天獄の島

ページ名:天獄の島

登録日:2021/01/10 Sun 00:36:04
更新日:2024/05/24 Fri 13:25:16NEW!
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『天獄の島』とは、落合 裕介による漫画作品。全3巻。
『コミックBREAK』(日本文芸社)に掲載され、同誌の休刊後は携帯サイト『ケータイコミックブレイク』にて掲載。



●目次


■あらすじ

死刑制度が廃止された時代の日本。
死刑に代わる制度として、かつて存在した「島流し」を復活させた。


元戦争ジャーナリスト・御子柴鋭は、5人の連続殺人の罪により、島流しの中でも最も重い「遠流(おんる)」の刑に処された。
遠流の刑を言い渡された瞬間に口元に笑みを浮かべた御子柴鋭は、遠流の流刑地である「天獄島」へと護送される。


島に着いた島流しの罪人達には「ここからは自由であること」「日本社会は今後一切君たちには関わらないこと」が説明される。
そこはかつて人が住んでいた場所ではあるが過疎により放棄され、今では生活の痕跡がいくらか残っているだけの無法地帯であった。



■登場人物

御子柴 鋭(みこしばえい)

主人公。
かつては戦争ジャーナリストとして紛争地帯を旅してきた経歴を持つため、異常事態でも慌てる事は殆どなく、殺し合いの場でも冷静な態度を崩さない。


「遠流」の刑は人間社会からの隔離を意味し、即座に命を奪われないだけで事実上人生の終了と同義の刑だが、自ら望んでこの流刑地にやってきた。
その目的は、親友だった男「榊 亮児」を探すこと。
父親・御子柴教授が殺害された時、親友であるはずの榊がその実行犯だと本人から聞いたがそれを信じる事ができず、様々な調査の上に殺害の実行犯を見つけ出して始末。
その殺害の罪を利用して榊がいるはずの天獄島に潜入し、榊に会って真相を確かめる事に全てを賭ける。



上妻 裕史(こうづま ひろふみ)

御子柴と同じ船で天獄島に護送されてきた罪人の一人。詐欺罪で遠流になった。
小柄で臆病な小心者で、殺し合いの状況では怯えるしかできないが、怯えるとやたら口数が多くなる。


御子柴にくっついてきたために「天国の町」まで生きてたどり着く事ができたが、
町の住人になるための課題のために町の入り口以降は別行動になる。
その後は課題として4区区長・邑崎(むらさき)に引き取られて情夫となる。


有馬(ありま)

天国の町の南門で管理人をしている男。御子柴と上妻の手続きを行った。
物腰穏やかな態度を見せていたが、後に1区区長の壬影が死亡した際には野心を見せ、
御子柴に罪をかぶせて犯人を仕立て上げる事で区長にのし上がろうと企んだ。



壬影(みかげ)

天国の町の1区区長を務める男。仮面を被っている。
各地区から1人ずつ代表者を選出して行われる闘技場での戦いに、有馬から連絡を受けて知った御子柴を1区代表として参加させた。


その実態は90歳を超える老人であり、闘技場での戦いを御子柴が制した事で得られる褒美に「いち様と同じ薬」を希望した。
これにより老化を停止させ生き延びようとしたが、副作用が消失し薬に適合できたかと思った矢先にそのまま死亡した。



赤目の男

4区代表として闘技場に出場した男。
研究中の「仕働夫」の試作品であり、従来の仕働夫と異なり屈強な体を持ち、かつ高度な判断能力を維持している。
真っ赤に充血した眼球が特徴。


その力で闘技場の他の参加者を次々と殺害し、最後に残った御子柴と1対1になる。
御子柴との戦いも圧倒的有利に進めるが、決定打を入れられずに長引く。
戦いの最中でも腕を切断されても切断面から出血しないなど不審な点が目立ったが、
最終的には充血しすぎた眼球が破裂して死亡した。



一(いち)

闘技場の最上段にいた少女。
天国の町の住人からは神のように崇め祭られている謎の存在。



かつて不治の病に苦しめられていた少女で、その時御子柴教授が開発した試作薬を投与された結果、病状は停止したが老化も停止してしまった。
そのため、肉体は10歳程度だが、実年齢は23歳になり、10年以上変わらない姿のまま生きている。
老化が停止した事により政府に目を付けられ、「不老薬」の実用化の研究素材として天獄島に隠された研究施設に連れてこられている。



御子柴教授

御子柴鋭の父。医者であり研究者でもあった。
一に投薬した試作薬が想定を超えた効果を発揮してしまったため政府に目を付けられ、「不老薬」の完成を命じられるが、
それが「完全な仕働夫」の完成のためであると知ると協力を拒否、その結果殺害される。



榊 亮児(さかきりょうじ)

御子柴鋭の親友だった男で、御子柴教授の助手をしていた。
御子柴教授殺害現場にいたとされ、鋭が彼に贈ったライターが殺害現場に落ちていたのを鋭が見つけている。
その後の裁判でも彼は御子柴教授の殺害事実を全面的に認め、「遠流」に処され島に流された。


しかし真実は全く異なっており、御子柴教授の殺害には一切関わっていない。
榊が駆け付けた時には既に殺害されており、代わりに政府の人間に接触され、不老薬に関して質問される。
殺される前に教授が不老薬の悪用を心配する事や一の事を榊に話していた事もあり、「政府が不老薬完成のための協力を拒む教授を始末したのだ」と察したため、
咄嗟に「自分も内心で不老薬を闇に葬ろうとする教授を邪魔に思っていた」として、政府の思惑に協力的な人間を演じる。
その後は手はず通り教授殺害の罪を被って天獄島に赴き、そこで不老薬の完成のための研究に携わる事になるが、
実際には榊は教授の意志を継ぎ、研究する振りをしながら巧妙に研究結果のデータを改ざんし続け、完成を遅らせる工作をし続けていた。
殺害現場にライターを落としたのはわざとで、親友である鋭に「自分がただの我欲で殺害した」と印象付け、鋭を巻き込まないようにしたもの。


天獄島で鋭に再会した時は、周囲にバレる事を防ぐために一度は鋭を捕えて仕働夫行きを命じるが、
研究者の一人である水沢が榊の細工に気づいて榊の裏切りが発覚したため、それを機に鋭と結託して施設の破壊工作を開始する。
視察に来ていた厚生労働省大臣を人質にする事で島からの脱出を図るが、脱出用のヘリ内に潜んでいた水沢に刺されて致命傷を負う。



水沢

榊と共に天獄島で不老薬の研究を行っていた研究者の一人。
研究チームのリーダーを務める榊に妄信に近い尊敬を向けており、「榊先生が言うなら間違いない」は口癖。
しかし榊に頼りきりの無能という訳でもなく、微細な改ざんの痕跡に気づいて独自の研究を並行して進めるなど科学者としての能力は確かなもの。
榊とは違い、非人道的な研究に嫌悪感を抱くような感性をしておらず、喜んで研究に参加している。


その分、榊が裏切者だと判明した時はその尊敬が一気に憎悪に替わり、仕働夫に即座に殺害を命じた。



3番

仕働夫の一人。
長年なかなか結果が出ない研究結果に疑問を持った水沢が、チームでの研究とは別に独自の実験を続けることにより完成したもの。
肉体的な劣化も副作用も全く見られず、それでいて完全に従順で高度な命令も理解する、仕働夫の完成形と言える実験体。
水沢の命令しか聞かず、命令外の事に対しては研究員であっても襲って殺害する。


今まで一の体のどの要素が不老薬を成功足らしめているのか特定ができなかったのが、
3番の成功により3番と一の体に共通して存在しているホルモン成分が鍵であると特定され、不老薬の完成が現実味を帯びてしまった。


裏切った榊に激怒した水沢に「榊を殺せ」と命じられて襲い掛かるが、鋭が入れられていた牢に入れ替わりで閉じ込められる。
榊が仕掛けた施設の爆破で牢から脱出したのか、脱出ヘリに乗り込む寸前の榊に再び襲い掛かるが、拳銃で射殺される。



獅賀(しが)

厚生労働省大臣。
不老薬に目をつけその完成を命じた張本人。
ひいては天獄島で仕働夫の計画を主導していた黒幕。
たまたま視察に訪れた日に榊と御子柴による反乱が起こり、激怒するも人質に利用され脱出を許し、全てを失う。


この一件により仕働夫の存在が世界的に明らかになった後は、非人道的な研究を主導したとして罪に問われ、「遠流」の刑を言い渡される。



■用語

天獄島

死刑に代わり新たに制定された刑罰「流刑」において、3段階ある「近流」「中流」「遠流」のうち最も重い「遠流」に処された者が送られる島。
「近流」「中流」についてはどこに送られるか、復帰の可能性はあるのか等は一切語られなかったが、
「遠流」については送り先が天獄島であり、二度と戻る事はできない事が説明されている。


かつては普通に人が住んでいた島だが、過疎により住人が全くいなくなる事が避けられなくなったため、流刑地として選定され再利用された。
そのため、島内には家屋や道路、電柱などのかつての生活の痕跡がいくらか残っている。
島の周囲は海流が激しく、また船が接岸できるような地形が無いため、船での出入りは南端の断崖絶壁の下に設けられた人口の船着き場が唯一となる。
当然、そこは厳重なロックがかけられており、島内側からは船着き場に入る事は絶対にできない。


この島に送られた者は日本社会から完全に切り離され、刑務などを課されない代わり、如何なる法律・憲法によっても保護されない。
食料などの支援も一切されないため、野垂れ死ぬか他の流刑者に殺されるまでそのままである。


島の中には「天国の町」と呼ばれる、流刑者同士が一定のルールを作って自治している町がある。
また、流刑地であるのは事実だが、それを隠れ蓑にした「不老薬」の研究施設がある。


天国の町

天獄島の中で、流刑者達が作り上げた自治組織の町。


いくつかある門を通らないと町に入れない構造をしており、町に入る者はそこで氏名や何の罪で流刑されたのかを申告させられる。
犯した罪の申告は強制では無いが、このような場所だから何よりも信頼が大事としてなるべく書くように言われる。
氏名などの申告が終わったらいずれかの区長から「課題」を提示され、それをクリアして初めて町の住人と認められる。
課題を受ける事を断る事もできるが、そうした場合は町から追放され二度と入る事はできない。


「いち」と呼ばれる少女を神と崇める宗教的な組織によって自治されており、その下の7人の区長を実質的なトップとして管理されている。
住人はいるがそれ以上に大量の「仕働夫」が労働力として使われている。


町の外にも僅かながら人間は存在するが、町の中に比べたら遥かに不便な生活であり、
町の中の生活を受け入れる事ができずに逃げてきた者ばかりである。


北の施設

島の北側に存在する施設。
不老薬および仕働夫の研究施設であるが、研究員一同だけでなく仕働夫を秘密裏に求める外国の要人を招待する事もあるため、
装飾から各種接待用の設備まで幅広く充実している。
船での出入りは罪人用の南端の船着き場でしかできないため、ここへの出入りはオスプレイ等の航空機による空路となる。
万一の事態のための機密保持が目的なのか、施設には自爆装置も備えられている。



仕働夫(しどうふ)

厚生労働省主導で、天獄島で研究されていたもの。


凶悪犯罪を犯し遠流に処された犯罪者を実験材料として作られるもので、神経ガスなどで徹底的に人格を破壊する事で命令に従順な労働力にしたもの。
ただし鋭が天獄島に送られた時点では、赤目の男のような偶発的な存在を除いてまだとても完成と言えるものではなく、
従順なものを作ることはできるが、その代償に肉体が大幅に老化・劣化してしまうという副作用を抱えていた。
この副作用を解決するために目を付けたのが、御子柴教授が偶然開発した不老薬である。


この研究には中国を始めとしたいくつかの諸外国も興味を示しており秘密裏に支援を行っていたが、
全てが明らかになった際は沈黙を決め込んで無関係を装った。



不老薬

御子柴教授が偶然開発した薬。


本来は一の病気を治療する目的の薬だったのだが、御子柴教授も想定していなかった思わぬ作用により、
一の肉体の老化が完全に停止してしまうという効果を見せた。
そのため病気の治療薬ではなく「不老薬」として政府に目を付けられる事になってしまった。


天獄島の人間の大半は一の存在は知っているものの彼女がどういう存在なのか知らず、ただ神格化された彼女を崇めているだけだが、
区長クラスになると彼女がある薬の投与により老化が停止している存在である事を知っており、1区区長・壬影のようにその薬の投与を望む者もいる。








追記修正は最も重い遠流の刑になってからお願いします。



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