不思議の国のマーズ(スーパーロボット大戦D コミックギルド)

ページ名:不思議の国のマーズ_スーパーロボット大戦D コミックギルド_

登録日:2018/02/17 Sat 11:13:24
更新日:2024/02/19 Mon 11:43:10NEW!
所要時間:約 9 分で読めます



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不思議の国のマーズ』とは、2003年12月1日に角川コミックスより刊行された『スーパーロボット大戦D』の公式コミックアンソロジー
『スーパーロボット大戦D コミックギルド』に収録された短編漫画である。作者は長谷川裕一


長谷川裕一氏と言えば、『スーパーロボット大戦α』の公式前日譚ストーリー『THE STORY 竜が滅ぶ日』を手掛けたり、
また代表作『機動戦士クロスボーン・ガンダム』が2003年当時では例の少ない漫画媒体からの参戦を果たしたりと、
スーパーロボット大戦シリーズともそこそこ縁の深い漫画家ではあるのだが、
所謂90年代から2009年まで各出版社から展開され続けてきたスパロボの公式コミックアンソロジーにおいて漫画を提供したのは、意外にもこれ一作のみだったりする。
(他にも『α外伝』のアンソロジーに『竜が滅ぶ日』の執筆秘話漫画を寄稿したり、『第2次α』の時などにイラストのみを寄贈したことはある)


内容は『スパロボD』の世界観並びにストーリーに即したものとはなっているが、
その実態は、長谷川氏なりの解釈による六神合体ゴッドマーズ』・外伝とも言うべき内容。
長谷川氏の筆によるゴッドマーズが拝めるだけでなく、『ゴッドマーズ』原作における、ある種の「ご都合主義」に対して、
スパロボという舞台で著者なりのメスが入れられた内容となっているのが最大の特徴とも言える。


版権モノ(それも複数版権が関わっているスパロボ)の作品という事もあり、商業書籍での再録の機会は得られていないが、
2017年夏のコミックマーケット92にて、長谷川氏の個人サークル「スタジオ秘密基地」より頒布された
同人誌『ミシューロク・Z 長谷川裕一コミックス未収録作品集』に収録が叶った。
(同誌には長谷川氏の別短編『聖戦士ダンバイン 狩りの日』と同時収録)



登場人物


  • 明神タケル/マーズ

六神合体ゴッドマーズ』主人公。
本作では、宿敵・ズール皇帝が仕掛けてきた数々の策略……裏を返せば、ただ単純にタケルを苦しめるためだけに用意されたような
あまりにも非合理的な不条理の数々に頭を抱え、「奴の言っていることが分からない」という悩みを仲間たちに吐露する。


  • 楯剣人

未来ロボ ダルタニアス』主人公。
『スパロボD』においては原作の敵勢力・ザール星間帝国がギシン帝国に内包されていたため、
タケルとはギシン帝国に対して因縁のある者同士だった。
本作ではズールの精神攻撃に乗ってしまい、反陽子爆弾を起爆させそうになってしまったタケルを叱咤激励する。


  • デューク・フリード/宇門大介

UFOロボ グレンダイザー』主人公。
『スパロボD』ではベガ星連合軍がザールと同様の扱い、かつ同じ異星人主人公という事もあってタケルの理解者でもあった。
剣人ともども、タケルに生きることを諦めないよう彼の事を励ます。


マジンガーZ』主人公と、『スパロボD』女主人公。
タケルが自身の悩みを独白するシーンに居合わせていたが、本作では特に目立った出番はなし。


  • マーグ

『六神合体ゴッドマーズ』の登場人物で、タケルの兄。
原作では非業の死を遂げてしまったが、『スパロボD』では条件次第で生存、タケルと共に肩を並べて戦う事となる。
本作には直接姿が描かれているシーンはないものの、ズールが撃破された際のカットに
『スパロボD』における乗機のOVA版ゴッドマーズ(プレイヤーからの通称「ゴッドマーグ」)が
タケルのゴッドマーズ、ダルタニアス、グレンダイザーらと共に描かれているため、無事生存ルートを通ったものと思われる。


  • ズール皇帝

ズール皇帝こそが正義だ!
お馴染み、『六神合体ゴッドマーズ』諸悪の根源。原作同様悪の権化だが、話の展開上ちょっぴりだがコミカルな動作も。
本作では、原作中における数々の行動の「不条理」に対し、長谷川氏なりの独自解釈が成されている。



ストーリー解説


どことも知れぬ時間、どことも知れぬ空間……明神タケルは、宿敵・ズール皇帝と相対していた。
ズールは「お前はわしの息子だ、わしの命に従いガイヤーの反陽子爆弾を起動させよ!」と命令。
当然ながらタケルにとって地球は故郷、そもそも自身の命を放棄するような命令に従うはずもない。
するとズールはそのタケルの態度に腹を立てると、「裏切り者め、ならば殺してやる!」と恫喝。
これには流石のタケルもズッコケてしまう。


どうせタケルが死ねばガイヤーは爆発する仕組みなのだと高笑いするズールであったが、タケルにはズールの言っている事が分からない。
曰く「わしの命令に爆弾を爆発させて死ね 言うことを聞かねば殺して爆弾を破裂させちゃうぞ!」とのことだが、
タケルは「どんな奴なら聞くと思うわけ?その命令?」と至極真っ当な返答を返す。
そもそも、どの道殺すならさっさとタケルを殺せばいいだけの話だ。命令を下す必要なぞあるのか?とタケルは疑問を抱く。


ズール皇帝の言っていることが、わからない…


舞台は変わり、ブルー・スウェアの旗艦の室内で、そう仲間たちに漏らすタケル。
話を聞いていた楯剣人、デューク・フリード、兜甲児、クリアーナ・リムスカヤらは怪訝な表情を浮かべる。
タケル曰く、ズールの行動には脈絡が無く、まるでその場の思いつきなのだそうだ。


ズールは地球を破壊すべく、ガイヤーを爆発させるためにタケルを抹殺しようとしているが、それに拘る理由が無い。
地球の破壊が目的ならば、もう一発別の反陽子爆弾を打ち込めば済むだけの話だ。
よしんば何らかの理由で反陽子爆弾が一発しか用意できなかったというのならば、猶更変な話だ。
何故、そのトラの子の起爆装置に人間なんて不確実なものを使うのか?それも善意の科学者から双子の片方をわざわざ奪って?
養子として「皇子」にしてからわざわざ赤子のまま? それも17年も待って?そもそもなぜ地球の爆破を17年も待ったのか?
高度の文明を持つ宇宙人が地球の文明の行く末を見届けるために時をおいたとかの理由ならばまだしも、
ズールは話し合う気もなく、ハナから地球を滅ぼす気でいたのだ。
兄のマーグのことだってそうだ。記憶を奪った者を指揮官にして、果たして満足のいく指揮が取れるとでも思うのか?


タケルが思索を巡らせれば巡らせるほど、ズールの行動はあまりにも「不条理」が過ぎていたのだ。
まるで、その全てが「タケルを苦しめるためだけに考えられた」ような。
幾らなんでも馬鹿げている、そんなことがあるはずない、あるとすれば夢の中……とタケルが思った次の瞬間、
話を聞いていた剣人が不審な笑い声をあげ、「残念だがこの世には悪夢よりひどい現実があるのだ」というと同時に
その姿が歪み……ズールそのものの姿へと変わる
タケルが気付いた時には、既に場所も艦内などではなく、得体の知れない空間へと変貌していた。


ズールはタケルの疑問に答える。
全ては彼の思っていた通り。ズールの行いの一つ一つは、タケルを苦しめるためだけに、
その言葉の全ては、タケルを苦しめるためだけに発せられていたのだと。


何故そのようなことをするのかとタケルは問うも、ズールは嘲笑しつつその真意を明かす。


ズール
「なぜかだと?まだわからぬか?愚か者めが」」
「きさまらが標榜する“正義”が、“愛”と“平和”と、合理的な秩序を重んじるならば…その対極たる“悪”は」
「“不条理”で歪んでいて、みにくく薄汚い、つじつまの合わぬ存在だからではないか?」
「そして―――私はその“悪”そのものなのだよ」


タケル
「だからといって?なぜ俺を?その悪が俺一人を狙う」


ズール
「おまえも、おまえの父イデアも…“善”そのもの――いや、“善”そのものたりうる存在だったが故に」
「なぜきさまは自分が“神”の名を持つ機械に乗っていたと思うのだ?」
「そうとも…わしはかつて悟りを開かんとしていた賢者を、惑わしたものと同じ存在なのだ」
「だからこそ!無駄だぞマーズ!わしを倒すことなどできぬ!」
「もともとわしにつじつまなどというものはないのだからな。理不尽ででたらめなものをどうして倒せる?」
「そしてわしはお前を惑わし続けるのだ!」
「お前が刀折れ矢つき、――疲れ果て、やがて屈服するまで」
「わが手におちるまで!」


タケル
「負ける…ものか!決してお前の思いどおりになど…たとえ」
「反陽子爆弾を…使ってでも!」


ズールの嘲りに苦しめられながらも、タケルはガイヤーの名を呼び、六神合体を果たしたゴッドマーズを召喚する。
ゴッドマーズでズールの動きを封じたタケルは、反陽子爆弾で自ら諸共怨敵を葬ろうとするが……


剣人
「ばかやろうぅ!目を覚ましやがれぇっ!タ・ケ・ル――!!」


突如として響いた「本物の」剣人の怒鳴り声。
それを聞いたタケルは我に返り、自分がゴッドマーズのコックピットにいることに気付く。
外を見渡せば、場所はギシン星上空の宇宙空間、
周囲にいたのはラー・カイラムνガンダムマジンガーZ真ゲッターといったブルー・スウェアの仲間たち。
タケルは理解した。ズールとの決着戦の最中、自身がズールの精神攻撃により、「悪夢」の中に堕ちていたということを……


戸惑うタケルに対し、剣人は超空間エネルギーで反陽子爆弾の爆発は最小限に抑える事を宣言するも、
どんな理由があれ、タケルが爆弾の起爆装置として命を散らしてしまえば、
それは結局ズールの思う通りに生きてしまった事に他ならないのではないかと、彼を叱咤激励。
グレンダイザーを駆るデューク・フリードもまた、生きることを諦めてはならないとタケルを応援する。


―――そして、ゴッドマーズの反陽子爆弾が起爆したと同時に、剣人の駆るダルタニアスが超空間エネルギーを解放。
ゴッドマーズから放出された反陽子エネルギーは、ズールへと流れ込み、その存在そのものを滅ぼす事となった。
滅びる瞬間、ズールは自分は死なない、何度でも蘇ると嘲笑しながら宣言。
タケル、剣人、デュークは、それに「倒してやるさ!何度でもな…」を言葉を返す……


結局――反陽子爆弾が爆発せず、エネルギーとなって放出された原因は分からず仕舞いだった。
それは命の限界を越えた“奇跡”だと誰がか言った。


ズールを滅ぼしたブルー・スウェアだったが、タケルは一向に浮かない顔であった。
果たして本当にズールを倒せたのか―――そう彼は呟く。剣人は陽気に彼を励ますも、タケルはその胸の内を吐露する。


タケル
「ただ不安なんだ」
「“悪”という“不条理”を倒す方法が、“奇跡”という別の不条理しかなかったんなら……」
「結局、俺たちは奴に手の平の上で踊らされたことになるんじゃないかと、そんな風に思えるから…」


ラスト、顔を歪めつつ“嗤う”ズールのカットが映り、物語は終わる。





追記・修正は、“悪”と“奇跡”という2種の不条理に、違いがあると思える方がお願いします。


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  • 面白そうだなこれ。いや、執筆者のセンスも良いからなんだろうけども。 -- 名無しさん (2018-02-17 12:07:26)
  • ラストの撃破シーンにはゴッドマーグもいるんだけど、作中にはタケルとマーグの会話シーンがなかったのはちょい残念w -- 名無しさん (2018-02-17 17:09:33)
  • これの本持ってるなあ、やはり長谷川先生のセンスが光るわ。 -- 名無しマン (2018-02-19 13:07:04)

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