アエルダリ(ウォーハンマー40K)

ページ名:アエルダリ_ウォーハンマー40K_

登録日:2020/10/10 (土) 17:42:50
更新日:2024/05/23 Thu 10:37:15NEW!
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画像出典:左から1番目コデックス「クラフトワールド」(codex:Craftworlds)第8版 表紙、左から2番目コデックス「デュカーリ」(codex:Drukhari)第8版 表紙、真ん中コデックス「ハーレクィン」(codex:Harlequins)第8版 表紙、右から2番目「GATHERING STORM BOOK II FRACTURE OF BIEL-TAN」P64イラスト、右から1番目、小説「Horus Heresy Promethean Sun」表紙




概要


アエルダリとは、ウォーハンマー40Kに登場する異種族(宇宙人)の一つである。


はるか古代に高度な文明を持ち、銀河を統一した唯一の種族だったが、文明が崩壊し今では種族は滅びの瀬戸際に立たされている。アエルダリ族は主に6つの勢力分かれており、それぞれ異なる特徴を持っている。
各勢力には異なった文化や信条を持っているが、渾沌の神々(特にスラーネッシュ神)や軍勢を、全種族共通の敵として認識している。普段は人類の帝国オルクなどの異種族と戦っているが、時としては渾沌勢力を打倒するために共闘することも珍しくない。
本項目は前半にアエルダリ族共通の特徴を紹介し、後半は勢力別の特徴を紹介を行う。



画像出典:ウォーハンマー40K「ルールブック」第8版 P113 イラストより


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種族の特徴

【長寿命と身体能力】
人類よりはるか昔から存在する種族である彼らは、宇宙エルフといってもいいだろう。人類とくらべてアエルダリの寿命はかなり長く、加齢による肉体老衰が無く体内器官や免疫組織系は高度な機能を維持している。
彼らの寿命は少なくとも数千年の時間が保証されているようで、それは刺激と興奮に満ちた病苦や障害に怯える事もない素晴らしい一生であると言えよう。また、アエルダリの時間感覚も人類とはかけ離れており、彼らの一生は強烈さと速さにみちあふれている。
アエルダリの心臓は人間の2倍で鼓動し、その脳や神経は、人間と比べて感情や思考の伝達速度がすさまじく速い。それゆえに肉体の反応も迅速で、アエルダリの動きは訓練された人間よりも数倍速いという。
ただし、寿命が長い故に出産されるアエルダリの新生児の数は少ない。何故ならばアエルダリは、妊娠して子を産むまでの期間が人間よりもはるかに長いためだからだ。
【美麗なる容姿】
外見の話をすれば、アエルダリと人類は多くの面で同じように見えるだろう。だが、厳密に比べてゆけば、両者の間に大きなへだたりがいくつも見つかる。
例えば、彼らの手足は人類よりも細くて長く、切れ長の目と整った顔立ちを持っている。また、耳は上がとがっており、その白く美しい大理石のような滑らかな肌にしみやしわが入ることはない。
鋭敏な聴覚を誇るその耳は上端が尖っており、つり上がった目尻は人類のそれよりもネコ科の猛獣を思わせる。アエルダリ五感は極めて繊細でかつ鋭敏であり、その結果として音楽や食物、芳香、肉体的な美や人類では味わい得ぬ感触を通して様々な官能を味わる事ができるのだ。
逆に言えば、アエルダリは他種族の感知し得のレベルでの嫌悪や反発を覚えることもある。そして、人類とアエルダリのもっとも根本的な違いは、その仕草にある。
彼らの動きはしなやかですばやく、ムダのない優雅さを常にたたえている。つまり、武器を持ったアエルダリは、美しさすらただよう機敏な動作で事にあたれるということだ。
また、アエルダリの一挙手一投足の動作には精妙な意図が秘められており、彼らにとって所作の振る舞いは言葉に匹敵する意思疎通の手段であり、社会的儀礼の一環なのである。
【傲慢なる性格】
しかし、自らの種族に絶対的な自身を持っており、傲慢な部分も見受けられる。彼らは自身の優越性に少しの疑問も抱かず、他種族を野蛮人と呼び、それに何のためらいも持たないぐらいのうぬぼれに近い過信を持っている。
彼らのテクノロジーと文化の洗練は、他種族が到達できるレベルをはるかに超えており、他の文明から学ぶことなどもってのほかだ。そしてアエルダリは他種族よりも感知し得ぬ感覚を持っているがゆえに、その傲慢で仰々しい態度や見た目という印象を相手に与えてしまう。要は意識高い系
しかし、自らのうぬぼれや過信が原因で文明が滅び、一部を除いたアエルダリ族はそのうぬぼれに対して自律を敷いている。
【強力なサイキック能力】
これだけの優位性を持ちながらさらにアエルダリは強力な異能力を持っている。古代のアエルダリたちは、一瞥するだけで対象の思考を読み取れたという。
更に、その力を戦闘用に訓練した者たちは、一睨みだけで敵を粉砕することまでやってのけたという。このことからアエルダリたちは潜在的に強力な異能力を秘めていることの証左といってもよい。
また、アエルダリは死後もその魂は意識を保っている。通常、人間の魂は死後に〈歪み〉空間へと辿り着くと、軟弱な精神を持つが故にその意識を失ってしまう。
しかし、アエルダリの魂はサイキックエネルギーが強すぎるがゆえに、死後も意識が無くなる事は無い。だが、彼らの魂はそのまま渾沌の神々が住まう〈渾沌の領域〉へと流され、アエルダリの魂を欲するスラーネッシュ神に自らの意識を保ったまま自分の魂が貪られてしまうという究極の恐怖を味わう運命をたどる。
それを防ぐために、アエルダリの各派閥は自分の魂をスラーネッシュ神に喰われぬよう、独自の対策を立てているのである。


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種族の歴史


【種族の出自】
アエリダリ族の歴史は、長く複雑な宇宙航海の歴史によってなりたっている。彼らが宇宙航海に種族の運命を預けたのははるかなる昔のことであり、逆にいえば、それ以前の惑星に定住していたころのアエルダリたちの発展過程や種の起源、歴史はほとんど残されていない。
伝説によれば数億年前、遥か昔に栄えていた種族〈旧き者〉(オールド・ワンズ)と異種族「ネクロン」との間で勃発した〈天界の戦争〉と呼ばれる銀河規模の大戦が勃発した。その最中、〈旧き者〉らは勢いを増すネクロンらに対抗するため、強力なサイキック能力を有する種族であるアエルダリが生み出されたという。
しかし〈旧き者〉たちは、星界の神「ク=タン」を味方につけたネクロンたちとの戦いに敗れて滅亡してしまう。しかし、ネクロンたちは自らを支配していたク=タンらに反旗を翻して逆に隷属させる事に成功する。
そして、ネクロンたちは遂に銀河の支配権を手にし、栄光の時代が訪れようとしていた。だが、ネクロンを脅かす脅威は完全に取り除かれたわけでは無かった。
少数だったアエルダリは勢いを増し、その勢いはネクロンを追い越すまでとなっていた。そもそもネクロンは自分を隷属させてたク=タンを打倒するための戦いにリソースを大量に使用したため、勢いを増したアエルダリに対抗できなかったのだ。
もはや正面切って戦っても敗北することが判明したネクロンは、アエルダリが自然消滅するまで墳墓惑星にて永い眠りに付いたのだ。
遂に〈天界の戦争〉に勝利したアエルダリは銀河系の覇権を勝ち取り、輝かしい黄金時代が幕を開けたのだ。
【繁栄の絶頂期】
全ての脅威がなくなった「アエルダリ古王国」は、銀河の中でも成長目まぐるしい国家として繁栄の一途をたどっていた。アエルダリは統一されし一つの種族であり、彼らは数多くの神々や神話的存在、儀式的な諸相、そしてその他ありとあらゆる神聖な事物を信仰していた。
銀河系を手にした彼らは同時に、〈旧き者〉が造り出した〈網辻〉(ウェブウェイ)と呼ばれる異次元空間通路をも手中に収め、新たな通路の開通方法までをも手にしていた。アエルダリは銀河系に〈網辻〉のネットワークを張り巡らせて、銀河中を自由に旅することを可能にしていく。
そして彼らは何の制限もなく、いかなる探索、探求、実験の数々も思うがままに行う事ができたのだ。〈網辻〉によって銀河中に散らばったアエルダリらは、素晴らしい楽園となった何千もの惑星で、思考や思想を打ち捨ててひたすらに自分の願いや夢、好奇心を追い求めていった。
当時、アエルダリ以外の若き異種族らも存在したが、彼らは非常に短命でかついかなる紛争も鎮圧されるほど対した戦力も無かった。銀河の覇者に破れたあらゆる劣等種族は、アエルダリの優位性を裏付ける材料でしかなかったのだ。
もはや彼らを妨げる脅威は無く、その不遜とも受け取れる自信はいささかも揺るぐ事は無かったのである。



画像出典:「GATHERING STORM BOOK II FRACTURE OF BIEL-TAN」P38イラストより

【〈歪み〉の空間】
アエルダリ古王国が栄えている時期、宇宙には「エーテル」と呼ばれている異次元空間があった。それは現在では「〈歪み〉(ワープ)」と呼ばれているものであり、当時はアエルダリの神々が住まう場所としても知られていた。
この時代のアエルダリたちは数千年の寿命を経て死を迎えると、エーテルに住まうアエルダリの神々たちのおかげで、その魂をゆっくりと溶け込ませて後世に生まれ変わる事ができたのだ。現在と異なって〈歪み〉は恐るべき場所ではなく、魂を生まれ変わらせる場所として重宝されていたのである。
【種族の堕落】
大きな驚異が無くなくなり、神々への崇拝や敬意を忘れていくと、アエルダリたちは少しづつ堕落していく。アエルダリ古王国はすでに自身が単純労働や農業をしないでも生きられるだけの社会が形成されていた。
自分が一切の苦労をせずに享楽を味わえる社会に加え、数世紀にもわたる寿命は、自らの願望と欲望をことごとく叶えるのに充分な間と機会をアエルダリにもたらした。神々への信仰心は衰え、アエルダリの大多数は自らを愉しませるための新しい方法を模索することに日々を費やすようになっていったのだ。
けして冷めない好奇心にかられ、やがて多くのアエルダリはもっとも暗い刺激に身をゆだねるようになる。エキゾチックな新興宗教がアエルダリの国中に広がり、どの教団も、秘密めいた真理の探求や、官能的な倒錯を教義の中心に含むものであったという。
一方、より伝統的にして高貴なる思想や論考の探求は、退屈で窮屈な誓約に満ちたものとして打ち捨てられるようになっていった。こうした社会の堕落がアエルダリたちの大部分を巻き込んでゆくうちに、彼らの社会そのものがいくつにも割れ、政府の体制がゆらぎはじめていった。
【欲望から逃れし者たち】
やがて、アエルダリの国家が統制を完全に失って無政府状態におちいると、昔ながらの文化を守り、自らを悔い改めた一部のアエルダリは「クラフトワールド」(方舟)と呼ばれる巨大な都市艦で脱出し、放浪の身となった。それは当時「アシュルヤーニ」と呼ばれ、後々に〈人類の帝国〉が「クラフトワールド」と誇称する勢力の祖先である。
一方「エクソダイト」(脱出者)と呼ばれた者たちは、より簡素で自然に根ざした生活を求めて〈乙女の惑星〉(メイデンワールド)として知られる楽園惑星の数々へと入植していった。現在「クラフトワールド」と呼ばれる者たちは、実際にはかつて存在したアエルダリ種族のうちの例外的な少数の派閥を指しているのだ。
堕落した大多数の同胞たちは、アシュルヤーニやエクソダイトを侮蔑と嘲笑の的とし、自らの愚かさを悔い改める事は無かった。
【〈失墜〉(フォール)】
アエルダリ古王国が無政府状態となり、社会システムが崩壊した後、アエルダリの星々では悲惨極まる状態へと変化する。かつての美しい都市は廃墟と化し、勝手気ままを極めたアエルダリ同士が相争うようになった。
やがて、サディスティックな欲望に取り付かれた殺人鬼が、おのれの欲を満たす獲物を求めて暗い市街をうろつく時代が訪れる。いまや心に平穏などなく、邪悪と殺人の甘い蜜が種族をとりこにしていた。すでに悪徳の病巣はアエルダリという種族全体に広がり、暴徒化した民衆が獣じみた叫びをあげるなか、街路は血の川と化していた。
彼らの欲望の思念や死者の魂は、〈歪み〉(ワープ)と呼ばれる渾沌の空間に集結し、新たなる意思が生まれようとしていた。それはアエルダリの魂が溶け合って集合し、統一された意識を形成したのだ。
アエルダリが気づいたときには、もはやすでに手遅れで、堕落していくアエルダリの魂を食らった〈歪み〉の神が生み出されようとしていた。


それが渾沌の神の一柱である「スラーネッシュ」神であり、多くの魂を食らったスラーネッシュは邪悪なる産声を上げた。


その時、大きなサイキックの爆縮が引き起こした衝撃で、数十億ものアエルダリ達と無数の他種族らは、苦しみにのたうち苦悶と激痛にまみれ死に絶えた。犠牲者の魂無き抜け殻の死体が、数千光年に渡る広大な領域に残された。
だが、一部のアエルダリは爆縮の衝撃に耐えた者も存在し、生存した極悪なアエルダリ達はやがてグループを形成し、〈網辻〉(ウェブウェイ)の中にある都市「コモラフ」へと集まってくる。後にその者たちは「デュカーリ」と呼ばれる悪逆非道の勢力として知られるようになっていく。
一方、爆縮の衝撃に耐えれずに死に絶えたほとんどのアエルダリたちは、その魂をスラーネッシュ神に貪り食いつくされてしまう。古代アエルダリ文明の中心部は巨大な〈歪み〉の裂け目に飲み込まれて滅亡。
あとに残ったのはかつての文明の繁栄を物語る遺跡と、ごく少数の生存者のみであった。かくして、アエルダリ古王国は完全に崩壊し、ここに邪悪なる悦楽の神スラーネッシュが誕生したのだ。
スラーネッシュが誕生した中心部から数千光年の宙域は、〈歪み〉の空間と現実宇宙の狭間のような場所と化しており、その中にはかつてのアエルダリ古王国の惑星や遺跡といった残滓も残されていた。現在この宙域は〈恐怖の眼〉(アイ・オヴ・テラー)と命名され、ケイオス・スペースマリーンをはじめとした渾沌の軍勢が住まう根城として恐れられている。
これらの災禍は〈失墜〉と呼ばれており、アエルダリ族の恥ずべき歴史、反省すべき失態として今でも語り継がれているのである。
【現在】
第42千年紀(西暦41000年)現在ではアエルダリ全体の数は非常に少なくなっており、複数の派閥が出来ているので種族全体が統率されていない状況となっている。しかし、スラーネッシュ神は今でもすべてのアエルダリの魂を喰らわんと画策しており、「スラーネッシュ神への対抗」はアエルダリ共通の課題として今でも重く肩にのしかかっている。
〈失墜〉の大災厄以来、生き延びたごく少数のアエルダリたちは、自らが滅びゆく運命にあると悟った。彼らは複数の派閥に分かれてお互いに不信の眼差しを向け合うようになり、未だに種族が一致団結する様子は見られない。
アエルダリ種族全体に課された最優先の使命は、恐るべきスラーネッシュの餌食にならぬようにしつつ、あるいは台頭してきた他の種族を阻みつつ、この銀河系における生存をひたすら守ることに終始することであった。今や銀河系は無数の種族がひしめいており、渾沌の軍勢が〈歪み〉からとめどなく進撃してくる。
だが、これらの脅威を前にしてもなお、アエルダリたちは怯む事無く不屈の意志を貫く決意を固めているのだ。
【人類への影響】
〈失墜〉からさかのぼること一万年前。〈歪み〉は強大な宇宙嵐の元凶として知られていた。当時、この宇宙嵐は、人類の宇宙船が惑星間の航行をできないほどに強かった。
だが、かの大いなる敵であるスラーネッシュ神が誕生した時、〈歪み〉のもたらす嵐が、一時的にとは言え、ぴたりと止んだのである。スラーネッシュ神が〈禍つ神々〉の一柱に加わったことで、渾沌の暗黒神の間には新たなる均衡が産まれたのだ。
そして、神の誕生によって爆縮にやられた人類もごくわずかいたものの、地球(テラ)周辺の宇宙嵐がかき消えた。かくして人類は、テラを離れて他惑星への航行を再開できるようになり、いままで音信が途絶されていた他惑星との往来を復活させたのである。
この好機にあって人類を統一し、〈帝国〉を銀河系にうちたてた「人類の皇帝」が敢行したのが、人類の銀河征服をかかげた大いなる聖戦、かの有名な〈大征戦〉(グレイトクルセイド)である。非常に興味ぶかいことに、''古代アエルダリ文明の死こそが、〈人類の帝国〉もとい人類の銀河進出を可能にしたのである。''



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〈網辻〉(ウェブウェイ)


画像出典:アートブック「Horus Heresy: Collected Visions」P324 イラストより


【概要】
アエルダリ族は勢力に関係無く、銀河系内を速やかに星間移動する際には〈網辻〉(ウェブウェイ)と呼ばれるワープ通路を利用する。〈網辻〉は〈旧き者〉(オールドワン)とアエルダリ古王国によって作られたワープ通路で、通路は銀河系内に張り巡らされている。
〈網辻〉が存在する場所は、物理的な現実世界と〈歪み〉の狭間に存在する、いわば迷宮のような空間である。そこは現実の一部であると同時に、〈歪み〉の一部でもあり、かつそのどちらでもない特殊な空間だ。
迷宮のように入り組んだ辻の先には、アエルダリが住まう各〈方舟〉へと続き、エクソダイトらが居住する青々とした惑星の地表へと伸び、そして銀河に散らばる無数の知られざる惑星へとつながっている。〈網辻〉は現在もなお各〈方舟〉や惑星同士を繋いでいるが、かつて〈失墜〉がもたらした破滅的な衝撃によって、〈網辻〉の回廊もまた、数え切れぬほどの場所を破壊されてしまった。
そのため、〈網辻〉の一部は崩壊し、触手のように複雑に通路が絡み合って、いくつものう回路や袋小路ができているのだ。これこそ、〈網辻〉が「備え無しで踏み込む者を捕らえる迷宮」と呼ばれるゆえんである。
真意のほどは定かではないが、噂では〈網辻〉の地図が制作され、〈黒の図書館〉と呼ばれる場所に収蔵されているという・・。地図には忘れ去られ、失われた秘密の小道の数々が記されている可能性もあるだろう。
各アエルダリの派閥の軍勢は、より小規模な〈網辻〉内のトンネルを利用して敵に対する奇襲を行う際にも使用している。
【利用方法】
〈網辻〉を経由した星間移動を使えば、〈歪み〉を経由して星間移動を行うよりもはるかに安全でかつ確実に門から門へたどり着くことが可能となっている。しかし、〈網辻〉のルートや形状を把握していなければ、その複雑怪奇な次元の迷宮に迷い込んでしまう。
〈網辻〉のほぼ正確な構造を把握しているのはアエルダリたちだけであり、その貴重な知識を人類などの他種族と共有しようとする気は全くない。そもそも、〈網辻〉における各〈方舟〉の正しい座標すら、今や先見(シーア)たちでなければ知りえないのだ。
また、〈網辻〉を利用するには専用のゲートである〈網辻門〉(ウェブウェイゲート)が必要となり、人類程度の科学力ではゲートを作ることは出来ない。これらのゲートは古代のアエルダリ古王国によって様々な惑星や宙域に作られており、アエルダリ族はそれを利用して速やかな星間移動を行っているのである。
各〈網辻門〉はしばしば敵対勢力が〈方舟〉に侵入されないよう、または不用意に通路を利用されないよう、力のルーンによって封印されている。かつては人類の帝国を治めていた皇帝が独自で〈網辻門〉を作り上げようとしていたが、〈渾沌の神々〉の策略によってその試みは失敗に終わってしまった。
【欠点】
〈網辻〉の中には「街道」とでも呼ぶべき主経路が存在し、宇宙船舶が通るには十分な広さを有している。この通路を利用して、クラフトワールド勢力やデュカーリ勢力は、銀河を行きかい、敵勢力へと戦争を仕掛けるのだ。ただし、〈網辻〉にある回廊の大部分はそれほど広くはなく、ほとんどの回廊が数名の部隊、小型ビークルを通すのが精一杯だという。
〈網辻〉による移動は圧倒的に早く、大艦隊を瞬時に別の宙域へ運ぶことすらも可能である反面、〈網辻〉のネットワーク上に門を持たない惑星へと到達することは、極めて困難となっている。


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アエルダリ族のテクノロジー

【概要】
アエルダリが有するテクノロジーの大半は、「精神感応工学」(サイキック・エンジニアリング)に基づいており、これは言うまでもなく彼ら独自の技術である。いかなる他種族にもこの技術は模倣できず、アエルダリ族自体が野蛮な他種族から技術を学び取ろうなどさらさらない。
クラフトワールドの勢力は、人類が持つ技術に対する粗暴さとその無学ぶりには愕然とさせている。アエルダリという種族の持つ尊大さが変わらない限り、〈帝国〉の技官に対する信頼感が芽生えることは決してないだろう。
一部を除き、アエルダリはサイキック能力を利用して物質の変性や加工が施され、操作されている。中にはサイキックパワーで起動と駆動が行われる白兵戦武器も存在し、使用者のサイキックパワーによってのみしか機能しない。
また一部の武器は、引き金などの物理的な操作インターフェーズを持たない射撃武器も存在し、そのようなものはサイキックの発動によって発射される。有機的な外見や構造を持つことが多いのも、アエルダリ・テクノロジーの特徴で、彼らは”自然と技術の間に境界線を引かない。
”つまり、”命あるものに機能を付加するのも”、逆に”機能を持つ物に命を付加するのも”、アエルダリにとっては全く同じことなのだ。このことから、彼らの用いる物品は命の持たない無機物ではなく、もはや生命活動を行う有機体である。
それはまるで動物のように周囲の環境に反応し、適応し、成長する反生命体の機械と言っても差し違えない。こうした物品や機械は、サイキック的な手段によって操作されることが多い。
【幽骨(レイスボーン)】
彼らの持つ特殊素材である「精神感応素材」(サイコプラスチック)の中でも、特に異彩を放つのが「幽骨」(レイスボーン)である。信じがたいほどの弾力性を持ち、耐久力は人類が誇る合金素材「アダマンチウム」よりも高い。
しかも、幽骨はアダマンチウムをはるかに超える柔軟性を誇っている。また、仮に一部が破損したとしても、幽骨はゆっくりと自らを修復してゆく。
この再生プロセスは、〈幽骨の歌い手〉(ボーンシンガー)のサイキック能力によって飛躍的に加速されることも可能だ。これら幽骨から造り出される品々は、どれも至宝とみなされる。
クラフトワールドのアエルダリたちにとってそれ以上に尊ばれるものは、〈女神イスハの涙〉とも呼ばれる、かの「魂魄石」(スピリット・ストーン)をおいて他にない。
【身軽な装甲】
アエルダリの装甲は、サイキック的に活性化されたボディースーツの形態を成す場合が多い。その大半は受けた打撃や銃撃の衝撃によって硬化する精神感応素材製であり、スーツに更なる補強をもたらす成形装甲プレートを追加された仕様も存在する。
アエルダリが身に纏うあらゆる装甲は、着装者の動きや思考に反応し、必要に応じてその形態を変化させる。アエルダリの鎧は最も重装甲なものであれ、銀河系のあらゆる原始的な種族が用いる装甲に比べればはるかに軽量で、高い柔軟性を有している。


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アエルダリ族の言語

【概要】
アエルダリたちが使う言語は、独特な性質を持つ。他種族にとっては、アエルダリの言語が持つ”もっとも基本的な属性”を理解するのが限界である。これらの基本的な属性にもとずく、神話の登場人物や場所、アエルダリ的な精神論、真理ないしは感情、失われて久しい時代の記憶などを導き出すことは、ほとんど不可能と言ってよい。
さらに、アエルダリは姿勢、態度、身振り手振りなども織り交ぜてコミュニケーションをはかる。アエルダリ同士ならば、彼らは身振り手振りだけでも完全な意思疎通を成立させることが可能なのだ。
アエルダリが用いる文字もまた、同党の複雑性を持っている。筆記文字、ルーン、象形文字、いずれの形であろうとも、アエルダリの文字は帝国で用いられる筆記ゴシック語のような単純な文字ではなく、複雑な意味や観念が込められた「シンボル」である。
更に理解を困難にしているのは、これらのシンボルが、それを書いた者や状況によっていくらか異なる意味を持つという事実である。つまり、先見司(ファーシーア)たちによってルーンが鋳造される時だけでなく、アエルダリの各”名家”やルーン文字の”書体流派”などによっても、各シンボルは様々な意味を持ちうるのである。


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神話環(ミシックサイクル)

【概要】
アエルダリには種族誕生の神話である「神話環」(ミシックサイクル)が存在し、その物語は叙事詩、書物、または演劇によって伝えられている。種族の誕生、上位存在である数々の神々による物語が描かれており、アエルダリの文化と深く結び付いている。
一部を除き各アエルダリの軍勢は、神話環や神々をモチーフにした戦闘兵器や戦闘教条が存在し、彼らがいかに神々に対して敬意と畏怖の念を持っているかが読み取れるだろう。
【種族と世界の始まり】
アエルダリの住む世界が形作られる前、天界と呼ばれる世界には神々が存在し、それらを纏める長が不死鳥王「アシュリアン神」であった。アシュリアンは神々の父、全ての生物の祖先として知られていた。
そして女神「イスハ」と狩猟の神「クルノス」から定命なる存在「アエルダリ」が誕生した。それ故、彼らは神々の末裔とも言えよう。
最初の、そして最も偉大なるアエルダリは「エルダネッシュ」であった。この当時、エルダネッシュが住まう世界は空虚で何もなかった。
そこで侘しさをかこった彼は、見晴るかした。彼の悲しみに終わりがもたらされることを祈って、女神イズハは涙を流し、そのこぼれた場所に森や湖や大空が広がった。
大地には大気が満ち、海が生まれ、やがてそこに住む生物が姿を現す。これらの神の御業をもたらした母の愛に、エルダネッシュは限りない感謝の念を抱いた。
【神々の贈り物】
最初のアエルダリであるエルダネッシュが授かった恵みは、愛だけではなかった。新たに生まれた定命のアエルダリとその眷族に大いに愛情を注ぎたいと望んでいた神々は無数に上った。
エルダネッシュの父クルノス神は、最初に誕生したアエルダリに「欲望」を授け、彼ら彼女らが手に入れたあらゆるものを駆使して進歩と繁栄を謳歌できるようにした。アシュリアン神は自らを深く理解できるよう、「叡智」と「内観」を授けた。
〈笑う神〉とも呼ばれている「セゴラック」は「皮肉」を理解する心を授け、それによって己の中にユーモアを見出し、お互いに対する傲慢さを捨てるための方便を与えた。運命の女王「モライ=ヘグ」は、アエルダリが宇宙における己が位置を見失わぬよう、「先見の明」を授けた。
イスハの娘にして夢と幸運を司る「リリス」は、それ自体が報いそのものとなる「喜び」を授けた。密やかなる放浪者「ホエク」は「冒険心」を授け、新たなもの、快きものを探し求め、その結果として自らの精神を広げてゆくための手段を与えた。
イスハとクルノスの伯父にして匠の神「ヴァール」は「創意工夫」を授け、アエルダリが思い描いたあらゆるものを形にする創造能力を与えた。アシュリアン神の弟にして殺人と破壊、戦争の神である「カイン」は「怒り」を授けた。
この恵みによってアエルダリは神々の贈り物を守り抜き、後世において偉業を成すための手段を手に入れたのであった。そして、アシュリアンとカインの恋人で会った「ガイア」は、アエルダリとその眷族に何も与えなかった。
というのも、彼らが何も持っておらず、何も受け取るに値しないという事こそが、何よりも重要な教訓であると考えたためだ。一休さんのとんちかな?
エルダネッシュは多くの子供を遺し、「エルダナール」から「イィンリアム」までその血が受け継がれている。また、エルダネッシュの弟であったウルサナッシュの後継者は、エルダネッシュの直系たるエルダナールに匹敵する英雄となった。
こうして、エルダネッシュの住まう世界には様々な自然や動物が生息し、神々からの贈り物によってアエルダリらは平和と繁栄の時代へと導かれたのであった。
【家族という名の呪い】
アエルダリの神々はこのようにしエルダネッシュとその眷族らに様々な成長と発展の手段を授かったが、これらが種族の恥辱と滅亡の基礎となるに至るとはこの時誰も知る由もなかった・・。この麗しき序幕は、〈天界の戦い〉の最初の火種となった。
というのも、家族の連なりとは保つのに骨の折れる者であり、神々とてそれは例外ではなかった。神々の繰り広げる愛憎劇、苦難、裏切り、嘲笑の遊戯には終わりが無かった。
不死なる神々にとって、その比類なき不滅性こそは呪わしき倦怠に他ならなかった。
【神々の対立】
栄光に満ちたエルダネッシュの誕生の遥か以前、クルノスとリリスは相思相愛の関係だった。神々の中で唯一、殺戮の神カインだけがこの二神の関係に憤懣を募らせていた。
彼はあらゆる手段を使てリリスの手を取ろうと欲し、その傍らで彼女の美と機知とに魅了され続け、同時にクルノスに害をなそうと憎悪を抱き続けていた。だが、カインはリリスの心を得る事は出来なかった。
永劫とも思われるほど長い年月の後、クルノスは美しきリリスを蔑ろにして、イスハを選び、子であるアエルダリを授かったのだ。ようは浮気でアエルダリが誕生した愛らしき微笑みと、朗らかな笑い声でリリスは自らの苦しみと嫉妬を隠し通したのである。
【不吉な予兆】
ある日、リリスは定命の者たちからなる軍団によってカインが百もの破片に引き裂かれるという夢を見た。その後、彼女は自分が夢に見た内容をカインにだけ討ち明かしてしまう。
それを知ったカインは定命の者たち、すなわちアエルダリたちを抹殺することを決意する。彼はアエルダリたちによって自分が数百の破片に引き裂かれてしまうのではないかと考えたからだ。
これは彼女の計画であり、自らを蔑ろにしたクルノスとイスハへの復讐のために行ったのである。
【イスハの涙】
カインがもたらす恐るべき復讐劇が幕を開け、実行に移されようとしたその時、イスハは涙した。彼女の悲嘆の叫びは天界に反響し、全能なる神々の長アシュリアンはその悲しみを聞き入れた。
アシュリアンはカインがアエルダリを滅ぼすことを防ぐため、アエルダリと神々との間に何物にも通り抜けられぬ障壁を築き上げ、両者を永遠に会えないようにした。さらにアシュリアンはいかなる神であっても二度とアエルダリに介入、および接触を行ってはいけないという掟を定めた。
こうして殺戮の神によってアエルダリが滅ぼされる事は無くなったが、クルノスとイスハは永遠に愛する自らの子供たちとの接触ができないようになってしまう。クルノスは耐え難い苦しみに苛まれ、イスハが流す涙は勢いを増してしまった。
【道標石の誕生】
ある日の真夜中、イスハとクルノスは鍛冶神ヴァールの工房を密かに訪れ、この工匠の神にアシュリアンの行った仕打ちを取り払うための支援を頼んだ。というのも、それが実現できるのはクルノスとイスハの伯父であるヴァールにおいて他ならなかったのだ。
二神はヴァールに懇願し続け、遂に我が子を失った姪の悲痛な嘆きと慟哭に耐えられなくなった彼は、その願いを聞き入れる事にした。この偉大なる工匠の神は彼女の涙を慎重に取り上げると、それを星々の如く輝く石「道標石」(ウェイストーン)へと鍛え上げた。
道標石を経由して、イスハは定命なる我が子アエルダリと対話する事ができるようになった。そしてイスハとクルノスはアエルダリに多くの物事を教えた。
【許されざる再会】
イスハとクルノスは秘密裏にアエルダリとの接触を繰り返してきており、当初は厳重にそのことを隠していた。だが、時が過ぎていくうちに誰にも見つからぬことに自信を得た二神の振る舞いは慢心を招いた。
遂にある時、不注意からカイン神はイスハとクルノスがアエルダリと連絡を取り合っているところを偶然発見し、その内容を全てアシュリアンへと報告したのだ。神々の父たるアシュリアンが感じたのは、怒りと失望の両方であった。
アシュリアンはイスハとクルノス、そしてアエルダリのために為した障壁や掟にも関わらず、アシュリアンは恩を仇で返されたのだ。アシュリアンは重苦しい思いを抱きつつも、イスハとクルノスの処遇を変更した。
イスハとクルノスはアシュリアンの庇護下ではなく、カインの元へ引き渡されたのだ。それはいわば見せしめであり、カインはイスハとクルノスを焔と焼け焦げた鋼鉄で縛り上げ、慮因の身に貶めたのだ。
罰を受けた二神は定命なるものの目からも神々の視界からも隔てられた業火の穴に封じられ、焼き尽くされ、果てしなく長い苦痛に満ちた時間を耐えた。
【ヴァール神と100本の剣】
ヴァール神のみが、犠牲となった二神の代わりに嘆願した。二神が囚われ、拷問されるに至った計画の一部に加担していたのが彼であれば、二神を解放するために働きかけたのもまた彼であった。
大いなる工匠の神はカインに交渉し、二神を解放する条件に合意した。その条件とは、ヴァールがカインに百本の剣を鍛え上げること、そしてそれぞれが先に鍛え上げられたものよりも優れた剣であることがその条件であった。
それらが完成すれば、その見返りとしてクルノスとイスハは解放される事となる。ただし、カインはヴァールに剣の制作時間を1年と定めた。
ヴァールは昼夜問わずにひたすら剣を鍛え上げ続けた。工匠の神ヴァールの鍛え上げた剣は一本一本が計り知れない価値があり、それらはいずれも二つとない稀少かつ比類なき傑作品であった。
だが、約束の一年が過ぎた時、たった1本の剣のみが完成に至ってはいなかった。ヴァールはこの致命的な失策を隠すために、これが明るみに出た際はカインとの合意は破棄されてしまうからだ。
そこでヴァールは最後の一本の剣は、定命の者が鍛えた剣を混ぜてしまうことでこの場をやり過ごそうと考えたのだ。いわば産地偽装そして100本の剣を贈られたカインは、この大いなる贈与を言葉に尽くせぬほどの喜びを覚えたのであった。
約束通りカインはイスハとクルノスを解放したのであった。だが、カインは残りの一本が偽物であることに気づいた時、彼は烈々たる咆哮を上げて激怒したのだ。
彼はヴァールを嘘と偽り語る者として弾劾し、報復を求めた。''そして、ヴァールとカインの間で〈天界の戦い〉*1が勃発したのだ。''
【〈天界の戦い〉】
遂に始まったヴァールとカインの二神による激しき戦いは、神々を二つの派閥へと分け、ヴァール派とカイン派は血塗られた戦争へと駆り立てられた。この戦争で神々らによる英雄的な偉業と卑劣な悪行が両陣営で繰り返され、その影響はアエルダリの住む世界と種族の争いにも反映された。
神々の長であるアシュリアンはこの時どちら側にもつかず、無表情でその様子を見守っていたが、イスハとクルノスを軽率に裁いた自らの判断を徐々に後悔するようになった。彼は神々たちの運命を知るために運命の女王たるモライ=ヘグのもとを訪ねた。
運命を視る老婆の神は、その枷糸を読み、絡み合うあらゆる定めの道筋を辿った。彼女の眼差しが何処に向けられようとも、その先には死と焔と苦痛だけが横たわっており、その他には何一つ見出す事ができなかった。
彼女は不安を覚えつつも、臆することなくカインを追いかけた。そして彼自身に気づかれる事なく、燃え盛る彼の血をほんの少量抜き取って持ち帰ったのだ。
彼女は焔をあげて燃え続けるこの液体を自らの秤の一方に置き、盟友であるエルダネッシュの運命の糸を秤のもう一方へと置いた。すると、その重みはぴたりと釣り合ったのだ。
その結果を知ったモライ=ヘグはアシュリアンへとこう伝えた。神々の運命は定命なる者、すなわちアエルダリらの手に握られており、彼らの行動だけが神々の命運を決するのだと。
【中立を貫く神】
多くの神々と天界に身を置くその眷族たちは、互いに取引や約定を交わしつつ、またそれらをあっさりと破りつつ、自らが味方する勢力を変え続けた。それは他の神々に従うそぶりを見せながら、自らの野心に従いもするという安定性の欠けているという神々と眷族の性質そのものの振る舞いであった。
天界は常に戦いの雷鳴が鳴り響いたが、ただ神々の長たるアシュリアンだけが未だに他のいかなる神とも与することも拒んでいた。彼自身は天界そのものに大いなる損傷がもたらされている事を望んでいなかったが。
しかし彼は常にヴァールとカインの二神の上に君臨する主であり続けたのだ。
【大剣アナリス】
この戦争の最終章は、大いなる工匠の神と殺戮の神の間で繰り広げられた。そしてヴァールはカインを打倒するために空前絶後の大剣を作り上げた。
それは元々カインのために100本の剣を鍛え上げ、その内の最後の1本にあたるものであった。最大規模に達する大剣はヴァールが持つすべての技量を注ぎ込み、学び取ったあらゆる技巧を結集して鍛え上げられた。
その剣は“黎明の光”「アナリス」と名付けられ、ヴァールはそれを携えてカインとの最終決戦へと赴いた。カインとヴァールの二神は何時間も戦い続け、お互いに深手を負い、また負わせていた。
大剣アナリスに込められた力を惜しみなく解放して戦ったヴァールだったが、破壊の神カインが持つ力には及ばなかった。カインはヴァールを追放し、彼を天界から放逐した。
それからカインは、ヴァール自身がかつて鋳造した鎖を使って、彼自身の金床にヴァールを縛り付けたのであった。遂に長きに渡る戦いに勝利したカインは自らの勝利を誇らしげに叫んだ。
彼が為すべき最後の総仕上げは、大剣アナリスを己が所有物であると宣言するだけであった。彼は投げ出されていたアナリスを掴もうとしたその瞬間、ヴァールの盟友である“隼”「ファオルク」が飛来し、アナリスを奪い去ってしまう。
そしてファオルクが飛び去ったその先にはなんと、偉大なるアエルダリであるエルダネッシュが立っており、ファオルクから渡されたアナリスを受け取ったのだ。
【エルダネッシュとの決闘】
カインはエルダネッシュに対する憎悪を燃え上がらせ、その血は白熱する憤怒のままに煮えたぎっていた。〈天界の戦い〉が勃発する以前、カインとエルダネッシュは肩を並べて戦っていた。
殺戮の神たるカインは、無数の戦場で無数の勝利をエルダネッシュにもたらしていた。彼らは「オートクティニィ」、「スレイアキン」、「インクィルン」などの敵をともに倒した盟友だったのである。
そのような栄光に満ちたある勝利の後、カインはエルダネッシュに驚異に満ちた未来像を見せた。その光景の中で彼が見たものは、銀河系の覇者となった己の姿であった。
彼の力に匹敵する者は皆無であり、あらゆるアエルダリが彼を英雄として崇め、従い、いかなる敵も彼の行く手を阻むことは出来なかったのである。カイン神がこの未来と交換条件でエルダネッシュに要求したのは、ただエルダネッシュがカイン神に忠誠を誓う事のみであった。
だが、エルダネッシュはこれを拒んだ。愛するクルノスとイスハの二神を幽閉し、拷問したカイン神に裁きをもたらし、討ち果たそうと望んでいたのだ。
復讐のために盟友カインに一騎打ちを挑んだエルダネッシュは、アナリスの力によって強化され激戦を繰り広げた。しかし、強大無比なアナリスの力を以てしても、カインを倒すことはできずにエルダネッシュは引き裂かれてしまった。
カインはあらゆる定命の存在や神々に対して最終的な勝利宣言を行い、大剣アナリスは依然としてエルダネッシュの流れ出る輝ける血を浴びつつ、彼の拳にしっかりとその柄が握られていた。そしてファオルクと"大いなる鷹"はエルダネッシュの亡骸を空へと運び、天に横たえた。
そこで彼の亡骸は「赤き月」へと変貌し、以来、この月影が偉大なる筆頭戦士の死を思い起こさせる縁となったのである。そのため、アエルダリにとって赤色の月は災いの兆しと見なされている。
【〈天界の戦い〉の終結】
遂に〈天界の戦い〉はカインが勝利を手にした。だが、この戦争の幕は兄であるアシュリアンによって引かれる事となる・・。
アシュリアンは偉大なる最初のアエルダリが弟の手によって葬られた事に愕然とし、カインに永劫の呪いをかけた。これによってカインの手からは永遠に血が滴り落ちるようになった。
こうして彼は、自らのあらゆる所業を常にまざまざと思い起こさせられる事となったのだそれ故、彼は後に「カエラ=メンシャ=カイン」すなわち“血に塗れし手を持つ者”カインの名で知れ渡るようになったのだ・・。
【神々の終焉】
〈天界の戦い〉が終結した数千年後、アエルダリ種族が銀河系に大帝国を築き上げる。だが、彼らは自らの欲望に忠実となってしまい、退廃的でかつ堕落した道を辿る事となる。
かつてのように天界に住まう神々への崇拝や畏敬の念は無くなっていき、次第に古き良き文化は忘れ去られてしまう。そして彼らの欲望はさらに過激でかつ暗い刺激に身を委ねるようになっていき、エキゾチックな新興宗教が種族全体に広がっていった。
彼らの魂や感情は〈歪み〉の空間で融合し合い、意識を持ち始めた。そしてアエルダリの政府が崩壊し、社会全体が救いようのない退廃が覆った時、もはやすでに手遅れな状態になっていた。
穢れし退廃の皇子、スラーネッシュ神が〈歪み〉の空間に誕生し、その邪悪な産声を上げたのだ。スラーネッシュはアエルダリの神々を次々と殺害し、リリス、アシュリアン、モライ=ヘグなどの重要な神までも葬っていったのだ。
この未曾有の危機に立ち向かったカインはスラーネッシュと激戦を繰り広げた。しかし、神々の力を貪り喰らい、多くのアエルダリの魂と感情の集合体であるスラーネッシュはあまりにも強い力を持っていたのである。
スラーネッシュは遂にカインを追い詰め、彼を100万個もの破片へとバラバラにしたのだ。とどめは刺されなかったもの、彼は皮肉にもリリスの予言通りにアエルダリら(の魂)によってバラバラにされたのだ。
後にカインは現身(アバター)として一時的に降臨してアエルダリらと共に戦う事となる。カインを打ち倒したスラーネッシュは、女神イスハを自分のものにしようと彼女に襲いかかろうとした。
そして、スラーネッシュはイスハは自分のものだと主張したその時、腐敗の神である「ナーグル」が彼女を助け、自らの住まう「ナーグル神の庭」へと持ち帰ったのだ。
だが、イスハはナーグル神の実験台となった。彼女はナーグル神が創り上げた毒や疫病の実験台となり、その効果がどれだけ出ているかをその身をもって検証させられる。
効果があると判断した場合は現実宇宙にそれを撒き散らし、気に入らなければまた毒や疫病は作り直される事となった。皮肉なことに、彼女自身は豊穣の力によって死なないため、ナーグル神から毒や疫病を実験させられる終わりなき苦痛に満ちた生き地獄を味わう事となったのだ・・。
しかし、ナーグル神が忙しい時に、イスハは密かに人間へと囁き、自分が苦しんだ毒や疫病の治療方法を伝えているのである。数々の神々が葬られた中、〈笑う神〉セゴラックは〈網辻〉へと逃亡し、スラーネッシュ神を打倒するための最後の演目を画策しているという。
こうして、アエルダリの神々はスラーネッシュによってほとんどが滅亡してしまったのだ・・。
【ラーナ・タンドラ】
アエルダリには〈不死鳥の将〉たちの伝説に、「アシュルヤータ」と呼ばれる叙事詩が存在する。その最終章には「ラーナ・タンドラ」と呼ばれる最終戦争によって幕を閉じるという。
ラーナ・タンドラは星々の間で繰り広げられる終末戦争を描いた内容で、この戦いの中でアエルダリとその神々は等しく「真の終焉」を迎え、現実宇宙と〈歪み〉の両方が完全に破壊されると言われている。
アエルダリ古王国が滅亡して以来、アエルダリの秘密の図書館である〈黒の書庫〉(ブラック・ライブラリ)には黒曜石の台座の上に光の鎖で縛られた水晶の書物が置かれている。現実宇宙で伝説的な事象が起こるたびにその鎖は一つづつ消えてゆき、大いなる裂け目が開く直前にその書物の封印が解かれた。
そこには〈笑う神〉セゴラックが直々書いたとされる文章があり、種族の〈失墜〉の物語を根底から覆す最後の演目についての内容が記されていた。その内容はラーナ・タンドラによる終焉の代わりに、スラーネッシュを欺いてアエルダリが滅びてしまうのではなく、アエルダリ種族を救済するために全てのエネルギーを使用するセゴラックによる究極の演目が語られていたのだ。
このような内容は実際に実現できるかどうかは依然として不明であり、新たな神である「インニアード神」の存在も含めてアエルダリの未来は依然として予測不可能な状態である。


アエルダリの神々

【概要】
アエルダリは古代から様々な種族の神を信仰している。(デュカーリ除く)これらの神々の活躍はアエルダリの神話に登場し、今でも語り継がれたり、ハーレクィンの劇の題材として伝わっている。
それらの神々は、〈失墜〉の際にほとんどがスラーネッシュ神によって殺されてしまった。しかし、第42千年紀(西暦41000年代)においてごく少数ながらも神々は生存しており、今でもアエルダリ族にとって畏怖の念を持って崇拝されている。


余談だが、一部の神々の設定や名称はウォーハンマーFBウォーハンマーAoSと共通している場合もある。


【神々の一覧】

  • 「アシュリアン神」

神々の長であり、もっとも古い神とされ、〈不死鳥の王〉(フェニックス・キング)とも呼ばれている。
火と光の象徴として用いられることが多い。


  • 「カイン神」

アシュリアンの弟である「カエラ=メンシャ=カイン」神は、〈血塗まみれの手を持つ神〉として知られる。カイン神は殺人と戦争を司る神であり、力と破壊を求める神でもある。
アエルダリ族の〈失墜〉の際、スラーネッシュ神との戦いでは壮絶な死闘を繰り広げたが、敗れ去ってしまう。しかし、スラーネッシュ神もとどめを刺す力は残っていなかった。
カイン神はいくつもの分身に分かれ、各方舟の内部にある幽骨核(レイスボーンコア)に根を張って、現身(アヴァター)となって姿を変えた。
彼はアエルダリたちの儀式によってふたたび現身の姿となって降臨し、今なお戦場で彼らを導いている。


  • 「ヴァール神」

“不具の鍛冶神”と呼ばれている神。道具の鍛冶の才能を持ち、仲間の少ない職人であると高く評価されている。彼の唯一の目的は「真実」ではなく「美」の追求であることから、彼は道徳がないと言われている。
ヴァール神は、しばしば、鉄床に自身の身体を鎖でつながれた姿で描かれる。


  • 「クルノス神」

狩猟神と呼ばれている神。イスハ神の夫で、リリスとアエルダリ族の父でもある。


  • 「リリス神」

アエルダリ三大女神(トリニティ・オヴ・ゴッデス)の一柱で、夢と希望の女神である。最も若い女神で、イスハ神の娘である。
彼女はカイン神がアエルダリにバラバラにされてしまうと予言したという。


  • 「イスハ神」

アエルダリ三大女神(トリニティ・オヴ・ゴッデス)の一柱で、収穫と恵みの女神である。クルノスの妻でありアエルダリ族の母とされ、かの種族を産み出した存在という。
魂魄石(スピリットストーン)は彼女の涙から作れたという言い伝えが残っている。〈失墜〉のさなか、腐敗と疫病をもたらす渾沌の神々の一柱である「ナーグル」神が、女神イスハを連れ去り、自らの領域の中心部にて今なお幽閉しているという。
そしてナーグルは新たに生み出した疫病をイスハで試し、この女神の回復力を利用して疫病の効果を測っていると言われている。つまりモルモット


  • 「〈老婆〉モライ=ヘグ神」

アエルダリ三大女神(トリニティ・オヴ・ゴッデス)の一柱で、年老いた神として知られている。彼女の持つ生皮のルーンポーチの中に、生者の運命を忍ばせていると言われている。


  • 「セゴラック神」

〈笑う神〉ともいわれている神。彼はあざけり、邪悪、直観的、そして謎めいていることで知られているトリックスターの神である。彼のいたずらと冗談は、誇りの罪のために同様に神と人間を罰するという。
〈失墜〉の際はアエルダリ族が作り上げたワープ通路〈網辻〉の中に隠れ逃げてスラーネッシュ神から逃げ延びた。現在では「ハーレクィン」を従えて、〈渇きたる乙女〉ことスラーネッシュ神を打ち倒すための秘策を練っているという。


  • 「インニナード神」

アエルダリの〈死者の神〉で近年に現実宇宙へと顕現を果たした。この神はアエルダリの神話には全く登場していない。
すべてのアエルダリ族の魂が〈囁く神〉であるインニナード神にささげされることによって、スラーネッシュ神を倒せる力が得られると信じられている。アエルダリ族の魂が無限回路(インフィニティーサーキット)に入ることによってインニナードの力は増していって成長する。
この神が顕現する以前、インニナードの存在を強く信じていたアエルダリの「エルドラド・ウルスラーン」は神を早期に顕現させるための儀式を計画していた。しかし、スペースマリーンの異種族抹殺を専門とする部隊「デスウォッチ戦団」の妨害によって計画は失敗に終わった。
しかし、インニアード神は不完全ながらも顕現に成功し、意識片が銀河を彷徨っていた。インニアード神の意識片は〈仄暗き都〉へと流れ着き、瀕死の状態であった一人のアエルダリ「イヴライネ」と融合する。
その時、イヴライネはインニアード神から流れ出る死のエネルギーを伝える導管となり、死に逝くアエルダリたちの魂を吸収して力を増したのであった。そのおかげで、アエルダリたちの魂はスラーネッシュ神に貪り食われる事なく、彼女を通じて生き続ける事が可能となったのである。
その後、インニアード神の巫女となったイヴライネは、スラーネッシュ神妥当と種族統一を掲げた新派閥「インナーリ」を結成し、アエルダリの信者たちを導いている。
インニアード神は「インカーネ」と呼ばれる現身(アヴァター)として召喚され、インナーリと共に戦闘へと参加することもある。


【〈現身〉(アヴァター)】
現在でもアエルダリの神は、少数ながら生存しており、それらの神を”化身”として呼び出すことが出来る。〈血濡れの手を持つ神〉である「カエラ=メンシャ=カイン神」は「アヴァター・オヴ・カイン」として、死を司る「インニアード神」は、「インカーネ」として物質世界に降臨し、神々しい超然的な力を振るうことが可能となる。


  • 「アヴァター・オヴ・カイン」


あらゆる〈方舟〉の心臓部には、幽骨からなる閉ざされし神所があり、カイン神が祀られている。〈方舟〉が戦争の準備を始めると、彼らは神所にてカイン神のアヴァターを降臨するための儀式が行われる。建物はアエルダリたちの戦いに渇望するかのように、神所全体が脈打つ。内部では自らの血をたぎらせ、内なる輝きを始めているのだ。
ここに「若き王」と呼ばれるファーシーアによって選ばれしアスペクト・ウォリアーが連れてこられる。裸になった若き王は、いばらの冠をかぶり、その頭から爪先までくまなく「カエラ=メンシャ=カイン神」の血のルーンで覆われる。儀式が熱狂を増すにつれ、神所へと通じる重々しい青銅の扉が開かれ、若き王は扉の先にある赤々とした光へと足を踏み入れていく。
青銅の扉は閉ざされた神所は、何時間にもわたって激しく鳴動する。そして最後には、衝撃波によって青銅の扉が開かれ、カイン神の現身であるアヴァター・オヴ・カインが降臨するのだ。
アヴァター・オヴ・カインはまさに古の神が実体化したかのごとき存在で、体は燃えさかるような赤々とした巨体をもつ。右手には”嘆きやまぬ破滅”と呼ばれる剣を持ち、命あるものを切り裂くたびに哀切なる前胸を放つとされる神剣である。
ところで、降臨の儀式に参加した「若き王」の魂がどうなるかについてはファーシーアでさえ、あえて語ろうとしない。若き王の魂はカイン神の偉大なる魂の一部として取り込まれたか、あるいは完全に燃え尽きてその魂がカイン神の供物になるのか、その運命はおそらく後者だろう・・。



画像出典:コデックス「デスウォッチ第8版」(codex:DEATHWATCH) P5 イラストより


  • 「インカーネ」


この強大な化身、渦巻く死の幽気体(エクトプラズム)に包まれたインカーネに比べれば、イヴライネもヴィスアークも、矮小な存在に見えるだろう。この上なく美しく、また恐ろしい姿を目にした者は、その衝撃にもかかわらず目を離せなくなるだろう。
だが、これがアエルダリの真の救世主だとすれば、あまりにおぞましい存在としか考えられないに違いない。インカーネの姿は、見る者を恐怖に陥れる。死と禁忌の力を操る、魂の支配者ならではの外見だが、それは全アエルダリの仇敵である渾沌の神「スラーネッシュ」を象徴する姿に酷似しているのだ。
インカーネも両性具有の外観だが、これは死が老若男女の区別がなく、また貧富や権威の内外といった”俗物的な区別を超越した運命”として降りかかってくることを意味するからだという。この理由からインカーネがインニアード神の化身であると考えられ、〈血濡れの手を持つ神〉と呼ばれているカイン神の化身「アヴァター・オヴ・カイン」と多くの共通点を見出したからだ。
インカーネは単独の一個体だけが確認されているため、本来はアヴァター・オヴ・カインとの比較が妥当か定かならざるところだが、インニアード神の力は新たな死者の増加によって強まるものの、かの神の力は現実宇宙に顕現した本来の姿のほんの一部だけだ。戦いの場に現れていないとき、インカーネは次元の狭間に身を置いている。
それは物質空間における視野の片隅、微かな瞬きでしかとらえられない現実と〈歪み〉の間に存在する領域だ。この領域をつなげられるのは、死のエナジーのみだ。
インカーネが現実宇宙に顕現する際は、この世ならぬ力が巨大な爆発を伴ってあふれ出る。耳をつんざく轟音と共に、うず高く積まれた死体の山が広がる戦場に白く閃光が走り、幽体の渦が恐るべき激しさで回転を始め、そびえたつ巨体が地表に降臨する。
劣等種族に滅びをもたらす、アエルダリ再生の象徴であるインカーネは、勝利の叫びと共に現実宇宙に出現する。禁忌の力は死の奔流となって獲物の周囲を渦巻き、サイキックの嵐は神の怒りに触れたあらゆる定命なる者たちを引き裂く。
インカーネと共に戦うアエルダリは冷き活力によってその動きを速め、〈蘇りし者〉インナーリの一員にふさわしき冷徹な意思の下に戦う。定命なる敵には確実な死が訪れる。それは日が沈むのと等しき、抗えざる運命だ。
インカーネの凝視によって灰燼に帰さなかった敵は、伝説の〈老婆の剣〉の中で最大最強の力を秘め、求めに応じて刃の形を変える〈魂の剣〉「ヴィリス=ザール」によって切り刻まれ、魂なき燃え殻として大地を転がる。この剣のまえには、〈上級悪魔〉(グレーターディーモン)ですらやすやすと貫かれ、大地に縫い付けられるだろう。



画像出典:キャンペーンブック「GATHERING STORM BOOK II FRACTURE OF BIEL-TAN」P64 イラストより


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主な勢力

クラフトワールド(アシュルヤーニ)

“あの時代、星々の生死すらも私たちの思うがままだった。そんな私たちの意思に、君ごときが刃向かうとはね”


-先見司 (ファーシーア) メレン・ビエラァーン




【概要】
巨大な都市母船、〈方舟〉(クラフトワールド)に住むアエルダリ族の勢力。〈道〉と呼ばれる精神修行で鍛えられた白兵戦やサイキック能力、先見の能力、高い科学力を誇る兵器などを駆使して戦う。
古代アエルダリ文明が滅ぶ前に、俗世から離れた種族の少数派が生き残り、その子孫が宇宙を放浪しながら種族再興のために戦っている。
種族自体は数が少ないため、軍は少数精鋭の部隊にせざるを得ない。そのため、一般市民も戦闘に参加できるよう、訓練を積み重ねている。



画像出典:ゲーム 「Warhammer 40,000: Dawn of War3」 Eldar Key Artより


謎めいた神秘の勢力アシュルヤーニについてはこちらを参考にされたし


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デュカーリ(ダークエルダー)

“祈ることだな、生きたままやつらに連れ去られることのないように…”



【概要】
〈失墜〉の際「方舟」ではなく、〈歪み〉を利用したワープ通路「ウェブウェイ」(網辻)奥深くにある大都市「コモラフ」に逃げ込んだ古代アエルダリ族の子孫。
帝国ではダークエルダー呼ばれているが、正式名称は「デュカーリ」である。
スラーネッシュ神誕生時の衝撃にも耐え抜いた極悪なアエルダリ族で、宇宙海賊をしながら多種族の痛みを生きるための活力としており、奴隷を拷問して生命力を漲らせる。
その性質は残虐かつサディスティック(希にマゾヒスティック)。相手の苦しみを生で感じられる接近戦を好む。
ほとんどのテクノロジーがアエルダリのものと類似した高度な兵器を所持しており、敵に回せばアエルダリ同様に苦戦を強いられる。
デュカーリの社会には複数のギャング組織で構成され、それらをまとめる貴族階級による支配体制が確立されている。ギャング組織同士での対立も珍しく無く、常に成り上がりを狙おうとするもの同士の抗争が後を絶たない。
また、元々同じ種族であるクラフトワールドの各勢力とも友好関係を結んでいる場合もあり、お互いの目的が一致していれば同盟軍を組んで戦うこともある。



画像出典:コデックス「デュカーリ」(codex:DRUKHARI)第8版 P4,P5 イラストより


冷酷なる略奪者デュカーリについてはこちらを参考にされたし


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ハーレクィン


【概要】
アエルダリ族の一派だが、クラフトワールドの勢力やデュカーリとは距離を置いている奇妙な勢力。ピエロや道化師のような派手な見た目をしている。
彼らは〈失墜〉の際、〈網辻〉に逃れその身を守った〈笑う神〉「セゴラック」の信仰者である。〈網辻〉を使い、アエルダリの方舟やデュカーリの仄暗き都「コモラフ」を旅しては、神々の物語を再演する催しを行う。



画像出典:コデックス「ハーレクィン」(codex:Harlequins)第8版 表紙イラストより


謎めいた道化師ハーレクィンについてはこちらを参考にされたし


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インナーリ

画像出典:ミニチュアキット「Triumvirate of Ynnead」 同梱アートワークカードより


【概要】
第41千年紀末(西暦40999年)から台頭してきたアエルダリの新勢力で、死せる者の神「インニアード」を崇拝する。エルドラド・ウルスラーンの儀式とイヴライネとの融合によって「インニアード神」が顕現し、アエルダリ種族にとっての新たな希望となった。
「アエルダリの最後の一人が死ぬと、微睡みし死者の神、インニアードが目覚め、最も恐るべき、または憎むべき敵であるスラーネッシュを滅ぼす」という古代の予言をインナーリたちは信じている。だが、彼らの信ずるところによれば、予言の言葉の成就には文字通り種族全員の絶命を必要とするわけではないという。
インニアード神に救われた女司祭「イヴライネ」と護衛役である筆頭戦士「ヴィスアーク」を中心に、スラーネッシュ神を打倒することを目的して行動している。インナーリの構成員はクラフトワールドのアエルダリやデュカーリ、ハーレクィンなどのアエルダリの混成勢力で構成される。
陰謀団の戦士たちは、方舟のガーディアンと並んで死の破片と装甲を貫くシュリケンの猛斉を放つ。ハーレクィンの一座は魔女団と共に死の舞踏を披露し、ウィッチのシャードネットに封じられた敵を血祭にあげる。
スラーネッシュ打倒の大義を掲げるイヴライネの下に、再びアエルダリの種族が派閥の壁を越えて一つになろうとしているのだ。しかし、インナーリたちは彼ら自種族の救世主だと自負しているが、一部のアエルダリからは種族の滅びの予兆ではないかと懸念されている。
“甦りし者”の名で知られる彼女らを、悪魔の力に穢された不浄なる存在とみなすものも少なくはない。また、インナーリはすでに死者と化しているのだと考える者たちもいるという。
【死者の力】
彼女らには他種族には真似できない力、すなわち「死者の力」を駆使する。インナーリの軍勢が敵との戦闘を開始し、流血が生じると、インナーリは戦死した魂だけでなく、彼らが攻撃を活性化するために身に着けている「魂魄石」の中に宿った魂を吸い上げる能力を発揮する。
そのエネルギーを得ることで、彼らは超自然的な速度で戦うことができ、瞬く間に敵を打ち倒したり、同胞を強化したりする異能の力を発揮できるようになる。敵がいかに優勢であり、多くのインナーリを倒したとしても、それはただ生き残ったインナーリたちに力をもたらすのみであり、より苛烈で活力に満ちた反撃を受けることとなるのである。
この力の吸収によって各々のインナーリは生きた魂の貯蔵庫となる。このような手段によって〈かの渇きたる女〉こと渾沌の神「スラーネッシュ」はアエルダリの魂をやすやすと貪ることができなくなってしまうが、スラーネッシュの怒りに油を注ぐことは言うまでもない。
無数の魂と力を集めた定命なるインナーリは、実は他の渾沌の神の目にもきわめて魅力的な獲物と映る。重大な脅威として、飽くなき飢えを満たし得る存在として、インナーリはスラーネッシュにとって二つとない標的だ。
インナーリはアエルダリという種族の魂が最大の敵の手に陥ることを阻む存在でありながら、彼女らの背後には常に死が付きまとう。''またこの力は、銀河系の命運にも大きくかかわっており、〈帝国〉の英雄である総主長「ロブート・グィリマン」の復活にも一役買っている。''
【インナーリに対する疑念】
圧倒的な死者の力を得て種の滅びに立ち向かおうとするインナーリだが、一方で同種族の一部からはインニナード神は悪魔の使いではないかと疑問を投げかける者も少なくない。彼女らはインニアード神の力を借りて化身(アヴァター)を降臨させる。
インニアード神の化身である「インカーネ」はその神々しくもおぞましき姿を現し、インナーリの軍勢を阻む敵に滅びをもたらす。しかし、インカーネの姿がアエルダリに〈失墜〉をもたらした神、「スラーネッシュ」が遣わす悪魔の姿に酷似しているとに思い至った者たちまでいる。
〈蘇りし者〉インナーリにとって、そのような非難は許されざるものであり、しばしば非難する者に対しては方舟「セイム=ハン」の様式に則った儀式的決闘を要求し、インナーリに対する疑念や反発を避けようとする。
しかし、皮肉なことに彼女らはディーモンの撃滅を目指して苛烈に戦うものの、インナーリ自体がディーモンだとみなされる事例はきわめて多い。インナーリは、インニアード神の名のもとにアエルダリ社会を復興し、アエルダリ種族を再び銀河の覇者にふさわしき栄光の座につけようと考えているが、インナーリの操る強大なサイキックパワーは、他の種族を尊重に値しないという傲慢な価値観の源にもなっている。
さらに憂慮すべき事態としては、インナーリが脅威とみなす〈渾沌の軍勢〉が、インナーリの行く先々でその信仰頻度を高めているという状況だ。中でもスラーネッシュの勢力は著しい頻度で出現し、インナーリの行く手に様々な文明社会を蹂躙する勢いで物質宇宙を脅かしている。
インナーリの後には破壊と荒廃のみが残されているという結果に否定の余地はない。かの者たちは、同胞の再生と同時に、他者へ滅亡をもたらしていることも、また事実なのだ。
【〈老婆の剣〉(クロンソード)】
現時点でインニアード神は完全なる目覚めを果たしていない。予言では、全てのアエルダリが絶命した際にインニアード神が完全に目覚め、スラーネッシュ神を打倒するとあるが、インニアード神が完全に目覚める方法がもう一つ存在する。
それはアエルダリの伝説に存在する5つの〈老婆の剣〉(クロンソード)をすべて集める事である。それぞれの剣は老婆の神「モライ=ヘグ」の手の指から作られたと言われており、これらの剣は種族に滅亡の危機が迫った時に用いる防御兵器なのだという。
インナーリたちは、5本の〈老婆の剣〉全てを集め、一ヵ所に揃える事によって、種族の魂を全て犠牲にすることなくインニアード神が目覚め、スラーネッシュ神を打倒できることが可能だと信じている。現在、その中の4本はアエルダリたちが獲得しており、イヴライネ、ヴィスアーク、インカーネ、ユリエルが所持している。
そして最後の一本は何処にあるのかというと、なんと〈渾沌の領域〉にある「スラーネッシュ神の宮」の最深部にそびえる〈快楽の宮殿〉に安置されている。つまり、スラーネッシュ神の住まう本拠地へと命懸けで乗り込まないと最後の一本が入手できないのだ。
果たしてインナーリは全ての剣を揃えてインニアード神を覚醒させる事ができるのであろうか?それはインナーリを率いるイヴライネの決断にかかっている。


【主要キャラ】

  • 「イヴライネ」


【概要】
インナーリの女司祭にして代表者であるアエルダリ。彼女はインニナード神から力を授かった最初のアエルダリでもある。
彼女の装いは奇抜にして豪奢だが、その下には俊敏な動きを補佐するウィッチスーツを装着している。イヴライネは伝説の武器〈悲嘆の剣〉「ガ=ヴィール」を振るって誰よりも苛烈に戦う。
その剣に軽く触れたものは焼き尽くされ、一掴みの灰と化してしまう。さらに不可思議なことに彼女に備わったインニアード神の力によって、魂魄石の中に秘められた同胞たちの魂や、戦場で倒れた仲間たちの魂をも己が戦闘力を増強させるために用い得るという。
神がかった力を振るう彼女は大義を掲げ、アシュルヤニ(クラフトワールド)、デュカーリ、ハーレクィンといったあらゆるアエルダリたちを集わせ、失われた種族の栄光を再び取り戻すだろう。


画像出典:キャンペーンブック「GATHERING STORM BOOK II FRACTURE OF BIEL-TAN」P6,P7 イラストより


【若き時代】
彼女の人生は、インナーリが台頭するまでの間、居場所らしい居場所は存在しなかった。様々な立場でアエルダリ社会を渡り歩いてきており、そういった経験は現在におけるインニアード神の巫女として相応しき人物として必要のものであったことがわかるだろう。
うら若き時代、イヴライネは好戦的で流血嗜好彼女は〈方舟〉「ビエル=タン」で〈戦士の道〉を歩んでいた。「化身の戦士」(アスペクト・ウォリアー)の一つである「ダイア・アヴェンジャー」となり、〈先達〉(エクサーチ)の一人である「ラーリアン」の下で戦いの技を学んだ。
その間、二人は分かち難い絆を結ぶに至ったが、それ故に彼女は〈戦士の道〉を離れ、〈先見の道〉へと至って別れた。だが、ラーリアンは彼女を忘れることはできなかったが、二人の別れはその後の運命を大きく分岐させることとなったのだ。
〈戦士の道〉と〈先見の道〉も徹底して修行を積んだ彼女は方舟から追放されてしまい、イヴライネはアエルダリ社会のあらゆる場所をさまよった。やがて彼女は出奔者となり、銀河を渡りながらレンジャーたちと行動し、忍耐と待機を己が業とする術を学んだ。
だが、彼女はいまだふさわしい場所を見出したとは考えていなかった。
【宇宙海賊時代】
優雅に翼を広げた宇宙船「ラナスリエール」に搭乗して銀河を旅するさなか、イヴライネは己が魂に誰かが呼びかけるのを感じ、放浪者の集団を離れて船の乗組員となった。長年の航海の間、彼女は無数の戦いを生き抜き、戦局を図る目の確かさと素早い判断によって幾度も死地を乗り越えていった。
乗組員の中で影響力を増した彼女は、いつしか「アムハロック」(アエルダリの言語で”無慈悲なる者”を意味する)の異名で呼ばれるようになり、宇宙海賊(コルセア)の頭目として交易船の宇宙航路でその名を恐れられるようになった。
乗組員たちの中にはイヴライネの正体を訝しむ(いぶかしむ)者たちもいたが、新たな衣装に身を包んだイヴライネの正体が何者であれ、衣装にふさわしき役回りを演じていたことは事実だった。さらにイヴライネ自身も、そうした認識を当然のものとみなしていた。
彼女は自分がカメレオンのごとき存在であると自覚して、新たな挑戦に勝利し続けることで絶え間なく姿を変え続けていったのである。しかし、イヴライネの部下たちが結託して彼女に反乱を起こし、イヴライネは海賊団から追放された。
その時彼女は〈仄暗き都〉として知られる「コモラフ」のドッグの一つである「ポート・ヴィリファクト」に降り立ったのだ。海賊団の新たな船長となった「ロード・アラクレオ」は彼女を追放したことをすぐに後悔することとなる。
イヴライネは比類なきリーダーであり、海賊団の船員は彼女なしでは何一つ関心を払おうとしなかったのだ。
【魔女団の時代】
かつては女主人としてはいかの上に君臨していた彼女も、今では邪悪なるデュカーリが住まう〈仄暗き都〉「コモラフ」における街頭の新参者に過ぎなかった。裏通りを徘徊する〈渇き屋〉と呼ばれる危険な肉食獣を避けつつ戦い続け、〈魔女団〉(ウィッチカルト)の一員となるやいなや、瞬く間に頭角を現した。
〈影の娘〉の通り名でコモラフにその名を轟かせたイヴライネは、上流階級のある裕福なサークルの支援を得るようになった。彼女自身はコモラフ生まれの真のコモラフ人(びと)ではなかったが、それ故のユニークな存在感が一層コモラフの貴族たちの注目を集めたとも言えよう。
優雅にして洗練された出で立ちや所作と、戦闘時の無慈悲にして残虐な戦いぶりへの豹変は、イヴライネへの関心を何よりも高めていた。彼女の名は流したちの量に比例して高まっていき、ラナスリエールの艦橋にも、方舟「ビエル=タン」の先見司評議会の耳にも届くようになった。
イヴライネの気まぐれな性格は、敵にこの上なく残酷な死に様を晒させることからコモラフの観衆や住人たちから熱烈的な支持を集めたのだ。彼女の戦闘技能は、〈戦士の道〉で鍛えられ、海賊女王としての戦いで磨き上げられ、ついに〈魔女団〉のサキュバスの位階へと彼女を運んだ。
しかし、彼女の運命は〈大いなる啓示の夜〉にて大きな転機を迎えることとなる。
【イヴライネの覚醒】
イヴライネは「クルーシバエル」の闘技場で、コモラフでも名高き戦士である「リリス・ヘスペラクス」との決闘が行われようとしていた。桁外れの戦闘能力を持つリリス本人に決闘を挑めるほどの実力を持つものは少なく、いかなる敵も秒殺されてしまうのが常であった。
だが、今回挑むイヴライネは何か違う雰囲気を持っており、彼女がリリスに匹敵する実力を持つのではないかと主張する者も少なくない。観客の冷めやらぬ熱狂が頂点に達する中で、遂にイヴライネとリリスの決闘が開始された。サキュバスとしては高い戦闘能力を誇るイヴライネであったが、しかし、リリスは持ち前の戦闘力でイヴライネを圧倒し、彼女は追い詰められてしまう。
イヴライネの一瞬の不注意から負傷してしまった。そんな彼女に対して、リリスはとどめを刺す価値もない格下とみなし、闘技場内に手負いのイヴライネを放置して去っていった。戦いは一転してイヴライネの処刑へと趣を変えるかに見えたが、闘技場に現れた新たな刺客は、棒のように細い、女神「モライ=ヘグ」の仮面をつけた謎の女司祭であった。
女司祭は、黒いシルクの複合繊維で覆われ、長らく信仰されていなかった女神「モライ=ヘグ」の仮面をつけていた。女司祭の姿を見たイヴライネはかつて故郷であった〈方舟〉「ビエル=タン」の庭園内で、同じような儀式装束を目にした覚えがあった。女司祭は針を飛ばし、イヴライネは針に押されて瞬く間に守勢へと回ってしまう。
かつては汗一つかかずに敵を片付けたイヴライネだったが、今はリリスから負った傷のせいで満足に戦えなかった。彼女の意識は生と死の境界をさまよっていたまさにその時だった。
闘技場の上空から燃え盛るような意識片がイヴライネへと落下したのだ。それは、「エルドラド・ウルスラーン」の儀式によって目覚めかけたアエルダリの死の神「インニアード」の意識片であった。
目覚めしインニアードの意識はそこでイヴライネに届き、再び不可視の非物質と化して彼女の内部に神聖なる力を注ぎこんだ。彼女は死者の神インニアードの力によって変身を遂げ、その当時活躍していたアエルダリの誰よりも強大な力を得たのだ。
闘技場に詰めかけた大観衆は、突如としてイヴライネ自身から発せられた、死の力の波に飲み込まれた。この時、イヴライネは数千もの魂を吸収した死の教義を奉ずる新たな宗派「インナーリ」の女司祭として新たな道を歩むこととなったのだ。
【インニナードの御使い】
運命の日以来、イヴライネはアエルダリ社会のあらゆる領域を旅し、希望のメッセージを伝え、権威ある声によって信奉者たちを獲得してきたのだ。そして、多くの信奉者を抱えたイヴライネは新派閥「インナーリ」を結成し、種族統一とスラーネッシュ神の打倒を掲げて銀河中を転戦していくのであった。
だが、インナーリをアエルダリの救世主と考える者もいれば、不和と分裂をもたらす存在と考える者も少なくない。エクソダイト、アシュルヤーニ、ハーレクイン、デュカーリの各勢力でイヴライネが救済者なのか、それとも滅びの運び手なのかという議論が止まる事は無い。
インナーリはケイオスディーモンに襲撃されている〈方舟〉ビエル=タンを支援するために参戦した。しディーモンが〈方舟〉の無限回路へと侵入し、眠っているアエルダリの魂を喰らおうとしていたが、インナーリの参戦によって何とか持ちこたえる事ができた。
しかし戦況は悪化していき、状況を覆すために「インカーネ」を召喚する苦渋の決断を下す。召喚されたインカーネはディーモンの軍勢を撃退する事ができたが、その際に無限回路に眠っていたアエルダリたちの魂を犠牲にしてしまったのだ。
〈方舟〉ビエル=タンへの襲撃事件を知った多くのアエルダリはイヴライネを、偽りの姿をしたスラーネッシュ神の悪魔、あるいは渾沌の暗黒神が造り出した秘密兵器なのではないかと噂されるようになった。疑念と悪評が付きまとう中、彼女の行く先では様々な妨害が待ち受ける。
デュカーリの大暴君「アズドゥルバエル・ヴェクト」が放つ刺客や、スラーネッシュの軍勢を率いる「シャラクシィ・ヘルベイン」による襲撃が後を絶たない。しかし彼女はインニアード神の導きと種族統一の目標を胸に抱き、今日もアエルダリ種族のための戦いを続けているのである。


  • 「ヴィスアーク」


【概要】
イヴライネの近衛にして謎多き戦士。彼の内面には、古のアエルダリが最盛期に誇った力の残響が渦巻いている。
彼はイヴライネの護衛、導師であり、秘密を分かち合う最も緊密な同胞にして、インナーリの内陣の中で重要な役割を果たす一員でもある。彼の女主人に危害を加えよういう試みは、ことごとく彼の剣に阻まれる。
彼はアエルダリの持つ優雅さを極限まで体現しており、それは所作にも剣技にも等しく現れている。アエルダリ古来の様式「ベル=アンショック」の意匠に飾られた鎧に身を包んだヴィスアークの姿は、装甲板の各所に象られた「顔」によって一段と印象的なものとなる。
この顔は、それぞれがヴィスアークの肉体に封じられた魂のチャンネルなのだという。そうした魂のうち、召喚したものがヴィスアークの当座の要求に見合わなかった場合には、直ちに別の魂が前面に現れ、ヴィスアークの剣を的確に敵の弱点へと導くのだとか。
ヴィスアーク自身も〈先達〉(エクサーチ)として、剣技には秀でており、インキュバスの荒れ狂う部隊を効率的に指揮し、あるいはウィッチの曲芸的な体術を自在に用いる。そして敵戦線を嵐のごとく突破して、引きつった手足とそれらを失った胴体とかが無造作に転がる血の海を広げてゆくのだ。
ヴィスアークが振るう〈老婆の剣〉の一振りである〈静寂なる叫びの剣〉「アシュ=ヴァール」の忿怒は、死そのものと化した静寂をもたらすのだ。
【複数の人格が宿りし戦士】
彼の肉体には無数の魂が宿っている。ヴィスアークには一人の人格が備わっているが、差し迫った必要の生じた際には、他の魂のエッセンスに相当する部分と連携することが可能だ。
ある人格の技量が眼前の問題解決に相応しくない場合は、別人格が前面に表出し、彼をより危険な存在へと変貌させ、敵との戦闘の際に優位に立つことが出来るのである。それ故、ヴィスアークは〈先達〉の持つ比類的無き正確さで敵を貫き、インキュバスの持つ殺戮衝動を解放して虐殺を実行し、必要ならばウィッチの体術を発揮して優れた格闘戦を制するのである。
【先達の剣士ラーリアン】
ヴィスアークは、かつて「ラーリアン・スタースピーカー」という名で知られていた〈白銀の刃の社〉に所属する「ダイア・アヴェンジャー」の太守であった。だが、イヴライネとの謙遜の後、彼はカインの杜の守り手から、何かもっと別の存在へと変貌してしまったのだ。
彼はかつて方舟「ビエル=タン」の優れたエクサーチとして、まだ一介のアスペクトヴォリアーに過ぎなかった頃のイヴライネを教え、鍛える役目を担っていた。イヴライネに比類なき戦士の素質を見出し、師弟間には強い絆が結ばれていたが、彼女が戦士の杜を離れる時にラーリアンは大いに悲しんだ。
イヴライネが異能の使い手としての道を歩み、彼自身が拠り所としていた戦士の道を去っていたことを受け入れ難かったラーリアンだったが、彼女が〈仄暗き都〉から姿を消したことを耳にし、今度は魂も砕けんばかりの衝撃を受けた。彼は自分を許すことができなかったものの、心の奥底では、イヴライネの運命が分かたれたことを悟っていた。
【深紅のインキュバス】
やがて、己が戦士の社における伝統が、かつてないほどの堕落した事実を前にして、ヴィスアークは自分も伝統を破り、わずかな弟子たちを伴って方舟を出奔した。イヴライネが己の正体を見極めんと向かった、放浪者の暗き宿命を追うことにしたのである。
彼はやがて一人のインキュバスの身を装い〈仄暗き都〉「コモラフ」に居場所を見出す。そこは身を隠すためにも生きる糧を得るためにも都合のいい場所だった。
「コイルド・ブレイド」(とぐろ巻く刃)の戦士の社で頭角を現した彼は、その名を恐れられた深紅のインキュバスの一団に加わり、「グレイヴェックス」との血みどろの死闘を制し、この一団の長となった。この決闘は、彼をしてもっとも古来のアエルダリの姿に近づけたに違いはなかった。
そこで死の技を磨き上げたことか、あるいは単に運命だったのか、ラーリアンを「インニアード神」の目に留まらせることとなったのはこの瞬間だった。彼はそれと知らず己が魂を己が手で救い、再びイヴライネの傍らに己が身を立たせることになったのである。


画像出典:キャンペーンブック「GATHERING STORM BOOK II FRACTURE OF BIEL-TAN」P42,P43 イラストより


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エクソダイト(脱出者)


【概要】
古代アエルダリ文明崩壊前に出て行った勢力の一つ。自然豊かな惑星に入植し、自然と共存して生きることを是とする。
まだ古代アエルダリ文明が存在していたころ、彼らは宇宙船団を繰り出し、銀河の辺境のあちこちの惑星に移住を行った。
旅の途中で全滅したものたちもいれば、惑星にたどり着いたところでオルクや現地の生物に殺されてしまったものたちもいたが、多くはたどりついた惑星に入植をした。
【エクソダイトの生活】
エクソダイトたちの生活は、自然と調和したシンプルなもので、穀物を育て家畜を飼う素朴な生活を送っている。エクソダイトの住まう星は豊かながら荒々しい自然の残っている惑星で、彼らはその環境の中で部族単位で放浪しながら生活している。
クラフトワールドに住むアエルダリたちの技術の基本となる素材、「サイコプラスチック」(精神感応素材)が希少なため、その他の物質や単純労働に頼っている。
彼らの精神はクラフトワールドのアエルダリより単純で究極的な広がりには欠けるが、強靱で独立した精神の持ち主で実際に彼らは自分を律するための〈道〉の概念を持っていない。エクソダイトの星にも〈網辻〉(ウェブウェイ)があり、それを通してクラフトワールドとの交流もあるようだが、お互いにはあまり関心を抱いていないようだ。
エクソダイトの特徴の一つとして、彼らの使役する恐竜(ドラゴン)があげられる。彼らは家畜の恐竜から多くの資源を得ている。
また小型の肉食恐竜は戦闘用にも用いられ、エクソダイトのドラゴンナイト(竜騎士)たちは恐竜に乗って部族を守ったり、他の部族のドラゴンナイト(竜騎士)と小競り合いが行われる。エクソダイトの敵は様々で、異種族オルクの侵略は頻繁に起こり、近くにあるナイトワールド(騎士惑星)の人間たちとはいつも激しい戦いを繰り広げている。
【惑星霊(ワールド・スピリット)】
彼らの住む「安息惑星」(エクソダイト・ワールド)にも、彼ら独自の無限回路とも呼ぶべき場所である、「惑星霊」(ワールド・スピリット)というものが存在する。エクソダイトらもクラフトワールドのアエルダリと同様、魂魄石を肌身離さず身に着けその死後は、亡骸を各部族が持つ〈大いなる塚〉の下に還すという。
亡骸は土の下で安らかに横たえられ、その魂魄石は、星の魂魄の祭壇にて砕かれるのだ。それぞれのエクソダイトが住まう惑星に存在する惑星霊は、各部族の塚やストーンサークル、立石群の間をつなぐサイキックエネルギーの格子となり、惑星全体に広がる。
こういった重要拠点は、霊魂の世界と物質の世界が交差する「霊場」であり、死者たちの魂が群れを成してただよっているだけでなく、力を持った生者であれば、それらの死者と会話を交わすことすらもできるという。また、ストーンサークルや立石自体も、霊魂と物質の間に相互作用を持つ、物質的な結晶から作られている。
そびえ立つ結晶の巨石や、とてつもなく大きな魂魄石が、大地にサイキックパワーを固定するための碇となっているのだ。こうした「碇」同士のネットワークもまた、アエルダリが使う〈網辻〉の一部を構成している。
ただし、これら惑星霊へとつながる〈網辻〉の小道は、入念に隠され、守られている場合がほとんどだ。惑星霊のネットワークの中で、最も強力な「交わり」を生み出しているのが、その惑星の王が所有する〈王家の円環〉(ロイヤル・サークル)である。
これは、魂魄石の巨石で造られた路によって接続された、同心円状に広がるストーンサークルの壮大な構造物だ。〈王家の円環〉は、遠く離れた地にあるいくつもの立石によって中継されながら、その力を惑星全体へとゆきわたらせ、それと同時に惑星中のエネルギーを一か所に集める役割も果たしているという。


画像出典:小説「Horus Heresy Promethean Sun」表紙


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コルセア(海賊)

“「虚空は富だ。虚空は自由だ。わらわは〈道〉の窮屈な掟など認めぬ。コモラフの狭量な政治工作などは潰す。尻尾を巻いた負け犬エクソダイトどものみじめな境遇などご免だ。道化師どもの戯言には付き合わぬ。死など、断固として許さぬ。かつて星々は我らが始祖のものであった。ゆえに今や星々は妾のもの。ゆえに妾は望むところに赴き、望む者を手に入れ、望みのままに殺してくれよう。」”

-“黒き太陽”のレディ・ハレドリシア



【概要】
悪名高きアエルダリの海賊(コルセア)は銀河系の至る所で襲撃と略奪に明け暮れている。戦士団や強襲艦隊(フリート)を構成し、指揮官たる戦将や女主人の紋章を掲げた流麗な宇宙船に乗り込んだコルセアたちは、自らの意志の赴くままに銀河系の各航路やガス状星雲、その他の危険に満ちた宙域を彷徨う。
彼らは富と栄光を求め、獲物目がけて電光石火の強襲を仕掛けるのだ。コルセアたちは、アエルダリ語で「アンフラーセ」と呼ばれている宇宙海賊だ。
彼らは〈方舟〉に住まうアシュルヤーニたちが頑なに守ろうとする〈道〉(パス)と呼ばれる訓えは拒んでいるものの、コモラフに住まうデュカーリたちが陥った快楽と堕落の奴隷にまで身を落としていない者たちだ。アンフラーセは、気ままに冒険と戦利品の獲得を楽しみ、大いなる危険と引き換えに大いなる報酬を求める生き方を満喫している。
自らが不安や抑圧と見なすあらゆる鎖から自由になって、彼らは何であれ己が望むものを銀河から奪い取って生きてゆくことを信条にしているのだ。


画像出典:コデックス「アエルダリ」(codex:Aeldari)第9版 P55イラストより


【海賊稼業に身を投じた者】
コルセアを構成する者たちは、アエルダリ社会のあらゆる階層の出身者だ。その中には〈方舟〉を後にしたアシュルヤーニの出奔者、コモラフからやってきたデュカーリ、かつてはハーレクィンの一座やインナーリの一員であった者たちが含まれている。
また逆に、インナーリにはかつてのコルセアの一員であった者たちが大量に加わってもいる。海賊艦隊に自ら身を投ずる理由は、コルセアたちの数だけあるが、大半は富と栄光、そして己が名声を高めようという野心に駆られ、いつの日か自らの軍勢を率いるほどの地位に登ろうと企てているなどといったものだ。
掟や規律といった枠組みから逃れるためにコルセアとなる者もいるが、かつての勢力から追放された後、他に行き場の無い者も少なくない。また、中には完全なる虚無主義に屈する形でコルセアに加わる者たちもいる。
種族が滅亡に瀕しているならば、冒険、殺戮、欲しいのもを欲しいだけ奪い取る事を追求し、滅びを迎える最期の日まで刹那的な楽しみを満喫する以外に生きようが無いと信じる者たちもだ。
【掟破りの荒くれ者】
各海賊艦隊を率いる司令官たちは、気まぐれであると同時に極めて尊大だ。彼らの大半が自らを由緒ある王族めいた、あるいは煌びやかな貴族めいた存在に時代から見せかけてはいるが、アエルダリ古王国の栄光ある時代から連綿と続く正当なる海賊の末裔は皆無といってよい。
彼らのはいかには、司令官の信任篤き従者たち、血縁者たち、他のアエルダリ社会からのはみ出し者たち、そして罪過の罪を逃れ、富の分け前に預かるために喜んで火中に逝く犯罪者たちが含まれていく。彼らはまた、自らの趣味や価値観を反映した、個別の興趣に溢れる出で立ちを好み、それに相応しい装束を身に纏う。
人工の鱗、野獣の毛皮、特異な禽獣の羽毛などが装備と共に主の姿を飾るのだ。仕留めた獲物から奪い取った戦利品をこれ見よがしに掲げる者もいれば、外科的手段で肉体に埋め込まれた、精神制御式の視覚装置や強化感覚器などの生体強化装備をその身に搭載している者もいる。
こうした人為的な強化措置のほとんどは、〈方舟〉に由来する精妙な意匠を踏襲しておらず、アエルダリ文明の美学に対する着用者の侮蔑の念を、公然と示している。コルセアたちは、こうした装いを大いに支持し、これによって自らが野性的で危険な外部の抵抗勢力であるという声望を高めようとしている。
独立不羈の精神を掲げるコルセアたちは、厳格な掟から逸脱している事に恐れを抱くアシュルヤーニたちを嘲笑しているのだ。
【即断、即応、即実行】
コルセアたちはいずれも俊敏にして洞察力に優れた戦士である。戦闘環境に応じて即断即応し、戦場そのものを武器として敵を苦しめる事に秀でた専門家とも言えよう。
彼らは単座式の「ジェットバイク」から巨大な「ナイアード級巡洋艦」の他、様々な宇宙船に至るまでを操縦する事ができる。デュカーリとは異なり、コルセアたちは元から持っているサイキック能力による精神感応力を抑制する事は無い。
強大な精神力を誇る「ウェイシーカー」は〈網辻〉の迷宮次元を渡る際の水先案内人となる。この神秘的な隠者の中には「道標石」(ウェイストーン)を携え、死を迎えたアエルダリの魂を回収して〈歪み〉の中でスラーネッシュ神にその魂を貪り食われる運命から救い出す者もいる。
【宇宙の掟は俺の掟】
コルセアは、原則的の個人的な利益の獲得のために標的への強襲を行うが、それ以上の目的を計画することはほとんどない。彼らの艦隊では、艦隊そのものが法律は、海賊自体が独立独歩の自治領域であるため、アエルダリ社会のあらゆる権力中枢の支配も影響も及ぶ事は無い。
彼らはデブリの雲や小惑星帯、漂流天体に隠れた無数の居住地や浮遊基地を狙う事を好む。あるいは〈歪み〉の嵐の辺縁部に見られる渦巻く非物質空間の奔流の中に潜む拠点すらも攻略するのだ。
【アシュルヤーニとの関係】
一部のコルセアたちは、個々の〈方舟〉の私掠船としての役割を担う。大半は傭兵としての契約に従ってそうするのが常だ。
だが、〈方舟〉との間にある程度保たれている親和性に基づいてそうするコルセアも皆無とではない。その〈方舟〉がコルセアを率いる将の故郷である場合、あるいはその〈方舟〉に住まうアシュルヤーニにコルセアが何らかの重大な借りがある場合などが考えられる。
こうした私掠船団は、彼らよりも遥かに保守的な同胞たちと数百年、あるいは数千年に渡って戦ってきた可能性もある。コルセアの強大な艦艇群は、〈方舟〉に交易のきっかけと後見を提供し、情報提供者のネットワーク形成を促し、アシュルヤーニの世界そのものである巨大な船を外敵から防衛する。
こうした利便性の結びつきがあるにもかかわらず、〈方舟〉内ではコルセアの存在を容認しないというアシュルヤーニが数多くいるのも事実である。容認の反対派は、コルセアの抑制を外れた性質が禁欲的な生活を営む〈方舟〉の民に重大な影響を与えるのではないかと警戒しているのだ。
【デュカーリとの関係】
〈仄暗き都〉コモラフにも、無数のコルセアが足跡を残している。その中には実に特異な動機を持つ者たちがいるのだ。
デュカーリの血を引く者は、コモラフを足繋く訪れる可能性がある。政治的な力学の要請に従うため、あるいは己が一族との折衝のためだ。交易者としてコモラフを訪れるコルセアは、そこで目にする諸々に嫌悪を覚え、積み荷を降ろして直ちにそこを立ち去ろうとするだろう。
また、対照的にデュカーリの行動に無関心な者たちもいる。富、そしてテクノロジーの恩恵が往来し続ける限り、彼らはその源であれ行く末であれ気に留める事は無い。
また、邪悪なる遠縁の同胞たちが見せる貪欲さを大いに讃え、苦労して獲得した戦利品を、神秘的なテクノロジーの産物や稀少な素材と交換することを言葉巧みに持ちかける者さえいる。こうしたコルセアは、デュカーリが主催する「現実宇宙強襲」にも加わり、共に戦い、楽しみ、略奪に励むのだ。
だが、コルセアたちが略奪のさなかに同盟者に対する警戒の眼差しを逸らす事は無い。徹底的な暴虐と的に苦痛を与える事に飽くなき渇望を隠さぬデュカーリには、常に警戒しておく必要があるのだ。
【凶悪なる艦隊】
アエルダリ社会の歴史にその名を刻む、あるいは交易商の逸話の中で恐怖と共にその名を囁かれる、凶悪極まりないコルセアの無数の戦闘集団が存在する。凶悪なる海賊たちの伝説は、華々しい栄光に包まれているものの、無垢なる者たちの血に染まったものもある。
エクソダイトの惑星に結ばれた庵から影に覆われたコモラフの路地に至るまで、そうした伝承は繰り返し語られ続けている。
コルセアは、自らの個性と独立性を極めて重んじており、他のアエルダリ勢力と同盟関係を維持する者たちもいるものの、大半は自らの目的のためにのみ、行動する。他者の望みをかなえ続ける事に嫌気がさした彼らは、富と名声を獲得するために己が望むどおりの略奪艦隊を結成する。
こうした略奪艦隊のいくつかは早々に壊滅する。あまりにも野心に先走った襲撃や、想像を絶する敵の反撃の餌食となるからだ。
さもなくば、構成員たちがそれぞれ己の目的を追うために自然消滅したり、より強大な他のコルセアに吸収される。生き延び続けた中には、より強大に、より悪名高く成長してゆく者もいる。
新しい集団が次々と誕生し、また消滅してゆくため、コルセアの全てを網羅することは不可能だ。コルセアは、それぞれが野蛮にして優雅なる自称と大言壮語を掲げ、最終的に破滅に沈むまで富と栄光を追い求め続けるのである。
【悪名と名声】
絶大な名声、あるいは悪名を得た一部のコルセア艦隊の名は、各種族の交易戦団の長にも宇宙軍の司令官にも、恐怖と共に呼ばれることが多かった。“黄金の航宙隊”(ゴールデン・スカッドロン)は、〈帝国〉の「自由開拓者」(ローグトレーダー)さえも雇い入れていたほど比類なき富を勝ち得ていた。
〈帝国〉の探検家たちは、「オーリシル・エセニス男爵」に恭しく拝謁し、彼への敬意を表することと引き換えに彼からの厚遇を得たのであった。異種族ネクロンを憎悪する“星を弑する者”(スターキラー)は、「カバール星系」から人類を一掃するためにアシュルヤーニの眷族と共闘しつつその名を高め、星系に存在していたネクロンの墳墓惑星の覚醒を阻んだ。
一方、“薄明の剣”(トワイライト・ソード)は異教に謳われる星々を巡り、謎めいた遺物を探索していると言われている。紅と黄金に彩られた装束の彼らは、熾烈な白兵戦を楽しみ、〈方舟〉「ケイラー」と同盟関係を結んでいる。
【主なコルセア】

  • 「おぞましの略奪団(エルドリッチ・レイダー)」

〈方舟〉「イアンデン」から出奔した「ユリエルの君」は、彼の下に集まったアシュルヤーニたちと共に、「おぞましの略奪団」を結成した。彼らは何よりもユリエルへ捧げる忠誠心の高さで知られていたが、全員が宇宙空間における戦闘に秀でた戦士であり、自らの艦を熟知していたため、彼らの中心に身を置くユリエルは、深宇宙を航行するコルセア艦隊の中でも、最も華々しい戦果を挙げて続ける一団を率いる事となった。
彼らは何万隻にも及ぶ艦艇を攻撃し、その中には「グレッグ」、「フラド」、「クレイヴ」といった強大な他種族の艦隊も含まれていた。競合関係にあった二つのコルセア艦隊である「シーアン」の「黒き侵掠軍」(ブラックレイダー)と「紅の勅命」(スカーレット・コマンド)を急襲し、ユリエルの艦隊はさらに強大なものとなった。
おぞましの略奪団は渾沌の軍勢、そして人類の〈帝国〉とも無数の戦いを繰り広げてきた。〈方舟〉「イル=サレイド」の民は知る由もなかったが、コーン神を奉ずる異端者の軍勢をユリエルの艦隊が待ち伏せして殲滅したことで、そうと気づかぬうちに救われていた。
「ギリアン=セフリルド星団」のエクソダイトの惑星もおぞましの略奪団に謝意を表している。これはユリエルの艦隊が「帝国技術局」(アデプトゥス・メカニカス)の探査艦隊のいくつかをエクソダイトの居住星域に近寄らせなかったためであった。


  • 「鉄眼の掠奪団(スティールアイ・リーヴァー)」

「レディ・カエリス・カーネリア」は何世紀にも渡って「シドヘスター星系」を責め苛んできた。彼女の肌は半透明の石膏を思わせる美を有しており、劣等種族との接触がある度に彼女はその肌を侍女たちに洗わせている。極度な潔癖症
ネコ科の猛獣の如き狡猾さと類い稀な先見性によって、カーネリアは前例のないほど盤石の支配体制を維持してきた。「鉄眼の掠奪団」が攻撃を仕掛ける彼女のコルセアは名刺代わりに細長い瞳孔をした瞳の紋章を遺してゆく。これはねじ曲がった敵艦の船首に焼き付けられたり、敵兵の皮膚に押し付けられた烙印であったり、精神感応素材に施されるサイキック的な刻印であったり、「帝国宇宙軍」(インペリアル・ネイヴィー)の「航宙士」(ナヴィゲイター)の第三の眼を抉る傷であったりと、様々な形で残される。
カーネリアの成功の一部を支えているのは、彼女の赴くところに常に付き従う五体の「霊機」(レイス・コンストラクト)の護衛兵である。このきわめて貴重な資産に宿る魂は、彼女の旗艦の艦橋部分に埋め込まれた、半球状の巨大な魂魄石から吸い上げられた者たちだ。
この聖遺物は、この艦の歴代の主たちが集めてきたあらゆる宝物以上の価値を秘めており、真空中でさえ完全に機能するカーネリアの近衛たるレイスガードもまた、その比類なき価値を証明し続けている。


  • 「燃え盛る太陽の兄弟(サンブリッツ・ブラザーフッド)」

燃え盛る太陽の兄弟の血気盛んなコルセアたちはを率いるのは、ただ一人の指揮官ではなく、「三人の兄弟」(トリプレット)である“滅びざる焔”「ファエンドリス大公」、“星々の嵐”「シリオラス公爵」、“燦然たる落暉”「エランダエル伯爵」である。三兄弟は劣等種族に対する深い侮蔑の念を抱いており、部下たちにも同じ信念の共有を期待しているが、各々が異なる他種族に対する憎悪を燃やしている。
ファエンドリスの憤怒は人類に向けられている。この種族はアエルダリがかつて犯したのと同じ過ちを繰り返す運命にあると思われるからだ。もしかして心配してくれてるの?
シリオラスはネクロンに対する強烈な敵意を示す。彼はアエルダリが喫した敗北をもはや神話に語られているのみの出来事ではあるが、決して受け入れようとはしない。
エランダエルは、殲滅させる以外の余地は無いと見なすオルクをはじめとしたグリーンスキンに関する情報を耳にした際、侮蔑の念を露わにする。彼らの間にある競争心が常にお互いを煽って止まぬため、三兄弟が一致団結して戦う事は滅多にない。
にもかかわらず、彼らは兄弟間の忠誠心は非常に篤く、兄弟に対する部外者からの批判はわずかなりとも許さない。彼らは他のコルセアからの侵犯には直ちに反撃する。また“虚ろの竜”に対しては積年の恨みを募らせている。


  • 「虚ろの竜(ヴォイド・ドラゴン)」

帝国宇宙軍は、コルセアの戦闘集団の中でも、最も悪名高いと言われているものの一つに、3500隻にも及ぶ艦艇を操ると言われれいる「虚ろの竜」を挙げている。この戦士たちは威圧的な黒と赤の装束に身を包み、身をくねらせる飛竜の紋章を掲げて戦いに赴く。
虚ろの竜は銀河系の各地で確認されており、「ケイディアの大門」、「タウ・エンパイアの版図」、「ナハムンド回廊」から「リーヴェニア群星団」、「ベリタス星系」に至るまで文字通り縦横無尽に出没する。彼女らの攻撃パターンは予測不可能であり、ただ銀河系のほぼすべての有力な種族に対する奇襲を展開していることが記録されている。
虚ろの竜率いるのは「公女(プリンセス)サーラニア」だ。ひどく虚栄心の高い彼女だが、その指揮官としての辣腕ぶりと戦士としての技量もまた卓越している。サーラニアの率いる軍事力は、個人のアエルダリとしては銀河系でも最大勢力の一つと目されており、〈方舟〉やハーレクィンの仮面劇団から軍事的な支援を度々懇願されている。
コモラフの大暴君「アズドゥルバエル・ヴェクト」すらサーラニアの動向には細心の注意を払っており、彼女との個人的な連絡を取り合う一方、彼女の下にスパイや刺客を送り込もうと画策し続けている。


  • 「ヴォイドスカー」

ヴォイドスカーの名で知られるコルセアは、多くの海賊たちの中でも最も精強な歴戦の猛者と見なされており、何世紀もの間、星々の海を渡ってきた古参の戦士である。悲惨なものから魅力に溢れたものに至るまで、他のコルセアでは到底及ばぬ多様な経験を積んだ者同士のみが理解する気配や存在感を共有しているため、ヴォイドスカーは自ずとお互いを見抜く。
彼らは全員が強い個性と圧倒的な戦闘技術を誇り、特徴的な戦闘様式と戦術の好みを有しており、必殺の狙撃手から重火器の盟主、剣技の達人、また恐るべき異能の使い手が存在する。オルク、ティラニッド、グノスタリ、人類、そして渾沌の勢力に連なる軍勢、更には同族たるアエルダリに至るまで、全員が自らの戦闘技能を無数の敵を相手に実証してきた強者揃いなのだ。
ヴォイドスカーの大半は、その冷酷さ極まりない所業のおかげで、あるいはあまりにも長い航宙生活のおかげで、ある程度名を知られている事は珍しくない。


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  • こいつらの、自決してインナーリ創ってスラーネッシュとの相打ち→都合よく復活!なガバガバ計画は果たしてうまくいくのだろうか・・・ -- 名無しさん (2020-10-10 17:46:16)
  • ネクロンってエルダー時代には寝てなかった? -- 名無しさん (2020-10-10 20:58:55)
  • カインのアバター、どんな性能なんだろうって海外wikiとか漁ってたら、そいつがこの世界でどれだけ強いかを示すための試し割りみたいな存在と描かれていて泣いた(コーンのデーモンも同じポジションだ -- 名無しさん (2020-12-14 23:03:19)
  • インナーリが入ってないやん!! -- 名無しさん (2021-04-03 20:34:24)
  • ↑よく目次や項目を見なされ。インナーリも入ってまっせ。 -- 名無しさん (2021-04-04 14:44:35)
  • アエルダリはピチピチスーツを好んでて(人間に比べたら)常に感度3000倍で悪魔や淫情と縁があるから実質全員対魔忍の種族 -- 名無しさん (2021-06-13 20:02:55)
  • エルダー虐殺しようとしたカインを筆頭に、それを抑えられないアシュリアンとか、エルダーの神々ってだいぶアレよね -- 名無しさん (2021-06-13 21:07:00)
  • タウエンパイアと並んでウォーハンマー40K宇宙の中では特に勢力が弱い感じがして -- 名無しさん (2021-10-19 01:36:32)
  • あれ?「虚ろの竜」って単語ネクロンにも出てこなかったっけ? -- 名無しさん (2022-10-16 17:07:08)
  • ↑「虚ろの竜」の名称はコデックス9版日本語版で出た公式の名称です。英語版でも「Void Dragons」という名称となってます。なのでネクロンのク=タンの一つ「虚ろの竜」と全く同じ名称だったりしますが、そこは製作者が意図的に同じにしたのかもしれません。 -- 名無しさん (2022-10-17 22:05:29)

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*1 〈天界の戦い〉は別名〈天界の戦争〉とも呼ばれており、異種族ネクロンでも同じ用語が使用されている。ただし、ネクロン側では〈旧き者〉との戦いのことを指しており、アエルダリ側では神話内の戦争のことを指している。

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