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更新日:2024/05/16 Thu 12:29:48NEW!
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映画 時代劇 東映 戦国時代 江戸時代 真田幸村 徳川家康 特撮 真田幸村の謀略 なぜか毎作ひどい目に合う徳川将軍
『真田幸村の謀略』とは、1979年制作の映画である。
▽目次
概要
あなたは真田幸村という人物を知っているだろうか?
本名真田信繁、大阪冬の陣で要塞「真田丸」を構築して徳川方に大損害を与え、
夏の陣では決死の猛突撃で家康に二度に渡り切腹を覚悟させながら、
夢破れて死んだ戦国最後の名将。
―なるほど、それは事実である。
死後なぜか「幸村」の名で著名となり、
猿飛佐助、霧隠才蔵ら「真田十勇士」を従えた忍者軍団の首領として知られるようになった不思議な人物。
―なるほど、それもまた彼について語る上では欠かせぬ要素である。
だが、この映画「真田幸村の謀略」は、真田幸村とはそんな人物ではないと主張する。
すなわち
真田幸村は宇宙忍者を従え、
紀州の山奥で石油を採掘し、
空飛ぶ要塞真田丸を建造し、
分身して家康に襲いかかり、
殺してしまった人物である。
真田幸村の謀略は、1979年に制作された時代劇映画…の皮をかぶったトンデモSF特撮アクションおっぱい映画である。
一体何をすれば「真田幸村」という言葉と「SF」が同居できるのか良く分からないと思われるが、ご安心いただきたい。観ても良く分からない。
史実なんぞクソ食らえ、面白ければ何をしても良いという破天荒な発想で作られた怪作。
「真田丸」が放送された2016年にBSで二度も放送され、ごく一部の歴史ファンや真田丸ファンの間でごく密かな話題となった。
歴史ファン、時代劇ファン、真田丸ロスに苦しむ方々のみならず、爆発大好きな昭和特撮ファン、ニンジャヘッズ、ガルパンおじさんなどにも是非ともお勧めしたい作品である。
…なんか妙なのも混ざってるように見えるがとりあえず記事を最後まで読んでいただきたい。
このコンセプトは極めてB級っぽい映画であるが、制作・配給は天下の東映。
当時の東映にはまだ時代劇全盛期のスタッフとノウハウ、大道具小道具等が豊富に残されており、時代劇がほぼ全滅した今日では決して見られない重厚な時代劇としての側面も同居している。
その予算と人員の使い方は尋常ではなく、特に合戦シーンの迫力は真に迫るものがある。
とりあえず、騙されたと思ってビデオマーケットにある本作の予告編(無料)*1を見てみてほしい。
(リンクは貼れないのでググってね!)
いかがだろうか。真田丸での合戦シーンに投入された人員は実に3000人。不景気が続く今日の日本映画界では決してできない絵作りである。
内容も爆発の中を徳川家康が逃げ回るという謎のシーンと、坊主のはずの三好清海入道が女になってる点を除けば不可思議な点はなく、
かなり正統派の時代劇である…かのように見える。
で、完成した映画を見てみると。
いきなり2001年宇宙の旅のパクリオマージュみたいな宇宙空間から本作は始まる。
あれ?上映作品間違ってる?と心配になる観客を尻目に語られる映像と全然合っていない関が原の戦いの経緯。
そして始まるさきほどまでの宇宙空間との関連がさっぱり分からない明らかに時代劇なシーン。
もう一度言おう、本作は時代劇映画の皮をかぶったトンデモSF特撮アクションおっぱい映画である。
【あらすじ】
時は江戸時代初頭、慶長19年(1614年)―
天下掌握の野望まであと一歩に迫った家康が鎮座する名古屋城下に明らかに名古屋城よりデカい隕石が突然落下。
その落下を何故か予言していた真田幸村の命により、真田配下の忍者・霧隠才蔵は混乱に乗じて徳川家康を暗殺する。
翌朝。一発で地球が氷河期になりそうな隕石が落下した影響を微塵も感じさせない青空の下、才蔵の眼前に殺したはずの家康の大名行列が現れる。昨夜死んだ家康は影武者だったのだ。
徳川方の忍者、服部半蔵に追い詰められた才蔵らを救ったのは、怪しげな術を使う猿!
…と思われたのも束の間、夢か幻か猿は忍者へとその身を変じ、猿飛佐助と名乗った。
時同じくして、家康は全国で自らの支配体制に従わぬ者の弾圧と処刑を強化。
西軍の残党、かぶき者、キリシタン、そして「草の者」と呼ばれる在野の忍びの者たちが次々と処刑され、世は絶対的な権力の支配する暗黒の時代へ突入しようとしていた。
やがて豊臣最後の忠臣加藤清正、そして幸村が父真田昌幸さえも暗殺されるに至り、幸村は家康の打倒を決意。
諸国に散らばる「草の者」を集めた家康暗殺のための精鋭部隊―すなわち真田十勇士を結成し、七大謀略で天下人家康に挑む!
【主な登場人物、あるいは人ではない物】
◆真田勢
- 真田左衛門佐幸村(さなだ さえもんのすけ ゆきむら)演:松方弘樹
ご存知真田幸村こと真田信繁。
本作はいわゆる「真田十勇士」をベースに謎のトンデモSF要素その他をレッツラまぜまぜした作品のため、一貫して「幸村」名義。
巨大権力と化した家康を正面から討つのは不可能と判断し、少数精鋭部隊「真田十勇士」を組織し七大謀略による家康暗殺に挑む。
以下その七大謀略の内容。
- 才蔵による名古屋城の家康暗殺計画。
- 家康に追われ諸国に散っている草の者、忍びの者たちを、佐助の案内によって集める。
- 和歌山藩内の試射場でフランキ砲の試射視察をする家康を狙う。
- 大坂冬の陣において大坂城に真田丸を作り徳川方に対抗。
- 冬の陣の後に秀頼を煽って再度、合戦(大坂夏の陣)を起こさせる。
- 自身のニセ首を作り家康本営に持ち込んで、幸村討死のデマを流す。
- 十勇士のひとりひとりが、幸村となって次々と家康を襲撃。*2
やたらと火攻めと爆発が好き。
なんと中盤で片目を矢で射られ、柳生十兵衛とか伊達政宗みたいな隻眼になってしまう。更にストーリー展開上彼が隻眼になる必要性は一切ない。
史実とか難しいことはともかく格好良ければなんでもいいという思い切った制作方針が分かるだろう?
映画冒頭で超巨大隕石の落下を予言(「予測」ではなく「予言」である!)していたが、その後は神通力とかを発揮する様子は全く無く、なぜどのように「予言」したのかなどその他一切の事はわかりません!
- 猿飛佐助(さるとび さすけ)演:あおい輝彦
真田十勇士の1人。忍者であり宇宙人。ああっ石投げないで!マジなんだって!
人の姿に化けているがその正体は隕石に乗って猿の惑星から来たと思しき宇宙人であり、火遁の術、幻術、竜巻の術、回想シーンを相手に見せる作劇上とても便利な術などの忍術というか超能力を操る。こんな佐助二度と現れないと思ったら2005年のアニメで似たような佐助が現れた
その竜巻の術とかを使えば家康くらい簡単に暗殺できそうな気がするが、なぜかそういう事はしてくれない。
- 霧隠才蔵(きりがくれ さいぞう)演:寺田農
真田十勇士唯一の古くからの家臣。本作では逆に珍しい極めてまっとうな忍者。
演者はムスカの声、あるいは園咲琉兵衛でおなじみの人。
すごいぞ、真田丸は本当に飛んだんだ!
- 三好伊三入道(みよし いさ にゅうどう)演:真田広之
真田十勇士の一人。精悍な僧形の若者。
本来の三好伊三入道は「高齢の僧兵」だったはずだが、絵面的にアレなためか若くて二枚目。
演じる真田氏は当時ジャパン・アクション・クラブ期待の若手アクション俳優だったため、アクションもかなりキレている。
そして最大の特徴は秀吉の朝鮮出兵の際に捕虜として連行された朝鮮人という設定だろう。
十勇士入りの条件として、家康に囚われている朝鮮の姫君「ジュリアおたあ様」の救出を幸村に要請する。
ちなみに朝鮮語で話すシーンもあるが、当のおたあ様とは日本語で会話していた。
結構若そう(演者は当時18歳)なのだが、慶長の役は16年も前。
一体何歳で捕虜にされたんだろう…?
- 三好清海入道(みよし せいかい にゅうどう)演:秋野暢子
そのジュリアおたあ様。キリシタンであり、ジュリアは洗礼名である。
家康に幽閉されていたが、棄教し側室になる事を頑として拒否し続け島流しに。
そこを猿飛佐助が超能りょ…忍法で竜巻を起こして駕籠ごと吹き飛ばすというダイナミックすぎる拉致により救出された。
他人の心中が読める超能力を有しており、十勇士の一員となる。
なぜ真田十勇士に超能力者が2人も居るのかは甚だ謎。ユリ・ゲラーブームの影響か?
ちなみに三好清海入道も元々高齢の僧兵だったハズだが、元々架空の人物なので最早何も言うまい。
- 穴山小助(あなやま こすけ)演:火野正平
真田十勇士の一人。幸村が所望した信州上田の焼酎をはるばる九度山まで瓶を担いで持ってこさせられた農民。本当にただの農民。なぜそんなのを十勇士に入れたのかは不明。
元よりただの農民なので家康打倒に興味はなく、他の十勇士メンバーが修行に明け暮れる間に女と(アーン!)している所を発見され、リンチの末追い出された。ほら言わんこっちゃない!
この「味方サイドが平気でリンチとか拷問を行う」というのも近年中々見られなくなったシーン。
その後大坂の陣にて偶然にも幸村たちと再会し、再び家康に挑む事となる。
- その他の十勇士の皆さん
何しろ真田十勇士なので10人出てくるのだが、後の面々はしっかりと覚えなくても鑑賞上あまり問題ない。
かぶき者・人さらい・ヤクの売人・宇宙猿人・ガッツ石松等が揃った九度山はさながらDQNの溜まり場である。
- 真田安房守昌幸(さなだ あわのかみ まさゆき)演:片岡千恵蔵
「よせばいいのに石田三成とかいうバカに味方した真田昌幸とかいうバカ」(穴山小助・談)
家康に二度も煮え湯を飲ませた稀代の名将。
関ヶ原の戦いの後紀州九度山に幽閉されていたが、家康が差し向けた毒手ネコに引っかかれて*3死んでしまう。
演者の片岡千恵蔵は戦前から戦後にかけ無数の時代劇で主演を務めた超大物だが、ネコに引っかかれて死んだのは最初で最後ではなかろうか…
- 比丘尼のみなさん
家康によって滅ぼされた武田家残党の妻子たち。
あるいはトンデモSF特撮アクションおっぱい映画である本作のおっぱい要員。
尼となって各地を巡っているが、その実態は売春婦を兼ねておりおっぱい丸出しでサービスシーンを提供してくれる。
その情報網で幸村の十勇士探しにおっぱいをさらけ出しながら協力。諸国に散らばる草の者たちをおっぱいの力で瞬く間に探し出した。
なお武田家滅亡は32年も前のことなのだが、このヒトたち一体幾つなんだろうとか考えるとおっぱいの有難みがしぼんでしまうのでやめた方がよい。
- 真田丸
ジェット機みたいな音を立てて空を飛ぶ空中要塞。
こんなのってないぞ…真田幸村いいかげんにしろよ…
- 石油
幸村が大好きな火攻めに使用する石油。
紀州の山奥に井戸がありじゃぶじゃぶ出て来る。
幸村が大好きな火攻めに使用する、なぜかダイナマイトのような形をしている爆弾。
ちなみにノーベルがダイナマイトを発明するのは江戸幕府が大政奉還を行う1867年の事である。
◆徳川方
- 徳川家康 演:萬屋錦之介
本映画の悪役。傲慢不遜にして悪逆非道。とにかく悪そう。
どのくらい悪いかというと冒頭で石田三成の頭蓋骨を盃に加工させて酒を飲んでいるくらいには悪いって信長じゃねえか!
ついでに言うと、三成が死んだのは14年も前。…ひょっとしてこの映画のスタッフは長篠の戦いから大坂の陣までが10年くらいだと思っていないだろうか?
その最期について、公開当時家康の首が50メートル飛ぶ!というネタバレすぎる宣伝が行われていたらしい。
ちなみに本作で彼の側近である本多正純を演じているのはムラマツキャップや立花のおやっさんでお馴染みの小林昭二である。
- 服部半蔵 演:曽根晴美
徳川方の忍者の頭領。
本作では「自由な草の者としての生き方を捨て、権力に与した忍者の裏切り者」という描き方をされている。就職したヤツを僻むニートみたいな言い草である。
配下に後にダイナブラック/星川竜&ゴーグルブラック/黒田官平を演じる凄腕アクション俳優春田純一と、やられ役一筋で時代劇で斬られ続け「日本一の斬られ役」と呼ばれることになる福本清三が居る。探してみよう。
◆大坂城
- 豊臣家と重臣のみなさん
ヒステリックで独裁な淀の方、無能な秀頼、それにおもねる家老の大野修理、戦は分からないが口だけは出す女房衆…という悪夢のごとき典型的なブラック大坂城。
淀の方は幸村とは初対面で全く信用しておらず、後藤又兵衛以下浪人衆がいかに幸村の積極策を支持してもまるで話を聞いてもらえない。
幸村からは早々に見切りをつけられており、ジュリア清海入道の超能力で秀頼を焚き付けて無謀な夏の陣を引き起こさせ、家康をおびき出すスケープゴートにされてしまった。
炎上する城内で奥方や側近が次々と切腹したり互いに短刀を刺し合ったりして死に、逃げ惑う淀の方を大野修理が背後から斬り殺して自刃し、秀頼も小姓と共に切腹する様子を約10秒で描いた超高速!大坂城落城のシーンは見ごたえがある。
- 後藤又兵衛基次(ごとう またべえ もとつぐ)演:成田三樹夫
元ナントカ官兵衛様黒田官兵衛家臣。官兵衛の息子・長政との不仲から黒田を出奔し、仕官先を求め諸国を放浪…の過程で発狂したらしく、大根をかじりながらうわ言を呟く狂人になっている。
ところがその後大坂の陣に参戦する際にはなぜか正気に戻っており、幸村ともども大坂五人衆の1人として活躍する。
「後藤又兵衛基次」という丁寧な字幕が出ないと前者の狂人と同一人物にはとても見えないため、狂人モードでの出番が伏線として機能していない。
- 塙団右衛門(ばん だんえもん)演:遠藤征慈
大阪城の浪人の1人。全然重要人物でもなんでもないのだが、戦場でも城内でも「塙団右衛門参上」という旗を堂々と掲げていて無意味にムチャクチャ目立つ。
挙句の果てにまったく重要なキャラじゃないのに大坂五人衆の内後藤又兵衛にしか与えられていない個別戦死シーンを与えられる始末。
ちなみに塙団右衛門は実在した大坂城の浪人の1人で、自分の名前を書いた木札をバラ撒きながら夜襲を仕掛けるという激しい自己アピールをしたというだけで歴史に名を残したある意味すごい人。名刺配りの大切さを現代人に教えてくれる。
こんな人にオススメだ
真田丸ファン
真田丸クラスタの皆様、元気だろうか? 「アアーッ!昌幸パパンの無茶振り!昌幸パパンの無茶振りが見たい~!」と禁断症状を起こしていないだろうか?
本作は真田丸が空を飛ぶなどの脚色を交えながらも大阪の陣前後の歴史を流れ的には割と忠実に辿っており、「真田丸で見覚えのあるシーン」と「真田丸には絶対に出てこないシーン」が交互に現れるので、真田丸を観ていると本作は更に楽しめる。
「二条城で対面する家康と秀頼、そして加藤清正」
「昌幸を追って自害する幸村の妻」
「紀州の山奥で石油を掘る幸村」
「ブラック大坂城から逃げ出す片桐且元」
「冬の陣後対立する豊臣家臣と浪人衆」
「幸村の首実検をさせられる真田信之」
「増殖する幸村」…「真田丸」を観た方なら、どれが史実で、どれが史実っぽいフィクションで、どれがおバカ要素なのかを判別できるはずだ。
また、本作と「真田丸」はラストの幸村と家康の対峙シーンが異様にソックリ。三谷幸喜が「謀略」を観ているかどうかは定かではないが、観ていなければ出来過ぎなほどに似ている。
ただし「謀略」の世界線の秀忠は「真田丸」のそれほどKYではなかった。
歴史ファン
この映画はスジも時代考証もムチャクチャなのだが、なぜかたまに歴史的事実をぶっ込んでくるので油断ならない。例えば…
- 信繁が上田の焼酎を九度山まで持ってこさせたのはまぎれもない史実。
- トンデモ要素の1つに見えるジュリアおたあは実在の人物である。
キリシタン大名小西行長に育てられた朝鮮人の娘で、関が原の後は家康の侍女となるも、棄教と側室になる事を拒んだため島流しにされた所までは史実。
超能力の有無は不明。 - 武田家は歩き巫女と呼ばれる各地を旅して祈祷等を行う巫女を諜報員として活用していた。
また歩き巫女はしばしば売春を行ったと言う。
などなど。詳しい人ならもっと色々ネタを見つけられるのではなかろうか?
特撮ファン
本作は一応時代劇なのだが、JAC-ジャパン・アクション・クラブがガッツリ関わっている。
JACとは仮面ライダーシリーズ等のアクションシーンを昭和から令和に至るまで担当し続けている芸能事務所*4であり、そのため戦闘シーンは伝統的なチャンバラではなく「仮面ライダー」などのヒーロー番組のアクションに近い。
そもそも特技監督がウルトラ・ライダー・戦隊・メタルヒーローシリーズで監督を歴任した佐川和夫&矢島信男である時点で本作は実質特撮映画である。
また、1970年代末にはまだCGがないため、冒頭の巨大隕石落下シーンも全てアナログ特撮の手法で作られている。
加えて幸村がやたらと火攻めが好きなため、本作では往年の仮面ライダーを彷彿とさせる頻度で爆発が起こりまくる。
真田丸の戦いでも真田側が大砲を撃つと巨大な火柱がドカーン!セメント爆発がどどーん!
当時の大砲は鉄球を飛ばすだけで弾が爆発はしないのだが何が爆発しているのだろうか?
ニンジャヘッズ
ニンジャが出るB級映画ってだけでヘッズはビールとドリトスを用意して観る価値があると思うぜ。
ガルパンおじさん
ガールズ&パンツァーは映画ネタの多い作品である。
多くのガルパンおじさん諸兄は「戦略大作戦」をご覧になっている事だろう。「八甲田山」や「1941」も重要なネタ元だ。「バルジ大作戦」「パットン大戦車軍団」等も観ておきたい。音響は「プライベート・ライアン」をイメージしているらしいぞ。「ケイン号の叛乱」もチェック済みだろうか?
…よろしい、ならば次は「真田幸村の謀略」だ。
歴女チーム(カバさんチーム)の戦国時代担当・左衛門佐はつねに片目を瞑って隻眼キャラを気取っているが、そのネタ元がおそらく本作。
だってこれ以外に隻眼の幸村なんて見たことないんだもん。
制作の背景
時は1978年、戦前から連綿と続いてきた伝統的時代劇が数字を出せなくなっていた頃。
東映は時代考証クソ食らえ型大型時代劇第1弾「柳生一族の陰謀」を公開。
これは徳川将軍が2名ほど暗殺されるなどの史実を堂々と無視した脚本でありながら、高いエンターテイメント性により大ヒットとなる。「柳生一族の陰謀」の大ヒットは東映に「時代劇いけるやん!」と希望を抱かせたらしく、続けて同一スタッフの赤穂浪士物「赤穂城断絶」を制作した。
ところが本作は色々な確執の結果吉良邸が爆発したりしない普通の赤穂浪士モノとなってしまい、思わしくない結果に終わる。時代劇の凋落期なんだからそりゃそうだ。
そこで「柳生一族の陰謀」の史実クソ食らえ&徳川将軍暗殺型路線に戻り作成されたのが本作である。
なお本作の映画としての評価は正直言って低い。
1人の男の異様な執念を軸にトンデモながらしっかりとしたストーリーを展開した「柳生」に対し、本作は大企業に就職した服部半蔵を妬むフリーター忍者のみなさんと、なぜかそれに味方する幸村の意志・目的が曖昧などとする評が目立つ。
「柳生」がその後テレビドラマ化されたり、2010年代も末になってポプテピピックでパロディ*5されたりするレベルの反響を呼んだのに対し、こちらは公開後の反応もその後の定着も今ひとつであった。
それでも東映はこの路線に時代劇復活を賭けていたらしく、翌1980年にはトンデモ大作時代劇第3弾「徳川一族の崩壊」を公開。
ところがその中で孝明天皇を暗殺(史実では天然痘による病死*6)させてしまったために右翼団体とのゴタゴタが発生。
「徳川一族」はソフト化ができなくなり、結果この路線は自然消滅してしまった。
…かに思われたが、ほとぼりが冷めてからは「南総里見八犬伝」「将軍家光の乱心 激突」などのJAC&火薬大爆発系時代劇をバブル崩壊辺りまで作り続けており、東映は時代劇の復活を中々諦められなかったようである。
ちなみに「将軍家光の乱心 激突」では、徳川家光が側室に刺されて死ぬ。(11年ぶり2回目)
この時期の東映はやけに徳川家に厳しい。
追記・修正は本作の猿飛佐助が宇宙人であることの合理性が分かる方にお願いします。
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▷ コメント欄
- 1/28の夜9時からBS-TBSで放送予定。興味があったらぜひ観てちょーだい。 -- 名無しさん (2020-01-27 21:19:30)
- 「吉良邸が爆発したりしない」のパワーワードみ -- 名無しさん (2020-01-27 21:23:03)
- 奇しくも同じ頃に公開されたのがSF時代劇「戦国自衛隊」なのがねw -- 名無しさん (2020-01-27 22:49:39)
- 柳生一族の陰謀をリスペクトしたアニメはポプテピだけじゃないぜ!プリパラもだ!(何で女児向けアニメでそんなネタが出るのかって?知ら管) -- 名無しさん (2020-01-28 02:11:38)
- なんでもかんでも禁止しては処刑を繰り返す家康、ろくに現実を見ようともせず挙句には冬の陣で戦った浪人衆に「お前らを養うために置いてるんじゃない!」とか現実のブラック企業を先走ったような事を言い出す大阪衆。作中の権力者がクズしかいなくて草。10秒で大阪城落城の様子を描いた場面はもう少し凄惨に描いてもよかったのよ? -- 名無しさん (2020-01-28 09:26:49)
- 「なんで家康の首が飛ぶんだよ」って当時酷評されまくったらしいけど、主演の松方さんが「家康の首が飛んで何が悪い」って堂々反論したのが逞しい限り。本当にこの史実クソ喰らえの『柳生一族の陰謀』の系譜大好きだし、『徳川一族の崩壊』もいずれ観たいがマジでやらかしちゃってるから機会がなさそうなんだよな…… -- 名無しさん (2020-01-28 10:15:56)
- Amazonプライムにあります -- 名無しさん (2020-01-28 19:18:38)
- 武田残党の妻「子」だから歩き巫女の子供だったらあり -- 名無しさん (2020-01-28 19:52:43)
- 末尾に(映画)とかつけた方が -- 名無しさん (2020-01-28 20:44:58)
- ↑「真田幸村の謀略」って名前の別のものがあるならともかく、他に同名のナニカがないなら必要ないでしょ -- 名無しさん (2020-01-29 09:59:55)
- そんなおっぱい出ないじゃないか -- 名無しさん (2020-01-29 10:15:23)
- すんごいケン・イシカワ作品感。買うわ -- 名無しさん (2020-01-29 10:18:06)
- ↑3それは「名前」だとわかるということを前提にしてますよね。「真田幸村の謀略」とだけ書いたら「真田幸村が戦国時代に行った謀略一覧」の項目かと思ってクリックする人が続出するのではないかと(現にここに一人) -- 名無しさん (2020-01-30 22:17:53)
- そろそろ吉良邸が爆発する忠臣蔵映画が作られないかなwww -- 名無しさん (2021-10-15 21:59:39)
- 12月25日からYouTube 公式配信スタート。ぜひ見てね -- 名無しさん (2021-12-26 01:20:10)
- 普通に好きな映画だな。それはともかく、 -- 名無しさん (2022-08-06 19:11:36)
- 誤送。「南総里見八犬伝」じゃなくて、「里見八犬伝」だし「八犬伝」は角川映画だぞ。「魔界転生」と勘違いしてないか? -- 名無しさん (2022-08-06 19:14:47)
- 面白みが無くなるからか誰も言及していないが、実は空飛ぶ真田丸は -- 名無しさん (2022-12-26 11:27:16)
- 誤送スマソ。実は空飛ぶ真田丸は幸村&十勇士がハッパ燻してバラまいたヤク煙を吸わされた徳川兵が見た幻覚だったりする。それはそれで別の意味でヤバいが。 -- 名無しさん (2022-12-26 11:31:12)
#comment
、
*1 Youtubeにも予告編と称する動画があるが、実際は本編の冒頭3分である*2 公開当時のパンフレットより
*3 毒が回るのを防ぐために傷口のある腕ごと幸村に切断させたが間に合わなかったようだ
*4 現在はジャパン・アクション・エンタープライズに改称
*5 「出ておじゃれポプテピピック! 姿は隠してもクソ漫画は臭いで分かりまするぞ!」のシーン
*6 ただしあまりにも薩長や岩倉具視ら一部の公家にとって都合が良過ぎる死去ゆえ当時はもとより不敬罪があった戦前ですらしばし噂された「ネタ」ではあった
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