SCP-1418-JP

ページ名:SCP-1418-JP

登録日:2020/03/07 (土) 03:09:11
更新日:2024/05/16 Thu 12:53:05NEW!
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酩酊街 scp foundation scp-jp 泣けるscp neutralized ヘリコプター サーチライト scp-1418-jp




応答せよ。我々にはあなたが必要である。



SCP-1418-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。オブジェクトクラスは「Neutralized」。無力化済みのオブジェクトである。



概要


SCP-1418-JPは、


  • 黒い迷彩の野戦服を着てヘルメットを被った武装兵士達(以下『黒い兵士』と呼称)
  • 「黒い兵士」たちが操縦する、黒い攻撃ヘリコプター1機(ガトリング砲付き)
  • サーチライト8基*1

以上3種類の実体から構成される群体型のオブジェクト。


正確には「黒い兵士」たちが野営する基地を含めて4種類あるのだが、ほぼ登場しないので本記事では割愛。
ある空き地に突如基地ごと出現し、その空き地をテリトリーとして防衛線を張っていたところを通報され、発見に至った。



「黒い兵士」はエンブレムの部分にカタカナで「ミツオ」と書かれている以外は普通の野戦服を着た人型実体。
普通の人間よりかなり頑健にできているらしく、財団の兵力をもってしても鎮圧は困難。
また、ヘルメットを被っているため顔は見えず、喋ることもないので、中がどうなっているかはいまだにわかっていない。
ただ、彼等には特殊な能力はなく、やたら強いことを除けば身体能力は人間と大差ない。


問題は彼らの持つサーチライト。
これを浴びせられた人間は服装が「黒い兵士」と同一の野戦服(ただし色は緑色)へと変化してしまうのだ。
野戦服の兵士にさせられた人間は何が何でも「黒い兵士」の一隊に加わろうとし、この衝動は記憶処理をしようとも解消することはない。
なお、サーチライトは電源を供給しなくとも起動するようで、「黒い兵士」たちのヘリに乗せられていることもあれば、地上に設置されていることもある。


なお、ヘリコプターは材料もなしに突然増えたり減ったりしているが、どうやらサーチライトと黒い兵士の数・状態によって増減するらしい。


もちろん彼ら黒い兵士は攻撃を仕掛けたり空き地に入ったりすると銃火器で応戦してくるので危険度は高い。
ただ、攻撃を仕掛けずに放っておくと、なぜか空き地周辺を定期的に巡回するのみで、積極的に支配域を広げようとはしない。
一体、何がしたいのだろうか。。。?



黒い兵士たちの声


上で「彼らは喋らない」と書いたが、一つだけ彼らの声を聴く方法がある。
彼らの近くまで無線機を持っていくとその無線機が勝手に起動し、そこから「黒い兵士」の無線通信を傍受できるのだ。


彼らは定期的に以下の内容を呼び掛けて回っている。



メーデー、メーデー、メーデー。こちらミツオ軍、ミツオ軍、ミツオ軍。メーデー、ミツオ軍。


[空き地の位置を述べる]


コマンダー・ミツオ、応答せよ。我々にはあなたが必要である。このメッセージを受け取ったならば速やかに応答せよ。メーデー、ミツオ軍。オーバー。


内容には多少ばらつきがあるが、おおむね「コマンダー・ミツオ」なる人物を呼ぶ内容である。
なお、電波を妨害すべく財団がジャミングを試みたものの、妨害はおろか電波の発生源さえ突き止められないという結果に。
まあ、財団の異常存在ってこんなのばっかりなんだけど。


しょうがないので、財団はしばらくこの通信に耳を傾けてみることにした。
どうやっても止められなかったので、財団はカバーストーリーを流布するという余計な仕事を抱えることになりました。





メーデー、メーデー、メーデー。こちらミツオ軍、ミツオ軍、ミツオ軍。メーデー、ミツオ軍。


[空き地の位置を述べる]


コマンダー・ミツオの右手の銃は我々の希望だった。そして、それは未だ我々の希望であり続けている。もう一度あなたの銃を見せて欲しい。その為にも、あなたの現在地を示すことを要請する。メーデー、ミツオ軍。オーバー。


財団とて手をこまねいていたわけではない。
空き地の近くに住む住人の中から「コマンダー・ミツオ」、つまり「ミツオ」という人物がいないか探っていたのだ。
結果、近隣住民の中に「ミツオ」という名前の人物は4名いたのだが、4人とも空き地のど真ん中に出現するような武装兵力に心当たりはなかったらしい。当たり前である。







メーデー、メーデー、メーデー。こちらミツオ軍、ミツオ軍、ミツオ軍。メーデー、ミツオ軍。


[空き地の位置を述べる]


我々はあの酒臭い地から帰って来た。しかし、我々に多くの時間は残されていない。コマンダー・ミツオ、あなたの帰還こそがミツオ軍の再始動である。あなたの現在地から信号弾を発射することを求む。メーデー、ミツオ軍。オーバー。


「あの酒臭い地」。
財団アニヲタ支部職員の中にはピンときた人もいるだろうが、これは要注意団体「酩酊街」のことと見て間違いないだろう。
酩酊街とはどんな存在なのか。詳細は項目を参照して頂きたいが、ここでは「忘れられた者たちが集うとされる秘境」とだけ覚えておいてくれればよい。



と、ここで黒い兵士たち、通称「ミツオ軍」の無線が気になることを口にする。






メーデー、メーデー、メーデー。こちらミツオ軍、ミツオ軍、ミツオ軍。メーデー、ミツオ軍。


[空き地の位置を述べる]


コマンダー・ミツオ、あなたはヘリコプターが大好きだった。そのヘリが今ここにある。いつでもあなたを乗せられるよう、我々は常に整備している。このメッセージを受け取ったら速やかに応答せよ。メーデー、ミツオ軍。オーバー。


ヘリコプターが"大好きだった"「コマンダー・ミツオ」。
察しのついた読者もいるだろうが、構わず進む。


この通信が終わったあたりを境にミツオ軍の設備にガタがき始めたらしく、黒い兵士たちの武装が徐々に少なくなっていく。
とくに彼らの力の源であるらしきサーチライトは目に見えて減っていった。



補遺5-増加: 2018/12/26、監視を担当する職員は、区域1418-JPのヘリコプターの数が増加していることを報告しました。監視カメラに記録された映像には3機のヘリコプターが記録されており、SCP-1418-JP-1の数が2基減少していることが確認されました。しかし、ヘリコプターがいつ、どのように増加したかは確認できませんでした。これを受け、区域1418-JP周辺の警備員は機動部隊ち-82「楚歌」と交代されました。


サーチライトが8基から6基に減少。代わりにヘリが3機に増える。



補遺6-破壊: 2019/01/02、SCP-1418-JP群が離陸を試みていた為機動部隊ち-82が妨害を行っていたところ、誤ってヘリコプターに搭載されていたSCP-1418-JP-1を破壊しました(事案1418-JP.3に指定)。直後、ヘリコプターが爆発し数名のSCP-1418-JPが吹き飛ばされました。7分後、爆発地点にSCP-1418-JP-1を搭載したヘリコプターが再出現しました。


サーチライト、残り5基。



補遺7-墜落: 2019/01/13、妨害を掻い潜って区域1418-JPから1機のヘリコプターが離陸しました(事案1418-JP.4)。しかし、この時搭載されていたSCP-1418-JP-1が突如破損し、当該ヘリコプターが付近の竹林に墜落しました。火災は発生せず、墜落現場には複数の物品が発見されました(下記を参照)。この時、区域1418-JPにて2名の曝露者の武装が消失し、財団の飛行士に変化する様子が監視カメラに記録されました。その直後、SCP-1418-JPがSCP-1418-JP-1を照射したことで再び武装がなされました。


限界を迎えたと思しき個体が破損。
中から出てきたのは、テディベア、レゴブロック、アーミー人形、軍手。そこには異常性もへったくれもない。
だがしかし、そのどれもこれもが真っ黒に染色されていた。ミツオ軍兵士たちの野戦服と同じ黒色に。



補遺8-爆発: 2019/02/04、突如SCP-1418-JP-1の1基が爆発し、同時に3名のSCP-1418-JPが消失しました(事案1418-JP.5に指定)。これ以降同様の事案が4回発生し、SCP-1418-JPの個体数は6体になりました。財団はこれを食い止めるべく区域1418-JPへの進入を複数回試みたものの、SCP-1418-JPの抵抗によって何れも失敗しました。


サーチライト、残り3基。
先ほどのヘリの墜落に加え、とうとう黒い兵士にまで欠員が出始めた。



補遺9-保護: 2019/03/29、爆発音と共に区域1418-JP内の人型実体3体が突如消失しました(事案1418-JP.6)。同時に6名の武装が消失し、全員が区域1418-JP外へと走りました。この6名は警察官であり、機動部隊ち-82によって保護されました。この原因は確認されていないものの、基地内のSCP-1418-JP-1が爆発したものと推測されています。この推測が事実であった場合、残留するSCP-1418-JP-1は残り1基です。これを受け、SCP-1418-JP及びSCP-1418-JP-1へは発砲を行わないという内容へ特別収容プロトコルが改定されました。


サーチライトは残すところ1基のみ。
さすがに財団もミツオ軍そのものが壊れかかっていることに気づき、方針をオブジェクトの撃退から保護に切り替えた。
しかしその試みも、ミツオ軍の激しい抵抗のためにうまくいかない。





終着



メーデー、こちらミツオ軍。これは恐らく最後のメッセージである。


[深呼吸]


コマンダー・ミツオ、我々を忘れないでくれ。そろそろ限界が近い。再びあの地へと引きずり戻されてしまう。既に仲間も何人かいなくなっている。我々にはもう幾許の猶予も残されていないのだ。どうか、我々を思い出してくれ。オーバー。


ミツオ軍は自身の終わりを悟っていた。
たった1機の攻撃ヘリに最後のサーチライトを載せ、ミツオ軍は最後のフライトに乗り出す。
財団は煙幕弾で何とかフライトを阻止しようとするが、彼らはもう止まらない。


コマンダー・ミツオへの呼びかけ無線とともに、ミツオ軍は、空へ発つ。






[SCP-1418-JP-1の白色光が、玄関の先の道路を照らしている。3秒後、これまで███ Hzに流されていた音声と同じように聞こえる音声が記録される。ヘリコプターのプロペラ音で一部判別することができない]


音声: メーデー、メーデー、メーデー!ミツオ軍、み…… [判別不能] ミツオ軍!


[直後、玄関扉が開く音がして、君島氏が映像に映る。]


君島氏: [大声で] あの!すいません、うるさくて娘が起きてしまうんですよ!軍の訓練ならもっと離れたところでやっていただけませんか!



ミツオ軍の前に現れた「コマンダー・ミツオ」……君島 光夫きみしま みつおは百戦錬磨の鬼隊長でもなければ、異常存在を統べる長でもなかった。ごく普通の、どこにでもいるひとりの父親だった。
そして同時に、かつておもちゃのヘリを、兵隊の人形たちを心から愛した幼子その人であった。



音声: 我々は [判別不能] から帰って来た!コマンダー・ミツオ、あなたの帰還が必要なのだ!これまでのメッセージは届いて [判別不能] だが、我々はついにあなたを見つけることができた。あなたが必要だ! [判別不能] を見せてくれ!


ミツオ軍は光夫氏に向けて、サーチライトの光を放つ。
その光を浴びた光夫氏は緑色の兵士―――ではなく、右手にガトリング砲を装備した漆黒の隊長……「コマンダー・ミツオ」へと変身する。


音声: さあ、コマンダー・ミツオ!その銃を再び掲げ、我々に希望の光を見せてくれ!メーデー! [判別不能]


光夫氏は、否、コマンダー・ミツオは、その銃をヘリに向け――


君島氏: [くぐもった声で] ……おやすみ。


[君島氏の右手から連続で銃弾が放たれ、SCP-1418-JP-1(最後のサーチライト)のレンズが破壊される。ヘリコプターは不安定に飛行した後映像外へ出て、1秒後爆発音がする。同時に、君島氏の外見が曝露前のものに戻る]




ミツオ軍と、コマンダー・ミツオ。
両者の間にどんな物語があったのか。
光夫氏の玩具に過ぎなかったSCP-1418-JPが何故異常な力を獲得したのか。それは想像で補うほかない。


だが、一つだけ確かなことがある。


ヘリコプターの墜落後、墜落現場の確認と君島氏へのインタビュー、及び事案1418-JP.7の事後処理が平行して行われました。この時の墜落現場の様子や発見された物品の内容は事案1418-JP.4とほぼ同一でしたが、発見された右手の軍手のみ親指以外を折り畳んだ形で硬直している状態でした。君島氏は映像記録の内容を部分的に忘却しており、何故SCP-1418-JP-1に発砲したのか証言できませんでした。また、発見された遺留物全てに見覚えがないと証言しました。


この幕切れが、きっと望まれた結末であろうということである。
ミツオ軍が結局は「酩酊街」に抗えず、かつての持ち主に忘却されてしまったのだとしても。




SCP-1418-JP
サーチライトと応答



かつて、
夢の世界を一緒に旅した仲間のことを、
いっぱいの愛を注いで世話をした小さな隣人のことを、
寂しい時に抱きしめて眠った親友のことを、
今はいない、宝物のように大切だった友達のことを―――


あなたは、覚えていますか?



CC BY-SA 3.0に基づく表示


SCP-1418-JP - サーチライトと応答
by KanKan
http://ja.scp-wiki.net/scp-1418-jp


この項目の内容は『クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス』に従います。

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  • 多分ミツオ軍は「コマンダー」になったミツオの軍で、何らかの理由でミツオが元に戻り、トップを失ったミツオ軍は崩壊したってことなんだろうね -- 名無しさん (2020-03-07 03:53:15)
  • 何気に異常実体に臆せず接する肝っ玉 -- 名無しさん (2020-03-07 05:31:02)
  • 元々玩具のヘリだったとか? -- 名無しさん (2020-03-07 06:28:33)
  • 説明するのも野暮だけど、要するに『かつて子供だった光夫氏と一緒に遊び、忘れられたことで酩酊街に流れついた玩具たちがもう一度持ち主と会うために異常存在化した存在』がこれ。トイ・ストーリーと幻想郷を足して2で割った感じ -- 名無しさん (2020-03-07 08:18:40)
  • 曝露した人が元に戻るのは結構新鮮かも -- 名無しさん (2020-03-07 12:46:31)
  • まぁ酩酊街だからね……他の要注意団体絡みだと戻れなかった可能性は高い -- 名無しさん (2020-03-30 03:10:57)
  • 酩酊街のこういうオブジェクト本当好き… -- 名無しさん (2020-04-11 06:20:53)
  • SCP版よみがえる古いおもちゃたち……やっぱり酩酊街は大好きだ……。 -- 名無しさん (2020-12-23 08:42:11)
  • 「b」 -- 名無しさん (2023-05-03 22:32:47)
  • 泣いちまったよ...... -- 名無しさん (2023-06-02 09:26:23)
  • カバーストーリーに「米軍の事故」とか君島氏が自衛隊の訓練じゃなく「軍の訓練」と言ってるとこを見ると、示されてないけど沖縄とか青森とかを舞台にしたのかも -- 名無しさん (2023-08-20 11:16:20)

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*1 いわゆる照空灯・探照灯。要はめっちゃデカくて強力な電灯で、夜間任務の時に周囲を明るくするライト。

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