登録日:2020/12/28 (金曜日) 20:55:15
更新日:2024/05/24 Fri 12:54:42NEW!
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宇宙人 地球外生命体 数の暴力 光の巨人 上遠野浩平 宇宙怪獣 人類の敵 チート 再生能力 虚空牙
狂戦士であるとか、破滅の使者であるとか、BEMであるとか、絶対敵性意志であるとか、統一されたものは存在していないが、このカプセル船ではそれはこう呼ばれている。
虚無に潜んで襲ってくることから“虚空牙”と。
虚空牙は、SF小説『ナイトウォッチ三部作』のシリーズに登場する地球外生命体を指す。
遥か未来、外宇宙に進出を開始した人類に対し突如絶対真空の宇宙空間から襲いかかってきた敵対存在。
外見は100mほどの光の巨人。
宇宙で活動する存在であり母星なども確認されていないのになぜ人に類似した姿で宇宙を漂っているのか、などその生態は謎に満ちている。
【能力】
とにかく反則的と言えるほどの戦闘力を誇る。
太陽系を破壊せしめる規模の武装を数十種持つ超光速戦闘機ナイトウォッチが相手でもなお、
「人類史上最強の戦闘の天才」が搭乗者でない限り一体も殺されなかった異常な存在。
もっとも
- 光速の5000倍クラスの戦闘速度
- 原水爆の数千億・数千兆倍の攻撃力とそれに耐える防御力
などの基本スペック自体は概ね虚空牙・ナイトウォッチ共に互角の規模であり、それまで人類がナイトウォッチを使って虚空牙を倒せなかったのは技量の問題が大きい。
肉体は常時「亜空間装甲」という物が張り巡らせており、生半なナイトウォッチの攻撃にはこれで耐えてしまう。
戦い方は槍のように変化させた腕で刺してくる、エネルギー波動を放つなどシンプルな物も多いが、どれも恒星間航行での戦闘規模に見合う強力なもの。
自身の破片を生体ミサイルのようなものへと変換し超光速衝撃波を放つ「時空爆雷」にするなども可能で、行動の予測は困難。
更には半身が破壊されようと、100分の1まで破壊されても活動可能なため全身を破壊しなければ安心はできない。
直接戦闘力以外の能力も異常で、時空を巻き戻す、死体から命を再構成する、仮想空間の中に侵入する、人間に化ける――など、ほぼ万能。
ただし「全能ではない」「神ではない」らしく不可能なことも存在する。
【形質・動向】
しかし最も恐るべき点は上記の戦闘力を持った個体がなんら『特別な個体ではない』ところ。
と言うより彼らの種族に中核や特別な地位・存在など無いに等しいようで、何千何万と発生する上にいくらやられても痛痒にすら思わない。
虚空牙の総数や一体どこから出現するかすら一切不明。
精神構造としては屈辱だとか損害や欲求という感覚さえ存在しないらしく、
作中で人類の言語に合わせてコンタクトを取った個体は仲間がやられた事実や自分の怪我を特に気にしてもいなかった。
その喋るケースも特に必要性を感じていないのか限定的な状況で数えるほどしか無い。
殆どの遭遇で虚空牙は意志がわからぬまま黙って戦い、黙って死ぬので何を考えているのか人類側からすると全く判らない。
目的も生態も何もかもが謎、何がしたくて人類を攻撃してくるのか一切不明。生物なのかどうかもわからない宇宙の脅威、それが虚空牙である。
だが。その正体に触れた人類もごくわずかに存在する。
わかったぜ虚空牙よ。お前たちのことが――
俺は最初に戦った時から、これはおかしいと感じていた――おまえたちは、まるでこっちの都合に合わせているみたいだ、と。
私は言うなれば、そいつの「反対」よ。そいつは「死」で満ちているために心というものが理解できずに人類をいじっている。私は心を使って「死」をひとつにしようとしている。
虚空牙が望む物は人類の殲滅でも支配でもない。
それは「心」の理解。
人間が持つ心を不可解に思い調査・検査しに来たということである。そのため彼らは戦っているつもりさえ無い。ただ人間を乱暴に「観察している」だけ。
ある可能性存在いわく虚空牙とは死で満ちた存在。
心を理解できぬことが虚空牙が全能ではない証左であり、また人類を不可解に思ってもいる。
もっとも彼らの求める心を説明する答えは人間が言語で上手く説明できるものではないらしく(そもそも意思や心の概念を上手く言語化できるかという疑問は確かにあるが)
また虚空牙の存在や感覚のスケールが違いすぎているため人類は危機に陥っている。
敵意もなければ好意もない。悪意もなければ善意もない。ただ人が不可解だからその価値を認め、その上で調べているという迷惑な超存在。それが虚空牙の正体。
反面、人類が滅びてないのも虚空牙が人類に合わせ手心を加えているため。別に人情としての気遣いとかは無いので痛めつけられはしているけど。
人の形で出現しているのも、ナイトウォッチと同等速度のある程度は拮抗した戦闘が成立しているのも、
全ては虚空牙なりのどこかズレた「相手の在り方に合わせた手加減」の内なのである。
(本来はある種の意識体であり、姿も何も関係無い可能性が示唆されている)
『螺旋のエンペロイダー』にてある人物(『冥王と獣のダンス』の時間軸では「枢機王」となる存在)がその天から見つめてくる観察自体を、
「その視線をいずれ人類全てが認識した時人類はそれを恐れ、最終的には自身の破滅的な兵器開発等で自滅に至らしめる」と危惧しそれから「自分だけ」を守るため策謀を巡らせ
、さらに別のキャラはその未来予測を「人類が無限の被害妄想に憑かれ自滅する」とも評している。
ある作品では虚空牙の問いかけを一部再現したシミュレーションの精神攻撃を受けた人間が
「一体何を考えているんだと問われる→答える→本当にそう言えるのかだと問われる→それについて更に説明する→本当にそう言えるのかと更に問われる」
という「おまえはなんなんだ」の質問漬けをネチネチと繰り返す変形のソクラテス問答法じみた事を繰り返され「うるさいっ」と癇癪を起こしていた。
(虚空牙の場合は討論ではなく本当に疑問だけで歯止めが利かないから更に性質が悪いのだが)
【関係人物】
- コーサ・ムーグ
かつて虚空牙に接触した偉人であり、救世主とも称された少年。外見は16歳の金髪碧眼。
虚空牙ともコミュニケーションは可能であるとし、人類の意思を一丸とした共存を説いた。おそらく最も虚空牙とコンタクトを取った人間。
権力闘争のせいで銃撃され、作中では冷凍睡眠処置をされている。
だが、下手に虚空牙と精神的に深く触れ合ってしまったのと、コーサ・ムーグ自身のポテンシャルのせいで、自覚も無いままに彼もまた人間には理解しがたい『人を超えた存在』となっていた。
- 工藤兵吾
人類史上最強の戦闘の天才とも称される異常な戦闘センスを持った高校生。
虚空牙との交戦経験とその感性から、虚空牙に対しある考察をした。
- ?????
長い黒髪の少女の姿をした謎の意識体で「運命の失敗作」とも名乗る、脈絡なく出現するヴィジョンのような何か。
当人の言だと遥か昔に死んだはずの人間のデータが人類側の仮想世界再現技術の手で再現される過程の巻き添えで可能性が復活してしまったらしいが、
彼女の理屈をマトモに理解できている人間が作中に存在しないため、その一切が虚空牙と同じ程度には不明。
しかし彼女自身は虚空牙ではないらしい。
と言うか虚空牙にすら認識ができていない謎めいたヴィジョンなのだが、虚空牙の核心を知っているようで……
その正体はほぼ間違いなくブギーポップ最大の宿敵である『死を制御する』力を持った「世界の敵」「イマジネーター」にしてMPLS、水乃星透子。心だけの存在である自らを、死で満ちた虚空牙の反対の存在と定義付けている。
実は人類の宇宙進出以前から虚空牙は秘密裏に地球に襲来していた。人類全体がそれを認識できなかっただけである。
旧時代においても超常的な能力で事前察知をした者やコンタクトを取ったごく一部の人類や組織は存在するが、やはり理解不能な彼らの行動によって翻弄されている……
地球襲来個体
地球に放った同胞と明言されたのは4体。彼らが降り立った地は統和機構から「牙の痕」と呼ばれ厳重に隔離閉鎖されている。
- エコーズ
「ブギーポップは笑わない」に登場。
統和機構にとっ捕まって実験体となっていた。
結構ストレートに人間がどういう存在なのかわからなくて考え込むモノローグがある。
ラストで回答を導き、報告する。
- ブリック
「ブギーポップ ロストメビウス」に登場。
地球襲来のショックで完全にバグった個体。
謎の「メビウス」と呼ばれる爆弾制作者の男性が持ち歩いていた煉瓦色をした赤子のような存在。空気中に置くと温度が際限無く上がる特性があるため油の中に保存されていた。
「メビウス」の正体はブリックの地球襲来に遭遇した子供たちがその衝撃で死んだときに、情報集積用の装置として再構成された言わばブリックの一部。
作中ではブリック自らが成長し、オウム返しを繰り返す自ら移動可能な少年となるが、結局また赤子へと戻ってしまい、統和機構の構成員だったリミットに回収される。
- ペイパーカット
「サーカム財団シリーズ」に登場。
「キャビネッセンス」なる概念を採集するため謎めいた現象を起こし、キャビネッセンスとなるものを盗む「怪盗」として活動している。但し人からキャビネッセンスを取ると大半は死ぬため(生存しても人が変わる)、追う相手からは「殺し屋」とも。
人の認識や精神状態によって見える姿が違うが、一部の人間は銀の髪と目を持った存在に見える。
その存在を認識した相手からはしばしば「鏡」に例えられる。
最も人類とコミュニケーションを取っている個体であり、まるで楽しんでいるかのように会話をしている。
が、どこか無形の価値を探ろうとする言動がうかがえる。
笑顔をよく浮かべているが本物ではなく当事者いわく「猿真似しているだけ」
つまり心の本質を理解できないまま調査のため微笑んでいるだけである。
- 才牙兄妹
「螺旋のエンペロイダー」に登場。「牙の痕」に影響を受けた女性研究者が処女懐胎した子供達。
最終的に「牙の痕」にたどり着いた時の騒動で最初に兄、ついでそのせいで自己犠牲しようとする大嫌いな兄にブチ切れた妹がその歪みを引き受けてさらに暴走し、地球上で時間切断能力を使用しメチャクチャなことになるが……
終盤で実は「虚空牙とは似て非なる存在」なことが明らかになり、兄の方はエンディングでペイパーカットらしき存在に「虚空牙にだけはなれないよ」と言われているため厳密な出自は謎。
つまりラストメンバーと思わせておいていまだ地球に降りた最後の虚空牙は不明。
なお、拳の一撃で虚空牙を撃滅する最強の鉄仮面戦士「マイロー・スタースクレイパー」ほか、同作者の別作品では虚空牙に生身で対抗できる可能性を持つ人類が数人ほど居たりする。
追記・修正の果てを視るように、心の闇にすみれを咲かせよ
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