ステインボーイ

ページ名:ステインボーイ

登録日:2022/09/18 (日) 16:40:53
更新日:2024/06/27 Thu 10:31:07NEW!
所要時間:約 9 分で読めます



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アニメ 短編 短編映画 短編アニメ ティム・バートン 異形 ブラックユーモア シュール 不条理 ヒーロー ダニー・エルフマン オイスター・ボーイの憂鬱な死 バーバンク リサ・マリー



スーパー・ヒーローは数多けれど


最も風変わりなヒーローは


猛烈パワーももってなければ


いかした車も運転しない




スーパーマンバットマンのつぎに


たしかに平凡なやつだけど


僕には特別なヒーローさ


その名もステインしみボーイ




オイスター・ボーイの憂鬱な死より引用


概要


『ステインボーイ』(原題:The World of Stainboy)は、2000年に制作されたFlash短編アニメ集である。全6話。
監督・脚本は[[ティム・バートン>ティム・バートン]]。
彼にとって『バットマン リターンズ』以来のヒーローものの作品である。……一応。
かつてはShockwave.com というサイトで日本語字幕付の動画が公開されていた。
また、日本でも開催された「ティム・バートンの世界展」でも上映されていたので、こちらでご覧になった方も多いと思われる。
Shockwave.comでは妙にクオリティの高いミニゲームも遊べていたが、現在はプレイする手段がない模様。


本作の登場人物の多くは、同じくバートンが手がけた絵本『オイスター・ボーイの憂鬱な死』(原題:The Melancholy Death of Oyster Boy & Other Stories)が由来。
日本では99年に発売され、東京では青山ブックセンター六本木や渋谷パルコブックセンターといったクリエイター御用達の書店で週間ベストセラーになるなど、ちょっとした話題になった。
この作品に登場する子供たちは、いずれも彼の作品のメインテーマである異形の悲哀を背負っている。
と同時に、全体的に不条理なブラックユーモアで彩られ、中にはどこからツッコんでいいのか分からなくなるような話も
こうした原作を持っているのなら、当然本作も普通のヒーローものの物語になるはずなどなく……



あらすじ


舞台はロサンゼルス郊外の街、バーバンク*1
警察署には日々、異形の者たちに対する苦情が寄せられる。
ステインボーイは今日もグレンデール巡査部長の命令で、彼らを逮捕するべく奮闘(?)するのだった。



登場人物



  • ステインボーイ

バーバンク警察署に勤務している謎のヒーロー。
高層ビルのまわりも飛べない、特急列車も追い越せない。
実際彼も走ったり飛んだりできないことを結構気にしているらしい。
ないない尽くしの彼の唯一の特技は、汚いしみを残すこと。
そのため、クリーニング代に悩まされている模様。
絵本では全身しみに覆われて真っ黒になっている。
ちなみにこのキャラクターはバートン曰く、当時手がけようとして結局ボツになってしまったスーパーマン映画の企画の象徴なのだという*2


最終話にて、彼の生い立ちが明かされた。
彼は普通の人間と同じように生まれたが、何でもしみだらけにしてしまう体質を父親に疎まれ、孤児院に預けられる。*3
「バーバンクのお化け屋敷」と呼ばれるそこには、同じように異形の子供が集められていた。*4
そこで巡査部長と出会い、スカウトされたらしいことが示唆されている。
異形の存在でありながら、同じ異形たちと敵対することになった彼もやはり、悲劇を背負っていると言えるだろう。


  • グレンデール巡査部長

いつも怒鳴っているステインボーイの上司。
名前の由来は、バーバンク近郊の都市の名前から。
風貌がバート・シンプソンっぽい。
回が進むごとに勤務態度が怪しくなっていく


  • ステアガール

「ステインボーイ、バーバンクの街に誰も近付こうとしない家があって、そこにじーっと見つめるだけのステアガールがいる。この件はお前に任せる」
「さっさと行け!首尾よくやれよ!」


誰でも何でもかまわず、じーっと見つめる謎の少女。その理由を知る者は誰もいない。
一度目を合わせたら彼女の視線を反らすことはできず、地元の「じーっと見つめるコンテスト」で優勝した経験もある。
作中で人に直接危害を加えた様子はなく、敵の中ではおそらく一番危険度は低いと思われるが、そこまでして捕まえなければならない理由は不明。


サイトで遊べたミニゲームは、ステアガールとのにらめっこ。ステアガールの目からカーソルを離さなければいいだけなのだが、時折起きるトラブルに対しては即座に対応しないとアウト。
目からカーソルを離しすぎても当然アウトなので、何気に難易度は高い。


彼女と対峙したステインボーイはその視線の前に長期戦を強いられていた。
すっかり日は暮れ、いよいよウトウトし始める。
すると、長すぎるにらめっこについにしびれを切らしたか、しみが彼女の頭上にあるシャンデリアへと伸びていき……
落ちたシャンデリアは彼女を直撃。辺り一面血が飛び散り、目玉が飛び出す惨劇と化した
なかなかにグロいが、彼が自分の能力をまともに活かした唯一のシーンでもある。腐食作用でもあるのだろうか?


「よくやったステインボーイ。異常で病的で皆に悪影響を及ぼす化け物からこの街を救ってくれたことを感謝する」
「と言っても、お前も化け物だがな…」
「バーバンク商工会議所ならびに青年会議所を代表して、私から感謝の意を表する」
「超格安ドライクリーニング店も、ステアガールの家の掃除をすると宣伝になると喜んでおる」*5
「用は済んだ、さっさと失せろ!その子に手錠をかけるんだぞ!」そして手錠を飛び出した目玉にかけるのだった


  • トキシック・ボーイ

「ステインボーイ、バーバンクの街に苦情が出ている。市民がむかつき、目の痛み、おう吐などを訴えている。大気汚染あるいは朝食のパンケーキによる食中毒だと睨んでいる」
「行け!首尾よくやれよ!」


本名はロイ。しかし、トキシックボーイとして知られている。
その名の通り、アンモニアやアスベスト、タバコの煙や排気ガスといった有害物質を愛している。
作中でも、殺虫剤やパイプ洗浄剤、カタツムリ駆除剤をガブ飲みした挙句、床に大穴を開けるほどの腐食作用を持ったゲロをぶちまけるという危険性を見せつけた。


ステインボーイがとった対策、それは森林の香りのポプリだった。
きれいな環境が毒となる彼にとっては致命的で、それを近づけられると悲痛な叫び声を上げながら逃げ回り始めた。
さらに額にそれを当てられると焼け焦げ、苦しみのたうち回り絶命。
そして彼のペットと思しきガリガリにやせこけた犬が遺体にかじりつくと、一瞬で毒が回って道連れになったのであった……
「生きてるだけで周囲に大きな害を与えるばかりか、そもそも普通の環境では生きることすらできない」設定の彼は、作中の異形たちの中でもトップクラスに哀しい存在かもしれない。
絵本では彼の死後、彼の魂が天に昇ると、オゾン層にぽっかりと穴が開いたという。


「大気汚染及び死を招く恐れのある危険化学物質の使用、街の外見を損ね、自然環境を破壊し、街に重大なる損害を与えた」
「全く、その金でディズニー映画が一本とれるぞ
「袋にでも入れておけ!」


  • ボウリング・ボール・ヘッド

「ステインボーイ、バーバンクのボウリング場周辺が大騒ぎになっている」
「何者かが金持ちのボウラー達を殺し、路地裏に引きずり込んで、トロフィーを奪い、ボウリングシューズを売りさばいている。正義のために一役買ってくれないか」
「ぼやぼやしてる暇はない!行け!」


頭が巨大なボウリング玉になっている異形。声がウギー・ブギーっぽい。ちなみに敵キャラの中で唯一絵本に登場しない。
ステインボーイがボウリング場の路地裏に忍び込むと、何かがうごめく音が。
振り返ると、ボウリングのピンたちと、大きなゴミ箱によって逃げ道をふさがれていた。
そして背後からピンたちの親玉であるボウリング・ボール・ヘッドが姿を現し、彼に語り始めるのであった。
このくだりはガチのサスペンスになっていてなかなか見ごたえがある。


かつて、ボウリングはスポーツの王様と呼ばれ賑わっていた。
しかしそれは今や昔。ブームは過ぎてボウリングする奴らはダサいと言われるようになるまで落ちぶれてしまった。
そこで彼はボウリング人気を復活させるため、見せしめにボウラー達をあの世送りにするようになったのだった。
……どう見ても逆効果だと思うのだが。
そして自身の頭部を転がしステインボーイを追い詰めるも結局かわされ、ゴミ箱に激突。あっさり自滅してしまった。
頭部に乗っかり得意げにしているステインボーイの姿は可愛いが、よく見ると背後のゴミ箱からボウラーの死体が二名ほど飛び出している


「よくやったステインボーイ。ボールを真っ直ぐ転がしゃいいと思ってる腹の出たプロ気取りのハゲ親父達も、これで安心してボウリングができるだろう」
「亭主が留守なら、女房もハッピー。彼女達とボウリング場支配人に代わって、私から感謝の意を表する。ラックに入れとけ!


  • ロボット・ボーイ

「ステインボーイ、バーバンクの街が停電になっている。誰かが、俺の過去の3回の結婚よりもエネルギーを無駄遣いしているらしい」
「お陰で好きなTV番組も見られやしない。すぐに行って原因を調べてこい!


スミス夫妻の間に誕生した異形。ちなみに実の父親は電気ミキサーらしい。
抱きしめたくなるような温もりも柔らかい皮膚もなく、あるのは冷たくて薄いブリキの皮。頭からはワイヤーやチューブが突き出している。
自力で動くことはなく、唯一生きていると思わせるのは延長コードをコンセントに差し込んだときだけ。
ステインボーイが新聞に気を取られている隙に体を組み立てて襲いかかる。
その風貌は『サンリオタイムネット』のロボマシンガーにちょっと似ていたりする。
なお、この回で巡査部長が読んでいる雑誌には『COPS WITHOUT TOPS(上半身裸の警官)』なる番組の名前が見られる。


サイトで遊べたミニゲームはロボットボーイの改造。特別クリアなどの概念はなく、ひたすらロボットボーイに色々なパーツを組み付けて動かすことができるだけ。


完全体となった彼は圧倒的な実力差を見せつけ(ネズミを焼き殺しただけ)、ステインボーイを追い詰める。
……しかし彼は肝心なことを忘れていた。
追い詰めていく内にコードが伸びきってコンセントから抜け落ち機能停止。あっけない幕切れを迎えた。(自滅2回目)
そしてステインボーイが署に戻ってくると、巡査部長を始めとした警官達がなぜか上半身裸になってドーナツパーティーで盛り上がっていたのだった……


「ちょっと失礼する」
「よくやったステインボーイ。無駄なエネルギーの消費とそれに伴う環境破壊から街を救ってくれた事を市民に代わって感謝する」
「これは個人的な事だが、TVのない生活も悪くないと分かった。感謝するぞ」
「用は済んだ!行け!スクラップにしろ!」


ステインボーイが去った後、巡査部長は再び上半身裸になり、ドーナツパーティーを再開するのであった……


  • マッチ・ガール

「ステインボーイ、お前の昔の女がガソリンスタンドで客を脅してガスポンプの売上金を奪っている。何が言いたいか解るな?」
「今すぐ行って彼女と話をつけてこい!」


ステインボーイの元カノ。*6このナリでリア充だったのかこいつ……
可憐でセクシーでとてもホットな彼女は、恋の炎で相手を焼き焦がしてしまうヤンデレ。
今でも彼のことが忘れられない彼女は、恋の炎を熱く燃え上がらせるのだった。
声の担当は当時のバートンの恋人リサ・マリー。つまり、ステインボーイのモデルは当然……


誘惑に乗らないステインボーイに対し、恋の炎で焼き尽くそうとするマッチ・ガール。
しかし場所はガソリンスタンド。火は延焼し、あっさり自爆。(自滅3回目)
それでも彼女は、どこか満足げな表情で果てるのだった……


「いい働きだったステインボーイ。今回の件でお前も火遊びは怖いと思い知ったろう。これからは安全に遊ぶことだな」
「捨てておけ!」*7


……ちなみに現実のバートンとリサ・マリーも、次回作『PLANET OF THE APES/猿の惑星』の後で破局している。



「Wiki篭り、あの記事が建て逃げ同然で放置されている。すぐに行って追記・修正してこい!


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  • 初期のティム・バートン作品はひどく憂鬱なものが多い(オイスターボーイが仮装したのはあれだしね…) -- 名無しさん (2022-09-18 18:36:25)

#comment(striction)

*1 ちなみにバートンの出身地
*2 出典:ティム・バートン[映画作家が自身を語る] P210
*3 ちなみに、職員の左手をよく見てみると指の数が……
*4 ここに住んでいる子供は、絵本から「両眼に釘がささった男の子」「たくさん眼のある女の子」「まんまるチーズ坊や」「ジミー(みにくいペンギンの子)」が出演している
*5 この伏線は最終話で回収される
*6 絵本版での彼氏はスティック・ボーイという、黒焦げのジャック・スケリントンみたいなキャラクター
*7 こうして彼女は、前回の敵であるロボット・ボーイの中に捨てられる。ロボット・ボーイは絵本版でもよくごみ箱に間違えられると書かれている

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