登録日:2020/03/15 Sun 04:04:00
更新日:2024/05/16 Thu 13:01:19NEW!
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『死霊のえじき(原題:George A Romero's Day of the Dead/直訳:ジョージ・A・ロメロの死者の日)』は、1985年公開のアメリカの映画。
監督・脚本はゾンビ映画の巨匠ジョージ・アンドリュー・ロメロ。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』と世界観を共有した三作目のゾンビ映画。
特撮はトム・サビーニとグレッグ・ニコテロ。
初期案ではゾンビ版インディー・ジョーンズと言えるほどの壮大な世界観のストーリーだったが、不景気の影響でダリオ・アルジェントの資金援助を受けられなくなり、低予算かつ、非常にスケールの小さい物語になった。
しかし、ロメロ監督の得意とする人間ドラマにより、終始重苦しい雰囲気が漂う暴走した軍と研究者の対立を描いた傑作風刺映画となった。
正統な続編は『ランド・オブ・ザ・デッド』で、同作には本作の当初の脚本の内容も組み込まれているため、この二作は姉妹作とも言える。
前作と違って長らく字幕版のみであったが、2019年7月にクラウドファンディングで日本語吹替版の制作プロジェクトが実施され、最終的に目標金額以上の支援が集まった事で企画が実現した。
そして、2020年2月5日に日本語音声を新録したHDニューマスターBlu-rayが発売された。
あらすじ
『ゾンビ』から数年後、地上はゾンビの天下と化していた。
フロリダ州郊外の地下施設セミノル地下倉庫では、召集された軍人達と研究者達が細々と生活していた。
新たな司令官ヘンリー・ローズ大尉は抑止力の無い状況下で独裁的になっていき、
マッドサイエンティストのマシュー・ローガン博士は倫理観を失い犠牲になった兵士の遺体で無意味な人体実験を繰り返し、
ヘリコプターパイロットのジョンと無線技師のビルは我関せずといった態度をとり続け、
ゾンビ化現象の原因を探る主人公サラ・ボウマン博士は何の成果も出せないなど、地獄のような毎日であった。
そんなある日、ローガンが研究していたゾンビ「バブ」に自我が芽生えはじめ‥‥‥‥。
登場キャラクター
ローガン博士とバブ
◆ドクター・マシュー・ローガン/フランケンシュタイン
演者:リチャード・リバティ、吹替:大塚芳忠*1
物語を能動的に推進していく実質的な主人公で、オープニングでも演者の名前が役名と共に最も大きく表示されている唯二人の内の一人。
ゾンビを飼い慣らす研究をしているマッドサイエンティスト。
父親の虐待を受けていたことを示唆する描写もあり、人間とゾンビの区別が曖昧で倫理観が欠如している。
そのため、犠牲になった兵士の遺体やゾンビで非人道的な実験を躊躇せず行い、血まみれのままで食堂に現れるなどやベー奴。
そんな野郎だからついたあだ名は「フランケンシュタイン」。
ただし飼い慣らしたゾンビ「バブ」には我が子のように過剰な愛情を注いでいる。自論を説いてる時の純粋過ぎるキラキラしたガンギマリの眼が怖い。
彼の結末はこちらを参照。
ちなみに中の人は『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』に続き、二度目のロメロ作品出演である。
◆バブ
演者:ハワード・シャーマン、吹替:堀総士郎
ゾンビと成り果てた、元軍人の白人男性。研究のため捕獲されたゾンビの内の一体。
いわばゾンビ側の主人公で、ローガンと同じくオープニングでは演者の名前が役名と共に表示されている。
また、敬礼したり銃を扱ったりとゾンビ化以前は軍人であったことが示唆されている。
ローガンから「ごほうび」を与えられたことで自我や理性を身に付け、生きた人間を喰い殺そうとしなくなった進化したゾンビ。
人類とゾンビが共存できる可能性を秘めていたが……定期的に人間を食わせるとなるとどちらにしろ無理があっただろうが。
一方で好意的な見方をすれば、人間の排他的な感情や悪意で全ての可能性を台無しにされた被害者とも言える。
映画終盤の愛する者のために悪に立ち向かう姿は紛れもなくヒーローである。
詳細は当該項目を参照。
研究者
◆ドクター・サラ・ボウマン
演者:ロリー・カーディル、吹替:本田貴子
本作の主人公であり科学者の白人女性。エンドクレジットのキャスト欄でも一番上に表示されている。
「死者がゾンビになる現象」の原因解明と根絶のために研究を続けているが、何の成果も出せずにいる。
『ゾンビ』のフライボーイと同じく形式上は主人公だが、物語の本筋に大した影響を与えておらず、狂言回し的な存在。
(ただしこれはゾンビ映画の主人公としてきちんと役割をこなしているという証拠でもある)*2
作中の登場人物の中では比較的冷静さを保っているが、地下倉庫内唯一の女性ということもあり精神は限界に近い。
前二作のヒロインと比べて多少は頼りになる(少なくとも恋人であるヘタレのミゲルよりは)
だがやはりただの科学者であり非力な女性として戦力面では不安が残る。
◆ドクター・テッド・フィッシャー
演者:ジョン・アンプラス、吹替:川本克彦
ローガンの助手。口髭を生やした白人男性。影が薄いが実は何気に科学者グループでは一番冷静。
ローズを「前任者のクーパー少佐よりもたちが悪い」と評していた。
映画終盤には暴走したローズ達により人質に取られ、見せしめとして射殺された。
中立
◆ジョン(ジョニー)/フライボーイ
演者:テリー・アレクサンダー、吹替:内田直哉*3
プエルトリコ系アメリカ人男性で、『ロメロのデッドシリーズ』では三人目となる「賢く強い黒人」。
ヘリコプターパイロットであり、愛称は『ゾンビ』のスティーブンと同じくフライボーイ。
地下倉庫内で唯一のヘリを操縦できる人間であるため、ローズも彼を殺すわけにはいかず中立を保てている。
区画外の奥地にあったトレーラーハウスで、『人間らしい文化的な生活スペース』を保ち、サラに逃亡計画を持ちかける。
銃の腕は軍人達よりもすこぶる上手く、ほとんどヘッドショット一発で敵を片付けるタフガイ。
先輩のベンやピーター・ワシントン、次回作のビッグ・ダディと同様に戦闘シーンでは作中で一番活躍する。
◆ウィリアム(ビル/ビリー)・マクダーモット
演者:ジャーラス・コンロイ、吹替:千葉繁*4
無線技師の髭面ギョロ目のモヤシ男。白人。ジョンと一緒にトレーラーハウスで生活している。
見た目とは裏腹にスコップや木板でゾンビを倒しまくるなど頼りになるが、ブランデーの入ったスキットルを片時も手放さないアル中。
ジョンと一緒にヘリで生存者を探したりもしていた。
◆プライベート・ミゲル・サラザール
演者:アントン・ディレオ、吹替:浪川大輔
軍人の一人。プライベートは二等兵~上等兵の意。サラの彼氏であるラテン系アメリカ人男性。
なぜ軍人なのに中立ポジションかというと、役立たず過ぎて馬鹿にされている(仲間外れ)からである。
メンヘラDV野郎で更に見栄っ張りという典型的ダメ男。他の男に馬鹿にされた八つ当たりでサラに暴力を振るう。
下手な仲間は強敵より厄介という点で『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のバーバラやクーパー氏、『ゾンビ』のフライボーイを彷彿させるが、たちの悪さはそれ以上。
軍人とは思えぬ非力さと精神力で、戦闘能力はゾンビと一対一で戦って負けるほど。サラより弱い。PTSDを患ってるのか恐怖で立ちすくんでしまう。
そのため作中二度目のゾンビ捕獲作戦中に腕を噛まれ、感染症による衰弱死とゾンビ化を防ぐ為にサラに腕をぶった切られる。
おかげで一命を取り留めたのに何故か全てに絶望し、己の不幸を撒き散らすが如く自分を餌に地下倉庫へゾンビを雪崩れ込ませた。
余計なことしかしねぇなコイツ。(まあメタ的に言えばそのおかげでサラ達は助かったわけだが)
彼とバブの活躍(?)により軍人は無事(?)全員死亡した。
軍人
◆キャプテン・ヘンリー・ローズ
演者:ジョセフ・ピラトー、日本語吹替:山路和弘*5
キャプテンは階級の「大尉」の意。本作のヴィラン。白人男性。
犠牲になったクーパー少佐の後任者として地下倉庫の司令官になった。
簡単に表すと「『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のハリー・クーパーに武力を与え、ヘタレ要素を引いたキャラ」。
その顛末もハリーと同じく
主人公ら(研究者)と意見が対立→意地の張り合い→殺しあい→破滅
といった感じで見事にトレースしている。
口癖は「黙れ!!」
演者は『ゾンビ』でヒャッハーと化した警官を演じているが、例の如く設定上は顔が似た別人。
彼の結末はこちらを参照。
◆プライベート・ウォルター・スティール
演者:ゲイリー・ハワード・クラー、吹替:三宅健太*6
ローズの取り巻きその1といった感じのポジション。プライベートとあるが、その風体はどうみてもそのランクの物ではない。
下品だが、ゾンビに噛まれた兵士を介錯する際には複雑な表情を見せる、仲間想いなジャイアン体型のおっさん。
軽薄でいい加減かつ下劣なジョークが止まらないそのふざけた言動は、サラとローズの両方をイライラさせる。
最後はローズの暴走に追従し、ジョンをボコボコにしたりとジャイアンぶりを発揮するが、ミゲルが地下倉庫内にゾンビを雪崩れ込ませた際、ローズに見捨てられる。
◆プライベート・ロバート・リックルス&プライベート・フアン・トーレズ
演者:ラルフ・マレロ&タソ・N・ブラタスキ、吹替:諏訪部順一&田村真
*7
ローズの取り巻きその2とその3。
映画終盤にローズの暴走に追従するが、トーレズはローズ共々ジョンに殴り倒されて気絶して武器を奪われた。
挙げ句の果てローズに見捨てられ、抵抗もできずにゾンビの群れに囲まれ首を引きちぎられた。
ロバートはスティールとしばしば行動を共にしており、一緒に下品な言動を繰り返す。
最後はスティールやトーレズと同じくローズに見捨てられ、発狂して笑いながらゾンビに囲まれ八つ裂きにされた。
トーレズの演者はスタントマンも兼ねており、人間からゾンビまで様々な役で出演している。
また、『ゾンビ』においても暴走族のリーダー「スレッジ」を演じていたが、例の如く設定上は顔が似た別人。
◆プライベート・ジョンソン&プライベート・ミラー
演者:グレッグ・ニコテロ&フィリップ・G・ケラムス、吹替:堀総士郎&木村隼人
ローズの部下。影が薄い二人。
倉庫の区画外にある少数のゾンビを隔離したゾンビ牧場で、実験用のゾンビを捕獲する任務に就いている。
ゾンビ捕獲作戦中、ミゲルのミスによりジョンソンは誤射で死に、ミラーはゾンビに噛まれスティールに射殺された。
ジョンソンはローガンにより生首状態にされた後でゾンビ化した。
二人の亡骸はバブの「ごほうび」になった。
ゾンビ
◆メイジャー・クーパー
演者:バリー・グレス
メイジャーは少佐に相当。地下倉庫の司令官だったが、何らかの要因で死亡。
ゾンビ化後、ローガンによって秘密裏に人体実験の被験者にされてしまった。
名前はハリー・クーパーの役どころを担っているローズの『前任者』だからだろうか。
◆ドクター・タン
演者:なし
冒頭に登場する、下顎が欠損したゾンビ。モブの癖にやたらインパクトがある見た目。ゾンビ化以前は医師だったらしい。
実は俳優やエキストラが演じているのではなく、精巧な人形。複数人で操演している。
舌が垂れ下がってることから特撮担当のトム・サヴィーニやスタッフ達により名付けられた。
◆ラッキースカーフゾンビ
演者:ジョージ・A・ロメロ
ゾンビと成り果てたWGON-TVのディレクター。『ゾンビ(映画)』からの、シリーズ中では珍しい再登場キャラクター。
演者は前作と同じく我らがロメロ御大。
余談
本作の主な舞台となる地下施設は、実際は鉱物資源の採掘場跡地。
映画のフィルムや資材の保管所として使われていた場所で、俳優陣やスタッフはそこに張り付いて撮影に臨んだ。
鼻をかめば真っ黒な鼻水が出てくるような環境だったそうで、その過酷さから体調不良でダウンするような者も出てくるほどだったが、製作陣の士気は非常に高く、充実した製作が出来た。
ゾンビに喰い破られて内臓が露出するような描写は、人工のチューブと豚の腸を組み合わせた素材を使って撮影された。
素材は同じものを使い回して撮影していたため、それらは冷蔵庫で保管されていた。
だが何らかの手違いか、はたまた故意か、冷蔵庫の電源が切れてしまい二週間も放ったらかしになって腐敗しきった内臓を使う羽目になってしまったカットが存在する。
当該場面の撮影は超厳戒態勢のもと行なわれたが、やはり相当キツかったようで、カットの声が掛かった瞬間、喰われた役の人もゾンビの皆さんも素に戻ってドン引きしているメイキング映像が現存している。
ジョージ・A・ロメロのデッドシリーズ関連項目
- ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(映画)(一作目)
- ゾンビ(映画)(二作目)
- 死霊のえじき(三作目)
- ランド・オブ・ザ・デッド(四作目)
- ダイアリー・オブ・ザ・デッド(五作目)
- サバイバル・オブ・ザ・デッド(六作目)
- ゾンビ/グール(ロメロのデッドシリーズ)
- セメタリーゾンビ(ナイト・オブ・ザ・リビングデッド)
- バブ(死霊のえじき)
- ビッグ・ダディ(ランド・オブ・ザ・デッド)
- ショーン・オブ・ザ・デッド(映画)(パロディ作)
- バタリアン(映画)(パロディ兼権利上の正式な続編)
追記、修正は自我に目覚めてから。
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- 男のリトマス試験紙でヒロインの顔は数時間後には忘れると紹介されてて笑った。そういやそうだったと。本作でのゾンビ役は例の如く撮影現場近くのエキストラでしたが、医者とか結構偉い人達もノリノリで応募してきて和気藹々だったそうな。腐った肉を食う羽目になった人達だけが可哀想。 -- 名無しさん (2020-03-15 17:12:13)
- 内臓を食うゾンビ役の人達はカットの声を聴いた瞬間、一目散にトイレに駆け込んでゲーゲーしてたとか。(それでもお腹を壊した人多数) -- 名無しさん (2020-07-21 10:55:10)
- 冒頭の山岳地帯上空を飛ぶヘリのシーンのワクワク感は異常 -- 名無しさん (2021-05-12 11:48:24)
- 実写映画版バイオハザードのリブートで「死霊のえじき」のオマージュらしきシーンがあったな -- 名無しさん (2022-10-03 22:56:37)
#comment
*2 例えば主人公が活躍して事態を解決させたりゾンビを人一人の力で駆逐できてしまえば、ロメロの言うゾンビという存在の意義を矛盾させてしまうことに他ならないからである。
*3 配役交換版では三宅健太。
*4 配役交換版では大塚芳忠。
*5 配役交換版では諏訪部順一。
*6 配役交換版では内田直哉。
*7 配役交換版ではロバート役が山路和弘。
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