登録日:2022/03/25 (金) 00:37:03
更新日:2024/06/18 Tue 11:43:28NEW!
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ドラマ フジテレビ サスペンス 叙述トリック 久本雅美 タイトル詐欺 マネージャー 鬱展開 蒔田光治 金曜エンタテイメント 追記修正のハードルが高すぎる項目 女マネージャー金子かおる 哀しみの事件簿1 藤田明二 赤い服の女
じゃあ…赤い服の女って…誰…!?
『女マネージャー金子かおる 哀しみの事件簿1』とは、フジテレビで放送されたテレビドラマ。
2002年2月8日に「金曜エンタテイメント」枠のサスペンスドラマとして放送された。
概要
女優やお笑いタレントとして活躍する久本雅美が主演を務めており、脇役を演じるキャストも実力者が揃っている。脚本は『TRICK』シリーズの蒔田光治が担当。
タイトルには「1」とナンバリングされている。実はこの時点で伏線が張られている。
サスペンスドラマでは定番の「警察関係者ではない別の職業の女性が、殺人事件に巻き込まれる中で活躍する」というストーリーになっている。
仲間の冤罪を晴らそうとする主人公の先を阻むかのように真犯人と思われる人物が暗躍し、その真相はサスペンス全体でもかなり推理難易度が高い。
あらすじ
売れっ子になりつつあるお笑いコンビ「スリートップ」のマネージャーを担当する金子かおるは、コンビの売り込みに力を注いていた。
一方、コンビの一人である半田俊治は恋人の本間映子との結婚を視野に入れていた。
コンビに大きな仕事が入った矢先、半田は映子と喧嘩をし、直後に彼女が何者かに殺害されてしまう。
殺人容疑で警察に逮捕された半田は、アリバイを主張したものの立証することができない。
半田の無実を信じたかおるは証人探しに奔走し、半田が事件当日に現場で見たという「赤い服を着た女性」をストーカーかつ犯人候補として注目する。
しかし、かおるが見つけた証言者達は次々と何者かに殺されてしまう……
コンビの大きな仕事=「紅・白対抗お笑いWAR!」の開催まで後一週間。それまでにかおるは真相に辿り着けるのか?
主な登場人物
- 金子かおる
演:久本雅美
本作の主人公。お笑いコンビ「スリートップ」のマネージャーとして働いている。
お節介な性格で口数が多い人物だが、安岡の抗議に対しても怖気ずに反論するなどかなり強気な一面もある。
半田が殺人の容疑を掛けられたことで彼の無実を証明しようと一人で独自に聞き取り調査などを行うが、無罪の証拠となりうる人物が次々と死を遂げていくことで苦戦する。
- 半田俊治
演:生瀬勝久
お笑いコンビ「スリートップ」のボケ役を務める男性。ヅラではない。
ノリの軽い性格で数々の女性と交流を持っているというトラブルメーカー気質で、FAXを利用したストーカー被害に合っていた。
映子との結婚を考えていたが、彼女と揉めて一時的に部屋を飛び出し、戻ってきた時に映子が死亡していたことで容疑者となってしまう。
- 鳥羽善次郎
演:板尾創路
お笑いコンビ「スリートップ」のツッコミ役を務める男性。
事件が起きた際に半田の冤罪の証明に必死なかおるの様子を見て、嫉妬のような言動を見せた。
半田のことは信じたいと言う一方で、怒ると何するか分からないと評していた。
- 本間映子
演:佐藤江梨子
半田の恋人の女性。
我儘で甘えん坊な一面もある性格で、食事に誘おうとしていた半田とちょっとした口喧嘩から軽く揉めてしまう。
出ていった半田が部屋に戻ってくるまでの間に何者かに殺害されてしまった。
- 安岡
演:木下ほうか
映子の付き添いの男性。本間が半田に性的な被害を受けたとして抗議をしにくる。
粗暴な言動や挙動が目立っているが、後に事務所や部下の様子などを見ると反社会的組織の人物の模様。
事件後は半田が容疑者となった事態に浮かれた様子を見せており、自身に疑いをかけてきたかおるに怒鳴った。
- 川畑真由美
演:南野陽子
半田に酔わされて性被害を受けたとして安岡と共に事務所に訪れた女性。赤いコートを着用している。
事件後にかおるにストーカーの正体として疑われるが、安岡曰くハワイ旅行に出かけたという。
- 偽募金のおばさん
演:川俣しのぶ
本名不明。半田が事件の日に街でぶつかってしまった女性。
アリバイを証言できる立場だった故にかおるに声を掛けられるが、実は偽募金だったことから自宅に逃亡する。
偽募金の件に関心がなかったかおるに、警察が来るまで自宅で待つよう頼まれるが、後にかおるが橋爪と共にアパートを訪ねると転落死していた。
窓から落ちた際にペンダントを手に握っており、かおるは橋爪の目を盗んで持ち帰った。
- 佐々木恵美子
演:田岡美也子
半田の封筒を間違えて持って帰ったビジネスマンが勤める「サクセス商事」の事務所に訪れていた女性。
実際のサクセス商事は詐欺業者だったことから投資詐欺の被害を受けたが、投資していた事実を夫に秘密にしていた都合から証言を拒否する。
かおるの説得を受け、「明日まで待ってください」と答えたものの、橋から身を投げて自殺(このことは夫の部下を通じてかおるに伝えられた)。
- バーテンダー
演:松澤一之
映子と揉めて彼女の家を出た半田が入った「SUR BAR」なるバーで働くバーテンダーの男性。
酒を求めてきた半田に対して提供開始時間の20分前という理由で拒否し、苛ついている様子を見て宥めようとした。
半田のアリバイを証明できるにもかかわらず「覚えていない」と証言し、後日階段から落ちて死亡。
余談だが、松澤一之は『古畑任三郎』の30話でも、「(見たはずの人物を)見ていないと答えるバーテンダー」を演じている。
- 橋爪
演:夏八木勲
北沢西署の刑事の男性。殺人容疑の掛けられた半田の取り調べを担当し、かおるにも事件の概要を説明した。
偽募金の女性の死後は、事件に深入りしないようにとかおるに警告する。
- 赤い服の女
演:???
事件当日に半田が目撃したという女性。
かおるは半田のストーカーかつ犯人であろうと推測している。
事件以降消息不明であり、かおるは何とかして正体を突き止めようとするのだが……
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「知ってんでしょ? あの女が何者か!」
「…あんたもよく知ってる人だよ」
衝撃の展開(ネタバレ注意!)
◇真犯人発覚
かおるが証言者を見つける度、かおるの先回りをするかのように彼らは謎の死を遂げていく。
遂にはかおるの元にも脅迫のFAXが送信され、赤い服の女も家の前に現れたことで、その存在をかおるは確信する。
面会室で赤いコートの女の存在を伝えるかおるは偽募金の女性が犯人から掴んだと見られるペンダントを見せるが、半田は弱気になっていてペンダントにも見覚えはなかった。
半田は橋爪の取り調べを受けるが、誰かを庇っているのではないかと疑われていた。
その後、赤い服の女の存在を信じた橋爪は、かおるに罠の提案を行う。
それは半田の無実を訴える活動で集めた署名から、FAXと同じ筆跡の人物を見つけるという作戦だった。
集めた署名の中に、「待ってます 赤い服の女」という言葉とサクセス商事のあったビルの住所が書かれているのを見たかおるは、それを橋爪に伝えずに1人でビルへ向かう。
ビルから出て来た赤い服の女の後を追い、別のビルの屋上に辿り着いたかおる。
赤い服の女の背後に近付いてアリバイの証言を求めた彼女は……ポケットからナイフを振り上げた。
女はナイフを躱し、かおると格闘になる。
しばらくして赤い服の女が振り返ると、その姿にかおるは驚愕とする。女は女装した鳥羽だったのだ*1。
かおるを責める鳥羽に尚もかおるは襲いかかろうとするが、その場に橋爪が現れた。
一連の事件の犯人は何と事件を調べていた金子かおるであり、事実を知った橋爪は鳥羽と共にかおるを誘き出す二重の罠を仕掛けたのである。
鳥羽に諭されるかおるだったが、かおるの頭には赤い服の女が何だったのかという疑問が離れなかった。
◇事件の真相
事件の夜、大きな仕事の前にトラブルが起きることを恐れていたかおるは、こっそり半田を尾行していた。
半田が怒った様子で玄関から出ていく姿を見たかおるは2人を別れさせるチャンスだと考え、映子の部屋に上がり込んで別れるように頼む。
その様子を見て半田が「口うるさいマネージャー」と語っていた人物であることを察した映子は嘲笑し、半田との結婚後にかおるをクビにすると語る。
激情したかおるは突発的に花瓶で映子を殴り殺して自分の指紋を消し、半田と同様に赤い服の女を見るも慌てて顔を隠して現場を去った。
殺害後にバーから飛び出してきた半田を偶然見かけたかおるは、バーテンダーに賄賂でアリバイの捏造を頼む。
かおるが捜査に乗り出した理由は、半田のアリバイを証明する体で無実の証拠を持つ証人を探しだして殺害するためであり、バーテンダーもそのことで脅迫してきたので殺した。
証人だった佐々木の自殺やサクセス商事が詐欺会社だったことなどは、幸運にもかおるの捏造に貢献した。
しかし、橋爪は偽募金のおばさんの死体の傍にあったペンダントが現場から消えた時点でかおるが犯人だと疑い、バーテンダーの殺害で確信に至った。
赤い服の女の存在を見せればかおるが動くと睨んだ橋爪は、かおるの家に偽の脅迫FAXを送り、鳥羽を女装させて彼女の前をうろつかせたのだ。
それでもかおるは、「赤い服の女は確かに現場にいたんです。私この目で見ました!」と橋爪に訴えた。
すると橋爪は現場のマンションにかおるを連れて行き、真実を見せつける。
事件当夜と同じ時刻になると、「彼女」が姿を現した……
ーーー赤い服の女の正体は、マンション付近のパチンコ屋の赤いネオンが照らした自分の姿が、壁の鏡に映ったもの…かおる自身。
他ならぬ自分自身の影に怯え、翻弄されていたという、皮肉な真相であった。
◇結末
釈放された半田は留置所でかおると面会する。2人が座る場所の位置は入れ替わってしまっていた。
半田はかおるが人殺しをした理由についてどうしても分からないと問うと、彼女からは「女のことなんて何もわからない」と返される。
かおるは半田に昔から異性として好意を抱いており、ずっと半田のそばにいたかったのである。
半田の家に送られていた脅迫のFAXの犯人もかおるであり、怖い思いをさせることで女遊びを控えて欲しいというと思いによる行動だった。
偽募金のおばさんの死体の付近に落ちていたペンダントは、窓から突き落とした時におばさんがかおるの首から引きちぎったものだった。
実はそのペンダントは10年前に半田からプレゼントされた物で、半田が下積み時代に初めて貰ったギャラで露天商から購入した安物だった。
玩具のような代物だったがかおるにとっては宝物であり、ペンダントを見せたのは半田がそれを思い出せばかおるが犯人だと分かるという曰く「出血大サービス」だったようだが、半田は気が付くことがなかった。
半田はかおるに「少しは人生楽しまないと、このままだと一生恋もせずに終わる」とアドバイスしていたが、かおるは既に半田に恋をしていたので人生を楽しんでいた。
かおるは半田に出演するイベントへの激励を投げかけ、キャンセルしなかったことだけは自分がマネージャーでよかったと思うようにと言った。
時間が来て面会室から立ち去ろうとした半田は、彼女に向かって何か強い感情が秘められたような表情で見つめるが、かおるからは早く相方の元に行くように促され、無言で立ち去った。
恋人を奪われて信用する人に裏切られた絶望なのか、それとも彼女の歪んだ愛に気が付かなかったことに対する後悔なのか、もしくは全てが複雑に混ざって何とも言えない表情になるしかなかったのか…。
半田が立ち去った面会室で、かおるは一人絶望の表情を浮かべ、泣き崩れたのだった。
本作の評価
「主人公(探偵役)が犯人」という、この手のドラマとしては異例の結末を迎えているのが本作の最大の特徴。
このドラマの存在自体がある種のトリックであり、作品には(どんでん返しを狙って)視聴者を騙すための様々な罠が散りばめられている。
実際、主演の久本はバラエティタレントのイメージが強く、同枠では比較的コメディタッチな2時間ドラマの主演を何本か担当していたことも一種の罠になったと言っても良いだろう。
劇中における犯人=かおるの描写に嘘は無く(都合の悪いシーンを省いただけ)、映像では難しいとされる叙述トリックを見事に成功させている。
主人公が犯人という前提で作品を再度視聴すると、作中の描写が全く別の意味を持ってくるので、再視聴が推奨できる作りである。
本作最大の罠と呼べるのが作品タイトルで、「1」というナンバリングを施すことによって、さも続編によるシリーズ化が構想されているかのように錯覚させている。
視聴者は「シリーズ作品」として視聴するため、主人公が犯人という可能性を考えにくいのだ。
実際はこの作品の結末的に続編など無いし、続編を作れる可能性も潰れている*2
要はある種のタイトル詐欺なのだが、数字を付けただけで嘘はついておらず、視聴者サイドは勝手に騙されているので、これも叙述トリックと言えよう。
一方でサスペンスドラマにおいて「最初からシリーズ化を見据えてナンバリングを施されている」オリジナル物は殆ど無く、サスペンスドラマに詳しければ「最初からナンバリングされている」事の不自然さに気付けるという仕掛けにもなっている。
また、上記の通りかおるが逮捕されて話は終わっているが、「哀しみの」などというワードが付いていることから、出所した彼女がまた同じような事件を起こすことを暗示しているともとれる*3。
主人公を含めて関係者に救いがなく、ラストシーンも絶望的な雰囲気で終わるという後味の悪さも(それまでのコミカルな雰囲気との落差もあって)光る。
このように様々なトリックや衝撃のシナリオは放送当時の視聴者に衝撃を与えており、現在でも異色のサスペンスドラマの一つとして話題に上がる。
単に「他のサスペンスではやらない結末だから」と言うだけではなく、ミスリードの巧みさなどからミステリー作品としての完成度を評価する声も多い。
2022年現在ソフト化はされていないが、『BSフジサスペンス劇場』などで再放送されることがあるので、視聴の機会は定期的に存在する。
追記・修正は『女マネージャー金子かおる 哀しみの事件簿2』の制作が決定してからお願いします。
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- いや~この記事が出来ましたか!自分が子どもの時に金曜エンタテイメントで見た作品の中で一番衝撃的だったやつ。ここから「そして誰もいなくなった」や「アクロイド殺し」などの叙述トリック作品にハマった原点。 -- 名無しさん (2022-03-25 03:45:00)
- リアルタイムで視ていました。もしかしたら似たような作品はあるかもしれませんが、サスペンスドラマでこれをやったというのは画期的ですね。 -- 名無しさん (2022-03-25 18:23:56)
- 本文にもあるように、コメディだと思ってたらまさかのガチサスペンス。文字通りの衝撃の結末で、本当にこれで終わるの!?ってしばらく呆けてたなあ…。 -- 名無しさん (2022-03-25 23:12:54)
- 久本雅美の起用すら罠って凄まじすぎるよねこれ… -- 名無しさん (2022-03-27 00:06:45)
- ↑久本のバラエティータレントとしてのキャラクターが「恋と男に飢えてる年増」だから動機の衝撃にも一役買ってるという -- 名無しさん (2022-03-27 08:14:09)
- 単発だからこそできる、サスペンスドラマとしてはまさに傑作のひとつに上げても良いと思う。 -- 名無しさん (2022-03-27 11:56:49)
- TV叙述トリックの伏線の貼り方も台詞ではなくドラマとして映像的なのも良かった。 -- 名無しさん (2022-03-27 20:53:13)
- 男性お笑いコンビでツッコミの方が女装って珍しいな -- 名無しさん (2024-04-04 12:39:10)
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*2 殺人容疑をかけられて服役していた主人公が仮出所する場面で始まる「さよなら!おばさんデカ 桜乙女の事件帖 ザ・ラスト」のようなケースもあるが、これは「濡れ衣を着せられた主人公が潔白を証明するために戦う」という話なので、本作とは事情が異なる
*3 もっとも、犯行人数(3人殺害、1人未遂)や被害者に落ち度があまりないこと(バーテンダーは自業自得だが)を考えると、極刑に処される可能性は高い。
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