カレチ(漫画)

ページ名:カレチ_漫画_

登録日:2018/12/19 (水) 21:15:24
更新日:2024/03/28 Thu 13:26:08NEW!
所要時間:約 10 分で読めます



タグ一覧
講談社 漫画 国鉄 車掌 人情 昭和 レトロ 鉄道 おっさんホイホイ 池田邦彦 カレチ



講談社の「モーニング」で連載されていた池田邦彦作の漫画。昭和40年代後半の国鉄でカレチに昇格した荻野を主人公とした人情物の読み切り作品。


タイトルの「カレチ」とは、主に長距離列車に乗務していた乗客への案内や対応を専門に担当する「旅客専務車掌」の事。カレチは識別のために赤色の「乗客専務」という腕章を巻いていた。
長距離列車にはドアの開閉など運転に係ることを専門に担当する運転車掌、運転車掌と旅客専務車掌を束ねるチーフが乗っていた。
近距離の列車には運転関係と乗客対応を兼務する普通車掌が乗っており、普通車掌として経験を積むとカレチへ昇進することが出来るという体制が出来ていた。
また乗客を乗せず、荷物だけを運搬する荷物列車にも荷物扱い専門の車掌が乗っており、こちらは「ニレチ」と呼ばれた。


単行本1巻から3巻までは1話完結型でカレチあるあるな話を描いたものが多かったが、4巻から最終巻の5巻にかけて国鉄民営化が絡む暗部にも関わるエピソードが連続形式で描かれている。


単行本の第1巻には第54回ちばてつや賞で大賞を受賞した読み切り漫画「RAIL GIRL~三河の花~」も収録されている。こちらは飯田線の架空の駅「三河花咲駅」を舞台とした短編。


登場人物

レギュラー

荻野憲二
本作の主人公で大阪車掌区所属の新米カレチ。仕事ぶりは真面目で、乗客の主張を素直に信じる良い車掌だが、乗客への対応を優先しすぎるあまり

  • 乗務している列車で欠乗する。そして代理を非番で乗っていた堀之内に依頼
  • 乗客から取りこぼした青函連絡船の運賃500円を肩代わりし、更に電報を書き間違えたことにして返金
  • 積み込みが間に合わなかった新聞の朝刊を積むために踏切に列車を止めさせる
  • ローカル線への乗り継ぎ客の人数を水増し(結果として間違ってはいなかったのだが)
  • 停車中の別の列車に忍び込む

など、規則違反で解雇ギリギリの行為を行っていた。ただ勤務年数が積み重なってくるとこういった行為を行わなくなった。
研修中に乗務していた貨物列車で発生した車両火災(ボヤ)を立ち小便で消火、車内で急病人が発生した時には病院に近い通過駅に車掌弁を引いて非常ブレーキをかけて停車させるなど機転が利く。
女心に疎く、恋愛とはほぼ無縁で、寝台車の解体・組み立てを担当する協力会社の女性社員から好意を寄せられ、手作り弁当を渡されたこともあったが連絡先も名前も聞かず、チーフから呆れられていた。後にその女性とは結婚している。
カレチ昇進前のあだ名はミスター・マイペース。これは発車寸前に乗り遅れそうな乗客を見つけると、列車が遅れるのも承知でドアを閉めるのをわざと遅らせていた事から。
国鉄末期に助役補佐に昇進。リストラを推し進める側となり、民営化直前に国鉄を離れた。


安斉正之
大阪車掌区所属のチーフ。メガネを掛けた初老の男性で、班が同じなのか荻野と一緒の列車に乗務することが多い。
世話好きな性格で、これまで多くの後輩車掌の恋の成就を手伝っていた「恋のキューピッド」(自称)。趣味は船に乗ってする沖合での魚釣り。
仕事ぶりは真面目で、不正乗車や規則に反した運賃徴収は許さない。
国鉄改革の流れで車掌職を追われて心を病み、踏切に取り残されていた子供を助けようとして遮断機の降りた踏切に入り、接近してきた列車にはねられ、この世を去る。


栗原純
大阪車掌区所属のカレチで、荻野の後輩。仕事ぶりは荻野同様真面目で、乗務前の準備はぬかり無く行う。
大学時代は空手部に所属し、主将を務めていた事もある。空手三段の持ち主であり、不審者対応訓練では不審者役の職員を怯ませたこともある。実践はされなかったが。
先輩の荻野と異なり、国鉄解体後のJRグループで引き続き勤務している。


堀之内
昭和29年に国鉄に入社した大阪車掌区所属の特発車掌。特発車掌とは急病・身内の不幸・欠乗などで急に乗務できなくなった車掌の代わりに乗務するピンチヒッター。そういったことがない場合は車掌区で助役など上役の補佐役。陰ではミスターコバンザメと呼ばれている。
初登場は安斉チーフがぎっくり腰で乗務不能になったため、代理として荻野カレチと共に4013M雷鳥1号に乗務。
規則を熟知しているものの、普通車掌を3年やったことしか無く、対応は規則一辺倒。嫌味でお調子者の性格で、上役には媚びへつらい、地位が下の荻野カレチ相手には偉そうな態度で接するもチンピラ風の乗客にすごまれた時には縮み上がっていた。
臨時列車に乗務した時は乗客数を適当に数え、ノリホには大雑把な数字を書いていた。
両親とは早くに死に別れ、伯母に育てられた。
乗務で西鹿児島を訪れた際、食事の用意をしておらず、街中を空腹で彷徨っている時に見つけた民家の女性の世話になり、一目惚れ。その後根回し力を発揮して何度も特発扱いで鹿児島に行き、関係を深めるが特発を何度も発生させたことが助役に悪印象を与えてしまう。
その女性とは国鉄を退職する前に結婚し、退職後は夫婦で喫茶店「軽食喫茶カレチ」を営んでいる。


準レギュラーの国鉄職員・OB

村上
荻野と同じ中学校出身の後輩鉄道員。旅客列車の車掌登用を目指し、荷物列車の乗務員として勤務。軽い性格で、カレチへの昇格に憧れるあまり荷物列車の仕事を軽んじており、荷物の誤配を起こしかける。誤配未遂は西村京太郎サスペンスのような乗り継ぎと荻野の協力もあって切り抜けることができ、この失敗をきっかけにニレチを目指す。
荷物列車の縮小によってニレチへの道が閉ざされかけても尚ニレチになることを諦めきれなかったが、田村ニレチの後押しもあってニレチから普通車掌へ転身。最後は新幹線カレチにまで上り詰めた。


田村
村上と同じ列車によく乗務しているニレチ。村上の優秀さを認めつつも、少しいい加減な仕事ぶりに呆れていた。
荷物列車の縮小傾向を目にし、ニレチを目指す村上の将来を案じる。定年後は生命保険会社の外交員に転職した。


新堂
車掌補。車掌補とは運行中の寝台のセット・解体を担当する給仕係の事。
口下手で乗客への対応はあまりしたがらないが、鉄道の知識とそれに基づく発想力が豊富。食堂車が連結されていたものの営業休止中で食堂車での食事が出来ず落ち込んでいた老夫婦のために先行列車の食堂車従業員に乗ってもらい、老夫婦一組のためだけに特別営業を実施するよう取り計らった。
車掌補職の廃止後は姫路駅の駅務係に配転。勤務中発生した臨時列車の車両故障では駅の配線や到着列車、車両の動力性能など持ち前の自身の知識を活かして見事対応した。


武藤
金沢運転所所属の運転手。生真面目で無愛想だが、運転技能は非常に高いプロ中のプロ。表彰レベルの無事故連続記録の持ち主でもある。


中島達夫
宮原機関区所属の機関士。妻がいたが、他界しており現在は独り暮らし。
「生涯一機関士」をモットーに、優秀な機関士がなることを許される指導機関士への昇進話を断り、わざと列車を遅らせて昇進話を無かった事にしようとも考えた。
たまたま同じ列車に乗務した荻野に説得されて考えを改め、指導機関士へ昇進した。


林田
東広島駅(新幹線の駅ではなく、山陽本線の貨物駅)に勤務する連結手。仕事ぶりは優秀だが、「金のため」と割り切っており、事前に決められた勤務シフト通りの勤務しかしない。
クラシック音楽鑑賞が趣味で、所定勤務終了後に荻野が乗務している夜行列車で東京で開催されるクラシックコンサート観覧に向かおうとする。しかし先行の貨物列車がセノハチで立ち往生、更に運が悪いことに補助機関車の自動解放装置が故障し、手動で切り離す事となるが人手が足りない。
召集がかかっても応じなかったが、荻野の説得で考えを改め作業への協力を承諾し、後日荻野へクラシックのレコードをプレゼントした。国鉄末期に東広島駅から武蔵野操車場へ転勤。煩わしい人間関係とは無縁の職場で貨車の自動仕分け作業の監視業務に就く。
その後国鉄を退職し、トラックドライバーとなった。



ゲストの国鉄職員・OB

赤石
新米車掌補で新堂より年上だが、車掌補としては後輩。
国鉄には志免炭鉱の炭鉱夫として入社したが、炭鉱の縮小により車掌補へと転身。乗務した寝台列車の全部の手動ドアを外からロックしてしまい、欠乗の危機に陥るも車掌室の窓から飛び乗って回避。終戦直後の買い出しで鍛えられたとのこと。
車掌補としての仕事ぶりは真面目で、遥かに年下の新堂車掌補にも敬語で接する。乗務の合間に炭鉱の落盤事故のニュースを知り、車掌補から炭鉱夫に戻った。


田所
定年退職した元国鉄職員で、見習い時代の荻野の指導員。戦時中に米軍機から機銃掃射を受けるも乗務していた車掌車の車軸に隠れて難を逃れ、その車両が廃車になる時には工場までの回送に添乗した。


美川駅駅長
北陸本線美川駅の駅長。車両故障で臨時停車した雷鳥6号の乗客のうち、駅の外に出ることを希望した乗客の切符を改める。この行動が1人の乗客の行方を掴む手がかりに。


新大阪駅のマルス掛
荻野カレチから特急彗星1号の空席照会を依頼された職員。調整寝台も全部満席の彗星1号でどうしても寝台を必要とする老婆の乗客のためにキャンセルが出ないか探し続け、キャンセルの出た7号車3番下段を融通した。


関金駅駅長
本名不明。あだ名はシンちゃん。大阪からの臨時直通急行の運行が決まったという連絡が入った時には驚いていた。


芝崎
鳥取車掌区所属のカレチ。倉吉線関金駅駅長の親戚。廃止寸前の倉吉線と地元の行く末を不安視し、大阪からの臨時列車が運転された時にはノリホの数字を水増ししようとまでした。


青森駅桟橋長
本名不明。桟橋長になる前は青函連絡船津軽丸のパーサーで、当時経験したある出来事から「責任」という言葉を軽々しく使わないようにしている。海務部次長への昇進が決まっている。


師岡
新潟電力区に勤務する電力工手。電気関係の点検・修理などが仕事で、電気を通さない竹梯子を愛用している。
風に煽られて梯子から転落し腰を骨折、竹梯子が折れて架線に宙ぶらりんになった末に転落して右足を骨折するなど一歩間違えば死亡する所を何度も切り抜けたが、最期は落雷に打たれて絶命。
心臓の弱い妻に先立たたれ、息子を男手1人で育て上げた。その息子も国鉄に就職し、新潟鉄道管理局で次長をしている。母親が早逝したのは父親が危ない仕事に就いており、母を過剰に心配させたからだと思っている。


益岡達朗
本社採用の荻野の後輩。米子鉄道管理局に配属され、現場研修として山陰本線御来屋駅の助役代行となる。駅長の権藤から度々鉄拳指導を受け、反発心を抱くも不適切にも思える信号雷管の取り扱いなど数々の行動の真意を権藤の死後に知ることとなる。
研修終了後も本社へは戻らず現場勤務を希望した。


宮地崇
荻野が普通車掌だった頃に同じ乗務区に勤務し、103系投入後の謎のオーバーランに悩まされた1人。謎のオーバーランの原因判明後、国鉄はやがて滅ぶと考え、周囲の目もくれず出世レースに身を投じ、2012年には京南鉄道の副社長にまで上り詰めている。


大橋武夫
姫路駅の主席助役。早期退職者を探すよう駅長から指示を受け、勝手な行動を取る新堂を応募させようとしたが、新堂の持つ発想力を目にして早期退職に応募するよう促すのをやめ、自身が早期退職に応募した。しかし、そこで駅長の本心を知り、自らの行動を恥じた。


姫路駅長
本名不明。主席助役の大橋に早期退職者を探すよう指示を出すが、本心では「この駅に勤務する誰もを辞めさせたくない」と考えていた。


京極
金沢運転所に勤務する整備士。武藤が認めるほど高い整備の腕前の持ち主で、彼の高い定時運行率は京極の整備があってこそ。
しかし新たに赴任してきた所長が「安全に動けばいい」という方針を立て、今までのような完璧な整備ができなくなってしまう。武藤を引き連れて別の鉄道会社への転職を決意するも、武藤はこれを固辞。
代わりに武藤の乗務行路を調べ、金沢から別の車両基地へ転属する車両の回送を武藤が担当する事を知ると、この車両を完璧に整備。武藤を落とそうとしたがそれでも武藤は国鉄を離れなかった。
結局1人で別の鉄道会社に転職し、エピローグでは北陸鉄道がモデルと思われる地方私鉄に勤務している様子が描かれた。


篠田
無愛想だが腕は確かな検査掛。荻野・栗原が乗務する特急白鳥の冷水機が故障したために車両基地から呼ばれ、走行中に修理を実施。大阪近郊から敦賀到着までに修理と磨き上げを行った。
カラ出張に対して否定的な立場を取り、これまでに受け取ったカラ出張分の手当に一切手を付けていなかった。


向田
元国鉄職員。戦争中口減らしも同然の理由で国鉄に入れられ、逃げ出すことばかり考えていたものの先輩機関士の佐野の神業(急勾配で立ち往生した蒸気機関車牽引貨物列車の再発車。すごく難しい)を目にしたことで鉄道の道を極めることに決める。
佐野から神業を教わろうとしたものの、佐野に召集令状が来ており教わることは叶わず、同期の木下を焚きつけて神業を盗み取った。
後に18歳で機関士を拝命。初乗務の日に神業を実行しようとしたものの、乗務した機関車のボイラーが爆発。以後鉄道の仕事を離れて従軍し、戦後は鉄道とは無縁の仕事に就いていた。


乗客など

山本宣夫
京阪神南紀鉄道の運輸部長。見た目はこの人みたいな強面。部下を引き連れて社員旅行中、荻野カレチが弥彦線への乗り換え客を水増ししたことに気づき、自分たちも乗り換えると申し出。国鉄を解雇されたら来いと荻野に言い残して弥彦線の列車に乗り込んだ。


真澄
名字不明。大阪から郷里の尾幌へと帰るために特急白鳥号に乗った女性客。


真理と兄
名字と兄の名前は不明。大阪から佐世保の母のところに向かうため、荻野が乗務する寝台特急あかつきに乗車。


老夫婦
荻野カレチと新堂車掌補が乗務する熊本行あかつき2号の乗客で、結婚して40年になる老夫婦。夫は妻に対してやや厳しい。新婚当時に特急富士の食堂車で食べたビフスチュウ(ビーフシチュー)に思い入れを持ち、あかつき2号でも食堂車での食事を楽しみにしていた。
しかしあかつき2号に食堂車は連結こそされていたが営業休止状態。新堂が先行するあかつき1号に岡山で乗り換えてもらい、広島までの間に食堂車で食事をしてもらう提案をする。だがあかつき1号の食堂車は大変な混雑でこれを辞退。悲しむ老夫婦の姿を見た新堂はあかつき1号の食堂車クルーに広島であかつき2号へ乗り換えてもらい、老夫婦のためだけに食堂車を営業させることを思いつく。この2度目の機転で老夫婦は食堂車でビーフシチューを味わうことが出来、夫の妻に対する態度も少し柔らかくなった。


カズ兄ちゃん
岩国に住む小学生。下関へ両親の都合で引っ越してしまったタケシと一緒に関門トンネルを電車で潜ろうという約束を果たすため、タケシに下関駅で鹿児島本線福間駅までの切符を買って速達で送るよう依頼。岩国では入場券で改札内に入り、下関行特急しおじに乗車。乗務していた荻野カレチに福間へ行く下り電車と間違えて上り電車に乗り、乗ってすぐ眠ってしまい飛び起きたら岩国だったと嘘をつく。
一度は荻野カレチを信じ込ませることに成功するも、安斎チーフの指摘で切符に入れられていた改札鋏の形状が予備鋏であることに気づき、不正乗車だとバレてしまう。
1号車の区分室(個室)を荻野カレチの厚意で見せてもらい「乗る人が居なくなったら列車は走れなくなる」という言葉に自らが犯した過ちに気付いて荻野カレチへ申告。申告を受けた荻野カレチはしおじに彼が乗ってきたのを「誤乗」と判断し、しおじの終点である下関から乗車駅の岩国まで無賃送還取り扱いとした。


タケシ
下関に住む小学生。元々は岩国に住んでいたが、両親の離婚で下関へと移り住む。カズ兄ちゃんと電車で関門トンネルを潜るという約束を果たすため、不正乗車の片棒を担いでしまう。


香坂忍
寝台特急日本海と青函連絡船を乗り継いで北海道に向かっていた女性客。心臓に持病があり、乗船前の医師の診察を受けるよう桟橋長から説明を受ける。


小田志織
国鉄の協力会社の女性従業員で、向日町運転所で寝台車の組み立て・解体業務を行っている。子供が車内でなくしたミニカーのおもちゃの捜索をきっかけに荻野に好意を抱き、交際を開始。結婚に至った。


西山吾郎
岡山から寝台特急明星2号に乗って熊本へ逃げようとした指名手配犯。乗車に気付いた栗原と荻野の連携プレーで御用に。


龍谷幸恵
大阪市交通局の局員で、トロリーバスの車掌。鉄道の車掌を目指していたが、当時は認められていた性別制限に引っかかり、トロリーバスの車掌となった。
なお彼女の登場するエピソードは雑誌掲載版と単行本・文庫本収録版でラストの流れが違う。


奈々子
小学4年生の女の子。父親は国鉄職員で、仕事が忙しく構ってもらえないことに不満感を抱いている。
東京駅で知恵の輪に夢中になってホームから線路へ転落。たまたま空き時間中だった荻野に保護され、上野動物園や万世橋の交通博物館へ連れて行ってもらった。


用語

  • 欠乗

運転手や車掌が乗務すべき自分の列車に乗り遅れたり、置いていかれたりすること。内部的には事故として扱われ、乗務から外される・昇給が遅れるなど厳しいペナルティが待っている。


  • ノリホ

乗車人員報告書。臨時列車や特急・急行を中心に乗車している人数を記録・報告するのに用いられる。記録した紙は指定された駅のホームに設置されているノリホ入れに入れる。今も使っている会社があるとか?


  • セノハチ

山陽本線の瀬野-八本松間の事。この区間は大阪・東京方面行の上り線に主要路線としてはきつい22.6パーミルの上り勾配が存在し、勾配に弱い貨物列車はこの区間だけ補助機関車を連結し、一部は八本松駅通過直前の走行中に補助機関車を切り離していた。流石に補助機関車の連結は危なすぎるので瀬野駅に停車して行っていた。
機関車の性能が大幅に上がった2010年代後半になっても補助機関車の連結は継続して行われており、専用の機関車も開発されている。ただし補助機関車の連結区間は広島貨物ターミナル駅から西条駅までに伸びている。これは合理化で瀬野駅の機関車庫と走行中の解放が廃止されたため。


  • パーミル

鉄道の勾配を表すのに使われる千分率の単位で、1000m進むごとに何m標高が変化するかが分かる。セノハチの場合、1000m進むごとに22.6m標高が変化する。国鉄で一番キツかったのは碓氷峠の66.7パーミル。JRで一番キツいのは飯田線の赤城-沢渡間にある40パーミル。


  • 武蔵野操車場

武蔵野線の吉川駅と三郷駅の間にあった貨物列車の操車場。全長5.2km、最大幅350mの規模は日本最大であり、コンピュータ制御によって自動化された貨車の仕分けシステムが導入された最先端の操車場だった。操車場は武蔵野線の上下線に挟み込まれるように設置され、出入りする貨物列車が通過する列車の邪魔をしないよう配慮がされていた。
開業からわずか10年で国鉄の貨物輸送形態が変わって操車場がいらなくなってしまい、廃止された。跡地は廃止後長らくそのままで、新三郷駅が開業した当初は上りと下りのホームが360mも離れていた。現在は跡地の再開発が進み、ららぽーとやコストコなどが出店している。


  • 荷物列車

小荷物や手荷物、郵便物を運ぶための列車。小荷物とは現在の宅急便で送れるような荷物、手荷物は大きめの乗客の手回り品のことで、駅の荷物扱い所に持ち込んで運賃を払うことで送ることが出来、小荷物の受け取りは自宅か駅の窓口で行う。(ただし自宅受け取りは限られた地域のみ)
専用車両である荷物車だけで組まれた列車も運転取扱い上は旅客列車であり、市販の時刻表にダイヤが載っていた。でもお客は乗れない。
小荷物として運ばれていた物は離れて暮らす息子・娘へ送る田舎で取れた農産物や孫へのプレゼント、新聞、雑誌、現金、有価証券などで、盗まれると特にまずい現金については専用の輸送車で運んでいた。


  • 信号雷管

線路に巻きつけて使うかんしゃく玉のようなもの。車両が踏むと爆発し、走行中の列車乗務員に危険や停止信号を伝えるために用いられる。現在はあまり使われなくなっている。


  • 車掌弁

車掌が扱える非常ブレーキだけを作動させる弁。乗務員室の中に設置されており、これを引くと非常ブレーキが作動して停車する。


  • 業務連絡書

列車同士、あるいは列車と駅で連絡内容を伝える紙。
第1話の連絡書

高岡駅殿
城端線332D列車
乗換客13名あり、接(続乞う)
4001M白鳥(カレチ)

第15話の連絡書

津久見駅北方約1km地点
線路東側丘の中腹地点に建つ民家に
火災発生の模様
消防へ通報乞う
24レカレチ

という具合に書かれていた。なお括弧書きした部分は推測による補記。
現在は乗車券の誤回収、列車の大幅遅延などに伴う便宜乗車で発行されることが多い。


  • 乗り換え客の水増し

通常であれば余裕を持って接続する主要路線とローカル線の列車が、何らかの事情で遅れてしまい接続できないことがあるが、乗り換えたいごく少数の乗客によっぽどの事情がある場合は乗り換え客を水増ししていた。
例えば乗り換えたいお客が3人しかいないのに13人と業務連絡書に書き、問い詰められても「途中で間違えたのでは?」ととぼけるというもの。
バレて報告されたら「虚偽の連絡で列車のダイヤを乱した」として良くて厳重注意or減給、ちょっと悪いと降格、最悪の場合クビ。


  • 新井駅と新井駅

どちらも漢字表記は同じだが、読みは「あらい」と「にい」で、前者は新潟県の信越本線、後者は兵庫県の播但線の駅。
作中では「あらい」行の小荷物と「にい」行の小荷物を村上が間違えてしまい、一騒動を招くことに。


  • マルス

国鉄→JRが使用している空席管理システム。コンピュータで全国の指定席を連結する列車の空席を管理し、駅や旅行会社に設置された端末で照会をかけて指定席券を発券する事ができる。
現在は自動券売機の中にマルスと接続された物があり、窓口に並ぶこと無く指定席の予約・購入が可能。


  • 無賃送還

列車の運休や途中での運行中断など一度始めた旅行を取りやめなければならない場合、作中でもあった誤乗や寝過ごしなどの場合に運賃を改めて支払うこと無く乗車駅或いは目的駅まで戻れる制度。
列車の運休・途中での運行中断は鉄道会社に責任があるため当該列車の乗客は無条件で無賃送還の対象となるが、誤乗や寝過ごしによる無賃送還は車掌や駅員の裁量による部分が非常に強く、理由を説明した上で「これなら仕方ないな」と判断されない限り受けられない。特に終電代わりに夜行急行に乗って翌朝最初の停車駅で降りた場合は高確率で無賃送還は受けられない。


追記・修正は国鉄時代を懐かしめる方にお願いします


[#include(name=テンプレ2)]

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600)

[#include(name=テンプレ3)]


#comment

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧