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更新日:2024/05/16 Thu 10:38:27NEW!
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「知恵と啓蒙の時代は終わりを迎えた。暗黒の時代が始まったのだ。」
▽目次
総主長(プライマーク)とは、ウォーハンマー40K及び「ホルスヘレシー」(The Horus Heresy)に登場する超人総帥のことである。
皇帝が大征戦を行う際に自分の補佐を行うために作られたという人造人間の超人将帥で、その数は全部で20人。
彼らは皇帝自らの遺伝子が組み込まれており、それぞれ違った性格と皇帝同様の超人的な身体能力と才能を持っている。
どの総主長にも必ず「皇帝の一側面を持っている」という特徴があり、皇帝の息子とも呼ばれている。
総主長たちはウォーハンマー40K本篇から1万年前に起こった「大征戦」時代及び「ホルスの大逆」時代での主人公でもあり、彼らが中心となって物語が進む。
概要
総主長はいわゆる「デザイナーズヒューマン」(人造人間)であり、地球の地下深くに隠された研究所で極秘に製造された。
しかし、〈渾沌の神々〉達は皇帝の計画を察知し、プライマーク達が入っていた保育カプセルを誘拐してしまう。各カプセルは皇帝の加護によって守られていたため〈渾沌の神々〉は手は出せずに、カプセル銀河中に散ってしまう。
散っていったカプセルは、それぞれ別々の惑星に降り立っていった。彼らの出自はそれぞれ違ったものとなっている。
幼きプライマーク達を惑星の住民が温かく迎えてくれる場合もあれば、過酷な環境で抑圧される場合など、それぞれ違う人生を歩んでいく。
そして彼らはそれぞれ波乱に満ちた人生を歩んでいき、皇帝に出会うまで自らの超人的な身体能力と才能を駆使して成長していった。
後に彼らは父たる皇帝と再会し、20個存在する原初のスペースマリーンのレギオン(兵団)を率いて熾烈で過酷な運命に身を投じることとなる。
後に彼らは破壊と殺戮をもたらす暗黒神である〈渾沌の神々〉との契約を結び、帝国に暗黒の時代をもたらすこととなる・・。
自ら望んで皇帝に反旗を翻した者もいれば、策略によって敵となってしまった者までいるなど彼らにはそれぞれの裏切りの物語が存在するのだ。
画像出典:Wrhero--Anehma氏によるファンアート「Emperor and 18 primarchs!!!!! 40k」より
総主長(プライマーク)と兵団(レギオン)の一覧
総主長と兵団は全員で20あり、それぞれ違った特徴を持っている。各兵団は総主長によって率いられ、スペースマリーンの数も数万人配備されている。
各兵団は総主長の得意な分野や能力、思想が反映されており、それらを体現したスペースマリーンの軍団となっている。
20人いる総主長の中の2人に関しては今でも情報が消されており、兵団に関する情報も全くない。
一体だれが意図的に情報を抹消したのかいまだに明らかにされておらず、全ては皇帝を含むごく一部の者しか真実を知らない・・。
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【総主長(プライマーク)及び兵団(レギオン)のリスト】
兵団番号 | 兵団(レギオン) | 総主長(プライマーク) | 拠点惑星(ホームワールド) | 忠誠派or大逆派 |
---|---|---|---|---|
1 | ダークエンジェル | ライオン・エル=ジョンソン | キャリバン(消滅) | 忠誠派 |
2 | 全記録抹消 命令者不明 | |||
3 | エンペラーズ・チルドレン | フルグリム | チュモス(消滅) | 大逆派 |
4 | アイアン・ウォーリアー | パーチュラーボ | オリンビア(消滅) | 大逆派 |
5 | ホワイト・スカー | ジャガタイ・ハーン | ムンドゥス・プラヌス | 忠誠派 |
6 | スペースウルフ | レマン=ラス | フェンリス | 忠誠派 |
7 | インペリアルフィスト | ローガル・ドルン | 巨大起動要塞「ファランクス」 | 忠誠派 |
8 | ナイトロード | コンラッド・カーズ | ノストラモ(消滅) | 大逆派 |
9 | ブラッドエンジェル | サングィヌス | バール | 忠誠派 |
10 | アイアンハンド | フェルス・マヌス | メデューサ | 忠誠派 |
11 | 全記録抹消 命令者不明 | |||
12 | ワールドイーター | アングロン | 記録なし | 大逆派 |
13 | ウルトラマリーン | ロブート・グィリマン | マクラーグ | 忠誠派 |
14 | デスガード | モータリオン | バルバラス(消滅) | 大逆派 |
15 | サウザンド・サン | 赤のマグヌス | プロスペロー(消滅) | 大逆派 |
16 | ルナーウルフ(現:ブラックレギオン) | ホルス | クトーニア(消滅) | 大逆派 |
17 | ワードベアラー | ローガー | コルキス(消滅) | 大逆派 |
18 | サラマンダー | ヴァルカン | ノクターン | 忠誠派 |
19 | レイヴンガード | コラックス | デリヴェランス | 忠誠派 |
20 | アルファレギオン | アルファリウス(オメゴン) | 記録なし | 大逆派 |
第III(3)兵団エンペラーズチルドレン総主長「フルグリム」
「我々を見るもの全てにこの事を知らしめよ。我々が皇帝陛下の期待に背くことがありうるとすればそれは不完全さによってのみである。我々は決してそのようなことはするまい!」
【概要】
「エンペラーズチルドレン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。整った美しき顔立ちと銀髪が特徴で、あらゆる分野に対して完璧さや美しさを追求する。
大逆前は〈不死鳥の君〉の異名を持ち、他の総主長に対しても温和な態度を取っていた。特に大元帥ホルスとも親密な関係を築いている。
完璧主義者として帝国に尽くしてきたが、ある出来事を境に渾沌へと堕ちてしまう・・。
【装備品】
ウォーギアには〈焔の剣〉(ファイアブレード)と魔剣〈レーアの銀刃〉を装備しており、大征戦末期からは〈レーアの銀刃〉を振るうようになる。
パワーアーマーは「ギルドパノプライ」と呼ばれるアーティファイサー・アーマーを着装しており、紫と金色の装飾で包まれた美しい装飾が施されている。
画像出典:イラスト集「Horus Heresy Collected Visions」p266より
【フルグリムの出自】
赤子のころのフルグリムの入った保育カプセルは採掘惑星(マイニングワールド)に分類される惑星「チェモス」に落着する。チェモスは小型の二重の恒星に照らされ、濃密な塵芥雲に取り囲まれた、一日中夕暮れのような明るさの荒涼たる惑星であった。
〈不和の時代〉にて惑星の資源が枯渇し、住人は農場などの食料生産に全力を注がなければ生きていけない厳しい状況に立たされている。
そんな中、要塞工場に務める警察隊「ギャラックス」が赤子の総主長を見つけたが、食い扶持を減らすために孤児は速やかに安楽死させなければいけない決まりがあった。しかしあまりにも赤子が美しかったために、警備官達は行政官に懇願してその命を救いあげた。そして、赤子はギャラックスの警備官達に育てられ、チェモス古代の神にちなんで「フルグリム」と名付けられた。
フルグリムはやがて速やかに成長し、住民の成人年齢の半分にしか達さない頃から蒸気農場での勤務を始めた。彼は大人顔負けの仕事ぶりに加え、採掘技術をやすやすと取得する。彼は採掘方法や農場の生産方法を天才的な着眼点で改良し、それらの生産力を爆発的に増大させた。
彼が15歳になるころには要塞工場の行政官へと就任し、その後は惑星の指導者にまで上り詰めていた。彼はこの惑星を悩ませている原因が決定的な資源不足であることを示すと、フルグリムの指導の下で技師団が結成される。
技師団は惑星の古代技術や最古の採掘拠点を調査し、調査結果を基にして生産、採掘技術に大幅な改良を加えた。その結果、惑星は数千年ぶりに余剰生産を得ることができ、惑星を通りかかる宇宙船に生産品を販売して食料などを確保していった。
事実上の指導者となったフルグリムは、惑星に芸術と文化を復興させることに力を注ぎ、それらはかつての厳しい労働の犠牲になっていたが、人類にとっては不可欠と考えていた。
惑星の文化復興と資源確保を成功させたフルグリムはこのことを大きな誇りに思い、あらゆる物事に対しての完璧さを追い求めていくようになったのだ。
そんな中、孤立状態から脱却した惑星チェモスに皇帝の宇宙船が来訪する。警察隊による警戒態勢を整えた後、フルグリムは黄金の鎧に身を包んだ異邦人たちとの会見に臨む。フルグリムは帝国の近衛兵団を見た瞬間、自らが追い求めていた高い文化レベルを持つ世界からやって来たことをすぐさま見て取った。
そして、彼らの指導者である人類の皇帝が姿を現すと、フルグリムは自然と跪いて剣を差し出し、皇帝に忠誠を誓ったのである。そして、皇帝が語る人類統一の夢へと共に向かったフルグリムは、故郷を後して熾烈な大征戦へと身を投じたのであった。
【大征戦への準備】
大征戦へ参加する準備を整えに地球(テラ)へと到着したフルグリムは、自ら率いるスペースマリーン第3兵団との初対面を果たす。当時は事故によって遺伝種子(ジーンシード)の大半が喪失し、この時わずか二百名の兵団員しか揃っていなかった。
フルグリムは、少ない兵団員に向かって壮大な演説を行った。演説の内容が帝国の大義を称賛する素晴らしい内容だったために、皇帝は第3兵団を〈皇帝の寵児〉エンペラーズ・チルドレンと名付け、〈国の双頭鷲章をそのパワーアーマーに装飾することを許可した。
この時、大きな栄誉に見合うだけの働きをしようとフルグリムは震い立ち、帝国の大義を体現する模範になると志したのだ。
彼の持つ完璧さに対する執着は自兵団にも反映され、武術、戦術はもちろんのこと、芸術や礼儀作法などにも力を入れ、他の兵団とは比べ物にならないぐらいに容姿にも気を遣う兵団と化していった。
総主長フルグリムは長い銀髪や華やかな服装、美麗な声に加え、誰とでも仲良く温和に接する態度も相まって、総主長の中でも傑出した姿を誇るようになる。
【親友との出会い】
フルグリムは大征戦で使用する自らの武器を作るために地球のナロードニヤ山にある鍛冶場へとやって来た。そこでフルグリムは「私は〈大征戦〉で振るうべく、この世で最も完璧な武器を作るためにやってきたのだ」と高らかに宣言する。
そこに、アイアンハンド兵団総主長「フェルス・マヌス」はその戯言を聞き逃さず「そんな華奢な腕では我が武具に匹敵するものなど作れるはずがない」と宣言し、フルグリムとマヌスはどちらが優秀な武器が作れるかを競うことにした。
二人は3か月の絶え間ない作業の末、フルグリムは、一撃で山塊をも砕く美麗なハンマー〈鍛冶場砕き〉(フォージブレーカー)を、マヌスは永遠に燃えさかる黄金の剣〈焔の剣〉(ファイアブレード)を完成させた。
両者は互いの武器を誉めあい、賞賛しあった。そして、互いに自分の作った武器を相手に送り、フルグリムとフェルス・マヌスは親友となったのだ。
【大征戦への参加】
こうして〈焔の剣〉を手に〈大征戦〉に乗り出したフルグリムと兵団は大征戦に部分的ながらも参加するようになる。
初期のエンペラーズチルドレン兵団は少人数だったために、兵員数が回復するまでは総主長「ホルス」率いる「ルナーウルフ」兵団の指揮下で戦い続けた。やがて、ホルスとフルグリムは互いに親密な仲になっていた。
しばらくすると、惑星チュモスと地球からの新兵によってエンペラーズチルドレン兵団は単独で征戦に参加するまでに兵員数が回復し、フルグリムはその完璧主義を活かした手法で兵団を率いたのだ。
彼の兵団は「大令卿」と呼ばれる最も勇敢かつ最も強靭、そして最も高貴な戦士たちによってフルグリムの指示が伝えられた。フルグリムの指示が大令卿、そして中隊長から下々の兵士にトップダウンに伝えられていく。また、皇帝自身の布告や命令は全兵士に記憶され、あらゆる事柄においてその布告に固執した。
兵団自身は皇帝を人ではなく神としてみなしており、彼らの皇帝への畏敬と崇拝はもはや狂信の域にまで近づいていたという。
しかし、完璧性を追い求めてきたフルグリムと兵団だったが、ある出来事を境に彼らは堕落の道へと堕ちていくこととなる。
【堕落の魔剣】
フルグリム達エンペラーズチルドレン兵団は、海洋惑星「ラエラン」を攻略する。爬虫類型の異種族「ラエル」族との戦いに勝利した兵団は、残党狩りのために進軍していた。兵団は惑星の中央に位置するサンゴ礁に巨大な神殿を発見する。その中にはラエル族が最後まで守ろうとしていたものを発見する。
それは、ゆるやかに湾曲した刃を持つ長剣がおさめられていた。その柄には粗っぽく削り出された紫水晶がはめこまれており、フルグリムはこの剣を我が物として持ち帰る。
しかし、ラエル族は渾沌の神の一柱である堕落と快楽の神「スラーネッシュ」を信仰する種族であり、その神殿から持ち帰った魔剣〈レーアの銀刃〉にはなんと、スラーネッシュに仕える上級悪魔(グレーターディーモン)が封じ込まれていたのであった。
魔剣を持ち帰ったフルグリムの心には、絶えず上級悪魔からの誘惑の声が聞こえてきた。間もなく、フルグリムは親友マヌスからもらった〈焔の剣〉よりも、魔剣〈レーアの銀刃〉を携えるようになった。そしてフルグリムは、次第に上級悪魔の言うがままに動くようになっていったのである。
【ホルスの大逆】
後にホルスが大逆を起こすきっかけとなる事件の後、すぐにホルスの下へ駆けつけたフルグリムは反乱を止めるよう説得を行った。しかし、ホルスの甘言によってフルグリムの皇帝に対する忠誠心は揺らぎはじめた。
魔剣の誘惑の声にも抗いながらも迷っていたが、遂にフルグリムは皇帝が唱導する〈帝国の真理〉は、人類が完璧な存在になるための障害になっていると思い込んだのだ。
大逆派となったフルグリムはホルスの指示で、親友のマヌスに説得へと向かった。エンペラーズチルドレン兵団の大半を他の大逆兵団と共に「イシュトヴァーン」星系へと向かわせ、残りの部隊とフルグリムはアイアンハンド兵団の旗艦へと乗り込んだ。
フルグリムは親友であるマヌスを説得しようとしたが、皇帝に対して叛逆を行うフルグリムに対してマヌスは激怒した。マヌスはフルグリムを倒そうと襲い掛かってきたが、その時艦内で大きな爆発が起こり、マヌスは気を失って倒れてしまった。
その隙をついて魔剣の誘惑に従ってマヌスを殺そうとしたが、気絶したマヌスを殺すことはできなかった。艦内でエンペラーズチルドレンとアイアンハンドの同士討ちが発生している中でフルグリムは脱出し、彼はイシュトヴァーン星系の戦いへと参戦したのである。
【親友との死闘】
アイアンハンド兵団を含む忠誠派の三兵団が惑星「イシュトヴァーンV」にて〈降下地点の虐殺〉を受けてしまう。アイアンハンド兵団は殆ど兵力を失い、不利な状況にもかかわらずマヌスと兵団は獅子奮迅の戦いを続けた。余裕の表情でその戦いを見ていたフルグリムの表情が凍った。
親友であるマヌスが、超俗部隊と共にあらん限りの憎悪をもってこちらへと向かってきたのだ。もはやそこに友情はなく、憎しみがぶつかり合う死闘のみが残ったのだ。
フェルス・マヌスは「おまえは何もわかっていない。ホルスは狂っており、その反乱はほどなく忠誠なる者たちによって鎮圧されるのだ」と叫び、フルグリムは「何も分かっていないのはおまえのほうだ」と返した。
フルグリムは〈焔の剣〉を、マヌスは〈鍛冶場砕き〉を。互いに友情をもって褒め称えた武器が、互いへの復讐のために振るわれるのだった。
激しい死闘のさなか、フルグリムは邪悪な魔剣をマヌスの胸部装甲を突き刺し、うめき声をあげて跪いてしまう。そして、魔剣でフェルス・マヌスの首を無慈悲に切りおとしたのだ。アイアンハンドの総主長は、かつて最も親しかった兄弟の手によって、裏切りの中、無念の死を遂げたのだった。
勝者となったフルグリムは、親友の骸を見下ろし、そのすべてが偽りであったことを悟る。その時、フルグリムは親友の死の衝撃によって我に返ったのである。しかし、彼は自分のやってしまった愚かしい所業に恐怖した。数多くの裏切りを重ね、同胞同士を引き起こしてしまったのだと。
【上級悪魔の憑依】
悲嘆に打ちのめされたフルグリムは、魔剣のささやきにのってすべてを忘れたいと願った。その心の弱さをついて、上級悪魔は剣の中から脱出してフルグリムの肉体を乗っ取ってしまったのだ。一方フルグリムの魂は第三兵団の旗艦〈皇帝の誇り〉(プライド・オブ・エンペラー)内の〈ラ・フェニーチェ劇場〉にある彼の肖像画の中に閉じ込められてしまったのである。
その後、ホルスはフルグリムが上級悪魔に憑依されていることを知って驚き、救出したいと思ったが、この真実の露見が計画に差し支えると判断したために沈黙をあえて保つことにした。
ところが、イシュトヴァン戦直後に大逆の総主長が一堂に会した席で、「ワードベアラー」兵団総主長「ローガー」が瞬時にこの真相を見破り、上級悪魔を脅迫してもし従わなければ滅ぼすと告げて鎮圧した。
しかし、上級悪魔は命令に従わず、勝手気ままに採掘惑星「プリズマティカ」を襲撃する。こうした総主長の気まぐれな判断に不信感を強めた兵団長「エイドロン」はフルグリムに反発したが、斬首されてしまい、そこから滴る血をワインに垂らして兵団じゅうに回しのみをさせたのである。
【本物か偽物か】
エイドロンの死によって頭角を現した「ルシウス」は、総主長が変貌したことついて秘密裏に調査し、フルグリムは別の何かに憑りつかれているのではないかと確信を持ち始めた。〈ラ・フェニーチェ劇場〉の肖像画に総主長の魂が閉じ込められていると判断したルシウスは、第三兵団でも選りすぐりの戦士たちとかたらって、フルグリムの拘束した。
第三兵団の治療師「ファビウス・バイル」の研究室に運ばれたフルグリムは、実験台に拘束され、その体から悪魔を追い出す処置が行われた。尋問者からフルグリムに、兵団の現状や銀河の情勢などを質問していったが、彼は流暢に答えていった。
この尋問のさなか、ルシウスはあることに気づき、「本当は憑りつかれていないのでは」と判断した。慌てて跪いたルシウスの前で、フルグリムはやすやす拘束をちぎって立ち上がると、フルグリムは真相を明かした。ルシウスが調べ始めた当初から彼は、自分自身を取り戻しており、絵の中に閉じ込められているのは上級悪魔の方だと。
フルグリムはしばらく悪魔に憑りつかれていたが、ひそかに魔術を学んで、独力で身体から上級悪魔を追い出したのだ。そして、部下たちに渾沌の狡猾な騙し方を学ばせるために会えて憑依されたように装っていたのである。
【総魔長の誕生】
ホルスの大逆の内戦のさなか、「アイアンウォリアー」兵団の総主長「パーチュラーボ」は、辺境の惑星「ヒドラ・コルダトス」で忠誠派の「インペリアルフィスト」兵団と交戦中だった。そこに現れたフルグリムは、戦況を一変させる兵器〈究極の天使〉が〈歪みの嵐〉の中に隠されているという情報を明かし、フルグリムはパーチュラーボと共にその兵器を手に入れようとしていた。
アイアンハンド兵団とエンペラーズチルドレン兵団は、〈歪みの嵐〉が吹き荒れる宙域〈恐怖の眼〉の中にある古代惑星「イドリス」へと向かった。フルグリムはこの惑星にある〈アイシャの災いの墓所〉に向かう。そこは〈アモン・ナシャク・ケリス〉という城塞の中心にあった。
ひそかに後を追ってきた忠誠派スペースマリーン兵団と自兵団との戦いをしりめに、フルグリムとパーチュラーボは〈墓所〉に到達する。そこに現れたのは、墓所を守護する死せるアエルダリの亡霊である無数の水晶の戦士たちが、二人に襲い掛かってきたのだ。
水晶の戦士と戦いながら墓所の地下へと下ると、そこには広大な空洞が広がっていた。広大な地下空間の中心には人口太陽があたりを照らし、そこには古代アエルダリ族の都市遺跡が広がっていた。パーチュラーボはフルグリムに〈究極の天使〉など無いと問い詰めた。フルグリムは一笑した。
「今はまだ無い。だが私こそが〈究極の天使〉となるのだ。」と。
フルグリムの狂気を知ったパーチュラーボは武器を振るって襲い掛かってきた。それはかつて、親友であったマヌスに贈った〈鍛冶場砕き〉であった。しかし、フルグリムはパーチュラーボに妖術を施しており、パーチュラーボは体力の殆どをフルグリムに奪われてしまう。
体力を吸い取ったフルグリムは、そのまま地下空間を浮遊し、人口太陽のエネルギーを吸収する。人口太陽のエネルギーが無くなると、星は死に、惑星イドリスの崩壊が始まったのだ。
そして太陽の力に満ちたフルグリムは光り輝いた。そこに、忠誠派スペースマリーンのボルターから発射音が鳴り響いた。〈降下地点の虐殺〉を生き残った精兵たちが復讐のため、追跡してきたのだ。
忠誠派の銃撃によって魔力ある石が砕けると、パーチュラーボはそのエネルギーを受けて再び立ち上がる。そして、裏切った兄弟に向けて飛びかかり、憤怒のハンマーを振り下ろした。〈鍛冶場砕き〉の一撃を受けてフルグリムの肉体は砕け散り、大きな光の爆発が起きた。
そこから現れたのは、四つの腕とヘビのような尾を持つ美しくもおぞましい魔神であった。
フルグリムは最初から兵器を得るのではなく、莫大な古のエネルギーを吸収してスラーネッシュに仕える総魔長(ディーモン・プライマーク)と生まれ変わろうと計画していたのだ。
フルグリムが腕をあげると光の柱が上空から降り、彼とエンペラーズチルドレン兵団は光に包まれて姿を消した。パーチュラーボとアイアンウォリアー兵団、そして忠誠派は崩壊する惑星イドリスを脱出した。
総魔長となったフルグリムは、〈地球の戦い〉にもエンペラーズチルドレン兵団を率いて姿を現した。兵団はすでにかつての気高き姿をなくし、スラーネッシュの欲望に完全にのみ込まれていた。彼らには凜とした姿はかけらも残っておらず、殺戮と快楽に浮かれ騒ぐ俗物と化していたのである。
【大逆後】
大逆側が敗北した内戦後、兵団としての統率を失ったエンペラーズチルドレン兵団は小さな戦闘部隊に分裂し、奴隷狩りや殺戮を楽しんでいた。その残虐さはかのデュカーリ族(ダークエルダー)に匹敵するともいわれている。
そして、総魔長と化したフルグリムは、惑星「テッサラ」にて「ウルトラマリーン」兵団総主長「ロブート・グィリマン」との対決に挑んだ。フルグリムはグィリマンの身体にある大逆時の古傷を突き、毒刃でのどを切り裂いて殺害した。以後グィリマンは、惑星「マクラーグ」の静止フィールドにて一万年の長きに渡る眠りにつくことになる。
グイリマンを倒した後、フルグリムは〈恐怖の眼〉のなかにある惑星を与えられたと言われいるが、それ以降一万年間はその姿を見た者はいない。渾沌の領域で他の渾沌軍勢と戦っているのか、それとも堕落と退廃に明け暮れているのか、その真相は今でも明らかになっていない。
第IV(4)アイアンウォリアー兵団総主長「パーチュラーボ」
【概要】
アイアンウォリアー兵団を率いる大逆派の総主長。〈オリンピアの鉄鎚〉、〈鉄の王〉の異名を持つ彼は、冷徹な戦士であると同時に、科学や論理、合理性を追い求めていく。
両親などの影響で他人の感情に対しては無関心でかつ、徹底的な合理主義を貫き通す性格を持つ。それ故に彼の冷徹な態度は、他の総主長からも衝突の原因となっていた。
そして、合理性や無感情さを過剰にまで追い求める姿勢が後に渾沌への堕落につながってしまうこととなる。
【装備品】
ウォーギアには総主長「フェルス・マヌス」が使っていたウォーハンマー〈鍛冶場砕き〉を装備している。このハンマーはホルスの大逆時、マヌスが討ち取られた際にホルスによって贈られた武器である。
パワーアーマーはカタクラフティー・ターミネイターアーマーの「ロゴス」を着装している。このターミネイターアーマーには高度な指揮統制システムが搭載されており、パーチュラーボの部隊と連携が取れるようになっている。
その他にもツインリンク式の「リストキャノン」を左腕に、テレポートを正確に行うビーコン「テレポートホーマー」がアーマー内部に搭載されている。
画像出典:小説「Perturabo The Hammer of Olympia」表紙イラストより
【パーチュラーボの出自】
渾沌の〈禍つ神々〉に銀河の果てに飛ばされたパーチュラーボは、惑星「オリンピア」へと落着した。オリンピアは険しい山岳の惑星であり、住民の殆どが都市に集中して暮らしていた。惑星には多くの鉱物が埋蔵され、大きな要塞都市が複数造られていた。それらは都市国家が樹立されており、国家間での争闘が繰り広げられていた。パーチュラーボが発見されたのは、都市国家の一つである「ロチョス」であった。
パーチュラーボが発見される前は巨獣が闊歩する危険な原野で過ごし、自力で巨獣を狩るまでの野生児として成長していた。本人はその時の記憶はほとんどなかったという。
成長した少年をロチョスの衛兵が一目見てこれは尋常な子供ではないと判断し、ロチョスの僭主「ダンメコス」に引き合わせた。タンメゴスはその超人的な能力に感銘を受けて少年を引き取り、家族として養育した。
このとき、王と少年の間には、忠誠の見返りに保護を与え、与えられる限り最高の軍事教練と学問を受けられるという誓約が取り交わされたという。
王の宮殿で高度な旧幾を受けた少年だが、人を信じることはなかった。タンメゴスと共に多くに時間を過ごしたが、子としての親愛を受けることは全くなかったのだ。その為、オリンピアの住人からも少年は冷淡でかつ陰鬱な人物として見られていたのである。
【謎の星雲】
このような異常なまでに人を信じない性格は、幼少期のとある体験が原因だったと伝えられている。それは、少年が雨の中山頂までよじ登り、疲れた目で空を見上げた時、その片隅に見たこともない奇怪な「大渦巻きの星雲」を目撃したというものだった。
僭主の衛兵たちにその星雲についてたずねても誰もそんなものを見ていなかったが、しかし、パーチュラーボの生涯を通してこの「大渦巻きの星雲」は彼を見下ろし続けたのだ。そして彼はその大渦巻きが”自分の動作や思考を常に見張り続けている”と感じたのである。
この冷徹な監視をされている感覚の下での生活が、彼の冷ややかな性格を形成したのかもしれない。パーチュラーボ自身がこの体験について他人に語ることは一度もなかったが、約二百年後に彼はその「大渦巻きの星雲」の正体を知ることとなる。
【冷徹なる鉄鎚】
成年に達した少年は、自分の成人名を選んだ。それは高名な先祖の名をとるオリンピアの習わしに従わず、人類の没落以前の電子文書を解読した名を付けた。それが「パーチュラーボ」という名前であり、その名の由来や意味については彼の口から明かされることはなかった。
若きパーチュラーボは傑出した将軍として軍を率いるまでに成長した。四方を敵に囲まれていた状況を打破したパーチュラーボは勝利を重ね、その名声は伝説的なものとなった。傭兵などの戦争を生業とする者たちが競って彼の下に集った。
しかし、彼がもたらしたのはそれだけではない。パーチュラーボは天才的な知性から数多くの発明がもたらされた。オリンピアの学問と技術を吸収したパーチュラーボの工房には、数多くの設計図と新発見が生み出されていた。その分野は幅広く、機械や建築法、生産技術に医療、更に天文学まで及んでいた。
その中でも彼の才能が最も発揮されたのは軍事技術の分野だった。〈オリンピアの鉄槌〉という不気味な異名を得た彼は次々と新兵器を短期間で造り出し、その猛威の前に敵も味方も等しく膝をついたのである。
しかし、パーチュラーボは軍事的勝利をもたらしても平和をもたらすことはなかった。支配領域が拡大するにつれ内部の敵の脅威も同時に高まっており、数多くの陰謀と暗殺、調略といった政治闘争が内部で起こっていた。
ロチョスの覇権はパーチュラーボによってもたらされたと考えた他の君主たちは、彼に数多くの陰謀を仕掛け、彼の家族や友人は内心では嫉妬と憎悪をつのらせていた。しかし彼はそんな政治闘争に見向きもせず、侮辱に対しては容赦なく処刑を行っていた。
当時の伝説や描写では血塗られた容赦の無い将軍として語られている。
敵にも味方とも距離を置き、誰とも交友を持たなかった彼は、慈悲も知らない鋼鉄の仮面をかぶった処刑人として存在感を際立たせていたのだ。
彼はすでに自分の主君であるタンメゴスを打倒しようと思えばできたが、あえて君主の座を狙うことはしなかった。彼は最初からタンメゴスと交わした誓約を自分から破る気はなかったのである。実際にパーチュラーボは惑星を我が物にしようとしていたかどうかは今でもわかっていない。
そんな中、惑星オリンピアに皇帝が姿を現した。本当の父親たる皇帝と再会したパーチュラーボはすぐさま忠誠を誓う。パーチュラーボは自分が超人として創造された存在であることは再会前から薄々感じており、いつかは創造主が自分に会いに来ることも予測していたのであった。
ロチョスの僭主ダンメコスは養子を手放す見返りに、帝国支配の下で惑星オリンピアの総督に任じられた。
地球(テラ)へと戻ったパーチュラーボは、「サウザントサン」兵団総主長「赤のマグヌス」と親交を深め、共に〈技術の時代〉の地球文化についての研究を行った。発明家としての才能を持っていた彼にとっては、人類の黄金時代の知識は喉から手が出るほど渇望しているものであった。
総主長達の中でも科学技術の知識のついてはパーチュラーボに勝る者は一人もいなかったと言われている。
【大征戦時の活躍】
遂にスペースマリーン第4兵団を率いることとなったパーチュラーボは、兵団名を「アイアンウォリアー」と改めることとなった。この新たな軍団の戦闘記録を精査すると、彼は驚くべき手段で兵団の鍛錬と統率に取り掛かった。
総主長の期待を裏切る結果を出した兵団員たちは、なんとくじ引きによって自分たちの中から十人につき一人を選び、その戦団員を撲殺するという情け容赦ない間引きが行われた。この粛清によってアイアンウォリアー兵団は文字通りの〈鉄の戦士〉として無慈悲な兵団として生まれ変わったのだ。
機械の如く無慈悲でかつ熾烈で、賞賛も好意も求めず、失敗も許されない。残忍にして過酷。これこそがパーチュラーボの理想とする兵団の姿であったのだ。
あまりにも過剰でかつ過酷なパーチュラーボの統率は、他の総主長からリーダーシップの資質に対する批判が相次いだ。その中でも、「ウルトラマリーン」兵団総主長「ロブート・グィリマン」は勇敢にたたかった戦士たちを無益に殺すやり方は酷すぎると大いに批判した。パーチュラーボとグィリマンの激しい対立はその後皇帝によって止められたが、パーチュラーボに何らかの措置が施されることはなかった。
そして惑星オリンピアは、アイアンウォリアー兵団の拠点惑星となりパーチュラーボがその支配権を握る。惑星総督であったタンメゴスは廃位され、残る人生を権力闘争に費やすこととなった。タンメゴスの怒りはやがてオリンピアの住人の間に帝国への反感を育て、やがてはパーチュラーボと兵団に厄災をもたらすこととなる。
科学技術の知識に長けていたパーチュラーボは、火星の機械教団との友好関係を築き、惑星オリンピアは教団の協力の下で高度な製造工場を建設していく。その施設の多くは征服された星からサルベージしたもので、惑星オリンピアは兵団を支える確固たる拠点へと化していった。
【要塞攻略戦の達人】
拠点惑星を整備したアイアンウォリアー兵団は、大征戦において要塞攻略戦の達人として名をはせていた。人類であろうが異種族であろうが、彼らに攻め落とせない要塞は無いとまで言われていた。無慈悲で効率性の権化である彼らによって、あらゆる敵拠点が陥落したのだ。
まもなく、アイアンウォリアー兵団は敵が籠城戦を仕掛けてきた際の切り札として派遣されるようになったが、兵団にとって好ましくない影響を与えていった。要塞攻略戦は長期にわたる退屈で英雄的行為に乏しい消耗戦として知られており、アイアンウォリアー兵団は退屈しのぎに、敵の防備を突破する強襲と白兵戦を好むようになる。
その傍らで兵団は、要塞建築にも才能を発揮しており、攻略した惑星に新たに自前の要塞を建築していく。当然ながら、占領領域が広がるにつれて要塞に一定の兵団員を駐在させないといけないので、兵団の戦力は分散して目減りしていった。
酷い時には、一億人の住民を抱える惑星をたった十人の兵団員で護らなくてはいけない事例もあった。アイアンウォリアー兵団指揮下の帝国軍は非常に高い損耗率も兵団の兵力低下を助長させた。あまりにも過酷な消耗戦を続けていたために、第四兵団は「死体製造機」とまで揶揄されるようになってしまった。
この悪評は兵団指揮下の帝国軍諸連隊が叛乱を起こしてしまうほどとなり、今後大元帥「ホルス」はパーチュラーボの指揮下に置かれるのは犯罪者や奴隷のみであることを保証した。
パーチュラーボと戦団はこうした栄光とはかけ離れた任務も何も言わずに行っていったが、兵団の士気は衰える一方であった。そんな兵団員が鬱憤を晴らせたのはもはや敵との戦闘のみとなり、彼らは防衛部隊を一人残らず殺戮することで恐れられるようになった。
【冷たき関係】
パーチュラーボが持つその冷徹な性格は、他の総主長との関係を悪化させた。「レイヴンガード」兵団総主長「コラックス」もアイアンウォリアー兵団のやり方を「無神経な壊滅戦論者たち」として切り捨てた。
特に激しい対立を見せたのは、地球の防衛を任されている「インペリアルフィスト」兵団総主長「ローガル・ドルン」は、彼に対しては熾烈な態度を取っていた。ドルンとパーチュラーボは似たような戦術を取っているが、ドルンはパーチュラーボのように冷酷な手段を取ることはなく、高い理想をもって戦団を率いた。その為、パーチュラーボのやり方は到底受け入れられるものではなかった。
ドルンは常にパーチュラーボに対しては同僚でありながらも厳しく上からの目線で失態を追求し続けてそのプライドを引き裂いていった。その為、ドルンが難攻不落の防備を誇るたびに、パーチュラーボは激しい反感を抱えていたのだ。
幼いころから人間不信だったパーチュラーボは、このような冷え込んだ関係を修復しようとすることはなかった。
【大逆の芽】
アイアンウォリアー兵団は〈サクトラーダの深淵〉戦役で、異種族のフルト族との戦いに臨んでいた。さほど重要でもない惑星での無益な戦いだったが、長期にわたる消耗戦と多くの艦隊が撃破され、アイアンウォリアー兵団は多くの兵力を失った。この惨劇の原因は皇帝の傲慢さに他ならないとパーチュラーボは考え、その忠誠心に亀裂が生じたのだ。
武勲もなく、賞賛の言葉もなく、駐留任務と多くの無益な戦いを強いられて都合よく扱われていた兵団とパーチュラーボは更に大きな絶望を味わうこととなる。
故郷の拠点惑星オリンピアで反乱が起きており、パーチュラーボの養父である僭主「ダンメコス」が死亡したことによって都市国家間の闘争が再開していたのだ。パーチュラーボは直ちに兵団を率いてオリンピアに急行した。
そして、各都市につき十人につき一人を殺すよう命じ、拒否すれば皆殺しにすると要求した。多くの都市は拒絶し、文字通り都市は殲滅された。守備隊はもちろん、この無益な殺戮を拒否した兵団員もまた、同じく抹殺した。この結果、五百万人のオリンピア人が死亡し、残りの住民は奴隷となった。
パーチュラーボは冷淡にその様子を見守った。その時、遺骸を燃やす壮大な炎が上がり、彼は自分が何をしでかしたのか悟った。自分はもはや帝国臣民の守護者ではなく、虐殺者となり果ててしまったのだと。パーチュラーボはこの凶行を皇帝は決して許さないと考え、絶望した。
しかし、皇帝による処罰はなく、アイアンウォリアー兵団に別の命令が伝えられた。それは「イシュトヴァーン」星系へ向かえというものであった。この時、帝国の情勢は大きく変化し、大元帥「ホルス」が秘密裏に皇帝に反旗を翻したのだ。
故郷を滅ぼし、絶望に沈むパーチュラーボに、ホルスは手を差し伸べた。皇帝の欺瞞を訴え、偽りの皇帝を打倒しようと持ち掛けたのである。数少ない救いの言葉を掛けられたパーチュラーボとアイアンウォリアー兵団はその手を取り、大逆者となることを決意した。
【ホルスの大逆】
惑星「イシュトヴァーンV」で〈降下地点の虐殺〉が開始され、パーチュラーボと兵団は忠誠派のスペースマリーン3兵団にわなを仕掛けて襲撃を行った。この裏切りによって戦死したアイアンハンド総主長「フェルス・マヌス」が遺した戦鎚〈鍛冶場砕き〉(フォージブレイカー)はホルスにとってパーチュラーボに贈られた。
この贈り物を機にパーチュラーボとホルスに新たな誓約が交わされたが、実際にパーチュラーボがホルスに従ったきっかけは、自分が犯した凶行への許しをホルスが与えたことだった。
イシュトヴァーン星系の戦闘後は、パーチュラーボと兵団は憎きインペリアルフィスト兵団への攻撃を開始した。「ファル」星系と惑星「ヒドラ・コルダトゥス」でドルンの軍勢と戦ったパーチュラーボは、「エンペラーズチルドレン」兵団総主長「フルグリム」と共に古代兵器を持ち帰ろうとしていた。
しかし、それはフルグリムが総魔長(ディーモンプライマーク)へと生まれ変わるための仕組まれた策略であり、その計画に利用されてしまった。
その時、パーチュラーボは幼少期から自分を悩ませていた「大渦巻きの星雲」を目のあたりにする。そこは宇宙に開いた巨大な異次元の裂け目で、渾沌の力を放っていた。彼はこの大いなる渾沌の裂け目を〈恐怖の眼〉(アイ・オヴ・テラー)と名付けた。この呼称は、今後帝国が渾沌の軍勢の本拠地を呼ぶ名前として定着することとなる。
パーチュラーボと兵団は〈恐怖の眼〉に閉じ込められてしまい、最終手段としてブラックホールに飛び込んで脱出して〈嵐の宙域〉にある農業惑星「タラーン」へと移動した。そこにパーチュラーボはアエルダリの至宝〈黒い円眼〉が隠されていることを知る。
この至宝が出に入れば、ケイオスディーモンとの契約をも可能にするという宝を手に入れるべく、惑星の攻略を開始する。緑豊かな惑星にウイルス爆弾を降らせ、タラーンは砂漠の星へと姿を変えた。惑星の住民の熾烈な抵抗は続き、帝国からの援軍が到着すると、大規模な戦車隊による戦いが始まった。
この帝国史上最大の戦車戦として記録された戦いは熾烈な消耗戦となったが、パーチュラーボは遂に至宝を獲得できずにホルスからの命令によって撤退を余儀なくされた。
その後は、ウルトラマリーン兵団との艦隊戦を経て、「ワールドイーター」兵団と共に最終決戦となる〈地球の戦い〉へと向かった
【地球の戦い】
地球の戦いでは、宿敵インペリアルフィスト兵団と総主長ローガル・ドルンが待ち構えていた。パーチュラーボはドルンの築いた防衛戦を破壊することに無上の喜びを感じながら戦いに参加した。しかし、パーチュラーボとドルンの戦いがどのように繰り広げられたかは定かになっていない。ホルスは戦死し、大逆軍は敗走してしまったからである。
【大逆後】
パーチュラーボと兵団は大逆後も戦い続けていた。彼は惑星「セバスタスIV」に〈永久要塞〉と呼ばれる巨大な大要塞を建築し、ローガル・ドルンを挑発した。ドルンと兵団はこの挑戦に受けてたったが、要塞の類稀な罠と構造によって兵団の部隊は各個撃破されていった。そこに、ウルトラマリーン兵団が救援に駆け付け、アイアンウォリアー兵団は撤退を余儀なくされた。
しかし、インペリアルフィスト兵団の遺伝種子(ジーンシード)は〈渾沌の神々〉に捧げられ、彼らは二十年近くに渡って戦闘不能になるほどの大損害を受けた。この功績によってパーチュラーボは〈分かたれざる渾沌〉の総魔長に昇格したのだ。
この後、アイアンウォリアー兵団は〈恐怖の眼〉へと撤退し、悪魔惑星「メドレンガルド」を本拠地とした。ここには無数の塔が立ち並んだ巨大城塞〈憎悪の要塞〉が建設される。ここを拠点として、兵団は一万年以上帝国との戦いを続けていた。
そして〈第十三次黒き征戦〉によって〈大亀裂〉が生まれた今、アイアンウォリアー総魔長は帝国の要塞を突破する大戦略を実行に移そうとしているのだ。
第VIII(8)兵団ナイトロード総主長「コンラッド・カーズ」
【概要】
「ナイトロード」兵団を率いる大逆派の総主長。〈闇夜の幽鬼〉(ナイト・ホーンター)の異名を持つ彼は、自らの正義に憑りつかれた迷える殺戮者として数多くの敵を屠ってきた。敵を恐怖に陥れ、目的を達成するためなら手段を択ばない残忍さを持つ。
しかし、彼は人生を通して恐ろしい未来を予言する白昼夢に襲われる悩みを持っており、彼を苦しませていた。
また、悪や犯罪者を憎む心を持っているが、先ほどの白昼夢の予言によってその良心を狂わされる呪われた生涯を歩むこととなってしまう。
【装備品】
ウォーギアには両腕用のライトニングクローである「マーシー&フォーギヴネス」を主に装備している。またフレーニングナイフ型のパワーソード「ウィドウメーカー」も装備しており、銃火器の代わりの投げナイフとして使用する。
パワーアーマーにはアーティファイサー・アーマー「ナイトメアマントル」を着装している。このパワーアーマーにはカーズが特に憎いと感じた敵から剥いだ皮が装飾されており、見た者に悪夢のような恐怖を植え付ける。
画像出典:オーディオドラマ「Konrad Curze A Lesson in Darkess」カバージャケットより
【カーズの出自】
渾沌の〈禍つ神々〉に銀河の果てに飛ばされた赤子のカーズは、大気汚染と永久の日食によって常に闇に閉ざされた惑星「ノストラーモ」に飛ばされて落着してしまう。惑星にはアダマンチウム鉱床が眠っており、それらを掘り起こす複数の採掘精錬企業がこの星を牛耳っていた。
住民は蒼白い肌を持っており、その殆どが貧民で鉱山で休みなく働かされていた。犯罪は野放しにされ、絶望的な状況の中で多くの人々は自殺の道を歩んでいった。
カーズは他の総主長とは異なり、誰にも養育されずに自力で成長していった。自らの能力と決断力のみを頼りにして、大都市「ノストラーモ・クイントゥス」に巣食う悪党を狩りつつ生き延びてきた。
そんな彼は、幼いころから最悪の未来を予言する恐るべき白昼夢に悩まされ、その呪われた悪夢は生涯を通して続いていったのである。
そんなカーズが獲物にしていたのはノストラーモを蝕む犯罪者や悪党たちであり、彼が悪と断じた者は容赦なく討伐された。都市の腐敗した有権者が姿を消し、そのライバルも共に葬られた。彼の手に掛かった悪党達はいずれも恐ろしい姿で発見され、その多くは身元もわからない程に惨殺されていた。
わずか一年でノストラーモ・クイントゥスの犯罪率はほぼゼロとなり、社会に平和が戻った。名も無き者であったカーズは市民から〈闇夜の幽鬼〉の異名で呼ばれるようになった。
カーズは、自分がこの大都市で恐怖と憎悪の対象となる唯一の存在になったことを確かめると、〈闇夜の幽鬼〉として貴族たちの前に現れた。
こうして、彼はノストラーモ・クイントゥスの最初の君主となったのだ。彼は知識を貪欲に修得した後、公平でかつ穏健な君主として都市を治めた。
しかし、彼の制裁は相変わらず続いており、善良な君主と恐るべき殺人者という二面性を持つようになっていった。やがて、ノストラーモ・クイントゥス以外の都市もカーズに服従するようになっていった。他の都市の君主が〈闇夜の幽鬼〉の報復を恐れたためである。
【皇帝との再会】
〈闇夜の幽鬼〉が惑星全土を支配した頃、皇帝の〈大征戦〉がノストラーモ星系に到達したが、この到来はノストラーモの歴史で予言されていたものである。
ノストラーモに着陸したのは、皇帝、「フルグリム」、「フェルス・マヌス」、「ローガル・ドルン」、そして「ローガー」であった。
光り輝く皇帝たちの姿を見た住民たちは、普段暗闇になれていたために彼らを直視できず、その癒しの光にほとんどが涙した。
〈闇夜の幽鬼〉の宮殿に続く大路ではコンラッド・カーズが一行を待っていたが、皇帝たちが彼に近づくと、カーズは強烈な恐ろしい白昼夢に襲われ、自らの両眼をえぐり出そうとしていた。
しかし、皇帝によって止められ、この時カーズは彼らと自分の死の運命を幻視してしまったのだ。
皇帝は「コンラッド・カーズよ、恐れることはない。余は汝と共に故郷に帰るために来たのだ」と諭すと、カーズは「父上、それは本名ではございません。俺は〈闇夜の幽鬼〉。それが我が民から付けてもらった名前です。父上が何をお望みか俺はわかっております」と話した。
この時、ただ単に〈闇夜の幽鬼〉と呼ばれていたカーズだが、「コンラッド・カーズ」という名前を誰がつけたのか定かではない。おそらく皇帝自身がつけた名前と思われる。
【大征戦での活躍】
カーズは帝国の文化や戦術を素早く学び、エンペラーズチルドレン兵団総主長「フルグリム」の指導の下でスペースマリーンの総主長としての知識を習得した。カーズはまもなく第八兵団を任され、兵団名を〈夜の主〉ナイトロードと改名した。
ナイトロード兵団は多くの戦場で活躍し、わずか数年で効率的かつ徹底的で情け容赦ない兵団に変貌していく。カーズは兵団のパワーアーマーを敵が恐怖するような色と装飾で飾り付け、戦術方針としては敵に恐怖と混乱と慈悲無き虐殺を与えることを是としていた。また、潜入や暗殺などの任務もこなし、まさに〈夜の主〉の名は敵側にも届いていたという。
やがて、ナイトロードが近づいてくるという知らせのみだけで、星系全体が莫大な貢物を差し出し、あらゆる犯罪が無くなり、異能者と異端者を処刑するようになった。
【兵団の内情】
ナイトロード兵団に編入される新兵は惑星ノストラーモの住人から選ばれたが、その多くは犯罪者だった。ノストラーモは〈闇夜の幽鬼〉もといカーズが居なくなってからは元の腐敗に満ちた犯罪社会に戻ってしまい、兵団に迎えられる健康で強靭な候補者は犯罪者しかいなかったという。その為、兵団の統率力は次第に減っていった。
それと同時期に、カーズを襲う予言の白昼夢はより頻繁にかつ恐ろしいものとなっていき、彼の苦しみはより強くなっていく。
そんな中カーズは、総主長の中でも自分の兵団を憎んだ唯一の人物だったと言われており、自分が本来憎むべき犯罪者と同じ存在になり果てていた事に頭を悩ませていた。
【総主長との関係】
他の総主長とも関係は決して良いものではなかった。ナイトロード兵団の残虐な行為に対しては、他の総主長から激しい論議を呼んだ。特に「サラマンダー」兵団総主長「ヴァルカン」は人間性を重んじる性格が故に、共同作戦時には敵側の都市住民を全員虐殺したことに激怒し、危うくカーズと決闘に及びそうになってしまう。
故郷ノストラーモが再び元の社会に戻ってしまったことを知ったカーズは、憂鬱の中で当時共同作戦を取っていたフルグリムとローガル・ドルンに近づこうとした。
ドルンは冷淡だったが、情をもって接したフルグリムにカーズは、自分がかつて幻視した〈ホルスの大逆〉等に関する予知について話した。あまりにもその内容に驚いたフルグリムはこのことをドルンに相談した。
しかし、フルグリムが信義に反してドルンにこのことを明かしてしまい、ドルンはこのことをカーズに問いただしてしまう。自らの予知夢についてドルンに明かされてしまったカーズは激昂し、ドルンに襲い掛かり重傷を負わせ、インペリアルフィスト兵団の兵団員数人を殺害した。
その後、カーズとナイトロード兵団は大艦隊を率いて共に惑星ノストラーモへ逃亡したのであった。この時、滅びの予言はすでに成就してしまったのである。
【故郷の崩壊】
ノストラーモへと着いたカーズとナイトロード兵団の大艦隊は、彼の命令の下、なんと罪深き犯罪がはびこる故郷の惑星に向かって攻撃を開始したのだ。地表は無数の爆撃と光線によって燃やし尽くされ、やがて攻撃の目標は惑星の核へと向けられた。
運命の皮肉か、かつてカーズが落着した生育ポッドがある地点の亀裂から大地が引き裂かれ、アダマンチウム鉱山が崩壊した。悪に蝕まれた闇夜の惑星「ノストラーモ」は〈闇夜の幽鬼〉ことカーズの怒りによって数億の住民もろとも爆散したのである。
この時、彼は渾沌の誘惑に影響されやすくなっていった。
後に兵団が参加した戦役の数々はもはや皇帝の大義のためではなく、無差別な虐殺を行うためだけに行われていた。
まもなく、皇帝はナイトロード兵団の残虐な行為に対する裁判が行うため、カーズと兵団を地球に召喚するための命を下したが、兵団が地球に到着する前に〈ホルスの大逆〉が勃発した。
【〈ホルスの大逆〉】
惑星「イシュトヴァーンIII」で起こったホルスの裏切りが明らかになると、銀河の内戦の火蓋が切って落とされた。その時、カーズは大元帥「ホルス」の側に付き、新たな殺戮と破壊を開始した。彼らはまず惑星「イシュトヴァーンV」での戦役に参加し、降下地点での強襲、通称〈降下地点の虐殺〉に参加した。
カーズは戦闘中、サラマンダー兵団の総主長ヴァルカンを捕らえ拷問船に連れて行って拷問を行ったが、彼は決して死ぬことのない〈永生者〉(パーペチュアル)であった。それを知ったカーズはヴァルカンを殺害しようとあらゆる手段を施した。
それはヴァルカンに自分と同じような怪物であることを認めさせたいがためであったが、ヴァルカンは決して屈しなかった。
カーズは絶望し、この決着を決闘でつけようとした。しかしヴァルカンはこの戦いに僅差で勝利し、隙をついてテレポーターで拷問船を脱出し、ウルトラマリーン兵団の拠点惑星マクラーグへと逃げ延びた。
【マクラーグでの戦い】
〈降下地点の虐殺〉から二年後、カーズと兵団は惑星「ツァグルーサ」に総主長「ライオン・エル=ジョンソン」を招く伝言を送った。この際、ジョンソンに対してカーズはある予言を伝えていたという。
「ナイトロード兵団」と「ダークエンジェル」兵団の戦闘が開始されると両兵団は激突し、総主長同士の一対一による死闘が繰り広げられた。
二回目の激突でカーズはジョンソンの喉を切り裂いて負傷させ、ダークエンジェル兵団員はカーズにひん死の重傷を負わせて昏睡状態に陥らせた。その後、両兵団は惑星から撤退していった。
カーズが眠っている間、ナイトロード兵団は六つの艦隊に再編成され、それぞれが司令官によって指揮されるようになった。目覚めたカーズはその後、ダークエンジェルの旗艦〈インビジブル・リーズン〉に潜入して四か月間、艦内に隠れ続けた。そして旗艦は惑星マクラーグに入港すると、カーズは惑星内の首都へと潜入した。
マクラーグの首都でカーズは、かつての〈闇夜の幽鬼〉の如く出会った者を片っ端から殺害し、聖堂にいた「ウルトラマリーン」兵団の司令官「フラトゥス・アウスグトン」をも殺害する。
そこに駆け付けた総主長の「ジョンソン」と「ロブート・グィリマン」を待ち受けたカーズは、聖堂に仕掛けた爆弾を起動して両者を爆発に巻き込んだ。
両者とも爆死したと思ったカーズは遂にグィリマンの育ての母を手に掛けようとしたその時、マクラーグで療養していたヴァルカンから復讐の反撃を受ける。ヴァルカンの存在を予知できなかったことに驚愕したカーズは、再びヴァルカンとの一騎討ちが始まった。
しかし、この死闘に謎めいた暗殺者「ジョン・グラマティカス」が介入すると、〈永生者〉を唯一殺せると伝わる鉱石「フルグライト」で「ヴァルカン」を打倒した。カーズはその鉱石を奪い取ろうとするが、グラマティカスの放ったディーモンによってカーズは〈歪み〉の中に引きずり込まれてしまった。
〈歪み〉の中から脱出したカーズは再びマクラーグに姿を現すと、そこはブラッドエンジェル兵団総主長「サングィヌス」がいる玉座の間であった。
この時グィリマンは皇帝が倒れた際の予防策として、惑星マクラーグに〈第二帝国〉を構築しているところだった。
サングィヌスは〈第二帝国〉の皇帝としての地位を授かっていた。
カーズはサングィヌスに対してこれから起こるサングィヌスとカーズの最期がどのような結末になるかについての予知を伝えた。
カーズは、総主長が銀河に散在したことや、自分がノストラーモで生きたこと、ホルスの大逆についても全ては皇帝によって仕組まれた計画であると信じていたのだ。
カーズはサングィヌスに訪ねた。何故、皇帝の奴隷であることを受け入れ、渾沌の誘惑に屈しなかったのかと。
サングィヌスは答えた。皇帝への信頼は変わらないと。カーズは悲壮の中、サングィヌスへ自らを殺してくれと頼んだ。
しかし、まだ帝国に戻って贖罪するチャンスはあるとサングィヌスは彼に説いたが、銀河は永遠の戦争に呪われており、最後に残るのは渾沌のみであると答え、そして玉座の間から姿を消した。
【捕らわれし予言者】
この後もカーズはマクラーグでゲリラ戦を行い続けたが、やがて計画していた爆発テロが失敗し、ジョンソンに山岳へ追い詰められてしまい打ち倒されてしまう。しかし、ジョンソンは錯乱していたカーズにトドメを刺すことは出来ず、カーズは捕縛された。
サングィヌスの裁きを受けることとなったカーズは、ジョンソンとグィリマンの前でその犯行を認めはしたが、罪は認めはしなかった。自分はこう行動するように定められただけあってそれは犯罪ではないと言うのだ。
死刑執行を下したサングィヌスは自らのサイキック能力でカーズ打ちのめした。しかし、カーズは傷つきながらも自分はこのような死に方ではないと叫んだのだ。
それを聞いたジョンソンは処刑を中止させた。ジョンソンは言った。カーズは未来を見ることが出来、自らの死に方は皇帝が送った暗殺者によるものだと定められており、すなわち皇帝はまだ生きているのだと。
そして、サングィヌスは自らがホルスに殺害される予言も正しいだろうと認めたのである。
この時、〈第二帝国〉の大義は無くなり、総主長達は皇帝を救援するために大艦隊を率いて地球へと向かった。カーズも皇帝直々の裁きを受けるべく、ジョンソンに拘束されながら彼らと同行した。
その途中、サングィヌスはカーズを連れて惑星「ダヴィン」を訪問し、ジョンソンとグィリマンも同行した。
惑星に立ち寄った理由は、サングィヌスがこの旅で運命を変えられると信じていたからであり、ダウィンへと立ち寄る展開は、カーズが予測したものとは異なるものであった。
サングィヌス一行は、ホルスが堕落し呪われたとされる渾沌の暗黒神殿へと向かった。このときカーズは全く予知しなかった展開に混乱してしまう。
その時、惑星の中枢では突如渾沌のポータルが開き、サングィヌスはそこに呑み込まれてしまったのだ。グィリマンとジョンソンから彼を取り戻すにはどうすればよいか聞かれたカーズは、予想外の出来事に慌てふためくだけだった。
遂に渾沌の悪魔がポータルから続々と現れると、忠誠派スペースマリーンとの壮絶な戦いが繰り広げられた。
サングィヌスもポータルから無事に帰還し、ダヴィンでの戦いに勝利した忠誠派の艦隊は、ついに地球に進むことのできる航路を発見した。
だが、そこはホルスの艦隊によって封鎖されていた。
グィリマンとライオンが陽動作戦を行う一方で、サングィヌスのブラッドエンジェル兵団とカーズは皇帝の裁きを受けるべく地球に向かった。
サングィヌスは突如、カーズをいきなり冷凍ポッドに封入してしまった。当惑するカーズにサングィヌスはこう答えた。
「自分は地球へ最期の運命へと会いに行く。カーズもまた、暗殺者による死の運命に会いに行くがよい」
そして、カーズが入った冷凍ポッドが射出された。後にこの冷凍ポッドはナイトロード兵団に回収され、サングィヌスは予言通り運命の結末を迎えた。
【カーズの最期】
〈地球の戦い〉でホルスが敗北した後、ナイトロード兵団は他の兵団のように散り散りの戦闘団に分裂することなく、帝国への襲撃は続いた。しかし、その戦術は自滅的なものへと変化していった。この時、カーズの精神は大きな破綻をきたしていたのだ。
彼の晩年は、もはや暴力と狂気に憑りつかれた怒れし殺戮者と化していた。
やがてカーズは、自身の予言通りに帝国から送られてきた「キャリダス」教団の女暗殺者「ム=シェン」によって殺された。惑星「ツァグァールサ」の神殿に座するカーズは、護衛を全くつけないで暗殺者を迎えた。
ム=シェンによって記録された映像にはカーズの最期の言葉が残っており、今もその真意については最大の謎の一つとされている。
「貴様が来ることなど分かっていたぞ。暗殺者よ。それこそ貴様の船が東方辺境へと足を踏み入れた時からな。ならば何故俺が貴様を殺さなかったのか。それは貴様に課せられた任務と、これから貴様が為す行いによって、俺がこれまで言い、そして行ってきたこと全ての真実が証明されるからだ。俺はただ過ちを犯した者を罰しただけだ。偽りの皇帝が俺を罰しようとしたようにな。こうして身の証が立てられるならば、俺の命なぞは何ら惜しむに足るものではない。」
指導者であるカーズの死後ナイトロード兵団は統率力を失い、組織は分裂してしまった。しかし、第41千年紀の今でも組織自体は残っており、〈闇夜の幽鬼〉ことコンラッド・カーズの恐怖と狂気は今でも継続して残っている。
第XII(12)ワールドイーター兵団総主長「アングロン」
【概要】
「ワールドイーター」兵団を率いる大逆派の総主長。〈赤き天使〉の異名で呼ばれるほど獰猛でかつ怒りに支配された性格を持っている。
脳内にはアドレナリンが増強されるインプラントが埋め込まれており、白兵戦においては総主長の中でもトップクラスの実力を持つ。
常に抑圧と怒りに晒され、大切な仲間よも失う人生を送ったために、最後は渾沌へと堕ちることとなってしまう。
【装備品】
ウォーギアには二振りの片手用チェーンアックス「ゴアチャイルド」と「ゴアファーザー」をそれぞれ片手に装備している。大逆時にはローガーから送られた両手持ちのチェーンアックス「ブラゼントゥース」を装備して戦っていた。
パワーアーマーは「アーマーオヴマーズ」(火星の鎧)を着装しており、惑星「ヌケリア」の剣闘士が装備していた鎧を基にして設計されている。
画像出典:小説「Angron Slave of Nuceria」表紙イラストより
【アングロンの出自】
渾沌の〈禍つ神々〉に銀河の果てに飛ばされたアングロンは、今ではその所在地が不明となった惑星「ヌケリア」へと落着した。古き文献によれば、アングロンか育ったこの惑星には高度な技術が備わっており、退廃した文化を貪る貴族と、大多数の貧民が同じ都市で暮らしていたという。
貧困の現実から目をそらすため、貴族達は定期的に剣闘士試合を巨大な闘技場で催した。そこではサイバネティックス技術で強化された剣闘士達が、抑圧のガス抜きのために残虐な試合が行われていた。
赤子のアングロンは奴隷商人に発見された。しかし、その赤子の周りには異種族の死体が横たわっていた。
伝説によれば、アングロンの凶行を予知したアエルダリ族の暗殺者がその赤子を殺害しようとしたところ返り討ちにあったと言われている。
奴隷として拾われたアングロンは、ヌケリアの都のひとつに連れていかれ、そこを支配する氏族に売り飛ばされてしまう。その後主に剣闘士としての才能を見いだされたアングロンは、すぐに都でもっとも大きい闘技場で闘わされることになった。
その際、アングロンの脳内には〈屠殺鋲〉(ブッチャーズ・ネイル)とよばれる古代から伝わるインプラントが埋め込まれた。このインプラントは人の持つ理性や警戒心などを抑える代わりに、アドレナリンを増幅して攻撃性を強める効果を持つ。
〈屠殺鋲〉を埋め込まれた剣闘士は、怒りによって快楽を得ることが出来、剣闘士全員が手術を受けていたのだ。アングロンも剣闘士のひとりに加わるべく、〈屠殺鋲〉の手術を受けた。
剣闘士となったアングロンはわずか数ヶ月で、武術と名誉を重んじる誇り高き戦士となった。そして観衆は彼を〈赤砂の王〉と呼び、何千という剣闘士を殺してきたが、良き決闘を行った相手の命は救った。
彼は剣闘士しての暮らしを謳歌していた一方で、奴隷制度を憎んでいた。そのために彼は何度も脱走の試みを行ってきたが、全て失敗に終わった。
その数年後アングロンの名声は惑星中に轟き、彼の下で訓練を積んだ剣闘士はトップクラスの強さを誇った。やがてアングロンは、脱走をするのは独りでは不可能だと悟り、より大規模な脱走計画を練ることとなった。
【大脱走】
脱走計画当日、アングロンは闘技場の剣闘士が全て参加する祭典に参加する。観客が剣闘士の戦いに魅了されている中、計画は実行された。
アングロンと志を共にする剣闘士達である〈都市喰らい〉は、突如、警備兵達に刃を向けて反乱を起こしたのだ。彼らは自由を求めて敵の死体を築き上げ、約2000人の剣闘士達が街中に脱走した。
そして、敵から武器を奪い去るとアングロン達はあらかじめ見つけておいた北の山へと逃走する。脱走後、数年間は逃亡した剣闘士達を捕縛または殺害するための軍が差し向けられたが、アングロンの優れた統率力と〈屠殺鋲〉による驚異的な戦闘力によって返り討ちにあった。
しかし、アングロン率いる脱走剣闘士の数は日を追うごとに消耗と疲労によって減っていき、半数の人数である1000人になっていた。そして「フェダン・モール」の山中でアングロン達は、ヌケリア各都市から集められた討伐軍に包囲された。超人的能力を持つ総主長でもこれほどの大軍を相手にすることは不可能であった。
追い詰められたアングロンは仲間達と共に最後まで戦い抜き、名誉ある戦死を遂げようと決意したのだ。
その時、アングロンが思いもよらない介入者が現れた。それは、アングロンの父たる人類の皇帝であった。皇帝は惑星ヌケリアの軌道上にある旗艦から数ヶ月に渡ってアングロンの戦いを観察していたのである。皇帝はアングロンに総主長としての役目を授けるために姿を現した。
このとき、皇帝は帝国に付くようアングロンに提案したが、アングロンは総主長としての栄光よりも仲間と共に戦い、戦死する事を望んだ。軌道上の旗艦に戻った皇帝は、アングロンを失うわけにはいかないと判断し、アングロンのみを無理やりテレポートで回収してしまう。
大将を失って残された剣闘士達は、哀れにも士気を喪失してしまい、翌日には討伐軍によって皆殺しにされてしまう。
仲間を救えなかったアングロンに深き悲しみと怒りが込み上げた。彼は皇帝が行ったこの所業を決して許しはしなかった。そして、心に”悔いと言う名の鋲”か刺さり、後に彼の人生を大きく狂わせることとなった。
【大征戦への参加】
仲間を残して自らのみ生き残ったアングロンの内は、もはや抑え切れぬ怒りの激情で満たされていた。
アングロンは第十二兵団〈軍犬〉「ウォーハウンド」兵団を任されたが、怒れしアングロンに近づいたスペースマリーンは、一人残らず惨殺された。これまでウォーハウンド兵団を率いてきた士官が記録もなくこの時期に消えてしまったのは彼によるものだろう。
少なくとも七人の兵団の将校が殺害された後、第8強襲中隊長の「カーン」が自らアングロンの部屋へと来た。アングロンに激しく殴打され、瀕死の状態になったカーンだが、彼は敗北を認めなかった。
遂にその頑強さを認められたカーンは、アングロンから尊重するに足る戦友として認められたのだ。その後、カーンの尽力によってアングロンは第十二兵団の総主長としての役目を受け入れたのである。
アングロンは、兵団名をかつて〈都市喰らい〉と呼ばれていたヌケリアの戦友達を偲んで、「ワールドイーター」(世界喰らい)に改めた。
ワールドイーター兵団のスペースマリーン達には〈屠殺鋲〉をリバースエンジニアリングした複製インプラントが移植された。
大征戦に参加した彼らの白兵戦能力と激怒は凄まじき戦果を生み出した。だが、その一方で、彼らのあまりにも野蛮な戦術には他の部隊からも批判が相次いだ。
皇帝もアングロンの戦術には不信感を持っていたが、アングロン自身は新兵への〈屠殺鋲〉の移植を止めようとはしなかった。
【スペースウルフの介入】
ワールドイーター兵団が惑星「ゲンナ」の住人を一晩のうちに全員虐殺した事件が起こると、遂に皇帝はアングロンを譴責するため総主長「レマン=ラス」と「スペースウルフ」兵団を現地に派遣した。
住人が滅び去った惑星ゲンナの荒野で向かい合ったワールドイーターとスペースウルフの両兵団の陣頭には、二人の総主長が立っていた。
アングロンはチェーンアックス「寡婦作り」(ウィドウメーカー)を構え、レマン=ラスは惑星「フェンリス」の大海獣の牙で作ったチェーンソード「クラーケンの顎門」(クラーケンモウ)を構え、両者はにらみ合っていた。
ラスはワールドイーター兵団はただちに地球へ帰還し、兵団員全員の〈屠殺鋲〉を切除しろと宣告した。アングロンは頑なに拒否し、ワールドイーター兵団とスペースウルフ兵団の戦いが勃発した。周囲で兵団員同士で戦っている中、アングロンとレマン=ラスは一騎打ちになった。
アングロンの猛攻をラスは受け流して立ち回り、アングロンが気がついた時にはスペースウルフ兵団員に包囲されて追い詰められてしまった。ラスは、〈屠殺鋲〉の悪影響によって周囲の状況が見えなくなることをアングロンに示し、認めさせようとしたのである。
しかしアングロンは、自らを蝕んでいるインプラントの悪影響を決して認めなかった。ラスはアングロンの返答に絶望し、スペースウルフ兵団に引き上げを命じるた、虚しき勝利を挙げるワールドイーター兵団だけが戦場に残ったのだ……
【〈ホルスの大逆〉】
ワールドイーター兵団が帰還しなかったことを受けて、皇帝は大元帥「ホルス」をアングロンの元に派遣した。しかし、ホルスはすでに渾沌の神々に魂を売っており、ホルスはアングロンに耳触りの良い言葉を吹き込んだ。
「皇帝は臆病者で名誉を知らない奴だ。もし自分が覇権を打ち立てた暁には、ワールドイーターを非難した総主長達の処罰権利をお前に与えよう」と。
仲間を救えなかった恨みを皇帝に対して持っていたアングロンが誘いを断る理由はなかった。こうして〈ホルスの大逆〉の勃発と同時に、ワールドイーター兵団は大逆軍に編入されたのである。
〈イシュトヴァーン第三惑星の凶行〉に参戦した兵団は、ウイルス爆弾によって燃え上がる惑星へホルスの命令を待たず兵団全員が降下し、生き残った忠誠派を抹殺した。抜け駆けに怒ったホルスだが、彼らに続いて主力を投入し、イシュトヴァーン星系での戦いに大勝利した。
内戦が本格化すると、「ワードベアラー」兵団と総主長「ローガー」は総主長「ロブート・グィリマン」率いる「ウルトラマリーン」兵団が統治する宙域「ウルトラマール」攻略を画策した。〈影の征戦〉と呼ばれるこの戦役では、惑星「カルス」で、ワードベアラーがウルトラマリーンを奇襲したことで大逆派が優勢となった。
ホルスはこの機に乗じてアングロンに、ローガーと協力して忠誠派の一大拠点であるウルトラマールの攻略を進めよと命じた。しかし、アングロンはローガーを弱者として見下していたために、協力するのに手間がかかってしまった。
アングロンはこの時、〈屠殺鋲〉の悪影響によって理性が壊れかけており、彼を支配しているのは狂気の殺戮衝動のみであった。ローガーは悟った。彼を待つのは、果てなき殺戮と狂死しかないことを。そして、彼には昔に抜きがたき深い悲しみがあることを。
そこでローガーはアングロンに、惑星ヌケリアへ戻って心に深く刺さっている鋲を抜くように勧めたのだ。
【鋲を抜きし者】
ローガーの勧めで再び故郷ヌケリアの地を踏んだアングロンはまず、救えなかった仲間達が眠るフェダン・モールの山中へと向かった。そこには、なんとあの皇帝が現れた日に皆殺しにされた戦友達の遺骨が野ざらしのまま散らばっていた。
アングロンは深く嘆き、総主長の強靭な精神をもってしても、あの時の悲しみを拭うことは出来なかったのだ。
彼は悲しみを抱きながら自分自身が育ったヌケリアの都市へと向かった。そこは当時となにも変わっていなかった。貧富の差は激しく、剣闘士は奴隷のように闘わされていた。そして、「アングロンの反乱は「最後の戦いで大将が臆病風に吹かれて逃亡し、鎮圧された」という筋書きで語られていることを知ったのだ。
アングロンは激怒した。今までのどの怒りよりも激しい怒りだった。ただちにワールドイーター兵団に命が下された。「この腐り切った惑星の連中を全て殺せ。街を全て燃やし壊せ。逆らう奴も命乞いする奴も平等にだ。」
かくして惑星ヌケリアの全ての人類と文明は死滅し、残されたのは廃墟と静寂だけであった。
その時、惑星上空にロブート・グィリマン率いるウルトラマリーン兵団の艦隊が現れた。惑星カルスでの裏切りの報復に燃えるスペースマリーン達は、ワードベアラーとワールドイーターの軌道艦隊に猛烈な攻撃を加えた。そしてウルトラマリーンのドロップポッド(着陸艇)が次々とヌケリア地上に降下し、大逆軍との激闘が開始された。
激しき同族の死闘の最中、ローガーとグィリマンは一騎打ちで闘った。超人的な総主長同士の戦いが膠着したその時、血に塗れたアングロンが現れた。
アングロンの胸には、かつてフェダン・モールで散っていった戦友達の遺骨をぶら下げていた。無念の死を遂げた戦友に、共にあの時の戦いの熱狂を味わわせようとしたアングロンの思いからなのだろう。
アングロンはグィリマンに襲いかかると、グィリマンは必殺の一撃を彼に与えたのだ。それはアングロンの胸甲を傷つけ、胸の遺骨が地面に散乱した。その時、一歩下がったグィリマンの足が散乱した遺骨を踏み潰した。
この冒涜的な行為に、アングロンの怒りが爆発し、盲目的にグィリマンへ激しき攻撃を仕掛けた。
戦いを横で見ていたローガーは、アングロンの怒り狂いし姿を見て遂に機は熟したと判断し、謎の儀式を開始した。ローガーの口から暗黒の呪文が唱えられ、アングロンの怒りのエネルギーを元にして猛烈な〈歪み〉のエネルギーが上空に渦巻いた。
鮮血の雨が降り、アングロンに凶暴な〈破滅の嵐〉が取り巻くと、ローガーは更に妖術を彼に集中させた。
空に開いた亀裂からケイオスディーモン達が姿を現し、渾沌の力がアングロンの身体に行き渡った。アングロンの身体は血は水銀に、筋肉と神経が火と変わると、膨大な魔力によって肉体は内側から炸裂した。
そこから現れたのはなんと、〈血の神〉コーンの恩寵を受けた紅蓮の肉体持つ総魔長(ディーモン・プライマーク)であった。長年にわたるアングロンの悲壮と言う名の鋲は〈血の神〉によって抜かれ、彼は虐殺と殺戮の歓喜に酔いしれる悪魔と化したのだ。
ワールドイーター兵団に残っていたわずかなサイカーたちは、総魔長の誕生の衝撃で全員が抹殺された。
ウォーハウンド兵団時代の最後の残滓をぬぐいさった兵団は、殺戮の神コーンにローガーが捧げた贄であった。もはや彼らに残されたのは、永遠の流血と虐殺のみであった。
グィリマンとウルトラマリーン兵団はかろうじて惑星を脱出した。2人の兄弟が渾沌の怪物と化した姿を目に焼き付けたまま。
一方、ローガーは歓喜していた。ついに彼はアングロンを苦悩と〈屠殺鋲〉による死から救ったのだと。自分と禍つ神の恩寵のみが、怒れる悲しい魂がわずらった死に至る病を癒したのだと。
その喜びのまま、大逆軍はウルトラマール攻略に押し進み、やがて〈地球の戦い〉へとアングロンとワールドイーター兵団を送り込むことになる。
【大逆後】
〈ホルスの大逆〉は大逆軍が敗北し、アングロン達、渾沌の軍勢は〈恐怖の眼〉(アイ・オヴ・テラー)に撤退した。その後、アングロンがどのような経緯をたどったのかはあまり知られておらず、最後に見かけたのは第38千年紀の〈血の支配〉戦役と、第41千年紀に起こり、帝国の記録から消された第一次アルマゲドン戦役のみであった。
惑星「アルマゲドン」をコーン神の軍勢と共に襲ったアングロンは、帝国の諸軍と対渾沌専門スペースマリーン戦団である「グレイナイト」戦団によって退けられた。
しかし総魔長アングロンは今でも生きており、またいつか帝国を滅ぼすために襲い掛かってくるだろう。
第XIV(14)兵団デスガード総主長「モータリオン」
【概要】
「デスガード」兵団を率いる大逆派の総主長。〈蒼白き王〉、〈死を統べるもの〉、〈病魔の公子〉の異名を持つモータリオンは、かつては大征戦を戦い抜いたが、皇帝の配慮の欠いた行動と大元帥ホルスの誘いによって総魔長へと堕ちることとなる。
陰鬱な性格で他人とも距離を置いているが、不屈の忍耐力を持ち、辛抱強さはどの総主長よりも優れている。
更に、常人では即死するような毒の霧の中でも生きられる超人的な耐久力を持っている。
【装備品】
ウォーギアには〈沈黙〉(サイレンス)と呼ばれる父の形見である大鎌と、「ランタン」の名称を持つ自作のシェンロンギエネルギーピストルを装備している。
パワーアーマーは自ら作り上げた「バルバランプレート」を着装し、アーマーにはモータリオン自身の生理的な能力を増強させるように設計されている。
画像出典:ウォーハンマー40K「コデックス:デスガード第8版」(Codex: Deth Guard)P26,P27 イラストより
【モータリオンの出自】
渾沌の〈禍つ神々〉に銀河の果てに飛ばされたモータリオンは、有毒の瘴気に覆われた惑星「バルバラス」に落着した。この住民の惑星は2つの派閥に分かれており、死霊術の秘儀を持つ恐怖の領主達と、瘴気が及ばぬ狭い峡谷で細々と暮らす平民達が住んでいた。
赤子のモータリオンは領主の中でもひときわ強力な大王と知られている「バルバラスの大王」に拾われた。常人の赤子ならとっくに窒息しているような戦場の中で、赤子の総主長は泣き叫んでいた。バルバラスの大王はこの赤子を世継ぎとすべく養子に迎え、名を現地の言葉で〈死の子〉を持つ「モータリオン」と名付けた。
モータリオンは、惑星で一番高い標高を持つ山頂の要塞で暮らし、大王によって教育された。彼は貪欲に知識を習得し、兵法や秘法、武芸などのあらゆるものを学習していった。
しかし、若き総主長の胸の内にはある疑念が生じていた。それは”大王が教えたがらない知識”についてだった。領主は多くの実験を行っており、その結果として死亡した生物は基はどのようなものかも分らぬほどに変異していたが、それらの実験動物が”峡谷に住む下等種族”であることは察していた。
とうとう、知識を教えようとしない養父に我慢ができなかったモータリオンは、要塞を抜け出してバルバラスの峡谷へと向かった。有毒の霧を抜けたその先にはなんとその下等種族たる人類が住んでおり、人類は領主たちの獲物として狩られていたのだ。
その真実を知ったモータリオンは怒りに駆られ、哀れにも獲物にされている人々を救うことを自らに誓った。
【モータリオンの叛乱】
峡谷の人々を救うために、まずは平民達の村にあるコミュニティへと加わろうとしたモータリオンだが、異邦人である彼はなかなか受け入れてもらえなかった。ある日、領主の一人が怪物を率いて村を襲撃した際に、モータリオンは自衛の手段を持たない人々を守るために戦った。収穫用の大鎌を振るって戦ったモータリオンは幾度となく襲撃者を撃退する。
有毒の瘴気の中に逃げた領主当人は誰も追ってこれないとたかをくくっていたが、モータリオンは有毒の瘴気の中でも生存できる驚異的な耐久力を持っており、逃げた領主は追ってきたモータリオンの大鎌で斬殺された。
こうして、モータリオンは村の人々から受け入れられ、自らの戦技の数々を教え始めた。その後、他の村もモータリオンの教えを請うようになり、峡谷に散在していた村々は、一つの共同体としてまとめられていったのである。
そしてモータリオンは、峡谷の若者の達の中から屈強な者たちを選抜した精鋭部隊〈死の衛兵〉(デスガード)を設立し、鉄鍛冶屋に作らせた有毒の霧の中でも活動可能な鎧を身にまとい、領主達と激戦を繰り広げた。領主達はほぼ全滅し、残すは一人の領主を残すのみとなった。
その領主こそがモータリオンの養父たる「バルバラスの大王」であった。
【養父との対決】
養父は死霊術士だったが、モータリオンは育ての親を襲うのには躊躇した。悩んだ末、バルバラスの大王を打倒する作戦は中断され、モータリオンは村に帰還した。そこでモータリオンは謎の人物と出会うこととなる。その人物は光輝く鎧を身に着け、バルバラスの住民に救済を約束するように告げたのだ。しかし、異邦人は救済に以下の条件を付けた。
もしモータリオンが一騎討ちで大王に勝てれば異邦人は何もせずに去り、倒すことができなければ異邦人が代表する帝国に忠誠を誓うことになる。
デスガードの兵士たちはこの条件に反対したが、モータリオンはそれを押し切ってその条件を承諾し、養父との決闘へと向かった。
結果は短時間で出た。大王の要塞周辺に漂う大気の毒性があまりにも強く、モータリオンは要塞の門の前で挑戦を宣告したが、そこで意識が無くなって倒れてしまった。薄れる意識の中、モータリオンが最後に目にしたのは自分を殺そうとする養父であった。
しかし次の瞬間、異邦人が現れ養父を真っ二つに切り裂いた。目を覚ました瞬間、モータリオンは約束通りに異邦人に忠誠を誓った。異邦人は正体を明かし、自分こそが真の父親である人類の皇帝であることをモータリオンに話した。
こうしてモータリオンはスペースマリーン第十四兵団である〈夕闇の襲撃者〉(ダスク・レイダー)の指揮権を任された。この兵団はまもなくデスガードの名称に変更されることとなる。そして、新兵も惑星バルバラスの民から選抜されることになった。
しかし、モータリオンは皇帝が養父を殺害したことを決して許しはしなかった。彼はあの日以来、養父の遺品である大鎌〈沈黙〉(サイレンス)を受け継ぎ、養父に似たフードを被って行動するようになったのだ。
【大征戦での活躍】
モータリオン達デスガード兵団は、疲れと止まることを知らぬ戦いぶりで知られるようになった。一つの惑星に留まらず、惑星を渡る転戦を重ねていた。その強い戦闘意欲には理由があり、彼は”抑圧と恐怖から全人類を開放しなければならない”というゆるぎない信念があった。その為には、どのような手段も正当化され、どのような障害でも彼らは決して止まらなかった。
モータリオンは不屈の強固さによって勝利を得ることができると信じており、デスガードの堅牢さを「ルナ・ウルフ」兵団総主長「ホルス」は高く評価した。それ故に、ホルスは頻繁に自身のルナ・ウルフ兵団と共同作戦を取るようになった。
デスガード兵団が猛攻をしのいでルナ・ウルフ兵団が止めを刺す戦法が多くの勝利をもたらし、モータリオンはホルスに対して揺るぎない信頼を寄せるようになったのだ。
モータリオンは陰鬱な性格でかつ、人類解放の目的に奔走していたため、兄弟たる他の総主長達とは距離を置いていた。彼と親しかったのはホルスの他、「ナイトロード」兵団総主長「コンラッド・カーズ」だけであった。
この時、「ウルトラマリーン」総主長「ロブート・グィリマン」はモータリオンが皇帝ではなく、ホルスに忠誠を誓っていることに警戒しこのことを皇帝に伝えたが、一蹴されしまう。後にこの警戒は現実のものとなっていく……
【変化する体制】
大征戦が進むにつれ、デスガード兵団の体制は大きく変わっていき、旧ダスク・レイダー兵団の要素は無くなっていった。特にサイカーを管理する「蔵書院」は、かつて敵対したバルバラスの死霊術士を彷彿とさせるため、超能力や妖術の類を嫌うモータリオンによって解散させられた。
元々象牙色であったパワーアーマーも、バルバラスで共に戦った戦士達を想起させる、沼地のような緑色に塗り替えられていった。
そして、拠点惑星である「バルバラス」も社会体制が変化していた。”スペースマリーンではない本来のデスガード達”は、惑星の新たな貴族となり、優秀な若者達はスペースマリーンの候補者として選抜された。
バルバラスは貴族によって人材を生み出す畑と化し、デスガードの兵員は殆どがバルバラス出身の兵が占めるようになった。タスク・レイダー兵団からいる人員で地球出身者の者は、古参兵のみとなった。
【〈ホルスの大逆〉】
人類の黄金時代たる〈大征戦〉は突如終わりを告げ、暗黒時代の始まりである〈ホルスの大逆〉が勃発した。大元帥ホルスはモータリオンとデスガード兵団を味方に誘い、モータリオンもまた信頼を寄せるホルスの誘いに乗ったのだ。
また、モータリオンの第一副官である「カラス・タイフォン」はひそかに渾沌の神々を信奉していたため、デスガードには多くの渾沌の信者達が存在した。
惑星「イシュトヴァーンIII」でモータリオンの裏切りが明らかになると、地球出身者であるデスガード兵団内の忠誠派を意図的に惑星降下させ、ウイルス爆弾等の犠牲者にして抹殺したのである。
残るタスク・レイダー兵団の生存者を一掃すると、モータリオンは「イシュトヴァーンV」での〈降下地点の虐殺〉でも大逆軍の一員として戦った。
デスガードが渾沌に堕ちた原因の一つは、モータリオンの腹心「カラス・タイフォン」による策略であった。兵団がサイキックを封じている中、秘密裏にサイキック能力を持っていたタイフォンは、大征戦のさなかに「ワードベアラー」兵団の首席教戒官である「エレバス」から、兵団が進むべき道についての啓示を受けたのだ。
エレバスの創設した戦士団の奥義に参入したタイフォンは、皇帝の束縛から解放されたスペースマリーンが到達できる高みを視ることができるようになったのである。
【腐敗の神の祝福】
地球での最終決戦が迫る中で、モータリオンはホルスの本隊に合流しようと艦隊を急いで向かわせた。この艦内にタイフォンも乗船していたが、すでに彼はモータリオンとは別の主人に仕えていた。彼は忠誠心に問題があると考え、艦隊の恒星間航行に不可欠な「ナビゲイター」(航宇士)達を全員処刑した。
そして、自分のサイキック能力であれば安全に地球までの航路を確保できるとモータリオンに迫ると、サイカーに不信感を持つモータリオンはタイフォンの提案を受け入れる他は無いと判断した。ナビゲイターが居ないまま、デスガード艦隊は跳躍のために渾沌の領域〈歪み〉へと進入した。
〈歪み〉にデスガード兵団を引き入れたタイフォンは、新たな主である渾沌の疫病神「ナーグル」に呼びかけると、〈歪み〉の激しい波は突如収まった。動けなくなり、なすすべもないデスガード兵団の艦隊に突如ナーグル神の巨大な腐敗のエネルギーが襲い掛かった。
デスガードの兵団員全員と艦艇は腐敗の祝福を受け、崩壊病とナーグルの腐れ病に侵された。デスガード兵団の耐久力をまるであざ笑うかの如く、彼らは穢れの大波に流されるままでいた。兵団員の身体は肥大化した肉塊の様に腐敗したが、決して死ぬことはなく、腐った体のままで永遠にパワーアーマーの中に閉じ込められてしまった。
この時のモータリオンは更に激しい辛苦を味わっていた。それはかつてバルバラスでの決闘の際、要塞の前で毒に倒れた時のような激しい苦しみだった。しかし、今回は誰の救いの手もなく、モータリオンは苦痛に屈した。遂に彼は、絶望の中救いを求めてナーグル神に忠誠を誓った。
デスガード兵団は腐敗の神であるナーグル神のものとなり、以前とは似ても似つかぬ姿と化した。〈歪み〉の中から再び姿を現した彼らは「プレーグマリーン」となり、もはや人間らしさはどこにも残っていなかった。
デスガード兵団銀河中に疫病をまき散らす使命を課され、大逆の最終決戦である〈地球の戦い〉に参戦したのだ。
【大逆後】
ホルスが〈地球の戦い〉で戦死した後、大逆側の諸軍は〈恐怖の眼〉へと敗走した。その中でもデスガード兵団は、騒然とせずに新たな拠点へと引き上げたのだ。
この時タイフォンは〈彷徨する者〉の異名を持つ「ティファウス」として名を改め、プレーグマリーンを率いて銀河に疫病をまき散らす疫病の主となった。
モータリオンは〈病原父星〉と呼ばれる魔星を本拠地とすると、そこをかつての故郷バルバラスそっくりに作り替えた。そして彼は、ナーグルの恩寵を受けた総魔長(ディーモン・プライマーク)として生まれ変わったのだ。
モータリオンは皮肉なことに、打倒すべき養父と同じような存在になってしまった。彼は今、養父と同じように病魔による圧政を敷くことによって人類を解放しようとしているのであった。
【モータリオンのその後】
彼は〈大逆後〉はデスガード兵団を率いて戦うことはしなくなった。彼は〈渾沌の領域〉で行われる戦争である〈終わりなき遊戯〉に興味を持ち始めたのだ。
その為、デスガード兵団では総魔長が不在の時が多く、兵団は小規模なウォーハウンドに分裂して戦いに臨むことが多かったという。
大逆から一万年後の第41千年紀からモータリオンは兄弟たる総主長「ロブート・グィリマン」の復活を感じ取って、物質世界に出現することが多くなった。
特に「ウルトラマリーン」戦団の本拠地である「ウルトラマール」星域での〈疫病戦争〉は激戦として知られている。モータリオンはウルトラマールを壊滅させるべくプレーグマリーン達を率いてウルトラマリーン戦団に戦いを挑んだ。
そこにはグィリマンが〈揺るぎなき征戦〉から帰還し、ウルトラマリーン戦団を率いて参戦していたのだ。モータリオンはウルトラマリーンに対抗すべく、7つの新たな疫病を作り上げる。その一つはウルトラマール星域に失明を蔓延させるためのペストであった。
グィリマンのみがその疫病を治癒することができたが、モータリオンはグィリマンを追い詰めるために全惑星の住人を虐殺する。
しかし、グィリマンによる的確な指揮の元、ウルトラマリーン戦団は勢いを取り戻し、モータリオンの軍勢は劣勢となった。
モータリオンはこの状況を打破するため惑星「コノール」への進行中に現れ、惑星「マクラーグ」に侵攻するためにデスガード兵団を率いて進軍してきた。
モータリオンとグィリマンは惑星「ラクス」で遂に1万年を超えた宿命の決闘を戦った。しかし、彼の率いる軍勢が圧倒的不利となり、更にナーグル神が支配している領域がコーン神の軍勢に攻撃されることを理由に、モータリオンの軍勢は撤退を余儀なくされた。
その後、銀河に〈歪み〉の大嵐である〈大亀裂〉が生じており、モータリオン率いる腐敗の軍勢は帝国に疫病を流行らすための機会を虎視眈々と狙っているのだ。
第XV(15)兵団サウザントサン総主長「赤きマグヌス」
【概要】
「サウザントサン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。強力なサイキック能力を持ち、知識の探求と自己研鑽に磨きをかけているサイカー(超能力者)であり、後に数奇な運命をたどることとなっていく。
他の総主長に比べて体は大きく、歪みの影響による変異によって真紅の肌を持っている。また、片目が見えていない。
変異に苦しんでいるミュータントやサイカーに対しては理解を示しており、総主長として戦っていた際は、サイキック能力で人類に奉仕することがサイカーが救われる道だと信じて戦い続けていた。
しかしある起点を境に、帝国を裏切らなければならない状況に陥ってしまう。
今現在は、ケイオススペースマリーンの総魔長となり、「スペースウルフ」戦団と帝国に復讐を果たすべく戦っている。
【装備品】
装備品は大逆前と現在では異なったものを使用してる。
大逆前のウォーギアには、特殊な形状をしたパワーソード「アンヌヌルタの剣」と、プラズマガン「サイファイア・サーペンタ」を所持。大逆前のパワーアーマーは「ホーン・ライメント」と呼ばれる専用のパワーアーマーを装備していた。このアーマーはマグヌスの意のままに形状や外観を変えることが可能となっている。
現在装備しているウォーギアには、「マグヌスの刃」と「真紅の王冠」を装備している。マグヌスの刃は形状を自在に変えることが出来き、真紅の王冠は肉体と精神を保護する役割を持っている。
画像出典:ウォーハンマー40K「コデックス:サウザンドサン第8版」(Codex: Thousand Sons)P33 イラストより
【マグヌスの出自】
マグヌスは他の総主長と異なり、地球で人口羊水に浮かんでいたころ、すでに父たる皇帝とサイキックで意思疎通を行っていた。
しかし、マグヌスも他の総主長と同じく〈渾沌の神々〉によって遠くの星に飛ばされ、辺境の惑星「プロスペロ」に落着した。
惑星プロスペロは、サイカー達の隠れ住む星で、〈技術の暗黒時代〉以来、迫害を受けた者がこの星で細々と生きてきたのである。
その首都に落下したマグヌスの保育カプセルは、プロスペロの長である「導師アモン」に拾われて育てられる。
やがてマグヌスはわずか数年のうちにプロスペロに蓄えられていたサイキックや〈渾沌の領域〉についての蔵書を次々と学習していきマスターしていった。
そして、惑星上に住む巨大害獣「サイコニューアン」の撲滅を主導して名を挙げたのである。
名実ともにプロスペロの最高指導者となったマグヌスは、首都であるティサを壮麗な都へと改築していった。
更にプロスペロのありとあらゆる知識は〈大図書館〉へと蓄えられた。
マグヌスはプロスペロの発展を指導すると同時に、自らのサイキックの鍛錬も続けていった。時には危険な〈大いなる海〉と呼ばれる〈歪み〉の領域にも幾度となく精神体となって旅を行っていた。
しかし、養父である導師アモンは、マグヌスに〈大いなる海〉への旅に対して注意を促したが、それを聞き入れられることはなかった。
【皇帝との再会】
自身も強大な力を持つサイカーだった皇帝とは、実際に再会を果たす前から精神体として父と子は何度も会っていた。
そのため、実際に皇帝がプロスペロへと降り立ってマグヌスと再会した時には、まるで知り合いの間柄のように抱擁を交わして出会いを祝したという。
【サウザントサン兵団の誕生】
マグヌスは大征戦へと参戦するためにスペースマリーンの第15兵団を任された。
マグヌスの〈遺伝種子〉(ジーンシード)を受け継いで創造されたスペースマリーンは、サイカー達で構成されており、強力なサイキックを使用することができた。
しかし、マグヌスの遺伝種子を移植した臓器が拒絶反応を起こしたり、創造後も肉体が突然変異を起こすなど安定して戦えるものが少なかった。
そして、なんとか千人ほどの戦力を確保したマグヌスは、自らの第15兵団の名前を「サウザントサン」(千の息子)と名付けた。サウザントサンは当初大征戦への参加の許可が下りず、兵団の解散と兵員の安楽死も取り沙汰されていた。
マグヌスは、皇帝に兵団の存続を懇願し、兵団員の突然変異をなくすために数十年の歳月を研究に費やした。
突然変異の治療は成功したが、研究中に突然変異を治すため、マグヌスは右目を失ってしまう代償を支払うことになってしまった。
サウザンドサン兵団は、帝国内の諸組織から、突然変異を起こした経歴やサイキック能力について厳しい疑いの目を向けられた。そのことがきっかけとなり、マグヌスと兵団員たちは強い連帯感を持つようになる。
そして、大征戦開始から約100年、サウザントサン兵団は参戦の許可が下りて、遠征へと旅立っていった。
【大征戦への参加】
大征戦でマグヌスはそのサイキック能力を活かして活躍したが、その指揮ぶりは荒々しく予測がつかないものであった。
〈歪み〉とそのパワーに長じていたマグヌスは、遠征先で遭遇した人類文明から、サイキックに関係する知識や物品を収集していった。
皇帝から〈歪み〉に熱中することを戒められてはいたが、マグヌスは銀河中からサイキックと魔術の知識を集めることに奔走した。
その成果として、魔導書「マグヌスの書」が著され、サイキックパワーに関する研究成果がまとめられた。
大征戦が進むにつれて、サウザントサン兵団への疑念が強まった。マグヌスのサイキックパワーは次第に荒廃の色を強め、兵団員もそれに倣うかのように過激にサイキックパワーを使うようになっていった。
更に、敵が使うサイキックパワーとサウザントサン兵団が使用するサイキックパワーが類似していた。
特に、「スペースウルフ」兵団の「レマン=ラス」と「デスガード」兵団の「モータリオン」は、〈歪み〉のパワーを振るうマグヌス達に公然と不信感を持つようになった。
レマン=ラスとマグヌスとの協同作戦にて総主長同士の意見の違いが原因によってあわや同士討ちになりかけた事件を境に、「サウザンドサン」兵団の存続についての議論が再び沸騰した。
サイキックパワーの是非について〈ニカエア公会議〉が開かれた。会議の結果、帝国では今後、必要最低限以外のサイキックの使用は禁じられ、マグヌスとサウザンドサン兵団はサイキックの知識の使用も断念しなければならなくなった。
【〈マグヌスの愚行〉】
マグヌスはある日、未来に恐るべホルスの大逆の予知を見た。それは、スペースマリーン兵団の半数が皇帝に背き、銀河が焔羅に沈む恐怖の予言も伴っていた。
しかし、マグヌス自身の役目がそこでどのようなものかははっきりと見えてなかったのだ。
マグヌスはこの危機を伝えるために禁止されていた魔力を使って地球に知らせようとしたが、地球にはサイキックパワーの障壁がめぐらされていたのだ。
マグヌスは”謎の人物”の提案によって障壁を破壊するための策を提案され、それに従った。そしてマグヌスは、障壁を破壊してしまった。
帝殿に、ひいては地球に渾沌の魔物を導き入れないように皇帝が張り巡らせた障壁が破壊され、渾沌の領域と地球の中枢が直接つながってしまったのである。
皇帝が極秘に進めていたプロジェクトはこの愚行によって破綻してしまい、皇帝は激怒した。ホルスの反逆を報せようとしたマグヌスを、逆に反逆者と糾弾し、その逮捕を大元帥「ホルス」に命じたのである。
そして、この”謎の人物”の正体こそ〈渾沌の神々〉の一柱「ティーンチ」神の手先であったのだ。マグヌスは、”ティーンチ神の手駒”として帝国の敵になるように仕向けられていたのだ。
【プロスペロの焦熱】
皇帝はすぐさま彼を禁忌違反の罪で逮捕するように「スペースウルフ」兵団の「レマン=ラス」と近衛兵団である「カストーディアン」、「シスターオヴサイレンス」に命を下した。
ホルスはこの状況を知ると、マグヌスが居る惑星「プロスペロ」に向かうラスに”マグヌスの逮捕命令”を”プロスペロ破壊命令”へと置き換えるように信じ込ませてしまったのだ。
愚行を犯したマグヌスは自らは皇帝に逮捕されるだろうと予測して、惑星「プロスペロ」周辺の基地の警戒や武装の解除を命じた。愚行を犯した自分のみが逮捕されれば、惑星の住人やサウザントサンの兵団員は助かるだろうと踏んだのである。
ところが惑星プロスペロには、偽りの命令を受けた獰猛なスペースウルフ兵団をはじめとする〈帝国〉軍が襲いかかってきたのだ。
市内に急降下した討伐軍は、手当たり次第に住民を殺戮し、建物を破壊した。かつてその美しさで銀河に名を馳せた〈光の都〉は無惨な燃えさかる廃墟と化し、〈大図書館〉も戦火にさらされた。
マグヌスは驚愕した。自分が大切に育ててきたものを皇帝の命で破壊されていく。ここまでの報復を父たる皇帝から受けるとは!
マグヌスとサウザントサン兵団は、燃え盛る都に飛び移り、必死の抵抗を行った。しかし、スペースウルフ兵団とカストーディアンの圧倒的な戦力の前に、サウザントサン兵団は戦況が不利になってしまう。
マグヌスの必死の奮戦の中、レマン=ラスとの一騎打ちの戦いが始まった。マグヌスの放ったサイキックの一撃は、ラスの胸甲を打ち砕き、その心臓の片方を破壊した。だがラスはマグヌスの腕を引くと、渾身の力で彼に残る左目を殴りつけた。
一瞬、盲目となったマグヌスをつかんだラスは、膝でその背骨を折り砕こうとした。
しかし、このときマグヌスの耳にティーンチ神がささやいた。「「永遠の忠誠を誓うならば、おまえが大切に築いたものを守ってやろう」と。
絶望の果てに、自分自身、兵団、惑星、そして今まで蓄えてきた知識を守るため、ついにマグヌスは変化の神ティーンチにその魂を捧げたのである。
ティーンチは〈光の都〉ティサは渾沌の領域にテレポートした。都とともにサウザンドサン兵団もまた、〈恐怖の眼〉にある〈妖術師の惑星〉へと転移した。
そして、ラスによってマグヌスの魂は粉々に砕かれてしまい、魂の破片は宇宙に散乱していくつかのサイキックの亡霊となってしまった。
サウザントサン兵団が居なくなった後、残されたスペースウルフと帝国軍は惑星プロスペロの表面を完全に破壊し尽くしたのである。
【復讐の妖術師】
〈ホルスの大逆〉が大逆軍の敗北に終わると、サウザントサン兵団は再び〈妖術師の惑星〉に逃亡する。
粉々に砕かれたマグヌスの魂は、兵団最強の魔術師である「アーリマン」によって再結合されて以前とは違う形でマグヌスは復活した。
しかしこの頃、「サウザンドサン」兵団をかつて蝕んでいた変異の症状が復活していた。渾沌の領域の中で次々と発狂し、恐ろしき怪物となり果てる者たちもいた。
そこで、「アーリマン」は突然変異を永久に治療する一大魔術儀式〈朱書き〉(ルブリック)を使ったが、サウザントサン兵団の殆どの兵団員は、一握の灰と化してしまった。
彼らの精神だけはアーマーに憑依したが、もはや自意識を失った自動人形のような存在になってしまい、永遠にそこから抜け出せなくなったのである。
愛する兵団の大半が物言わぬ人形と化したことを知ったマグヌスは激怒し「アーリマン」を処刑しようとしたが、ティーンチ神の介入により止められ、彼は兵団からの追放処分で済ませてしまった。
その後、変幻自在なる総魔長マグヌスは、第41千年紀の今も〈妖術師の惑星〉にある、〈光の都〉ティサの似姿にそびえる大塔に座して、〈帝国〉の滅亡と偽りの皇帝の没落を画策している。
そして、宿敵である「スペースウルフ」戦団の本拠地、惑星「フェンリス」に攻撃を仕掛けたのだ。彼の復讐はまだ始まったばかりなのである。
【数奇なる運命】
粉々に砕かれたマグヌスの魂の欠片は宇宙の様々な場所へと散乱した。そのうちの一つであるマグヌスの良心は帝都に残留していた。
地球の戦いの真っただ中、グレイナイトの候補者を探していた皇帝の側近「マルカドール」は、サウザンドサンの忠誠派生き残りのアルヴィダ軍曹とマグヌスの良心を秘儀によって合体させ、グレイナイト初代至高騎士団長ジェイナス(ヤニウス)として生まれ変わらせたのだ。
マグヌスは帝国の敵である「ケイオススペースマリーン」として立ちはだかるのみならず、陰でケイオスディーモンを葬る「グレイナイト」として帝国に貢献してきており、マグヌスは最も数奇な運命をたどった総主長といっても過言ではない。
第XVI(16)兵団ルナーウルフ総主長「ホルス」
【概要】
「サン・オブ・ホルス」兵団を率いて帝国を二分する戦争を皇帝に仕掛けた大逆派の総主長。本名は「ホルス・ルペルカル」。
人間心理に通じ、指揮官としての才能を持つ彼は、一時期は皇帝の代わりに帝国軍の総司令官である〈大元帥〉(ウォーマスター)としての役割を担っていた。
かつては皇帝の寵愛を一身に受け、最も優れた「皇帝の息子」と評されて皇帝の右腕として活躍する。しかし、〈大元帥〉としての任を引き受けた後、渾沌の神々にそそのかされて皇帝を裏切り、帝国を引き裂く内戦〈ホルスの大逆〉を引き起こしてしまう。
【装備品】
ウォーギアには皇帝自身から送られたパワーモール「ワールドブレイカー」を片手に装備し、もう片手にはボルターが内蔵されているライトニングクロー「タロン・オヴ・ホルス」を装備している。「タロン・オヴ・ホルス」はホルスの腹心であり、後に渾沌の大元帥となる「エゼカイル・アバドン」が後を受け継いで使用することとなる。
パワーアーマーには「サーペントスケイル」と呼ばれるホルス専用のターミネイターアーマーを装備している。
画像出典:小説「The Horus Heresy: Vengeful Spirit」表紙イラストより
【ホルスの出自】
赤子の時に〈渾沌の神々〉によって自分が入ってる育成カプセルを、太陽系の近くで火星のメカニクスが資源を収奪し荒廃した採掘惑星「クトニア」に送られる。
若きホルスに関する情報はほとんど知られていないが、この荒れ果てた惑星の都市と原野を席巻する凶暴なギャングたちの間で育ち、戦いと殺戮を学んでいたという。
ホルスは皇帝によって最初に再会した総主長であり、大征戦の初期に再発見された。ホルスは同郷の友であるギャングたちと共に皇帝への忠誠を誓い、スペースマリーンとして大征戦へと参加した。
【大征戦での活躍】
ホルスは皇帝と再会した後に「ルナ・ウルフ」兵団の総主長に任命され、将としての天賦の才を発揮する。
皇帝とホルスは30年にわたって共に大征戦を戦ってきており、互いに揺るぎなき信頼関係が築かれていたのである。その証左として、皇帝が他の総主長を迎えるために陣を離れると、後を任されるのは常にホルスであった。
ホルスは互いに性質の異なる軍勢をひとつにまとめ、共通の目標に向かって邁進させることにかけて、彼の右に出る者はいないとされた。
人間心理に通じ、相手の強みと弱みを正確に分析することのできるホルスは、交渉と采配に長けた名将として活躍した。
時にはそのカリスマと交渉術によって、戦うことなく相手の惑星を屈服させることすらあったのである。
また複数のスペースマリーン兵団を適材適所に用い、そこに常人たちの軍勢である〈帝国軍〉(インペリアルアーミー)を的確に組み合わせることにも長けていた。
更にホルスは自らを頂点として、総主長同士にライバル意識をもって競い合わせるようにした。互いにライバル意識が芽生えれば、自己研鑽を怠らずに続けられるからである。しかし、こうした意識は後の大逆時に総主長間での憎悪へとつながってしまう原因となってしまう。
ホルスは常に最も優れた「皇帝の息子」、「同等なる者の第一位」として尊敬を集めた。
【大元帥ホルス】
〈大征戦〉で最も輝かしい勝利は、対ウラノールの勝利であった。帝国が遭遇した中で最大最強であるオルクの帝国ウラノールとの戦争は、十万人にも及ぶスペースマリーン、八百万人の帝国軍将兵、そして何千隻にものぼる宇宙艦隊を投入した空前絶後の大戦役であった。
ウラノールに勝利した後に皇帝は、地球奥深くの研究所で秘密プロジェクトに着手するべく〈大征戦〉の遂行と全軍の指揮権を信頼篤いホルスに譲り渡し、〈大元帥〉(ウォーマスター)としての地位を与えた。
そして、ホルス率いる第十六兵団「ルナウルフ」を総主長の名を讃えるべくホルスの息子たちの名を持つ「サン・オブ・ホルス」兵団と名を改めたのだ。なおホルスはこのような待遇に関しては”他の総主長たちと同等である”立場を否定してしまうとして拒んだため、その後も普段は「ルナ・ウルフ」の名前を使用したという。
しかし、皇帝が地球に隠遁したことは総主長たちの間で不満を呼んでしまう。「皇帝の息子」たる総主長は、心の奥底で父に見捨てられたと感じていたのであった。
皇帝が取り組んでいる秘密プロジェクトの内容も彼らに明かさなかったことも不満の原因となっていた。
また、〈大元帥〉という特別な立場はホルスの思いはどうあれ、彼が兄弟たちよりも上の立場であることが明確になってしまった。兄弟の中でも「サングィニウス」や「ローガー」、「フルグリム」はホルスの任命に大いに賛同したが、「アングロン」や「パーチュラーボ」は新体制に怒りを募らせていた。
ホルスは兄弟たちである総主長の異なる考えや、兄弟間のライバル意識を調整することに力を注いでいると同時に、大元帥としての責任が重い立場によって葛藤や苦悩を抱えるようになった。
この頃のホルスは二人の総主長である「グィリマン」と「ローガル・ドルン」に信頼を寄せていた。彼らの決断力と軍事的才能を頼りにしており、帝国の理想を体現する二人に遠征を任せることもあった。
【裏切りの大元帥】
葛藤や苦悩を抱えながら、大元帥としての任務を遂行するホルスに渾沌の魔の手が忍び寄った。破滅は次のようにして始まった。
総主長ローガー率いる「ワードベアラー」兵団の首席教戒師「エレバス」は、〈大征戦〉の末期、すでに渾沌の信奉者に堕落しており、全人類を渾沌崇拝に落とすための計画を進めていた。
尖兵であるエレバスは、言葉巧みにホルスに取り入った後に彼の側近の地位を得ていた。そして、ホルスに皇帝への不信を少しづつ植え付け、その配下に対しても皇帝への反感を募らせるように仕向けたのである。
そして、エレバスの策略は野蛮惑星「ダヴィン」にて完遂されることとなった。
渾沌に誘惑され、帝国に反旗をひるがえしたこの惑星を制圧すべく戦場へと赴いたホルスは、戦闘中に重傷を負ってしまう。ホルスに傷を負わせたのは異種族の妖剣であり、エレバスによって盗まれた渾沌神「ナーグル」の聖遺物であった。
疫病の妖剣によって傷つけられたホルスは高度な治療も施されても回復せず、ホルスの死は確実と判断されていた。その様子を見てエレバスはルナ・ウルフの兵団員を説得して、品詞のホルスを惑星ダウィン内にある秘密教団のもとに運ばせた。
この時、エレバスの策謀によってルナ・ウルフを中心として他の兵団員も参加する「戦士団」が結成されていた。この戦士団はやがて大逆時に他の兵団へ裏切りを行うように仕向ける工作員として活躍することとなる。
そしてこの戦士団には惑星ダヴィンの出身者も多く、彼らの協力によってホルスは邪教の神殿で渾沌の魔術をその身に受けることになった。
この儀式によって、ホルスの精神は傷ついた肉体から、〈渾沌の領域〉(レルムオヴケイオス)へと送られた。そしてそこで彼は運命的な未来の幻視(ヴィジョン)を得ることになる。それは、”論理と理性で銀河を統べる”と誓った皇帝自身が、”全人類から神として崇められている姿”であった。
命を懸けて仕えると誓った主君の偽善の姿を目の当たりにし、驚愕と絶望に苦しむホルスに渾沌の神々は語った。
「皇帝をよこせ。さすれば銀河をおまえにやろう」
未来の幻視で論理と理性とはかけ離れている神と崇められた皇帝への憎悪。自分を見捨てて地球へ戻っていった父への不満。そして、心の奥に秘められた権力欲によってホルスは、渾沌の神々との取引に応じてしまった。
ホルスの精神は元の身体に戻ると、神々の力によって重傷が嘘のように回復し、渾沌の力に満たされていった。そしてホルスは、自ら第十六兵団を「サン・オヴ・ホルス」と名乗るようになり、渾沌の神々の代理戦士として生まれ変わったのだ。
【プロスペロ事件】
渾沌の力を経て回復したホルスは、兄弟である総主長たちを渾沌への信仰に導こうとした。「ワールドイーター」兵団の「アングロン」、「エンペラーズチルドレン」兵団の「フルグリム」、そして「デスガード」兵団の「モータリオン」の三人がホルスの勧誘に応じて帝国を裏切った。その他にも一般人の帝国軍や機械教団の信徒などの多くの者が渾沌崇拝へと身を移した。
この異常事態を「サウザントサン」兵団の総主長「赤のマグヌス」が当時禁忌とされていたサイキックを使用して察知していた。地球に居る皇帝にこのことを知らせようとしたが上手くいかず、マグヌスは禁断の魔術によって皇帝へと報せを送った。
しかし、その魔術によって地球に張り巡らされた結界が破壊され、皇帝の秘密プロジェクトは失敗に終わってしまった。計画を台無しにされて激怒した皇帝はホルスの裏切りについての報せを信用せず、彼を禁忌違反の罪で逮捕するように「スペースウルフ」兵団の「レマン=ラス」と近衛兵団である「カストーディアン」、「シスターオヴサイレンス」に命を下した。
ホルスはこの状況を知ると、マグヌスが居る惑星「プロスペロ」に向かうラスに”マグヌスの逮捕命令”を”プロスペロ破壊命令”へと置き換えるように信じ込ませてしまったのだ。
以前からマグヌスの妖術を嫌っていたラスとスペースウルフは、逮捕の予告を受けて恭順の意を示していたマグヌスとサウザンド・サン兵団もろとも惑星プロスペロを総攻撃した。破滅にさらされたマグヌスは、絶望の中で渾沌のティーンチ神との契約を交わし、生き残りのマリーンたちとともに渾沌の領域へと逃亡した。
【イシュトヴァーン第三惑星の凶行】
〈ホルスの大逆〉が始まったとされたのは惑星「イシュトヴァーンIII」の武装蜂起からであった。渾沌神の一柱である堕落神「スラーネッシュ」を信奉している惑星総督が帝国からの独立を宣言したのである。
この反乱を鎮圧するために向かったのがホルスであった。彼のもとに集結したのは「サン・オブ・ホルス」兵団、「ワールドイーター」兵団、「デスガード」兵団、「エンペラーズ・チルドレン」兵団といったすでに裏切りを決意した兵団であったが、それぞれの兵団にはまだ少数の忠誠派スペースマリーンが、真相を知らぬままに所属していた。
そうした忠誠派スペースマリーンの多くは皇帝自らが兵団へと編入され、帝国に対してより強い忠誠心を持っていた。
ホルスは反乱鎮圧を名目にイシュトヴァーン星系に大軍勢を集結させ、軌道上から反乱軍に爆撃を加える。そして、忠誠派のスペースマリーンたちを惑星制圧のために降下させた。彼らが首都を占領して勝利の凱歌を上げようとしたその時、恐るべきウイルス爆弾の雨が軌道上のホルス艦隊から惑星に降りそそいだ。
艦内に残っていたわずかな忠誠派による必死の警告を聞いた者たちは、すぐに待避壕へと隠れたが、イシュトヴァーンIIIの住民80億人は、食肉細菌により一瞬にして全員死滅した。
忠誠派の生存者がいることを知ったアングロンは激怒し、ワールドイーター兵団と共に惑星に降下する。この抜け駆けにホルスは怒ったが、すぐに増援を送った。大逆派の四兵団は生き残った忠誠派を容赦なく抹殺し、彼らは支援もないまま全滅してしまった。
この凶行が起きた際、「サングィヌス」率いる「ブラッドエンジェル」兵団、「ライオン・エル=ジョンソン」の「ダークエンジェル」兵団、「ロブート・グィリマン」の「ウルトラマリーン」兵団といった一部の忠誠派兵団は、ホルスの計略によって地球から遠く離れた場所へと遠征に向かっていたために、反乱鎮圧へと駆け付けることが出来なかった。
忠誠派で地球の近くに残っていた兵団は、「ローガル・ドルン」の「インペリアルフィスト」兵団、「ジャガタイ・カーン」の「ホワイトスカー」兵団、そして「フェルス・マヌス」率いる「アイアンハンド」兵団のみであった。
ホルスはイシュトヴァーンIIIでの戦闘が終了した後、直ちにイシュトヴァーンVに向けて進軍を開始した。
【降下地点の虐殺】
惑星「イシュトヴァーンIII」から生き残ったマリーンからの報告を受けた皇帝は、総主長ローガル・ドルンに命じて、七つの兵団による討伐軍を惑星「イシュトヴァーンV」へと向かわせた。
第一波の攻撃に加わったのは、「レイヴンガード」兵団、「サラマンダー」兵団、「アイアンハンド」兵団の三兵団で、第二波は「アルファレギオン」兵団、「アイアンウォリアー」兵団、「ナイトロード」兵団に加え、「ワードベアラー」兵団の四兵団が参加する大規模攻撃作戦が計画された。
この作戦の指揮官にはアイアンハンド兵団の総主長「フェルス・マヌス」が任命されていた。
しかし、マヌスが知らないところでホルスの計略が実行されていた。第二波に加わっているスペースマリーン兵団は全てホルスの陣営へと密かに加わっていたのだ。その上で味方に成りすまして討伐軍へと参加していたのだ。
討伐艦隊から、何千というドロップポッド(着陸艇)が第五惑星上に降下すると、フェルス・マヌス率いる第一波の軍勢は、「レイブンガード」総主長「コラックス」と「サラマンダー」総主長「ヴァルカン」も加わって、大逆者の要塞を包囲するように攻勢を仕掛けた。
まもなく同胞同士の死闘が始まると、忠誠派の第二波兵団が惑星に降下して第一波の兵団へと合流しようとしていた。
その時、大規模な惨劇である〈降下地点の虐殺〉が始まった。第二波の兵団は突如反旗を翻し、第一波の兵団へと容赦なく襲い掛かったのである。忠誠派は反撃もできないまま次々と倒されてしまった。その様子を見ていたもう片方の大逆派は要塞から反撃を行い、忠誠派は周りを囲まれてしまう。
囲まれた忠誠派は多勢に無勢となり、大逆派によって殲滅させられた。ヴァルカンはコンラッドに捕まり、コラックスは重傷を負いながらも辛うじて脱出し、フェルス・マヌスは親友であったフルグリムによって斬首されてしまい、総主長最初の戦死者となってしまった。
【ホルスの大逆】
イシュトヴァーン星系で大勝利を収めたホルスは、旗艦「ヴェンジフル・スピリット」に大逆の総主長を集合させた。ホルスと〈降下地点の虐殺〉に加わった六名に加え、渾沌の領域へ逃れていたマグヌスも参加した。この会議で大逆派は忠誠派の反撃を防ぐため、それぞれ担当する戦闘宙域を決定してそれぞれの戦場へと向かっていった。
地球の標準時間に基づく7年間にわたる内戦は、数多くの惑星を舞台に同胞同士の殺し合いが繰り広げられた。総主長らは互いのライバル意識を憎悪に変えて戦い続けた。
特に熾烈な戦いとして知られているのは、ダークエンジェル対ナイトロード、ウルトラマリーン対ワードベアラー、インペリアルフィスト対アイアンウォリアーといったライバル兵団同士の戦いであり、ブラッドエンジェルは渾沌の悪魔との戦いに身を投じた。
大逆軍の次なる目標は火星であり、当時の火星は火星分裂と呼ばれる内戦に陥っていた。皇帝によって禁忌とされた古代技術と渾沌にかかわるテクノロジーを解放することを条件に、ホルスは技術司祭たちの大半を味方につけることに成功したのだ。
彼ら大逆の司祭たちは後に〈暗黒の機械教団〉(ダーク・メカニカム)と呼ばれるようになる。
【地球の戦い】
7年間の内戦を経て大逆軍は優勢となり、ホルス率いる主力艦隊は地球に到達した。伝説で語られる〈地球の戦い〉の始まりである。防衛側のスペースマリーン兵団は、それぞれ総主長に率いられたインペリアルフィスト、ブラッドエンジェル、ホワイト・スカーの三兵団のみ。
これに皇帝を護衛する黄金の近衛兵団と沈黙の姉妹団、地球を守る常人たちの軍勢が加わり、人類の聖地である地球を守るために大逆軍を待ち構えていた。
地球の軌道上には大逆軍の大艦隊から熾烈な軌道爆撃が大地を引き裂き、大逆兵団のドロップポッド群が帝殿に近い宇宙港へと降下した。宇宙港はすぐさま制圧されてしまい、大逆軍の本隊が到着して帝都攻略戦が開始された。
この最終決戦でホルスは全勢力を投入する。大逆兵団はもちろんのこと〈暗黒の機械教団〉や渾沌の教団、更にはケイオスディーモンの軍勢や巨大ロボット兵器〈巨人機〉(タイタン)をも多数導入され、まさに文字通りの総力戦を仕掛けたのだ。
帝殿攻略戦はディーモンプリンスとなったアングロンによる降伏勧告から始まった。それはかつての英雄が渾沌によって異形の悪魔へと変わり果ててしまう様を証明していた。
帝殿の城壁はサングィヌスとローガル・ドルンの指揮のもと、敵からの猛攻を三度防衛した。
城壁攻略が芳しくないと判断したホルスは決戦兵器である巨大ロボット、「エンペラー級タイタン」を導入した。その兵器は巨城ほどの大きさを誇り、歩く要塞といっても過言ではなかった。
タイタンからの猛砲撃を受けた城壁は遂に破壊され、聖なる帝殿の中へ邪悪なる大逆者が次々となだれ込んできた。
皇帝の座する〈黄金の玉座〉に通じる巨大な門〈永遠の門〉での激戦が始まると、サングィヌスと上級悪魔であるブラッドサースターとの一騎打ちが繰り広げられた。
しかし、サングィヌスは上級悪魔を倒すことに成功し、大逆者が〈黄金の玉座〉への侵入することは遂にかなわなかった。
帝殿制圧に失敗したことを知ったホルスのもとに、さらなる凶報が入ってきた。大逆兵団の阻止を突破して、ダークエンジェル、スペースウルフ、ウルトラマリーンの忠誠派兵団が、地球を救援すべく駆け付けてくるという。
彼らが到着すれば、戦力差は逆転して不利になってしまう。
この時ホルスはなにを思ったのか定かではないが、突如、ホルスが乗船している旗艦「ヴェンジフル・スピリット」のシールド機能がダウンしたのだ。シールド機能が機能しなければ艦内へと侵入が可能となる。
皇帝はこのチャンスを見逃さず、自ら近衛兵とドルン、サングィヌス、忠誠派の精鋭部隊とともにヴェンジフル・スピリット艦内へとテレポートによる強制乗り込みを行ったのだ。
不運なことに、渾沌の祝福を受けた艦内ではテレポートの位置が狂ってしまい、皇帝たちの部隊はばらばらの場所へ散って乗艦してしまった。
最初にホルスの座す艦橋へとたどり着いたのは、最も古き親友であったサングィヌスであった。ホルスは親友への服従を求めたが、サングィヌスは拒否し、激しい一騎打ちが始まった。
しかしサングィヌスは〈永遠の門〉での戦闘で疲弊しており、暗黒の祝福を受けて強化されたホルスに太刀打ちが出来なかった。
自分を拒絶したサングィヌスは拷問にかけられて、悲惨な最期を遂げて惨殺された。だが、サングィヌスの犠牲は無駄では無く、ホルスのパワーアーマーにわずかな傷をつけていたのである。
皇帝たちが近衛と共に艦橋へと到着したとき、すでにサングィヌスは息絶えていた。
そして、ホルスは皇帝に言い放った。
「愚かなり父上。我のごとく渾沌の力を受け入れ、我が物とすれば、真に人類の支配者となれたものを。今や遅し。我に従えば御身の命だけは助けてやろう」
しかし、数千年の年を重ねた皇帝は渾沌が仕掛ける常套の罠である事を悟って誘いを拒否した。
「愚かは汝よ。汝は渾沌を制したつもりで、その実、渾沌の奴隷となったに過ぎぬのだ。人が禍つ神々を従えることなどできぬ」
遂に父たる皇帝と優れた息子ホルスとの壮絶なる決闘が幕を開けた。
二人の超人が持つ剣戟が交じり合い、凄まじき超能力のエネルギーがぶつかり合った。しかし、ホルスが持つ渾沌のエネルギーは皇帝のサイキックエネルギーをも凌駕していた。
ホルスのライトニングクローが皇帝の持つ焔の剣を跳ね上げ、その黄金の鎧に深い爪跡を残した。さらにホルスは皇帝の片腕を切り落とし、その倒れた体を持ち上げて背骨を渾身の力で折り砕いた。
その時、ひとりの帝国軍兵士が艦橋にたどりつく。ホルスはその姿を見て嘲笑し、瀕死の皇帝の肉体を投げつけた。
しかし兵士は屈服せず、倒れた皇帝とホルスとの間に勇敢にも立ちふさがり、主君を守ろうとしたのだ。ホルスはあざ笑うと、無惨にもこの兵士をサイキックの一撃で生きながら焼き殺してしまった。
その光景を目の当たりにした皇帝は、最も信頼した「息子」が渾沌の手によって完全に堕ちたことを悟った。
もしホルスが勝利すれば、人類の運命はこの勇敢な兵士のようなものになるだろう。それだけは防がなければならぬと皇帝は最後の力を振り絞って、最大最強のサイキック攻撃をホルスに向けて放った。
強力なサイキックエネルギーはホルスを貫くと、サングィヌスによって付けられた傷にエネルギーが流れ込み、ホルスの体は砕け散った。
死の直前、ホルスは正気を取り戻しており、皇帝は最後に彼が何を思ったのかを汲み取っていたという。
ホルスは体だけではなくその魂も消滅し、渾沌の神々をもってしても復活させることは出来なくなってしまった。
間一髪で勝利した皇帝だが、その体は動くことが出来ず、すぐさまドルンによって運ばれ、生命維持装置である〈黄金の玉座〉へと納められた。
決着は皇帝が深き傷を負う形で勝利し、幕を閉じた。
ホルスの消滅は太陽系全体にサイキックの衝撃波として伝搬し、召喚されていた大量の悪魔は瞬時に消え失せてしまった。
総帥たる大元帥を失った大逆軍は総崩れとなり、一気に形成が逆転した。サングィヌスの死によって発狂したブラッドエンジェル兵団は暴走し、大逆軍に容赦なく襲いかかった。
かくして、悲しき父と子の悲劇の大逆内戦は終結した。
【大逆後】
ホルスの魂なき骸は、旗艦「ヴェンジフル・スピリット」と共に逃げ去るサン・オブ・ホルス兵団によって、渾沌の領域〈恐怖の眼〉へと運び去られた。
そして一旦は魔星メレウムに埋葬された遺骸は、後にエンペラーズ・チルドレン兵団の狂的科学者「ファビウス・バイル」によって盗み出され、ホルスのクローン体が作り出された。
ホルスの元側近であり、渾沌の大元帥の称号を継いだ「エゼカイル・アバドン」はこの行為に激怒し、これらのクローンを全て破壊する。
そして彼は、サン・オブ・ホルス兵団を「ブラック・レギオン」と改名し、帝国との戦いを継続して滅亡させることを渾沌の神々に誓ったのだ。
ホルスの名は大逆が終戦した1万年後の現在でも、暗澹たる影として帝国を蝕んでいる。
第XVII(17)兵団ワードベアラー総主長「ローガー」
「神と悪魔の差というのは、そのときお前が立っている場所に依存している」
【概要】
「ワードベアラー」兵団を率いる大逆派の総主長。〈最賢者〉(コルヒジアン)の異名を持つ彼は、狂信的なる神学者であると同時に、比類なき哲学者でもある。
布教を得意とし、〈大征戦〉時代では皇帝を神として崇めて宗教活動を行っていた。しかしある日を境に彼は、渾沌の狂信者への道を歩むこととなる。
【装備品】
ウォーギアにはパワーモール「イルミナラム」を装備し、パワーアーマーにはマークVIアーマーを基にして作られた〈言語の鎧〉(アーマー・オヴ・ジワード)を着装している。
画像出典:小説「Lorgar Bearer of the Word」表紙イラストより
【ローガーの出自】
渾沌の〈禍つ神々〉に銀河の果てに飛ばされたローガーは、惑星「コルキス」へと落着した。コルキスは古き神々を信仰する惑星であり、人々は自然環境には超越なる神々が宿っていると信じられていた。封建的な伝統社会にはかつては高度な科学技術が存在したが、〈不和の時代〉にすべて忘れ去られてしまう。
疫病と戦乱がこの地を繰り返し起こり、神々の信仰のみが今に残っていた。
赤子の総主長が収められた保育カプセルがコルキスの地に落ちてきたとき、それを拾い上げたのは惑星の支配階層である〈僧会〉であった。彼らは渾沌の神々を崇める多神教の宗教組織であり、ローガーは首都ヴァラデシュにある〈僧会〉の神殿で育てられた。
ローガーは信心深い宣教師として成長すると、その説法とカリスマ性によって多くの信奉者を集めた。神殿と僧侶たちの間で、ローガーにとって育ての父であり、最良の友となったのが、上級司祭である「コー・ファエロン」であった。
若きローガーは頻繁に幻視(ヴィジョン)を視るようになり、”それは巨人を従えた黄金の戦士が自分と共に歩む”という内容だった。これをコルキスに唯一の神聖なる神が到来する予兆と受け取ったローガーは、この予言を信徒に語った。
信徒は大いに動揺し、その後はローガーを中心とした新たな宗派を設立した。しかし、ローガーの人気に嫉妬していた他の僧侶たちは、唯一なる神を説くローガーの排除を行おうとした。〈僧会〉は分裂し、宗教戦争が勃発した。
六年にわたる戦いの末、唯一神説の派閥はかつてローガーが育った大神殿を襲撃し、保守派の僧侶は殺戮された。ローガーは遂に〈僧会〉の改革に成功し、司祭長の地位を獲得する。そしてコルキスの民衆に「皇帝」と呼ばれる唯一神の到来とその祝福を約束したのだ。
そして、戦争終結から数か月後、ローガーの予言通りに人類の皇帝は大艦隊と共にコルキスへとやって来た。「サウザントサン」兵団総主長「赤のマグヌス」と共に惑星に降り立った皇帝の姿は、ローガーの幻視と全く同じであった。直ちにローガーと惑星の全住民は皇帝に絶対の服従を誓約する。
特にローガーにとっては昔から夢にまで見た目標が成就した瞬間であった。以後、彼らは皇帝陛下を神として信奉し、奉仕することとなったのだ。
皇帝はローガーに、その遺伝種子を基にして創設されたスペースマリーン第十七兵団である〈皇帝の先触れ〉(インペリアル・ヘラルド)兵団を任された。ローガーは奮起し、”神なる皇帝への信仰を銀河中に広める使命を皇帝自らからゆだねられたのだ”と信じていた。
しかし、ローガーの熱意は皇帝が推進する〈帝国の真理〉つまり宗教や信仰といった文化を排除する方針をは食い違っていた。皇帝は、ローガーに対して”自分は神ではない”と告げたが、これは逆説的にローガーの信仰心を強くしてしまった。
〈僧会〉の信仰対象は、人類の皇帝に置き換わり、組織の体制もそれに併せて変化していった。祝祭と帰依の儀式が連日行われ、その際にローガーは兵団名を〈言葉を運ぶ者〉すなわち「ワードベアラー」兵団に改めた。彼らは皇帝の言葉を広げ伝えることを兵団の教条とした。
ローガーの育ての父「コー・ファエロン」はスペースマリーンへの変成の手術に耐え抜き、ローガーの首席顧問であるワードベアラー兵団最精鋭の第一中隊長に就任した。
【大征戦での活躍】
〈大征戦〉へと参戦したワードベアラー兵団は、帝国内からあらゆる冒涜的な要素と異端を排除する事に力を入れた。様々な信仰やそれにまつわる遺物などは全て破壊され、彼らは皇帝を崇拝する巨大な記念日や大聖堂などが建立された。
ワードベアラー兵団の〈教戒官〉たちは、皇帝の神性と正義を説くための膨大な書物を書き、熱心に布教を進めた。そして、ローガー自身も皇帝が神たる存在であることを証し立てる書物「神勅集成」(レクティティオ・ディヴィナトゥス)を著す。
これらの活動は皮肉にも、帝国が神権国家への道を歩むための礎となってしまう。
ワードベアラー兵団の改宗は着実に進んでゆき、ローガーの巧みな説法によって兵団員の心を掴んでいった。禍つ神々に立ち向かうはずのスペースマリーン達だったが、彼らには何かしらの大義が必要だったのだ。
ローガーやワードベアラー兵団にとっては、それが神たる皇帝への信仰であった。そして、彼らは狂信的な信仰の僧兵へと変貌していった。
〈大征戦〉の中でローガーは征戦よりも、解放した惑星での布教に力を入れていた。皇帝の推奨する〈帝国の真理〉ではより大きな大義を得ることが難しく、ローガーによる皇帝の神格化は人々に強い希望を与えていた。
異種族の支配や絶え間ない戦乱によって人類の星々は荒廃し、皇帝と言う名の神を作り出す事によって人々に強い希望を与えられていた。ローガーによって導かれた兵や臣民は帝国に対する忠誠心がより強く、揺るぎないものとなっていたのだ。
しかし、こうした布教活動は帝国の中枢組織に知られる事となり、彼の熱心な布教活動は突如として終わりを告げることとなる・・。
【破局の始まり】
彼の布教の噂は帝国の諸軍の間に広まり、ワードベアラー兵団が宗教活動を行っている事が語られ始めた。迷信や宗教を無くそうとしている帝国で真理に反する行動を取る者がいる噂が広まった。しかし、数万光年にわたって展開されている〈大征戦〉のさなかでは、ローガーを本格的に追及するまでに至ることはなかった。
ワードベアラー兵団に疑惑が持たれたきっかけは、征戦の進捗状況であった。彼らは征戦と同時に布教活動を行っていたために、他の兵団に比べて征戦の進行が遅かったのだ。皇帝は第十七兵団の遅さに疑問を持ち、彼らに調査団が派遣された。
そして、皇帝はローガーの布教活動に驚愕し、ワードベアラー兵団の宗教活動停止を正式に命じた。皇帝の目標は”人類から迷妄を取り除いて〈渾沌の神々〉を弱体化させる〈帝国の真理〉による銀河統一”であり、皇帝の個人崇拝ではなかったためである。更に、皇帝の崇拝を拒んだものを異端者として虐殺されていることも憂慮した。
皇帝は「ウルトラマリーン」兵団総主長「ロブート・グィリマン」にこのことを相談し、彼らにワードベアラー兵団の処罰を命じたのであった。ウルトラマリーンとグィリマンの行動は正に大征戦の大義を体現する存在であり、彼にこの問題解決を託すのに適していたためである。
指示を受けた派遣軍であるウルトラマリーンは、皇帝直属の近衛兵団(カストーディアン)と皇帝の側近「マルカドール」と共に惑星「クール」へと向かった。そこはワードベアラー兵団に忠実な惑星であり、首都「モナーキア」にはかつてないほどの皇帝を崇めるための建造物が数多く建立されていた。
そして派遣軍は、モナーキアの都市を徹底的に破壊した。その後、総主長ローガーとワードベアラー兵団全員が焦土となったモナーキアに集められ、その光景にローガーと兵団は絶望した。皇帝が彼らの前に現れ、譴責し、サイキック能力で屈従を強制され、人類を裏切ったと兵団と総主長に指弾した。
皇帝が去った後、ローガーはあまりの絶望に立ち尽くして深い苦悩を抱え込んだ。しかし、これは全ての始まりであった。そう、”終わりの始まり”とは誰も知らずに。
【新たなる信仰】
深い苦悩を抱えたままでいたローガーは、コー・ファエロンとエレバスに勧められ、本当に信じるべきものは何かを探すために惑星「ケイディア」へワードベアラーの部隊と共に向かった。この星は後に〈恐怖の眼〉と呼ばれるようになる巨大な渾沌の宙域の近くにあり、彼らを迎えたのは野蛮な服装の原住民達であった。
原住民の指導者の女性は「インジェセル」と名乗り、自ら儀式を行って〈悪魔の公子〉へと変身し、ワードベアラーの部隊を〈恐怖の眼〉の中へと導いた。
〈恐怖の眼〉に入った部隊は、古代「アエルダリ」帝国の没落と渾沌の神の一柱である「スラーネッシュ」神の誕生を幻視で見せられた。次の瞬間、インジェセルは彼らに古代アエルダリ族没落の真相を語った。
渾沌を崇拝した古代アエルダリはスラーネッシュ神を生み出したが、愚かにも無知と恐怖心によって神を拒絶した。拒まれたスラーネッシュ神の悲しみは〈恐怖の眼〉の大渦となって、古代アエルダリ帝国の生命を滅ぼしつくしたのだと。
人類が古代アエルダリ族と同じ滅びの運命を進まぬためには、”正しく渾沌の信仰に導かなければならない”と語ったのだ。
生還したワードベアラーの部隊は、渾沌の祝福を受けて体が悪魔のような変異をしていた。彼らはワードベアラーの特殊部隊「ガル・ヴァーバク」として編入された。
恐怖の眼で語られた真実を聞いたローガーは、この真実が他の者に知られぬために、惑星ケイディアを徹底的に爆撃して原住民を全滅させた。
実はコー・ファエロンとエレバスは渾沌の手に堕ちており、ローガーを渾沌の信者にすべく彼を導いたのだ。
部下たちの策略によって渾沌の信者に染まろうとしたローガーであったが、しかし彼は完全に渾沌への信仰に傾倒していなかった。それが本当に信ずるに値するか確信が持てず、彼は〈原初の真理〉の神々に会うことにした。
【悪魔との謙遜】
ローガーは〈恐怖の目〉の中にある〈老婆の星〉と呼ばれし惑星「シャンリアサ」へ向かい、この赤き惑星の調査を行った。その際にはローガーには悪魔と化したインジェセルが付き従う事となった。遺跡が多く残るこの惑星でローガーとインジェセルは渾沌について話し合った。
悪魔インジェセルは魂無き存在であり、それは〈歪み〉に生きる生物全てがそうなっている。現実世界である物質宇宙の生物には魂が備わっている。物質宇宙の生物と非物質宇宙の生物は、表裏一体の存在であり、いずれは渾沌の神々の手によって一つの存在に統合されるべきものである。
今、ローガーが立っている領域は肉体と精神が融合する場所であり、物理法則はなく、無限の可能性がある。"この無限の可能性こそが渾沌なのである。"
「兄弟の中で唯一、道に迷える者である汝こそ、悟りによって自らの才を極め、それがゆえにあらゆる世界を意のままに変えることができよう」
アエルダリ族の運命を問うたローガーにインジェセルは答え、スラーネッシュを生んだ彼らは死後、スラーネッシュに吸収されるのであると。そして、物質宇宙に生きるものは全て、死後、〈歪み〉たる永遠へと漂い出て、飢えし神々の裁きを受けることになるのだと。
この〈原初の真理〉は人類の魂の奥深くに刻み込まれている為、古来より信心深きものは神々の楽園に住み、不信心者は悪魔の獲物になるという教えが様々な形態で続いていたのであると。ローガーは、この教えが故郷コルキスの伝統宗教と同じであることに気づいた。
"誠の真理は〈帝国の真理〉の前にあったのだと。"
赤き惑星を進むローガーの前に、巨大な遺跡が現れた。それはアエルダリ族の〈失墜〉の際に破壊されたアエルダリ族の〈方舟〉(クラフトワールド)の一つであった。スラーネッシュ神の誕生と同時に巨船へ乗船していた二万ものアエルダリが一瞬にして魂を奪われ、滅び去ってしまった。
そしてそこには、一万年以上の歳月を経ながらも微かに息のあるアエルダリの神の化身(アヴァター)が埋もれていた。その無惨な姿に、インジェセルは神もまた死ぬのだと言った。ローガーはこのカイン神の化身を自らのクロジウス槌で砕いて滅ぼすと、悪魔にたずねた。
未来はどのようになるのか悪魔は答えた。未来は戦火の中で終わるだろうと。
【渾沌の真理】
ローガーは未来を見せるよう悪魔に命じ、次の瞬間、彼は驚くべき場所へと転移した。そこは地球の中枢部にある巨大なゲートである〈永遠の門〉で、皇帝の聖域と外部を隔てるために作られたものである。
そこではスペースマリーン達による凄まじき戦場と化しており、「インペリアルフィスト」兵団と総主長「ローガル・ドルン」が所属不明の深紅に塗られたパワーアーマーを身にまとう兵団と戦っていた。その深紅の兵団こそがワードベアラー兵団の本来の姿であると。
インジェセルはワードベアラーが深紅をまとったことこそ、人類に不可避な変貌の先触れであるのだど告げた。もはや彼らは〈皇帝の言葉を運ぶもの〉ではなく〈ローガーの言葉を運ぶもの〉になったのだと。
そして、再びローガーは見知らぬ惑星へと転移させられた。インジェセルは語る。神々がローガーを招き、運命の糸は今この瞬間に向かってつむがれたのだと。ローガーが今ここに至るために編まれたのだ。
ローガーはインジェセルに叫んだ。何故ホルスやグィリマン、サングィニウスやローガー、あるいは赤のマグヌスではなく私なのだと。
その叫びとともにローガーは最後の幻視を見る。気がつくとローガーは、勉学のためにしばらく住んだサウザンドサン兵団の聖都「ティサ」に立っていた。しかし、そこは完全に崩壊しており、インジェセルいわくこれは来るべき戦争の定めであると語った。ローガーは拒んだが、これこそがマグヌスが皇帝と兄弟に裏切られて悟りをひらく最終的な出来事であることを告げられた。
マグヌスと兵団、そしてティサの都はティーンチにとの契約によって〈恐怖の目〉内にある惑星に転移され、今まさに帝国との戦いの準備を整えているところである。しかし、その戦争を率いるのはローガーではない。
戦争は渾沌の真理を〈帝国〉にもたらすためのものであり、ローガーは神々を求めてやってきた。そして神々を見つけた。むしろ神々がそう仕組んだ運命なのだ。神々の目は今や人類に向けられており、人類は神の真理を受け入れなければならない。魂もつものと持たぬものの均衡の取れた調和を。
さもなくば愚かなアエルダリと同様に滅びの運命を歩む事となるだろう。神々は人類を求めており、"人類なくして神々は物質宇宙を統べることができないからだ。"信仰と祈りがない場所に神々は現れることができず、それゆえに皇帝が推奨する〈帝国の真理〉は渾沌にとって最悪の脅威なのである。
皇帝にまっこうから立ち向かうことを怖れるローガーに、渾沌はインジェセルを通して戦い方を伝授した。信心深きもの達を結集させ、惑星をひとつずつ解放し、反逆者はワードベアラーのもとに処罰し、そして集まったものたちとともに忠誠なる教団を設立する。
多くはワードベアラーの兵団員となり、奉仕者となるだろう。そして、兄弟たちもまた、真理に触れることで皇帝に対して反旗を翻すだろう。帝国は人類をゆっくりかつ着実と殺す癌であり、打ち倒さない限り、最後は悲惨なる滅亡しかないのだ。
ワードベアラーは人類のために戦い、真理のために死ぬのであり、信仰と鋼鉄によって異種族を打ち払い、人類の未来を築かなければならないのだ。それが世の道理であるのだと。
ローガーはこの破壊されたティサに居るはずのマグヌスと会おうとしたが、インジェセルはそれはできないと警告した。しかし、ローガーは制止を振り切ってマグヌスが住む巨塔に上り彼と再会した。しかしマグヌスは。現実時間で言えば五十年近く未来の姿であるはずなのに、何百才も年老いていた。
マグヌスは、自分の知る燃えるような狂信の眼光をもたぬローガーを渾沌のゆらぎが見せるただの幻影だと考え、ローガーを拒否した。ローガーは自分が幻影ではないと必死に説明したが、マグヌスを怒らせるだけで遂に彼は魔力でローガーを自分の領地から吹き飛ばした。
ローガーは幻視から覚め、再びシャンリアサに帰還した。かろうじて立ち上がった彼の前には、瀕死のインジェセルが横たわっており、マグヌスの妖術からローガーをかばって力を使い果たしてしまった。インジェセルはローガーに告げた。
「汝は神々に選ばれたる者。なぜなら、汝ひとりだけは力ではなく理想ゆえに、人類の未来のために渾沌を求めたからだ。それゆえ、汝は全く私心なき者なり」
【渾沌の試練】
そこに、突如として虐殺の神コーンの下僕たる「上級悪魔」(グレーターディーモン)である「ブラッドサースター」〈血に飢えし者〉の巨体が姿を現した。渾沌の悪魔の中でも上級の悪魔が、ローガーの資質を試すために戦いを挑んできたのだ。
ローガーは満身創痍の中、必死の防戦によってブラッドサースターを退けた。
続いて現れたのは変化の神の下僕たる上級悪魔「カイロス」であった。双頭の巨鳥の姿をしたその悪魔は、ローガーに最後の選択を決断させるべく現れたのだ。カイロスは予言を行い、”戦争の未来に、惑星カルスにてローガーは個人的栄誉か神の定めた運命か”どちらかを選ぶことになるだろう、と。
そこには兄弟であるグィリマンを打倒するまたとない機会が訪れ、グィリマンを殺せば、ローガーは将帥として同胞たちから尊敬を得られるだろう。しかし、それは最終的な敗戦に至る選択であり、グィリマンを生かすことによって人類を渾沌に目覚めさせる可能性を増大させることができる。
自らが優秀である証明をする勝利か、それとも未来に向けた勝利の為の耐え難い恥辱か。そのどちらかを選ぶ時がやってくるというのだ。カイロスの二つの首は常互いに矛盾した内容を告げることが多いが、このときは、両方の首が同じ予言をローガーに告げたのである。悩みしローガーを残して、ティーンチの上級悪魔は姿を消した。
ローガーはインジェセルに今の告げた内容は本当かどうか尋ねると、「すべては真実か、あるいはすべて虚偽である。」という答えが返ってきた。渾沌の神々はその真実をローガー自身に目撃させようとしており、ローガーは決心すると〈恐怖の眼〉の数多くの惑星と領域を見て回った。
そこには人類の宗教や神話で出てくる天国も地獄もあり、皇帝の野望を阻止できなければ人類にどのような運命が待っているかも見た。
ローガーは惑星がいかに変容するかも見た後に、〈歪み〉が人類にもたらす賜物や肉体と精霊の合一についても考えた。
そして、最後にローガーが求めたものは、”渾沌が敗北した銀河の未来の姿”であり、〈恐怖の眼〉の奥底でその全てを見たのだ。
彼は渾沌への揺るがざる信仰を獲得し、帝国へと戻っていったのだ。
【〈ホルスの大逆〉】
渾沌へと堕ちたローガーは、早速コー・ファエロンを〈信仰の主管〉の役目に任じ、ワードベアラー兵団全体の改宗を行った。その結果、兵団は渾沌の神の一柱を崇拝するのではなく、渾沌全体を崇拝する〈分かたれざる渾沌〉として改宗された。
兵団の改宗が終了すると、いて首席教戒官であるエレバスを中心に、大元帥ホルスを渾沌の軍勢に引き入れるための策謀が進められた。
この間、ワードベアラー兵団は真の信仰対象を隠蔽し、〈帝国の真理〉の布教を行っていた。皇帝は息子が更正した喜んでいたが、しかし、ワードベアラー兵団は裏で渾沌の真理を密かに広めていたのだ。
大元帥(ウォーマスター)「ホルス」はワードベアラー兵団の策略によって渾沌への忠誠を誓うと、ローガーは皇帝に対して公然と反旗を翻す前の準備を進めていた。それは最強の敵となると思われる総主長グィリマンとウルトラマリーン兵団を、銀河の銀河の東部辺境宙域から襲来するオルクの進撃に備えるためと称して、兵団本領「ウルトラマール」の中にある惑星「カルス」に向かわせた。
ウルトラマリーン兵団はこの星でワードベアラー兵団と合流し、グリーンスキン達に対する征伐を始める段取りであったはずだが、それはローガーが仕掛けた罠だった。
ローガーの腹心エレバスとコー・ファエロンは、かつてウルトラマリーン兵団に聖都モナーキアを滅ぼされた復讐を遂げるために、熾烈な勢いをもってカルスに攻め込んだ。
惑星カルスの軌道上でワードベアラー兵団の奇襲を受けたウルトラマリーン兵団の艦隊は壊滅し、すでに地上に展開している忠誠派のスペースマリーン達も、上空か核爆撃を受けた上に、直前まで味方と信じていた大逆者たちによって虐殺された。
しかしエレバスらの予想に反して、総主長グィリマンの旗艦はかろうじて生き残っており、グィリマンは艦の修理を急ぐとともに本拠惑星「マクラーグ」へアストロパス(精神感応官)による急報を送信した。
カルス地上でなんとか生存しているウルトラマリーン達の大半はカルスの出身者であり、彼らは数で劣る中でカルス地下に広がる広大な洞窟網に退避して、粘り強い抗戦を続けたのである。宙空間ではグィリマンの残存艦隊が、ワードベアラーの大艦隊に対して一撃離脱作戦を敢行しながら、地上の味方との連絡を保ち続けた。
凄絶な持久戦の戦況は遂に忠誠派が有利なる。マクラーグからの増援艦隊が到着し、激戦の末に、ワードベアラーの艦隊を撃退する。しかし、大逆者は報復を忘れず、カルスを照らす恒星「ヴェリディアン」を砲撃して不安定化させ、カルス地表を放射線による不毛の大地へと変貌させた。更に死闘で流された血と苦痛を基に巨大な〈歪みの嵐〉である〈破滅の嵐〉(ルインストーム)を召喚し、ウルトラマール領域全体を孤立させることに成功する。
〈破滅の嵐〉は地球から発せられる波動である〈星辰波〉(アストロノミカン)を完全に遮断する恐ろしき現象である。〈星辰波〉(アストロノミカン)の波動が無ければ、ワープ航行時にその方向を完全に見失ってしまい、ワープ航行が不可能となってしまうのだ。
更に〈破滅の嵐〉は地球との連絡や通信も遮断してしまうため、〈破滅の嵐〉によって、総主長グィリマンとウルトラマリーン兵団は地球救援へと向かうことが困難になっってしまった。
配下をカルスで戦わせる一方、ローガーはワードベアラーの別働隊を率いて〈影の征戦〉と呼ばれる作戦を実行する。これは総主長「アングロン」率いる「ワールドイーター」兵団と協力して、ウルトラマール領域中枢へと進軍する大規模作戦であった。
この両兵団による殺戮と征服はすさまじい勢いで進み、何十もの惑星が一夜のうちに滅ぼされた。
この〈影の征戦〉の虐殺もカルスから始まった〈破滅の嵐〉の力となる。また、この遠征の中でローガーはアングロンの破滅を予見し、彼がアングロンの故郷である惑星「ヌケリア」で総魔長へと姿を変えるように策を進めた。
カルスの闘いと〈影の征戦〉によって仇敵グィリマンとウルトラマリーンに甚大な被害を与えたワードベアラーとワールドイーターの両兵団は、ホルスと大逆軍主力に合流するして地球の戦いへと参加した。
【大逆後】
大元帥ホルスが討ち取られ、軍が総崩れになると、大逆軍は敗走を余儀なくされた。〈ホルスの大逆〉終結後、ワードベアラー兵団もまた〈恐怖の眼〉に撤退していった。そしてローガーは、〈分かたれざる渾沌〉の総魔長(ディーモンプライマーク)として永遠の命と無尽蔵の力を渾沌の神々から賜った。
大逆以来一万年、ローガーは自身の領する悪魔惑星「シカルス」で、渾沌の真理についての瞑想を続けていると言われている。ワードベアラー兵団の統率は、エレバスらをはじめとする暗黒の司祭たちによって行われており、暗黒の神々の名のもとに〈帝国〉に信仰の闘いをしかけている。
真の神々を見つけた彼らは、人類を救うための信仰の戦いを今でも続けている。
第XX(20)アルファ・レギオン兵団総主長「アルファリウス(オメゴン)」
【概要】
「アルファ・レギオン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。総主長の中でもその素性は謎に包まれており、彼についての確実な情報は非常に少ない。
彼は自らの考えや情報は一切他人に教えず、他者に対して冷笑的でどこかあざ笑うような態度を取る。他の総主長とも距離を置いており、秘密主義的で協調性に欠けている。
彼は多くの秘密を抱えているが最大の秘密は”二つの身体に一つの魂”を持つ総主長であり、双子で外見がそっくりな弟である「オメゴン」が居ることである。
【装備品】
アルファリウスとオメゴンは、完全に非標準的で一貫性のない装備を使用し、「カメロリン」製の繊維で出来た光学迷彩のマントとパワーアーマーを好んで使用した。
ウォーギアには、異種族が使用していたアーティファクトである槍「ペールスピア」を主に装備し、戦闘状況によってはパワーソードやプラズマガンも使用することがあった。
パワーアーマーには「ピティアンスケイル」と呼ばれる爬虫類のうろこの装飾が施された鎧を着装している。このパワーアーマーは古代テラにおける〈技術の時代〉に作られたもので、あらゆる攻撃(弾丸、光学兵器、白兵武器等)を回避しやすくする効果を持つ。
画像出典:小説「Praetorian of Dorn」表紙イラストより
【アルファリウスの出自】
アルファリウスの出自は謎に包まれており、彼が皇帝に再会するまでどのような経歴を歩んだのか一切わからない。彼の出自については所説があって、どれが本物か見当がついていない。
帝国の中枢組織で秘密裏に語られた一つの話によれば、彼は大征戦のさなかに「ルナウルフ」兵団によって発見された説がある。
アルファリウスは当時、少数の宇宙艦隊を擁する人類の星系連合を率いており、征服にやってきたルナウルフ兵団は敵の巧妙な策略と奇襲によって翻弄された。
この敗北に怒ったホルス自身が追討を行った結果、不意打ちに次ぐ不意打ちと数多の罠に見舞われ、ついにホルスの旗艦「ヴェンジフル・スピリット」が直接アルファリウスからの攻撃を受けた。
強力なホルスの艦隊によって敵の艦隊は追い払ったが、その混乱のさなか、一人の暗殺者が旗艦に潜入することに成功する。そして、驚くべきことにホルスの指令室にまで到達し、総主長の親衛隊も苦も無く殺戮したのだ。
暗殺者と邂逅したホルスは相手が兄弟たる総主長であることに気が付く。アルファリウスと名乗った暗殺者は、自分が長い年月の間、宇宙を彷徨していたのだと語ったが、出身については決して明かさなかった。
彼が率いていた星系連合をはじめ、周辺の星々は残らず帝国の支配下となったが、そのいずれもアルファリウスの出身惑星を知る者はいなかった。
別の話もあり、近衛兵団によって捕縛されたアルファレギオン隊長の精神から引き出された情報によると、荒廃した惑星からの一人で成長したという説もある。
彼は、〈嵐の領域〉の南端に位置する辺境星区〈マンドラゴラの星々〉のさらに辺縁にある名も無き死滅惑星に生育ポッドが落着し、そこで全く孤独のまま生存を強いられたという。
惑星には人類の興隆以前に滅亡した異種族文明の廃墟が残されており、そこには古代の遺物が眠っていた。
不時着して長い年月が経った後、半人半獣の無法者と異種族が乗る海賊船が遺跡を漁りに来たが、アルファリウスによって返り討ちにあってしまう。彼は海賊から武器と知識、宇宙船を奪い取ると、自らを造り出したものを探すために宇宙に旅立っていった。
更に別の話では、アルファリウスは渾沌の神々に連れ去られていない総主長であり、彼は皇帝自身によって養育された説まで存在する。
彼に関する逸話は多く存在し、どれが正しくてどれが間違っているのか判別ができなくなっている。しかし、それぞれの逸話には少数の真実が散りばめられ、真実へたどり着くヒントが隠されているかもしれない。
【大征戦での活躍】
地球で皇帝と再会したアルファリウス(とその弟オメゴン)は、第20兵団アルファレギオンを任され〈大征戦〉に参戦した。この時〈大征戦〉は終盤であり、皇帝は地球へ隠居し秘密プロジェクトに専念していた。
アルファリウスは兵団の総司令官であり、弟のオメゴンはその第一副官として活躍した。総主長が双子であり、二人で一人である守秘は兵団の中でしか知られされず、厳重に真実を守り続けた。
双子の指揮下で生まれた兵団員は背が高く強健で、総主長の狡猾さを受け継いでいた。
その規律正しさと異物の侵入を許さない鉄壁の組織は、寡黙で謎めいた総主長とともにすぐに有名になり、銀河で多くの活躍を見せた。アルファ・レギオン兵団の団結は完璧で、兵団員のあらゆる活動に隙は無かったという。
戦場では一分の隙もない精密な連携が兵士と兵器の間で行われ、破壊工作や奇襲、隠密作戦や暗殺をも駆使した素早くかつ効率的な戦いが展開された。
しかし、アルファ・レギオン兵団は、協同作戦中であっても他の兵団から距離を置いており、他者に対して冷笑的な態度とどこか嘲るような部分があった。その秘密主義と戦場での協調性の欠如は、ウルトラマリーン兵団総主長「グィリマン」やデスガード兵団総主長「モータリオン」とたびたび衝突が起きた。
【アルファリウスの戦術】
いついかなる時も策略を立てて行動する傾向が強いアルファ・レギオン兵団だが、正攻法の方が効率的な場合であっても、自分たちが好む隠密作戦を採ることが多かった。
その中でも特に悪名高い例が、惑星「テストラ・プライム」攻略戦であった。
アルファ・レギオン兵団は、惑星の首都を正面から制圧して屈服させる機会があるにもかかわらず、敵に防備を固める時間を与えた。その上で敵軍を徹底的に分断し、奇襲と罠の餌食にしたのである。1週間の流血の戦いの末、惑星防衛軍は九割の損耗を出して降伏した。
なぜもっと単純な戦略を採用しなかったのかと問われたアルファリウスは「容易すぎないようにだ」と返答したという。
この戦いでアルファリウスは他の総主長のほぼ全員から非難され、特にグィリマンは激怒した。彼はこのような戦闘の引き延ばしを「皇帝陛下の聖弾を浪費しているに他ならない」と断罪した。
しかし、ただひとりだけ大元帥ホルスだけはアルファリウスの戦いぶりに感銘を受けて、アルファ・レギオン兵団の技量を賞賛したのである。
【大逆のきっかけ】
アルファリウスが唯一親しくしていた総主長はホルスのみで、大逆軍に付くのは当然と思われているが、彼が大逆軍に付いたのはもっと別の理由があったのだ。
大逆の内戦開始から約2年前、アルファリウスはとある謎の組織からの接触を受けていた。それは、アエルダリ族が率いる異種族連合の組織で〈謀議団〉(カバル)と名乗っていた。彼らは人類の内戦を予知しており、「渾沌の神々」の実相とその企みについて広い知識を有していた。
〈謀議団〉は、銀河から渾沌を撃退する唯一の道は、"ホルスが反乱に勝利することである"とアルファリウスに語ったのである。
これが、アルファリウスとオメゴンが帝国と皇帝への忠誠心を維持しながらも、渾沌に魂を売った大逆軍に付いた理由ではないかと推測されている。
〈謀議団〉の工作員である人間で、不死の身体を持つ〈永生者〉「ジョン・グラマティカス」は、ホルスの大逆における二つの結末を予見した。
最初の予知はアルファ・レギオン兵団が忠誠派についた場合である。
この未来では皇帝が勝利をおさめる。しかし、皇帝は瀕死の重傷を負って〈黄金の玉座〉に封じ込まれ、生きても死んでもいない状態のまま、もはや人類を導くことができなくなる。それから1万年が経過して、帝国がゆっくりと衰退していく中、渾沌が復活を果たして人類を打ち負かし、絶滅に追い込むのである。
もうひとつの予知は、アルファ・レギオン兵団がホルスと渾沌についた場合である。
この未来ではホルスが勝利して皇帝を殺害し、大逆兵団は忠誠派を破り、地球は今や渾沌の総魔長となったホルスの手に渡る。しかしこの予知では、ホルスは皇帝を殺害した直後にそのショックで正気に戻り、渾沌の誘惑から自力で解放される。
自らの凶行を憎んだ彼は、渾沌に汚染された人類の排斥を進め、100年の間に帝国全土へ血の雨が降る。人類は絶滅するが、渾沌もまた人類の滅亡によって滅び去る。なぜなら、"渾沌の実態は物質世界で発生した人類の感情や思念が集積した存在"だからである。
〈謀議団〉は未来の選択をどちらにするかアルファ・レギオン兵団に託す。何故なら、他の兵団を説得する時間はあとわずかだったからである。おびたたしい流血によって人類と渾沌を滅亡させるか、それとも人類を存続させた末に渾沌の勝利へと導くか。
彼らの選択は、大逆軍に味方する道を選んだ。皇帝ならば人類を犠牲にしても渾沌を滅亡させるはずだと予想したからである。
【〈ホルスの大逆〉】
ホルスの大逆においてのアルファ・レギオンの活動については複数の例が挙げられるが、代表的なものを中心に紹介する。
〈降下地点の虐殺〉にて大幅に兵力に損失した「レイヴンガード」兵団の増員を阻止した事件があげられる。総主長のコラックスは秘密裏に総主長らの”オリジナルの遺伝種子”を集めていた。このことを〈謀議団〉から情報を聞いたオメゴンは、悪魔から抽出した毒によってレイヴンガード兵団の遺伝種子の汚染に成功した。その結果、兵団の新兵たちは悪魔のような角やしっぽなどの変異が現れてしまった。オメゴンは変異した新兵をそそのかされて反乱を起こし、混乱に乗じて”オリジナルの遺伝種子”を手に入れたのである。
奪取した遺伝種子は「エンペラーズ・チルドレン」兵団に属する狂気の科学者「ファビウス・バイル」に渡ったが、役に立たない偽物であることが判明し、本物の遺伝種子はアルファ・レギオン兵団が隠している。
その他にも、「チョンダックス」星系で惑星「ウラノール」から脱出したオルク残党と戦闘中の「ホワイト・スカー」兵団が地球の忠誠派と合流するのを阻止したこともある。
艦隊によって進路を封鎖したアルファ・レギオン艦隊はホワイト・スカー艦隊と激しい戦いとなったが、総主長「ジャガタイ・カーン」の巧みな突破作戦によって、アルファ・レギオンの艦隊は撃退されてしまった。
しかし後にモータリオンからこの戦いの経緯について疑問が提示される。本来ホルスはジャガタイを大逆側に引き入れるためにアルファ・レギオン兵団を派遣したのであったが、どういうわけか兵団は敵対的な行動を取ってしまい、長引く戦闘の中でホワイト・スカーはローガル・ドルンから〈大逆〉勃発の報せを受け取ったのである。
実際この報せがジャガタイに届いたのも、オメゴンが斥候を送ってホワイト・スカー兵団の通信を妨害している施設を破壊したからであった。モータリオンは、これはホワイト・スカーが皇帝忠誠派に留まるようアルファ・レギオン兵団が仕組んだものではないかと疑ったのである。なおホルスはその意見に対しては無反応だったという。
更にアルファ・レギオンはホルスの命により、惑星「プロスペロ」攻略で大きな損害を受けた「スペースウルフ」兵団の討伐へと向かった。
敵の大艦隊が迫っていると知ったスペースウルフ兵団総主長「レマン=ラス」は、ジャガタイに救援を求めたが、ジャガタイは敵と味方の判別ができない状態に置かれ、要請に応じられなかった。増援を得られず一時は絶望したラスだったが、アルファ・レギオン艦隊がやってくると陣頭に立って大逆者たちに戦いを挑んだのだ。
アルファリウスは「カタフラクティ・ターミネーター・アーマー」を着装したスペースウルフ親衛隊に変装し、ラスの旗艦にテレポートして侵入に成功する。艦内は敵からの襲撃に混乱したが、ラスはアルファリウスとの一騎討を戦った。
艦隊戦はアルファ・レギオンの勝利に終わると思われたが、スペースウルフの救難信号を捉えた「ダークエンジェル」兵団の艦隊がかろうじで救援に間に合った。ラスを忠誠派と信じた第1兵団の助力でスペースウルフはアルファ・レギオンの撃退に成功する。
大逆終盤に差し掛かると、アルファ・レギオン兵団は自分たちの優越性を証明するため、「インペリアル・フィスト」兵団が守備を固めている帝国の中枢である、帝殿への破壊工作を開始した。
周到な準備の末、帝殿に入り込んだ工作員は〈栄誉の殿堂〉(インベスティアリ)に到達した。そこは大征戦で武勲をあげた英雄たちの壮大な彫像が立ち並ぶ広間であり、中にはひときわ大きく総主長たちの彫像も立っていた。しかし、反逆した九人の総主長の彫像はまだ破壊されておらず、幕がかけられていた。
アルファ・レギオン兵団工作員はそこにあった彫像のほとんどを破壊したがただ二つ、「アルファリウス」と「ローガル・ドルン」のものは残っていた。
このアルファリウスの挑戦を知ったドルンは激怒し、必ず自分がアルファ・レギオンを討ち取ると誓ったのである。
潜入工作員たちが各地で破壊を行う一方、アルファリウス率いる兵団の本隊は大逆軍の地球攻撃先遣隊として太陽系に侵入した。
彼らは厳重な防衛網をかいくぐるべく、艦艇のあらゆる機関を停止して、慣性のみで航行させた。彼らの目標は、太陽系の早期警戒基地である冥王星であった。
太陽系内各地で発生するテロ活動にドルンの注意が散漫している隙に、アルファ・レギオン艦隊は冥王星とその周囲を回る衛星群に奇襲を開始する。ここを守備する「インペリアル・フィスト」兵団の「シギスムンド」隊長は30隻の艦艇を所持してしたが、200隻もの敵艦隊に対して戦わなければいけないのだった。猛烈な砲撃を受ける中、圧倒的な軍勢に対してもインペリアルフィスト兵団員たちは決して撤退することなく戦い続けた。
このとき、ローガル・ドルン直属の精鋭のひとり「アルカムス」は、敵の本当の目的をアストロパス(精神感応官)通信基地が設けられている要塞衛星ヒドラの破壊であることに気付いたが、すでにアルファリウス本人が率いる襲撃部隊がヒドラ破壊のため降下を果たしていた。
これを迎え撃つアルカムスらは総主長と敵精鋭の前に打ち倒され、瀕死の重傷を負ってしまう。全てはアルファリウスの思惑通りになっていた。しかし、突如としてインペリアル・フィスト兵団最大の機動要塞「ファランクス」が大艦隊を引き連れて出現した。率いているのは総主長ローガル・ドルン本人であった。太陽の重力井戸を綿密に計算したインペリアル・フィスト艦隊は、スリングショットを利用した航法によって猛烈なスピードで戦場に到着したのだ。
ドルンは自ら親衛隊を率いて敵将アルファリウスがいる部屋にテレポートすると、すぐさま凄絶な死闘が二人の総主長の間で始まった。
アルファリウスは隙を見てドルンを槍で突き殺そうとしたが、ドルンはわざと突きを肩に受けて敵の動きを止めると、巨大なチェーンソード〈嵐の牙〉(ストームズ・ティース)でアルファリウスの両手首を絶って返す刀で首を粉砕した。
アルファリウスは戦死してしまい、総大将を失ったアルファ・レギオン艦隊は冥王星から撤退した。しかし、アルファリウスはこの後も戦場に現れ続けたが、それは双子の弟オメゴンが兄に成り代わった姿だといわれている。
様々な破壊工作等を行ってきたが、しかし、彼らの努力は無駄となりホルスは敗北して人類の存続が決まってしまった。〈謀議団〉の予知は正しかったのか? それとも間違っていたのか? あるいは渾沌の手先なのか? 真実は今でも明かされていない。
【アルファリウスの最期?】
ホルスの大逆終結後、アルファ・レギオン兵団は他の大逆兵団のように〈恐怖の眼〉に撤退せず、かわりに彼らは銀河東部へと去っていった。そして、それが主目的だったのかどうかは不明だが、「ウルトラマール」領域の「ウルトラマリーン」兵団との戦闘を開始した。
ロブート・グィリマンとアルファリウスが最後に会ったのは惑星「エスクラドア」でのことであり、アルファリウスは〈戦いの聖典〉に沿った戦術をとると考えていた。しかし、総主長率いる分遣隊が兵団本営を急襲してきたことに驚くと同時に喜んだともいわれている。
彼の柔軟かつ重層的で予測の不能な軍事戦術が、精密で正攻法なウルトラマリーンの戦術よりも優れていることを証明する機会だと思ったのである。
二人の総主長は戦場でまみえて戦い、アルファリウスは討ち取られた。総大将を討ち取ったことで敵兵団が撤退すると考えたウルトラマリーンたちは驚愕した。なんと、アルファ・レギオンの残存部隊が次の日に反撃を行ったからである。
ウルトラマリーン分遣隊は無惨に打ち破られて惑星から撤退した。総主長を失いながらも果敢に戦い続けたアルファ・レギオン兵団の様子から、アルファリウスの死は偽装されていたのではないかと言われている。
【アルファレギオンの現状】
その後、アルファ・レギオン兵団は銀河のあちこちを数多くの戦群に分かれて行動している。それぞれの戦群は独自に訓練され、あるときは小惑星帯に、あるときは古艦廃墟(スペースハルク)に、あるときは無人の惑星に隠れながら、兵団の大義のために隠密活動しているといわれている。
このため、アルファレギオン兵団はおそらくは渾沌の変異に屈していない唯一の大逆兵団となっている。彼らはもしかすると、人類の皇帝への忠誠を秘密裏に守り続けている証なのかもしれない。
アルファ・レギオン兵団が帝国を脅かす戦略として知られているのが、渾沌教団の布教である。秘密裏に教団を惑星内に潜伏させ、やがて信者に武装蜂起させるのである。そうして社会を混乱させた後、兵団の本隊がやってきて惑星の政府にとどめを刺すのである。
この悪名高い戦術のため、アルファ・レギオン兵団は「異端審問庁」から特に危険視され、絶え間なく追討を受けている。
帝国政府はこの1万年の間に、3度もアルファ・レギオン殲滅をおおやけに宣言したが、そのたびに〈多頭蛇〉たちはその異名のごとく彼蘇ってきた。確たる本拠地も持たずに何度も討伐を受けている彼らの数が一向に減らない理由を、帝国の研究者たちはアルファ・レギオンが”独自に遺伝種子の蓄えを持っている”のではないかと推測している。
こうして、アルファリウスとオメゴン、そしてその仔らは謎に包まれた目的を果たすために、銀河中で暗躍を続けているのである。
アルファ・レギオンや〈謀議団〉についての真相は今でも闇に包まれており、いつかそれらが明かされる日が来るのかもしれない。
追記・修正は〈大逆兵団〉(トレイター・レギオン)の方でお願いします。
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- アルファリウス(オメゴン)も設定が公開されたし、いよいよ終わりが近いのだなーって気になってる -- 名無しさん (2021-03-06 19:19:01)
- 皇帝がファーストコンタクトをミスると大逆派になるのね。暗黒の時代になっても第一印象って大事 -- 名無しさん (2021-05-31 01:03:01)
- というか最近だとわざとやったんじゃねって設定になってる<ファーストコンタクト 皇帝は宇宙征服後プライマークを相打ちにして処理するつもりだったのではみたいなかんじで -- 名無しさん (2021-07-10 00:22:17)
- 話や展開の都合故に…と一蹴しても構わんが、パーチュラーボとアングロンへの対応は悪手でしかなかったなあとしか。自らの価値と意味を否定されて真っ当にいられたら最早超人ではなく狂人 -- 名無しさん (2021-10-21 22:13:49)
- 大逆派の総首長達、何か総魔長になってから仕事しなくなった(自分の兵団を率いなくなった)人多くないすかね…?あとアングロン、総魔長になったはいいがカーンの方がコーンのお気に入りだと聞くが… -- 名無しさん (2021-10-27 23:52:13)
- 自分から下った連中はグレート・ゲームのほうがおもしろくなっちゃうらしいからね… アングロンはともかくパーチュラーボはライターごとに人格が違いすぎるらしくてなんともいいがたい… -- 名無しさん (2021-11-07 16:49:41)
- カーズは悲しい奴だよなぁ -- 名無しさん (2023-01-21 17:03:17)
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