季節はずれのスプラッシュ(それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ)

ページ名:季節はずれのスプラッシュ_それゆけ_宇宙戦艦ヤマモト_ヨーコ_

登録日:2022/10/09 (日曜日) 21:24:48
更新日:2024/06/27 Thu 10:40:50NEW!
所要時間:約 12 分で読めます



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季節はずれのスプラッシュ』とは、『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』のエピソードの一つ(ナンバリング:8up)である。
富士見ファンタジア文庫版ではサブストーリー集『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ opt.』4巻『宇宙一杯のバレンタイン』、アサヒノベルズの完全版では6巻に収録されている。





●前置き

さて、ここで本作の前提設定について軽く説明しておく。
本作のメイン舞台となる「30世紀」は、銀河系全体に人類が版図を広げ、二つの勢力「TERRA」と「NESS」が世界を二分する宇宙時代である。
そして未来における技術の進歩はAIによる補助と人の思考をダイレクトに反映する「思考制御システム」によって、大量のAI制御無人機を搭載した母艦をも単独で操り無人機艦隊指揮も出来る程に便利になった。
だが、そんな時代ゆえの「隙間」…ある意味で「船」という言葉の真の意味が、本話では改めて示されることになる。




以下。ネタバレに付き注意。















●あらすじ

ある日、NESSの姉妹チーム「レッドスナッパーズ」は不慣れすぎる戦場で敗れつつあった。
それから少し後、主役となるTERRAの「エスタナトレーヒチーム」は、レッドスナッパーズの敗北、そして彼女達が戦った敵と次に戦うのは自分達だと伝えられる。
古代種族「オールドタイマー」の遺産が眠る地の一つとされ、今回の戦いの賞品兼戦場となる惑星「ペンギン」での映像を見たエスタナトレーヒの人々が直面した予想外のものは…


そう……。これぞ、マーシャル提督の秘密兵器!水上戦艦だーー!!


…今ここに、宇宙戦艦VS巨大水上戦艦の水上戦という、前代未聞の戦闘が幕を開ける。



●登場人物


  • 山本洋子

私たちの時代じゃ、まだ水の上を走る大型の船があるのよ!
オープニングで2年生に進学&チーム仲間の3人や友人の八十住千里と同じクラスになった、20世紀の凄腕ゲーマー女子高生兼30世紀のエースプレイヤー(パイロット)な主人公。
今回の舞台が「ペンギン」なんて名前なのにふざけてる感を抱いているが、海を往くレトロな艦隊と30世紀には船が海を渡ると言う概念自体が消えている現実を前に色々なものが吹き飛ぶ事に。
戦闘時には愛機TA-29の主砲エヴァブラックがレギュレーションに沿いレトロな超大型電磁砲(レールガン)に換装された事を不満に思うも、それは置いといて砲撃戦を行っている。


  • 御堂まどか

洋子と人工呼吸なんて、私が願い下げよ!!
洋子達と同じクラスになった上に、学校の決まり上卒業するまでの2年間ずっと一緒な事にキレた元体操女子。
水上戦対応時の慣れやローソンが思考制御システムに(ルールギリラインで)「水上で浮いているように」という指示を常時追加するに当たっての思考補強水泳訓練時、本人のカナヅチがまさかの障害に。
屋内温水プールであわや溺れかけ、実機を使っての別な海洋惑星での訓練でも心理的障害から浮かべず沈むありさまから、ついに乗艦TA-25に浮き輪型パーツを追加されてしまう…。
ちなみに実機で沈没した際、「どうせ私は…どうせシンクロ率は低いわよ」とアニメ版声優繋がりネタでぼやいていた。


  • 白鳳院綾乃エリザベス

そうですね、まずは山ごもりから始めないと…
皆と同じクラスな事を素直に喜んだ武闘派おっとりお嬢様。
水泳訓練時まどかに対し水泳習熟のためスパルタ過ぎる↑の台詞を告げドン引きされた(本人曰く山の中にも川はある)。
今回は(本編での明言はされなかったが)乗艦TA-27の主機能「重力アンカーによる投げ格闘戦」がレギュレーションに引っ掛かったのか、本番の戦闘時には支援砲撃に専念した。


  • 松明屋紅葉

なんかふわふわするような、けったいな気分やなあ
馴染みになったメンバーが新しいクラスに揃い、これからも退屈しなさそうだと思った京都女子。
今回の戦闘では乗艦TA-23の主戦力たる無人機艦隊が封じられたようで、綾乃共々サブ砲撃に専念している。


  • カーティス・ローソン

僕がいちいち宇宙船とか、宇宙戦艦なんて言ったことがあったか?
冒頭でかつての事件(4up『さみしがりやのブロッサム』)に関する補足情報を艦船を輸送する所属パドック艦「エスタナトレーヒ」のAI「ソロル」から聞いていた、チームのメカニック兼洋子達20世紀人のスカウトマン。
「水上」という形容詞に疑問を持った綾乃を機に洋子と船概念を巡る会話になった際、20世紀人がわざわざ宇宙を行くのが当たり前な船や艦に「宇宙」と付ける事に疑問を持っていた事が判明した*1
戦闘のためあれやこれやとレギュレーションギリギリの範囲まで艦隊に細工を行い、また後半では『さみしがりやのブロッサム』事件と今回とのある共通点を見出すことに…。


  • ゼナ・リオン

…人が悪いわよ、ローソン」「あなた、何か感づいているでしょう?
エスタナトレーヒとそこに属する艦隊を率いる女性提督。
戦闘艦の水上運用というレア過ぎる経験を積む事を喜ぶローソンに微妙な感じになるも、彼からの思わせぶりな謎かけからの今回の件に対する考察に目を見張る事になる。


  • レッドスナッパーズ

ここじゃどうか知らないけど、宇宙だったらわたしたちが負けるはずはないのよ!!
冒頭で半ばパニック状態になるほどの不利を受けボロ負けした、ルージュ・ロート・ルブルム・エリュトロンの4姉妹からなるNESSのチーム。
エスタナトレーヒ側が戦闘の参考とするため連絡を取っても不満全開で盛大に愚痴りまくり、「今回の戦いの条件では勝てない」くらいしか戦いの詳細が分からないオチで終わったが、
その後参考映像でレギュレーションにより体当たり程度しか出来ない状況で慣れないフルマニュアル運転水上戦を強いられた事を知り、洋子に同情された。
また落ち着いた後、ちゃんとエスタナトレーヒにちょこちょことまともな戦闘データも差し入れしていたそうな。
ちなみにNESS製艦船は魚介類型がデフォルトなのだが、流石に形が魚でも水に親しくはなかったらしい。


  • アブナー・E(エドワード)・マーシャル

全艦、前進!撃ちまくれ!!
今回の敵キャラであるTERRAの元提督の老人。そして提督とマーシャル(提督)が被ってる件で洋子からツッコミが入った。
「船は宇宙を往くもの」という観念が定着した時代において奇特な水の上を行くレトロ艦船&戦争系ミリタリーオタクで、20世紀アメリカ海軍風「艦長」衣装とパイプ(但し30世紀は禁煙主流なのでミント香料入り)を装備している。
ある事から惑星ペンギンに自分の夢とロマンが形になった水上艦隊を築き、TERRAとNESSの戦いを仲介・管理する組織「WASCO」対し、待ち望んだ水上戦を行うため
1 :参戦機体は水の上から少しでも浮いてはいけない
2:惑星環境及びそこにあると思われる「オールドタイマーの遺産」保護の意味も込め、インパルス砲(プラズマ集束砲撃)等大出力ビーム・レーザー系兵器の使用禁止(注:インパルス砲は30世紀の主力兵装です)
3:水上における制御はサポートAI及び自動制御システムに頼らず操縦者の自力(思考制御によるマニュアル操作)で行う事
という宇宙戦闘時代にあるまじきアナログレギュレーションを提示。それをWASCOがうっかり許諾した事で2つの勢力は大いに頭を抱える事に…。
初戦でレッドスナッパーズを完封した事で自身の「無敵艦隊」をより誇り、次に来たエスタナトレーヒチームがルール内でレールガンなんて最大火力を用意した事に感心しさらに勢いを増すが…。
なおエスタナトレーヒ戦直前調子に乗る様は、「SYSOP」(三人称視点時の天の声の名前)からそれはそうだ。なにしろ自分に有利な条件ばかりを突き付けているのだからと批判された。



●用語解説


  • 無敵艦隊

マーシャル提督が自らの夢をその手で形にした、古の水上艦船のレプリカにより構成された大艦隊。但し制作時の仕様から、全長1000mと宇宙を行く戦闘艦と同レベルのサイズに拡大している。
艦船の世代は割とまちまちで、16世紀の帆船から19世紀~WW2時代の軍艦まで多岐に渡り、大和級とアイオワ級の共闘というロマンも実現している。
但しこれだけの数を独りで操作するのは無理があったのか操縦システムは提督の指示を受けて自動で動くロボット操作AI補助禁止は自分には適用されないらしい
また製造時の思わぬ副作用か、艦船から放たれる砲弾は実弾でありながら着弾の瞬間帯電粒子化し火力が上がり、ちょっとした火力なら耐えうる宇宙戦艦にもダメージを与える仕様になっていたり。
無論この砲弾のビーム化にはツッコミが入ったが、ローソン曰く「マーシャル提督は『相手のレギュレーション』しか指定していない。つまり極論、提督側はどんな手を使っても大丈夫なので反則を取るのは無理」とのこと。ついでに、そもそもビーム化に気づいていないんじゃとも。


なお作中では触れられなかったが、なぜか艦隊内には大和時代に既にあったはずの航空母艦や潜水艦は存在せず、洋子側も砲撃はしても海戦ならありそうな魚雷を使用することはなかった。
もし空母OKなら、TA-23の艦載無人機に誰か人を搭載してレギュレーションの穴を付けただろうに…。





  • MM(モレキュラーマシン)プロジェクター

惑星ペンギンの広大な海洋にわずかに散らばる島の一つ、その中の研究所風遺構内に存在する無敵艦隊を製造する機構にして、ペンギンに眠る「オールドタイマーの遺産」
付属するヘッドギアの装着者の思考を読み取り、機構が生み出す変幻自在の分子機械(モレキュラーマシン)によって望み通りの物体を生み出す事が出来る。


なおエスタナトレーヒチームは、以前『さみしがりやのブロッサム』時に過去に滅んだ国家「神聖人類帝国」の遺した機動要塞「ブロッサム」で同様のモレキュラーマシン群と対峙しており、
冒頭での「ソロル」との会話で惑星ペンギンとの「ある共通点」を見出したローソンは、無敵艦隊戦中リオン提督に「ペンギンに眠る機構がブロッサムのモレキュラーマシンのオリジナルでは」との推論を提示している。










●顛末

日頃オートに任せている方向転換も思考制御でやる羽目になり、操縦補佐を禁止されていても戦況観測で活躍するTA-29のAIアソビン教授から艦隊砲撃のチート性を知らされつつも、
こつこつと無敵艦隊との艦隊戦をこなしていく洋子達エスタナトレーヒチーム。
だが数には勝てずじわじわと包囲される中、浮き輪装備を洋子からいじられていたまどかに対し、ローソンからあえて包囲を許容しかつ浮き輪の出番だとの指示。
そしてそのまままどかがローソンからの命令で、TA-27の主機能たる高性能バリア「ヴェイパーシールド」を展開。
結果シールド発動とそれに合わせ連鎖発動した浮き輪内蔵ヴェイパーシールド発生器による円状障壁との反発で津波が発生
事前予告されたエスタナトレーヒチームは何とか乗り切れたものの、マーシャル提督が一人で操る無敵艦隊は次々波に呑まれていき、
提督は「シールド発生によるTA-27の水面からの浮上での失格」を訴えるも、ローソンは「浮き輪の下にまだ水は残っている」「高度的には海抜0mのまま」と詭弁反論。
「ロマンを解さない若造」を叩き潰そうと怒りに燃えるマーシャル提督をよそに、ローソンからの指示で洋子は残存艦群をまどかに茶々を入れられつつ超大型電磁砲での最大砲撃であっさりドカン。


…哀れ沈没していく無敵艦隊の姿を指令場所での映像越しに見つつ、それでもなお夢を諦められないマーシャル提督はMMプロジェクターに、我が子の様に思う無敵艦隊の再起を祈願。
その願いに応え艦隊は再構築…と思ったら、なぜかヘッドギア起点で頭痛が発生。そしてMMプロジェクターから出る火花と同時に、老人は夢に裏切られることになる


視点は変わり洋子達が目にした光景。それは艦隊が変形しモレキュラーマシン雲と化す姿だった。
ローソンから「ブロッサム」時と同じモレキュラーマシン案件と聞かされ戦艦量産の理由を納得し、同時にマーシャル提督が小型船であっさり星外に脱出したとの知らせも聞くも、
提督の目標指示が継続した事でモレキュラーマシン雲はチームに殺到し攻撃開始。
武装が少ない状況下でこれを受け、洋子は「雲の一斉殲滅」のためTA-29内蔵の最終兵器(その1)「統一場粒子兵器ザッパー」の使用許可をリオン提督に要請。
環境どころか星ごと吹っ飛びかねないザッパーの破壊力に最初リオン提督は渋るも、「星の外に自分達が離脱してもマシン雲が追って来たら使用」との追加条件提示で使用許可受諾を考える事に。
そして星から離れてもチームを追跡するマシン雲と、威力を絞れば二次被害も少なそうな空域に入った事で止む無くリオン提督からの許可は降り、ザッパーによって雲は消滅したのだった…。


しばらく経った後、リオン提督にMMプロジェクターの発見や行方をくらましたマーシャル提督の事を報告するローソン。
そこでリオン提督は、「なぜ神聖人類帝国と惑星ペンギンの共通点に気づいたのか」と彼に質問(なおマーシャル提督の遺した日記からMMプロジェクターは神聖人類帝国の遺構にあった事は立証された)。
…ローソン曰く、神聖人類帝国はかつて一時支配していた地球を「最初にして最後の皇帝」オノクロタロスの名で呼んでいた。
そして「ソロル」から冒頭伝えられた情報によると、その皇帝の名はギリシャ語におけるある鳥の名でもあり
それゆえに帝国は他の星も鳥のギリシャ語名を別につけていたという(例:スピカ→トゥルドゥス(ツグミ)等、但しレグルスは元々の意味がミソサザイなのでそのまま)。
なので(古代ギリシャにペンギンはいなかったけど)帝国関係者なら鳥の名前を星につけてもおかしくないのではと…。



リオン提督
なるほど…。でも、皇帝の名前だったオノクロタロスって、そもそもどういう意味なの?


ローソン
ペリカンですよ。皇帝だけにペンギンじゃなかったのが残念ですけど





●余談

本話では行方不明のまま終わったマーシャル提督だが、後に完全版11巻にて、第3の新興勢力「noyss」に「水上艦船テーマパーク用に海洋惑星を1個貰う」という報酬で雇われた事が判明。
…ただ、その時他に呼ばれた相手が前話(7up)『宇宙一杯のバレンタイン』でまどかラブから暴走し今でも彼女に片思い中な御曹司だったため、関係者や12巻で彼らの事を知った洋子から何だがなな目で見られることに。


なおまどかの水泳下手に関しては本話前にも、「宇宙戦艦での水中探査」なんてレアな任務が行われた『星明かりのアクアリウム』でも洋子がネタにしたが、
その時はちゃんと(なぜか)潜水用装備が事前用意されており、まどか側も「AIががっつり補助してるから平気!(意訳)」だったため問題にはならなかった。



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*1 ちなみにあくまで「大きな船=宇宙船」なだけで、海でボートや筏を使うという慣習は理解していた。

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