登録日:2021/08/04 (水) 18:13:41
更新日:2024/05/30 Thu 13:58:14NEW!
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ブラックコメディ ロバート・ゼメキス ブルース・ウィリス 映画 洋画 不老不死 メリル・ストリープ ゴールディ・ホーン 永遠の若さ
Siempre Viva!“永遠の生命を!”
『永遠に美しく…(Death Becomes Her)』とは、1992年に公開された米国ユニヴァーサル制作の映画。
監督はバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズやフォレスト・ガンプなどでお馴染みのロバート・ゼメキス。
●目次
概要
本作は『いつまでも若く、美しくありたい』という誰もが心に秘めている欲望を皮肉ったブラックコメディである。
原題は意訳すれば『死こそ彼女にふさわしい』となる。
『若返りの薬』を巡る人々の愛憎、葛藤、悲哀がこれでもかと描かれ、一応コメディであるのでギャグっぽく表現されてはいるものの、かなりドギツい描写も多い。
本作のSFXはスター・ウォーズやジュラシック・パークでお馴染みILM(インダストリアル・ライト&マジック)が担当し、オプチカル・プリンターでの合成を行った最後の作品となり、同年のバットマンリターンズやエイリアン3といった強敵を押し退けてアカデミー視覚効果賞を獲得、見事に有終の美を飾った。
永遠に生きる、とはどういうことなのか?いつまでも死なない、ということは本当に幸せなのか?という問いは本作を見ると即答できなくなる、かもしれない。
地上波で放送される機会も多かったので鑑賞した経験のあるアニヲタ諸氏も多いのではないだろうか。
ストーリー
1978年の雨の日……。
かつては人気があったが今や落ち目の女優、マデリーン・アシュトン。
ある日の舞台公演後、楽屋に友人だったヘレン・シャープが婚約者の美容外科医アーネスト・メンヴィルを連れ立って訪ねてくる。
表向きは親しげな挨拶を交わすマデリーンとヘレン。しかし、ヘレンには別の思惑があった。
ヘレンは昔から付き合った男を何人もマデリーンに寝取られており、そこでアーネストがマデリーンに心を奪われないかテストのために連れてきたのだ。
それを聞いたアーネストは笑ってヘレンに答える。
「いいかい?僕はマデリーン・アシュトンなんかにこれっぽっちも興味はないんだ」
が、その舌の根も乾かぬうちにアーネストはマデリーンと結婚してしまう。
幸せそうにチャペルから出てくる二人をヘレンはハンカチを握りしめて見つめていた。
その手から血が滴り落ちるほど強く……
それから7年後。
アーネストを寝取られたショックでヘレンは廃人同然となり、別人のように激太りした姿になっていた。
精神病院に収容されて治療を行うも一向に改善の余地は見られず、医師も匙を投げてしまう。
そして医師の言い放った「マデリーンのことは忘れなさい!徹底的に消してしまうの!」という一言を聞いて、ヘレンの眼に危険な光が宿った。
「そうよ……アイツを消せばいいんだわ……!」
それからさらに7年後……。
ビバリーヒルズに大きな邸宅を構えるも、すっかり夫婦仲の冷え切ったマデリーンと妻の浪費癖を支えるために死体の修復師へと落ちぶれていたアーネストの元へパーティーの招待状が届く。
内容はしばらく会っていなかったヘレンの新著出版記念パーティー。
著書のタイトルが『Forever Young(永遠の若さ)』であることを鼻で笑うマデリーンだったが、パーティーに出席する前にエステへ訪れ、そこで店長から『リスル』という人物の屋敷を紹介してもらう。
そして、パーティー会場で久々に対面したマデリーンとヘレンだったがヘレンはダイエットに成功した上に見違えるほど美人になっており、50歳とは思えぬほど若々しさを保っていたのだった。
自分の老いを痛感していたマデリーンは大きなショックを受け、追い打ちとばかりに不倫相手の若い男にも振られたことで涙に暮れる。
その時、エステ店の店長から教えてもらった『リスル』という人物のことを思い出し、半信半疑ながらその屋敷へと向かい、そこで怪しい雰囲気を漂わせた女性と出会う。
彼女こそ店長が言っていた『リスル』であり、会話の後で一つの小瓶に入った薬を見せられる。
リスル曰く小瓶の中身は霊薬であり、飲めば老化をたちどころに止め、衰えを退散させてしまうというのだが……。
登場人物
※吹き替えはソフト版/テレビ放映版
- マデリーン・アシュトン
演:メリル・ストリープ/吹き替え:池田昌子/一柳みる
本作における主人公で、ストーリーは彼女の視点を中心に進んでいく。
かつては人気女優だったもののすっかり落ち目であり、冒頭でも公演の最中だというのに次々と客は退室していく有り様。
学生時代から付き合いのあるヘレンとはお互い『MAD(気狂い)』『HELL(地獄)』と悪口で呼び合う仲。
ヘレンからアーネストを寝取るも、元々愛情があって結婚したわけではないため、7年後にはすっかり夫婦仲は冷え切っている。
自分がどんどん老いて容姿が衰えていくことに怖れを抱いており、整形手術や身体に悪影響がある美容措置なども厭わぬほど若さと美に強く執着している。
そして、久しぶりに会ったヘレンが自分と同じ50歳にもかかわらず若さを保っていることに衝撃を受け、リスルの屋敷で霊薬を飲んで若返りに成功する。
演じたのはこの時点で2度のアカデミー賞に輝く押しも押されもせぬ大女優メリル・ストリープ。
当時43歳だがとてもそうは見えない美貌を有しており、老けメイクで50歳のマデリーンを演じている。
ネタバレ
若さを取り戻した自分に酔いしれて帰宅した後にアーネストと口論となり、手ひどく罵倒したことでカッとなったアーネストに首を絞められて階段から落ち、首の骨を骨折する。
が、首が180度回転しているにもかかわらず、平然と起き上がり、そのままアーネストと会話を交わすなど常軌を逸した様子を見せる。
すぐに病院に運び込まれて診察を受けるも、
- 手首と首の骨が折れているにもかかわらず、触られても痛くも痒くもない
- 体温が25℃以下
- 心臓が停止、脈拍も一切ない
等々、肉体的には死人同然となる。
- ヘレン・シャープ
演:ゴールディ・ホーン/吹き替え:井上瑤/藤田淑子
マデリーンと並ぶもう一人の主人公。
彼女とは学生時代からの付き合いだが、その頃から恋人を寝取られるという仕打ちを受けている。
婚約したアーネストの愛情をチェックするためマデリーンに会わせたが再び婚約者を寝取られ、結婚までされる。
そのショックで廃人同然となって激太りした挙げ句に精神病院送りになるも、胸の内にはマデリーンへの復讐だけをひたすらに思い描いていた。
後に人気作家となり、容姿も別人のように痩せ、同い年のマデリーンと比較しても驚くほどの若さを保っているが、未だ胸の内にはマデリーンへの復讐の炎が燃え上がったままである。
演じたゴールディ・ホーンは当時47歳だがメリル・ストリープ同様にとてもそうは思えないほどの美魔女ぶりを披露している。
ネタバレ
実は1985年10月26日*1にマデリーンと同じく霊薬を飲み、若返っていた。
その美貌でかつての婚約者であるアーネストを誘惑して抱き込み、マデリーンの殺害計画を練る。
着々と根回しと準備を済ませるも、実行犯役を任せたアーネストの様子を確認しに来た際に、生き返ったマデリーンにその場を見られてしまい、至近距離から猟銃で撃たれてしまう。
だが、腹に風穴を開けられてプールに落ちても平然と起き上がり、マデリーンとアーネストを仰天させた。
二人揃って死体となった後はシャベルを使った殺し合いに発展するものの、お互い不死身の身体のために決着が付かず、そうしているうちに双方疲れ果てた末にバカバカしくなって手を止める。
そしてヘレンは昔マデリーンを『安っぽい女』と呼んでお茶会に招待しなかった事を、そしてマデリーンはヘレンを苦しめるためだけに恋人たちを奪い取ってきた事を認め、
お互いに謝罪の言葉を述べて和解するのだった。
- アーネスト・メンヴィル
演:ブルース・ウィリス/吹き替え:羽佐間道夫/樋浦勉
高名な美容外科医でありヘレンの婚約者だったが、マデリーンに一目会っただけで心を奪われ、ヘレンを裏切る形でマデリーンと結婚する。
その後はマデリーンとの仲も冷え切り、女優としての仕事はないくせに浪費癖だけはある彼女のために死体修復師の仕事で稼いでいた。
妻との愛のない生活に疲れ切っており、アルコール依存症気味でおまけにマデリーン曰く「フニャフニャ」。
妻とかつての婚約者が揃って医学の常識を超えて動き回るのを見て「奇跡だ!」と喜んでいたが霊薬のせいだと知るとガッカリしていた。
死体修復師としても一流で、「埋葬するのが惜しい」と遺族に言わしめるほどに遺体を生き生きとした見た目に修復し、首が折れたマデリーンと腹に風穴を開けたヘレンの身体を見た目には全くわからないほど綺麗に補修できる。
が、「遺体の修復は身体にスプレーでペイントする」といったことを遺族の前で言ってしまうなど、マデリーンとヘレンの陰に隠れているがなかなか性格に問題あり。
中の人は言わずもがなダイ・ハードのジョン・マクレーン刑事で有名だが、今作ではタフな刑事とはまるっきり逆の神経質な医者を演じている。
ネタバレ
死人となったマデリーンとヘレンが喧嘩を経て仲直りをしたが、彼はもはやどちらも愛する事はできず「君たちはもう死体だ」と二人から離れて別の場所で新しい人生を生きていくことを宣言する。
だが、アーネストの修復技術を目の当たりにした二人は「彼が傍にいてくれれば、今後身体が痛んだときも修復してくれる」と考え、
アーネストを気絶させたうえでリスルの元へと連れて行き、彼に霊薬を飲ませようとする……
- リスル・フォン・ローマン
演:イザベラ・ロッセリーニ/吹き替え:高島雅羅/駒塚由衣
大きな邸宅に住んでいる謎の女性。やたらと露出度の高い服を身に纏っている。
正体は選ばれた人間のみが所属できる秘密クラブの主宰であり、多数の男たちを手下として従え、若さを求めてきた者へ金銭と引き換えに秘密の霊薬を飲ませて永遠の若さをもたらしている。
実年齢は71歳だが霊薬のおかげで20代にしか見えない美貌を持つ。
演ずるイザベラ・ロッセリーニは名女優イングリッド・バーグマンを母に持つ映画一家の出身。
出演当時は40歳だが主演の二人に負けないほど若々しい。
- シャガール
演:イアン・オギルビー/吹き替え:伊藤和晃/納谷六朗
マデリーンが懇意にしているエステ店の店長。
ナヨナヨした動作と喋り方が特徴。
「美しさの為ならお金なんか惜しまない」というマデリーンの言葉を耳にし、リスルの住所を紹介した。
自身も秘密クラブのメンバーであるらしく、会合では司会を務めている。
- 秘密クラブのメンバー
リスルが主催する秘密クラブのメンバーたち。
全員がリスルに認められ、霊薬を飲んで不老の存在となっている。
また、世間一般には死んだと思われていたが、実は歳を取らないことを気づかれないように死を偽装していただけだったというスターも数多い。
死を偽装したメンバー
- アンディ・ウォーホル
アメリカのポップアートの旗手。銀髪のカツラが特徴。
史実では1987年に58歳で死去。
- マリリン・モンロー
アメリカでもっとも人気のあるセックスシンボルとして有名なブロンド美女。
史実では1962年に36歳で死去。
- グレタ・ガルボ
映画界がサイレントからトーキーに移行する時期に活躍した伝説的女優。
「I want to be alone(一人になりたい)」と言い残し、人気絶頂期に引退。
史実では1990年に84歳で死去。*2
- エルヴィス・プレスリー
キング・オブ・ロックンロールと称された伝説的歌手。
史実では1977年に42歳で死去。
若くして亡くなったことと密葬だったために度々生存説や目撃証言が持ち上がるが本人の弁によるとそれはふざけて人前に出ていたから、らしい。
- ジム・モリソン
ロックバンド、ドアーズのボーカリストにして詩人。
史実では1971年に27歳で死去。
- ジェームズ・ディーン
『理由なき反抗』などで知られる映画俳優。カーレーサーとしても活躍した。
史実では1955年に24歳で死去。
霊薬
ガラスの小瓶に入ったピンク色の液体。
リスルに認められた者だけが飲むことができ、飲めば漏れなく秘密クラブのメンバーとなって会員証であるバッジをもらえる。
瓶の中身を飲み干せば老化が止まり、肉体は全盛期の年齢に保たれる。
加えて小さな傷ならばたちどころに治ってしまうなど、治癒能力を高める効果もある模様。
認められるためには代金を払わなければならず、相手によって上下するらしいがヘレンは全財産を差し出し、浪費家のマデリーンが驚いてしまうほどに高額。
また、ルールとして霊薬と秘密クラブの存在を決して公にしないこと、何年経とうが一向に歳を取らない以上、いずれは世間から不審に思われてしまうため10年が経過した後に偽りの死を公表するなどして世間から隠遁することを要求される。
そして、飲んだ後はリスルから「くれぐれも身体を労り、決して傷つけないように」との警告が発せられるのだが……。
警告の意味
霊薬を飲めば歳を取らなくなり、決して衰えない若さを手に入れる。
だが、霊薬の効果はそれだけではなく、不老の効果と共に不死の効果ももたらすものだった。
この[[不死>アンデッド]]とは言葉通りなにがあろうと死ななくなる、というもの。
つまり、寿命によって死ぬことはないものの、不慮の事故や他人から危害を加えられるといったなんらかの外的要因で致命傷を負えばそのまま身体は死亡し、
その後は死んだ身体のままで永遠に生き続けなければならなくなるというものだった。
身体が死ぬと痛覚も喪失するらしく、マデリーンは首の骨が折れて頭が180度回転しても、ヘレンは身体に風穴を開いても平気で立ち上がり、一切痛がる素振りを見せなかった。
肉体的には完全に死んでおりゾンビと言って差し支えないものの、二人とも霊薬の効果で動くことも喋ることもできる。
だが、身体は死体そのものであるため、傷つけば治ることはなく、折れたり破損したりすれば適切な処置をしなくては動くこともままならない。
アーネストの死体修復の技術があれば二人の身体は傷ついてもメンテナンスをすることができる。しかし彼は中年であるため先は短く、そう遠くないうちに死んでしまう。
そのため、二人は共謀してリスルに事情を話し、アーネストに霊薬を飲ませて自分たちのために永遠の命を与えようとするのだった。
リスルにとってもアーネストは是非手元に置いて置きたい逸材であり、彼に不老不死の誘惑を囁くが…
さあ飲むのです!Siempre Viva!永遠に生きる!
「……生きてどうなる?永遠になんか生きたくない!響きはいいがどうすればいい?うんざりしたら?寂しくなったら?誰と一緒に過ごす?マデリーンとヘレンか!?何か起こったらどうする?撃たれでもしたら?誰かに突き落とされ、階段から転げ落ちでもしたら!?」
「でも歳は取らない!」
「ハッ!だが誰でも死ぬ!私はみんなが死ぬのを見なきゃならない!……お断りだね!これは夢というより悪夢だ!こんなものを売るのはやめろ!」
マデリーンとヘレンによってリスルの屋敷へと連れてこられ、甘言と共に霊薬を飲むことを促されるアーネスト。しかし、死体となってまで醜く争う愛した女たちの姿を目の当たりにしていたアーネストは強く拒否する。
不老となることを拒んだ以上、このままにしてはおけないと追ってくるリスルの手下や番犬たちから何とか逃れ、アーネストは屋根伝いに屋敷から脱出しようとするが、途中で足場が崩れ宙づりになってしまう。
駆けつけたマデリーンとヘレンにもどうすることもできず、このままではアーネストは墜落死してしまう。
「アーネスト!あの霊薬まだ持ってる?落ちてもそれ飲んでれば死なないわ!飲みなさい!飲まないと死ぬわよ!」
「落ちて首がもげても、貴方なら自分でつけられるのよ!」
アーネストは逃げる際にリスルから渡された霊薬の入った小瓶をそのままズボンのポケットへ入れてきてしまったのだ。
マデリーンとヘレンの説得、そして目前まで迫った死への恐怖から小瓶を取り出し、蓋を開けて口へと近づけるが……。
「飲んで!飲みなさい!」
「さあ、飲みなさい!」
「「飲めっ!!!」」
「貴方が必要なのっ!!」
この期に至っても自分を死体修復のための道具としか思っていない二人を目の当たりにしたアーネストは口に運びかけた小瓶の蓋を閉め、手を放した。
「すまないと思うが……自分たちでやってくれ」
小瓶が宙を舞い、地面に落ちて砕ける音。そしてその直後、アーネストも絶叫と共に落下していく。
だが、落ちた先はステンドグラスであり、そこを突き破ると下はプールだったためにアーネストは九死に一生を得る。
そのまま秘密クラブメンバーの車を奪い、屋敷の外へと走り去っていくアーネスト。
マデリーンとヘレン、そしてリスルが気づいた時には手遅れだった。
アーネストは逃げ切ったのだ。
行方を捜し、慌てて家へ戻ってみるマデリーンとヘレンだったがもちろん姿は影も形もない。
もはやアーネストがどこへ行ったか知るのは不可能だった。
そうこうしているうちに身体へ施した塗装が剥がれていく。
アーネストがいなくなってしまった今、二人の身体の修復作業ができる者は誰もいなかった。
ヘマをしてしまったためにリスルの秘密クラブへ戻ることもできない。
頼りにできるのはお互いだけ。
つまり、これから二人は離れることもできず永遠に自分たちの身体を修復して生きていくしかないのだった。
「想像もしなかったわ、貴方とあたしが一緒にやるなんて……頼りにし合って、身体をお互い塗り合うの……昼も夜も……」
「そう、永遠に……」
「永遠に……」
二人の泣き笑いが夜のメンヴィル邸に響き渡った。
「どうかくれぐれも、追記・修正をなさいますように……」
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37年後…
教会ではたくさんの人々がいる中でアーネスト・メンヴィルの葬儀がしめやかに行われていた。
彼は50歳になってから美しい妻と出会い結婚し、息子二人と娘四人に恵まれ、様々な活動に精を出し、幸せな生活を送り、最期は息子たちや孫たちに囲まれて穏やかに死んでいったという。
そしてその教会の最後列の席に、喪服姿のマデリーンとヘレンが座っていた。
ようやくアーネストの行方を探し当てたが、彼は死んでいたのだ。
かつて愛した男の死にヘレンは涙するが、その涙を拭うと顔の塗装が剥がれてしまう。
修復用のスプレーを探すも見当たらず、二人は教会の外へと出ようとする。
長年に渡って見様見真似で身体の修復と塗装を繰り返したせいで動きはぎこちなく、顔は肌色のペンキを塗りたくったせいでケロイドのようになり、まるでマネキンのように歪な二人はまともに歩くことすら苦労する有り様。
その時、牧師の声が教会に響き渡った。
「この男は、彼なりの方法で『永遠に生きる』秘訣を習得したのだと思います。その秘訣とは私たち、彼の友人の心の中で生きること。そして永遠の青年でいる秘訣は、あそこにいる彼の子供たちや孫たちの人生の中で生きること。これも私の意見ですが、我らの愛するアーネストは、真に『永遠に生き続ける男』だと思うのです」
それを聞いたマデリーンは吐き捨てるように言う。
「くだらないことをよくもまぁベラベラと……」
そのまま言い合いをしながらヘレンが階段を降りようとすると、失くしたはずの修復用のスプレーを踏んでしまい、階段から転げ落ちそうになる。
助けを求めるもマデリーンはニヤニヤと意地悪そうに笑い、腹を立てたヘレンは道連れにマデリーンの腕を掴み、二人は諸共に階段を転がり落ちていく。
そのまま地面に激突すると、継ぎ接ぎだらけの二人の身体は無惨にもバラバラになってしまった。
首だけになった二人が目を見合わせる。
「車どこに停めたか覚えてる?」
それでも、二人は生きていた。
そして、これからも永遠に生き続ける……。
END
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▷ コメント欄
- テンプレぐらい守ってくれよマジで。誰かが直してくれるからいいやという考え方はよくない -- 名無しさん (2021-08-04 18:52:10)
- なお、海外の予告編では作曲家のダニーエルフマンとゼメキス繋がりでテイルズフロムザクリプトのテーマが劇中曲の代わりに使われていました。 -- 名無しさん (2021-08-04 19:16:04)
- あまり履歴流れるのよろしくないので、未完成で作成しちゃった場合数回の編集で完成できる見込みがないなら一度相談所に自分で報告して削除してもらった方が -- 名無しさん (2021-08-04 19:25:14)
- 肉体の損傷は他の不死の人間にも重大な問題だろうから、リスルに専門家いてもおかしくないんだけどな -- 名無しさん (2021-08-05 00:12:45)
- 不老不死の不要さや愚かさを描写した映画かな -- 名無しさん (2021-08-05 00:29:39)
- 不死っていうかゾンビだなこれ!?不老不死は好きな時に解除できるに限るわ… -- 名無しさん (2021-08-05 00:39:58)
- 最後二人が転んで崩れるシーンは強烈に焼き付いてるなぁ…というかそこのシーンが印象的過ぎてブルース・ウィリス出てたの完全に覚えてなかったわ -- 名無しさん (2021-08-05 01:13:51)
- あぁ、やはりこれだったか「不老不死になったけど、首だけになった映画」は。昔はよくテレビでやってたから妙に記憶に残ってたな -- 名無しさん (2021-08-05 07:10:01)
- ヘレンの風穴関連のブラックユーモアっぷりが凄かったな。マデリーンとの喧嘩中の影が腹だけ影になってなかったり投げられたモリ?だかが腹の穴をすり抜けてソファーに刺さったりひと段落済んでソファーに座る時に刺さったままのモリをわざわざ腹の穴に通したり。 -- 名無しさん (2021-08-05 12:35:35)
- 要するに死んでも魂が身体から離れないってだけなんだなあこれ。霊薬とやらも元々は拷問・刑罰用だったんじゃないの? -- 名無しさん (2021-08-05 20:56:02)
- 若返りの効果もあるからただのゾンビパウダーではないようだが、一度致命傷を負ってしまうと再生しないってのがむごすぎる。これ自殺しようとしてゾンビになったやつもいるんじゃないだろうか -- 名無しさん (2021-08-05 21:05:51)
- アーネストの言う通り永遠に若いままで周りから取り残されて生きるなんて嫌気刺すだろうな。まともな生活は営めないし家族も下手に作れない。リスルが霊薬配ってるの、仲間と言うか自分と同じ被害者作りたいだけなんじゃないの -- 名無しさん (2021-08-05 22:44:48)
- ストーリーランドの「終わらない水」はどんな損傷でも再生できる不死の効果を与えるけど、病気の人が飲むと病原体まで不死身になって苦しみながら生き続けるという欠陥があるんだよね -- 名無しさん (2021-08-06 00:11:16)
- ↑ 今思うとデッドプールみたいだな -- 名無しさん (2021-08-06 00:20:28)
- ゾンサガのメイクシーンでこの映画のメイクシーンのオマージュみたいな所があったような。 -- 名無しさん (2021-08-06 00:57:39)
- 「若々しく長生きできてぽっくり逝く」とか「若い状態が長く続くがちゃんと年は取る」なら理想だが、若さだけにしがみついてもろくなことがないってのがよくわかるわー… -- 名無しさん (2021-08-06 07:02:35)
- DVDのジャケットクソ怖い -- 名無しさん (2021-08-06 12:26:19)
- ただこれ男も一貫してまともというわけでもなく、ホイホイ乗り換えるわ夫婦仲冷えたら若返ったヘレンの誘惑に負けかけてるわで、ギリギリ人として間違いじゃない選択できたってだけなんよなー。それが大事なんだけども。 -- 名無しさん (2021-08-06 12:44:47)
- お、最後の牧師さんの台詞の追加サンクス。 この言葉にのっとれば彼女らはもう生きていないも同然か。醜い魂にお似合いの醜い身体で醜く死に続けていく。 -- 名無しさん (2021-08-06 13:12:15)
- このあとも肉体の崩壊が進んで、脳みそまで壊れたら流石に意識はなくなるか。 -- 名無しさん (2021-08-06 13:20:50)
- 続き)それでも死ぬことはおろか精神が消える事もなかったら悲惨すぎるが -- 名無しさん (2021-08-06 13:22:50)
- 御茶漬海苔のホラー漫画で似たような話を読んだことがある。若さと美しさに執着して不老不死の薬を飲んだ女優が永遠の美しさを手に入れたと喜ぶも、タチの悪いストーカーに首だけにされて森の中に放置されて、「誰か殺して~!」と叫び続けるってオチ -- 名無しさん (2021-08-06 14:13:36)
- 不老不死になった人達って幸せなんだろうかと思ってしまう。最初はよくてもだんだん後悔しそう -- 名無しさん (2021-08-07 18:01:57)
- >「くだらないことをよくもまぁベラベラと……」 歩くことすら碌に出来ないゾンビになるよりずっといい人生の終え方じゃないか -- 名無しさん (2021-08-07 18:06:52)
- 正田崇という作家がこれから取り組む物語が『全世界の人たちがデフォルトでこの状態の宇宙戦記もの』らしい -- 名無しさん (2021-08-07 23:02:35)
- 身体は再生できないから灰になるぐらいまで燃焼したら流石に逝けるだろうか…?なんか骨だけはしっかり残って動きだしそうな嫌な予感はするが… -- 名無しさん (2021-08-08 00:17:10)
- ↑何かそんな話聞いたことあるなと思ったらこのwikiで読んだんだったSCP-2718。これは普通に死んだ人も実は…って話だったけど -- 名無しさん (2021-08-08 08:21:46)
- 昔見たときは笑ったが、いまここで年齢と俳優知って驚いた。すげえな -- 名無しさん (2021-08-08 08:44:42)
- Drヘルに頼めば胴体作ってもらえるんじゃないw? -- 名無しさん (2021-10-18 01:06:19)
- マイトガイン18話のサブタイも全く同一のタイトルだったが、ラストでビトンは未完成の若返りの薬を服用したためか目元の小じわが一つ増えると言う、秘薬を作る為に自然破壊を繰り返した罰?を受け卒倒していた -- 名無しさん (2021-10-18 01:12:33)
- マデリーンの中の人がメーテルって、狙ったキャストだよな。 -- 名無しさん (2021-10-20 21:22:57)
- >長年に渡って見様見真似で身体の修復と塗装を繰り返したせいで ターンXかよ。 -- 名無しさん (2021-10-20 21:31:18)
- 手段があれば惑星プロメシュームへ行って機械の体を・・・ -- 名無しさん (2021-10-24 23:37:26)
- 磯野家の血を輸血すれば若しくは・・・ -- 名無しさん (2021-10-24 23:39:58)
- ヘレンは当初こそマデリンに嫌がらせされまくり続けてるかわいそうな被害者なんだけど、実はそうされるだけの理由があったって判明する流れが見事だったな。結局のところ、ヘレンもマデリンもどっちもクズだったわけで、さらに2人の対立を引っ掻き回したのがアーネストのダメ男っぷりだったというなんともしょーもない話し -- 名無しさん (2022-07-29 10:07:21)
- 不老不死はいらんが若返られる薬なら欲しいな -- 名無しさん (2023-05-16 14:36:48)
- アーネストも大概なのに一人だけ逃げ切って真っ当に寿命を終えられたのが何とも言えんかった -- 名無しさん (2023-05-16 15:01:51)
- 「車どこに停めたか覚えてる?」なんて陳腐で俗な言葉がアーネストの人生の対比になってる気がする -- 名無しさん (2023-07-25 04:03:54)
#comment(striction)
*2 つまり本作が公開される2年前に亡くなったばかりであり、実は死を偽装しただけだったという時事ネタとなっている。
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