登録日:2016/03/11(金) 15:23:42
更新日:2024/01/22 Mon 10:49:50NEW!
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sf 小松左京 侵略sf 人類の敵は人類 見知らぬ明日
ぼくは、はっきりわかった。
地球人の敵は、宇宙人なんかじゃない。
地球人の敵は地球人そのものだ。
『見知らぬ明日』とは小松左京が執筆した侵略SF小説であり、1968年4月より半年にわたって『週刊文春』に連載された。
【作品解説】
「人類の対立を隠れ蓑にして宇宙からの侵略者が暗躍を始める」というストーリーをSF混じりのポリティカルフィクションで描いた作品。
「日本沈没」以前に書かれた作品だが、小松左京が「復活の日」で確立したシミュレーションSFの手法が、この作品でも十分な効果を上げている。
執筆当時、小松左京は「世界で最も情報の入って来ない秘境地域は何処だろう?」という発想を突き詰めて行ったうえで中国を選択したそうである。
(当時、中国は文化大革命のさなかで半鎖国状態であり、いまだ国連には加盟していなかったため、日本からみてもっとも「近くて遠い国」であった。)
学生運動などの当時の世相も多く組み込まれており、大変描写が説得力のあるものになっている。
また、宇宙人の描写や降下してきた地域、纏まりきらない人類などの描写から察するにマブラヴの元ネタの一つではないかと思われる。
もしも侵略物を描きたいと考えておられる方が居るのであれば、本作とハインライン作「宇宙の戦士」、「人形つかい」と、ウェルズ作「宇宙戦争」あたりは必読である。
【あらすじ】
中国文化大革命の収拾期であった1970年代初頭のある日、主人公の山崎の務める新聞社にモスクワ経由の入電が入ってくる。
それによると中国奥地の青海省で大規模な戦闘があり、状況はチベット~新疆ウイグル自治区に拡大、国境を越えて多数の難民がソ連領へ流れ込んでいるという。
山崎はそれから内乱以上の何かの気配を感じ取った。鎖国状態が続く中国の最も奥地での異変のせいで外電しか情報はなかったが、
それでも文革の混乱にしてはあまりにも規模が大きすぎるという異常さは伝わって来る。
中国西北部において、何か異様な事態が起きつつあるのだ。
それと同じころアメリカ大統領のラッセルが、国防長官と統合参謀本部議長から重大な報告を受ける。
タイの基地から飛び立った空軍の有人偵察機が、中国領内で突然消息を絶ったと言うのだ。
領空侵犯によるスパイ活動の発覚は、大きな国際問題に発展しかねないものである。
「何故、偵察機を飛ばしたのか?」という大統領の問いかけに、統参議長が数枚の衛星写真と航空写真を見せる。その中国奥地の画像に異様な物が写っていた。
それからしばらくして山崎はソビエト連邦への出張命令を受け、アエロフロート機でモスクワに向かう途中、彼の乗った飛行機はサヤン山脈付近で猛烈な空電ノイズにやられ、
中ソ国境で不時着してしまう。そこで彼が目にしたものとは…。
【主な登場人物】
●山崎
本作の主役の新聞記者。英語や中国語を話すことが出来る。
後述のファーガスンから宇宙人の詳細を収めたマイクロフィルムの運搬を頼まれた。
●山崎敏江
山崎の妻。小3の娘と4歳の息子がいる。
山崎の不倫に絶縁状態になるも、航空機事故後は一転して安否を気遣う。
●由美子
山崎の不倫相手の英文コピーライター。
28歳の既婚者である。
●ラッセル大統領
米国大統領。部下からの進言から中国奥地に来た勢力が宇宙人によるものだと察知し、
侵略を食い止めるために外交や軍事行動を精力的に行った。
●ウェブスター国防長官
米国国防長官。米国の閣僚の中で最も早くに中国の異変を外宇宙からの物ではないかと推察した。
●グリーンバーグ統参議長
米軍統参議長。青海の異変を鑑み、独断で偵察機を飛ばした理由をラッセルに問われたため、
衛星写真で異変の詳細を彼に進言した。
●ファーガスン
米国諜報機関員。本名は「アリグザンダー・フランクリン」である。
米国大統領ですら知らされていない「宇宙人との交渉」という密命を受けて3人の仲間と中国奥地の宇宙人と交渉に向かうも、
仲間は宇宙人に食われてしまった上に本人も宇宙人の兵器で放射線壊疽になってしまい、瀕死の状態となる。
最期は山崎に宇宙人の詳細を収めたマイクロフィルムを託し、「人類は団結しなければならない」と説いて息絶える。
●ウェンスキイ少佐
ソ連軍少佐。ファーガスンと接触していた山崎を日本のスパイではないかと初期は疑うも、
山崎の必死の説得に心を動かされ、宇宙人の襲撃の際に脱出の手引きをした。
●スヴェルトコワ看護婦
山崎が脱出する際に同行したソ連看護師。
セミパラチンスクまで同行した。
●范毅
中華人民共和国国連代表。
国連から軍事協力を求められるもこれを拒否した。
●朱成勇将軍
中国人民解放軍新司令官。北京でクーデターを起こして政権を握った。
40にならないぐらいの若い将軍で、封鎖状態だった宇宙人の情報を外部に知らせるとともに、
多国籍軍の軍事協力への許可を出した。
●宇宙人
出身地、正体は不明。希薄な大気と寒冷な気候を好むらしく、高山部や南極や北極などに集中的に飛来した。
ファーガスンによると「ナチスや人食い人種やアッティラもこいつらの前では赤ん坊みたいなもの」とのこと。
地球人の事などなんとも思っていない上に時には食べてしまうらしく、交渉などは問題外である。
攻撃や移動の際には白い円盤に乗りながら行い、レーザーで戦車を爆発させたり、空電ノイズで電波をかく乱させたり、大気を操って飛行機を撃墜させたりする。
通常兵器ではほとんど効果がないため、対処するには核攻撃を行うしかない。
【余談】
●1980年代に映画化する予定があったが没になってしまった。
●角川文庫や文芸春秋版は絶版なため、読んでみたい方は小松左京全集の4巻を購入することをお勧めする。
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- 結局のところ団結して宇宙人の脅威に立ち向かうところで終わったから割と続編が気になる -- 名無しさん (2016-03-11 20:37:44)
- 確かに宇宙人が冷戦期の中国に攻めてくるあたりガンパレよりもこっちの方がマブラヴの元ネタっぽいな -- 名無しさん (2016-12-01 20:44:43)
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