マクギリス・ファリド

ページ名:マクギリス_ファリド

登録日:2016/04/10 Sun 19:23:03
更新日:2024/01/22 Mon 13:41:55NEW!
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それでも一度手にした力は手放し難いものなのさ。人類というものは
たとえそれが、自らを滅ぼす力であったとしても




その男は様々な名を持つ。チョコの人、マッキー、モンターク……。


マクギリス・ファリドは、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の登場人物。
自らの怒りに殉じ、理想の為に全てを捨て去る覚悟を決めた「鉄血のオルフェン」である。



担当声優櫻井孝宏(幼少期は藤原夏海)。



人物

武力組織ギャラルホルン・地球本部監査局に所属する青年軍人。階級は特務三佐。
ギャラルホルンを管理運営する一族「セブンスターズ」の1つであるファリド家の1人で、同じセブンスターズのボードウィン家への嫁婿候補。
年齢は20代前半~半ばといったところか。金髪の髪が映える美男子で、前髪をもてあそぶというどこかのザビ家末弟みたいな癖がある。
エレガント総帥っぽい高貴さ、乙女座の男っぽい詩的さ、赤い革命家崩れっぽい理想、パイナップル頭の武人っぽい的確な分析力を兼ね備えた、歴代ガンダムライバルキャラのカッコいいところを集約させたようなイケメン


作中ではファリド家の「妾の子」という出自ながら高潔かつ有能な軍人として登場。
事務仕事は「部下達が死にそうな顔をしている」と言われるほどに迅速かつ精密、社交辞令も完璧で女性からの人気も高い。
更にはギャラルホルン関係者にありがちな地球外出身者への差別思想も見られない。
親友のガエリオやカルタとはにこやかに語らい、失意の中にある彼らを励まし助言を送ることもある。
特にボードウィン家との関係は深く、親同士の政略目的の盟約によるものとはいえ、ガエリオの妹アルミリア(9歳)とは婚約関係にある。
当人同士の仲は良く、アルミリアはマクギリスを純粋に慕い、マクギリスも彼女には敬意と礼節を持って接している。


後述するが出自が出自と言うこともあってか、現在のギャラルホルンの腐敗には嫌悪感を抱いており、同じ理想を持つガエリオと共に改革を成そうと検討している。
そんなある日、マクギリスは監査部の一員として、火星支部の監査のために現地へ赴く。
そこで、火星独立の第一歩として地球での交渉に向かおうとするクーデリア・藍那・バーンスタインの存在を知ったことで、作中における彼の物語が始まる。
マクギリスは彼女をギャラルホルン現体制の転覆材料として利用するべく、ガエリオと共にその身柄を確保しようとする。



一方、ネタ的にもいろいろおいしいところが多い。
最も視聴者から言いがかりをつけられているのがロリコン疑惑。
まず9歳のアルミリアとの婚約と、彼女への態度もさることながら、火星で危うく轢殺しかけた双子の姉妹に即座にラッピングされたチョコ菓子の詰め合わせを差し出して詫びるところがそう思わせるのだろう。
オマージュ元っぽい赤い大佐の影響も多分にあると思われる。
更に面白いニックネームもいくつか持っている。
チョコ菓子の件を覚えていた三日月からは「チョコレートの人」というそのまんまな形容をされ、アルミリアからは「マッキー」と油性マジック呼ばわりされる呼ばれる。
話が進むごとに唐突に出てくるこれらのニックネームは、視聴者の腹筋を小気味よく刺激した。
また、中盤以降は更なるネタ要素を獲得することになる。それは補足の欄にて。


過去と生い立ち


マクギリスはファリド家の現当主、イズナリオの“妾の子”として知られているが、どうやらこれは体面を保つための方便であり、実はファリド家の血を引いていない。
母親とは死別したのか、それとも引き離され二度と会えなくなったか、あるいは彼をおいて蒸発したのかはわかっていない。
少なくとも、幼少のころにはすでに身寄りがなく浮浪生活であり、その日の食事を得るためには強盗殺人すら厭わぬ日々を過ごした後、少年娼として娼館に入っており、その後金髪少年を主食とする変態であるファリド家当主のイズナリオが他の似たような少年達と一緒に夜の玩具用に屋敷に入れた。
当時はぶっきらぼうな少年で、同じ男娼の少年たちと諍いを起こすこともあった。
イズナリオが「絶望の中から救い上げてやった」、友人が「バッチい」「字もすぐ読めるようになった」「パンを食べるのも早い」と評するあたり、まともな教育は受けられず、餓えていたことがよくわかる。


その後彼の才覚を見抜いたイズナリオは彼を跡取りにすることを決め、結果ファリド家の「養子」として一族の列席に加わりそれまでの恵まれない人生をリセットしたかに見えた。
成長するにつれ、明晰な頭脳と高い身体能力を発揮し、すぐに読み書きを覚え、貴族らしい立ち振る舞いを学んでいく。実は努力の人なのだ。


しかし、周囲には「妾の子」の体を装ったため、色眼鏡で見られることになる。さらに形の上で養子になってもイズナリオの夜の相手をさせられ、自身に性的虐待をする男を「父」と呼ばねばならないことになり、心の傷は深まっても癒されることがなかった。
この頃ガエリオ・ボードウィンやカルタ・イシューと友人となるが、いくら彼らが友人として分け隔てなく接したつもりでも、食べることにすら不自由する経験などない生まれの恵まれた彼らとは感覚の違いは拭い去れなかった。
(当時幼かったガエリオやカルタにその配慮をしろというのも無理な話ではある。「パンを食べるのも早い」という飢えを知らない幼いガエリオの発言も、ある意味では温室育ちだからこそ裏表なく贈った称賛の言葉とも言える)


マクギリスのような飢えと隣り合わせである子供たちの存在を知らず、イズナリオによる性的虐待にも気づいてないガエリオやカルタはマクギリスにとって無知な支配階級であり唾棄すべき対象の一つであったとも言えるが、そんな彼らが利害関係なく自分のそばにいてくれるということはマクギリスにとって己がもつ世界への憎しみを忘れかけてしまうほど幸せな時間であったことも事実である。


ただ残念なことに、マクギリスは幸せというものを理解する環境で育っておらず、彼の周囲にはまともな大人がいなかった。*1
男娼として扱った業者、性的虐待者であった養父、露骨に差別をする執事、彼にとって大人とは侮蔑すべき存在としか映らなかった。
カルタからの愛情やガエリオからの友情も周囲からの愛を受け幸せを知ってこそのものであり、親身にはなれても家族に代わるものではなかった。このことが後々の彼ら3人の人生に大きく影響を与えることになる。


そんな日々の中、彼が特に心を惹かれていたのはギャラルホルンの生みの親である英雄・アグニカ・カイエルの伝記であり、伝説の中にあるその「力」への憧憬を醸成させていった。
そしてラスタル・エリオンとも当時邂逅しており、彼にいずれ政敵になる存在であることを密かに予見されていた。


結果、形の上では上流階級の装いで誰にでも紳士的に振舞い一見思慮深く理知的に見えているのに、根本では誰にも心を許さず力に固執。
成人後も当然養父イズナリオとの関係は「できれば会いたくない」と漏らすくらいには悪く、「内心の憎しみを抑えつつファリド家の権力を利用する」という不健全な状態となった。
幼少期から溜め込んでいたルサンチマンも清算されず、むしろその恨みも己の原動力とすら解釈して手放さない厄介な人格が出来上がってしまい、1期後半以降はその歪みが周囲を巻き込んでいくことが顕著になってしまう。



心から親として慕える存在がいないマクギリスもまた、三日月・オーガスやオルガ・イツカと同じ孤児オルフェンなのである。



人間関係

●イズナリオ・ファリド
「此度の火星遠征、大義であった」「はっ
前述の通り不仲な「義父」。小児性愛者に拾われて体を求められ、おまけに政略結婚に利用されるとあっては堪ったものではないだろう。
現に火星からの帰還を報告するシーンでは完全に目が死んでいる。
一介の浮浪者からとりたててくれた恩人と言えばそうだが、それを帳消しにするくらい嫌な思い出も多かった模様で回想ではプレイで負傷させられていたことも示唆されている。
第一クールオープニングでは、マクギリスが抜いた短剣に義父の顔が映り込むカットがある。不吉だ。


また、彼がアーヴラウのアンリ・フリュウ議員と車内で密談する場面では、上等な服を着た謎の金髪の男の子が同乗している。
ファリド家の跡継ぎ候補の1人か、それとも正統なる跡継ぎなのだろうか?
……と思われていたが、第2期での描写から察するに成長したマクギリスの代わりとして選ばれた“愛人”かもしれない。


ガエリオ・ボードウィン
「親同士が決めたとはいえ、許婚が9つとは。全く、苦労をかけるな」「構わない。親友の妹だ
「無理するなよ?」「無理なんてしてないさ。お兄様」「なっ!?」
幼少期からの親友。ガエリオ自身が人当たりの良い性格だったこともあって関係は良好。
しかし後述するようにその道は大きく分かれることになる。
皮肉にも心からマクギリスを尊敬し憧れ超えたいと感じていた友情こそがマクギリスの本当の姿を受け止められない原因となってしまっていた。


●アルミリア・ボードウィン
アルミリア。あなたを笑う者がいたら私が許さない。貴女はここにいる誰よりも、素敵なレディだ
前述の通り、彼女には一定の敬意を持って接している。
だがどうしても視聴者からは「ロリコン」だの「源氏物語」だのと言われる。しかしながら彼は歴とした紳士である。
マクギリス・ファリド事件から数年後もその衝撃から立ち直れず思春期真っ盛りの状態にあるらしい。


●カルタ・イシュー
「あのぅ! 金髪の! 高慢ちきな、地位のために小便臭い子供なんぞと婚約した、いっつも前髪イジイジしている男のことよ!!」
カルタはマクギリスに好意を抱いている。周囲からはバレバレで、マクギリス自身も気づいているが、彼にとってはあくまでも友人の1人でしかなかった。


●トド・ミルコネン
「へっ。俺は旦那の――右腕だ」
鉄華団を裏切り、放逐されたちょび髭。ひょんなことから彼を助け、そのまま彼の薄汚いコネクションに目をつけ、表だって動くことができない自分の代理としてクーデリア確保の手回しをさせるようになる。
当のトドはCGS時代から遥かによくなった待遇に満足しているようで、すっかり「旦那の右腕」として収まっている。マクギリスが唐突に過去を語り始めた際にはめちゃくちゃ胡散臭い目を向けていたが。
モンターク商会の人間として鉄華団を訪れる際は団員を少々小馬鹿にしつつも過去の遺恨はあまりないどころか、巡り巡って羽振りのよくなった現状に喜んでいる様子。過去のトドを知らない新規の団員たちからはお菓子をくれる気前のいいおじさん扱いされ満更でもないらしい。


意外にもマクギリスが社会的に失脚した後も彼のためにシャトルを手配するなどマクギリスを最後まで見捨てなかった一人。マクギリスと最後に交わした会話でも侮蔑や嘲弄はせず、割と真剣に逃走して再起を図るべきという選択肢を示唆するなど、それなりに親身になって対応していた。
皮肉にもマクギリスがその生涯の終盤で出会った比較的まともな大人こそがトドであった。
本編終了後のガンダムエースにおける製作側へのインタビューによると、モンターク商会を引き継いで管理しているとのこと。


●クーデリア・藍那・バーンスタイン
革命の乙女たるその身を…大切にし給え。君は、人々の希望になれる……
一応の確保対象。しかし中盤以降はあえて泳がせるようになる。


三日月・オーガス
見事な動きだったな。何かトレーニングを?」「…まぁ、色々」「そうか。―――良い戦士になるな…
宿敵……ではあるものの、彼ら鉄華団のポテンシャルは高く評価しており、クーデリアの護衛役として期待している。




搭乗機とスキル

第1期序盤は青いシュヴァルベ・グレイズに搭乗。しかし出番がたった1話しかない(後に部下の石動・カミーチェに譲っている)。
プラモはプレミアムバンダイでの限定発売になったガエリオ機がその後も活躍したので「一般販売とプレバンを入れ替えろ」という嘆きの声が上がった。
後半ではどこからか持ち出してきたグリムゲルデに搭乗。
第2期で地球外縁軌道統制統合艦隊の司令に就任してからは、青いグレイズ・リッターをナイトブレード二刀流で使用する。


パイロットとしてはおそらく作中最強の実力者。射撃・格闘戦の双方を阿頼耶識システムを用いる三日月達に匹敵するレベルでこなしている。
特にピンポイント攻撃能力がおぞましいほどに優れている。「射撃はとりあえず当てて怯ませ、格闘はとりあえず当てて粉砕」の戦い方が基本の鉄血世界だが、マクギリスは、

  • ナノラミネートが剥がれている小さなスラスターを狙撃
  • 戦闘機動中の敵機に対し、スラスター接続部に初弾命中
  • 関節部のみを次々切断
  • 剣先を掠らせてコックピットを破壊
  • 敵機の肘関節をマニュピレータで殴って破壊し、武器を奪い取って反撃

と、最早人外かと言わんばかり。
そしてその要因となるのはずば抜けた観察力と戦況分析力。
些細なことも見逃さず、実戦で初見の阿頼耶識システムの弱点を即座に見切っている(流石に観察の余裕がないほどのシチュエーションでは押されるが)。






人物像と人間関係についての補足

※以後、どっぷりネタバレが入ります※




嫉妬、憎悪、汚辱に、恥辱……
消えない過去に縛られて、輝かしい筈の未来は全て、愚かしい過去の清算のみに消費される
……それは私とて同じこと。



怒りの中で生きてきた」と語るマクギリス。彼の内面には恐ろしいエネルギーが渦巻いている。


ギャラルホルンの改革、再建を唱えるマクギリスの「理想」とは。
その実体は現状では語られていない。一応「ギャラルホルンのトップに立つ」という当面の目的こそあるが、単に自らの権力を求めているだけのイズナリオとは異なり、それも「目的」ではなく「過程」に過ぎない……という雰囲気が漂っている。
そしてその「理想」の実現のためならば、マクギリスは親しい人々をも利用し使い潰す外道となれる


本編の映像をよく見ていくと、よく微笑を浮かべる割には目を笑わせることが少ないことがわかる。幼少期にファリド家に引き取られた時とあまり変わっていない。
更に彼が誰かと話すシーンでは、絶対に正対せず、相手の顔を真正面から見ていない。厳密にはお互いに向き合うシーンもあるにはあるが、傅いていたり、相手を立たせて自分は座っていたりと、必ず目線を合わさず、同じ顔の高さで話さない。
例外は偶然出会った三日月と純真な子供達くらい。そして仮面をかぶって正体を隠している時のみ。




鉄華団…君達の踏み出す足は、前に進んでいると思うか?
もし…本気で、そう信じているのなら……。見せてくれ、私に……


中盤以降、鉄華団とクーデリアに利用価値を見出した彼は休暇中の身を装い、極秘に“由緒正しき”「モンターク商会」の売人を騙って暗躍を始める。
親友ガエリオが必死になって追撃する鉄華団に、陰ながら援助を行うのだ。豊富な物資や移動手段を提供し、時には自らモビルスーツで戦闘に介入。
モンターク商会出現後の鉄華団VSボードウィン家の戦いは、事実上マクギリスが仕組んだマッチポンプ状態になってしまう。まあギャラルホルンでは普及した手口だけど
最終的にマクギリスは企みの中核となる部分を鉄華団に託す博打に出る。尤も彼のことである。例え鉄華団が斃れても他の手段をすぐに探し始めるに違いない。


それにしても、マクギリスはどこでこの商会を掌握したのだろうか?
「モンターク」と名乗った時に「それが真実の名」と話しており、様々な憶測を呼んだ。
本編ではこの発言に関して最終的に掘り起こされずに終わったが、後のガンダムエースで掲載された長井監督の発言によると、モンタークの名前はマクギリスがファリド家に拾われる前の旧姓だったことが語られた。
商会についてもマクギリスが私有財産で設立した会社らしいが、これは本編で語られた「100年以上の歴史がある由緒正しき老舗」という設定と齟齬が生じている。





他者の心を掌握し、その先の行動を操るのは容易だ
過去を紐解く。ただそれだけで、対象者が掴む選択肢の予想は簡単につく


ガエリオとカルタについても、内心では結構酷薄に扱っている。それでいて友人面を崩さないのだから堪ったものではない。
追跡網を逃れ続ける鉄華団に悔しがるガエリオに対して「内通者(自分)がいるのだろう」といけしゃあしゃあとのたまい、カルタが命からがら生還した報を聞くと「しぶといな」「死んでいれば生き恥を晒さずに済んだ」と嘯く。


……が、非常に度し難いことではあるが、一方でマクギリス自身は2人のことは確かに大切な友人だと思っている(いた)のもまた、事実なのである。第25話における幼少期の回想が輝いているところからもそれが覗える。何せ2人はまだ薄汚なかった幼少時代から共に遊んでくれた、貴族出身者としては珍しい友愛精神の持ち主。
マクギリスの真に恐ろしいところは、そんな友情も愛情も信頼も何もかもを飲み込んで、己の理想の為に動けてしまう実行力を持っていること。
「迷いを完全に捨ててしまったシャア」なのかもしれない。こう聞くとフル・フロンタルの様であるが、あちらとの違いは言動に自前の熱を宿らせている点。


ガエリオやカルタを利用するときには、自分から「こうしろ」とは絶対に断言せず、「これが最善だよ」「君はこうするべきなんだよ」「君はスゴイ。そんな君ならこうするんだろうなぁ」という言い回しで、相手が決断するように思考を誘導している。凄まじい人心操作能力はある意味必見。
だが、作中のマクギリスの言動を見返してみると、その時点での彼の真意はともかく、話している内容自体には一切の嘘が無いということがわかる。
決して真相には触れず、微妙な言い回しでぼかしているが、全くのでっち上げはしていない。これも友人たちへの一応の敬意なのだろうか。
また、櫻井氏の演技に注目すると、本心ではないことを話す際には心なしか声を張っている感がある。
第22話、グレイズ・アインを前にガエリオを扇動するシーンがわかりやすい。ここでは珍しく「宇宙ネズミ」の蔑称を口にしているのもポイント。




大人にはなりきれないものだな。これほどに胸が躍るとは……


だがそれでもネタの提供は怠らないのがマッキー。
まずその仮面。ガンダムシリーズお馴染みの「仮面の男」となったモンタークだが、金髪を完全に隠すふさふさ白髪カツラと一体化した金ぴかの鼻上マスクは凄まじく胡散臭い。おまけに目出し部分には謎のシャッター機構が搭載され、カシャカシャ動く。スッゲーおもちゃ臭い。
そんな仰々しい変装をしておきながら声は櫻井氏のまま(一切加工してない)。瞳や眉毛の色と合わせて視聴者には正体がバレバレだが、余りにあからさますぎるので、一周して「生き別れの兄弟か」「いやこれはクローンでは」という憶測も生まれた。
その癖エンディングクレジットは長々と仮面の男 櫻井孝宏」表記が続いていたのもツボ。


第15話後のWeb版次回予告(フルバージョン)でもぶっ壊れぶりを披露。元々『鉄血』の次回予告は本筋と関係が薄い寸劇が多いが、彼のそれは群を抜いていた。


良い仕上がりだ。フッ、中々に遊べる玩具を手に入れたな
この仮面をつけた瞬間、私は…違う男の人生を手に入れる
いっそ口調なども、変えて見たりしとくぅ~~ぅ?
……いや、やはり止めておこう
次回、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』、第16話。「足跡のゆくえ」



そして終盤に至るにつれ明らかになる、どこぞの悪質セールスマンゲームマスター友情ごっこにも通じるドス黒さで「真っ黒キャラ」としてのネタも増えていった。
櫻井氏が同時期妙にガンダム系声優が多い世界クズな長男を演じていたのも何かの縁か。2016年冬季は櫻井氏の絶妙な演技を2本も楽しめる素晴らしい期間であった(白目)



アグニカは実現しようとしていた。人が生まれや育ちに関係なく等しく競い合い望むべきものを手に入れる世界を。
素晴らしいと思わないか?



第二期では彼の思想面での掘り下げが多くなる。やたらと彼が信奉し、行動原理の多くを占める人物がアグニカ・カイエルである。
かつてガンダム・バエルに搭乗し、モビルアーマーを狩ったギャラルホルンの開祖・アグニカ。
殺伐とした生活の中で彼の伝記を読んだマクギリスはその英雄像に心酔し、将来の計画のため力を蓄えていくのである。



……が、愛情を知らずに育ち、やがて「周囲に対しては猫を被る」ことを当然のことにしてしまったマクギリスは、アグニカ個人の有り様よりも「アグニカの力」に固執しすぎるようになってしまった。
力こそが世界を変える、完全な変革は不可能でも影響を及ぼすことは出来ると本気で考える彼には、最早人の情など不要なものでしかない。
そして、実際に力で万難をねじ伏せていく鉄華団の英雄性を目撃したマクギリスは、力を手に入れたものは全てを可能にするとでも言わんばかりの直情的とも言える言動を見せるようになる


ギャラルホルンの錦の御旗であるガンダム・バエルを神聖視し、「バエルを操る者はギャラルホルンを統べる」という時代錯誤的なルールをマジに考えてしまった様子は、政敵のラスタルからも苦笑交じりに「大人になれない子供」と評されている。


「旧態依然とした組織を改革するなどと吹きながら、マクギリスは結局、ギャラルホルンの伝説に頼った……」
「歴史を尊ぶなら、むしろ奴はアグニカを否定すべきだったのだ」



バエルを強奪同前のやり口で手に入れたマクギリスは、これまでの策士ぶりからは考えられない行動をとるようになる。
しかし、それこそがマクギリスという男の本性、もしくは限界だったのかもしれない。
生まれも育ちも恵まれなかった男の哀しいサガを、こういう形でしか発散させることが出来なかった悲劇と言えよう。


スタッフインタビュー曰く、マクギリスはバエルを入手した段階で満足してしまったのだという。
幼少期から追い求めてきたバエルという存在はそれほどまでに大きなものだったのだ。
マクギリス本人が「ギャラルホルンの腐敗」を訴えていたが、その実彼自身も民間企業と癒着して恥じることはなく、
何より当人が侮蔑すらしていた筈のギャラルホルンの権威、その具現たるバエルに、マクギリス自身が心酔してしまっていた。
皮肉にも、マクギリス自身はギャラルホルンの中で生きてきただけに、嫌悪していた筈のギャラルホルンのその体質と価値観に、誰よりも濃く染まってしまっていた証左でもあるだろう。


+ そもそもの話-

マクギリスはバエルを入手した後と前とでまるで別人の様な行動をとっているという指摘が散々なされているが、彼のバエルを入手するより以前の行動とは、本当に策士らしい動きと言えるものなのだろうか。


竹馬の友を裏切り、己に思いを寄せる女性を裏切り、友の家族をも利用し尽くし、そして組織のタブーに触れて暗躍し、大勢の人間を巻き込んでいくその行動は、
確かに一見すればまるで冷徹で情に流されず、己の目的達成だけを求めそのために役に立つかどうかの合理性のみを追求する策士であるかのように映るものなのかもしれない。
だが彼がその行動で手に入れたものは切り捨てたものに比べて、感情的・感傷的な部分を度外視しても、価値があると言えるものなのだろうか?



ガエリオとカルタは、セブンスターズのボードウィン家、そしてイシュー家の次期当主である。しかもイシュー家はセブンスターズの第一席。名目上のトップである。そしてこの二人は共にマクギリスに心を許し、ともすれば心服しているとさえ言っていいほどの信頼を寄せていた。
彼ら二人との関係を維持してさえいれば、やがてはセブンスターズの七分の三、ギャラルホルンの最高権力の実に半分近くの権限がマクギリスの掌中に収まっていたのは間違いない。


しかもエリオン家の当主であるラスタルは本編で最終的にギャラルホルンの改革を執り行ったことから分かるように、決して保守的なだけの人間ではない。マクギリスが改革の象徴として相応しいと判断すれば、邪魔するどころか積極的に援護してくれた可能性さえ在る。
少なくともラスタルが表立ってマクギリスを政敵と認定したのはマクギリスがアリアンロッドの縄張りを犯し始めた辺りからのことでしかない。ずっと前にマクギリスがバエル=ギャラルホルンの権威の象徴を求めていると知っていたにも関わらず、である。
そしてクジャン家の当主であるイオクはラスタルに追従している。
つまり、うまく運べば七分の三どころか七分の五、半分以上までをも手にすることさえ出来たかもしれないのだ。



要は、マクギリスという男は、あと十年かそこらの時間さえあれば、バエル等という抜け道は無用のまま、合法的にギャラルホルンを独裁できる立場にあったかもしれない男なのである。
彼には最初から、否、最初のうちだけは、政敵ライバルらしい政敵ライバルなぞ全くいなかったのだ。


マクギリスが真にギャラルホルン内で何かしらの目的を達成したければ、バエル等という旧時代の遺物に拘泥する意味は全くない。そんなものは無視して、ただ待っていれば良かったのだ。ラスタルの言葉は、このことを指してのものなのかもしれない。


しかも一期に於ける彼の策謀、つまりはギャラルホルンの権威失墜のための仕上げであるグレイズ・アインの暴走とて、マクギリスがそう仕向けたというよりは偶然の産物という趣が強い。
アインは作戦の途中、突如クランクからクーデリア確保の任務を命令されていたと錯覚して市街地に突入したが、それ以前にマクギリスがクーデリアのことやクランクのことをアインに対して暗示したりする様な描写は本編中には全くないのだ。
そして仮に見えない部分でそういったことが行われていたとしても(あるいは暴走すると見越していたとしても)、当時のアインの精神状態は不安定の極みであり、市街地への突入が実際に起こるかどうかは結局運頼みでしかない。


しかもこれが上手くいっても引き起こされるのは彼が掌中に収めたいと思っていた組織であるギャラルホルンそのものの権威の失墜である。
おまけにそれを起こしたのが阿頼耶識システムを導入した機体であったなどということが知れれば、インプラント技術とその被施術者への差別意識を更に助長し、阿頼耶識を使っているバエルまでもが権威や支持を失ったかもしれない*2
こんなことをする位なら、ドルトコロニーの一件を徹底的に調査し、ラスタルが協力してくれなかったときのための保険として握っていたほうが遥かに安全かつ効率的、何より人道的だったろう。


そしてここまでして手に入れられたものは何かといえば、遅かれ早かれ手に入っていたファリド家の当主の座と、ガエリオを殺さなくても手に入っていたアルミリア・ボードウィンの婚約者にしてガルス・ボードウィンの義理の息子という地位と、カルタを生かしたままアドバイスという名の示唆を行っていれば実権を握れていたであろう地球外縁軌道統制統合艦隊。
他方、背負うハメになったのは、反社会的勢力と繋がりを持ち、それらを利用することでセブンスターズのうち二人をも謀殺したという事実と、自分の黒歴史を知り抜いている養父と親友の恨み。
そもそも、多少のリスクを冒してでも最優先で抹殺すべき相手であるはずの養父イズナリオを政治的に失脚させたのみで、命までは取れていない。
これで合理的等という方が無理があるだろう。明らかに得られるメリットと背負うデメリットの釣り合いが取れていない。


彼が度々口にしてきた”腐敗の一掃”もどこまで本気だったのか分かったものではない。劇中ではギャラルホルンを正しい方向に導くだとか変えるだとか或いは思想や出自に囚われないといった如何にもな言葉を度々呟きこそすれ、そこに具体的なビジョンなど何一つ示されてはいなかったのだ。
石動・カミーチェの様な被差別階級に在った人間を部下に持つことさえ、アイン・ダルトンやジュリエッタ・ジュリスの存在が示すように、別段マクギリス独自の試みという訳ではない。


更に言えば、鉄血のオルフェンズの劇中に於いて随一の政治的影響力を持った人間にしてギャラルホルン外に於いては革新派の筆頭とでも言うべき人物、即ちクーデリア・藍那・バーンスタインに対しては、鉄華団が絡まない場所ではほとんど不干渉だったこともある。


確かにドルトコロニー内で警告を行ったり、地球降下の手助けを行ったりはしたが、いずれも正体を隠してのものであり、彼女に対して正体を明かすことやそれによって貸しを作り利用するようなことは最後までなかった。
ギャラルホルン火星支部の権限委譲、つまり火星の王になるという話についても、前々から火星独立運動に携わっていたクーデリアを差し置いてオルガに直接持ちかけたものである。


ギャラルホルンを掌握するのなら、蹶起後の支配体制構築を円滑に進めるためにも、民衆からの支持を集めるクーデリアに協力してもらえる様にしておくべきだったろうに、彼は寧ろその護衛役にして暴力装置(あるいは軍事力=権力基盤)である鉄華団の方にばかり目を掛けていた。
クーデリアへの忠告や支援さえ、彼女が死ぬことで鉄華団が行動方針を見失うことを憂いてのものだったかもしれない。


端的に言って、誰よりも利用価値がある上に、口にしていたマニフェストからすると同志だとさえ言えるはずのクーデリアを、鉄華団を通せば簡単にコンタクトが取れるという立ち位置だったにも関わらず終始無視していたのだ。
これは、マクギリスが自分と同じ「孤児(オルフェンズ)」である鉄華団の方に大きく感情移入や同族意識を持っていたのに対し、恵まれた環境に生まれ貧困層の実情への理解力に乏しかったクーデリアのことは、
利用価値は認めつつも本心では「恵まれない者達の苦しみを理解出来ず綺麗事しか言えない理想主義者」と偏見を抱き忌み嫌っていた可能性も否定出来ず、物語が進んでいくにつれ、クーデリアの事は「鉄華団を自分に都合の良い形で動かしていく為だけに生かしておいている駒」という認識が強くなっていったのかもしれない。


ガエリオやカルタ、アイン等に行った仕打ちを省みても、もし「オルガが火星の王になるという自らの目論見が実現する」か、あるいは「オルガよりもクーデリアの方が火星の王になる事を支持する人間達が多かった」としたら、
マクギリスはクーデリアを「鉄華団を動かす為の駒」から「用済みの存在(もしくは邪魔者)」と認識を切り替えて、暗殺するか事故死に見せかけて排除するかの手段にまで及んだ可能性も否定出来ない。


マクギリスは、ガエリオとの戦闘中の自身の独白、あるいは後にガエリオに指摘されたように、「友情」「愛情」「信頼」といった"尊い感情"があることを理解できない人間だった。
セブンスターズのような特権階級に生まれ育った人間に対してはたとえガエリオやカルタのように無償の想いから自分に接してくれる人間であっても「もし敵対すれば大きな脅威となる」という一点しか考えられず排除に走り、
一方で自身と似た境遇を持つ鉄華団に対してはその力と生き様だけに魅入られて過度に期待を寄せ関係を深め、最終的に致命的な勇み足の遠因となった。
「生まれや所属に関係ない実力主義の世界を作る」という理想を持ちつつも、その行動は誰よりも"出自"という枷に囚われ続けたことが、彼の運命を決定付けたと言うこともできるだろう。


彼は果たして、バエルを手に入れたから別人のようになったのだろうか? それとも元々バエルを手に入れた後に明白になったような性質だったのが、それまでは最終目標とそれを達成する具体的な手段の不透明さ、言い換えるなら想像の余地の大きさから周囲が"こんなことをするからには何かそれに相応しい遠大な目標があるはずだ"と勝手に想像を膨らませ、まるで大人物であるかのような錯覚を勝手に抱いていただけなのではないだろうか?
そういった想像を掻き立て自分を実態以上の偉大な人物に見せかけるというのは誰にでも出来ることではなく、ある種のカリスマ性とも言える才能だっただろうが、マクギリスはその活用法を完全に誤ったのだろう。




……まあガンダムシリーズでは、彼のような「能力もカリスマもあるのに、歪な性格ひとつ、余計なこだわり一つで台無しにしてしまう『大物』」や、「客観的に見ればどう見ても考えなしの奇行なのに、作中世界では優れた指導であるかのようにみられている『大物』」「改革の理論は大仰にぶちまけるが実現性に乏しい『大物』」はいくらでもいるのだが
(一例をあげるならジオン・ダイクン。アニメ本編では出ないが、小説版ではギレン・ザビらの口から「凄いカリスマと雄弁を持ち、彼が紡ぐ理想像は誰もが魅了された。かくいう自分ギレンも心から彼を尊敬した。しかし長く付き合ううち、理想論を語ることはできるが実際にはアジテーター止まり、中身のない人間だということが分かってきた」と語られている。そして宇宙世紀のガンダムシリーズではそんな人物が「唯一最大の理想家」扱いである)
ネタキャラ扱いされる「正体を全く隠していないうえに悪目立ちする仮面」もシリーズ恒例である。単独項目が立つぐらいには





劇中の活躍


序盤:できる男

火星到着後、早くもコーラルの独断専行の痕跡を捉え、調査に乗り出す。
ノブリスをはじめとした有力者との癒着を隠蔽しようとするコーラルの賄賂も辞さない対応、自分たちの到着前に失われたMS一個小隊、査察の結果次第では後々の自身の野望に利用できる可能性を感じたマクギリスはガエリオと共に現場調査を自らの手で開始、CGS本部周辺を訪れた際には畑の収穫作業を行っていた三日月達と遭遇することになる。


運悪くクッキー・クラッカ姉妹を危うく車で轢きかねない状況であったため出会い方としては最悪であったが、マクギリスがすぐ詫びたこともあり、三日月が敵意を定めたのがマクギリスではなくガエリオになったことで難無きを得る。(その代わりにガエリオが三日月に絞殺されかけるという目にあった。)
お詫びに自分用に持ち歩いていたチョコレートをプレゼントしたため、これ以降は三日月から「チョコの人」として認識される。


その後はマクギリス達に鉄華団を壊滅させることで自身の汚職を揉み消そうとするコーラルの作戦に気付かぬふりをして参加、火星低軌道上で鉄華団と一戦交える。
バルバトスのメンテナンスが完全ではないとはいえ阿頼耶識システムをもつ三日月を相手に常人離れした操縦で対応するマクギリスであったが、常識では考えられない三日月の荒々しい戦い方に敬意と興味を示す。
戦い方でチョコの人=マクギリスと気づいたことは軽くスルーしていることに突っ込んではいけない。


作戦そのものは指揮官であったコーラルの戦死により失敗となったが、マクギリスにとっては自身の野望を達成する計画に鉄華団を加えたくなるほど大きな成果となった。


ギャラルホルン地球本部・ヴィーンゴールヴへ帰還した数日後には、アルミリアとの婚約発表パーティに出席。
出席者からはイズナリオの妾の子として陰口を叩かれていたものの、持ち前の仮面を被ることで難なく乗り切る。


自身の容姿が他人受けすることも理解しており、アルミリアが会場に現れるタイミングで声をかけてきた貴婦人たちを利用しアルミリアが自分を目撃するタイミングで大人の女性と親しく会話する社交的な男性を演出する。
更にマクギリスを囲むスタイルの良い大人の女性と婚約者であるのに未だ幼児体型の自分を見比べ立ち去ろうとするアルミリアをしっかりと確認すると、貴婦人たちに対しては婚約者を気遣って追いかけるという心優しい婚約者を演じて退出し、一人佇むアルミリアの前に現れた彼はまさに理想の婚約者として登場するのであった。


今夜は特別な夜だ。全てを忘れ、これから起こる運命さえも忘れ……
踊り明かそう……



自らの幼さを嘆くアルミリアを優しく抱きしめ励ますマクギリス、マクギリスを婚約者として迎えたことにアルミリアは心から幸せを感じていた。
しかし、アルミリアがマクギリスを見ていない時、マクギリスが視線をアルミリアに向けることはなかったのである……


中盤:仮面の男

ギャラルホルンにおいてマクギリス・ファリドはしばらく休暇中となっていた。もしそれが偽りであれば大問題となったことは想像に難くない。


大人にはなりきれないものだな。これほど心が踊るとは……


ギャラルホルンにおいてマクギリス・ファリドはしばらく休暇中となっていた……のはずだったが、いつの間にか地球を離れ、銀の長髪に目のパーツが展開可能な金色の仮面という明らかに胡散臭い仮面をかぶってドルトコロニー群へ降り立っていた。


「一度お目にかかりたいと思っていましたよ、クーデリア・藍那・バーンスタイン」

「革命の乙女たるその身を…大切にし給え。君は、人々の希望になれる……」


まずはビスケットとアトラの危機を知り飛び出したクーデリアと接触、トドを通して調べていた情報の一端、フミタン・アドモスノブリス・ゴルドンからのスパイであること、ノブリスによるドルト内でのクーデリア暗殺計画などクーデリアにとって衝撃の情報の数々を提供する。


クーデリアの驚く姿を満足気に確認した後、クーデリア自身が革命の女神たり得る人物であることやドルト内で暴動が起きることも忠告、さり気なくギャラルホルンがお得意のマッチポンプでデモ隊虐殺計画を進めていることを仄めかす。
これらの重要情報を知った鉄華団は本格的に巻き込まれる寸前で避難を開始できたが、クーデリアを庇ったフミタンが命を落とすことにつながってしまう。


すでにドルトコロニー群周辺にはアリオンロッド艦隊が集結しており、鉄華団の脱出はマクギリスにとっても大きな賭けであった。
が、クーデリアの演説を全世界に向けて発信するという奇策により鉄華団は無傷で脱出するというまさかの大逆転に成功することになる。
これは圧倒的な力というものを信奉するマクギリスにとってはも予想外で痛快な出来事だったらしく、誰もいないモニターに向かって大声でしゃべりだすなど興奮している様子がうかがえる。*3


「さすがは“革命の乙女”といったところか。期待以上の見せ物だった。彼女ならば…鉄華団ならば……」


続けて由緒正しきモンターク商会を代表して、テイワズとノブリスが得るであろう利益配分に自らも加わることを条件に、鉄華団への支援を打診。物資援助と、戦闘の援護を行う。
ここで1か月半~2か月ぶりに三日月と顔を合わせるが、彼には一発で正体を見抜かれた。

「ていうか、なんでチョコレートの人がここにいんの?」
ふっ……。双子のお嬢さんは元気かな?


この後も鉄華団とカルタ率いる地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いに素性を隠して乱入、紅のグリムゲルデを駆る神懸った戦いには三日月でさえも称賛するほどであった。
鉄華団との共闘時間はわずかであったが、鉄華団の地球降下が無事成功し、マクギリスとしては満足のいく結果となった。
また、自身の謀略によりガエリオとアイン・ダルトンも戦闘に参加し、ガエリオを庇ったアインが致命傷を負った状態で回収されるというマクギリスにとって予想外の幸運も重なっていた。


オルガたちの地球降下の支援部隊に回ったことでこの後は宇宙に留まるしかなかったユージン達に対しても密かに援助を継続、これが後の鉄華団にとって大きな切り札として活かされることになることもマクギリスの策略の一つであった。


休暇明けには何食わぬ顔でガエリオと再会する。アインの窮状を必死で訴えるガエリオを素知らぬ顔で宥め、アインを助ける術がないことに悩むガエリオにあるアドバイスを送る。

お前に教えてやろう。阿頼耶識の真の力を



終盤:鉄血のオルフェン

配下の者に命じて鉄華団を支援する一方、巧みにガエリオを説得し、アインへの阿頼耶識システム施術を決断させたマクギリス。
阿頼耶識を忌避するギャラルホルンが自ら作り出した「グレイズ・アイン」は、ギャラルホルン糾弾の格好のネタとなる。


「ガエリオ。堕落したギャラルホルンにおいて、君の心の清らかさは、如何に守られてきたのだろうな」


同時期、蒔苗への襲撃にカルタが失敗したという報告を受けたマクギリスは更なる謀略を開始する。
まず心の底から嫌悪しているイズナリオと顔を合わせてまでカルタに名誉回復の機会を与えるよう進言。その進言を呑んだイズナリオから新たな指令を受けたカルタの退出に合わせ、さり気ない顔でカルタと久々の再会に笑顔を見せる。
カルタの自尊心と恋心を巧みに突き思い出話に花を咲かせながら彼女を激励、今後とも彼女の力になることを約束する。


「私の目に映る君はいつでも高潔だった。君に屈辱は似合わない。そのためにも私にできることがあればさせてほしいんだ。カルタ」


それぞれの思いを胸に立ち直ったガエリオとカルタ、2人が大切に思うマクギリスの言葉だからこそ2人の心に響く言葉だったのであろう。だからこそ2人とも気づかなかった。2人が立ち直ったことを確認したマクギリスが述べた言葉を…


「ガエリオ、カルタ、君たちはよき友だった。その言葉に嘘はない。君たちこそがギャラルホルンを変える」


目論見は完全にハマり、カルタはルール無用の残虐ファイトを繰り広げる三日月に惨殺される。


イズナリオが北米エドモントンに赴き、「アーブラウ議場の警護」に入ったタイミングで、マクギリスは遂に行動を起こす。
議場への突入を図り「警護部隊」と交戦中の鉄華団に、ガンダム・キマリスを駆るガエリオと、今やMSと一体化したアインをぶつけたのだ。


同時にオルガたちのアーブラヴ議場を支援できるようにユージンたちもエドモントンへ送り届け、予想外の援軍という戦況を逆転させる好機を得たオルガたちを市内潜入に成功させる。そしてそのオルガたち鉄華団を仇敵と狙うアインが市内へ突入するよう演出を続ける。


マクギリスが予想した通り、復讐の衝動に駆られたアインは、市内に潜入したクーデリアをあろうことかMSで追撃するという暴挙を行い都市機能を麻痺させる。
最高の舞台が整ったことを確信したマクギリスはグリムゲルデに搭乗しキマリスの前に立ちはだかる。三日月のガンダム・バルバトスにはアインを追うよう促し、ついにガエリオと2人きりで対峙することとなる。


ガエリオと2人きりになったマクギリスは、意外にもすぐにモンタークの仮面を外して素顔を晒し、全ての企みを暴露していくのだった。
自らの理想の為に鉄華団を支援すること、禁忌とされる人の機械化=アインの末路を暴露してギャラルホルンの歪みを糾弾すること(鉄華団が「英雄」ガンダム・フレームを使っているのもポイント)、養父とフリュウ議員の癒着を暴くこと……。


鉄華団の戦力を考えれば結構危うい賭けだったが、かなり上出来の仕上がりと言えよう。

劇的な舞台に似つかわしい、劇的な演出だろう?



アインの誇りを踏みにじられた怒りを爆発させるガエリオ。マクギリスは彼をあしらいなおも続ける。
いずれ自分は君と言う跡取りを失ったボードウィン家を継ぐ、イシュー家の一人娘カルタも死んだ……。遂に「マクギリスは俺を生かして返すつもりはない」ことを理解してしまったガエリオは、衝動のままグリムゲルデへ突撃する。


だが連戦で疲弊し、ボロボロの精神状態のガエリオは、最早マクギリスの敵ではない。キマリスが得意とする高速突撃を超接近戦で封じ、機動力を活かしたグリムゲルデでキマリスの抵抗力を確実に奪っていくマクギリス、もはや2人によるMS戦の勝敗は決したも同然であった。
マクギリスを本当に親友だと信じていた自身の友情、マクギリスを最期まで想っていたカルタの恋心、その全てを裏切られ利用され、そしてそんなマクギリスに大切な妹、アルミリアを任せてしまったことへの後悔の叫びを聞いたマクギリスは最後の止めを言い放つ。

彼女の幸せは、保障しよう



そうだ、ガエリオ。私への怒りを、憎しみをぶつけてくるがいい
友情…愛情…信頼……。そんな生ぬるい感情は、私には残念ながら届かない
怒りの中で生きていた、私には


この言葉でついにガエリオは壊れてしまう。半狂乱で襲い掛かってくるガエリオを容易くさばきながらマクギリスは述懐する。思い出と決別するがごとく、彼はキマリスのコクピットに刃を突き立てた。
崩れ落ち、完全に沈黙したキマリスを前に、マクギリスは追悼の言葉をかける。その表情は彼にしては珍しく悲しげであった。


ガエリオ、お前に語った言葉に嘘はない。ギャラルホルンを正しい方向に導くには、お前とアインが必要だった
そして、お前は。私の生涯、ただ一人の友人だったよ……


マクギリスが素顔で対峙したのは、ガエリオの動揺を誘うためだけでなく、「ただ一人の友人」に対するケジメでもあったのだろう。





4日後、ヴィーンゴールヴにて。マクギリスは失脚した養父に、用意した亡命先への移動を真顔で勧告していた。

後の始末は私にお任せを。必ずファリド家を守ってみせます


「……分かっているのだろうなマクギリス。絶望から救い上げてやった恩義を忘れ……」
「お前の先にもまた絶望しか待っていないぞ」


呪詛を吐いて退出するイズナリオ。傅くマクギリスは一度も頭を上げず、ただ不敵にほほ笑むだけであった。
そしてボードウィン家を訪ねたマクギリスは、兄を失い泣きじゃくるアルミリアを抱きかかえて慰める。やはりいけしゃあしゃあと君の涙をガエリオは望んではいないはずだと優しく呟きながら……。


ガエリオと共に、放送当初からはまったくかけ離れた印象を視聴者に与えたマクギリス。
果たして彼が求める理想とは? そのために彼は今後、どのような修羅道を往くのか?



序盤:若き改革者

養父の失脚でファリド家当主の座についたマクギリス。アルミリアとの婚姻でボードウィンの娘婿となり、さらにイシュー家の後見人としてカルタ亡き後の地球外縁軌道統制統合艦隊司令官の地位を得る(同時に、特務三佐から准将へ昇進)。


かくして、若輩ながらもセブンスターズで一目置かれる立場となった彼は、お飾りの儀仗兵部隊と化していた地球外縁軌道統制統合艦隊を再編し、実践的な部隊へと作り替えた。
火星出身の石動・カミーチェをはじめ出生や家柄にこだわらない人事を率先して行い、エドモントンの戦いで地に落ちたギャラルホルンの威信改革にも貢献していた。
義父ボードウィン卿の後ろ盾もあり、他のセブンスターズの当主たちもマクギリスの功績を認める声が出るようになっていた。


一方でマクギリスの躍進は保守派からは脅威と受け止められていた。
特にマクギリスの政敵であるラスタルはマクギリスの思考をよく理解している謎の男ヴィダールを傍に置きマクギリスの真意を探っていた。
ラスタルは幼少時のマクギリス、他人に対して仮面を被ることを覚える前の彼と面識があり*4、初めての会話で欲しいものを尋ねられたマクギリスが「バエル」を求めたことをよく覚えており、そのマクギリスが予想通り政敵となったことに強く警戒を感じていたのであった。


段々と職権を広げ発言力を増していくマクギリスは地球外縁軌道統制統合艦隊の行動範囲を広げるようセブンスターズに提案する。
しかし、それは同時に他のセブンスターズ――特に月外縁軌道統合艦隊アリアンロッドを率いるラスタルの職域に手を出すことであり、かねてよりマクギリスを敵視しラスタルを慕うイオク・クジャンからの強い反発を招く。
ラスタルも内心では苦々しく感じていたが、あえて豪放な態度で許容し彼の度量の広さを誇示する道を選ぶ。
最大の目的と思われていたイズナリオの失脚にも満足せず、更なる躍進を求めるマクギリス。
そんなマクギリスの真意を探ろうとするラスタル。
ギャラルホルン内部では表面上は同志と呼びつつも常に互いを出し抜こうとする関係が加速していく。


そして、アリアンロッド艦隊の管轄内で暴れる大規模な海賊、夜明けの地平線団に着目。彼らを鉄華団の手で討伐させることで、アリアンロッド艦隊の治安維持能力の低下を強調し、地球外縁軌道統制統合艦隊が圏外圏も管轄に収める足掛かりにしようと画策する。
結果的に討伐には成功し、マクギリスが己の生き様を重ねる鉄華団、特に圧倒的な力で戦場を駆ける三日月が夜明けの地平線団トップの身柄を確保した。
大戦果を挙げてことでマクギリス個人としては溜飲を下げることは出来た。
しかし、実情は地球外縁軌道統制統合艦隊、鉄華団、アリアンロッド艦隊による手柄の奪い合いとなり、ギャラルホルンにおける覇権争いが浮き彫りになった。
マクギリスの腹心である石動が鉄華団に助成する様子もアリアンロッド艦隊に見咎められ、「マクギリスと鉄華団は一蓮托生であり、マクギリスを止めるには両方を制さねばない」という印象を強めた。
この一件はマクギリスと鉄華団の運命を大きく左右していく。


ラスタルは間髪を入れず、協力者であるガラン・モッサに依頼してアーブラウとSAUの紛争が勃発させた。
マクギリスはアリアンロッド艦隊の職域に喰い込むどころか、地球圏内への対応に忙殺され、
マクギリスの治安維持の手腕が疑問視されかねない事態となってしまう。
鉄華団がアーブラウの軍事顧問であったことで危うくマクギリスと鉄華団の関係が破綻しかねない状況*5に追い込まれるが、オルガ・イツカの迅速な判断と三日月・オーガスという圧倒的な戦力によりギリギリのところで事態終息に成功する。


マクギリスはガランとラスタルの関係をある程度読んでいたものの徹底的な証拠を集めきることはできず、ボードウィン卿からの援護でかろうじて発言力を残す状況となってしまう。



中盤:魂を手にした男

アーブラウとSAUの紛争が一段落した後、自分が癒着している火星支部長から、「鉄華団が自身の鉱山の発掘現場で奇妙な機体を発見したと報告があった」という一報を受け、火星支部長にアリアンロッド艦隊への上申を差し止めさせた。
それから、火星の地に降り立ち、地中から出てきた何かを確認しようとしていた。
当初は単なる視察と調査で終わるはずであった。
地中に存在したのはかつて厄祭戦で甚大な被害をもたらしたMAと推測され、マクギリス自身としては少なくともこの時点では余計な混乱を招かないようにと、ギャラルホルン本部へ一切通達しない選択をとった。
しかし、当然ながらこれらは専横であり、個人主義故の本来の管轄を度外視したこれらの行動は、「MAを悪用する企みを抱いている」とラスタル達に邪推される事態を招いてしまう。
そして、マクギリスの行動を警戒していたイオクが不用意にMSで追ってきたことで事態は急変、天敵のMSが接近したと認識したにMA、ハシュマルが覚醒するという最悪の事態になってしまう。


火星に甚大な被害をもたらしつつも鉄華団の活躍によりハシュマル討伐には成功したものの、マクギリスはかつて自身が策に嵌めたカルタのことを問うヴィダール、そして彼が操る謎のモビルスーツと邂逅することになる。
地球に戻った後、マクギリスは死んだはずのガエリオとボードウィン家に返却されたはずのキマリスについて石動に調査を命ずる。


本来この件は、鉄華団という(黒に近いグレーな)民間企業との癒着の証拠を掴まれるという、マクギリスにとって窮地に陥りかねない事態でもあったのだが、
イオクによるハシュマル覚醒の責任を問うことで失いかけたセブンスターズ内での発言力を取り戻すことにも成功する。
怒りに震えるイオクが指摘した七星勲章に対しても、元々興味も無かった為に一言で切り捨て真意を探ろうとしていたラスタルへの牽制も行った。
事態の大きさに対して双方水掛け論となって議題が霧散し、イオクの暴走がマクギリスにとっても思いがけない失地回復へとつながった。


が、これによりラスタルから叱責されたイオクの更なる暴走が後々のマクギリスの命運を大きく狂わせていくことになる。
マクギリスと鉄華団こそが部下達の仇である、として復讐に燃える*6イオクは、同じテイワズ所属であり、クジャン家と旧交のあったジャスレイ・ドノミコルスに鉄華団の討伐を打診。
しかし、ジャスレイに唆されたイオクは、鉄華団を庇護するタービンズに冤罪をかけ強襲、交渉も停戦申請も無視しタービンズを壊滅させてしまう。
これによりマクギリスと協力関係にあった鉄華団はタービンズという後ろ盾を失い、マクギリス自身も己の権限外の出来事に対処できず再び鉄華団から信用を失いかねない立場となる。*7
更にタービンズ壊滅の影響でテイワズで内紛が発生、JPTトラストを襲撃した鉄華団がテイワズから脱退、マクギリスを頼ってくることになる。
鉄華団を擁していたテイワズとの関係が途切れてしまうという無視できない損失を被るものの、イオクが【民間組織に冤罪をかけ禁止兵器であるダインスレイヴを使って民間人を殺害した】というスキャンダルについては証拠を握ることに成功する。



一方でヴィダールという男がラスタル側についていることで自身の本心はギャラルホルンにおける栄達にはなく、ギャラルホルンに反旗を翻そうとしている行動自体はラスタル側に発覚していると警戒していた。
しかし、自身の行動や思考は筒抜けでも、その真意は誰も未だ理解できていないという確信こそが彼の最大の切り札でもあった。このため、かねてよりライザ・エンザ達と計画していたクーデターを決行、3人のセブンスターズを軟禁し地球本部を制圧する。
同時にSAUとアーブラウの紛争がラスタルとガランによる自作自演であったこと、イオクが民間組織に冤罪を着せ禁止兵器で民間人を虐殺したことなど暴露、これによりラスタルとイオクの失脚させるべく世論に訴えかける。
その後はヴィダールによる介入もあったが、本部地下の格納庫で目的であったバエルに搭乗(この時、背中には阿頼耶識システムの接続端子が増設されていた)。
機体を起動、「ギャラルホルンの象徴」の強奪に成功し高らかに宣言する。


ギャラルホルンを名乗る身ならば、このモビルスーツがどのような意味を持つかは理解できるだろう!
ギャラルホルンにおいて、バエルを操る者こそが唯一絶対の力を持ち、その頂点に立つ!
席次も思想も関係なく、従わねばならないのだ!アグニカ・カイエルの魂に!!


このマクギリスの放送を聞いたライザ達はクーデターの成功を確信し喜ぶが、一方でなし崩し的に参加していた鉄華団の面々はさすがに懐疑的であった。
その直後に仮面を捨てたヴィダールが放送を開始、自身が死亡したはずのガエリオであることを明かし、逆賊マクギリスの討伐を宣言する。



終盤:マクギリス・ファリド

マクギリスの絵図の限りでは、錦の御旗であるバエルを強奪した時点で革命は成功であり、ガエリオを逃したことも些事に過ぎなかった。
しかし時代はもはやアグニカやバエルを必要とする時代ではなくなっていた。
最強の戦力であるアリオンロッド艦隊を集結させたラスタルもマクギリスがかつてガエリオとカルタを姦計に陥れたことを暴露、双方のスキャンダル合戦に持ち込まれたことでマクギリス陣営による暴露は効果が薄れてしまう。


バエル強奪後は誰もが従うはずと半ば本気で確信していたものの、古老にのらくらと躱され軟禁したセブンスターズからの戦力確保に失敗、マクギリスにとってはバエルの威光が通じないという予想外の展開になってしまう。
圧倒的な武力とその象徴が持つ力を過信し、その武力によって築かれた縦割りの組織とはどういうものかを完全に無視した結果、組織から放逐されてしまった。



この事態に対して、しばしばバエルの威光を過信したマクギリスをただの阿呆と嘲笑する意見も、視聴者の間では多く出た。
しかし、この完全な時代遅れの遺物と化して曇り切ったバエルの威光でも、アリアンロッド艦隊以外のギャラルホルン上層部から中立や静観を引き出すことに成功している。
マクギリスがかき集めた資料におけるバエルが、如何に崇高かつ強大な存在と定義されていたかが窺い知れ、彼が単に御伽噺を盲信していただけではなかったことが窺える。



敵は辛うじてアリアンロッド艦隊のみとなったが、それでも、自身の戦力とクーデター派、鉄華団で2倍以上の戦力をもつこの艦隊と衝突する事態になってしまう。
更に革命軍の中に仕込まれていた間者によるダインスレイヴの使用を許してしまい、ダインスレイヴによる報復*8で大打撃を受け、クーデター派をまとめていたライザも戦死。
マクギリスは錦の御旗であるバエルを駆り味方を激励して混乱の収拾に成功するが、それが更なるダインスレイヴによる攻撃を呼び込むこととなる。


バエル強奪時のセブンスターズの反応やアグニカの魂が宿るというマクギリスの台詞により視聴者の間では「MAを呼び覚ます能力があるのでは?」「ガンダム・ヴィダールの秘匿機能“阿頼耶識システムTypeE”のようアグニカの脳が使われているのでは?」といった憶測が盛んにおこなわれていたが、
その実態は特殊能力などは一切なく、阿頼耶識システムの情報伝達能力とアグニカの超常的な実力頼みなプロトタイプ扱いのモビルスーツに過ぎなかった
このため戦場でも自軍の士気高揚などには役立っても戦局全体を覆すほどの戦果は挙げられず、キマリスのように時代に合わせて対MAから対MSへとブラッシュアップされ続けてきた機体には遅れをとるという弱点も存在していた。
アルミリアをかばった際の負傷も影響し、石動の戦死へとつながってしまう。


多くの戦力と共にライザや石動という自身を支える人材を失ったマクギリスは火星へ敗走、火星支部にある戦力で巻き返しを図ろうとする。
が、ラスタルに先手を打たれギャラルホルンにおける地位を剥奪されてしまう。マスコミにも犯罪者として報道され、自身がイズナリオとは血縁関係がないことも公然の事実となってしまった。
火星支部本部長である新江・プロトももはやマクギリスを見限っていたが、ここまで上り詰めたマクギリスの強運については未だ警戒を解いておらず、マクギリスを受け入れはしないが討伐もしない、いわば黙認という形でマクギリスが火星の地へ降り立つことを認める。


火星支部の意趣返しにより火星の戦力が得られないと分かった後も鉄華団と行動を共にし「個人的に調べたい事がある」と思わせぶりな台詞を言うなどこの期に及んでまだ余裕を見せていた為
再び視聴者の間では「いよいよMAの大群が登場するのでは?」と期待が高まっていたが、特に何かしていたわけではなかったらしい。


一方でこの間鉄華団側は(交渉決裂したが)裏でマクギリスの身柄と引き換えにラスタルへの命乞いを画策していたのに対し、これまで己の力のみで道を切り拓いてきた鉄華団へのマクギリスの親近感は本心であり、
彼らが「一旦地球に逃亡して全員生存を目指す」という計画を立て袂が分かれた事を残念がりながらも、本部をバエルで離脱するついでにイオクらギャラルホルンの包囲網相手に単機で無双しオルガら数名がクリュセまで逃れる隙を作っていた。
オルガはクリュセで暗殺されたものの、結果的にクーデリアと3名が生存してギャラルホルン総攻撃時刻の情報を本部に流すことに成功し、多くの団員の生存に寄与した。
またこれも結果論ではあるが挑発の際にイオクを負傷させており、これが最終決戦で彼の焦りと無駄な飛び出しに繋がりイオクを昭弘が仕留められる一助になった。


絶望的な戦況を覆す術がないと悟ったマクギリスは、出撃前に最後までついてきた部下たちとトドを全員艦から降ろして逃がすと、「バエルに乗った自身が単独でラスタルを討つ」という無謀な行動に打って出る。

ラスタル・エリオン…。ギャラルホルンの覇権争いは、貴様に軍配が上がった……
しかし…! この状況下でこそ私が…俺が本当に望んでいた世界を…手に入れられるかもしれない!


見せてやろう、ラスタル…! 純粋な力のみが成立させる…真実を…。世界を!


組織の力ではなく、研ぎ澄まされた純粋な一人の人間の力で世界を変えられる」と自信ありげに嘯くものの、当初は無血開城を狙っていた人物とは思えない短絡的な発言であり、やはり特に何も考えていなかったのではないかとも受け取れる無策具合でもあった。

ギャラルホルンを追われた俺が、アリアンロッド艦隊の司令を一人で葬る!!


その行為が世界を変える!
生まれや所属など関係なく、己が力を研ぎ澄ます事で、この退屈な世界に嵐を起こす事が出来るのだと!!


己が持つ牙の使い方も知らず、ただ蹲るだけの獣が、一斉に野に放たれる……!
そうなれば……俺の勝ちだ!!!


一人称を「私」から「俺」に変えて感情をむき出しにし、バエルで奮戦するマクギリスは作中屈指の腕前を遺憾なく発揮しラスタル傘下のMSや艦を薙ぎ倒していくが、その前に最後の野望を防がんとするガエリオが立ちふさがる。


激闘の末キマリスヴィダールを阿頼耶識TYPE-Eの機能停止にまで追い込んだものの惜しくも敗北。バエルを降りるとラスタルの艦に侵入し、重傷を負って瀕死の体で尚もラスタル殺害を目指すが、再び眼前に現れたガエリオに撃たれ、その野望はここに潰えた。


今際の際にガエリオやカルタへの友情に背を向けた理由を問われたマクギリスはこう吐露した。

言われずとも、見えているさ…。いや…見えていながら、見えないふりを…していた……


お前達を否定しなければ、俺は…前へ…進めなかった……
お前達と共にいると、ずっと抱いていた思いが…揺らいでいくようで…眼を逸らした……


アルミリアも…幸せにすると、約束した……


「そんなもの…偽りの幸せだ…!」


幸せに…本物と偽物があるのか……?


それは「否定しなければ前に進めない」という思い、アルミリアを本気で幸せにしたいという思いだった。
だからこそ幸せな時間をくれたガエリオとカルタを犠牲にしなければ自身が抱いている世界への憎しみを忘れてしまいそうだったこと、
本物だろうと偽物だろうと幸せは幸せなのだとガエリオに伝える。


……何故泣く? ガエリオ、お前は…俺に―――


そして最後に何か言おうとした彼の言葉をガエリオは


「言うな!!!」


「お前が言おうとしている言葉が俺の想像通りなら、言えば俺は……」
「許してしまうかもしれない……!!」
「頼む、言わないでくれ…! カルタのために、アインのために…。俺は…。俺は!! ……お前を……!!!」


と涙ながらの絶叫で遮る。



最期の言葉を口に出せぬまま、マクギリスは静かに息を引き取ったのだった……。



マクギリスの死、鉄華団の壊滅、そしてイオク・クジャンの名誉ある(?)戦死…多くの傷跡を残しつつ一連の騒動は決着を迎えた。
この一連の騒動は『マクギリス・ファリド事件』として記録されることになる。


イシュー家及びクジャン家、ファリド家が消滅したことでギャラルホルンはラスタル主導の下に再編成される。
セブンスターズによる合議制は廃止、より民主的な組織とすべく新生ギャラルホルン初代代表にはラスタルが就任。
ギャラルホルン火星支部は縮小され各経済圏も火星での影響力を薄めていき、火星は火星連合としてクーデリア・藍那・バーンスタインを代表に自治体制に移行。
ヒューマンデブリ禁止条約もラスタルとクーデリアによって実現した。


客観的に見れば、マクギリスという男は政争に敗れ、抱き込んだ青年将校や鉄華団一同と揃って悪名を背負うこととなってしまった敗北者に過ぎない。
彼の決起は、無駄な流血と混乱を招いただけの愚挙であったのかもしれない。もう少し彼が大人であれば――大人になれる環境があれば――「(ある意味)真の大人」であるラスタルとの協調路線をとり、より緩やかな改革路線を取れたのかもしれない。



ともあれ、最終的には彼の思い描いていた世界の一部が実現し、やがては本格的な改革の息吹が生まれてくるであろう。
彼としてはそれだけでも満足だったのではないだろうか。バエルにも乗れたし



ゲーム作品での活躍


〇Gジェネレーションクロスレイズ
一期Ver、モンタークVer、二期Verの3人が存在。
成長パターンも各々異なる。好みのマクギリスを採用しよう。
一期Verはシナリオで解禁。モンタークはグリムゲルデ、二期Verはガンダム・バエルを生産登録するとスカウト可能になる。


二期Verは固有アビリティとして「孤高の王者」「阿頼耶識(オリジナル)」を習得。
前者は一対一の戦いだとダメージが20%増加、回避率も上昇する。
後者はクリティカル率が伸び、バエルの能力を最大限活用するのに必須。
これらの特性から、バエルに乗せて単身突撃させるといいだろう。
トランザムを発動すると「使わせてもらうぞ、イオリア…!」とやたらノリノリで使ってくれる。


ステータス面では一期Verは射撃型で指揮が伸び、モンタークVerは格闘と回避性能が伸びる。二期Verは高バランス型だが指揮は一期Ver、格闘回避はモンタークVerに劣る。
とはいえ二期Verは前述の通りバエルとの相性が完璧であり、マスターユニットにバエルごと突っ込んで一人でステージ中を暴れさせるのにはもってこい。



機動戦士ガンダム Extreme vs. MAXI BOOST ON
最終アップデートでバエルごと参戦。
衣装はパイロットスーツだが、熟練度を上げると半裸状態も解禁される。
封印された機体をバエルと重ねて危険視する、高貴な指導者を対等に見るなどクロスオーバー的な台詞が揃っている。
しれっとレオスにアグニカを教えようとしたり、三日月を本編以上に高く評価しオルガから奪おうとするなど本性も垣間見えたが。
EXVS2から参戦したキマリス・ヴィダール版ガエリオとは当然原作通りの掛け合いがある。機体相性的にも五分の闘いができ、プレイヤーの腕前が試される「力」比べとなるだろう。



Wiki篭り…君達の行う追記・修正は、前に進んでると思うか?


もし…本気で、そう信じているのなら……。


見せてくれ、私に……。


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*1 三日月でさえ幼少時の時点でわずかとはいえまともな大人たちに出会っていた
*2 ついでに言えば、アイン・ダルトンという男は地球出身者と火星出身者のハーフである。この出自が悪意と共に暴露されれば、下手をすると地球出身者以外への差別を更に加速させ、ギャラルホルンの体制のさらなる硬直化を招きかねない
*3 さすがにそばにいたトドは、新しい主が胡散臭い仮面をつけて興奮する様子に呆れていた。
*4 イズナリオによるものと思われるマクギリスの体に残る痣などに気付いており、当初は同情的であった。
*5 鉄華団本部の増援と前後するタイミングで出陣を強いられ、ガランの手腕によりガランの部下ではなく鉄華団のタカキ・ウノとアストン・アルトランドとの交戦に。地球支部との戦闘を回避するための行動を取ってはいたものの、アストンを手にかけてしまう。
*6 マクギリスも指摘する通り、「そもそもMAを発掘してしまったのは鉄華団」である。加えて、作中人物達の目線では、「MSが接近すると自己防衛の為に起動する」機能はあくまで可能性の話であり、MAの機能や仕様は未知である以上、実際の起動の原因は不明のまま。発掘工事の影響で、イオク降下前から既に起動し始めていた可能性も、作中人物達は否定は出来ない。そのため、イオクからすれば「MA発掘やそれによる悪だくみについてしらを切って責任転嫁している」ように見えもする。
*7 そもそもギャルホルンお得意の治安維持のためのマッチポンプとは関係なく、セブンスターズ現役当主の一角が私怨と邪推で月外縁軌道統合艦隊を動かしてまで無抵抗の民間組織を全滅させるということ事態が異例でありイオクの上司であるラスタルへの事前報告も行われていなかった。このためマクギリスが先手を打って未然に防ぐというのはさすがに無理な話でもあった。
*8 お得意のマッチポンプである。また、ダインスレイヴの投入数からも最初から使う気満々で準備していたことが窺える。

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