ハヌマーン(インド神話)

ページ名:ハヌマーン_インド神話_

登録日:2018/10/28 Sun 07:53:59
更新日:2024/03/26 Tue 11:23:33NEW!
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■ハヌマーン

『ハヌマーン(Hanumān)』インド神話に登場するヴァナラ(猿)族の一匹で、一族でも間違いなく最強の神。
特に『ラーマーヤナ』での活躍で知られる。


日本でも一部マニアに熱い信仰を受ける白猿ハヌマーンの元ネタであり、本項目では原典での姿を伝える。


尚、猿として紹介されている場合も多いが、本来の物語での立ち位置は一族でも最強だが王の補佐官といった所であり、
ハヌマーン自身はヴァナラ族の王ではないことに注意。


ハヌマーンは変幻自在の肉体を持ち、雷鳴のような咆哮を放つ。
自在に大きさや姿を変えることが出来る他、父神から引き継いだ能力からか、高速で飛行することも出来る。
白毛で大柄で顔が赤く、長い尻尾を持つ。
また、非常な知恵者であり、戦士であると同時に、優れた弁舌家でもあるという。


現地に住む、白い体毛が美しいハヌマンラングール種は、神話に於けるハヌマーンのイメージの元になったと考えられている。
そして、現地では現在でもハヌマーンの使いと信じられて手厚く保護されていると云う。
……そのため、現地では人を怖れずに悪戯や盗みもよくすると言われる一方で、猿回し芸人に使役されたハヌマンラングールの中には、
人をよく襲うアカゲザルを撃退する仕事をする者もいるとのこと。


【概要】

父は軍神としても知られる風神ヴァーユ。
ヴァーユ自身の化身としても解釈されるため、ハヌマーンを風神と紹介する場合もある。*1


母は猿王ケーシャーリの妻のアンジャナーで、またはアプサラス(飛天、天女)が母であるともいう。


神様が猿とヤったのかと思わないでもないが、インド神話ではが乗り移った状態で子供を作ると親と見なされるルールがあるので気にしなくても大丈夫である。
そもそも『ラーマーヤナ』で敵対した猿王バリは雷帝インドラの子。仕えたスグリーァは太陽神スーリヤの子である。お前ら自重しろ。*2


ヴァナラ族の中でも飛び抜けた力を持つが、ハヌマーンがそうした力を持つに至ったのには次の様な神話がある。


ハヌマーンは顎が変形した姿で描かれることがあるが、これはハヌマーンが太陽を果実と勘違いして天に登り続け、
それを狼藉者と思ったインドラにヴァジュラで打たれた時の傷であると云う。


当然の様に、天から墜落したハヌマーンは死んでしまうが、それを知った父神のヴァーユは嘆き悲しみ、遂には世界に風を送るのを止めてしまった


風が吹かなくなったことで世界は歩みを止め、多くの人や動物が生命を落としたので、神々はヴァーユに許しを請い、願いを聞いてやることにした。


すると、ヴァーユはハヌマーンの復活と、復活に伴い不死と決して打ち破られない強さと叡知を与えることを望み、神々もそれを断れなかったので、ハヌマーンは以前よりも遥かに強大な者となって帰って来たのだという。


ハヌマーンとは、骸骨を持つ者という意味。
シンボル化した図像では人面を含む五面十臂で顕されることもある、人気の高い守護神である。


仏教国であるタイでも、他のヒンドゥーの神々と同様に仏法の守護神として取り入れられている。



【ラーマーヤナ】

叙事詩『ラーマーヤナ』では、主役側のMVPと言ってもいい位に活躍しており、
その八面六臂の活躍からハヌマーンが居なければラーマ王子陣営は負けていただろうという位に役割が多い。


以下に、主な活躍を抜粋。


①主君スグリーヴァとラーマ王子の同盟を強固なものとする

羅刹王ラーヴァナにシーター妃が拐われたラーマ王子は、自分に倒されつつも先に進む道を示してくれた巨人カヴァンダの助言に従い、
スグリーヴァと同盟を結ぶためにキシュキンダーのリシュヤムーカ山に。
ここは、兄のバリ(ヴァーリン)に妻をNTRれ一族の長の座を奪われたスグリーヴァ一派の本拠地だった。
スグリーヴァはハヌマーンを使いに出し、ラーマ王子と従者のラクシュマナの素性を確かめさせると、信頼に足る相手として招いた。
お互いに似た境遇にあるラーマ王子とスグリーヴァは打ち解け、王子はスグリーヴァがラーヴァナの同盟相手でもある、兄のバリに挑むのを手助けることを約束し、
スグリーヴァは証としてラーヴァナに拐われるシーター妃が投げて寄越した飾りを返すのだった。


そして、スグリーヴァはバリに挑む。スグリーヴァの態度から妃のターラーはキナ臭い物を感じとり忠告するもヴァーリンは決闘を受け入れた。


兄弟の戦いは再び兄の勝利で終わったが、援護に入ったラーマ王子の矢に貫かれて勝ったはずのバリは倒れ、王権は再びスグリーヴァに戻った。
しかし、元々は自分の早とちりから兄が就く筈だった王位についていたことや、兄の後を追って殺してくれと願う、かつての妻ターラーの姿を見て自戒の念に囚われる。
一方、猜疑心に支配されて生きてきたバリは死の瞬間に全てから解放されて安らかに死に、ターラーを含めたヴァナラ族もスグリーヴァの帰還を認めて一件落着した。


……のは、猿達だけの話で、スグリーヴァは宴会に興じてラーマ王子にすぐに協力しなかった。
これをマズイと思ったハヌマーンはスグリーヴァにラーマ王子との約束を思い出させ、遂に猿軍団が立った。
ラクシュマナが文句を言いにきたが、ハヌマーンとターラー妃の働きで取りなされ、事なきを得たのである。
スグリーヴァは王位には就いたが、バリの子であるアンガダを後継者に据えることを直ぐに決め、ヴァナラ達は一つに纏まったのである。


②斥候としてラーヴァナの本拠地に乗り込む

ラーマ王子とヴァナラ族の同盟が決定すると、ハヌマーンは、変幻自在の力を利用して自らラーヴァナの本拠地へと偵察に向かう。
ハヌマーンは、そこでシーター妃がラーヴァナに自分のモノになることを迫られているのを目撃する。
ハヌマーンはシーター妃が一人になるとラーマ王子の指輪を見せて自分が使いであることを告げる。
シーター妃より替わりに宝石を受けとるとともに、ラーヴァナを受け入れない場合、自分が殺されるまで二ヶ月の猶予しか無いことを聞かされたハヌマーンは、
ラーヴァナ軍との本格的な戦闘を前に敵の戦力を確かめるべきだと考え、隠れるのをやめて大暴れする。
しかし、ラーヴァナの子のメーガナーダの魔術には敵わず捕らえられてしまった。
ラーヴァナはハヌマーンを殺そうとしたが、弟のヴィビーシャナの進言を聞いて長い尻尾の先にを点けられて引き回しの刑に処された。
しかし、シーター妃の祈りにより火神アグニの加護を受けていたハヌマーンは焼けず、状況を逆手に取ってあちこちに火を点けて回り、
ラーヴァナの本拠地を火の海にして脱出した。
帰還したハヌマーンはラーマ王子にシーター妃の宝石を渡し、遂にラーマ王子は全軍の進軍を命じるのだった。


③薬草を運んでバックアップ

ラーヴァナ軍との戦いは熾烈を極めた。
神々の加護を受けたラーマ王子とヴァナラ族は、ラーヴァナの弟である暴食の魔王クンバカルナを苦労して倒したものの、
メーガナーダことインドラジット(インドラを降した者)の前には歯が立たず、
これ等の戦いの中で大将であるラーマ王子やラクシュマナ、スグリーヴァ、アンガダ達も幾度も倒れた。
これを救ったのがハヌマーンで、どうやったかと云うと、ヒマラヤに飛んで峰ごと薬草を持ち帰るという力業で、それも倒れる度に繰り返すという天丼芸粘り強い献身でラーマ王子達を支えた。
パーティーの回復役が如何に重要かが解るこうした苦闘の中で、ラーマ王子の側に降ったヴィビーシャナの助言や神々の協力もあり、遂にラクシュマナがインドラジットを、ラーマ王子がラーヴァナを討って勝利を得るのだが、ハヌマーンが居なければ詰みだったのは確実であった。


この、ハヌマーンの活躍はインドより他地域にも渡り、前述の様にタイでは仏法の守護神となっている他、
中国では『西遊記』の斉天大聖孫悟空のモデルになったとの意見も根強い。





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  • 手塚治虫の短編「ハヌマンの冒険」では黒毛だったな。 -- 名無しさん (2018-10-28 11:06:48)
  • ウルトラマンとか仮面ライダーと共演したことがありましたね。無許可っぽいけど -- 名無しさん (2018-10-28 12:37:56)
  • ちなみに太陽は食べられなかったが、復活後は月を食べて「ザ・ワールド! 時よ止まれ!」して薬草の効力を長引かせたり、小っちゃくなって敵の体内に入り込んでから巨大化して「ひでぶっ!」と破裂死させたり、非常にはっちゃけております。さらにいうと、山運んで空飛んでる時に、ラーマの弟に「なんやあのサル」と弓矢で撃ち落とされております。不死だから死なんけどね! -- 名無しさん (2018-10-28 13:09:40)
  • 風の(それ以上いけない -- 名無しさん (2018-11-02 07:19:22)
  • 某チャイヨーのせいでえぐい武闘派だと思ってたがヒーラー枠なのか……(困惑) -- 名無しさん (2020-11-21 01:48:20)
  • ↑インドラジットが強すぎんねん。 -- 名無しさん (2020-11-21 05:39:17)
  • >中国では『西遊記』の斉天大聖孫悟空のモデルになったとの意見も根強い。 そういえばGS美神ではこの両者が同一存在として描かれてた気がする -- 名無しさん (2020-11-21 05:44:20)
  • 女神転生ではいつもお世話になっています -- 名無しさん (2020-11-21 16:51:49)
  • 沙悟浄と猪八戒も元はインドの神様だったのかな? -- 名無しさん (2021-03-04 15:27:05)

#comment

*1 プラーナ文献ではシヴァの化身ともされる。マルト神群繋がりか?
*2 一応、これはヴィシュヌがラーマ王子として転生してラーヴァナ打倒に乗り出すのに先駆け、ラーマ王子の助けとなる被造物を生み出すためだったとする説明もされる。

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