スペシネフ(電脳戦機バーチャロン)

ページ名:スペシネフ_電脳戦機バーチャロン_

登録日:2017/08/13 (日) 09:46:57
更新日:2024/02/09 Fri 10:43:22NEW!
所要時間:約 27 分で読めます



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電脳戦機バーチャロンシリーズに登場する汎用人型決戦兵器バーチャロイド。初登場時はエヴァブームだったんです。
初登場は『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム』。


「骨」とも「死神」とも呼ばれる鮮烈なビジュアルイメージの機体で、見た目と言いモーションといい性能といい、過剰なほどにあふれ出すピカレスクに惹かれる中二びょ……情熱的なプレイヤーは多い。
またデザインモチーフには「ヒール」「アウトロー」といった成分も多く含まれており、ヒール系のアイスホッケー選手だったり、チェーンソーを持っていたり、バカでかいスピーカーを背負っていたりと、アメリカンなスクールヤンクのイメージも併せ持っている。
あとどこにパイロットが乗っているのかは永遠の謎とされる





- [ アイザーマン博士 ] -


さてスペシネフの紹介に入る前に、まず知っておいてもらわなければならないことがある。
スペシネフやサイファー/マイザー景清などのSM-06(サッチェル・マウス)系のVRを語るにあたっては、その開発者であるアイザーマン博士に触れずに済ませることは不可能と言っていい。


現代のファッション界において「シャネル=ラガーフェルドの個性」という認識が、エロゲー界において「Empress=聖少女の個性」という認識が共有されているように、電脳暦の限定戦争においては「SM-06=アイザーマン博士の個性」というのが即ち共有認識なのである。


アイザーマン博士は、Vクリスタル由来の技術研究において古くから活躍していたVR技術、特にVコンバータの研究者である。その来歴は改ざん・消去された部分が多く、ある年代より以前の経歴は判然としない。
しかしその研究レベルの高度さからして、おそらくはかつての0プラントにおいて、V.プロジェクトに携わっていたスタッフの一人であることは確実視されている。


そしてプロフィールを見れば一目瞭然だが、その個性はあまりにも際立ったものである。


  • OMG(オペレーション・ムーンゲート。初代バーチャロンの舞台となった事故)が勃発したVCa0年に第6プラントに迎えられる。TRV-06系列の機体を使って最先端の実験を繰り返す。
  • OMG後のFR-08体制下、SM-06と名前を変えた第6プラントで、禁止令を無視して裏でVR技術開発を続ける。
  • FR-08の顔色を窺う上層部が煩わしくなり、SM-06の実権を掌握すべく外部と組んでクーデターを起こす。
  • 可変機構を導入した初の商用VR『RVR-42 サイファー』を実用化。
  • 究極の人権無視マシン『RVR-87 スペシネフ』を実用化。
  • 火星の先住者「マージナル」と独自に接触し、彼らに勝手に最新型VR『YZR-3900 マイザー39』を供与する。
  • それを超える新型を作ってみたくなったので、その改良型をマージナルの敵対勢力に供与する。
  • マージナルが運用していたVRに興味を持ち、その改良型を開発してマージナルに供与する。
  • 新技術を用いた実験を強行した結果、地球圏全域において第二世代型VRを活動不能にしてあわやオラトリオ・タングラムを中止させかける。
  • パイロットの消耗が激しすぎるスペシネフの運用がめんどくさくなり、『第六工廠八式壱型 景清』を実用化。

倫理観を投げ捨て、ひたすらに自己の欲望に突き進むその姿は、すがすがしいほどに「正しいマッドサイエンティスト」のそれである。
しかも単なる学者バカという訳ではなく、やりたい放題やるためには狡猾な政治的駆け引きさえこなすなど「常識はわきまえないけど、熟知はしている」というタイプのタチの悪い研究者である。
その明快なキャラクター性は、わかりやすい偶像性を好む限定戦争の視聴者層からも、当然のように大人気であったようだ。


とまあこんなキャラなので、当然ながら(メディアミックスの類が好きな)プレイヤーからも大人気の人物。
「やっぱこんなこんな人かな?」
「あんな漢マシンつくってんだぞ、こんな感じに決まってる」
「いや、意表をついてこういうタイプじゃない?
と人それぞれが「マッドサイエンティスト」に相応しいキャラクターを想像していた。


そしてXBOX360版バーチャロンフォースが発売された時、その愛蔵版においてついにそのビジュアルが公開される。
それは…









こんな人でした。曰く「並列三躯連環体 アイザーマン博士」斜め上すぎぃ!!!
「え?どの人?」と思うかもしれないが、この3人(あるいは3体)で「アイザーマン博士」が構成されているらしい。グループ名という訳ではなくて、文字通り一つの人格の脳と思考を複数の個体から構成するシステムのようだ。しかも


Y(左端)とR(右端)は♀個体


・中央のZは性別可変。本来は♂寄りの中性体だが、テンションによって♂にも♀にも変動


・Zが対人コミュニケーション担当。一人称はぼく。基本はひらがなトークで語尾は「~なの」


・超絶気分屋で、ほとんど多重人格に見える。


いかにもセガらしい自重0%で詰め込みまくった属性の数々は、訓練されたチャロナーをして戦慄させるほどであった。



とまあ、以下の記事を読むにあたっては、こんなアイザーマン博士のキャラクターを想起しつつ読んでいただきたい。





RVR-87 スペシネフ


- [ 開発経緯 ] -

謎の軍事組織「RNA」の勃興によって、盤石かと思われた地球圏最大の企業国家、「FR-08(フレッシュ・リフォー)」の支配体制は急速にほころび始めていた。
彼らが保有する軍事組織「DNA」第二世代型VRを配備したRNAの前に敗北を重ね、FR-08体制の一翼を担っていた「DU-01(ダンシング・アンダー)」「MV-03(ムーニー・バレー)」も斜陽のFR-08の支配から逃れようと画策し始める。
これらの動きに対し、第二世代型ライデンを開発した「DD-05(デッドリー・ダッドリー)」の謀殺で各方面から非難を受けたFR-08が対処を躊躇する内に、事態はどんどん悪化していくことになる。


対するRNA陣営は旧第4プラント「TSCドランメン」とその総帥『アンベルIV』を中心に一糸乱れぬ統率……とはいいがたいがそれなりの統一された意思を保ち、またFR-08陣営からこぼれ落ちた勢力も積極的に吸収して地力を蓄えていった。


旧第6プラント、SM-06もそんな転向勢力のうちの一つである。アイザーマン博士とその盟友ガギバ・マシュー大佐によって乗っ取られたSM-06は、その高い技術力によってたちまちの内にRNAに対する有力なVR供給源となった。
当初SM-06がRNA側に優先供給していたのは『YZR-4200(RNAでのコードはRVR-42)』 サイファー系のVRだったが、FR-08の新総帥となったリリン・プラジナーによって立て直されたDNA側が第二世代型VRを投入し始めると、戦局は必然的にRNA陣営とDNA陣営によるVR開発競争という向きも帯びてきた。


特に数において圧倒的に劣勢なRNAにとって、質の優位性の確保は最優先であり、アンベルIVは陣営の各プラントに対してVRのさらなる高性能化を要請する。
その要請に応えて、アイザーマン博士が新たに開発した次世代主戦機こそが『RVR-87 スペシネフ』であった。




- [ 機体構造 ] -

機体の方向性自体は、やや一撃離脱性能に重きを置いている向きはあるが、基本的にはMBV、いわば主戦機志向のスタンダードなもの。


一方でエンターテイメントビジネスでもある限定戦争において、兵器にやりすぎなほどの意匠が施されることは珍しくないなかでも、RVR-87の場合はこれが特に徹底されている。
ビジネス的な要求からきたものか、あるいは単にアイザーマン博士の稚気によるものかは定かではないが、この機体のキャラクターイメージは一貫して「ヒール」であった。


そのモチーフは明らかに「鎧を着た骨」そのもので、骸骨を意識した各部は一応の剛性こそ確保されているものの、非常識なほどに細く絞り込まれている。特に胴体部などはほとんどフレーム(背骨)しかないような状態である。


この脆弱な構造のため装甲防御力に難がある反面、機動性は非常に高い。特に地上におけるそれは極めて優秀で、アイススケート選手のように地表を滑走して高速一撃離脱戦闘を繰り広げることができる。
主要兵装は大型ビームランチャー『アイフリーサー』テムジンのMPBLを意識したと思われる多用途兵装で、状況に応じて多様なビーム弾を撃ち分けることができ、また変形することで大型の実体鎌にもなる。


が、なんといってもこのVRの神髄は、背中に搭載された羽型のユニット『EVLバインダー』だろう。


根本的な話になるが、そもそも「物質化したデータ」であるVRの性能の強弱とはどうやって決まるのか。それはVRの物質としての存在精度、即ち「実存強度」に依る。
実存強度が高いVRはそれが低いVRにくらべ、構造材の剛性が向上して負荷限界が上がり、駆動系の精度が向上しパワーとスピードも上がり、装甲の強度が向上して防御力が上がり…といった具合に、すべての性能において優位に立つことができる。


そしてVRの実存強度を決定する要素は大きく二つ。機体中枢であるVコンバータの性能と、搭乗パイロットの「バーチャロン・ポジティブ値」である。
バーチャロン・ポジティブ値とは人間のVクリスタルの人格エミュレート機能に対する耐性…まあ平たく言えば、VRの操縦システムに対する親和性である。
基本的にはこれが高いパイロットほど、より強い実存性を機体に与えることができる。(シンクロ率とかAMS適正とかを想起していただきたい)
しかしこの能力は個人の生得的なものであり、後天的に大きく強化することはほぼ不可能であることが判明していた。
よって商用VRの実用化以来、Vコンバータの改良が進む一方で、「何とかしてパイロットのバーチャロンポジティブ値も引き上げられないか」という要求が常に存在した。


アイザーマン博士が開発したEVLバインダーは、この要求に対する回答の一種でもあった。


EVLバインダーは内部にとある特殊素材を充填したユニットで、稼働中はパイロットの精神に対し非常に強力な偏向作用を及ぼすことができる。
この作用によってパイロットの感情が一方向に向け強く単純化されることで、パイロットとVRの仲立ちをする制御OS『M.S.B.S*1の動作が最適化され、疑似的にパイロットのバーチャロンポジティブ値を引き上げることができるという仕組みである。


この補正作用は極めて強力なもので、EVLバインダー稼働中のRVR-87は同世代機と比べても異次元レベルで高い実存強度を実現している。
異様なまでに軽視されたその装甲も、おそらくはこの特殊機能による防御力の補完を前提としたものなのだろう。


が、この一見革新的なシステムには、極めて重大な落とし穴があった。
先述した「強い偏向作用」とは、正確には非常に強烈な「憎悪」なのだが、この負の感情からもたらされる猛烈なストレスにパイロット自身の精神が耐えられなかったのである。
特に技術が不十分な運用初期ではこの問題が顕著で、多くのパイロットが発狂して「パイロット殺し」のあだ名をつけられることになった。


さらにこの感情偏向作用はコクピット内だけにとどまらず、機体を中心とした広域に精神ノイズという形で漏出した。
この作用領域内に入った無防備な人間は重度の精神変調をきたし、そのまま発狂して廃人となるのも珍しいことではなかった。
このあまりに凄まじすぎる作用は、バインダーに用いられている「特殊素材」に起因していた。


Vクリスタル質によって稼働するVRの宿命的な欠陥として、クリスタルがエミュレートするパイロットの精神(場合によっては肉体もろとも)がVディスク内に封じ込められてしまうという「バーチャロン現象」が発生することがある(この際に条件が整うと、VRがシャドウ化する)。
取り込まれた精神体は通常の場合数分と立たずに発狂して消失するが、その断末魔の怨念と憎悪はディスク内に残留思念情報として残り続ける。


この事故は特にVR開発の初期において多発し、その結果として、人間の怨念が封じ込められたVディスクが無数に残されることになった。
このディスクはそのままVRに用いるとほぼ確実にシャドウ化を引き起こしたため再利用もできず、かといって貴重なVクリスタル質を廃棄もできないため、ただ死蔵されているだけだった。


もうお分かりだろうが、アイザーマン博士はこの残留思念入りディスクをEVLバインダーの構造材として再利用したのである。
かつての犠牲者達の怨念に満ちたバインダーは目論見通りパイロットの憎悪を爆発的に向上させたが、素材が素材だけに副作用もすさまじかったということである。




- [ 活躍 ] -

「悪鬼のような白い幻影が舷側の間近を通過していった。
その影が近づくにしたがって我々の狂気の度合いも高まり、
それが遠のくにつれて心の影の圧迫度も和らいでいった・・・」


RNA陣営においては最後発のVRであり、しかもその存在が公に確認されたのは実用化からかなり経過してからのことだった。
正確にはそれ以前にもSM-06近辺を通る民間の宇宙船などから目撃の報告はあったのだが、乗員の9割以上が発狂もしくはそのままショック死していたため、数少ない生存者の証言も何らかの異常現象による集団幻覚だと思われていたのだ。
いうまでもなく、彼らはEVLバインダーの精神侵蝕作用の犠牲となった人々である。


やがてDNAとRNAの抗争の頂点である『オラトリオ・タングラム戦役』が本格的に開始されると、RVR-87も秘密のヴェールを脱ぎ捨て実戦へと投入された。
神出鬼没のRNA特殊部隊によって運用されたRVR-87は、甚大なリスクと引き換えに得た圧倒的な超絶性能でDNAのVRを蹴散らす活躍を見せた……という記録は実はあまりない。
まあ単純な話、その圧倒的な性能を考慮してもなお、リスクがあまりに大きすぎたのだろう。


まず、RVR-87の広域精神ノイズは敵味方に関係なくまき散らされるので、無防備でいると友軍も発狂させられてしまう。このためRVR-87を配備した部隊、及びその部隊と協働する部隊は、すべて厳重な精神防護措置を施す必要があり、この処置は当然部隊の運用コストを激増させ、戦略機動性も著しく低下させた。
またRVR-87自体のパイロットも、長時間機体に乗り続けると発狂してしまうので、1機に対して複数の交代要員を用意しておく必要があった。
当時の交代間隔がどれぐらいであったのかは公開されていないが、RVR-87がEVLバインダーを全力稼働させた場合、無敵の戦闘力と引き換えにわずか13秒でパイロットは精神崩壊して発狂し、機体は修理不可能なまでに自壊してしまったという。
通常稼働においても推して知るべし、と言ったところだろう。


勿論DNA側においてRVR-87の圧倒的な戦闘性能と、兇悪にも程がある広域精神侵蝕作用は大いに恐れられたのだが、それ以上に運用者のRNA側も、移動する心霊スポットとでもいうべきこのVRを大いに持て余していた節がある。


現にこの後、限定戦争の審判/コーディネイターにあたる『国際戦争公司』から「EVLバインダーはあまりに無差別な広域殺傷兵器であり、戦争興業においては安全上の問題がある」と戦闘中のEVLバインダーに対するリミッターの取り付けが勧告されるのだが、RNA側はさして抗議することもなくこれを受け入れている。


この措置によってEVLバインダーの稼働率は抑え込まれ、機体の実存強度も通常の第二世代型VRと大差ないレベルにまで下がってしまったが、0になったわけではないにしろパイロットに対する負荷やノイズの漏出なども大きく抑え込むことができた。
このリミッターはパイロットが手動で外し、最大稼働モードに移行することもできた(通称デスモード。フォースでは「NDEセルフ・クラッシャー」へと名を変えている)が、外すと13秒後に廃人となることが確定している恐怖のリミッターである。死か発狂かの2択を迫られない限り使用することはなかっただろう。


リミッター装備によって最大の長所を失ってしまったRVR-87だったが、しかし代償に得られた安定性という利点もまた大きかった。
さらに運用性が上がったことでRVR-87が各地の戦場に出没するようになると、元々義賊・ダークヒーロー路線で売っていたRNAの中においても一際目立つヒール性によって、あっという間に限定戦争の人気機体となる。


しかもそのキャラクター性ならば、「ありあまる憎悪でパイロットを廃人にしてしまう」「広域精神侵蝕作用で周囲に怨念をまき散らす」「その兇悪さのためにリミッターが取り付けられた」などといった兵器としてのマイナス要素(弊害)も、視聴者の興奮を高めてくれるプラス要素(セールスポイント)へと転じたのである。




- [ ゲーム内性能 ] -

短距離だが高速な地上ダッシュ、劣悪な空中機動性、高威力・高誘導だがゲージ効率が激悪な武器と、色々と特徴的な要素がつまった軽量機体。
最大の長所は何といっても武装の強力さで、圧倒的に悪いゲージ効率を考慮してもなおおつりがくるほど。
本体の高速性と相まってリードを守りやすい上に逆転もしやすく、攻めるも守るも自在の立ち回りが可能で「主導権を握っていく能力」が極めて高い。
地上攻撃の硬直をバグ技であるスーパーキャンセルである程度ごまかせるため、大技も割りと撃ちやすい部類。


基本戦法は比較的単純で、鬼追尾LWとRTLW(通称小玉と大玉)を撒いて、本体とのダブルアタックを仕掛けるというもの。RWとCWも、玉を気にしてミスを犯した敵をぶちぬくのに最適な性能となっている。
壁を抜ける上に縦に長いので単純なジャンプ回避を許さないRTCWや、弾速と回頭性が高く、同じ方法に走ってたら諦めるとまで言われる斜めスラCWが驚異的。
この単純だが完成された戦法のおかげで、玉をものともしない相殺性能を持つ一部のキャラ(グリ坊とかエンジェランとか)を除けばほとんどの相手に有利を取ることが出来る。
特にオラタン屈指の強キャラであるライデンに対してとても相性がよく、この点も高く評価されている。
一時期ライデン側は「どーせハメ殺されるんだし、開幕で脱衣してワンチャン勝負」というパターンまで研究されていたほど。


ただしゲージ効率という一点が強烈なボトルネックとして働いているので、この欠点をうまくカバーできるかどうかがスペシネフ乗りの指標と言える。
間違いなく全機中1、2を争う強キャラだが、機動力の根幹を支えている「スライド撃ち」と「漕ぎ」がツインスティック操作でないと非常にやりにくいのが困ったところ。
この為(ばかりでもないが)箱版ではやや地位を落としているが、それでも最上位の一角という地位は譲っていない。


- [ 派生機 ] -


一方通行専用スペシネフ“Rusty Blood”

ファッ!?
コラボ作『とある魔術の電脳戦機』に登場したバリエーション。名前はゲーム版から。
小説版ではアイフリーザーの精神干渉力を対人向けに振るって情報収集に役立て、ゲーム版では彼の能力「ベクトル操作」の応用攻撃を使用出来る。
ちなみに機体からの怨念はあえて機能向上のため増幅させた上で、OSとミサカネットワークを併用して抑制しているそうな。





YZR-XIII Sin スペシネフ13「罪」



- [ 開発経緯 ] -

RNA陣営の一角としてオラトリオ・タングラム戦役を迎えたSM-06だったが、トップであるアイザーマン博士も、その盟友にして軍部の統括者であるガキバ・マシュー大佐にしても、協調性がないという点では人後に落ちない二人であった。
アイザーマン博士は他プラントに協議どころか配慮すらせずに好き勝手に実験を繰り返すし、FR-08への憎悪に燃えるマシュー大佐もRNAの都合も顧みない独自の作戦をとってひんしゅくを買うといった有様で、結果的にSM-06はRNA陣営内においてすら孤立気味となっていった。


しかし時代はむしろ、彼らの姿勢に対して追い風となる方向へと向かっていく。DNA陣営の重鎮MV-03が、FR-08の支配下にある地球圏を疎んで独自に火星圏へ進出したのを皮切りに、各プラントがそれぞれの思惑で火星へと進出し始めたのである。
DNAとRNAという二大陣営の総力戦だったオラトリオ・タングラム戦役は地球圏でまだ続いていたが、その実それを構成する各プラントは、それぞれが独立し割拠する戦国時代へと移りつつあったのである。


そんな移り変わりから、SM-06が開発していくことになる第三世代型VRは、以前のようなRNA向けというよりはむしろ自社の軍事部隊(限定戦争用含む)向けのVRが中心となっていった。
YZR-XIIIもそんな自社部隊向けのVRの一つで、RVR-87を更新すべく開発された第三世代仕様機である。
しかしSM-06は最終的に三機種の第三世代VRを開発しているのだが、実はYZR-XIII系列はこの中では最も後発の機体になっている。


開発が後回しにされた理由は複数考えられるが、まず第一はRVR-87系列の根本的な運用コストの高さだろう。
限定戦争仕様のリミッターで制限されていたとはいえ、EVLバインダーの兇悪な精神侵蝕作用はなお残っていたので、パイロットの交代要員といい、部隊への防護処置といい、手間のかかるVRであることには変わりはなかった。
現にSM-06が月面施設の一部を再び制圧した時、施設の自衛の必要に迫られたアイザーマン博士は、既存のRVR-87の運用体制を整えるよりも安くつくという理由で新型VR・景清を開発、その生産ラインを新設している。
既存機の配備よりも新型機の開発・生産ラインの設置・運用体制の確立の方が楽だというのだから、その根本的な厄介さが知れようものである(ただし新型機に関しては、単に博士が作ってみたくなったからだという説もある)。


また二つ目の理由だが、どうやらRVR-87はMBV-707系列同様、他の第二世代型VRと違ってマーズクリスタルの影響下でも稼働できた可能性が高いのである。
これはEVLバインダーから発生する悪性の精神ノイズが、通常の第二世代VRを稼働不可能にしてしまうマーズクリスタル由来の攻性侵蝕波を相殺してしまうためである。


この現象が一般レベルで確認されたのは第三世代機であるYZR-XIIIに移行してからだが、RVR-87のEVLバインダーも後継機のそれと原理的には同一のものであり、同じことが出来たはずである(VR本体各部のフィルタリング機構がない分、効率は落ちただろうが)。
このためRVR-87を急いで改良する必要性が薄かったのではなかろうか。


しかし一方で、EVLバインダーの関連技術には高い将来性が認められていたのも事実である。
確かにRVR-87のそれはリスクが大きすぎて実用性に欠ける代物だが、工業技術の常として、改良によってリスクを低減し、効果をより高めることができるかもしれない。
そうした観点から、RVR-87の次世代型であるYZR-XIII系列機は、主にEVLバインダーの改良と発展に力を入れたものとなっている。




- [ 機体構造 ] -

外見からもわかる通り、基本的にはRVR-87の構造をそのまま踏襲しており、EVLバインダーを除けば大規模な技術的発展はない模様。
前述のとおりYZR-XIII系はEVLバインダーからの精神ノイズによる相殺効果のために、他の第三世代機と異なりVコンバータの対攻性侵蝕波フィルタリングを必要としていない。
しかしもう一つの第三世代標準装備である定位リバース・コンバート対応機能は持っているため、結局のところ他の第三世代機同様、その最大の特徴であるハイブリットVコンバータを装備しているものと思われる。


武装・運動特性などの基本要素はRVR-87同様だが、リミッター装備状態の同機の耐久力にかなり問題があったことの反省からか、装甲がいくらか強化されている。
とはいえ見た目の装甲厚はほとんど変わっていないので、これはバインダー改良の副産物で強度が向上しているのかもしれない。


基幹モデルであるSinはRVR-87の武装特性をそのまま継承したモデルであり、主武装の『アイフリーサー13』鎌装備のCタイプ
そして最大の特徴であるEVLバインダーは、新機構『アンデッド・コンバータ』を搭載した新型バインダーとなった。
これはEVLバインダーの増強機能で、戦場において周囲の戦死者が放出する断末魔の残留思念を吸収して、本体の出力に転換するというものである。


さらにこの機能によって依代となるEVLバインダーの実存強度が恐ろしく向上しため、高速射出することで一種の運動エネルギー兵器として使用することも可能となった。
この複合機能バインダーは『EVLスクリーマー』と名付けられ、Sinの象徴的な機構となっている。




- [ 活躍 ] -

当時の各プラントの自立化傾向に伴い、それぞれのプラントが自前のVRで自社部隊を武装させ始めていたが、SM-06の軍事部隊が主力機としたのはむしろマイザー系列、あるいは八式壱型系列のVRであった。
EVLバインダーを持つYZR-XIIIは相変わらず運用性に問題点を抱えていたので、通常の使用はやはり厳しかったようである。
特に八式壱型は「運用性がまともなスペシネフを」というコンセプトで開発されたこともあり、社内部隊におけるMBVの地位をYZR-XIIIから奪ってしまっていたのだ。


そんな事情から、YZR-XIIIの配備先はマシュー大佐直轄の「海賊艦隊」こと「マシュー艦隊」の特殊VR部隊に集中することになったようだ。
これは神出鬼没の強襲攻撃を旨とする宇宙艦隊で、主に攻撃用途で用いられる。そのため「攻撃側の自由」を行使することが容易となり、事前準備に手間のかかるYZR-XIIIの運用コストを下げることができたのだろう。
短期間に機動力と火力を注ぎ込む強襲運用もYZR-XIIIの性質に極めて合致したものであり、マシュー艦隊の特殊VR部隊においては確かな地位を築くことに成功している模様。


が、導入されたYZR-XIII基幹モデルの機能であるアンデッド・コンバータにまたしても問題が発生した。この場合機能的な意味ではなくて、倫理的な意味での問題である。
そもそも限定戦争はエンターテイメント興業の一種でもあるため、運営・放送に当たっては一応のレーティング規定が設けられ、不要な残虐行為や過度の暴力性が規制されている
しかし「死者の魂を吸い取って力にする」というシステムは、この倫理的規定に触れるのではないか、という物言いがついたのである。


紆余曲折の末、基幹モデルはその名称の末尾に、人道的に問題のある機体であることを示すためにThe Sin、即ち「罪」とつけることで落着した。
とはいえこれは、実際的な意味ではなんら規制として働くわけではない。というか限定戦争自体がエンターテインメントビジネスである関係上、スペシネフ系列のキャラクター性を考えればむしろ宣伝効果にしかなっていない気がするが…



- [ ゲーム内性能 ] -

字(あざな)にある罪の読み方は「ざい」。スペシネフ系の初期機体だが、オラタンスペとはかなり方向性が異なる。
まずスペシネフ独自の特徴的な機動特性自体は変わっていないのだが、速度自体が他機に比べ(相対的に)低下している。
逆に装甲値はほんのりと上昇しているが、テムAやアファ系、景清などのライバル主戦機に比べると心もとないレベル。
攻撃面でも立ち回りの軸であったLWの誘導、持続性が劣化し、本体の機動性が下がったこともあって基本戦術であったLWとの疑似ダブルアタックが有効ではなくなってしまった。
またCWも鎌からの衝撃波ではなくアファCのマチェットのような羽ブーメランになり、火力も下がった。


とはいえ、一転して弱機体に転落したというわけでは全くない。機動性が落ちたスペシネフにとって2on2という形態は追い能力を大きく低下させたが、全体的には明らかにプラスに働いた部分の方が多い。


立ち回りの基本となるのは、やはりLW。疑似ダブルアタックには使いにくくなったが、援護用の武器としては非常に優秀。高弾速で対空性能が極めて高いCWも、うかつな動きをした敵にぶっ刺しやすい。
この援護力を武器に相手チームの片方を引っ張りつつ、高い迎撃性能によって削っていくのが主な戦術となる。


オラタン時の徹底して追い殺す機体から、一転して迎撃主体の渋い機体となったが、そのタイプとしては極めてマッチした武装と機動性をもち、強い上にチームとしても安定した戦果を残しやすい。
あえて弱点を挙げるなら、劣悪なジャンプ性能と大きめの硬直のせいでダブルアタックがややつらいという点と、中程度のダメージをコンスタントに稼ぐ機体なので逆転力がそこまで高くないことあたりか。




- [ 系列機 ] -


YZR-XIII War スペシネフ13「戦」

攻撃機的な運用を想定した派生機体で、EVLバインダーは出力増強に特化した可変タイプを搭載している。アイフリーサー13は型のAタイプ。
このEVLバインダーには「マントラ・オーバードライブ」なる特殊機構が搭載されており、パイロットの憎悪をさらに増強することができる。
このためある意味ではRVR-87の正当な後継機と言えるが、Warの場合はバインダーによって得られた出力を攻撃性能に全振りしているらしく、VRのものとしてはけた外れの高出力を誇るソードウェーブをから放出することが可能となっている


(ゲーム内性能)


字は「せん」と読む。単発ビーム・縦ソード・玉の三点セットを持つ、オラタンスぺのガン攻めスタイルを顕著に受け継いだ機体。低速・鬼誘導のLWが復活したため、オラタンさながらの疑似ダブルアタックが可能になっている。
装甲は罪と同じだが、機動力は若干低下している。また前方向に進んでいかないと肝心のCWが機能しないので、防御・迎撃性能は罪に比べてやや低い。
ゲージ効率の問題で援護性能も劣るが、引き換えに得た攻撃性能は圧倒的で、文句なく強機体の一角に挙げられる。
その痛快なスタイルのおかげで愛好者も多いが、スぺシネフ13の中でも一際逃げ性能に不安があるため、ダブルアタックに対して非常にもろい点だけには注意がいる。


(Xbox360版)


箱◎版最大の問題児。アーケードにおける戦の地上斜め前CWは当たり判定が見た目と一致しておらず、高威力・高弾速・高誘導だが総合的な命中率はそれほどでもないという武器だった。
しかし箱版ではこの当たり判定が修正された上に、全体的な調整の結果として誘導性もさらに強化。高威力・広判定・高弾速・強相殺・鬼誘導・射程無限というフォース屈指のトンデモウェポンとなってしまったのである。


このあまりにも突き抜けすぎた命中率のせいで、プレイヤーマッチで選ぶと下手すれば切断される恐れすらあるほどの厨キャラと化した。
対策が進んできた現在では流石にかつてほどの絶対性はなくなった(あとテムAの兇悪さがクローズアップされてきたので目立たなくなってきた)が、それでも中級者ぐらいまでの試合ではぶっちぎりで凶悪な機体であること変わりはなく、愛機とするには鋼の心が必要となる。


しかもそのレベルでの戦対策とは「ダブルアタックに極端に弱い点をついて、相方ガン放置のダブルアタックで抹殺する」という身も蓋もない戦術なので、初心者が下手に使うと「戦使いに人権なんぞねぇ!」と言わんばかりの血も涙もないダブアタを受けてひとたまりもなくレスキュー待ちとなる可能性が高い(そして起き際に粘着される可能性も極めて高い)。
色々と業が深すぎる機体であり、プレイヤー的な意味ではこっちのほうがよっぽど「罪」である。



YZR-XIII End スペシネフ13「終」

敵VRの火器機能機能阻害に特化した特殊な派生機体。EVLバインダーは砲システムを兼ねた特異なモデルを搭載している。アイフリーサー13はチェーンソー型のBタイプ
このEVLバインダーには「ヴードゥー・ベクター」なる特殊装置が内蔵されており、バインダー内で生成した特殊なエネルギー弾「ソウル・クラッシャー」を攻撃用に射出することができる。
この攻撃を受けたVRは、装備する火器系統が機能不全を起こして使用不可能になってしまう。


このシステムの原理についてはキットが出てないのではっきりしないが、おそらくはEVLバインダー内の残留思念による攻性侵蝕波によって、敵VRのM.S.B.Sに動作不全をもたらすタイプの武装だと思われる。
いわばファイユーヴ「メロメロビーム」こと『エモーショナル・アタック』と同タイプの武器なのだろう(こちらの方はどう考えても「メロメロ」といったものではないだろうが)。
明らかに高度な技術によって成り立つこの機能にリソースを割いているためか、本体の火力自体は他の系列機に比べてやや低め。とはいえ、火器の機能停止というのは戦場においては致命的な事態である
ソウル・クラッシャーによって火器を封印し、無防備なVRに対してチェーンソーによる容赦ない接近戦を仕掛けてくるこの機体はただでさえ過酷な火星戦線における恐怖の的であり、むしろ他の系列機よりも恐れられていたほど。


(ゲーム内性能)


字は「つい」と読む。基本は援護特化型スペだが、援護武装がダメージではなくデバフに特化しているのが特徴。
TRW射撃でスリップダメージ+近接攻撃を封印、CW射撃で各射撃兵装のうち一つ(TCWではすべての射撃兵装)を封印する。ターボを除くCWはハーフキャンセル可能。


攻撃を封印する効果自体はそれなりに強力なのだが、基本的に敵武器の三種のうちの一つしか封印できないので、相手にもよるが最終的な抑止効果はそれほど高くない。(TCW射撃であればすべての射撃武器を封印できるが、ダウン値が低めで硬直も大きめなため反撃や横槍を受ける危険もある)


加えて火力不足があまりに深刻なので、どうしても総合的には弱キャラのそしりを免れない。
武器を除いた基本性能自体はスペシネフ系列で最も高く、近接性能も強烈なので、相手が攻めてこざるを得ない状況になれば相当強いのだが、基本はガン放置されると思って間違いない。
僚機がDAをさばけないとどうしようもないので、相方選びがとってもだいじ。


とは言えCW自体は当たると脅威になるのは間違いないので、しっかり当てていってこちらを向かせることができれば、連鎖的にその性能を発揮していくことも不可能ではない。
また状態異常武器の例にもれずCWはダウン中の敵に当てても有効なので、射程内での敵のダウンを察知したら欠かさずに打ち込んでおきたい。食らった人も「死体撃ちかよ!」と怒らないでいただきたい。




「悪鬼のような白い幻影が項目を追記・修正していった。その影が近づくにしたがってアニヲタの狂気の度合いも高まり、それが遠のくにつれて心の影の圧迫度も和らいでいった・・・」


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  • 竹さんがイラスト書いてたことが一番の驚き -- 名無しさん (2017-08-13 19:56:29)
  • アイザーマン博士…こんな機体を作る発想が生まれるからああいう形になれるのか、ああいう形だからこんな機体の発想が生まれるのか… -- 名無しさん (2017-08-13 21:15:43)
  • 最近ブラッドボーンやってたから「ほおずき」を思い出した。 -- 名無しさん (2017-08-13 21:19:07)
  • にしても「頭脳が足りないなら複数用意すれば良いじゃない」を地でいく博士だなぁ… -- 名無しさん (2017-08-15 14:19:11)
  • ブキヤのスペシネフはフォルムがクソカッコいい反面パーツが鋭利すぎてポーズ変える度に何処かしら怪我する… -- 名無しさん (2017-08-16 10:01:47)
  • どこに乗ってるか問題はMSBSだからで誤魔化せる -- 名無しさん (2017-08-16 11:32:46)
  • 死んだ人間の怨念を利用するのはむしろ普通は無駄になるエネルギーをリサイクルする機構として見ればアリのようにも思える -- 名無しさん (2017-08-16 12:14:06)
  • 一方通行が怨念の制御に使ってるのは能力じゃなくてネットワークの方か。人の内面に作用するエネルギーだからそりゃそっちの方か -- 名無しさん (2017-08-24 13:14:49)
  • オレは博士ってドクターバイルみたいな雰囲気の正統派クソジジイ博士と思ってた。 -- 名無しさん (2018-10-13 13:09:31)
  • 禁書VOにおいても最強の一角。武装がどれも優秀なのに加え、VWのブラックホールが強すぎる。 -- 名無しさん (2019-03-12 21:12:34)

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*1 Mind Sift Battle System の略

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