Silky Sullivan(競走馬)

ページ名:Silky Sullivan_競走馬_

登録日:2011/06/22(水) 00:18:58
更新日:2023/08/18 Fri 11:50:34NEW!
所要時間:約 6 分で読めます



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競走馬 競馬 サラブレッド 故馬 シルキーサリヴァン 追い込み カリフォルニアの彗星 silky sullivan




"And now comes here

Silky Sullivan!! "






史上最強の追い込み馬』と呼ばれた競走馬がいる。



紹介しよう
赤い弾丸・シルキーサリヴァン



その特異な――いや、


その超絶に珍妙なレーススタイルは、見た者全ての心を奪ってしまう。



……なに?
ディープインパクト?
ダンシングブレーヴ?
まぁ、言いたいことは判るが、一先ずこの項目を見ていただきたい。
その後で、この馬のレースの様子が現在もYouTubeに残ってるから見に行くといい。
たぶん、お手上げするしかないだろうから。


用語について


さて、申し訳ないが、先に幾つかの競馬用語を簡単に説明させていただく。


  • 「追い込み馬」……競走馬の中でも特に道中を最後方で走る馬をいう。その逆転劇は古今東西の競馬ファンを魅了する。ただし、圧倒的な能力を持った馬でもなければ、安定して勝つのは難しい。

  • 「馬身」……競馬において、ゴール時の着差や道中の間隔の開き具合を表現するのに用いられる。1馬身=約2.4m*1

  • 「ハロン」……頭文字はF。主に競馬で用いられる距離の単位。1F=220y=201.168m*2

プロフィール


ここで、簡単に本馬のプロフィールを紹介する。


Silky Sullivan
シルキーサリヴァン


通算成績:27戦12勝(2着1回、3着5回)


主な勝ち鞍:Santa anita Derby
      Golden Gate Futurity


1955年2月28日にアメリカのカリフォルニア州に生まれ、当地で育った米国産の競走馬である。


半世紀近く経った今でも、カリフォルニア州の人々に根強い人気を持つ。
高知にとっての坂本龍馬みたいな感じだろうか?


二つ名は、その赤みを帯びた栗毛から《赤い弾丸》、など多数。
早い話、リアル赤兎馬。


来歴


1957年、本馬が2歳の時にデビュー戦を迎える。
途中まで馬群から20馬身もの差をつけられていたが、そこから猛烈な追い込みを見せ、結果、見事に初戦を勝利で飾った。


さて、
残念ながら、この馬の出走したレースを一つずつ拾うことはできない。
通算成績を見て思ったかもしれないが、シルキーサリヴァンは、決して常勝するような馬ではなかったのだ。
では、何故、シルキーサリヴァンが『史上最強の追い込み馬』とされているのか……
その理由を説きたい。


先に書いたデビュー戦。
何ゆえ、一時20馬身もの差がついたのだろうか?
スタートを出遅れた?
騎手のミス?
……どれも違う。



レース後、シルキーサリヴァンに騎乗したジョニー・タニグチ騎手は、こう語った。


「スタートしてゲートを出ても、馬はダラダラしていて全く走ろうとしない。最初は寝ぼけてるのかと疑ったよ。
押しても引いてもダメで、3ハロン棒が過ぎた頃には前の馬とは20馬身ぐらいあったから、もうダメだと思ったんだ。
そしたら突然、馬の尻にミツバチが刺さったように物凄い勢いで走り出したんだ。馬から落ちそうになったから、ビックリして思わず、『お前、どうしたんだ!?』と叫んだよ。
……まさか、先頭の馬に届くなんて。あんな馬、初めてだよ。空を飛んでるようだった」



…………判っただろうか?
筆者には理解できない。


このデビュー戦……ダートの1100mなのだ。


競走馬にとっての1100mは、人間にしてみれば200mもない短距離走である。
そんなレースで、残り約600mまでチンタラと走り、かと思うと全員抜かして優勝?
……笑えない冗談だ。


前を走るブービーまでが約50mだから、先頭を走る馬までは少なく見積もっても60m……


ん?
ちょっと待て……ということは、このシルキーサリヴァン……
他の馬の110%の速さで走ったのか!?



と、まぁ、デビュー戦でトンデモナイことをしでかしてしまったのだが……
…………冷静に聞いて欲しい。


このシルキーサリヴァン、これがデフォルトである。



なんと彼は、走った全てのレースにおいて、序盤を自分勝手にゆっくりと、後半は騎手を振り落とさんが勢いで走るという、そんなアリエナイ競走をしてみせたのだ。
こんな方法で12勝も獲得できたことには、もう唖然とするしかない。
数々の名馬に騎乗してきた名騎手ウィリー・シューメーカーは、シルキーサリヴァンに騎乗した後、次のように語った。


「彼に乗るときは、必ず二つのことに注意しないといけない。まず、どんなことがあっても最初の800mは馬の好きなようにさせること。間違っても、馬を追うようなマネはしてはいけない。たとえ、馬が歩いたとしてもね。それが出来たら後は簡単だ。馬から落ちないように必死にしがみついておくだけだから」


また、シルキーサリヴァンが全力を出す瞬間のことを、
「重心がググッと地面まで下がるように感じた」と述べている。



圧倒的後方から、砂煙を巻き上げて猛然と突進してくるシルキーサリヴァン。
誰かがその様子を、こう表現した。
まるで、『次のレースから追い込んでくる』と。
まさにシルキーサリヴァンは、別次元の走りをしていたのだ。



さて、ここに来て思うのは、
――普通に走ったらもっと凄いのではないか?
ということ。


解明されることは最早ないが、このレーススタイルを行った理由となりうる、二つの事実があったらしい。


まず、2歳馬の時に発症した風邪が原因で、本馬が呼吸器系に障害を患っていたこと。
シルキーサリヴァンは、自身の息が長く続かないことを知っていたのかもしれない。


第二に、生まれつき脚が曲がってたらしく、長時間全力で走るのが難しかったのでは、というもの。




もしも、この馬が常に全力を出せればと思うと……………いや、考えるのも恐ろしい。


引退後


はてさて、競走馬生活を終えたシルキーサリヴァンは種牡馬となったが、その成績は良くなかった。
しかし、最後の馬主(海外では馬主がコロコロ変わることも珍しくない)のシェル氏は、この馬を我が子のように愛し、種牡馬を引退した後も(ここで食肉にされてしまう名馬も数多いるなかで)転売しようとせず、幸せな余生が送れるように尽力した。
やがて、シルキーサリヴァンは22歳でその生涯を終えている。



余談であるが、「シルキーサリヴァン」という単語が、「一か八か」「大逆転」という意味で、学会の論文で用いられているそうな。


願わくば、彼にとってその人生(いや、馬生か?)が満足のいくものでありましたように。




追記・修正は、例の映像を見てからお願いします(マジで)。


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  • ('仄')パイパイ -- 名無しさん (2013-06-04 17:57:23)
  • 世に競走馬は数あれど、「自分の必勝パターンを理解している競走馬」なんてこの馬以外いないだろ。「馬は賢い生き物」ってのはガチ。


    -- 名無しさん (2013-09-02 20:13:07)
  • 愛のある項目 -- 名無しさん (2014-03-26 17:34:14)
  • 記録にも残ってるけど、それ以上に記憶に残る名馬 初めてサンタアニタダービーの動画を見た時の衝撃は今でも覚えている -- 名無しさん (2014-10-17 15:47:12)
  • 馬主のシェル氏曰く「本当の紳士」。老若男女問わず優しく接する穏やかな性格で、年一回の夏祭りにゲスト出演する時も馬の方が人との触れ合いを楽しみにしていた、だそうな -- 名無しさん (2022-05-16 03:20:20)

#comment

*1 ちなみに、「10馬身」より大きい着差を「大差」と呼ぶのは日本だけ
*2 ただし、(面倒だったのか)日本では200mとして用いられる

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コメント

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