登録日:2019/10/02 (水) 21:25:04
更新日:2024/05/09 Thu 13:53:30NEW!
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dcコミックス バットマン ミスター・フリーズ 哀しき悪役 クローン 改心できなかった バットマン・ザ・フューチャー 愛妻家の末路
「冷たい…」
「窓ガラスが、冷たい…!」
『ミスター・フリーズの真実』(原題:Meltdown)とは、アニメ『バットマン・ザ・フューチャー』の第七話。ブルース・ウェインが80歳となった未来を舞台に、バットマンヴィランズの一人、ミスター・フリーズの復活とその最期を描いたエピソード。
■あらすじ
いろいろあって放射能人間ブライトとなってしまったデレク・パワーズ。プラスチック製の人工皮膚をまとって発光する骸骨ともいうべき姿を隠し、ウェイン・パワーズ・エンタープライズ社のCEOにして社長という表の顔を保ってきたが、それも限界が近づいてきていた。
何故ならパワーズがまとう人工皮膚は、ふとしたきっかけで簡単にヒビが入ったり、剥がれたりしてしまうのだ。
その日も、パワーズから廃棄された人工皮膚を不法投棄していた部下たちが、バットマンに制裁されたという報せがバットマン本人から入り、怒りで目の下の人工皮膚にヒビが入ってしまった。
正常な体に戻りたい。そう望むパワーズに、社に所属する女性科学者の一人であるステファニー・レイク博士がある提案をする。
それは、『クローンで新しい体を作って、そこに記憶と人格を移す』というもの。しかし理論上は可能でも、まだ実験を行っていなかった。それを聞いたパワーズはすぐに実験を行うよう指示する。それに対してステファニーは、「ちょうどいい実験台がいます」と答えた。
ところかわって、とある施設。ステファニーが訪れたその場所には、かつてブルースと戦ったヴィランの一人、ミスター・フリーズがいた。彼はその特殊体質により、頭部だけで50年以上生き続けていたのである。
生きている「だけ」の日々に気力を失っていたフリーズに、ステファニーは「あなたに体が無いなんてもったいない」と言い、パワーズに告げたのと同様の方法をフリーズに提案する。
最初は疑うような反応を示したフリーズだったが、これを承諾。
「少しのあいだ、痛みを感じるかもしれない」
「うわああああああ!」
実験は成功し、フリーズは新たな肉体を得る。そして冬の外気によって冷えた窓ガラスに触れ、それを冷たいと感じる体があることを歓喜した。
一方、パワーズがフリーズを復活させたことを報道したことで事態を把握したブルースは、「パワーズもフリーズも信用できない」からと、テリーにフリーズを監視するよう指示。
テリーは従うも、かつて犯罪で入手した金*1を被害者とその遺族の補償にあてようとする男はヴィクター・フライスという善人にしか見えなかった。
しかし、フライスの体に異変が起こる。冬だというのに大量の汗をかき、倒れてしまったのだ。頭部の特殊体質が新たな肉体をも変異させ、再び超低温下でしか生きられなくなっていたのである。
フライスを研究所に回収したステファニーはことの次第をパワーズに報告すると、彼を貴重なサンプルとして生きた臓器を摘出しようと試みる。
隔離された部屋の気温を急激に上げてフリーズを気絶させ生体臓器を摘出しようとする彼女に裏切られたことを悟ったフライスは激怒し、なんとか研究所から脱出。何処かに保存していた冷凍スーツを着用しヴィラン『ミスター・フリーズ』としての完全復活を果たす。
そして研究所に戻ったフリーズは復讐を開始。まずパワーズを人工皮膚ごと氷付けにし、次にステファニーを凍結させて殺害する。
「私は貴方を助けようとして…」
「いいか、少しのあいだ痛みを感じるかもしれないぞ」
「アアアアアアアッ!」
更に研究所の爆破を始め、止めに現れたバットマン=テリーと対峙。
「ここを爆破すれば研究所全体が消し飛ぶ。出口を探したほうが良い」
「フリーズ、考え直せ。これがあんたの望みか」
「こんな事をしても、心の傷や痛みが増すだけだ」
「…いいや、それも終わる。ここを爆破し、この俺も消える!」
その言葉と共にバットマンに冷凍光線を照射。やはり経験と地力の差は如何ともしがたく、あっさりバットマンを凍結させてしまう。
しかし、ブライトの姿を曝したパワーズの不意打ちで放射能による攻撃を食らい、スーツを破壊されて致命傷を負う。
「お前は誰だ、電球野郎!」
「俺はブライトだ!」
どうにか氷を破ったバットマンはブライトと交戦するが、人間の形をしたゴジラともいうべき彼に大苦戦。
近づかないよう距離を取ってバッタランのワイヤーで動きを封じようとするも、逆にワイヤーごと振り回された挙句にワイヤーを伝う放射線で大ダメージを受ける羽目に。
「そのくらいじゃせいぜい日焼け程度だろう。しっかりと焼いてやるからな!」
窮地に陥ったその時、何とか立ち上がったフリーズが最大出力の冷凍光線でブライトを研究所の外の湖まで吹き飛ばす。これによって一応の決着となった。この後、湖までブライトを回収しに来た部下が一人八つ当たりでクビにされた。
しかし戦闘の余波で研究所は崩壊寸前であり、バットマンはフリーズを助けようとする。しかし、
「フリーズ、ここも危ないぞ!早くここを離れるんだ!」
「優しいな…気遣ってくれるのはお前だけだ…」
愛する妻はとうに先立ち、信じていた者には裏切られ、普通の人間に戻るという望みすらも絶たれた。最早自分の居場所はどこにもないことを悟ったフリーズはこれを拒否。
自分とバットマンとの間に巨大な氷の壁を張り、一人で逃げるよう促す。バットマンは渋々これに従い、フリーズの姿は爆炎と瓦礫の中に消えていった。
バットケイブに戻ったテリーはブルースと言葉を交わす。
「やっぱりフリーズのことはあんたの言う通りだったみたいだ」
「お前も間違ってたわけではない」
最期の瞬間、彼は一人の人間ヴィクター・フライスに戻っていたのか、それとも昔と変わらぬ冷凍人間ミスター・フリーズだったのだろうか……?。
■主な登場人物
老いてなお正義感は健在な初代バットマン。直接対面こそしなかったものの、まさかの復活を果たしたフリーズに対して厳しい姿勢を取る。
しかしフリーズの末路に関しては何か思うところがあったのか、最後に見せた姿はどこか寂しげであった。
- テリー・マクギニス/バットマン
二代目バットマン。ブルースからフリーズを監視するよう指示されるが、彼の全盛期を知らないこともあり、復活し善人として振る舞うフリーズの姿を「演技とは思えない」と語る。
今回はフリーズとその周辺に焦点があてられているためか、活躍は大人しめ。
- デレク・パワーズ/ブライト
テリーの父を死に追いやり、彼がバットマンになるきっかけを作った男。
第2話ラストで毒ガス治療のために大量の放射線を浴びた結果放射能人間になり、今回その力を披露してブライト(Blight)を名乗る。
アニメ作品限定、かつ単純な戦闘能力ならバットマン史上最強クラスのヴィラン。ジョーカー? あれは最狂もしくは最凶なので除外。
その姿をテリーから「電球野郎」と言われる一幕も。
- ステファニー・レイク
フリーズのことを実験台としか見ていない本性を隠し、優しい言葉を投げ掛けることで彼を体よく利用しようとした、ある意味では本エピソード最大のヴィラン。
パワーズの父親ウォーレンに頭部を回収されそこでステファニーと知り合う。
皮肉なことにフリーズを復活させた際の台詞を彼から返され凍死した。
- 老人
サブゼロにて北極でフリーズがフリーズガンで凍死させた探検隊の女性の夫。
復活したフリーズに復讐しようとするも、バットマンに妨害され、その後フリーズから精一杯の謝罪の言葉を送られたことで改心する。
- ヴィクター・フライス/ミスター・フリーズ
今回のゲスト兼メインヴィラン。
冷凍という現象に強い興味を持つ危うい面こそあったものの元は善人。しかし事故によって超低温下の環境でしか生きられなくなり、悪行は全て愛する妻ノーラを難病から救うため……という単純な「悪」とは言い切れない背景が広く受け入れられ、人気を博したヴィラン。本作の前に放送されていた『The New Batman Adventures』(日本未放送)では、冷凍爆弾の暴発の末首なしの身体だけが発見されていた。
そんな彼に訪れた未来は、愛する妻は去り、不老なのは頭部だけ。信じていた者に裏切られ、気遣ってくれるのはかつての宿敵バットマンのみという、残酷なものであった。
サブゼロでの大虐殺のせいで同情の余地なんかないが、今回に限って言えばフリーズの命を弄んだパワーズとステファニーの自業自得であり、彼にはほとんど非が無いので「同情するな」という方が難しいだろう。
本編では上記の遺族との件に加え、冷凍スーツを着用してからも身動きを取れなくしたバットマンに対し「(爆発に巻き込んでしまうから)来ない方が良かった」と告げるなど、確かな良心が垣間見える。*2
また、今日まで生き延びてきた自分の存在意義について疑問を口にしており、全てに絶望した彼は研究所の爆発と共に死ぬつもりだった…。
■余談
- なぜフリーズが銀行に預けた金が30年間も無事だったのかは不明。ゴッサムシティの外側かつ複数の銀行にわけて預けていたのだろうか?
- 日本語吹き替え版では、この回のみブライトが一人称に「俺」を使っている。これは吹き替えを担当した沢木郁也氏のアドリブである。
- 今回フリーズが着用した冷凍スーツは以前以上に鈍重そうな印象を与えるものの、冷凍光線銃が必要なく、両手の部分からそのまま冷凍光線を発射する。地表を凍らせ、その上をアイススケートのように滑走移動する事でスピードを補っている。また腕を地面に叩き付ける事で地面からいきなり氷壁を作り出したりと、かなり精密な氷操作が可能になっている模様。
- フリーズがかつて使用していた冷凍光線銃はバットケイブに保管されており、第3話で液体人間のインク(Inque)を捕らえるために使用された。旧フリーズの張りぼても置いてあり、こちらは『蘇ったジョーカー』でバッタランの的に使われている。
- 吹き替え元の『Batman Beyond』では本エピソードは第5話であり、旧作ヴィラン本人が初めてゲストとして登場した。『~ザ・フューチャー』では入れ替えによりベインの方が先となっている。
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▷ コメント欄
- アニメイテッドシリーズのフリーズの最期ってこんなだったのか…なんかバットマンヴィランってやりきれない最期迎える人たちが多い気がする -- 名無しさん (2019-10-03 01:05:02)
- ブライト、アニメヴィラン最強説あったんだ・・・。 -- 名無しさん (2019-10-03 09:19:53)
- ↑そりゃ歩く放射性物質だからな、 -- 名無しさん (2019-10-03 11:31:18)
- ザ・フューチャーでは数少ない国内で映像ソフト化されてるエピソードの一つだよね。多分フリーズは研究所を死に場所にするつもりだったんじゃないかなぁ。テリーとの交戦時に「ここを破壊して俺も消える」とか言ってたし -- 名無しさん (2019-10-03 21:34:28)
- ↑×2 言われてみればそうだけど、ブライトが直接暴れたのって、この回とシーズン1ラストだけで、後は刺客雇うだけだから、実感がわきにくい・・・ -- 名無しさん (2019-10-04 09:17:12)
- こんな悲運のキャラクターをシュワちゃんでコメディにした奴が居るんですよ -- 名無しさん (2019-10-05 19:18:58)
- フリーズを暗殺しようとした老人の妻はサブゼロで潜水艦に乗ってた女性探検隊 -- 名無しさん (2019-10-06 00:44:36)
- フリーズ以外だとべインの末路も中々ショッキング -- 名無しさん (2020-12-18 19:01:54)
- ベインはすっかり廃人になってて麻薬の元として使うために生かされ続けてたんだっけ? -- 名無しさん (2021-12-01 23:46:20)
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*2 身動きを取れなくしたといっても凍らせたのは体だけで頭部は無事だったため、死なせる気があったのか疑わしい。
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