登録日:2018/12/10 (月) 21:11:31
更新日:2024/03/28 Thu 12:35:36NEW!
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テレビ局 規制 テレビ 番組 シリアスな笑い bpo 放送倫理・番組向上機構
『BPO (放送倫理・番組向上機構)』は表現の自由、放送の自由を守ると同時に、人権への配慮を目的として作られた第三者機関である。
前身の組織は1969年から存在し、現在の機構はNHKと民間放送の組織が合併する形で2003年に設立されている。
どのような役目なのかわかりやすく説明すると、視聴者から寄せられた意見をもとに、
放映されている番組に人権侵害、虚偽や捏造、低俗で俗悪な表現などが存在するかしないかをチェックする機関である。
CEROのテレビ・ラジオ版と言っても間違いではない。向こうが事前にチェックするに対して、こちらは放映後の視聴者の反応を受けて対応している形となる。
放映された内容に問題があると判断された場合、BPO内で番組について審議を行い、その審議の結果、番組に勧告、見解、意見を送る形になる。
(CM等も含めたテレビから流れる映像、ラジオから流れる音声が対象であって、Amazonプライムをはじめとするインターネット番組については関与していない)
BPOの権限は放映局に対して勧告、見解、意見を送ることであって、直接的な指導をすることはできない。
勧告が最大レベルの対応とされているが、勧告に従わなくとも特に罰則規定は存在しない。
だが、BPOで番組が審議されると、必ずニュースとなって放映される為、番組および放送局のイメージ悪化は避けられない。
出資者が事態を重く見た場合、番組打ち切りの可能性も十分にありうる。
放送局の責任問題にもなりうるため、 「BPO審議入り=悪ければ死刑宣告、良くてその数歩手前」という見方もされている。
『めちゃ2イケてるッ!』中の企画「七人のしりとり侍」が打ち切られた事件によってBPO*1の存在を知ったという人も多いのではないだろうか。
この企画は出演者がリズムに合わせて3文字限定のしりとりで勝負するという企画だったのだが、
失敗した際に受ける罰ゲームが複数の人間によって棒で殴打されるという内容だったことが「いじめを助長する」
「集団で一人を暴行する映像を土曜八時のお茶の間に流すな」と苦情が多く寄せられた。
番組側も「良い子のみんなは乱暴なマネはしてはならない」「ゲームは真似してもその後の罰まではしないように。
しっぺやくすぐりくらいにするように」とテロップで注意喚起を促すなどの対応を行ったのだが、結局は企画を終了する形となった。
その後、めちゃイケの最終回で16年ぶりこの企画を復活させたのだが、
その際に出演者の一人が「このコーナーがなくなったおかげでいじめがなくなった」と皮肉なコメントを残している。
その他に有名なのは『ほこ×たて』のやらせ・捏造事件であり、こちらもBPOが「重大な放送倫理違反があった」と意見書を公開している。
一応、やらせに関しては程度によって見過ごされている部分もあり、
例を挙げるとあるバラエティ番組で祖父が子と孫にプレゼントをするために、
小遣いを渡すシーンが実際には祖父の財布から出したお金ではなく番組側が用意したお金であることが発覚した際に、
BPOは「ドキュメンタリーならともかくバラエティなので多少の誇張は許される。問題と言えるほどのものではない」と判断している。
BPOの存在理由
表現の自由を謳いながらなぜBPOが存在しているのか。
それは地上波放送には公共性が求められるためである。
そもそも電波、すなわち放送する権利と価値は本来公共のもの。
社会のライフラインとして扱われるものであり、誰もが益を受けるべきものとされる。
電波の周波数には限りがある為、多くの先進国では電波はオークションで取引され、
テレビ局が政府に使用料を払うことで放送する権利を購入している形となっている。
だが日本では配給制であり、極めて低い使用料で既存のテレビ局が地上波での放送権を独占している状況にある。
その性質上、他の会社の新規参入もほぼ不可能な状況の為、日本のテレビ局は公共事業に近い性質を持っていると言えるのだ。
(ちなみに総務省によって電波オークション制度の導入が検討されたことがあったのだが、
日本民間放送連盟は「批判を受けてはいるが、我々は公共性を担ってきた自負がある」と反対声明を出している)
「嫌なら見るな」「不満があるならチャンネルを回せ」と芸能人が発言したことが話題になったことがあるが、
公共の電波を使って放送する場を貰っている立場の人間がそれを言うことは許されない。
仮に視聴者が「嫌なら見るな」を実践して誰もテレビを視なくなる事態を想定してほしい。
それは本来誰もが使えるはずの電波の権利と価値が失われてしまうことを意味している。
また、マスコミによる人権侵害の多発は、政府や裁判所による表現規制を正当化することがある。
表現の自由で人権侵害が多発すれば、広範に表現行為を規制することがやむをえない、ということになりかねない。
いくら表現の自由があろうと、表現の自由が「危険な自由」であれば、政府が介入しないと危なくて仕方がないことになってしまう。
そんな事態を防ぐためにBPOが番組の内容、大きく言えば放送する権利の使い方を監視し、自主的に質を保つことで政府による規制は最小限でいいということを示していると言える。
「BPOの規制によってテレビ番組がつまらなくなった」という意見はよく挙がるが、
BPOは千差万別である視聴者の意見と需要を受け止めると同時に、テレビ局の「面白い番組を作る」
「視聴者に求められる番組を作る」という迷走しがちなスタンスに助言して供給をより良いものとする緩衝材として無くてはならない存在と言える。
また、前述の通り「審議入りしただけで製作側が委縮してしまい、自粛に傾倒する」という特性故に、
「クレームが入れば何でも規制してしまう迷惑な団体」といった誤解をされがちである。
無論、実際には異なる。
余程悪質だったり実害が発生している内容でもない限り、
審議入りしても「放送倫理的に問題無し」と判断を下す事例の方が、放送局等に苦言を呈する事例よりも遥かに多い。
当wikiと深い関係にあるアニメではほぼこの例である。
2018年に至っては、
「深夜アニメを子供が見ていた際に、子供に見せるべきではない流血等の残酷描写があった。規制すべき」
というクレームが多く出る風潮に対して、
「そもそも深夜アニメは子供が見ないように時間帯を選んで、大人のオタクやマニア向けに放送するのだから、子供向けでない内容だからと規制の対象とするものではない」
という真っ当な主旨の見解を示しており、「内容に問題が無ければ審議後に勧告等を出さずに許容する」という形で、
過度のクレーム過熱等を防止する役割も果たしている。
なお、インターネット番組がBPOによるチェックの対象外である理由も放送媒体が周波数に限りがある電波ではなく、
誰にでも使用可能なインターネットであるため、参入の敷居が低いことが挙げられている。
仮にネット番組で苦情が殺到するような映像を放映したとしても、その番組を見る有料会員が減っていき、
放送会社の収益が悪化して自然に打ち切られるのは目に見えている。
その番組が潰れたところで視聴者は特に困らない為、公益の損失とはならないのだ。
(勿論、名誉棄損や人権侵害に関してはBPO以外の機関が対応することになるが)
放送に携わる人間が無視できない存在であり、各所の有名人もBPOについて様々なコメントを残している。
松本人志は「規制がなかったらアカンとは思うが、サービス精神からちょっとはみ出してしまうことをなしにしてしまうと、テレビは毒にも薬にもならなくなる」
と芸人として、番組の作り手としてやはりBPOを意識しているコメントをしている。
その反動かBPOとは無関係のネット番組である『ドキュメンタル』『フリーズ』では本当にやりたい放題やっている。
ちなみに相方の浜田雅功もネット番組の『戦闘車』において、「新たな可能性なんてまだまだあるんじゃないですかね。人殺し以外なんでもできそう」と、
ネット番組には地上波には無い自由さがあるとコメントしている。
その他、ウーマンラッシュアワーの村本は『水曜日のダウンタウン』の企画で、女性レスラーによるビンタ&毒霧、
ムエタイ選手によるタイキック二発、さらに激痛足ツボマッサージという壮絶な罰ゲームを受けた際に「BPO!」と叫んでいる。
(実際にこの企画を視聴してBPOに抗議した人がいたのかは不明。ビンタやタイキックに対する苦情が公開されたことはあるが、
それは年末の特番に対してであり、この企画が放映された月にはその手の意見は公開されなかった)
視聴者意見の公開
番組に問題がないかを審議して口出しするだけでなく、BPOはホームページによって番組について視聴者からの意見を募集すると同時に匿名化して公開している。
基本的に放送局名や番組名、出演者の個人名は伏せられるのだが、ほとんど特定が容易で伏せる意味がない状態になっている。一例を挙げる。
朝の情報番組の人気俳優が出ている料理コーナーはオリーブオイルを使い過ぎている。オリーブオイルの使い過ぎは健康や家計に悪影響なのではないか。
……100人中100人がMOCO'Sキッチンを思い浮かべるであろう。かぐや消しといい勝負である。
以下、公開している意見の中で多く寄せられているものについていくつか取り上げて説明する。
※※多く寄せられ、公開される視聴者意見
〇犯罪報道に関する意見
ハロウィンで暴徒化して車をひっくり返している若者の顔にモザイクをかける必要があるのか。
交番襲撃事件で容疑者の家から交番までの距離を地図で示すのは容疑者の家族への人権侵害となるのでは。マスコミに社会的な制裁を加える権利はない。
犯罪者の家族や犯罪の被害者プライバシーを守ることも大切だが、生々しい人間関係や詳しい実態を報道しなければ事件の現実味が伝わらず、空虚な報道となる。
事件の恐ろしさを伝え、注意喚起や自己防衛を促す意味でも踏み込んだ報道をすべきではないか。
知る権利と人権問題という非常に複雑かつ繊細な問題にテレビ局も苦心している。
〇編成に関する意見
台風が接近しているのにもかかわらず、選挙の報道ばかりで災害情報が報道されない。
高校野球の延長によって娘が楽しみにしていたアニメが見られずに泣き出してしまった。
WBCの延長によってプロレスが見られなかった。
個別の番組だけでなく、編成に関しても意見が寄せられる。
最近は録画機器のシステム高度化によって中継延長による録画失敗は少なくなりつつあるが、リアルタイムで家族で視聴する場合には対応できないのだ。
〇モラルに反するとの意見
全裸になってお盆で局部を隠しながら芸をする芸人を見て唖然とした。あんなもの地上波に出すなどどうかしている。
これも誰を指摘している苦情なのかが明らかな例。
深夜アニメ番組で女性に対する性的暴行を思わせる描写があり非常に不愉快。
録画機器があれば未成年も見ることができる。青少年に悪影響を与えるのは確実だ。
アニメ番組の高校生同士のキスシーンが濃厚すぎる。
恋愛ものなのでキスシーンが不可避なのは理解できるがあそこまで長くする必要はない。
夕方の時間帯に放送されているアニメ番組で女体盛りについて触れたシーンがあり、不快になった。
アニメに関する批判はほぼ毎月公開されている。特に性描写、残虐な表現に関しての苦情が非常に多い。
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は無抵抗の捕虜を容赦なく射殺するシーンに対しての苦情、及び性描写に関する苦情の両方が寄せられている。
〇視聴者意見に対する意見
BPOは「視聴者意見への反論」という項目を設けており、意見公開も行っている。
深夜のアニメに苦情が入り過ぎている。
子どもが深夜アニメの時間帯に起きているのであれば、それは子どもを寝かさない親の責任であって、番組に責任があるのではない。
ドッキリ番組に「いじめを助長する」という意見が寄せられているが、なんでもかんでもテレビのせいにする短絡的な考えのほうが問題である。
全裸でお盆芸をする芸人が子供に悪影響を与えるという意見が公開されているが、あれを真似する子供など一人もいない。
また、決して批判やクレームばかりではなく、番組への賛辞や制作者への激励と言えるような意見が公開されることも。
派遣労働者の実態を報道する特番は鋭く問題提起をしていて、よくぞやってくれたと思う。
トラックのCMが目に留まった。底辺職、下層職と言われることが多いトラック運転手をかっこよく描いていて気に入った。
島の開拓や海の保全など、常に新しいことにチャレンジするこの番組は、精神の大切さや失敗しても屈しない心、そして人の温かさを教えてくれる。
子供向けアニメだと思って息子と一緒に気を抜いて視聴していたら、努力する姿勢、挫折の受け止め方など、すばらしい内容の作品だった。このような番組をもっと子供に見せたい。
クレームに対応し過ぎるとテレビでは何も出来なくなる。
クレームを気にし過ぎず、滅茶苦茶なことをする番組、昔のような面白い番組を望んでいる人も居る。
これらの意見は公開されるだけでなく、実際に放送局にも届けられるため、批判にせよ賛成意見にせよ、思うところがあれば気兼ねなく意見を送ろう。
そうすれば番組の質、放送の質の向上につながることだろう。
追記・修正はBPOに意見を送ってからお願いします。
とはいえ、美少女アニメに対して謎の光を消せ、湯けむりを消せ、といった意見を送るのは止めるように。今では円盤で解除しているところがほとんどなので、そっちを買おう。
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