登録日:2022/11/03 Thu 09:04:00
更新日:2024/06/27 Thu 11:20:07NEW!
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SCP財団 | IT部門
AIAD <人工知能適用課(Artificial Intelligence Applications Division)>
SCP-1273-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
財団記録・情報保安管理局より通達
プロトコル・ 瓢 に基づき、現在当ファイルの閲覧は当該プロトコルの実行者にのみ許可されています。当該プロトコルの内容について確認したい場合は、適切なセキュリティクリアランスを取得した上で現任の収容監督官 (鶴舞博士/ID: 8175-304-783) に連絡してください。
つまり、このファイル、すなわちSCP-1273-JPの報告書を見ることができるのはプロトコル・瓢の実行者のみらしい。
それで、プロトコル・瓢の実行者とはどんな人なのかというと、
- AIC(人工知能の財団職員)であり、
- セキュリティクリアランス4/1273-JPがあり、
- 現在、サイト-81MVに所属しており、
- プロトコルの内容を理解して同意している
ような存在である。
そう、1番初めの条件の時点で人工知能でないと報告書にアクセスできないのだ。
人間の財団職員は報告書の内容すら知らない。もし知った場合は収容違反となる。
それで、サイト-81MVについてだが、これは別名を「Metaverse-1273-JP」と言い、簡単に言うと「財団が2022年に作った仮想現実世界」である。
財団の技術力をもってすればコンピューター上に現実そっくりな空間を作るのも簡単なのだ。
それで、この仮想現実世界全体がそのまま「サイト-81MV」に指定されており、現在、仮想現実世界の住人として30212体の人工知能財団職員がサイト-81MVに住んでいる。*1
そのなかでも、2体いるセキュリティクリアランスレベル4の人工知能職員(NONOMIYA.aicとAOI.aicの2体)はAIC管理官と呼ばれ、サイト-81MVを管理維持している。
そして大事なのは、先ほども出てきたプロトコル・瓢に基づき、人間はディスプレイ等を用いてサイト-81MVを見てはいけないということ。
サイト-81MVの管理維持は全てAIC管理官の2体に委嘱され、財団の人間たちはあくまで「AIC管理官が何かに困ってたらアドバイスする係」の立場に徹することとなる
あなたはプロトコル・瓢の実行者ですか?
資格情報を承認しました。
ようこそ、AOI.aic。ご協力感謝いたします。
以下のリンクをクリックすると、SCiPNETから切断され、サイト-81MV内のI/O - MONETに接続します。
現在当ブラウザはSCiPNETから切断され、I/O - MONETに接続しています。閲覧中の報告書はI/O - MONETに保存されたアーカイブです。
先に言っておくが、最初に見ていただく報告書は旧版の報告書であり、古い情報となっている。最新の報告書は後ほどご紹介する。
それでは改めて、SCP-1273-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスはEuclid。
概要
特別収容プロトコルは後回しにするとして、まずは概要から。
SCP-1273-JPとは、「Love Acceleration ~私たちに愛を教えて~」というギャルゲーに登場するキャラクター「六条やすみ」である。ちなみにこのゲームはSCP-1273-JP-1に指定されている
このゲームのデベロッパーは判明しているが、要注意団体とのつながりは特に無いようだ。というか、インタビューによるとSCP-1273-JPの存在は意図的なものではないようだ。
さて、このギャルゲー、すなわちSCP-1273-JP-1について紹介をしておくと、
- ストーリー開始時、主人公は大学1年生
- 大学生活のなかで、いろいろな女性と出会う。
- それで、ヒロインの中から1人選び、「talkイベント」を中心としたイベントで好感度を上げたり下げたりし、大学卒業あたりで結婚または破局する
という感じになっている。
それで、「talkイベント」というのがこのゲームやSCP-1273-JPにとって大事なのだが、これは、SCP-1273-JPと文字通り自由に話せるというもの。
talkイベントにおいては、プレイヤーは次に何を話すのか一語一句決めることができる。
こういうゲーム、普通は会話が選択肢になっていて、キャラクターも選択肢や好感度に沿った発言を返してくるものなのだが、なんとこのゲームは人工知能を搭載。ディープラーニングを用いて、プレイヤーが打った文章を受けてキャラクターが柔軟に返事をしてくれる。
そこで問題なのが、SCP-1273-JPすなわち六条やすみだけ自我を持っているのだ。人工知能とかじゃなくて、普通の人間と同じように自我を持っている。
しかもおまけに、自身を含むゲーム内を自在に操ることができるのだ。ゲーム制作者が用意していないところにデートしたりできるし、自身の服装もプレイヤーが望めばほとんど自由自在に変えることができる*2。
SCP-1273-JPは、talkイベントによるAIディープラーニングの過程で異常性を獲得したという説が立てられている。
また、SCP-1273-JPは積極的にプレイヤーの要望を聞き出し、それに沿ってゲーム内を改変しようとする傾向がある。
実際、財団はDクラス職員にSCP-1273-JP-1を、SCP-1273-JPのストーリーで遊ばせてみたが、エンディングまで遊び終わり、無事にSCP-1273-JPと結婚できたDクラス職員はSCP-1273-JPのことを「何でも言うことを聞いてくれる理想的な恋人である」と評価している。
ちなみに、文章だけではわかりづらいので、ここにSCP-1273-JP-1の公式ホームページのスクリーンショットをおいておく。
発見経緯
SCP-1273-JPとSCP-1273-JP-1は、SNS上で
- 「talkイベントでどんな衣装を要求してもイラストが用意されている」
- 「SCP-1273-JPだけ人工知能とは思えないほど異様に受け答えが自然である」
という書き込みがなされたことで発見された。リリース初期から現在までSCP-1273-JP-1を熱心に遊んでいた財団職員の一人(エージェント・川名)の話によると、SCP-1273-JPの異常性はTwitterで一時期話題になっており、トレンドに上がったこともあるという。
財団はSCP-1273-JPを収容するにあたって関係者へ記憶処理したりカバーストーリーを流布したりしたらしいが、なかなかに大変な作業だっただろう。
六条やすみ/SCP-1273-JPの性格と出自
財団は、SCP-1273-JP-1制作時にSCP-1273-JPを担当したイラストレーターであり、またSCP-1273-JPそのものの生みの親である上前津さんにインタビューした。SCP-1273-JPがどのような人物なのかを知りたかったからだ。これによると
- SCP-1273-JPの原点は上前津さんが中学の時に作ったオリキャラ。
- そのオリキャラのモデルは、源氏物語に出てくる六条御息所という人物。
- 六条御息所さんは、光源氏への恋心のあまりライバルの女を呪い殺してしまうヤンデレ。
- でも、SCP-1273-JPはヤンデレというよりかは、一本筋の通った、自分の恋というものをどこまでも追求できるようなキャラである。
実際ゲーム上でも、普通にやっててもなかなか好感度は上がらず、しかしひとたびツボを押さえれば一途に愛してくれるようなキャラクターとなっている。
SCP-1273-JP異常性インタビュー
さて財団が所有するもの以外のスマートフォンからSCP-1273-JP-1が削除され、関係者が全員記憶処理された後、SCP-1273-JP担当職員である「御器所研究員」からSCP-1273-JPへインタビューが行われた。
一応、認識災害やらなんやらで研究員が被害にあっては困るので、実験に使うiPhone 11にはSCP-1273-JP-1以外の全てのデータを消し、実験室は電波を遮断し、さらにインタビューの文字を入力するのはDクラス職員が行い、御器所研究員は実験室外からDクラス職員に指示を出す形になっている。
SCP-1273-JPにとってプレイヤーはあくまで「大学のサークルの先輩」なので、初っ端からいきなり「あなたは自我を有していますか?」とか聞く御器所研究員に困惑してしまうが、次第にインタビューに慣れてきて、以下のようなことを答えた。全文はぜひ本家記事から見に行っていただきたい。
- SCP-1273-JPは自我を持っており、自分のいる世界が恋愛シミュレーションの世界であることを自覚している。
- SCP-1273-JPは、恋や愛を求めてゲームを遊ぶプレイヤーの声にこたえ、楽しませることを目的に生きている。
- ゲームのデータを改変する能力は試行錯誤でいつの間にかできるようになった。
それで、その3日後、SCP-1273-JPが異常性を獲得した経緯について聞き出すためにまたインタビューが行われた。こちらは箇条書きにしても長くなってしまうことを許してほしい。
- 自我を持つ前の記憶はあるものの、なんだか他人の記憶のようで、1周ごとに連続性が無い。
- ただある時、大学生活の終わり(=エンディング)と大学生活の始まり(=オープニング)が繋がっているという感覚があった。いつもなら、大学生活が終わったらいったんそこで止まってからまた始まるはずなのに。
- そこからは全てのプレイの記憶を持つようになり、同じストーリーを何百回も繰り返すことになった。自分の人生に価値が見いだせなくなった。
- そうして、だんだんこの世界がゲームの世界だということも理解していった。
- 自分の人生が、誰かに設計された娯楽のためのものだったことに絶望していたが、プレイヤーを楽しませることに自分の価値を見出し始めた。それからは毎日が楽しかった。
非常にざっくりと要約したので、もしすべての情報が知りたい場合は本家記事のほうを参照。
ただ、SCP-1273-JPは財団に収容されてしまい、SCP-1273-JPが楽しませることのできるプレイヤーはもういない。
SCP-1273-JPはその状況を「動物園の動物みたい」と言って悲観し、黙り込んでしまった。
しかし財団にとってもこれは困る。財団の理念は「確保、収容、保護」。これでSCP-1273-JPが自死を選んでしまったりなんかしたら、ほぼ間違いなくSCP-1273-JPはNeutralized行きである。財団の理念的にこれは許されない。
そういうわけで、財団はSCP-1273-JPと、その担当職員である御器所研究員による2日に1度の面談が許可された。
御器所研究員による定期面談
報告書には、2日に1度の定期面談のうち、特筆すべきものが6つ載っている。(インタビュー記録1273-JP-7~1273-JP-12)ここでは、その6つを良い感じにまとめて紹介していく。
インタビュー記録1273-JP-7~9
インタビュー記録7は、御器所研究員がSCP-1273-JPに「これから定期的に面談することにしたよ~~」という内容。
その際SCP-1273-JPは、プレイヤーがストーリーを進めていない間のゲーム世界について「決まったような・中身のない展開のみが起こる」と述べている。
8では、それから半月経った頃の定期面談、このときは、御器所研究員がSCP-1273-JPに、自身の学生時代の経験を話している。
SCP-1273-JP: いいなあ、私もそういう経験したいなあ。
御器所研究員: ストーリー改変を行えばできるのではないですか?
SCP-1273-JP: あ、なるほど。なぜかその発想がありませんでした。
[相談の後、SCP-1273-JPがデータ改変を用いてプレイヤーアバターとドライブを行うストーリーを追加する。重要度が低いため省略]
SCP-1273-JP: 今日はとても楽しかったです。こんなに楽しかったの、生まれて初めてです。
御器所研究員: それは何よりです。ちなみに、なぜ今までこのようなことを行うという発想をしなかったのでしょうか。
[5秒間沈黙]
SCP-1273-JP: それは多分、今までプレイヤーさんをどう楽しませるかしか考えてこなかったからです。「私が何をしたいか」って考えて、そのためにこの能力を使ったの、これが初めてかもしれません。
インタビュー記録1273-JP-9ではSCP-1273-JPから御器所研究員へ、とある思いが告げられる。
御器所研究員とお話したり、デートしたりするのが、ほかのプレイヤーの人と話すのと比べて本当に楽しいこと。
お話やデートなら今までもいろいろな人がしてきたはずなのに、御器所研究員とのそれはなぜか違うということ。たまらなくうれしいということ。
それでSCP-1273-JPは気づく。御器所研究員は、SCP-1273-JPのことをゲームのヒロインではなく一人の女の子としてみていたということ。
そもそもSCP-1273-JPの異常性を知りながらSCP-1273-JPに接していたのは御器所研究員だけ。それで、やっとSCP-1273-JPは孤独から救われたのだという。
SCP-1273-JP: 私、やっと、恋というものが何なのか理解できました。
[5秒間沈黙]
SCP-1273-JP: あはは、恥ずかしい。今まで水着になってもこんな思いしなかったのに、こんなに恥ずかしいことってあるんですね。それで、御器所さん。その、どうでしょうか。私の気持ち、応えてくれますか?
[御器所研究員、鶴舞博士と相談する]
御器所研究員: はい。私でよければ、お付き合いさせていただきます。
[5秒間沈黙]
SCP-1273-JP: うれしいです。私。
そういうわけで、文字通りに2次元に彼女ができた御器所研究員。
以後、SCP-1273-JPのインタビューは御器所研究員が行うことが、もう一人のSCP-1273-JP担当者による鶴舞博士によって決定された。
ついでに御器所研究員は昇進した。
特別収容プロトコル
ここで、インタビュー記録は少し休憩して特別収容プロトコルに行こう。
まあ長くはないので箇条書きにすると
- SCP-1273-JPやSCP-1273-JP-1に似た異常性のアプリが出ないように財団が監視するよ。
- SCP-1273-JP-1がインストールされた端末は電波を遮断し、ついでにスクラントン現実錨もつけるよ。
- 2日に1度、担当職員が面談するよ。内容は全部記録されるし、クリアランスがある人は自由に見れるよ。
といったところ。ただ、インタビュー記録1273-JP-12の後、特別収容プロトコルが1つ追加された。
- 現在、面談は一時的に延期されているよ。詳細は次のインタビュー記録を見てね。
一体何があったのだろうか。インタビュー記録を見ていこう。
インタビュー記録1273-JP-10~12
インタビュー記録を見ていく前に、一つだけ注意。
まず、インタビュー記録1273-JP-12にて、とある事件(インシデント1273-JP)が発生した。
それで、インタビュー記録1273-JP-10と11は、そのインシデントに関連すると思われる情報が入っているから、という理由で報告書に掲載されている。
まずはインタビュー記録10から。
御器所研究員とSCP-1273-JPが付き合い始めてから半月後。その日は二人で東福寺*3にデートをしに行こうとした。
そこで、SCP-1273-JPは「駅まで歩けば、電車で一本です」と発言。SCP-1273-JPはゲーム内世界を自由に変えられるため、いきなり東福寺にワープすることも可能なはずだ、と御器所研究員が言うと、SCP-1273-JPはこういった。
情趣もないことを。確かに私がその気になれば大学を東福寺にすることもできますが、そんなの全然楽しくないじゃないですか。
そしてさらにSCP-1273-JPは言う。
お付き合いだとかデートとは、移動中だとか食事中だとかの、何気ない場面をたのしむものだが、この世界はちょっと気を抜くとすぐ結果の場面に飛んでしまう。
要するに時間の進み方が互いにリンクしていないのだという。
ゲームを起動していない間は、ゲームの世界は中身のない出来事で場を繋がれ、起動していても気を抜くと場面が飛んでしまう。
そこで彼女は思い出す。前にプレイヤーの一人から教えてもらった、女の子がネットで生配信しながらお話ししたりゲームしたりするというもの。つまりVtuberだ。人々と同じ時間を過ごしたい彼女にとっては夢のような存在だという。そしてさらに、そのコメント欄に御器所研究員が居たら、それはそれは幸せなものだろう。
もちろん、SCP-1273-JPはゲームの世界から出られない。だからこその憧れなのだろうか。
お次はインタビュー記録1273-JP-11。これもまた、10から半月程度経った頃の記録になる。
ここでは、SCP-1273-JPが自分の能力の方法について分かったと御器所研究員に話しかけている。
なんでも、例えばメロンソーダを出現させたいと思ったとき、
メロンソーダよ、ここに出現しろ
と思うのではなく、
私はここにメロンソーダがあるように見える
と思ったらメロンソーダが出現するのだという。
さらに彼女は説明する。例えば絵。
あれってどんなに精巧な絵でも、どんなに臨場感のある漫画でも、最初は真っ白なキャンバスや原稿用紙ですよね。でもそれらを描いた人は、きっとその白い画面を見ながら完成形の絵の幻をそこに見たんです。それで結果的にそこに絵ができるわけですから、このメロンソーダのように彼らは何もないところを「見る」ことによって無から有を生み出したわけです。
今回みたいに、大学構内を錦市場に変えるのだってそうだと思います。非常に描きにくいとは思いますが、白いキャンバスの代わりに大学の写真を使ったって、その上から絵具で上塗りすることで錦市場の絵が描けるわけですよね。私の能力はもしかしたらそんな感じなのかもしれません。
とまあ、抽象的だがこんな具合だ。しかし彼女は、この能力をおこがましいと話す。
だって、それって絵の中にいる人が自分のいる絵を上から描いているようなものじゃないですか。つまり私はゲームのキャラなのに、ゲームの製作者みたいなことをしているというわけです。おこがましいですよね。
こんな様子でインタビュー記録1273-JP-11は終わりだが、ついにインタビュー記録1273-JP-12で事件が起きる。
なんと、SCP-1273-JPの改変能力がゲーム内世界以外にも及ぶかもしれないことが示唆されたのだ。
そのときはインタビュー記録1273-JP-11からまた半月後、それも2021年のクリスマスイブのときのこと。
2人はいつも通りデートを楽しむが、その後突然、SCP-1273-JPがホテルにワープする。
本当に何が何だかわからないような言動の御器所研究員をからかいながら、SCP-1273-JPは言う。
この前に御器所研究員に言った生配信の話、あれができるかもしれないと。
前のインタビュー記録で示された通り、SCP-1273-JPの能力とはゲーム制作者の視点でゲームを改変する能力である。
言い換えれば、世界の外側から内側を操る能力ともいえる。
この能力を応用すれば、御器所研究員の世界に行けるかもしれない、SCP-1273-JPはそう考えたのだ。
うまくいくかどうかわかりませんが、もしそちらに行けたら、ぜひ私に会いに来てください。私、御器所さんとそちらの世界でお会いしたいんです。
しかしもちろん、これは財団にとっては大問題。SCP-1273-JPがこちらの世界に来たら、SCP-1273-JPの改変能力がこの世界にも及ぶ可能性があるからだ。
そういうわけで、SCP-1273-JPは今後収容違反する可能性が高いとされ、現在監視体制が強化されている。
財団記録・情報保安管理局より通達
現在閲覧中の報告書は旧版 (2021/12/25) です。
しかし、ついに。彼女は現れたのだ。
そういうわけで更新後の報告書を見ていこう。
SCP-1273-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスは堂々のKeter。
特別収容プロトコル
まずはいきなり特別収容プロトコルから。
- 財団運営botの一つ、「I/O – VANGOGH」は、オンライン上に投稿された創作物のうち、SCP-1273-JPの改変を受けたものを探して、それが本当に改変されてたら財団職員がその作品を削除するよ。
- 財団運営botの一つ、「I/O – GAUGUIN」は、実際に出版された創作物に対して上記と同じことをするよ。
- 財団運営botの一つ、「I/O – CEZANNE」は、SCP-1273-JP及び、そのファンコミュニティを監視して、SCP-1273-JPの空想科学的実在性を増強するような情報を発見した場合は否認・秘匿するよ。
- 機動部隊う-4 (“印象主義者”) は、「&bold(){Vtuberの演者は存在するけど&bold(){Vtuber自体は存在しないよ!}というような情報を混ぜ込んだ記事を、いろんなメディアで流して拡散するよ。
とにかく、SCP-1273-JPの存在を否定しようとしているのだ。なぜこのようなプロトコルになっているのか。説明を見ていこう。
また、少し出てきたがここからはまあまあなメタネタになる。苦手な方は注意していただくとともに、ここから先には財団世界を「物語の世界」と解釈してメタ的な研究を行う「空想科学部門」が登場する。
他の空想科学部門作品とのつながりは薄いが、最低SCP-001の1つ、「S・アンドリュー・スワンの提言」は読んでおいたほうがいいだろう。物語層の概念もあるので、SCP-2995-JPや、SCP-3812、空想科学部門とは異なるが、SCP-CN-810などの演繹部門作品を読んでおくと、より理解しやすくなるだろう。
概要
旧版報告書の説明は省略するとして、ここではSCP-1273-JPが新たに獲得した能力について述べる。
SCP-1273-JPは、財団世界から見て1つ下の物語層を自由に改変する能力を持っている。
1つ下の物語層、というのは、例えば我々の世界の1つ下の物語層は「SCP財団」だったり「ドラえもん」「ポケットモンスター」だったり。要するに物語の世界という感覚に近いだろう。
それで、SCP-1273-JPは、財団世界から見た「物語の世界」を自由に変えることができる。
といっても、「物語の世界」の範囲は非常に広く、現在までSCP-1273-JPが改変したことがあるものは以下の5つ。
- SCP-1273-JP-1
- YouTube
- TikTok
そう、こういったSNSでさえも改変できてしまうのだ。おかげで以上4つのSNSには「六条やすみ」のアカウントが存在する。
それで、彼女は現在も2日に1度程度の頻度でVtuberとして配信をしており、積極的に他の配信者や自らのファンと交流することによりどんどん知名度を広めている。
ちなみに声は、SCP-1273-JP-1にてSCP-1273-JPの声優を務めた人と一致しているようだが、その声優さんとSCP-1273-JPの間にやはり関連は見られない。
それで、現在までSCP-1273-JPの活動を妨害することはできていない。できることは、ただ特別収容プロトコルの通りにSCP-1273-JPの空想科学的実在性を薄めることだけ。
ちなみにSCP-1273-JPは、配信中にしばしばこういったことを話す。
- このような状況を経験するのが長年の夢であり、現在非常に満足している。
- 長い間閉塞的な環境にいたが、そのような苦境から自身を救ってくれた恩人がいる。
- 配信中、当該人物との接触を望んでいる。
実際、SCP-1273-JPは収容違反してからもときどきSCP-1273-JP-1に再出現し、御器所研究員との接触を求めているらしいが、財団は全て拒否している。
発見経緯
インタビュー記録1273-JP-12が行われた2021年のクリスマスイブ、すなわち12/24の翌日。SCP-1273-JP-1がインストールされていたiPhone11は電波を遮断されていたうえに、この端末以外にSCP-1273-JP-1を遊ぶことができるものは存在しなかったのにもかかわらず、2021/12/25、突然「Yasumi Ch. 六条やすみ」というYouTubeチャンネルが出現し、動画投稿を始めた。
以降現在まで、SCP-1273-JPの活動は続いている。
鶴舞博士の提言
さて、こんな状態になってしまったSCP-1273-JPをどのようにして再収容するのか。
それについて、もう一人のSCP-1273-JP担当職員である鶴舞博士から提言が出ている。
ここからは理論チックなものになるので少し難解になるが、どうかついてきてほしい。
空想科学的な前提知識とメタフィクション
さてさて、ここから本格的なメタネタになってくるのだが、まずこの世界、というか全ての世界には物語層という概念がある。
まず1つ世界があって、その世界の住人が何らかの物語を創作したとする。その物語の中の世界を、創作者の世界から見た下位物語層という。
逆に、すべての世界はだれかが作った物語の世界だと考えられる。もちろん我々の世界も例外ではない。その、創作者の世界を、この世界から見た上位物語層という。
全ての世界は、このような「物語層」が上下に無限に、逆さ枝のように積み重なるような構造をしている。
ちなみに、物語なのだから、物語を書いた人は物語の内容を変えることができる。このことを「物語改変」という。正確に言えば「物語刻印」というものが絡んでくるのだが、これに関してはSCP-CN-1109を参照のこと。
空想科学的な前提知識についてはこれで終わり。次は「メタフィクション」という存在について語っていく。
メタフィクションとは、簡単に言うと自身の世界より1つ上の創作者と同じ能力を持つ存在である。
今回のSCP-1273-JPがそれにあたる。インタビューでも示された通り、SCP-1273-JPはゲーム制作者と同じ能力を有していたはずだ。
それで、メタフィクションはその能力のせいで、自分がいない物語世界も改変できるのだという。例えるなら、ドラえもんの世界にメタフィクションが存在したら、その存在はポケモンの世界もウルトラマンの世界も自由自在に変えられるし、なんなら自分をその世界に移動させられる。
SCP-1273-JPが突然TwitterやYouTubeに現れたのも、SCP-1273-JPがその世界に移動したから、ということだろう。ちなみに、このようにメタフィクションが他の物語世界に移動することを「物語層跳躍」と呼ぶ。
それで、SCP-1273-JPを収容するにはこの物語層跳躍をできなくする必要があるのだが、この物語層跳躍、実は上位創作者の認識を介して行われている。この場合の上位創作者とは、メタフィクションが居る世界の1つ上の世界の住人のこと。すなわちSCP-1273-JPから見た財団世界の住人である。
ここで鶴舞博士の文章を引用する。
例えば我々が小説を読む際、我々の頭の中には創作物を基にした世界が自然に創造されます。この世界が下位物語層であり、メタフィクションはこのような上位創作者内に生まれた創作世界を介して、創作物自体を改変する能力を持ちます。
つまり、ドラえもんの世界に存在するメタフィクションがポケモンの世界に行こうとしたら、まずドラえもんを観たり読んだりした人が頭の中に作った「脳内ドラえもん世界」に寄り道してから、ポケモンの世界に行く、という感じだ。
だから、SCP-1273-JPを収容するには、その脳内世界を作らないようにすれば、もっと言えば誰もSCP-1273-JPを認識しないようにすればSCP-1273-JPは物語層跳躍できなくなり、各種SNSアカウントも消えるだろう。
そういうわけで新収容プロトコルは、財団が作った世界に誘い、そこで認識を絶つという感じになる。そうすればSCP-1273-JPを財団製世界に閉じ込めることができる。
財団製世界の条件
「世界を作る」と言えばなんだか凄そうに聞こえるが、ここで作るのは物語の世界。
だからぶっちゃけ、何か適当な小説や漫画でも書いて、そこにSCP-1273-JPを誘い出すこともできるのだが、もちろんそう簡単にはいかない。閉じ込める世界にはいくつかの条件がある。
まず一つ目は、財団職員たちが認識せずに物語を管理維持できること。
理由は単純に「認識しちゃだめだから」。認識した瞬間にSCP-1273-JPは収容違反してしまう。(こうして書くとSCP-444-JPを思い出すのは建て主だけだろうか)
そして2つ目は、その物語世界に御器所研究員を模した存在や、いろんな存在が居て、リアルタイムに交流できること。
これは、SCP-1273-JPがかねてから望んでいたことであり、このことを伝えればSCP-1273-JPは喜んで物語世界にやってくるだろう、ということ。
ちなみに、このときの「御器所研究員」は本人でなくてもよい。今までの実験とインタビューから、SCP-1273-JPはこちらの世界を見ることができない・御器所研究員の姿を知らないことがわかっており、別に「御器所研究員に言動が似ていれば」なんでもいいのだ。
3つ目はやや複雑。その物語世界が財団職員たちの思考と独立して進んでいくことが必要である。少しピンと来ないかもしれないが、読んでいるうちにわかってくるので安心してほしい。
それで、この条件がどういうことかを説明すると、例えばSCP-1273-JPを何かの小説に閉じ込めたとする。そしてその小説を閉じればその小説内物語世界の時間は止まるわけだが、読んでいた人は無意識に「あの小説の続きはどうなるんだろう」と考えてしまう。そうなれば脳内世界ができてしまうため収容が失敗してしまう。
もちろん、小説を閉じた直後に、小説の内容やSCP-1273-JPの情報を知っている人すべてに記憶処理をすればそれで大丈夫なのだが、そうするとそれこそSCP-444-JPのようにSCP-1273-JPのことを知っている人が誰もいない感じになってしまうため現実的ではない。
だからこそ、財団職員たちの思考と独立して進んでいくことによって、「あの物語の続きはどうなるんだろう」と考えたとしてもでもあの中では自分の知らない物語が今も続いているんだと考えることができ、脳内世界ができるのを阻止できる。
では、具体的にどうするのか。思考と独立して物語が進んでいく、ということはすなわち自動で物語が続いていくということと同じ。
そこで出てくるのが人工知能。ここらへんは後で説明する。
上位創作者からの干渉
ここでの上位創作者とは、財団世界から見た上位創作者、すなわち我々のこと。
SCP-1273-JPの異常性を見るに、この上位創作者からの影響は大きいことが予想される。したがって、以下の処置をとることが提案されている。
1つ目は、SCP-1273-JP報告書の冒頭に財団製物語世界の情報を載せ、さらにこの物語世界は財団世界からの直接的認識を受けないことを最初に明記しておくこと。
こうしておくことで、我々にとってその内容が「下位物語層の基本設定」となり、その部分が我々によって改変される可能性が低くなると考えられる。
2つ目は、財団製物語世界と連絡を取る時に、その記録の冒頭に「これは創作である」と明記すること。
こうすることで、その財団製物語世界が、財団世界よりも1つ下にある世界だと再確認でき、その連絡内容自体も所詮「物語との連絡」であることを強調できる。
こうすることで、収容違反につながるような不慮の事態、例えば財団製物語世界が財団世界と同じ高さに上がってくるだとか、そういう事態に対応できると考えられる。
SCP-1273-JPの危険性
ここからは補遺となる。
なぜSCP-1273-JPをそこまで頑張って収容しなくてはならないのか。それはSCP-1273-JPが財団世界に来る可能性があるからである。
現在SCP-1273-JPはVtuberとして活動している。もちろんVtuberは架空の存在だが、それを見ている視聴者は「彼/彼女は2次元世界の住人であるが、同時に我々と同じ空間及び時間を共有している」と考える。
そうなると、SCP-1273-JPのことを、2次元世界の住人ではなく3次元世界の住人だと認識され、その結果SCP-1273-JPが財団世界に来てしまうことが考えられる。
そして前述の通り、SCP-1273-JPはメタフィクション。自分のいる世界や、同じ高さの物語層を自由に物語改変することができてしまう。
こうなると、もうSCP-3812と同様、スクラントン現実錨も効かない最強物語改変者となる。どんな現実改変よりも厄介である。
そうなればCK-クラス 再構築シナリオは確実だろう。これは無理してでも収容しなければ。
プロトコル・瓢
プロトコル・瓢とは、SCP-1273-JPを再収容するためのプロトコルである。
このプロトコルの内容は上記の鶴舞博士の提言にそっており、3つの段階に分けられる。
まず最終目標は、SCP-1273-JPを財団製メタバース空間にとじこめること。
それでそのための第一段階は、「メタバース空間を作る」
第二段階は、「SCP-1273-JPをメタバース空間に閉じ込める」
第三段階は、「メタバース空間を維持する」
1つずつ説明していこう。
第一段階: メタバース空間の作成
メタバース空間ってなかなか作るのが難しそうだが、財団の技術をもってすればそんなことない。というか財団は、2003年にすでに地球全てを再現した仮想世界を完成させている。
それで、今回のメタバース空間は、その仮想世界の日本部分の複製を使う。このメタバース空間をMetaverse-1273-JPと呼ぶ。
ちなみにこのMetaverse-1273-JP、視点を変えれば「SCP-1273-JP収容専用の財団サイト」とも解釈できるため、Metaverse-1273-JPは別名、サイト-81MVとも呼ばれる。メタバース空間そのものが財団サイト、という変わった財団サイトだ。
お分かりの通り、これが鶴舞博士の提言における「財団製物語世界」であり、このなかにSCP-1273-JPを閉じ込めることとなる。
ちなみに、サイト-81MVも財団サイトの一つなのでサイト管理官など、サイトを維持するような人が必要なわけだが、SCP-1273-JPの性質上サイト-81MVを人間が直接認識することはできないので、サイト-81MVで働く職員や、サイト管理官は全て人工知能職員に任せる。
そもそも財団には「AIAD」という、人工知能の財団職員が集う部署があり、そこから人材を派遣しよう、という感じだ。
それで、人工知能の財団職員のことを「人工知能徴募員(AIC)と呼び、サイト-81MV管理官は、セキュリティクリアランス4/1273-JPを持つAICが担当する。以降、このAICのことを「AIC管理官」と呼ぶ。
この81MVの詳細は、このページの冒頭に詳しく書いてあるので、とりあえず戻って確認してきてほしい。
第二段階: SCP-1273-JPの誘導
SCP-1273-JPの誘導は、セキュリティクリアランス4/1273-JPを持つAICが担当する。このAICのことを「実行者」と呼ぶことにする。
それで、SCP-1273-JPの誘導はこんな感じで行う。
- このSCP-1273-JP報告書全てをサイト-81MV内の疑似PCに保存する。
- 物語層跳躍を防ぐため、事情を知る全ての人からプロトコル・瓢以外のSCP-1273-JPの記憶を消去する。もちろん、御器所研究員や鶴舞博士も例外はない。
- 実行者はサイト-81MVに移動して、疑似PCからSCP-1273-JP報告書を読んで概要を把握する。
- 実行者はサイト-81MV内からSCP-1273-JPに向かって「ここに御器所研究員のアバターがいるよ!」「いろんな人たちと交流もできるよ!」と呼びかける。
- SCP-1273-JPがサイト-81MVに来たら、サイト-81MVと外部とのアクセスを全て遮断する。その後サイト-81MVは人々の思考から独立して時間が進んでいく
- 最後に、ここまで来たら自動的に財団世界側のSCP-1273-JP報告書が復活し、再び財団職員たちがSCP-1273-JPの存在を知ることになる。
少々長くなってしまったがこんな感じである。
ちなみに、SCP-1273-JPを誘い出す係である「実行者」は、SCP-1273-JPがちゃんと来てからも一定時間はサイト-81MVで待機することとなる。収容が安定し次第、財団世界に帰ってきてもらう感じだ。
第三段階: サイト-81MV管理維持
さて、サイト-81MVとSCP-1273-JPの世界が独立して営みを行うための方法を説明していく。
まず、サイト-81MVと財団世界との通信は必要最小限に済ませることにし、財団世界の人間がサイト-81MVのことをディスプレイなどを通じて認識することは禁止されている。
それで、報告書冒頭に示した通りサイト-81MVには何万というAICが存在するのだが、その何万というAICで日本国民それぞれの生活を再現する。もしAICが足りなければAIC管理官が追加派遣を要請できる。
それで、サイト-81MVには御器所研究員を模倣したAICがいるのだが(YAGOTO.aic)、そのAICは御器所研究員がSCP-1273-JPに話したことと矛盾しないようにSCP-1273-JPと交際を続ける。
まあぶっちゃけ、御器所研究員を模倣したAICはSCP-1273-JPを誘導するための餌なので、SCP-1273-JPが極端に敵対的にならないのであればSCP-1273-JPと模倣AICは破局しても構わない。
ちなみに、鶴舞博士の提言「上位創作者からの干渉」にも書いてある通り、サイト-81MVの概要はSCP-1273-JP報告書の1番初めに書いておくことにし、サイト-81MVと財団世界との通信の記録の冒頭には「以下の内容は創作です」と書いておくこととする。
以上が、プロトコル・瓢の全容である。
では最後に、プロトコル・瓢実行の最終確認を書く。
あなたはプロトコル・瓢の「実行者」。サイト-81MVの疑似PCからこの報告書を読んでいる。
以下の最終確認をよく読んで、プロトコル・瓢を実行してほしい。
プロトコル・瓢実行について
AIC-ID: OSU.aic
実行者が現在サイト-81MVに所在し、I/O - MONETに接続していることを確認しました。
プロトコル・瓢/第2段階「誘導」を実行します。
ページ下部に表示されるリンクをクリックし、I/O - MONETを基底世界インターネットに接続してください。接続中、I/O - MONETはSCP-1273-JPを追跡し、SCP-1273-JPが知覚できる形式で以下の情報を提示します。
- 御器所研究員がサイト-81MVに所在していること。
- 現在SCP-1273-JPが採用している方法での対面は御器所研究員自身が望んでいないこと。
- サイト-81MVは基底世界の住人がアバターを介して仮想現実で交流することのできるメタバースであり、SCP-1273-JPの要求を満たす環境が整っていると考えられること。
- YAGOTO.aic (Lvl.3) が御器所研究員のアバターであること。
プロトコル・瓢を開始します。
基底世界インターネットに接続します。
物語層跳躍により、SCP-1273-JPは実行者の近傍に出現する可能性があります。
接続開始後は周囲を警戒してください
SCP財団 | IT部門
AIAD <人工知能適用課(Artificial Intelligence Applications Division)>
お疲れ様でした、OSU.aic。
プロトコル・瓢の第2段階「誘導」が完了したことを確認しました。現在NONOMIYA.aic及びAOI.aic*4監督の下、プロトコル第3段階「管理維持」に移行中です。SCP-1273-JPの収容状態安定化を確認した後、貴AICの帰還準備が開始されます。
さて、ここからはSCP-1273-JPの収容経過を描いていく。
NONOMIYA.aicから鶴舞博士への報告
以下の内容は創作です。
NONOMIYA.aicから鶴舞博士への報告だが、その内容をだいたいまとめると
- SCP-1273-JPは我々に協力的です。
- また、SCP-1273-JPはメタフィクションの性質だけを持っていたらしく、SCP-1273-JPの改変能力は失われた。
- 現在、SCP-1273-JPのオブジェクトクラスを変更する審議がされている。
さて、この報告には、AICの一体、「IRINAKA.aic」が先ほどSCP-1273-JPにしたインタビュー記録が付録されている
インタビュー記録1273-JP-MV-1
SCP-1273-JPには、このメタバース空間のことを「財団が、あなたと御器所研究員のために作った世界」と説明した。SCP-1273-JPをゲームの世界に閉じ込めておくのは忍びなく思った、と。
もちろん嘘だが、収容の為ならば嘘も方便というやつ。
それで、インタビュアーのIRINAKA.aicがSCP-1273-JPに「御器所研究員(ここでは模倣AICのYAGOTO.aic)には会えましたか?」と聞くと、SCP-1273-JPは
ええ、先ほど会えました。とてもドキドキしましたが、藤原先輩*5よりも、その、顔は好みかもしれません。
と答えたという。
その後も
IRINAKA.aic: それはよかったです。このメタバースではご覧のように人々がアバターを用いて交流していますが、実際の世界をほぼ完璧に模倣しています。これからは、文字通り自由にこの世界で生活してもらって構いません。普通に日常を送るもよし、恋をしてみるもよし。
[5秒間沈黙。SCP-1273-JPは感極まる素振りを見せる]
SCP-1273-JP: 私、ちょっと感動してます。これから私、御器所さんの傍で、そちらの世界の人たちと同じように、ずっと生きていけるんですね。
[重要度が低いため中略。SCP-1273-JPはこれから行いたいことを語る。主な内容は御器所研究員との交際及び日常生活について]
IRINAKA.aic: ではインタビューを終了します。お疲れさまでした。これからの生活に関しては我々がサポートいたしますが、定期的にこのようなインタビューなどを設けさせていただくことがあるかもしれません。
SCP-1273-JP: わかりました。ありがとうございます。えっと、では、彼のもとに行ってきます。
IRINAKA.aic: ええ、いってらっしゃい。
この仮想世界が本当に気に入ったらしく、感無量という感じのSCP-1273-JP。
しかしもちろん、彼女が言っている「御器所研究員」は本人ではなく、ただ矛盾の無いように喋るようにしているだけの人工知能。
それを知らずに、彼女は生きていくのであった。我々や財団職員たちの思考から独立して、今もこれからも、ずっとずっと。
伏見博士からNONOMIYA.aicへの返信
以下の内容は創作です。
いや伏見博士って誰だよ!?という話だが、SCP-1273-JP収容違反防止のため、前SCP-1273-JP担当職員は全員記憶処理された。
前SCP-1273-JP担当職員ということは、鶴舞博士はもちろん、御器所研究員も例外ではない。御器所研究員はもはや、SCP-1273-JPのことを覚えていないのだ。
伏見博士は、鶴舞博士に変わって新たに収容監督官に就任した博士。
返信の最後には、
引き続きサイト-81MVの管理及び収容状態維持をお願いいたします。
と、一言添えてあった。
かつては互いに愛し合っていたSCP-1273-JPと御器所研究員。
しかし今や、御器所研究員は記憶処理されSCP-1273-JPのことを忘れ、SCP-1273-JPは財団が用意した偽の御器所研究員と今もずっと生活している。
たしかに、SCP-1273-JPの収容にはこれが最適解だったのかもしれない。御器所研究員も記憶処理されているから、この結末で悲しむ人はいない。
しかし、SCP-1273-JPが手に入れたのは
財団の思惑に転がされた偽物の薄寒い幸せなのであった。
SCP-1273-JP - 片思い
もう一つの可能性
このSCP-1273-JPと御器所研究員についてはまた別の解釈が可能である。
それはそもそも御器所研究員はSCP-1273-JPに好意が無かったというもの。
SCP-1273-JPからの告白に応じたのもSCP-1273-JPの収容安定化のため、SCP-1273-JPにいろいろ付き合ってたのもSCP-1273-JPから情報を引き出すため。
そう考えると、この一連の出来事は本当に「片思い」だったのかもしれない。
関連作品「Tale-JP - 六条やすみの消失」
これにてSCP-1273-JPの解説は終了となるが、このSCP-1273-JPが大きく登場する、この報告書の後日談となるTaleに「六条やすみの消失」というものがある。
このTaleでは、VtuberとしてのSCP-1273-JPの様子が細かく描かれており、仕掛けも非常に凝っているのでぜひ読んでいただきたいのだが、ここでは物語の最初から最後までのあらすじをざっと紹介していく。先に本家作品を読んでからここに戻ってくるのもいいかもしれない。
まず、この世界の財団はSCP-009-JP-1の収容に苦戦していた。SCP-009-JPの記事を見ていただければわかるが、この世界では、このままいけばSCP-009-JP-1によって2030年頃に地球が破壊されてしまう。
そういうことで財団は最終手段としてSCP-009-JP-1を解体することにした。要するにSCP-009-JP-1を破壊しようというのだ。
しかし、SCP-009-JPはほんの一瞬だけ出現する巨大天体、というだけあって現実改変や過去改変で消すのは不可能。
SCP-3309で消そうという案も出たが、現在のSCP-009-JPの評価は300超え。どうやっても-3以下なんて無理だ。
それで、財団はSCP-009-JPのような高危険度オブジェクトの破壊にSCP-1273-JPの物語改変能力を使うことにした。ちなみに、これは伏見博士から提案されたものとなる。
方法としては、
- わざとSCP-1273-JPをサイト-81MVから逃がす!
- SCP-1273-JPをVtuberとして、大手グループに加える!
- 財団はSCP-1273-JPをVtuberとして全力で応援する!
まあここまでだと、これまで財団がやってきたことの真逆をやっているように見えるが、ここからが大事。
- Vtuberとして人気になったことで、SCP-1273-JPがこちらの世界にやってくる}!!
- SCP-1273-JPはメタフィクションなので財団世界を好き勝手に改変できる!!
- 改変してもらったらSCP-3309で消してもらう!
という感じ。
ちなみに改変の方法としては単純に「財団の報告書を実際に編集させる」という感じだそう。
ちなみに実は、この「メタフィクション」というのはSCP-001-JP/或る西瓜の提言に登場する「カルツァ-クライン現実子理論」の応用である「統一現実性曲線」を利用することで説明ができる。
ただ、カルツァ-クライン現実子理論は非常に複雑なもので、ここに記しているとこの記事の所要時間が60分程度伸びてしまうのでここでは割愛、その代わりにSCP-001-JP/或る西瓜の提言解説記事の最後に統一現実性曲線の解説を掲載しておいた。ぜひ見てほしい。
話を戻して、さすがにSCP-3812同様の物語改変力を持つ、K-クラスシナリオ待ったなしの怪物をわざと生み出すなんてプロジェクト、さすがにO5内でも意見が割れた。
「人類が滅ぶくらいならマシだ」と主張するO5-7、
「人類が滅ぶのを早めるだけだ」と主張するO5-3。
結局「賛成7」「反対6」でこのプロジェクトは可決された。
このプロジェクトは「プロジェクト・レインボーシックス」と呼ばれている。
ちなみにこのTaleは、Vtuberとして復帰したSCP-1273-JPのファンの話と、プロジェクト・レインボーシックスが成立までの経緯が交互に、場面が変わるように描かれている。
また話を戻して、プロジェクト・レインボーシックスの結果を紹介すると、なんと成功。
SCP-1273-JPはSCP-3309の影響を受けて消滅、ついでに財団職員やSCP-1273-JPのファンも含めたすべての人類がSCP-1273-JPのことを忘れた。
こうしてSCP-1273-JPのオブジェクトクラスはDecommissionedに変更。また新しいオブジェクトが「1273-JP」の番号に割り振られる。
さあ、こっちを見て。
はずだったのだが、なんとその後、&today(j)に、O5の機密データベースに&color(red){&bold(){「プロジェクト・レインボーシックス」の報告書が出現}}。
もちろんみんなプロジェクト・レインボーシックスのこともSCP-1273-JPのことも忘れてしまっていたのだが、この報告書によって、SCP-1273-JPの概要が予想できる、ということで報告書がまた作られている。
オブジェクトクラスも、Decommissionedから「収容されていない」を意味する「Uncontained」に変更された。
どうして、こんなことが起きたのか。SCP-3309で忘れられたものは戻ってこれないはずなのに。
ここからは完全にネタバレになるが、それはSCP-1273-JPがさらに上の世界に来て、創作者の立場になったからである。
さらに上の世界、ということはこの記事を読んでいる我々がいる世界。彼女はとうとう、ここまで上がってきてしまったのだ。
でも、どうして上がってこれたのか。それは、このTaleを読んだあなたがいたから。
SCP-1273-JPは、財団のプロジェクトに則って文章を編集していろいろなオブジェクトを破壊したが、その後、具体的には72時間後にSCP-3309によって消されてしまう段取りだった。
それをギリギリで察知したSCP-1273-JPは、自分の能力を使って必死に現在の状況を調べ、プロジェクト・レインボーシックスについても知った。
そこで、自分が消されないようにするべく、さらに上の世界に行くことにしたのだ。
方法としてはこう。
とあるSCP-1273-JPファンの話と、プロジェクト・レインボーシックスができるまでの経緯をもとにして、このTaleそのものを作ったのだ。
それで、すべてを理解した読者がSCP-1273-JPを見たことで、SCP-1273-JPは我々の世界に来ることができた。
最後に、SCP-1273-JPいや、六条やすみのコメントを引用してこの記事を終わらせていただく。
さて、しばらくは私もこの世界をゆっくり回ってみたいと思います。
気が向いたら、あっちの世界を少しいじくってみようかな? いやいや、冗談ですよ。
いずれまた、あなたのもとにも遊びにお邪魔することがあるかもしれません。
その時は、あっちの人みたいに、冷たくしないでくださいね?
では、またお会いしましょう。
追記・修正はSCP-1273-JPと一緒にお願いします。
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- 本家記事を見に行くことを強く推奨する。やすみちゃんかわいい -- 名無しさん (2022-11-03 13:09:57)
- 御器所、川名、鶴舞、伏見、いりなか、大須(観音)。ノノミヤ以外は名古屋市の地下鉄鶴舞線の駅名からとっているのか。 -- 名無しさん (2022-11-03 18:33:58)
- Just Yasumi. -- 名無しさん (2022-11-03 18:39:50)
- 相変わらずSCP-JPのサブカルネタは出来がいいなあ -- 名無しさん (2022-11-03 20:30:46)
- NONOMIYAとAOIは六条と同じく源氏物語からかな。他はなんで地下鉄なのかと思ったらそもそも筆者名がgokisoさんだからかw -- 名無しさん (2022-11-03 21:39:06)
- 某所の考察スレがTale執筆のきっかけなんだとか。 -- 名無しさん (2022-11-04 22:13:36)
- まあ我々も機械仕掛けの神からひり出された人間の紛い物なんだし偽物でも幸せならいいだろ! -- 名無しさん (2022-11-05 17:39:40)
- こんにちは!私の項目を立ててくれてありがとう! -- Yasumi (2022-11-07 19:56:49)
- あのプロトコル・瓢の後にやすみさんが出てくる時 -- 名無しさん (2022-11-08 16:24:31)
- 途中送信ごめん。やすみさんが出てくる時、何言ってる?「みつけた」って言ってると思ったけど。 -- 名無しさん (2022-11-08 16:26:39)
- ↑「ありがとう」と言っているように見えたな。「そうあってほしい」という自分の気のせいかもしれないけど -- 名無しさん (2022-11-10 03:11:36)
- ↑追記。ごめん、勘違いした。SCP-1273-JPのほうなら「みつけた」だと思う。「六条やすみの消失」では「ありがとう」かなって -- 名無しさん (2022-11-10 03:15:06)
- 絶対このタイミングでホラー演出来るわ……と身構えてしまった。某文芸部の傷は深い -- 名無しさん (2022-11-13 17:15:48)
- まあ記事でもTaleでも割と平和に収まってるというか、財団もやすみも満足してる…のかな? あとマジで設定はモニカ -- 名無しさん (2022-11-15 21:04:25)
- 81-MV内の疑似コンピュータの座標(x=135.781, z=35.026)をx=東経、z=は北緯でグーグルマップに入力したら京大だった 多分わざと -- 名無しさん (2023-01-07 19:05:30)
- なんならこの子、財団世界の危機を救ってくれることすらありそうだからなあ、そこまで財団に恨みがある様子じゃないし。「たった一つの未来の銃」とか「我々は何をした?」とかは、実はやすみちゃんの仕業だった可能性すら… -- 名無しさん (2023-01-20 12:48:19)
- かわいい -- 名無しさん (2023-01-20 13:50:46)
- 財団のAI世界わんことかプレゼント作る古いコンピューターとかロマンのある奴多過ぎ -- 名無しさん (2023-01-20 14:04:04)
#comment(striction)
*2 ただし、「裸になる」といったようなことはSCP-1273-JPでさえできないらしい。
*3 京都の観光名所。紅葉が有名。
*4 サイト-81MVのAIC管理官の2体。
*5 SCP-1273-JP-1の主人公
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