マヒシャ(インド神話)

ページ名:マヒシャ_インド神話_

登録日:2019/03/17 Sun 02:41:49
更新日:2024/04/04 Thu 11:14:09NEW!
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アニヲタ悪魔シリーズ インド神話 水牛 大威徳明王 仏教 ドゥルガー カーリー 魔王 阿修羅 アスラ ブラフマー被害者の会



■マヒシャ

『マヒシャ(Mahisa)』或いは『マヒシャースラ(Mahiṣāsura)』は、インド神話に登場してくる強大なアスラの一人で、インド神話を代表する魔王の一つ。


マヒシャースラとはマヒシャ(水牛)アスラ(悪魔)という意味である。


父は女神ダヌの子孫である、ダーナヴァ族に生まれた強大なアスラのラムバー(Rambha)で、その水牛から生まれたとされる父が、更に水牛と交わることで生まれた子とされる。


実に、血の半分以上が水牛という魔王であることから、戦いを描いた図像ではミノタウロスの如き人身獣面の姿でも描かれていたり、人型から水牛形態に変身可能とも扱われたりしている。



【神話】

インドでも人気の高いドゥルガー女神の誕生譚と語られる『ディーヴィー・マハートミー』のエピソードの一つに登場してくる水牛の魔王。


苦行好きの真面目な性格でブラフマーに懸命に祈った結果、
創造神に声が届き、どんな男(神含む)にも負けないという圧倒的なアドバンテージを誇る祝福(改造コード)を受けることになった。


尚、神話で語られるブラフマー関連の祝福がやけに強大なのは、受ける側のアスラが異常に厳しい苦行を行ってポイントを貯めているのもあるが、何よりも当のブラフマーを信仰している者の比率が少なく、結果的に顧客を離さないためにポイント還元サービスがよくなってるからだと分析されている。


案の定、父のラムバーにインドラに殺されたとする説話も残っているからか、無敵になったマヒシャも、配下を率いると天と大地に進軍して神々に挑戦を開始。


水牛軍団は勝利を重ね、神々の王インドラも打ち倒すと天界から他の神々ごと追放してしまった。


こうなると、次に老舗に代わってベンチャー企業代表のシヴァヴィシュヌにお鉢が回るのがお馴染みのパターン……なのだが、今回に限ってはマヒシャに男に負けないという、シンプルながら強力なチートが掛かっている為に古くも新しくも男共には手が出せない。


そこで、神々は知恵を搾った結果それまではエロいこと担当で男に従う女神達の慣例を破り、喧嘩上等で男に従わない女神を誕生させることを決定。


早速、神々はシヴァを中心に自分達の光を結集してアスラ殺すべし!と願うと、最強のアスラスレイヤー戦闘女神ドゥルガーが誕生したのであった。


ドゥルガーは容姿こそ美しいが左右十本ずつの腕を持ち、額に第三の眼まで持っていた。


この、美人ながら超武闘派の女神の誕生を神々は大いに喜び、自分達の自慢の武器や装備やドゥルガーを讃える贈り物をした。


その目録は異説もあるが、主に記述されているのは

  • 三叉戟(シヴァ)
  • チャクラム(ヴィシュヌ)
  • 法螺貝(ヴァルナ)
  • 槍(アグニ)
  • 弓と矢(ヴァーユ)
  • 雷と鈴(インドラ)
  • 死の杖(ヤマ)
  • 羂索(ヴァルナ)
  • 数珠(生類の主)
  • 水瓶(ブラフマー)
  • 全ての毛穴から溢れ出る光線(スーリヤ)
  • 剣と盾(死神)
  • 衣と装飾品、乳海斧と様々な武器と鎧(ヴィシュヴァカルマン)
  • 蓮華の花輪(海)
  • ドゥンや宝石(ヒマヴァット)
  • 酒杯(クベーラ)
  • 蛇族の首飾り(ナーガ)

……等とされている。


元凶の創造神含め、天から地までの神々に新エースのシヴァとヴィシュヌから超技術の粋を集めた装備品を得たドゥルガーは大幅にパラメーターup。
中でも、ヒマラヤの神=ヒマヴァットから貰った聖獣ドゥンはドゥルガーのシンボルとなっており、彼女が原典の先住民族デカンの民に信仰されていた山の女神の頃からの従属であったとも言われている。


何れにせよ、こうしてチート破りの決戦兵器となったドゥルガーはマヒシャに挑みかかり、祝福が通じず戦力自体も戦闘神に劣らない彼女の前に、さしもの三界の支配者となっていた水牛の魔王も破れ去り、メインスポンサーのシヴァの三叉戟で止めを刺されたという。(この戦いの後、ドゥルガーはシヴァの妃=パールヴァティーの変身となっていく。)


尚、この時点での女神の名前はチュンディーであり、ドゥルガー(近づき難い者)とは、このアスラ達との戦いで勝利を重ねる中で同名のアスラを倒したことで授かった名であるとも言われている。
また、アスラでも屈指の強者であったマヒシャを倒したということで、マヒシャースラマーディニー(マヒシャを殺害した者)の名を受けたとも言われる。



【この後】

チートコード付きだったとは云え、元は自らの苦行の努力によるものだし、憎き神々を追放して配下に良い思いをさせたりといった事からもマヒシャは相当に慕われる兄貴だったらしく、この後でマヒシャへの復讐の為に魔神兄弟のシュンバニシュンバが一万一千年にも及ぶ苦行の末にシヴァの祝福を受けると、配下の軍勢を率いて神々を苦しめることになった。


前回の戦いに続いて元凶である旦那の采配でドゥルガーが派遣され、今度はアムビカーというか弱い娘に化けてヒマラヤ、もしくはガンジス川の畔で大将の嫁さんにしようと声を掛けてきた手下や、無理矢理に拐おうとしてきた軍団に正体を現し大暴れ。


…しかし、大将格のシュンバや軍団の指揮官であったラクタヴィージャ*1は手強く、特に自らの流した血から無限に分身を生み出すラクタヴィージャにはドゥルガーも窮地に陥ったが、怒りで真っ黒に染まった彼女の額から漆黒の女神カーリーが誕生してラクタヴィージャの血を吸い付くして殺害。


更にドゥルガーはマトリカスと呼ばれる戦闘女神達(ブラフマーニー、マヘーシュヴァリー、カウマーリー、ヴァイシュナヴィー、ヴァーラーヒー、インドラーニー、チャームンダー)を生み出したとされているが、彼女達はカーリー含めて化身なのか変身なのか解釈が分かれる。


…何れにせよ、無敵の魔神軍団にも綻びが生じ、これを見ていた神々も参戦。
強大な魔神兄弟もインドラや三大神の助力もあって漸く倒されたとされ、ここにマヒシャから続く因縁は一先ず完結したのであった。


この後、エピソードのMVPであるカーリーもドゥルガーに続いて人気を獲得したことからか、矢張りパールヴァティーの変身として捉えられるようになっている。



【仏教では】

  • 間接的ではあるが、神々を散々に苦しめたマヒシャはヒンドゥー打倒を願う仏教に取り入れられ、大威徳明王の属性の一つとなる。この、死の神ヤマをも殺せる仏教の守護者が乗っている青い水牛こそが魔王マヒシャであり、解脱出来ていない神々をも含む仏敵を打破する為に六道輪廻を見渡し六波羅蜜を渡り歩くのだという。

  • ライバルのドゥルガーは本名のチュンディーが准胝観音として観世音菩薩の代表的な変身=六観音の一つとなっているが、インドやチベットで誕生した後期密教や、その影響を受けた天台密教では仏母として、菩薩よりもランクが上の尊格となっている。パールヴァティーやカーリーは仏教では地位を得られていないので、観音の名前の方が目立ってしまっているが快挙である。

  • マヒシャの復讐を企んだシュンバとニシュンバ兄弟は、降三世明王の成立に関わるとされる。降三世明王はヒンドゥーの神々の頂点であるシヴァとパールヴァティー夫妻を踏みつけていることで知られる。一方、シヴァ自身も己を断罪している降三世明王=不動尊の原型となっており、痛め付けている者と痛め付けられている側を等しいものとして扱うのは汎インド的インガオホーの顕れと云える。





追記修正はいい加減にブラフマーが負けフラグと気づいてからお願いします。


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  • 何百匹、下手すりゃ千匹以上倒してたのに元ネタ初めて知った -- 名無しさん (2019-03-17 04:34:26)
  • おい、最後。まあ、どっからどう見ても残当だけどさ。 -- 名無しさん (2019-03-17 07:44:50)
  • 因みにカーリーははラクタヴィージャ戦の勝利に喜んで踊った結果世界を破壊しかけたのでシヴァがショックアブソーバーとして下敷きにされた結果カーリーはシヴァの腹の上で踊る姿で表されるようになったとか。舌を出してるのは夫を踏みつけてしまい「てへぺろ」してるからなんだそうな。 -- 名無しさん (2019-03-17 10:28:37)
  • アニヲタ的で大変解り易い記事、乙です。しかし本当にインド神話はスケールでっかいなぁ… -- 名無しさん (2019-03-18 14:08:06)

#comment

*1 マヒシャの父ラムバーの転生と言われる

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