋を含めるか否かはフルーツの数でわかる(フルーツの数が2個少ない=既に殺された2人はカウントされていない*6)。
ちなみに、渡辺のダイイング・メッセージは、最初に一に出したクイズが元となっており、その問題を一瞬で解いた一にだけは確実に伝わるだろう、ということを意図したものだった。実際にはトマトだけでなくバナナとメロンも生態的には野菜であることは内緒だ!
- 百田梅男
人体実験メンバーの一人だが、唯一生存。
事件後は殺されかけてさすがに懲りたのか、それとも良心が咎めたのか警察に自首し、自分も関わっていた萬屋たちの悪行をすべて洗いざらい告発した。
酷な言い方だと、彼がもっと早く自首して告発していれば、この事件は起こらなかったかもしれない。
せめて彼の証言が千家の情状酌量に繋がってくれれば幸いである。
アニメ版では前述の通り浪人や留年などはしていないと思われるが、水沢の死後「後味が悪い」と発言する等その気持ちが顕著に表れており、
水沢の容態悪化の際に正式な医師に助けを求めようとしていたが、萬屋たちに反対されてしまった。
ドラマ版だと彼も「賭け」に参加しているため同情の余地は薄れる。しかも、「四連勝」と微笑んでいたり、「俺は見てただけじゃないか!やったのはお前ら3人だ!」と萬屋達に責任転嫁するなど改悪を受けている。
- 萬屋の父親
本事件最大の元凶。
人体実験に利用することまでは知らなかったとしても、医師免許を持っていないことがわかっている息子達に患者を1人引き渡したうえ、
その人物を殺した息子達の罪や神経を咎めるどころか、逆に権力を濫用してそれを揉み消していたという医者としても父親としても最低な男。
同じくクズな息子を持つ、のちの事件の息子を更生させるべく手を尽くしていた院長とは大違いである。
事件後は息子達(と自分)の悪行がバレた事によりマスコミに叩かれまくっているらしい*7。
その程度なんだよ…あの人たちの『人の命を預かる者』としての自覚なんて…
だから仮に本当に人を死なせてたとしても“実験動物”が一匹死んじまった―ってぐらいにしか考えてないかもな!
- 五十嵐郁登
萬屋達とはそれなりに親しい付き合いだったが、彼らとは異なりまともな神経の持ち主で、本心では四人の異常性に辟易していたらしい描写も多々見受けられる。前述の「壁に耳あり」の時もその場に居合わせていたが、自分がドン引きしている横でゲラゲラと笑う萬屋達を見て内心「ついていけねーよ」と毒づいていた。
彼が捜査中の一に語った上記の言葉は、図らずもこの事件の本質を的確に表現していた。
アニメ版では動物巨大化実験の資料だけではなく、実験結果の検体のDNAそのものを手に入れようと一攫千金を企んでいた。渡辺の死体発見後も異常な執着心でDNAの捜索を続けていたが、二ノ宮に説得され、彼女の正体を知った後は事件解決に動く一達に協力的となる。
- 二ノ宮朋子
父が事件の舞台である潰れた研究所の研究員(アニメ版では所長)であった過去を持ち、実験動物の中で一番の仲良しだった(実験動物とは知らずに仲良くしていた)犬の「ユーリ」を探しに合宿に参加していた。
勿論ユーリはとうの昔に実験で使われて死んでおり、無造作に放置されたその遺骨を探し当てたときは涙を流して「ごめんね」と呟いていた。
アニメ版ではユーリの捜索に加え、医大生達の動物巨大化実験の調査を失敗させるために合宿のメンバーに潜り込んだ。
段々と狂気に染まっていく五十嵐に「動物は実験の材料ではない」と訴え、彼を正気に引き戻す場面はアニメオリジナルながらこの事件の象徴的なシーンとなっている。
事件後はユーリを含めた犬たちの遺骨は彼女がちゃんと葬り直すとの事である。
ちなみに、今回連れてきたユータはユーリの子孫らしい。
- 八尾徹平
一とは違った意味でこの事件の被害者。
- キノコ狩りの計画を殺人計画に利用される(彼の家の別荘が萬屋達の合宿先の近所だったため)
- 一に下痢を催すキノコを食わされる
- 一が盛った毒キノコのせいで美雪と千家に別荘を燃やされる
- 死体慣れしていないのに3つも死体を見せられる(死体を見た時には「何とも感じねー方がどうかしてる」と極めてまっとうな発言をしていた。)
- 「友人が犯人」という非情な現実を突きつけられる
……と散々な目にあったが、すべてが終わった時には千家を恨むどころか、
エピローグで萬屋の父親が叩かれまくってる記事を読んで「これで千家も少しは救われた」と言うなど、
彼もまた一と同様に最後まで千家との友情を捨てる事はなかった。
- 冴子
エピローグにも出てこない。
真偽は不明だが、当初一がキノコ狩りに誘われなかったのは、一を嫌っている冴子を千家が利用して、自分の殺人を見破る可能性がある一を参加できないよう仕向けた可能性もある。
一と幼なじみで仲の良い千家がそこまでやるかとも思えるし、美雪が聞いたら不自然に思う可能性もあるが、
少なくとも事件中に一に介入されるリスクに比べれば軽いものと言えるだろう(冴子自身は話題に上がらないが、犯人たちの事件簿においても同じ解釈になっている。)。
その意味では、仮にそれが正解としたらだが、美雪だけがキノコ狩りに参加する状況にして、一の嫉妬を煽ったのが大失敗だったといえる。犯人たちの事件簿では千家も「ぬかった!」と言ってたけど、そもそも普通冴子を監禁しチケットをスリ取ってまで無理矢理参加するなんて思わないよな……。「正直ナメてましたあいつの性欲の強さを…シャバにいられるギリギリの性欲だと思います」
エピローグに登場。
管轄外なのに一が関わった事を知って山梨県警と共に駆けつけた。
「首吊り学園」で千家の事も知っていた為、かなり辛そうな表情をしていた。
「飛騨からくり屋敷」の時と言い、こういう時ほど刑事としての自分の立場が辛いと感じたときはなかっただろう。
エピローグに登場。
「聖なる夜の殺人」の後で実家のコテージが潰れ、オヤジの丙介が謎の空中都市・シャングリラを探しにチベットへ旅立ってしまった為、今作から一の家に居候する事になった。
救われない結末を迎えた本作のある種の清涼剤。
寝顔は天使。
- 本物の「ケルベロス」
ケルベロスの存在そのものは千家がでっちあげたものだが、千家一人であの巨大な檻を用意できたとは到底思えないため、
「遺伝子操作した大型犬」は本当にいた可能性もあるけどこの作品、下準備に余念のない犯人多いからなぁ…。
いたとしても勿論、とっくに死んでいて千家が遺骨を埋葬したと思われるが…。
ドラマ版では序盤で萬屋達の乗っている車が、道路に飛び出してきた犬を誤って轢いてしまうシーンがあり、もしかしたらその犬が本物の「ケルベロス」だったのかもしれない…。
――ったく、やってらんねーよ!
どうしてお前が…こんな――!!
- 金田一一
ある意味この事件最大の被害者。
自分が犯人であることを頑なに否定する千家に対して一がとった最後の手段は、自ら犬の群れの中に飛び込み、犬たちが自分を襲うよう仕向けるというもの。
千家が犯人ならば、必ず犬を止めて助けてくれるという千家との友情を信じた行動だったが、逆に言えば千家との友情を利用して追い詰めたとも言え、
目論見通りに咄嗟に犬笛を使って犬たちを静止し、自らが犯人であると認めざるを得なくなった千家に対して、上記の台詞を悲しげに吐き捨てていた。
一にとってあまりにも悲劇的な結末を迎えたためか、冒頭のやらかしの追及は一切なかったりする。
そもそも冴子のチケットをスリ取らなければ一が事件に関わる事はなかったので、やらかしの結果「親友を自らの手で告発しなければならない」という制裁を受けたと見なす事もできる。ただ単にキノコ汁のバチが当たったと思うがそれにしては大きすぎる…
【余談】
今回の「ジッチャンの名にかけて」は狂犬病の件で自棄を起こした演技をする千家を励ますために言ったもの。*8
その千家を真犯人として告発するためにもう一つの決め台詞が使われたというのはなんとも皮肉な話である。
千家が犯人であった事は一や美雪にとってもショッキングな出来事だった事が伺え、美雪は終始涙目で「嘘よ」と言い続け、一も事件を解決した後もやりきれない様子を見せ、
千家と別れた場面では泣いている事が暗示されている。
そして、事件後も上の空の様子だったり、仲の良い小学生達を見かけて在りし日の自分と千家と重ね合わせるなど、心に深い傷を負った事が伺える。
利緒の死とその真相に関しても、千家が一に打ち明けてくれれば、いつきや明智警視などにも協力してもらい、萬屋たちの断罪をする事もできたはずである(一は一応、(AV鑑賞でお説教を食らったものの)警視総監とも面識がある。幾度も警察に貢献した一の証言ならば、警察も与太話とは思わず動いたことだろう)。
その点でも一の無念さはひとしおであっただろう…。
しかも皮肉なことに、冒頭で毒キノコを盛った際に千家を完全ダウンさせることができれば事件は起きなかった。
もちろん、問題を先延ばしにするだけだっただろうが…ただし、犯人たちの事件簿においては千家は一の目論見を見抜いて毒キノコを食べた振りをしていた事になっている。
後の公式ガイドブック「ファイナル ラスト エピソード」にて、一部読者からは「なんで千家を犯人にしたんだ!」といった苦情が来たことが製作スタッフの座談会で明らかになった。
これに対し作者側は「どこから犯人が来るのかが解らないのが『金田一少年』であり、それを描きたかった」と語っている。
アニメ化の際には本事件以前の千家の出番は一切無くなっている。これは後にOAD化された「黒魔術殺人事件」の犯人にもなされ、以前に出ていた作品である「邪宗館殺人事件」はアニメ化されておらず、当然上記の「黒魔術殺人事件」が初登場となった。
また、千家がいなくなってから作者側も「一と親しい男友達」というポジションが貴重である事に気付いたのか、
後にかつての千家と同ポジションの村上草太が2つ後の作品から登場する事になる。*9
ちなみに草太も、後に「獄門塾」で一度事件関係者になった事があるので、千家の悲劇を知るファンは気が気でなかっただろう。
しかも、故意か偶然かは分からないが、事件の舞台は千家が初めて容疑者入り(+初登場)した「首吊り学園殺人事件」同様、塾であった。
そして実は千家のトリック自体は非常にシンプルなもの。
しかも萬屋の手荷物を調べなかったあまり、一にあっさり見破られてしまう(萬屋の死体を調べた際にヒゲが剃ってあった事に注目する*10一に「それが何か変なのか」とうっかり聞いたりもしている)。
だが、トリックは見破れても「信じたくない」と思った読者が多かったことだろう。
一が真犯人告発の前に不動高校メンバーを集めて「ケルベロスを装う真犯人がいる」と打ち明けた際に、千家は「犯人を捕まえるのに協力する」と一に約束するのだが、
実はこの時点で一はダイイング・メッセージにより千家が犯人だと気づいている。
おそらくトリックを見破った読者同様、一もこの時は「千家が犯人だと信じたくない」「間違いであってほしい」と思っていたに違いない。*11
その後、一は千家に自身が犯人であると認めさせるために犬たちの中に飛び込み、千家にそれを止めさせるという形で「犯人を捕まえるのに協力させた」のは皮肉としか言いようがない。
渡辺のダイイングメッセージの意味を知って「(木に実を付けるのが果物だから)メロンは野菜なのでは?」と疑問に思う人もいるだろう*12。だがあのときの渡辺は殴られて命の危機にあり、パニックになって考え出したものであって、何が野菜で果物かまで考える余裕はなかっただろうし、普段からメロンを厳密な定義で野菜と考えてる人も少ないだろう。ちなみに一般的に果物と言われてる果実の中で農林水産省が野菜としているのは他に今回登場したバナナ、そしてイチゴとスイカとパイナップルである。
そもそも渡辺自身を示すトマトからして果物とみなされる事がある。この実が野菜なのかフルーツなのかについては永遠に論争が続いているらしい。
【アニメ版】
- 千家が登場するのはこの事件のみ(前述)。
- 冴子や上山&中島が登場しない。
- 原作における序盤の展開の強引さとトリックの誤植が指摘されたため、研究所に到着するまでの経緯が変更された。
- 研究所についた際、原作では萬屋達は袋男に扮し一達を驚かしていたが、アニメ版では一達に突っかかる十和田を追い払っている。
- アニメでは、一も始めから美雪達とアウトドアに行く事になっていた。また、八尾の別荘は獣に荒らされ、泊まれる状態ではなくなっていたと変更。当然、毒キノコ騒動の件も全カット。
- 研究所の大学生たちの活動が合宿から動物巨大化実験の遺伝子操作の研究資料集めに変更。五十嵐を始め全員がこの資料に執着を見せており、原作以上に「命を実験材料とすることの罪深さ」が強調されている。
- 五十嵐と二ノ宮の年齢を19歳に変更。千家の為に二人でワクチンを探す等、共に行動するシーンも増えている、
- 渡辺鐘が一にクイズを出題するタイミングを研究所探検の最中から部屋割りを決めた直後に変更。またクイズの答えを一がその場で解説している(ドラマ版でも同様)。
- アニメオリジナルキャラとして十和田清(過去に研究所の住人だった老人)が登場。
- 二ノ宮の犬の名前を「ユージ」に変更。
- 渡辺は二ノ宮が静止するのも聞かずに、「こいつが狂犬病じゃないという保証はない」といいユージに暴行を加えようとする。
- 参道が殺害された際、第一発見者が十和田になっている(原作では百田)。
- 萬屋達の黒い噂について話す人物を十和田に変更。
- 五十嵐も萬屋達の実験の被害に遭っていた。
- 研究所に地下の隠し部屋がある設定が追加された。この部屋で五十嵐と二ノ宮の目的が明かされる。
- 五十嵐は遺伝子操作に成功したケルベロスのDNAを手に入れて金儲けしようと企んでいた。二ノ宮は研究所所長の娘であり、幼い頃友達であった犬達が研究員によって実験材料として使われ、死んでしまったという悲しい過去を持っていた。萬屋達と同行したのは、ユーリの骨を探すだけでなく、遺伝子操作の研究資料を手に入れて犬達を傷付けようとする萬屋達を阻止する為だった。
- 一達が犬に追われる際、渡辺達が自分の部屋に閉じこもるシーンが追加された。
- 千家が狂犬病により体調が悪化する(演技をする)場面が追加。
- 萬屋の部屋を調べる不動高校のメンバーを金田一と美雪のみに変更。
- 金田一が「謎はすべて解けた」と言った後、百田が取り乱して全員で彼の部屋にいく。そして、そのまま推理を披露する
- 利緒の容態が悪化した時、百田は正式な医者を呼びに行こうとしていた。
- 前述の萬屋の「たかが半年~」の台詞を「どうせ後半年しか生きられなかったんだろ? 不幸中の幸いって奴?」に変更。
その話をする場所をソファのある部屋に変更。
千家がその話を聞く場所を萬屋達がいる部屋のドア越しに変更。
萬屋や参道は百田の「後味悪いっすよね。」と言う発言に一応同意はしていた。(後悔までしていたかどうかは不明) - シラを切り続ける千家に対して、一が自ら犬の群れに飛び込むシーンはカット。
- 千家が日記を読むシーンはカットされ、事件の最終日は千家の誕生日となっている…
しかし、千家は事件中、(最終日以前から)17歳とクレジットされているため、金田一の同級生であるということを考えると矛盾してしまう。
(恐らく、誕生日を期に17歳になったのだろう) - 一が萬屋達に対し怒りを露にする台詞と千家が警察に連行されるシーンはカット。
- 二三がすでに一の家に居候しているので、エピローグが変更された。
- プロローグでは二三が野良犬を拾っており、エピローグではその野良犬は八尾が引き取る事になった。
- 準レギュラー(?)として、怪盗紳士の殺人と銀幕の殺人鬼で登場した、ポアロが冒頭で登場。
【ドラマ版】
- 冴子や上山&中島が登場しない。
- 上記の通り千家が千堂という女性になっているため、恋人の性別も男性に変更。
- なお、千堂はこれ以前の話から出ていた準レギュラーだったのだが、その時は「百恵」という名前で、本作で「千堂恭子」と変更されている。恐らく、名前に「百」が入っている事によるダイイング・メッセージの混乱を避けるためであろうが…クイズの答えの「名前」を「名字」に変えれば済んだ気もする。
- そうすると、千家=千堂というのは放送途中に急遽決めた設定の可能性が高い。
- そのため、ドラマでは不治の病ではなく通常の手術で問題なく完治する入院患者となっており、萬屋たちはその手術を失敗し、しかもその成否をギャンブルで賭けていた事になった。また、その描写で「四連勝」と言っているため、複数回同じ事を繰り返していたらしい。
(合宿はその手術失敗のほとぼりが冷めるまでの口実だった)
原作以上の外道である。 - 一達はミス研のメンバーとキャンプに来ていたという設定になっており、一と美雪は恭子に「いい物を見せてあげる」と言われて森の中に入っていたところを犬達と遭遇し、廃墟となった建物まで逃げ込んだ。
- 一と美雪は喧嘩中という設定(原因は前回『速水玲香誘拐殺人事件』ラストを参照)。
- 萬屋が殺害される時間帯を事件当日の早朝から事件前日の晩に変更
- 参道の死体発見時百田は一達を呼びにきている。
- 二ノ宮は萬屋たちと同じ大学で、五十嵐と共に医学部の後輩。一達以外は全員医学部に統一されている。
- 狂犬病について説明する人物を渡辺と二ノ宮に変更。恭子が狂犬病の疑い(実際は狂犬病ではなかった)のある犬に噛まれたことを二ノ宮が本人の前で指摘している。
- 『壁に耳あり』のシーンで五十嵐が呆れるシーン、五十嵐が万屋たちの黒い噂について話すシーンはカット。
- 野犬騒ぎの前、美雪が渡辺達に恭子を助けるよう頼みに行く
- 渡辺達は恭子を助けるのを拒否し、渡辺の一言で美雪がキレている。
- 百田は萬屋や渡辺に敬語を使わない(原作と違い同学年のためか)。
- 萬屋の部屋にはコンタクト以外に眼鏡もおいてある。また、五十嵐が金田一達を呼び止めるシーンや金田一が五十嵐に萬屋がコンタクトをしているかどうか聞くシーンはカット。
- 八尾徹平は登場しない。それに伴い、上記の展開になったため、彼の実家の別荘も登場しない。無論、毒キノコ関連の騒動も全カット。更に、萬屋が髭を剃ってた事について追求する人物を美雪に変更
- 二ノ宮の父親が事件の舞台になった研究所の研究員だった話はカット。それに伴い、ユータは登場しない。
- 代わりに一と美雪が拾ってきた野良犬が登場しており、「チビ」と名づけている。
- 金田一が「謎はすべて解けた!」と言った後、百田が「もうダメだ!車まで戻ろう!」と五十嵐達に提案し、五十嵐に「じゃあ先輩一人で行って下さいよ!どうせ次は先輩なんだから!」と返され、取り乱しながら暴れるシーンが追加。そこに金田一達が現れ、事件の全貌を暴く。
- 金田一が犯人に該当する果物を犯人の足元に落とす。その際、美雪が一瞬百田を疑う。
- 金田一、美雪、二ノ宮を表す果物を変更。また、五十嵐に該当する果物が明かされ、百田は原作ではバナナだったが床にバナナが落ちていなかったため、不明になっている。
- 犬笛について説明する人間を金田一に変更。
- 金田一が千堂に「萬屋達が事件の舞台になった山奥の建物に来る事を知ってたんだろ?」と訊くタイミングを千堂の自供前に変更。
- 犯行の動機を自供後、千堂が百田を人質にとる。
- 犯人に犯行をやめるよう説得する人物が一から美雪に変更。
- 犬が百田に襲い掛かろうとするシーンで、原作では犬自身の意思でやめていたが、ドラマでは恭子の持っていた犬笛でやめている。
- 原作では山梨県だったが、長野県になっている。
千家君……。
ああ。わかってる、わかってるよ。利緒――。
追記・修正は犬笛を吹きながらお願いします。
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- 荒れていたのでリセットしました -- 名無しさん (2022-11-13 11:17:50)
- うーん…序盤の家が燃えちゃうギャグは、あれが次のページで家が元通りになってたら素直に笑えたと思う。あのくだりのせいで千家が本来はどういう作戦で皆を研究所まで行かせる予定だったのかも謎になってしまったし。 -- 名無しさん (2022-12-13 19:28:24)
- 連投失礼。ただ研究所に着いてからのスリル感やパンの中に犬笛を仕込んでいたトリックなどは感嘆した。 -- 名無しさん (2022-12-13 19:29:32)
- ↑2まあ漫画やアニメでよくある暴力系ギャグが笑えるのは、殴られたり爆発に巻き込まれたりした人間が一瞬で元通りにピンピンしてるからであって、本当に重傷負ったり死んだりしてたら笑えないからねぇ。このエピの大筋は面白かったから許せるけど。 -- 名無しさん (2022-12-23 15:50:34)
- あの数の犬をどうやって山梨まで連れてったんだろう… -- 名無しさん (2022-12-28 21:27:07)
- 冴子あの後どうなったんだろ?さすがに小屋まで行くのは無理だから怒りの中帰宅、ニュースで千家の事を知り唖然…とか? -- 名無しさん (2023-01-21 11:19:15)
- このダイイングメッセージ、気づけないよ流石に。しかも渡辺は死にかけの時にこのダイイングメッセージを思いついたってのもなんかしっくりこない。 -- 名無しさん (2023-02-28 14:25:40)
- 血文字でダイイングメッセージを残そうとした画家がたぶん一番利にかなってる -- 名無しさん (2023-03-11 21:55:48)
- この事件かなり微妙だったんだけど皆さんはどう? -- 名無しさん (2023-04-30 17:30:29)
- チョッパーが見たらブチギレそう -- 名無しさん (2023-05-30 20:59:01)
- 伊集院先生がいたら千家が依頼をしてきそう -- 名無しさん (2023-05-30 20:59:46)
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*2 自分が咬まれて見せたのも、他のメンバーが犬に近づかないよう仕向けるためもあったのだろうが、自分から犬の方を近づけてしまったのでは元も子もない。
*3 回想場面で利緒が犬笛を使う場面がある他、本エピソードの冒頭で犬笛を握りしめて復讐を誓う千家の手が描かれている。
*4 アニメ版ではポアロは金田一家に引き取られている
*5 軽く見えるが、実はこれは刑法第190条「死体損壊等罪」に該当する立派な犯罪行為である。
*6 ただし、一は「致命傷を負った渡辺さんがそこまで考えて配置出来たかはわからない」と語っている
*7 ドラマ版では警察が介入した事になっており、アニメ版では後日厳重な処分を下されたと一が語っている
*8 この時、千家は「す…済まない…!…金田一―――…!」と言っているが、これは親友を裏切ってしまった千家の本音だったのかもしれない。
*9 これ以前にも後から映像を見返せる「ビデオ撮影」というポジションを、殺害された兄・佐木竜太から引き継いだ弟・竜二というケースがある。
*10 この時点で一は萬屋が近視である事を知らないが、既に萬屋が参道よりも先に殺害されていたと当たりを付けていたものと思われる。
*11 『犯人たちの事件簿』ではこの場面で千家が既に一が真相に気づいているのではと疑い、「どういう感情で(一に協力するなんて)言ってるんだ俺は…」「どういう感情でそれを聞いてるんだお前…」「友達なのにお前の事が分からない」と絶望していく様子がギャグっぽく描かれたが、一の立場に入れ替えても「どういう感情で千家に協力を呼び掛けているのか」「どういう感情で千家がそれを聞いているのか」「友達なのに千家の事がわからない」という全く同じ心境になっていたことは想像に難くない。
*12 正確に言うと、農林水産省は「2年以上栽培する草本植物及び木本植物」が果物であるときっちり定義している
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亡くした人の亡霊に止められるシーンも吸血鬼殺人事件と酷似してるな。
「じっちゃんの名にかけて!」を真相を暴くためでなく「おまえを必ず助けるから」という意味で使ったのは胸アツだった・・・んだけどな・・・
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