狂歌百物語(千首) - いにしえwiki
千首001.一部づゝ 千部の経を 千首の 受けんと塚を 出る小塚原(栄寿堂)002.数あまた 並びし首の 桶狭間おけはざま 実検をせし 跡の怨念(藤紫園友成)003.見た人が 十人寄れば 十色にて 百倍恐く 咄す千首(文栄子雪麻呂)004.百筋の 燈火ともしび消して 物語り 十倍
千首001.一部づゝ 千部の経を 千首の 受けんと塚を 出る小塚原(栄寿堂)002.数あまた 並びし首の 桶狭間おけはざま 実検をせし 跡の怨念(藤紫園友成)003.見た人が 十人寄れば 十色にて 百倍恐く 咄す千首(文栄子雪麻呂)004.百筋の 燈火ともしび消して 物語り 十倍
累001.俤の 変はりて妻は 秋草を 刈りにし鎌も 仇となりけり(仙台松山 千澗亭)002.恨みしと 百万遍も 手を合せ くどく累は 礼も言ひけん(東風の屋)003.絹川に 沈む累は 浮かばんと さてこそ人に 取り憑きにけり(南寿園長年)004.三日月の 鎌に柳の みだれ髪 水影
離魂病001.立合を たのみて来れば 医者までも 離魂病かと 疑はれけり(藤園鷹見)002.二人とは 又無き事と 思はれつ 同じ姿の 影の患ひ(宝珠亭船唄)003.患ひも 同じ姿の 二つ影 くせまで似たる 髪の結ひぶり(弓のや)004.はかなくは 身を一つにと 睦みたる 姿二つに
人魂001.誰たれ見しと なくて言ひつく 咄はなしまで 翼を添へて 走る人魂(仙台松山 千澗亭)002.一念に 燃やす炎ほむらの 日高川 わたる恨みや 妄蛇なるらん(静洲園)003.生ぐさき 風の誘ひて 鰯雲 かゝる絶え間を 過ぐる人魂(海樹園)004.煩悩と 迷ひの雲の 中空を
舌長娘001.立ち消えて 探る灯あかしに 引出しの 附木つけぎの舌も 長き小娘(何の舎)002.嶋田髷 みだせば紅紛べにの 半がけも ぺろりと下がる 舌長娘(弓の屋)003.ぺろり出す 娘の舌の 長襦袢 これも化物 仕立なるらむ(銭丸)004.大やまと 国内くゐち食はむとも なか
轆轤首001.己おのが子を 轆轤首じやと 噂する 親も首をば 延ばしてぞ聞く(語吉窓喜樽)002.顔色は 青き日傘の ろくろ首 さしかゝりては 迯にげやうもなし(萬々斎筬丸)003.破れ傘 骨は砕けた 轆轤首 雨に頭の 髪もみだれて(金剛舎玉芳)004.無き事を 有りと言はれて
枕返001.死し如く よく寐るゆゑか 目覚むれば 南枕も 北とこそなれ(南向堂)002.挿して寐し 東枕も 返されて 西へ廻れる 月形つきなりの櫛(弥生庵)003.小夜衣 きぬた枕を うつゝにて 打ち返さるゝ 夜半ぞうたてき(駿府 小柏園)004.返されし 枕ふつと 目の覚めて
平家蟹001.紅き毛の 生えてぞ見ゆる 平家蟹 おらんだ文字の 横にあゆみて(宝珠亭船唄)002.汐煙 立てゝ飯たく 平家蟹 兵粮方の 武士のはて(語安臺有恒)003.中々に 岸に三つ四つ 平家蟹 弁慶蟹を とりこにぞする(萬々斎筬丸)004.平家蟹 兜蟹とや 挑みあふ 錣引せし
狐火001.嫁入は よき玉姫と 行列の 夜をまつ崎に すゝむ狐火(雛好)002.賑はしく 数見ゆるほと 淋しさの まさるは野辺に ともす狐火(草加篠田 稲丸)003.はふかれて むれをはなれし 狐火は 何国の馬の 骨やもやせる(和木亭仲好わぼくてい なかよし)004.くたかけの
船幽霊001.生魚を 積み来る船も 腐つたる 匂ひたまらぬ 夜半の幽霊(花前亭)002.乗りし人 覆さんと 取りつくは 船幽霊の 罪の面楫(和風亭国吉)003.襟元へ 水かけらるゝ 心地せり 柄杓貸せてふ 船のこわねに(江戸崎 有文)004.底ぬけの 柄杓を借りて 酒船へ 水を割
見越入道001.影すこし 夜風に雲も やれ紙帳 見越してのそく 松かえの月(鶴序)002.箱根から こなたになしと いはるれは 関のひかしを 見越入道(雛好)003.入道が 見越す一寸 先はやみ 六分もちゝむ 五分のたましひ(俵舎)004.坊主とも なりし身のまた 化て出る 佛の
陰火001.つきまとふ 女小袖の 形見物 燃ゆる鬼火や 紅絹の胴裏(何の舎)002.音もせず 声も夏野に 燃えあがる 鬼火は蛍 あつまりし如(喜樽)003.小夜ふけて 雨降る寺の 荒庭を 草かげ青く 鬼火燃えけり(銭廼舎銭丸ぜにのや ぜにまる)004.露とのみ 消えにしあとに 燃
をとる事二〇、異果を食ひて死すること二一、兼好法師御來談のこと二二、公行朝臣閑居のこと二三、實勝朝臣北方の事二四、行輔卿の妾の事二五、鼻高き狂歌の事二六、松茸歌の事二七、犬王丸山賊にあふこと二八、楠墓落書の事二九、康村長重狂歌の事三〇、右馬允繼遁世のこと三一、中納言局の歌の事三二
姑獲鳥001.襟元へ 水そゝぐ如 冷汗の 流れ灌頂に 立つ産女見て(語安臺有恒ごあんたい ありつね)002.腰紐に 化けし産女は 人の子を 己が子に取る 蜂によく似て(青梅 扇松垣)003.みそか子を 儲けし妻の 果しかも 闇の夜半にぞ 出づる産女は(頓々)004.世を去りて ま
貍001.破れ戸樋 笛ふく秋の 夜嵐に はた天蓋も 踊る猫寺(何の舎)002.貍を 出す見世物師 看板の 口上書に 尾に尾つけけり(俵舎)003.目はさらに 口は耳まで 酒よりも 油昧しと 舐むる猫又(鶴子)004.手拭に 天窓かくしつ 尻尾をや 人に見せじと 踊る猫また(千住
髪切001.風凄き 秋の木の葉の 銀杏髷いてふまげ おちておどろく 野路の髪切(銭丸)002.柳散る 秋風よりも 目に見えず 切られし髪に 驚かれぬる(海樹園)003.大事がる 娘の髷も 髪切に 切られて何と 言ひやうのなき(尚丸)004.髪切に 切られし人の 影見れば 変る姿は
鬼001.琴に似し 威おどしの糸の 合はせもの 錣しころも引いた 鬼の三ツ指(鶴の門)002.鬼の棲む 地獄の沙汰も しろがねに 替へたる虎の 皮のたふさぎ(南向堂)003.似せ姥と 悟りし綱が 抜き打ちに 其の手は喰わぬ 茨木の鬼(弓の屋)004.大津絵に 描いた儘なる 鬼を見
御撰武家新百人一首古今和歌百人一首詠百将歌(保田光則)新撰百将歌宮城野亭百首和歌仙台百人一首五詠百首百首組題和歌百首組題中秋短冊中秋百首組題狂歌百首狂歌五百韻阿淡百人一首狂歌百人一首阿藩々制終末改革狂歌千首及五十首類藤原保休千首和歌詠五十首(田村宗永)千種三位詠五十首繁花集タグ一
三ツ目001.かきそさへ 化けた小僧が 三ツ目誰 肩もむ樽も さか田屋の銘(弥生庵)002.草木まで 眠れと茶にや 浮かれさし 丑三ツの目は 冴えて見えけり(東風こちの屋)003.真の闇 しよぼしよぼ雨の 夜目遠目 三ツ目小僧ぞ 笠のうちなる(静洲園)004.蹻くつ切つて 転こけ
狂歌酒百首の全首一覧新群書類従の第十巻(狂歌部)に収録されている。春十五首001.けふといへば また珍しき 味酒の みは酔ながら はるは来にけり002.いろ香をも 知る人かたき むめ酒は すきものならで たれかのむべき003.霞たつ なにはわたりの ゐなかざけ たが梅壺に いれて
一ツ家001.壁落ちて 骨露はなる あばら家に 乱す白髪や 霜の穂すゝき(梅屋)002.息つきて 怒れる姥が まなここそ 石の枕に そゝぐ血のいろ(面堂)003.ふしぶしも 床簀ゆかすの竹は 青ざめて 崩るゝ壁の 骨のあばら家(琴通舎)004.胴巻の 腹をあばきて 旅人の 路用の
実方雀001.飛び上がり 物の名をのみ 残しけり 喧嘩好きてふ 実方雀(江戸崎 緑樹園)002.亡き魂は 都へ飛びて 出来秋の 先代米は 食まぬ小すゞめ(桃本)003.実方は 位ある身ぞ 怨念の すゞめも雲井 指して飛び行く(角有)004.一念の 化せしすゞめは 呉竹の 大内をこ
五位鷺001.白丁を着たる仕丁と惑はすは五位の名のある鷺にこそあれ(駿府 望月楼)002.化けながら 己も恐き 姿かな 一足抜きに 歩む五位鷺(春交)003.たゞ人を 見下してのみ 脅すらん 高くとまりて 立てる五位鷺(角有改 坂槻)004.五位鷺に 迷ふて心づきし時 はや夜は明
逆柱001.飛彈山を 伐りきて立てし 逆さかばしら 何の匠たくみの 仕業なるらん(金剛舎玉芳)002.家や鳴りする さかさ柱に 逃げ出いだす 己れが足も 空ざまにして(松の門鶴子)003.思ひきや 逆柱の はしら□ 書きにし哥も 病ありとは(和風亭国吉)004.逆ばしら 立てしは
一寸法師001.背の低き 一寸法師は 汝なが親の 忌日に魚うをを 食ひし報いか(南寿園長年)002.親の身も ともに縮まん 愛し子を 一寸法師と 言はれぬるたび(語吉庵跡頼)003.身の丈の 延びぬをさぞな 託かこつらん 人と肩をも 並べられねば(松梅亭槙住)004.背せい低き
鎌鼬001.足もとへ 絡む鎖の 鎌鼬 砂を飛ばする 風の目つぶし(宝市亭)002.鎌鼬 切られて口は あきのかた 薬によしと 練る古暦(梅屋)003.旋毛つむじ巻く風は横立よこたて十文字すごく手鑓てやりの鎌鼬見つ(善事楼喜久也)004.臑すねに持つ 疵はたしかに 鎌鼬 笹原はしる
土蜘001.頼光らいくわうに 一太刀討ちし 跡見れば 血潮の糸を 引ける土蜘(南寿園長年)002.頼光に 滅ぼされずば 打つ事も 堅き岩根の 穴の土蜘(南向堂)003.狼も 猪ししも喰くらうて 土蜘の その毛のごとき 糸や引くらん(春道)004.土蜘の 出だす糸には 荒くれし 宿
縁切榎001.縁切りに 削り呑ません 古榎 我が身の皮も 剝ぎし男を(語吉窓喜樽)002.結納の 鰹節かつぶしも仇あだ 背合せの 額をさゝぐる 縁切り榎(豊の屋)003.縁切りの 榎を削り 給はれと 三くだり半に 書く頼み状(松梅亭槙住)004.縁を切る 為に煎じた 榎の葉 濃き
貂001.鼬いたちから 切るべし貂は 供さきの 道は切らせぬ 鑓やりの投鞘なげざや(松の屋)002.あひもなく 倒るゝ貂の 火柱は 鋸山や 根とはなしけん(日年庵)003.鼬もや のぼりて貂と なりにけん 深山に幾世 棲めるものとて(藤園高見)004.雲起し 俄にはかに雨の 降る
古椿001.燈火ともしびの 影あやしげに 見えぬるは 油絞りし 古椿かも(駿府 望月楼)002.見て凄く 油のやうな 汗を身に 絞りて咲ける 化椿かな(語吉窓喜樽)003.花首の 落ちては燃ゆる 火と見せつ 脅しやすらん 世を経る椿(吾妻井香好)004.草も木も 眠れる比ころの
蝮蝎001.蝮蝎の 毒気にふれて 荒寺の 蛙股かひるまたさへ 色変はるらん(弥生庵)002.夜を昼と 怪しき洞ほらの 山おろち 眼は月か 日にも等しき(宝鏡庵元照)003.生贄いけにへは とまれ大蛇をろちは 呑む酒に 肴はいなだ 姫小鯛かも(遠江袋井 延麻呂)004.粗金あらがね
金玉001.塗籠ぬりごめの 窓飛び出だし 金玉は 左官の家に 住替すみかへやしつ(花林堂糸道)002.羽根生えて 利足も高く 飛び歩ありく 烏に貸せる 金の玉かも(朝霞亭)003.怖ろしと 見し人をもて 言はしむる 天に口なし 色の金玉(和風亭国吉)004.爪に火を ともして溜め
疱瘡神001.貝嫌ふ 疱瘡神は 水海みづうみの 干潟となるは 猶も忌みけり(宝遊子升友)002.疱瘡に 被る頭巾は 茜さす 陽の目も見せず □おろす神(宝市亭)003.序病じよやみする 幼をさなに着する 衣さへ 八丈嶋は 忌む疱瘡神もがさがみ(銭の屋)004.酒湯さかゆせし 疱瘡
小坂部姫001.檜扇に 隠るゝ月の 作り眉 姫が天守に 名ある蝙蝠かはほり(升目山人)002.物いはぬ 色美しき 小坂部をさかべの 種や伏見の 姫桃の花(宝市亭)003.年ふりし 小坂部姫の 緋の袴 狐色にも 化けて妖しき(銭の屋)004.名物の 姫路の皮も 狐かと 言へば空嘯そ
化地蔵001.行き遇ふて 歯の根も合はず 震ふるひけり あごなし地蔵 化けて出いでけん(藤園高見)002.茶園にて 片眼潰した 色地蔵 夜あるきに何 浮かれたりけん(草加 四角園)003.われ言ふな 俺は言はぬと 石地蔵 其の誓言も 堅き言の葉(陽昇庵雅学)004.袖すりて 化地
山姥001.金時の 誕生日には 山姥も 赤のまんまの 草や食はむらん(東海園)002.己が子は 出世の綱に 引渡し 雲を霞と 帰る足柄(花林堂糸道)003.親知らず 子知らず育つ 山姥は 浮世を薩埵さつた 峠にや住む(花前亭)004.鉄漿かねつけて 笑ゑみぬる様も 尖々とがとがし
尾崎狐001.狐をば ふところにして 尾崎村 腹をふくらす 商人あきうどもあり(月豊堂水穂)002.子を産みて 増える狐の 尾崎村 持参金にも まさる婚礼(東風のや)003.尻馬に のせて送らん 花嫁の 持参に添へし 尾崎狐を(和風亭国吉)004.上つけの 尾崎狐の 玉つむぎ 化
木魂001.分け登る 庚申山の 岨そば道に 立てる木魂は 猿すべりかも(松の門鶴子)002.石となる 楠くすの木精こだまに うつ斧の 当てゝ怪しき 火も出でにけり(銭のや)003.切り兼ぬる 檜の魂たまに 空をうつ 斧の焼刃も 鈍なまる乱れ火(弓のや)004.狐とも 狸とも名の
猪熊001.はにかむも 似気にげなかりけり 猪熊は 鎧の袖を 口にくはへて(藤園高見)002.太刀とりの 鎧の袖に 喰ひつくは 人を脅しの 猪熊頼玄(有恒)003.太刀とりの 鎧につきて 怖ろしや いかる刃金はがねも 鳴らす猪熊(弓のや)004.緋縅ひをどしの 鎧喰ひ切る 猪熊は
犬神001.毛を吹きて 底を求むる 修験者しゆげんじやの 尻尾や出づる 犬神の術(銭の屋)002.巻きし尾の 左前なる 貧しさも 富みてぞ金の 唸る犬神(草加 四角園)003.正法に 不思議は内外 清浄しやうじやうと よめば尾を巻く 犬神の術(於三坊菱持)004.烏羽玉うばたまの
魔風001.金銀を 並べ立てたる 家までも 将棊倒しの 魔風激しも(於三坊菱持)002.節分の 鬼さへ嫌ふ 柊ひひらぎまで 根から吹き折る 魔風怪しも(銭の屋)003.土煙つちけぶり 立てる魔風は 今戸にて 焼きし瓦の 鬼も脅しつ(桃江園)004.霊国の 空ゆく船を くつがへす
家鳴001.雷の 折りたる松を 梁はりにせし ゆゑか此家このやも 轟きにけり(枇杷の屋)002.床の間に 活けし立木も 倒れけり 家鳴りに山の 動く掛物(宝市亭)003.家鳴りする 音なほ凄し 雷の 裂きし杉戸の 太皷羽目かも(東海園)004.物凄き 家鳴りは遠し 柱木に 天狗の
化鳥001.見世物に 出す化鳥ばけどりを 見物が 見あらはさんと 鵜の目鷹の目(萬町庵柏木)002.鵺鳥ぬえどりに 文目あやめも分かず 弓取の 引きぞわづらふ 闇の夜の的まと(楽亭西馬)003.鷹の羽の 征矢そやに命を とられけり 雲井の庭へ 出づる化鳥けてうは(駿府 小柏園)0
飛倉001.蝙蝠かはほりの 扇の化した 飛倉は 臆病風も 起こさせにけり(梅屋)002.飛倉の あるじ顔なる 古内裏 雲井に近く 羽根や乗すらん(筬丸)003.一寸も 先の見えざる 闇の夜に 丈抜群の 飛倉のとぶ(水々亭楳星)004.蝙蝠の 老いて幾世を 経る社 住処となして 齢
神隠001.熱鉄の 給仕させんと 神はしも あまりたぎらぬ 人を連れゆく(藤園高見)002.神隠し 行衛は何処と 白雲を つかむやうにて 空くうにこそあれ(一草庵多が丸)003.天が下 みたまものをや 隠せるは 不正直なる 神とこそ知れ(江戸崎 有文)004.鼻高の 仕業なるらん
三井寺鼠001.法のりの文 荒らす鼠は 毬栗いがぐりの 僧にもおちぬ 三井の中堂(梅屋)002.猫さへも 恐れなしけり 比叡の山 戌の刻より 出る荒れ鼠(語吉窓喜樽)003.喰ひ裂きし あとを繕ふ 山法師 経を閉づるも 鼠当のきり(蟻賀亭皺汗ありがてい しわあせ)004.頼豪の
光物001.白玉か何ぞと問へば答へなく露には影のさすひかり物(藤紫園友成)002.山鳥の 尾上を出づる 光り物 汝なれが鏡の 照れる影かも(槙の屋)003.おそろしな 炬松たいまつ忍ぶ 丑の時 倶利伽羅くりから越えを 飛ぶ光物(檜園)004.門跡の 御前かゞやく 光り物 西と東へ
一目001.北沢の ひとつ灸かも 一ツ目は 光る青木の 葉隠れに見ゆ(宝市亭)002.本所の 一ツ目小僧 からくりを 覗くにはよき 両国へ出る(神風屋青則)003.世の中の 人誑たぶらかす わらいへの 利口は鼻へ 抜けし一ツ目(水搬園)004.給仕する 小僧もすこし 振り返る 顔
楠霊001.湊川 その流れ矢も 物かはと 石となりたる 楠の霊(上総大堀 花月楼)002.怨念の 枝葉しげりて 楠の 覆ひかゝれる 闇の大森(桃太楼団子)003.湊川 底の小砂利は 楠の 枝葉の化して 石となりけん(桃江園)004.木魚にも 彫りて迷ひを 弔はん 魂の蛻もぬけし
古戦場001.いにしへを 偲ぶや閼伽あかの 桶狭間 手向けの水は 絶えぬ奥津城おくつき(江戸崎 緑樹園)002.塗る壁の 小手指原こてさしはらに 人ごころ 荒すさみ荒まず 陣とりし跡(幸有門)003.筆の跡 嗚呼ああ忠臣を 湊川 流れての世も 朽ちぬ石文いしぶみ(上総大堀 花月楼