ヒストリエ(漫画)

ページ名:ヒストリエ_漫画_

登録日:2018/11/27 Tue 20:06:10
更新日:2024/03/26 Tue 13:31:39NEW!
所要時間:約24分で読めます



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岩明均 アフタヌーン ヒストリエ 月刊アフタヌーン 歴史 漫画 ハルパゴス 「ば~~~~っかじゃねえの!?」



『ヒストリエ』とは過去に『寄生獣』や『ヘウレーカ』を手掛けた漫画家、岩明均氏による漫画作品の事。2003年から『月刊アフタヌーン』にて連載中。
「ヒストリエ」の言葉の通り古代ギリシアが舞台の歴史モノであり、マケドニアのアレクサンドロス大王に仕え、彼の死後ディアドコイ*1の一人となる「カルディアのエウメネス」の生涯を描いている。


三国志」様に日本人に馴染みがあるわけではない題材ということで、はじめはやや取っ付きにくい印象を持たれるかもしれない。
しかしこの作品は極力主人公のエウメネスの視点に絞って物語が進行する。
よって歴史モノにありがちな


「人物相関がごちゃごちゃしすぎてよくわかんない」
「視点があっちこっちに跳びすぎてよくわかんない」


といった煩わしさがほとんどない。ギリシア特有のクッソ覚えづらい固有名詞は沢山あるけど。
またエウメネス自身が体験した当時の民族・風俗の違いや価値観の多様性、それらが織り成す人間模様等を、彼の心情と言葉で一度噛み砕いた上で読者に追体験させることで、非常にスムーズに内容が伝わるようになっている。
更に作者は、史実ではほとんど謎に包まれているエウメネスの半生を、トロイの木馬で知られる英雄「オデュッセウス」の冒険奇譚に匹敵するほど波乱万丈に満ちたモノに仕立てており、常に刺激的な展開を提供している。


「馴染みやすくて、のめり込める。」


これが本作の大きな特徴。


「馴染みやすさ」は台詞回しにもよく現れていて、登場人物の言葉遣いは非常に現代的。
「高貴な人間が使いそうな古めかしくて格式ある言葉」や
「当時の文化に造詣がないと理解が難しい表現」もほとんどない。
理想化ハンサム追加料金オプション遊び方ルール予定スケジュールとルビが振られたり、
ソレなりに身分のある人々が「~っす。」「~じゃね~の?」と話す様は時に俗っぽくすらあるが、これも極力煩わしさから遠ざける為の配慮ということなのだろう。
いかにも当時の人っぽい物言いをする人間も勿論いるが、そういう奴に限って悲惨な目にあったりするのは何かの皮肉か。



…ただ、この台詞回し、「古代人による」「現代的な表現」というギャップがそうさせるのか、時に変な科学反応を起こして物凄いインパクトを産み出す事がある。例えば



「よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!」



「文化がちが~~~う。」



といった台詞は既読者ならばそのシーンと共に強烈に記憶に残っていることだろう。
モノによってはたった2コマの沈黙とたった一言の台詞だけで、作品自体を凌駕する知名度を手に入れてしまった例もある。
寧ろこれら経由で本作を知った方も多いのでは?



「歴史モノではあるけれど、どこか歴史モノっぽくない。でもそこが面白くて、歴史モノとしての面白さもちゃんとある。」



言葉にすると少々意味不明気味だが、そんな普通の歴史モノとはちょっと違った不思議な魅力を持っている希有な作品である。



主な登場人物


  • エウメネス

主人公。ギリシア育ちのスキタイ人。
幼い頃から書物が大好きで、そのお陰か非常に博識、頭の回転も速く口も達者で度胸もある、と頭脳面では抜群の優秀さを見せていた。
反面身体面はイマイチ…というわけでもなく、足の速さは誰にも負けなかったし、拳闘では初めてにも拘らず上級生二人をボッコボコにしている。*2


青年になってからは剣術・馬術も心得るようになり、卓越した弁舌・戦術眼・戦略眼は周囲を常に驚かせ、さらに自ら「盤上遊戯」*3や「左利きだけの部隊」を考案するなど発想力も抜群…と、これ以上はもういいだろう。要するに完璧超人である。


しかしその万能っぷりとは裏腹にその人生は決して順風満帆とは言えないものであり、二十歳を数えるか数えないかまでに


スキタイの遊牧民→ギリシア都市の自由市民→奴隷→反乱奴隷の船長→異民族の村の講師→放浪者→マケドニアの書記官


と激動の半生を送っている。
また、女性との巡り合わせは最悪で、彼は過去三度、想い人との悲恋を経験している。
その半生で様々な価値観に触れたからか、はたまた経験した悲恋が全て外圧的な要因による物だったからか、彼は民族的な拘りや社会的な立場に執着する事よりも、自身が「自由」である事を常に望む様になっていった。
しかしそんな彼の意思などいざ知らず、マケドニアでの「エウメネス」の存在は皮肉にもその優秀さ故にどんどん大きくなっていく。
そして遂に国軍副司令官である「王の左腕」の候補者となるのだが…



  • ヒエロニュモス

ギリシアの都市カルディアの名士でエウメネスの養父。
彼の生業の一つには「奴隷の売買」があり、"商品"の調達の際にエウメネスの家族であるスキタイ人と遭遇。
奴隷狩り部隊はエウメネス以外全員殺してしまうのだが、
「生き残った彼が母親の惨殺死体を見ても動じなかった事」
「その母親がたった一人で二十数名もの男を切り殺した事」
から、「この子は英雄の血だ!」と惚れこみ自分の子とする事を決意。
彼の見立て通り、エウメネスは誰もが非凡と認める子供として育つが、ある事件を引き金にヒエロニュモスは家来であるヘカタイオスに殺されてしまう。



  • トラクス

スキタイ人の奴隷。
エウメネスとは互いに顔を知る程度の面識で友好関係はない。
しかし、作中に出てくる「ペルシア帝国を生み出したスキタイ人の残虐さ」の如く、
彼の「残虐さ」「誇り高さ」「類稀な戦闘能力」「奴隷という身分」そして「スキタイ人であるという事実」がエウメネスの運命を大きく変える事となる。



  • ヘカタイオス

ヒエロニュモスの家来。
カルディアで起こったある事件を利用してヒエロニュモスを暗殺。彼に替わって自らがカルディア一の実力者となる。
更にエウメネスを奴隷の身に転落させ、悪名高い商人ゼラルコスに売り払った。
主人を殺した事については「アイツもそれなりに手を汚してきた。つまりあれが寿命だったのさ。」と全く悪びれる様子が無かったが、「ならお前の最期も不自然なものでなきゃいいよな。」と切り返したエウメネスには空恐ろしいモノを感じていた。
その後の彼は殺される事こそなかったものの、「自らが従属するマケドニア側の人間」としてカルディアに舞い戻ってきたエウメネスを恨むがあまりに、屈辱的な思いをする事になる。



  • ゼラルコス

オルビアの商人。
ナカナカ御大層な趣味をお持ちの御仁で、彼の奴隷には例外なく"ある施術"が施されている。
カルディアでエウメネスを買った後船で帰路に就くが、その道中で奴隷たちによる反乱が勃発。
奴隷たちは"今までの仕返し"と称して、彼の陰茎を切り取り海へ投げ捨てるのだった。[[そんなことしても美の女神とか生まれてこないから。>アフロディテ(ギリシャ神話)]]
「みんなのうらみ」を存分にその身に受けた後間もなく彼自身も海に還り、ゼラルコスの人生はそこで終わりを迎える。



  • ペリアラ

エウメネスの想い人其の一。
自由市民であった頃のエウメネスとは良い仲であったが、彼が奴隷になってからはそうもいかなくなってしまった。
男友達が皆「奴隷でもアイツとは友達さ」と言ったのに対し、彼女は「私には奴隷の友達なんていない!」と(カロンが渡してくれた)エウメネスお手製の首飾りを海に投げ捨てようとする。
涙ながらに吐いた台詞であるから、本心からの言葉ではないと信じたい。



  • カロン

ヒエロニュモス家の奴隷で、エウメネスが自由市民であった頃は彼の従者をしていた。
小さい頃から面倒を見ていたせいか、エウメネスには親心の様な感情を抱いており、彼が奴隷になってからも最初こそ煙たがっていたが、なんだかんだと世話を焼いていた。
エウメネスに夢はないのかと尋ねられた時は「奴隷に夢などあるものか。今更面倒だ。」と語っていたが、後に溜めた財産で自分を買い自由の身となる。
その後はアテネに近いピレウスの町で「メランティオス」と名乗り、裏社会の頭領となっている。エウメネス曰く「才能があったんだね。」との事。
実は幼い頃のエウメネスを人質に取り、彼の母を死に追いやった人物。彼をずっと気にかけていたのも、半分は贖罪としてなのかもしれない。
自由になってからアテネに居を構えたのは、かつてエウメネスが「いつかアテネに行ってみたい」と洩らしていたのをずっと覚えていたから。
アテネに居ればいつかまたエウメネスに会えると信じ、果たして二人は再会する事となる。
奇しくもアテネとマケドニアは敵対関係であったが、カロン自身に悲愴感はない。言葉にこそしなかったものの


「その脚で地平線の先へ駆けていくも、あるいは大軍を率いてこの地に攻め来るも、全て"自由"ぞ!わが"息子"よ!!」


とエウメネスが自由を手に入れた事に胸を熱くしていた。



  • アリストテレス

細かい説明は不要だろう、「万学の祖」と言われた学者でアレクサンドロスの家庭教師であった人物。
本作ではペルシア帝国から「スパイ容疑」で追われている最中に放浪者であったエウメネスと出会う。
エウメネスとは、地上が球体である事やヘロドトスの著作には誤りがあるなど夜通し議論を楽しみ、エウメネスの「地球」という表現をいたく気に入っていた。
その後はカルディアにてマケドニア王フィリッポスと合流。未来の幹部候補生を育成する学校「ミエザ」の講師となる。



  • メムノン

ギリシア人でありながらペルシア帝国に仕える傭兵。
(後の)妻と一緒にアリストテレスを追っていた。
かつてはマケドニアに身を寄せており、後述する「王の左腕」の候補にも挙がる程の有能さを見せていたが、現在はペルシア側に落ち着いている。
史実での彼は傭兵ならではの中々面白い経歴をお持ちなのだが、残念ながらその辺りは漫画では端折られている。つまり彼の活躍はまだ、無い。
詳細を知りたい方は注釈参照*4



  • バルシネ

メムノンと一緒にアリストテレスを追っていたメムノンの兄の妻。(後にメムノンの妻となるが漫画では語られていない。)
おみ足がセクシー。



  • バト

「まあ……おまえじゃわからないか。この領域レベルの話は」

ゼラスコスの船が沈没して近くの浜辺に打ち上げられたエウメネスを保護した村「ボアの村」の剣士。
その腕前はエウメネス曰く「トラクスにこそ敵わないものの、最早"村一番"というレベルではない」との事。
ダイマコス軍との戦の直前には「痕は残るが動けなくなるほどではない絶妙な深さの傷」をエウメネスの頼みで背中に刻んだ。
これからは剣も扱えないと生きてはいけないと感じたエウメネスは彼から剣技を教わろうし、その対価としてカルディア時代に溜め込んだ書物の知識を教える事を提案。
最初は村の若い衆だけが相手だったがやがて大人達も興味を示し、村の人々は次第にギリシアの教養を身に着けていく。
そのことについてエウメネスは「その講義は立場こそ提供する側であったものの、第三者にわかりやすく紹介してみせる事で、自分の中で"他人だった知識"が初めて"身内に"なっていった。」と語っている。



  • ダイマコス

ギリシア都市「ティオス」の実力者フィレタイロスの息子。
非常に尊大で野心的な人物で、父の代では友好的な関係を築いていたボアの村を私兵でもって武力制圧しようとする。
しかしエウメネスの立案した戦術と計略によって部隊は壊滅。激昂した彼は、今度はホメロスの叙事詩「イリアス」の一説を諳んじて、


「と、吟じたところで、(蛮族どもは)知るまいな。」と教養でマウントを取ろうとする。


だが既に教養を身に着けていた村人は


「知ってるよ。イリアスだろ?」とバッサリ切って落とし、彼を殺してしまうのであった。


彼を生け捕る様にと事前に打ち合わせていたにも拘らず、である。
このシーンは本作が持つ痛快さの一つの到達点とも言えるものであり、また物事を分かりやすくかみ砕いて人々に伝えたエウメネスと併せて、


「御大層な言葉を並べただけで物事を語ったつもりになる、わかったつもりになる事がどれほどヤバイ事であるか」


という警告と取れなくもない。この記事自体がブーメランになってなければいいけど。
はっきり言って胸糞悪い男ではあったが、そういう意味では間違いなく名脇役といえる人物である。



  • サテュラ

エウメネスの想い人その二。
元々ダイマコスの許嫁であったが、彼はその野心の為婚約を破棄。
その反動か、迫りくる死の恐怖からか、かねてから想いを寄せていたエウメネスと急接近する。
最後はダイマコスも死んでめでたしめでたし。…の、筈であったのだが…



  • マケドニア歩兵

「アララララーーーーーーーーーイ」



  • フィリッポス

弱小の一つに過ぎなかったマケドニアをギリシアでも有数の大国に成長させた傑物。
その躍進の原動力は彼が創り出した陸軍にある。
編成・陣形・戦術は勿論の事、一兵卒の装備品に至るまで、マケドニア軍のあらゆる所には彼の創意工夫が盛り込まれており、その強さは世界最強とまで謳われていた。
また、彼は軍の構成において「個人の能力を潰してでも、全体が一つになることを旨とする」という理念を持っており、「英雄のいらない戦いこそがマケドニアの理想」と将軍達に語っている。


軍の強さばかりに目がいきがちだが、敗戦濃厚の際は流言を巧みに使って和睦を進めたり、海運の要所であるカルディアを懐柔してアテネの力を削ごうとするなど、決して力押しだけが能ではない、硬軟両面を併せ持った人物である。
学者のアリストテレスを招聘して、先述した「ミエザ」を開設するなど人材の育成・発掘にも貪欲で、カルディア遠征では現地で色々と大立ち回りをかましたエウメネスに目を付け彼を配下に引き込もうとした。
エウメネスは、最初は「商人」であったフィリッポスが「王」に変貌した時の事を「その男が瞬時にして巨大な生き物に変化したように思えた。そう…敢えて例えるなら、オデュッセウスの物語にも登場する一つ目巨人、キュクロプス。」と語っている。



  • アレクサンドロス

マケドニアの王子。母はオリュンピアス。
中性的で端正な顔立ちにオッドアイ、顔に大きく刻まれた蛇型の痣が特徴。
恵まれた身体能力、聡明さ、第六感の持ち主で、特に第六感は「ほんの少し先の未来を見透す」とまで言われている。
戦場においてもその類稀な能力故に戦術よりも直感と閃きで戦おうとする、所謂天才肌な人物である。
アテネとの雌雄を決するカイロネイアの戦いでは、
「個人的な理由で一番槍を買ってでた挙げ句に独断専行、自分の部隊すら置き去りにして単騎で敵陣の裏に回り、呆気にとられている敵兵の首を列に沿って次々と跳ね飛ばしていった。」
Mount&Bladeじゃねーんだぞ!!
しかしそのスタイルは「英雄がいらない戦い」を理想とするマケドニアの対極に位置するモノであり、フィリッポスも彼の才能は認めつつも
「あれが王子ではなく一介の将であったなら…」
「(絶対に死なないだろうが)いっそ戦場で死んでくれたなら…」
と、心中穏やかではないようだ。



  • ヘファイスティオン

アレクサンドロスの唯一無二の親友で彼の片腕。
ダレイオス3世の母が二人の見分けがつかずヘファイスティオンの前に跪いてしまった際に、アレクサンドロスが放った
「お気になさるな。この男もまたアレクサンドロスなのだから」
という言葉からも、二人の親密具合が見てとれる。
……というのは史実の話で、本作においては「アレクサンドロスに棲まうもう一つの人格」の事である。
幼少時から感情的で取り乱すことが多かったアレクサンドロスをみて、母のオリュンピアスが意図的に彼を創り出した。
曰く「二人でならフィリッポスを踏み越える」との事。[[デスノートかな?>DEATH NOTE(漫画)]]
まだ出番が少ないが、少なくとも
「ヘファイスティオンはアレクサンドロスの記憶も共有している事」
「対してアレクサンドロスはヘファイスティオンの記憶を共有出来ない事」
「ヘファイスティオンはアレクサンドロスよりも粗暴な性格である事」やっぱりニアとメロじゃ…
がわかっている。


蛇が大の苦手で、彼は覚醒時には顔にある蛇型の痣を白粉で隠す癖がある。
その為、周囲の者達にも判別は容易く彼の存在も周知の事実ではあるが、これは所謂「公然の秘密」となっており、フィリッポスの意思によって彼に関する一切の記録は残してはならないとされている。



  • オリュンピアス

フィリッポスの第四王妃でアレクサンドロスの母。一刀、しかも片手で大の男の首を跳ねる剛剣の持ち主。
王妃という立場にも拘らず、性生活が乱れに乱れており、その辺の貴族はおろか寝所を守る衛兵すらも自分のベッドに誘い、不義密通を繰り返している。
真っ裸で大蛇を抱き*5、息子の名前をブツブツ呟くシーンもあったりと、端から見れば完全にアブナイオバサンだが、先の「フィリッポスを踏み越える」の発言にも見られる様に、言葉の端々にはなんだか野心めいたものを感じさせる。
実は彼女の密通のお相手の中には「イッソスの戦いを描いた"現実の"モザイク画にあるアレクサンドロスそっくりの男」がいた。明言こそされていないが、それはつまり…
因みにその男はアレクサンドロスにオリュンピアスとの情事を見られた為、彼女の


刺突→ジャンプ切り→刺突→首跳ね→(蛇が)首を丸のみ


という見事なFatalityで「Finish Him!」された。[[Mortal Kombat>モータルコンバット]]じゃねーんだぞ!!


  • パルメニオン

マケドニアの国軍副司令官で現在の「王の左腕」
「右腕」ではなく「左腕」なのは、ギリシア式の軍の布陣において最高司令官、即ち王は右翼に展開する傾向があり、直接指揮を取る事が難しい左翼側が自ずと副司令官の担当になる、という所から来ている。
既に老人の域に達している高齢者だが、その佇まいは常に威厳に溢れており、フィリッポスよりも一回り大きい事もあって、エウメネスも最初は彼がマケドニア王なのでは?と思っていた。
ついでに非常に寡黙な人物でもあり、長い間彼の会話らしい会話は
フィリッポス「頭じゃま。」
パルメニオン「お…これは失礼。」
だけであった。
しかしカイロネイアの戦いでようやく台詞らしい台詞を吐く事が出来た。やったね!



  • アンティパトロス

政治・外交全般を取り仕切っているマケドニアの宰相。パルメニオンと併せて「王家の両輪」と呼ばれるだけあって、その手腕は確かなモノ。
アテネとの戦争の際には、「アテネの力を削ぐ」為に、また「今後のアテネに必要な男を失わない」為に、優秀な敵将であるフォーキオンが戦場に出て来ないよう工作を施した。
その工作員として選ばれたエウメネスは、まだ敵の立場であるフォーキオンを既に「此方の駒」として捉えているアンティパトロスの考えの大きさに感心していた。
ただ…本人の真意はともかく、事実だけ並べればエウメネスにとってこれ程ありがたくない人物もいない。
アテネ工作の際は、「ダメ押し」としてエウメネスをアテネ市民への生け贄にしようとし、エウメネスが「王の左腕」の候補に挙がった際は、後述するエウリュディケとの仲を「懸念材料」だとフィリッポスに提言している。



  • アッタロス

マケドニアの将軍の一人。まだマケドニアに来て間もない頃のエウメネスを預かる。
パルメニオンの娘を嫁に貰っており、国内では相当な名門の筈だが、本人はどう贔屓目にみても只の飲んだくれ親父にしかみえない。
フィリッポス曰く「典型的なマケドニア人を知って貰う為に預けた」そうだが、エウメネス曰く「これが"典型"ならマケドニア人はろくでもねえぞ」とのこと。
ただ、なんだかんだいっても両者の仲は良好で、更に姪であるエウリュディケもエウメネスとの距離を徐々に縮めていった。
国内で活躍目覚ましいエウメネスを見て、いずれはエウリュディケをめあわせ、家督を継いで貰おうとも考えていたのだが…



  • エウリュディケ

アッタロスの姪でエウメネスの想い人其の三。
中々の美人さんだが、叔父同様お世辞にも上品とは言えない人物。大口を開けて笑う所なんかソックリ。
ただ、頭の回転は非常に早く、エウメネスに盤上遊戯の遊び方を教わったら、制作者自身も敵わないレベルの実力を身につけてしまった。
エウメネスと相思相愛であったが、アンティパトロスが「王の左腕候補がマケドニア名門と縁を持つ事は、権力のバランスにおいて問題がある」とフィリッポスに提言。フィリッポスは急ぎ彼女との婚約を進めてしまう。
マケドニアで最上位の地位に着くことも、エウリュディケを諦める事も自分の望みではないエウメネスは酷く憤慨。マケドニアを見限ることを本気で考える様になる。



  • フォーキオン

アテネの弁論家・政治家。
清貧を旨とし、温和で平和主義な「人格者」としても名高い人物であり、民衆からの信頼は非常に厚い。
若い頃に傭兵部隊の副官を務めていたこともあり、実践経験も豊富。自ら立候補した事こそないものの、毎年のように将軍職に推薦されている。
ビザンティオンでの海戦ではその辣腕を存分に振るい、マケドニア海軍を圧倒した。
しかし、本人はできる事ならマケドニアとの全面戦争は避けたいと考えており、皮肉にも自分がもたらした勝利がアテネの主戦論派を勢いづかせてしまった事に心を痛めていた。
間もなくアテネの世論は「マケドニアとの決戦」一色に染まり、非戦論派である彼はとうとう将軍職から外されてしまう。



  • パウサニアス

マケドニア首都ペラの宮廷護衛兵。
幼い頃から無表情で感情の起伏に乏しい人物で、周りの者からは「心が入っていない男」と言われていた。


かつてフィリッポスが侵略・吸収したオレスティスの出身。
彼自身はその事に何の遺恨も残してないが、彼の兄はフィリッポスさえいなければオレスティスの王になる筈だった人物であり、没落してからは死ぬまで「フィリッポス倒すべし」という妄執に取り憑かれていた。
兄はパウサニアスがアレクサンドロスとそっくりであることに目をつけ、弟を宮仕えという形でペラに潜り込ませる。
しかし、弟に降りかかったある出来事が原因で野望は頓挫し、兄は憤死。
これまで自分というものを主張する事なく、半ば兄の妄執に引き摺られる様に生きてきたパウサニアスは、ここで初めて「自分が生きる意味」について思いを馳せる様になる。


そして、その後の彼には「自分と瓜二つの男を産み出したオリュンピアスとの出逢い」という奇妙な運命が待ち受けていた…。




  • ハルパゴス



「ば~~~~~~~~~っかじゃねえの!?」









……野暮だとは思うが一応解説。
このハルパゴス、先に少し触れた「ペルシア帝国を生み出したスキタイ人の残虐さ」を語る為に、エウメネスが引き合いに出した過去の人物である。
つまりメインストーリーに絡まないちょい役で出番も一回こっきり。
また、上の台詞も「王の命に背いた報いとして、実の息子を食べる羽目になってしまった悲劇の将軍が、今まさにその恨みを晴らさんと王を裏切る」という紛れもなくシリアスなシーンである。


に も か か わ ら ず、


「仮にも王国軍を任されている将軍とは思えないほどの俗っぽさ」


「"二コマの沈黙"という絶妙な間の取り方」


「明日の俺らでもすぐに使えそうな、抜群の汎用性とインパクト」


から、彼の台詞の"ネタとしての知名度"は瞬く間に急上昇。
「エウメネスは知らないけどハルパゴスは知ってる」という逆転現象や、
「"ヒストリエ"は知らないけど"ば~~~~~~~~~っかじゃねえの!?"は知ってる」という端から見たら日本語として成立してるかも怪しい現象を巻き起こし、「ヒストリエ」おいて「最も有名な台詞を吐いた最も有名な男」となってしまった。
比較的真面目な解説をするあのWikipediaですら、「作品解説」と銘打って実質この台詞の解説に終始している時点で何かがおかしい。



りどみや項目作成基準の先の先……
そしてその子は"自由"アカウントを手に入れた……!
wikiの果ての果てまで読み漁るも、
或いは大量のプラグインと文字を使って追記修正するも、
全て"自由"ぞ!我らがアニヲタよ!!


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  • エウメネスさん、悲恋ながらもめっちゃモテてるのいいなあと昔思ったりした -- 名無しさん (2018-11-27 20:17:54)
  • 門をォ――――ッ!!開っけろォ――――!! -- 名無しさん (2018-11-27 20:21:52)
  • 確かにば~~~かじゃねえの、の人は知ってるわw -- 名無しさん (2018-11-27 20:49:14)
  • 未だに東方遠征に出るどころか、アレクが即位すらしていない事実に震える -- 名無しさん (2018-11-27 21:01:25)
  • 熱心な愛読者ほど、自分が生きているうちに完結することを信じていない漫画 -- 名無しさん (2018-11-27 22:47:41)
  • 最初のころ読んでていつの間にか読まなくなってたけどまた読もうかな。いい記事をありがとう。 -- 名無しさん (2018-11-28 09:14:20)
  • よかった、快楽ヒストリエより辛うじて先に項目が立てられて… -- 名無しさん (2018-11-28 09:48:44)
  • 月刊誌なのによく休載するから全然進まない。完結しないと思う -- 名無しさん (2018-11-28 10:38:02)
  • 「ば~~~~~~~~~っかじゃねえの!?」のコマ、最初はコラだと思ってた -- 名無しさん (2018-11-28 12:49:21)
  • 万能で、完璧で、モテモテな主人公。なのに嫌味に感じることが殆どないのは、悲恋で悲運な一面があるからかな。昔の漫画にはこういう主人公が多かった。なろう系主人公と呼ばれている連中はこれを見習うべき。 -- 名無しさん (2019-02-10 00:29:50)

#comment

*1 ギリシア語で「後継者(達)」を意味する言葉。この場合はアレクサンドロスの死後、彼の座を巡って争う者達の事を指す。
*2 賢さと足の速さは恐らく自身が憧れ、例えられたオデュッセウスの「策略巧みなオデュッセウス」「足の速いオデュッセウス」の異名をキャラに反映していると思われる。
*3 分かりやすさの為、作中での呼称は「将棋」で統一されている
*4 彼は兄のメントル共々ペルシアの高官に雇われていたがその高官と一緒に反乱を起こし失敗。兄はエジプトへ、弟はマケドニアに逃れる。エジプトで雇われたメントルはペルシアと再度相まみえるが再び敗北。これで命運尽きたと思いきや、なんとペルシアは彼に恩赦を与えて今度は彼を匿ったエジプトと対決させる。そしてエジプト撃破の折にメムノンにも恩赦が与えられ、彼はペルシアに舞い戻ってきたのであった。
*5 豊穣と酒の神であり、蛇が聖獣の一つであるデュオニソス神の信仰の表れであると考えられる。史実の彼女について「実際大蛇と寝ていた可能性がある」と記している書物もあるらしい。

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