からくり士(FINAL FANTASY XI)

ページ名:からくり士_FINAL FANTASY XI_

登録日:2017/12/15 Fri 00:19:03
更新日:2024/02/16 Fri 13:07:57NEW!
所要時間:約 24 分で読めます



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知ってるか?ボンクラーズは3つに分けられる。



誰かの下位互換でしかない奴



需要の無い能力しか持ってない奴



性能が要求水準に達してない奴



あいつは─────────





MMORPGとしては古参の部類に入る『ファイナルファンタジー11』では、第二世代以降のMMORPGによくみられるような「ロール制」(タンク・アタッカー・ヒーラーといった性能区分)はあまり厳密なものではない。
各ジョブはわりと好き勝手に独自のポジションについているため、全体の構造が極めて複雑で、どこかにささいな調整が入っただけで全体のバランスが変動してしまうことも多々ある。


この為15年にも及ぶFF11史の中では、ほぼすべてのジョブが一度は「てっぺん」を取ったことがあり、またその内の少なくないジョブが「底辺」も経験したことがある。


しかしそんな中、ただ1人だけ、「てっぺん」に触れたことが一度たりともないジョブが存在している。


そう、それがこの項目で紹介する「からくり士」である。


三枚目の拡張ディスク『アトルガンの秘宝』で実装された所謂アトルガンジョブで、一言で言えば「自動人形と共に戦う曲芸士」というジョブなのだが……


(スクエニ……からくり士……曲芸……それってもしかして強すぎたりしない?とか思った人はその思い込みを直ちに捨てるように)




◆「どんなジョブなの?」


ゲーム的に言えばペットである「オートマトン」を呼び出し、マスター(本体)と共に戦わせるジョブ。


戦闘状態に入ったオートマトンは基本的に自律的判断で行動するが、マスターが専用アイテム「ストリンガー」を装備して「マニューバ」という指示をだすことで、ある程度その行動を制御することが可能。


オートマトンの本体は6種類の「ヘッド」と4種類の「フレーム」から構成されており、これらを自由自在に組み合わせることができる。
ただし実用上の観点からはデフォルトの組み合わせ、つまり


「コバルトエアリーズ」
汎用ヘッド+汎用フレームの組み合わせ。通称「汎用」「初期」
ACで言えば初期機体のようなもので、からくり士が最初から使えるのはこの組み合わせのみ。
いちおう近接攻撃+ケアル+弱体魔法が使える万能型だが、全体的に力不足なので他のパーツを入手し次第使われなくなる。


「カーマインスコーピオー」
魔法戦ヘッド+魔法戦フレームの組み合わせ。通称「赤マトン」
赤魔道士を模した万能魔法タイプで、精霊魔法(攻撃魔法)、ケアル、強化(バフ)魔法に弱体(デバフ)魔法と、使う魔法の幅は最も広い。


「ホワイトキャンサー」
白兵戦ヘッド+白兵戦フレームの組み合わせ。通称「白兵マトン」
ナイトを模したタンクタイプで、全タイプ中ぶっちぎりのHP+ダメージカット性能を持ち圧倒的なタフさを誇る。


「ヘーゼルサジタリウス」
射撃戦ヘッド+射撃戦フレームの組み合わせ。通称「射撃マトン」
狩人を模した遠隔アタッカータイプで、他タイプ同様の近接攻撃に加え、右手に仕込まれたクロスボウを使った遠距離攻撃も行う。単純な物理火力においては全タイプ中最強。


「パールアリエス」
白魔法戦ヘッド+魔法戦フレームの組み合わせ。通称「白マトン」
白魔道士を模したヒーラータイプで、高位ケアル、状態異常治療魔法、一部の強化・弱体魔法を使う。
他の魔法系フレームと違って、マスター以外のパーティメンバーにも回復魔法を飛ばしてくれるのが特徴。


「フリントカプリコーン」
黒魔法戦ヘッド+魔法戦フレームの組み合わせ。通称「黒マトン」
黒魔道士を模した魔法アタッカータイプで、高位精霊魔法、ドレインやアスピルなどの暗黒魔法、一部の弱体魔法を使う。


この6種類の内いずれかを選ぶことになるだろう。


最終的にはこれに加え、総数100以上あるオプションパーツ「アタッチメント」の中から複数を選んで組み込むことで完成となる。


アタッチメントは大別して「性能を強化するタイプ」「AIを制御するタイプ」「特殊機能を持たせるタイプ」の3種類に分かれており、同じフレームとヘッドでもアタッチメントの組み合わせによって全く性能が変わってくる。


また戦力になるのはマトンだけでマスターは無力というわけではなく、モンク同様に格闘武器を使った近接戦闘が可能。
攻撃力を上げたりするような特殊アビリティは持っていないが、火力は前衛ジョブに迫るほどの高水準。


組み合わせによってマトンの性質を全く変えることができる(タンク、遠・近・魔法アタッカー、ヒーラー、バッファーを自由に選択できる)ため、他のペットジョブと比べて戦術の幅が広いのが特徴。



◆「どんなところが優れてるの?」

  • オートマトンが可愛い
  • オートマトンのお尻が可愛い
  • オートマトンの/bow(お辞儀の動作)がガルウィング可愛い
  • オートマトンの/blush(恥ずかしがる動作)がもじもじしてて可愛い
  • オートマトンの/dance(踊りの動作)がクルクル回って可愛い
  • オートマトンの/salute(拍手の動作)が絶妙にやる気がない感じで可愛い
  • プレイヤーがタルタルだとオートマトンの方が大きかったりしてkawaii



◆「んじゃ欠点は?」

率直に言って、「からくり士ならではのセールスポイント」がない。


赤マトンは赤魔道士の劣化であり、白兵マトンはナイトの劣化で、射撃マトンは狩人の、白マトンは白魔道士の、黒マトンは黒魔道士の劣化である。
つまり、これらのジョブよりからくり士をあえて優先する理由がない。


さらに言えば本体はモンクの劣化であり、近距離でペットと共に殴っても竜騎士の劣化であり、遠距離からペットだけをぶつける「ペットミサイル」適正においても召喚士や獣使いの劣化である。


でもそれらの多彩な能力を自在にスイッチできるんなら、「臨機応変にロールを変えられる汎用ジョブ」としての価値があるんじゃ?と思われた方もいるかもしれないが、実はそんなこともない。
というのも、オートマトンの構成を切り替えるための手順が非常に原始的かつ複雑で、訓練されたからくり士でも30秒~1分は要する作業となってしまうのである。
機能切り替えにいちいちこれほどの時間がかかるようでは、「臨機応変に戦況に対応する」ことなど到底不可能であると言わざるを得ない。


このため「汎用ジョブ」として見ても、赤魔道士や青魔道士、あるいは踊り子などの劣化に過ぎないのだ。


そしてからくり士の問題は、他ジョブと比較した場合だけにとどまらない。
ある意味でそれ以上に痛いのが、「オートマトンの仕様があまりにも複雑すぎる」という問題。


オートマトン周りの仕様は徹頭徹尾独自要素の塊であり、制御ルーチンの複雑さやアタッチメントの多様さも含め、恐ろしく細かい仕様やルールが山積している。
FF11全体の特徴である「ゲーム内で具体的な数値・仕様を知らせない」という方針も相まって、その全容はまさしくカオスの一言。
からくり士をやっていない人は勿論、メインジョブがからくり士という人ですら、そのすべての仕様を把握してないこともあるほど。開発サイド自身が把握してないことも稀によくある


そしてこの仕様の複雑怪奇っぷりは、「他ジョブからはからくり士がどんなジョブなのかさっぱりわからない」という二次的な問題をも引き起こしている。
実はFF11の長い歴史の中では、「魅了に強い白兵マトン盾が有効」「ケアルヘイトが0の白マトンが有効」などという、からくり士が輝けるシチュエーションがなかったわけではない。
しかしあまりにもプレイヤー間での知名度、またジョブへの理解が乏しいため、そういう場合にも基本的に「人数外」に置かれてしまっており、選択肢に上がってこなかったのである……




◆「世界観的には?」

ゲーム中に登場する全ジョブの中で、最も「新しい」部類に入るジョブ。


中の国(プレイヤーたちの故国)から近東に位置する大国アトルガン皇国では、古くから「傀儡師」と呼ばれる大道芸人が広く人気を集めていた。
彼らの操る精緻な彫金細工と様々な仕込みギミックが施された糸操り人形、即ち「マリオネット」は、「人形師」と呼ばれる専門職人が一つ一つ製作していた。


そして今から50年ほど前、ガッサドというガルカ族の高名な人形師が鍛冶、彫金、骨細工、時計、機巧など様々な分野の優れた職人たちをかき集め、自ら立ち、歩き、踊る自動人形――つまりオートマトンを作り出した。


ヴァナ・ディールの技術水準からするとまさしくオーパーツ級の技術に思えるオートマトンだが、これを可能にした技術は既存のマリオネットに使われていた工芸や工業の類だけではない。
オートマトンが見せる人間のような知能や言語、機械とは思えないほどの自然な動きをもたらしているのは、皇国の学術の精髄とも言える錬金術、特にその生命工学に由来するものなのである。


それを裏付けるかのように、オートマトンの部品には金、水銀、ガラス、ミスリル、樹脂といった無機質も使われているが、
スライムオイル、ヘクトアイズの目、フランの肉、合成獣の血、クァールの髭、電気ウナギといった生物由来の材質もまた多用されている。


初期のオートマトンは、まず宮廷傀儡師や皇国軍といった政府組織に配備され、そこで蓄積されたデータをもとに更なる改良が進められた。
そしてデータのフィードバックとたゆまぬ改良の結果、近年では民間需要に対応してデチューンした民生用オートマトンも普及が進んできている。


しかしオートマトン技術が進歩してきたとはいえ言え、その調律、つまりメンテやカスタマイズは流石に未経験のド素人が行える程容易なものではない。
このため民間での運用が一般化するにつれ、現場レベルにおけるオートマトンの専門家が必要とされるようになった。これがつまり、「からくり士」と呼ばれる者たちである。


こからくり士はオートマトンと共に様々な分野に進出していったが、最も目立ったのは、やはりその古巣とも言える芸能分野だった。
オートマトンの文字通り「生き生きとした」その動き、愛らしい踊りやしぐさ、人間のような口上はたちまち大衆を虜にし、からくり士は皇国全土で大人気の芸人となる。
またこうしたからくり士が使うオートマトンは、マスターとの触れ合いによって思考力や言語機能が発展し、情緒も豊かになる傾向が見られており、人形師達を驚かせている。


だが一見華やかな大衆芸能の世界が、一歩踏み込めば裏社会と深く関わっていることもあるのは皇国でも同じこと。
新参で有力な後ろ盾もなく、それでいて業界のシェアを大いに食い荒らしたからくり士はそうした「懐古主義者」の実力行使を受けることも度々であった。
このため、自衛の為に「拳刃」サインティと呼ばれる格闘武器や暗器などを持ち歩くからくり士も多い。


しかし今や中の国にさえ知られるようになったオートマトンだが、その開発、実用化に至るまでの経緯には不可解な謎が少なくない。


そもそもオートマトンの開発にあたり、皇国は「民間プロジェクト奨励金」の名目でガッサドへ国家プロジェクト級の予算を投入している。
さらにオートマトン開発計画は必ずしも順調に進んだわけではなく、その初期においては幾度もの挫折もあったが、皇国首脳部はそれでも尚強力な支援を行い続けた。


特に先帝ジャルザーンは皇太子時代にガッサドを自らの家庭教師として迎えいれただけではなく、長じて後はその弟子であるジュブリールを夫人の一人として娶ってすらいる。


皇国首脳部、特に皇族がオートマトンに向ける情熱は尋常ではなく、貴族の中には「建国の神話に登場する白き神『アルザダールの鉄巨人』を再現しようとでもいうのか?」と噂する者もいたという。




◆「からくり士48の必殺技」

ストリンガー(遠隔武器)
本来は弓や銃を装備する「遠隔武器」スロットに装備できる、からくり士の基本装備。高周波でオートマトンに命令を伝達する装置である。
オートマトンに対して指示を出すにはこれが必須であり、これなしではオートマトンには戦闘命令しか出すことができない。
上位のストリンガーになると、マスターやマトンを強化するステータス、あるいはオートマトンの位置取りを制御する機能が付くようになる。



○○マニューバ(遠隔武器)
オートマトンを制御するための特殊アビリティ。ファイアアイスウィンドアースサンダーウォータライトダークの8種類がある。
具体的な効果はオートマトンの構成によって変わり、
「属性に対応するオートマトンのステータスがアップ」
「オートマトンの優先行動を決める」
「性能上昇型アタッチメントの効果を強化する」
「使用型アタッチメントの使用トリガーになる」
「行動制御型アタッチメントの強制力を強化する」
などがある。
最大3つまで同時につけられるが、使うごとに「熱量」という内部数値がたまっていき、一定以上に達すると確率で「オーバーロード」という過負荷状態が発生することがある。
この状態ではオートマトンの性能が著しくダウンするため、これを避けながらマトンを操作する必要がある。



腹話術(アビリティ)
敵1体が持つオートマトンとマスターの敵対心を交換するアビリティ。
主に「自分がタンクをしているのに、マトンが敵対心トップになってしまった時」または「マトンがタンクをしているのに、自分が敵対心トップになってしまった時」などに使う。
使い手の腕が現れるテクニカルなアビリティで、重要な場面でこれを咄嗟を使いこなせると間違いなく拍手喝采される。パーティメンバーがからくり士の仕様を知っていればだが
これ以外にも「黒衣チェンジ」(オートマトンとマスターの現HPを交換)、「タクティクスウィッチ」(現TPを交換)などもある。



オーバードライヴ(アビリティ)
効果時間中、オートマトンの性能が超強化されるアビリティ。要するにトランザム。効果時間は基本3分。
強化項目は攻撃速度(ヘイスト)、状態異常への絶対耐性、各種アタッチメントの性能強化、オーバーロードを一切しなくなるなど多岐に渡る。



ターボチャージャー(アタッチメント)
攻撃速度をアップさせる性能上昇型アタッチメント。ランクはIIまで。
火力の向上に直結するため、白兵マトンや射撃マトンの使用時には是非とも装備しておきたいアタッチメント。
対応しているのはウィンドマニューバで、つけるごとに速度が上がっていく。



アイスメーカー(アタッチメント)
ついているアイスマニューバを全て消し、次の攻撃魔法のダメージを上昇させる使用型アタッチメント。
主に黒マトンで使用され、アイスマニューバ3つ点灯時の威力は目を見張るものがある。
しかし連続使用するためには魔法を使うたびに消えていくアイスマニューバを立て続けに使い続ける必要があり、負荷が凄まじいことになる。



ダメージゲージ(アタッチメント)
HP回復魔法であるケアルの使用優先度を引き上げる行動制御型アタッチメント。ランクはIIまで。
これを搭載するとオートマトンがよりHPが残っている状態でケアルを使うようになる。
対応しているのはライトマニューバで、つけるごとに使用基準HPが上がっていく。



アーマーシャッタラー(ウェポンスキル)
オートマトン(射撃マトン)が使う射撃属性ウェポンスキル。射撃戦スキル325、レベルで言うと86あたりから使用可能。
オートマトンが使用可能な物理攻撃の中でも最強の威力を誇り、単発火力だけなら他のペットジョブにも(それほど)引けを取らない強力なWS。
オマケに敵を防御力ダウンにするという追加効果までついている。
対応しているのはウィンドマニューバで、つけている数に応じて使用の優先度が上がる。



乾坤圏(武器)
FF11の最強武器の一つ「ミシックウェポン」に属するからくり士専用格闘武器。名前やグラフィックはそのまんま中国の伝統的な武器である(無双シリーズ孫尚香が使ってるアレ)。
「マニューバ使用時の熱量が1/3になる」という独自プロパティが非常に強力で、これを装備するとよほど無茶な運用をしない限りオーバーロードとは無縁になる。
そして装備中は「連環六合圏」という強烈なWSがボーナス付きで使用可能になり、さらに「マーシャルアーツ+50」という特性を持つため、殴り武器としても脅威的な火力を持っている
……のだが、現環境だとこれがアダになってしまう場合が多々ある。
このマーシャルアーツとは、大雑把にいって「ゲージ蓄積量を犠牲に攻撃速度を上げる」という効果なのだが、バッファー(強化を担当するジョブ)の性能が上がった現在では、その強化だけで攻撃速度上限まで達してしまうことがある。
この場合、マーシャルアーツは「攻撃速度はもう上がらないのに、ゲージ蓄積量はしっかり下がる」という形で作用するため、総火力に大きなハンデを背負ってしまうのである。
この為、強化の程度が低いパーティ、あるいはソロプレイではその火力を存分に発揮できるが、支援が厚くなるにつれて他の武器に追い抜かれていくという悲しい事態になっている。修正はよ。



チルコアタイア(防具)
LV60で装備できる「アーティファクト」、LV75で装備できる「レリック装束」に続く第3のジョブ専用防具「エンピリアン装束」のからくり士用。LV90で一式をフル装備可能。
シックでオサレな近東風デザインのアーティファクト・レリックと全く異なり、「芸人」であることを強調したド派手な道化師風のデザイン(顔はベネチアンマスク風)。
しかし腰にはタンバリンやマラカスなどの楽器に加え、こっそり暗器もぶら下げているのがいかにもからくり士である。
性能面では優秀の一言で、そのレベルまでまともな前衛装備がロクになかったからくり士の近接戦闘性能を一気に上げてくれる。
LV99以上になると、これを素材に強化した「カラゴズアタイア」が装備可能になる。




◆「プレイヤー的な意味でのからくり士の歴史」

※ここからはややディープな用語が登場します。



1 『(こんな性能でゲーム内に)投げ込んだのは貴方じゃないですか』

「実装初期は低空飛行」というのは11における新ジョブの定番だが、からくり士はまさにその法則の体現者とでも言うべきスタートを切った。


初期のからくり士の問題点は……というか「問題点しかない」ジョブだったが、その中でも顕著なのを抜き出すと以下のような感じになる。


×「オートマトンが弱い」
耐久力や火力は貧弱そのもの、プレイキャーキャラのケアルも届かない、魔法は30秒に1回ぐらいしか使わない、一度呼び出すと倒されても20分は復帰できない、すぐオーバーロードする、などなど。
同じペット主体型であった獣使いや召喚士のペットに比べ、あまりにも貧弱すぎる性能だった。


×「本体が弱い」
からくり士本体は格闘武器を使う前衛タイプなのに、耐久力や武器適正といった近接戦闘力がほとんど魔道士レベル。
更に装備グループが完全に後衛タイプで、前衛用の装備が全くと言っていいほど装備できず、ちょっと気合を入れた白魔道士にも劣る火力しかなかった。


×「ランニングコストが高い」
アタッチメント類、ヘッド/フレーム作成時の部品、オートマトン専用の回復薬品「ルブリカント」と、とにかく金がかかるジョブだった。
後衛用の近接攻撃装備も数が少ないゆえに稀少であり、こちらも重視するとさらに金が飛んでいくことに。


とこんな具合に凄まじい性能をしており、とてもパーティプレイで使えるようなジョブではなかった。
しかし本体・マトンのいずれも貧弱極まりなかったため、ソロプレイでも特に強いわけではなく、「実用性は皆無の趣味ジョブ」という評判をこの時点で決定的なものとする。
さらにそのせいで「パーティに参加できない⇒誰も性能を知らない⇒ますます参加できなくなる」という悪循環に完全に入り込んでしまうことになった。


実装から1年と少し経った頃、ある時のVUで「特定のヘッドとフレームを組み合わせた場合、なぜか魔法の再使用間隔が0になる」という挙動が発生。
これによって、それまで
「マスターが大ダメージをもらおうが瀕死になろうが、1回魔法を使ったら30秒は断固としてケアルは使いません!」
ツンツンだったマトンが、マスターのHPが減れば即刻ケアルで回復し、空いた時間を使って弱体魔法を敵に入れまくるという完デレ状態へと化けた。
これによってソロプレイにおける安定性が爆上がりし一気に強ジョブと化した(ソロ限定で)が、あからさまにバグくさい挙動であり、案の定一か月と経たずに修正。
再び元のボンクラofボンクラへと戻り、全からくり士を涙させた。
こんなにも……こんなにも悲しいのなら、苦しいのなら、強化などいらぬ!



2 『(アビセアの)力と(ソロプレイの)覚悟』

数年後、『アビセア三部作』が実装され、従来の戦闘/ジョブバランスが一気に激変した。


アビセアエリアでは特定の性能傾向を持ったジョブが猛烈に強化される一方、それ以外のジョブは相対的に地位を落とすことになったのだが、なんとからくり士は意外にも前者に入った。
クリティカルヒットの強化で主力WS「連環六合圏」が超強化され、元々高かった回避性能がさらに上がったため、モンクや忍者同様に「アタッカーを兼ねた回避型タンク」として機能し得るまでになったのである。
おまけにからくり士は高位ケアルを使用してくれる白マトンを使うことで自己回復が可能であったため、ソロ性能に限ればモンクや忍者すら上回るほどだった。


……のだが、アビセアエリアでは特殊な経験値システムと「報酬弱点」という仕様のせいで、ソロ活動自体にあまり意味が無く、せっかくの高性能も脚光を浴びることはほとんどなかった。


そしてPTプレイとなると「他ジョブの下位互換の寄せ集め」でしかないという点は全く変わらなかったため、結局のところアビセアにおいても「人数外」のジョブであることにはなんの変りもなかったのである……


しかしそんなからくり士に対し、三部作のトリを飾る『アビセアの覇者』実装と同時に、突如として救世主が舞い降りる。
新実装されたからくり士専用格闘武器、「ブラッティナイオ」である。


これは武器としての性能こそ標準的だが、「オートマトン:リゲイン」という追加プロパティがあまりに素晴らしい物だった。
「リゲイン」というのは自動でTP(技ゲージ)が回復していく強化状態の事で、しかもそのリゲイン量が3秒間で10%(TP100%以上でWSが撃てる)という凄まじいもの。
これによって
・白兵マトン ⇒ ダメージ分のHPを吸収するWS「カニバルブレード」を高速連射することが可能になり、絶望的なもろさを克服してタンク役が可能に
・射撃マトン ⇒ 遠距離DPMが3-4倍に跳ね上がり、獣使いや召喚士と比べても遜色ない火力を実現
などといった劇的な変化がもたらされ、ようやく他ジョブに劣らない性能を手にした。
入手難易度もそれほど厳しくはなかったため、実装から間もなくしてからくり士の殆どにその装備が行きわたることになる。


が、しかし実装から約半年の後、何の前触れもなく

格闘武器「ブラッティナイオ」の性能を調整

というそっけない一言と共に「リゲイン量9割減」という超絶弱体化を喰らい、一気にガラクタ武器と化した。


だが修正前のブラッティナイオの超性能もってしても、「からくり士が強ジョブになった」というわけでは全くなかった。
むしろ「これがあって初めて他ペットに並べる」程度の性能しか持っていなかったのがからくり士だったのである。
またVUと同時にからくり士に施された調整が「開発はからくり士の仕様を理解してるのか?」と疑ってしまう程の酷さであったことも、これに拍車をかけた。


当然ながら、公式フォーラムには怒り狂ったからくり士からの猛抗議が殺到。
開発サイドも慌てて

今後のからくり士の調整を行う上で見直し前のブラッィナイオの性能を前提とした強化を続けていくのは望ましくないと判断し、見直しを行いました。

の言い訳を掲示したが、からくり士の怒りはまったく収まらず、フォーラムは開設以来の大炎上に陥った。


しかし結局のところ調整の撤回はなされず、また「修正前のブラッティナイオの性能を前提にすると強すぎる」ような強化も来ることは無かったのである……




3 『(忍か戦@1人募集中ですとか言われると期待しちゃって)キモいから(「か」という略称の)名前で呼ぶな』

アビセア後も「明らかに他ジョブと比べて立場がない」からくり士には様々な点で調整が入ったのだが、
結局のところ劣化ジョブの集合体という点は全く変わらなかったため、それらの調整にもなんら効果はなかった。


そして最終ディスクとなった『アドゥリンの魔境』も半ばに達した頃、「フェイス」というお助けNPCシステムが実装される。
これは有名人の「分身」を呼び出せる魔法で、これによって「白魔道士型NPC」「ナイト型NPC」「吟遊詩人型NPC」といったNPC達と疑似的なPTを組むことができるようになった。


これによって、からくり士のほぼ唯一のアドバンテージであった「白マトンを使って疑似的なモンク+白魔道士PTを組めるので、ソロが結構強い」という長所がほぼ消滅
からくり士はいよいよもって進退窮まることになった。




4 『何もできないだなんて言わせない』

そして恐らくサービス開始以来のバランスを実現しているといっていい現在(2017年12月)でも、やはりからくり士の立場は非常に厳しいと言わざるを得ない。
だが「近年では最も調整された回数が多いジョブ」という称号は伊達ではなく、相対的な地位はともかくとして、絶対的な性能はかつてに比べ遥かに向上している。


特に白兵マトンの頑強さはかつてとは比較にならないほどに向上しており、「実質的にナイトや魔導剣士よりもタフ」と評価されているほど。
敵対心周りが微妙だったり、死の宣告に弱かったりと弱点もないわけではないのだが、状況によってはパーティのタンク役もきちんとこなせるほどには改善された。
他のタンクを一瞬で機能停止させてしまう「魅了」系の状態異常に対して完全耐性を持つという利点もあり、「マトン盾が最適」という状況も皆無ではなくなっている。
他のマトン?聞かないでください


しかしあまりに長かった不遇から、例によって「からくり士の事は何も知らない」という人も多く、そういう状況でも参加できるとは限らないのが悲しい所。


『力と覚悟』

ときは降り、2022年。FF11サービス開始20周年の年。この頃にはからくり士が広く知られることとなり、そのとてつもないポテンシャルが明らかになった。
本体は基本的には殴ることしかできない劣化モンクであるという立場は変わりないものの、数度の調整によって攻撃性能自体は大きく強化され、
真の本体と呼ばれるオートマトンの隠された仕様の数々が判明するにつれ、「一部モンスターの危険な攻撃のロジックにかからない」
「ケアルタンク無限MP編」「オートマトンの連携超連打」といった人間では再現不可能な意味不明の仕様が判明。赤魔道士の専売特許であった「○○をソロで攻略」を次々と達成するなど、とんでもない戦術が編み出されることとなった。
一部の高難易度コンテンツでは下手をすると普通のジョブよりも活躍できほど知る人ぞ知る「強い」ジョブとしての立場を確かなものとしている。


一方、依然として難解なセッティングや独自の仕様、煩雑な操作などからプレイヤー人気は圧倒的に低く、2014年まで行われていた『ヴァナ・ディール国勢調査』では圧倒的な不人気ジョブであった。
この点は現在においてもあまり変化がなく、そもそも取っていないのはもちろん、からくり士をLv99にしたけどやりたいことがなく他のジョブをしている、という人は結構いたりする。
だが、それゆえに「ハマった」プレイヤーはからくり士から離れられなくなるほどに奥深く、強く、そして面白いジョブと言われている。


あらゆるすべてがオンリーワンであるからくり士は『てっぺんを取ったことがない』のではなく、すでに『からくり士というてっぺんを取っていた』のである。


◆「有名人」

「待って!そう言ってソロ活動を始めて、売れなかった芸人をボクはたくさん見ている!」


「オレだって、『これ相方いる必要まったくないよな』って芸人をたくさん見てきたぜ。」

「イルキワラキ」with「エリザベス」Iruki-Waraki & Elisabeth (NPC)

(イルキワラキ)
タルタル♂。皇国の首都アルザビでも有数の人気を誇る売れっ子からくり士。
しかし現在は自身のオートマトンを失っており、アトルガン白門の片隅で所在無さげに座り込んでいる。
性格は……元FF11プレイヤーに対しては「エロ樽」の一言でほぼ完全に通じるであろう愉快な男。日課は流行の調査と称して街をゆく女の子のお尻を観賞すること。
からくり士のジョブ所得、アーティファクト所得などの連続クエストの中心となるキャラで、笑いあり涙ありの愉快な同クエストの思い出から印象に残っているからくり士も多いことだろう。


(エリザベス)
外見はコバルトエアリーズ。
イルキワラキのオートマトンで、からくり士が所有する民生用オートマトンにしばしば見られる、知能・情緒・言語の発展が非常に顕著。
ストリンガーによる操作どころか、マスターの命令すら必要とせずに好き勝手に歩き回る。性格は乱暴で短気、かつ自信家。
しかしそれ故か向上心が見られないマスターに対しいらだっており、ある事件をきっかけに「家出」してしまう。



「そろそろ静かにしたらどうだ?」


「なにヲいウ。よろこビヲ、がまんスルナド、ぐノこっちょう!」


「そうよ、メネジン…だって、この幽霊船ってば…想像してたよりも、ずーっとわくわくする乗り物なんだもの!」

「アフマウ」with「アヴゼン」「メネジン」 Aphmau & Ovjang & Mnejing (NPC)

(アフマウ)
ヒューム♀。アトルガン皇国の宮廷に仕えるからくり士、つまり「宮廷傀儡師」の少女。15歳。
2体のオートマトンを同時に操ることができるからくり士で、またそのオートマトンの生き生きとした挙動からも相当な腕であることがわかる。
今上の聖皇であるナシュメラ2世にも寵愛されており、しばしばその意を受けて宮廷外に赴くこともある。
『アトルガンの秘宝』のメインヒロインで、オレっ娘な前ヒロインとは対照的な世間知らずのお嬢様キャラで大いに人気を博した。
フェイスとしても勿論実装されているが、ゲームの仕様上「フェイスがペットを使う」ということができないため、メネジンやアヴゼンとは別のフェイスとなっている。
マトンが使えないからくり士なんて……と思われるかもしれないが、白魔道士の能力を併せ持つ上、使うWSが一種類に絞られていて逆に効率が良く、使い勝手は良好。


(アヴゼン)
外見はカーマインスコーピオー。
アフマウのオートマトンその1。アフマウが亡き母から受け継いだもので、性格は尊大だが陽気、かつ軽い。


(メネジン)
外見はホワイトキャンサー。
アフマウのオートマトンその2。アヴゼンに比べると発声が流暢で、性格は真面目。
アヴゼン、メネジンは共にオートマトンとしてはかなり旧式の部類に入り、マスターが近くで命令を出さない限り自律的な意思は発揮できない。



「ヤァ、君モ一緒ニ、踊ラナイカイ?」


「おや、ワシの人形に気に入られたようじゃの。こいつの名はバルキーンというんじゃ。仲良くしてやってくれ。」

「シャマルハーン」with「バルキーン」 Shamarhaan & Valkeng (NPC)

(シャマルハーン)
エルヴァーン♂。老齢のからくり士だがいまだに現役の芸人であり、中の国のバストゥーク共和国に巡業に来ている。
からくり士としては最古参の部類に入り、それ以前は皇国軍の人形使い兵だったらしい。
イルキワラキの師匠でもあり、性格も弟子に似たり寄ったりだが、流石に年の功というべきかキメる所ではきちんとキメたりする。
殆どのプレイヤーが最初に目にするはずのからくり士であり、からくり士のジョブ所得の際も彼に話しかけることからクエストが始まる。そしてからくり士でレベル75キャップ解放試練に挑むと、彼が試験官として立ちふさがる。


(バルキーン)
外見はコバルトエアリーズ。
シャマルハーンのオートマトンで、マスターと共にバストゥーク商業区の噴水前で芸を見せている。
からくり士としての経歴が長いシャマルハーンは何度か自身のオートマトンを失っているが、そのたびに同じ名前を付けている模様。






※「からくり士にとって、ROM専だけがすべてではありません。オートマトンと共に追記:修正するものが、からくり士なんです! 」



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【スタンドードジョブ】
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【エキストラジョブ】
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【ジラートジョブ】
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【アトルガンジョブ】
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【アルタナジョブ】
踊り子・学者
【アドゥリンジョブ】
風水士魔導剣士


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  • 乙。FF11のジョブの記事シリーズ、FF11全く知らないけど読んでて楽しいのでこれからも楽しみにしてます -- 名無しさん (2017-12-15 00:59:12)
  • 思わず調べたけど「キモいから名前で呼ぶな」わろた -- (2017-12-15 04:36:25)
  • FF11記事はどれも読んでて面白いしやりたくなってくるなぁ。今から始めて楽しめるもんなんだろうか -- 名無しさん (2017-12-15 10:29:29)
  • 現役だけど前のFF11とは別ゲーレベルで利便性が改善されてるから余裕で始められる。長く続きすぎてデータ多いから先人は欲しいが新規ってサチコメにでも書けば古参が絶対拾ってくれる。こういう読んで楽しい記事はもっと増えて欲しいねぇ。 -- 名無しさん (2017-12-15 19:20:21)
  • 今はLV99&フェイスのおかげでメインミッションがほぼソロ可能だよ シリーズの中でも上位の世界観 ストーリー NPCの濃さを味わってほしいw -- 名無しさん (2017-12-15 21:32:10)
  • AFのオサレさは随一だと思う 可愛い -- 名無しさん (2017-12-16 00:34:24)
  • ff11をやりたくてもやれないからこのff11のジョブ記事群はとてもエアプレイが捗るから好き。ぜひ全ジョブ制覇してもらいたい -- 名無しさん (2017-12-16 12:28:11)
  • エリーかわいいよエリー でもハゲのほうがもっとかわいいよ -- 名無しさん (2017-12-21 02:35:14)
  • そういえば「開発側が理解していない」ってのは旧FF14でもあった気がする。ともあれ相変わらずの質と量を兼ね備えた記事お疲れ様です。 -- 名無しさん (2017-12-21 03:18:19)
  • やってた頃は魔法タイプで攻撃させて戻せばヘイトそのまま抜けるから攻撃し放題みたいな強みはあったな、ただHPMAXじゃないときに戻したらペナとかそもそもこのジョブ自体が何やってんのかわかんないみたいなところがあった -- 名無しさん (2022-03-29 13:45:48)
  • いまの11はすごくとっつきやすいので実際にからくりやってみて欲しい。マトン かわいいよマトン -- 名無しさん (2022-12-10 00:56:21)
  • 白兵フレームの硬さとヘイト獲得力が半端ないのでオーメンボスやソーティでもある程度盾役が可能。また、同じジョブが出せないジェールでの三戦のうちどこかでからくり(マトン)盾で戦う場面も増えてきている。相変わらず白兵以外のフレームは役に立たないけど、マトンの硬さだけならやばい、そんなジョブ。 -- 名無しさん (2023-06-27 01:49:20)

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