スラオシャ/ラシュヌ(神名)

ページ名:スラオシャ_ラシュヌ_神名_

登録日:2017/11/01 Wed 00:08:02
更新日:2024/02/15 Thu 13:42:58NEW!
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『スラオシャ』『ラシュヌ』は、古代ペルシャで信仰され、ゾロアスター教にも組み込まれた神。
共に、元々は共通した信仰の下地があったと考えられる隣国インドにも名前が伝わる、『アリヤマン』を原型とすると考えられている。


以下に、個別の解説。



■スラオシャ


美しい少年神であるとされ、名は「従順」と「規律」を意味すると伝えられる。


人への「助力」と「導き」を司る優しき神であり、ラシュヌとは互いを補完し合う存在である。


この二神は、共に「正義」を司る契約の神ミトラの従者を務めるとされている。
ミトラを唯一至高の神とするミトラス教でも脇待神としてカウパス、カウトパテスと呼ばれる一組の少年神が付けられていたようである。


紀元前6世紀頃に宗教改革者ザラスシュトラが同地に誕生させたゾロアスター教では、下級神群(ヤザタ)の地位に置かれたものの、仕える主であるミトラ、ラシュヌと共に、ゾロアスター教の信徒が天界に至れるかを試す「審判の橋(チントワ橋)」を守護する三神の一柱としての地位を得た。


「審判の橋」は細く、生前の信徒の悪行の重さにより崩れるとされる。
「審判の橋」を渡る行為は死者にとっては、何物にも変えがたい程に恐ろしいものだが、スラオシャのみは途中まで死者に付き従い魂の行き先を示すともされる。


スラオシャはミトラに仕えるヤザタの一柱であるが、時に至高神アフラ・マズダの分霊たる上級神アムシャ・スプンタの一柱にも数えられる。
スラオシャがアフラ・マズダの耳として、アーリマンの生み出した悪に苦しめられている人々の声を聞き、伝令に走るとされたからだが、
本来のスラオシャが耳を務める神とは、ミトラの事であろうと考えられる。


スラオシャは音楽を愛する、俊足の優しき神であるが、古代ペルシャで畏れられ、ゾロアスター教に於いても大悪魔として語られるアエーシュマとは敵対し、対決の際には甲冑を身に纏い、勇ましく斧を持って戦う。


スローシュ、スルシュ等とも呼ばれ、この名は同地に侵入して、ゾロアスター教の威勢を削いだイスラムに伝わる。
イスラムでもスルシュは神(アッラー)の伝令を伝える使者であり、伝令の天使としてイスラムで最も尊崇される大天使ジブリールとも同一視された。



■ラシュヌ


スラオシャと同じくミトラ神の従者とされる。
「審判の橋」に挑む死者の魂を、手にした黄金の天秤にかけて3日間の間、その価値を慎重に測ると云う。
ラシュヌの天秤により悪の方に染まっていると判断された魂は橋から突き落とされ、地獄(「不義の館」)へと向かわされたと云う。


スラオシャ同様、アエーシュマと敵対し、二神で立ち向かうと云う。



【アリヤマン】

スラオシャ、ラシュヌ共に、その原型となったのはバラモン教以前より、古代インド~ペルシャ地域で信仰された自然神群アーディティヤ神群の内の一つであり、最高位のヴァルナ、ミトラに仕えていた従神のアリヤマンであると考えられる。
アリヤマンは「歓待」を意味する神群の三番手であり、当時の神格はインドラよりも上であった。
アリヤマンは獅子の頭を持つ、優しくも厳格な神であり、怒らせた相手に対しては破壊者としての顔も見せた。


アリヤマンは、ミトラの従者として、ミトラの主宰する世界創造の聖牛解体の供儀を執り行う役目の神であったとされる。


アーディティヤ神群の内、最高位のヴァルナはアーリア人がインド地域に流入し、インドラやブラフマーが台頭するまでは最高神としてリグ・ヴェーダでも詠われたが、ミトラはアーリア人の流入する頃にはインドでの人気を失い、アリヤマンと共にペルシャでの信仰が強くなった。
ヴァルナはペルシャではアフラ・マズダと呼ばれ、矢張り最高位の神とされた。


そして、前述の様に元来は古代インドと共通する自然神信仰があった古代ペルシャで、宗教改革者ザラスシュトラは同地のアフラ・マズダ信仰を基に、アフラ・マズダを唯一至高神とするザラスシュトラのマズダ教を確立。


ザラスシュトラのマズダ教は後にゾロアスター教、更にはミトラ教を生んで、ユダヤ系の一神教や仏教にも影響を与えていくことになる。
古代ペルシャでの、この辺りの経緯はアフラ・マズダの項目他、他の関連項目も参考にしていただきたいが、ザラスシュトラのマズダ教に於いて、
ミトラ神の従者であったアリヤマンはキリスト教世界の敵対者サタンの原型になったともされる、破壊神アングラ・マインュへと姿を変え(られ)た……とされている。


これについては、農耕民族に信仰されたアフラ・マズダを主と定めたザラスシュトラが、遊牧民族に信仰され、神事に於いて血腥い供儀を執り行うミトラやアリヤマンを嫌い、怒りの霊(アングラ・マインュ)と蔑み、悪魔へと転落させたとの説もある為である。


……しかし、これについては単に名前が似てしまっただけで、アリヤマンとアングラ・マインュ=アーリマン、アフリマンは別々の存在であるとする説もある。


スラオシャとラシュヌの存在は、その証明であり、零落したアリヤマンの救済、或いは元の名前から変わっても、信仰が残った結果であるとも考えられている。


尚、ミトラの従者としてのアリヤマンと悪神アーリマンの混同と融合はゾロアスター教やミトラ教以降も続き、後には悪魔王ルシファーの伝説とも結び付き、堕天した後に天に復帰する姿がイスラム化したミトラ教(ゾロアスター教)とも呼ばれるヤジディ教等に見られる。


古代ローマで信仰されたミトラス教は、ゾロアスター教から変化した中東地域でのミトラ教とも違う、ヘレニズム文学の生んだ多様な古代オリエントの秘儀から生まれた秘密教団的な性格があったが、此方でもアリヤマンの名は伝わり、畏れと崇拝が為された形跡が残る。





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  • 何故かメガテンでは大天使 -- 名無しさん (2017-11-01 00:15:00)
  • ↑ 悪魔と敵対している、ジブリールとも同一視される、というあたりを重視したのかもね。鬼神・魔神とかだとなんか違うし… -- 名無しさん (2017-11-01 08:41:40)
  • アヤリマンかと思った… -- 名無しさん (2022-09-04 21:15:38)

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