かちく(ねこぢる)

ページ名:かちく_ねこぢる_

登録日:2021/12/13 Mon 02:43:51
更新日:2024/06/17 Mon 11:51:47NEW!
所要時間:約 8 分で読めます



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不条理 残酷 ブラック カースト 無邪気 家畜 名作 日常 漫画 アニメ ねこぢる 山野一 ガロ系 かちく ねこぢるだんご ねこぢる劇場



ぼく いっぺんでいーから

ごはんたべて おふとんにねてみたいな



【概要】

月刊漫画ガロ出身の漫画家『ねこぢる』が発表した作品の一つ。


現在入手できる単行本では「ねこぢるだんご」「ねこぢる大全 上巻」に収録されており、電子版もある。
アニメ版「ねこぢる劇場」にて映像化され、忠実に再現された。


【登場キャラクター】

この漫画の動物たちは人語を話し、人間社会に混じって生きている。生活レベルも人間並み。
ブタやニワトリなども同様だが、家畜としての扱いは残っている。


・にゃーこ

ネコの女の子。
庭付きの小さな一軒家に住んでいる。


ぶたろー達とも平等に接し、プリンを分けてあげるなど、優しい所もあるが基本的にドライ。



・にゃっ太

弟ネコ。
まだ幼く「にゃ」しか喋れない。


食に節操がなく、食べ残しのプリンを迷わず食べた。



・にゃす江

母ネコ。通称おかーちゃん。
しっかり者で、動物の中では比較的良識がある。


しかし、ブタは徹底的に家畜として見ている。



・にゃん五郎

父ネコ。通称おとーちゃん。
一日中、焼酎をラッパ飲みしながら家でゴロゴロしているだらしないアル中。
酒以外には関心が薄く、全く喋らないため何を考えているのか分からない。


ただ、にゃす江には頭が上がらない模様。



・ぶたろー

オスの仔ブタ。
にゃーこ達は綺麗な服を上下ともに着ているが、彼はボロボロのTシャツしか着ていない。


にゃーこ家の庭で、一家もろとも飼われている。
家は小屋ですらなく、地面を柵で囲っただけ。
広さも家族全員がギリギリ収まる程度。


ブタの扱いの悪さを気にしており、一日だけでも人並みの生活を送る事を夢見ている。



・弟ブタ

ぶたろーの弟(妹?)。新しめの涎掛けをしている。
まだ幼く「ぶー」しか喋れない。


にゃっ太と同じく、食に節操がない。



・父ブタ/母ブタ(親ブタ)

ぶたろー達の両親。服は着ていない。
他の動物は二頭身にデフォルメされているが、この二体はブタそのまんまの見た目。
父ブタには不精ヒゲらしきものが生えている。


常に沈鬱な表情をしながら柵の中で寝そべっており、どんな事があっても反応は「……」で、一切何もしない。
(アニメ版では「あ〜」「う〜」と、呆けた相槌をしている。)


にゃん五郎が元々の性格で喋らないのに対し、こちらは思考停止して黙っているように見える。



【内容】

家の庭で鬼ごっこをしている、にゃーこ姉弟とぶたろー兄弟。
鬼役になったブタ達は、座敷へ逃げたネコ達を追いかける。
しかし…



ばちーん!!

「「ぶきー!」」



◆「ダメでしょーぶたを座敷にあげちゃー」



と、にゃす江の手によって、ぶたろー達は乱暴に庭へ叩き返される。
親ブタは近くで見ていたが「……」と動かない。



◆「何回言ったら分かるの!?」



にゃーこ姉弟はお仕置きにゲンコツをされてしまう。
その後、おやつにプリンを渡される。



叱られた事が面白くなく、顔をしかめながらプリンを食べるにゃーこ姉弟。
それをとても羨ましそうに見つめる、ぶたろー兄弟。
彼らはプリンを見たことも無かったのだ。



◆「なにそれ?」 ◆「ぶー」
◆「プリン」


◆「おいしいの?」
◆「おいしいよ」 ◆「にゃ」


◆「どんなあじ?」
◆「あまいよ たべたい?」
◆「たべたいたべたい」 ◆「ぶーぶー」



汗をかくほど興奮するブタ達。
にゃーこが冷蔵庫から新しいプリンを見つけてきて、渡されると



◆「うわーぼくこんなにおいしいもの うまれてはじめてたべたよ!!」
2匹は大喜びでガツガツと食べる。



だが、



「あっ!」

びくっ



◆「ぶたにプリンをやる人がありますか」



にゃす江に見つかり、にゃーこ姉弟は責められてしまう。



◆「だってー……」



◆「あの…こ…これ かえすよ」
ぶたろー達は、申し訳なさそうに皿を差し出す。



それを見たにゃっ太が、すかさず食べ残しを口にするが



がしゃーん

◆「あー汚い ぶたのたべのこしをっ」



即座に、にゃす江が皿ごとはたき落とすのだった。
親ブタは「……」とやはり何もしない。





その夜、縁側沿いの座敷で、布団に入って熟睡するにゃーこ姉弟。
ぶたろーは地べたから、それを見上げる。



弟はぐーぐー寝ているが、ぶたろーは思うことがあったのか眠れておらず、両親に尋ねる。



◆「ねえ とーちゃんかーちゃん」
◆「……」


◆「どーしてぶたはじべたでねなくちゃいけないの?」
◆「……」


◆「どーしてぶたはごはんじゃなくてエサなの?」
◆「……」


◆「ぼく いっぺんでいーから ごはんたべて おふとんにねてみたいな」
◆「……」



痛ましい表情を浮かべながら訴えるものの、相変わらず親ブタは無反応だった。
ぶたろーは涙を溢しつつ眠りにつく。



…………



そして翌日。
今日も庭で遊ぶにゃーことぶたろー達。



軒先で酒を飲んでいるにゃん五郎に、にゃす江が話し掛ける。



◆「ちょっとお父さん 大きい方の仔ぶたをお願いしますよ」



返事もせず、ゲップをしながら飲み続けるにゃん五郎。



◆「全く昼間っからお酒ばっかり飲んで 何の役にも立たないんだから 今夜はトンカツですからね」



棒で小突いて釘を刺すにゃす江。



トンカツと聞いて、にゃーこ達は舞い上がる。



◆「わーい やったーやったートンカツだあー」



そして、やっぱりトンカツを知らなかったぶたろーは、にゃーこに尋ねる。



◆「ねえトンカツって何?」
◆「にくに パンこつけて あげたの」


◆「へえーにくに…おいしい?」
◆「おいしいよ」


◆「プリンよりおいしい?」
◆「おいしいよ」



あれだけ美味しかったプリン以上と聞いて、ぶたろー兄弟は
◆「へえー たべてみたいなー」
と、つい涎を垂らす。



そこへ、背後からにゃん五郎が近づいてきて……



ぐいっ



突然シャツの衿を掴まれ、持ち上げられるぶたろー



◆「えっ あっ なんですかァ?」



にゃん五郎が答えようとしないため、不安そうににゃーこに聞く。



◆「プリンたべたこと おこってるのかな?」
◆「しらにゃい」



◆「わー ごめんなさい ごめんなさい」 



じたばたしながら謝るが、ぶたろーは小屋へ連れていかれ、状況が分かっていないにゃーこ達も後からついていく。
その様を「……」と見つめる親ブタ。



どたっ



ぞんざいに床へ放られるぶたろー。
そして、にゃん五郎は包丁を取り出す。



ギラッ



◆「わーごめんなさいゆるしてください」



ぶたろーは泣きながら懇願する。だが……



  ずとっ

ずとっ  

「あー」



そのまま黙々と屠殺されてしまった。



◆「あー にゃーんか すごいにゃー」
◆「にゃー」
◆「ぶー」



一部始終を見ていたにゃーこ達は、弟ブタも含め他人事全開の反応をしながら、じーっと眺めていた。



ぶたろーだったものを揚げるにゃす江。
にゃーこ、にゃっ太はそれを見て



◆「トンカツって ぶたのしたいだったんだ」
◆「にゃー」
と、淡々とコメントする。



そして食卓にトンカツが並び、
◆「ぶたろーはのろまだけどおいしーにゃー」
◆「にゃ」
先ほどまで遊んでいた相手を、平然と口へ運ぶのであった。































◆「ん?」



にゃーこは、縁側から興味深々に見つめる弟ブタに気づく。



◆「たべる?」
◆「ぶー♪」


◆「おかーちゃんに みつかんにゃいよーに たべるんだよ」
◆「ぶー」



ご機嫌でトンカツを受け取った弟ブタ。


一心不乱に交尾をしている両親ブタの裏へ隠れながら、彼がサクサクと幸せそうに喫食したところで、この話は幕を閉じる。



ぶたろーの事は、もう誰も気にしていなかった。



【余談】

  • 作者は実際に「トンカツって豚の死体だよね」と夫(漫画家:山野一)に話した事がある。


  • これより前のエピソードにも「ぶたお」というエサ(おから)を食べて生きていたブタが登場していた。味噌コンニャクをにゃーこに奢ってもらった際”味がついてる事“自体に感動していたので、ぶたろー達の食べているエサも無味と思われる。


  • 別のエピソードに「ぶ太郎」、「ブタ郎」という、名前の似たブタが登場する。どちらも家畜ではないが、惨死レベルでロクな目に遭ってない。


  • 他にも色々なブタが登場するが、人間だろうと無惨に死ぬねこぢる作品に於いても、一層悲惨に描かれている。ニワトリも同様。



追記・修正はトンカツを食べながらお願いします。



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  • にゃーこが弟ブタにトンカツあげるところがちょっと心温まる風なのが余計に怖かったり切なかったり -- 名無しさん (2021-12-13 03:21:40)
  • ↑そうそう。意地悪じゃないんだよね -- 名無しさん (2021-12-13 03:28:06)
  • 残酷さばかりが目につくけど作風とひしては基本ドライだよね… -- 名無しさん (2021-12-13 10:41:31)

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