天津神

ページ名:天津神

登録日:2016/01/24 Sun 11:54:17
更新日:2024/01/18 Thu 13:50:01NEW!
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◇天津神◇


「天津神(あまつかみ)」は日本神話に登場してくる神々。
天孫系、或いは大和系と呼ばれる記紀神話にて王朝支配と天皇家の支配の正統性を示す為の系譜に組み込まれたカミの事をこう呼ぶ。
地祇(国津神)に対応した天神(てんじん)と云う呼び方もあるが、天神“様”=菅原道真=大宰府天満宮とは別である。*1



【系譜】
記紀神話に語られる宇宙開闢と共に出現した造化三神から始まる系譜を纏めて「天津神」と呼ぶが、国生みを行った伊邪那岐伊邪那美の夫婦神以前の神々に関しては別天津神、神代七世とする分け方もある事から、本項目では伊邪那岐・伊邪那美より続く子(特に高天原に属する神)を「天津神」と呼ぶ分類法に倣い記事を作成していきたい。
前述の様に記紀神話に於ける天皇家の支配の正統性を示すべく創作、或いは系譜に取り込まれた神々の事であり、特に皇祖神・天照大御神から天孫・天津日高日高番能邇邇芸命を経て、初代・神武天皇に至る系譜が記紀神話の中心にして柱となる。
記紀神話に併せて創作されたカミも多く、これらは王朝支配の広がりと共に各地の社で上書きされていった面もあるとか。


【代表的な神々】

記紀神話に登場してくる代表的な神々を中心に列挙する。
■=男神
□=女神
※は記紀神話には登場しないが高名な神。




【国生み神話】
■蛭子神(ヒルコ)
伊邪那岐・伊邪那美の夫婦が国生みの後にオノコロ島に降りて最初に生み出した神。
骨が無く足が立たなかった為に葦船に乗せて流された不具の子。
後に海より来るマレビト(稀人)、客人神(まろうどがみ)信仰と結びつき恵比寿(えびす)となった。



■大綿津見神(オオワダツミ)
海神。


■志那都比古神(シナドヒコ)
風神。


■大山津見神(オオヤマツミ)
山神。


■久久能智神(ククノチ)
木神。


□草野姫(カヤノヒメ)
草神。


■速秋津日子神(ハヤアキツヒコ)
□速秋津日売神(ハヤアキツヒメ)
水戸(河)の夫婦神。


※【祓戸四柱】
□瀬織津姫(セオリツヒメ)
川瀬の女神。
罪、穢れを海に流す。*2


□速開津姫(ハヤアキツ)
水戸の女神。
罪、穢れを呑み込む。


■気吹戸主神(イブキトヌシ)
海原の風の神。
罪、穢れを根の国に押し流す。


□速佐須良姫神(ハヤサスラヒメ)
根の国の風の女神。
魂を浄化させる。
根の国の王としてのスサノオ、或いはその娘の須勢理毘売(すせりびめ)と同一視される。


※祓戸四柱の神々には異説あり。
悪神とも解釈される八十禍津日神・大禍津日神・神直毘神・大直毘神の名が上げられる事もあるが、上記の「延喜式」の神々と同体ともされる。
また、単に死をタブー視しているだけで現代の“悪”とは合致しないとも考えられる。



■火之加具土神(ヒノカグツチ)
伊邪那岐・伊邪那美が神生みの最後に生み出した火の神。*3
生まれ落ちる時に母の陰部を焼き死に至らしめた事から、自らも父に首を切り落とされて殺されたとされる。
飛び散った血や遺体からも様々な神が生じているが最後に穀物の神が生まれている事から、火による破壊と再生の寓意であると考えられている。*4


■金山毘古神(カナヤマビコ)
□金山毘売神(カナヤマビメ)
鉱山の夫婦神。


■波邇夜須毘古神(ハニヤスビコ)
□波邇夜須毘売神(ハニヤスビメ)
土の夫婦神。


建御雷之男神(タケミカヅチ)
高天原が国譲りの決着の為に派遣した軍神。
火之加具土神の血液から生まれた神としては最も有名である。
名前から雷神と思われてる事が多いが、どちらかと云えば剣神としての属性の方が強く、刀剣の神として知られる経津主神(フツヌシ)と同体とする説もある。
鹿島神宮の祭神でもあり、同所の要石とも関連付けられ、地震を起こす大ナマズを鎮める神との信仰も生まれた。



■闇淤加美神(クラオカミノカミ)
□闇御津羽神(クラミツハノカミ)
谷間の水の神。


□弥津波売神(ミツハノメ)
農耕の水神。


□豊宇気毘売神(トヨウケビメ)
「古事記」では伊邪那美が陰部を焼かれた際に苦しみながら出した尿(ゆまり)より生じた和久産巣日神の子供。
食物の女神。
天照大御神を内宮に祀る伊勢神宮外宮の女神であり、天照の食事を司るとされる。
一方、中世の伊勢神道では他宗教の神秘思想の影響からか天之御中主神、国常立神と云う記紀神話の根源神と同体とされ、内宮の天照と対となる月天・水徳の神であると主張された。



【伊邪那岐の禊】
■八十禍津日神(ヤソマガツ)
■大禍津日神(オオマガツ)
黄泉の穢れの神。
■神直毘神(カミナオビ)
■大直毘神(オオナオビ)
穢れを祓う神。


□伊豆能女(イズノメ)


■底津綿津見神(ソコツワタツミ)
■中津綿津見神(ナカツワタツミ)
■上津綿津見神(ウワツワタツミ)
海の深さの神。



【住吉大神】
■底筒之男命(ソコツツノオノミコト)
■中筒之男命(ナカツツノオノミコト)
■上筒之男命(ウワツツノオノミコト)
海流の神。
航海の神として信仰を集めた。



【三貴子】
伊邪那岐が黄泉国より帰った後に筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原にて禊を行い、最後に顔を洗った時に生まれた最も貴い三柱の神。
生まれた時より世界を支配する権利を約束されている。


天照大御神(アマテラス)
左目を洗った時に生じた日神。
高天原の支配者にして、皇祖神たる比売神。
日本のカミの中でも最も神格が高い。
古代宗教に根付いていた各地の太陽信仰が日神を祀る巫女の姿を借りて集約していった姿。
この他、神功皇后や持統天皇らの姿が寓意化されていった面もあると考えられている。


月読命(ツクヨミ)
右目を洗った時に生じた月神。
夜食国の支配者。
太陽の陰となる満月の神であり農耕の神。


須佐之男命(スサノオ)
鼻を洗った時に生じた荒ぶる神。
海原を治めよと命じられるが受け入れず、高天原を荒らした後に追放。
地上に降りて八岐大蛇を退治する英雄となった後に、根の国(冥界)の支配者となった。
国津神の祖ともされる。



【宗像三女神】
□多紀理毘売命(タキリビメ)
□市寸島比売命(イチキシマヒメ)
□多岐都比売命(タキツヒメ)
須佐之男神が天照と行った神生みで誕生した海上交通の女神。



【高天原】
□天宇受売命(アメノウズメ)
天照の岩戸隠れの際に踊りを見せた女神。
巫女の神懸かりの姿から生まれた女神であり、遡って託宣を成す巫女(猿女氏)や芸能の祖とされている。
天孫降臨にも付き従い、国津神の猿田比古神(太陽神)と交渉。
その妻となったとされている。*5



■天手力男神(タヂカラオ)
岩戸隠れの際に神々の饗宴の余りの騒がしさに顔を覗かせた天照を外に引き出した神。
名前からも剛力の神としての信仰を集める。
タヂカラオは天照が二度と隠れないように岩戸を地上に投げ落としたとされ、その場所が戸隠山(長野県)だと云う。



■思金神(オモイカネ)
岩戸隠れの際に隠れた天照を引きずり出す算段を考えた高御産巣日神の御子(息子)。
ここから知恵を司る神、学問の神として信仰されている。



■天児屋命(アメノコヤネ)
岩戸隠れの際に神々の依頼を受けて祝詞を奉上した神。
後に藤原氏を生んだ中臣氏の祖であり、中臣氏は伊勢神宮の祭司を司っていた。


■布刀玉命(フトタマ)
岩戸隠れの際に神々の依頼を受けて榊に玉・鏡・幣を付けて御幣として奉じた神。
忌部氏の祖として伝えられ、天児屋命と共に八咫鏡を差し出し天照の姿を映したとされる。


■経津主神(フツヌシ)
「古事記」には名前が見えないが「日本書紀」に登場する剣神。
「フツ」とは剣を振る音を顕すとされる。
武甕槌(タケミカヅチ)と共に国の平定を成し遂げた。
「古事記」ではタケミカヅチが神武天皇に布都御霊(フツノミタマ)なる剣を授けたとされている事からも、両者は同じ神であると考えられている。



※これら、岩戸隠れの際に重要な働きをした神々は後に天孫降臨にも付き従ったとされる。
古代王朝の有力な氏族の祖とされるのも意図的な組み合わせなのだろう。



【天孫系】
■正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(オシホミミ)
スサノオが天照の勾玉を噛み砕き吹き出した際に誕生した天照の長男。
最初に地上を平定する様に命じられるも「いたく騒ぎてありなり」と語って引き返し、タケミカヅチにより平定された後に再び降るように命じられるも、息子のニニギに任を譲り高天原から離れようとはしなかった。
7世紀末に早逝により皇位に付けなかった持統天皇の息子の草壁皇子の寓意なのでは?とも見られている。


■天之菩比神(アメノホヒ)
オシホミミの弟で、オシホミミが引き返した後に地上に降りるも、大国主神に懐柔されてしまったとされる。
……が、「出雲国造神賀詞」では立派に出雲の統治に成功したとされている事から、元々は出雲の有力な神であったと考えられている。


■天若日子(ワカヒコ)
アメノホヒに次いで地上に降りた神。
矢張り大国主神に懐柔され、娘の下照比売(したでるひめ)を娶った。
次に遣わされたキジの鳴女をも射殺した事で高天原の怒りを買い、タカヒムスビから返し矢を受けて殺害された。
しかし、後に平安時代の「うつほ物語」に於いて天稚彦(あめのわかひこ)として「天の川」の物語と結びつき、日本版彦星となった。


■天火明命(ホアカリ)
オシホミミの長男で、ニニギノミコトを降らせるのがいいと進言したとされる。
尾張氏の祖神。
天照の名を持つ太陽神だったとも言われる。



■天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(ニニギノミコト)
平定された地上に天照より三種の神器(八尺瓊勾玉・八咫鏡・草薙剣)を下賜されて地上に降臨した天孫。
このとき「鏡は私(天照大御神)の御霊と思い祀るように」と詔を受けた事が伊勢神宮の起源であると語られている。
国土の象徴でもある山野の神・大山津見神より二人の娘を娶るように勧められるが、面食いであったので醜女の姉の石長比売(イワナガヒメ)は返し、美人の妹の木花佐久夜毘売(コノハナサクヤ)とのみ契りを交わした。
……が、姉妹はその名の様に片や磐石の長命を司り、片や花の様に消えるのを繰り返す繁栄を司っていた為に、地上での栄華は約束されたが、神々は地上では短命となってしまった。



※天孫系の神々に共通しているのが「日」と「穂」の名と信仰である。




【子孫神】
■火遠理命(ホオリ)
昔話でも有名な山幸彦の呼び名で知られるニニギの三男。
日子穂穂手見命(ひこほほでみのみこと)の名でも記される。
兄の海幸彦との諍いから海神・綿津見神の下へ向かい、娘の豊玉毘売を娶った。
その後、綿津見神より渡された潮盈珠(しおみつだま)と潮乾珠(しおひるだま)を用いて海幸彦を苦しめ屈伏させた。


■火照命(ホデリ)
ニニギの長男で海幸彦の呼び名で知られる。
弟の山幸彦と道具を交換した際に大事な釣り針を無くされ腹を立て、決して詫びを受け入れようとはしなかった。
しかし、山幸彦が綿津見神の助力を得たことで懲らしめられ、弟に仕える事を約束した。
これは九州南部の地方氏族である隼人の朝廷への屈伏を「兄弟葛藤譚」の神話を通して寓意化されたと考えられており、海幸彦が山幸彦に溺れさせられた際の姿を起源とするとされる「隼人舞」が服従の証として演じさせられた。


■神武天皇
ホオリの孫で、幼名は若御毛沼命。
本名は神倭伊波礼毘古命(イワレビコ)。
紆余曲折(神武東征)を経て大和王朝の最初の支配者となったとされる。
建国記念日(2/11)=始まりは旧暦の元日は、この御方が帝位に就いた日に由来する。



■崇神天皇
第十代天皇。
神武と共に「ハツクニシラススメラミコト」の別名がある。


□神功皇后
■応神天皇
第十五代天皇とその母。
新羅攻略を行った。
大陸からの侵略に対する信仰がある。*6
渡来神・八幡神とも結びつき信仰が広がった。


※これら“神”の字を持つ天皇は伝説的な側面を強調された半神的英雄である。


日本武尊(ヤマトタケル)
第十二代景行天皇の第三皇子。
須佐之男神と並ぶ日本神話の英雄。
悲劇的英雄として知られる。





【余談】

天津神、特に国生み神話に登場する神には国津神との境が無いカミも多いが、そもそもが現在の日本の神々は統一王朝となった大和朝廷と神道により統合、体系化された形なので仕方がない部分である。
とは云え、それらの現代でも名前を語られる神々に古代の喪われたカミの名や信仰が息づいている事もまた確かであり、古代史研究の要点の一つとなっている。





追記修正はお伊勢参りしてからお願いします。


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  • 天津飯? -- 名無しさん (2016-01-24 12:30:32)
  • 天津飯に空目 -- 名無しさん (2016-01-24 12:32:07)
  • 建乙。勉強になる -- 名無しさん (2016-01-24 15:04:30)
  • 国譲りといい結構DQN集団な印象 -- 名無しさん (2016-01-24 15:21:41)
  • 侵略者の別称 --   (2016-01-24 17:54:05)
  • 蛭子からだけで57柱(天皇抜いても52柱)・・・・・・。さすが八百万の神の住まう国の神話と言うか -- 名無しさん (2016-01-24 19:48:56)
  • これに限らず基本高天原住まいの神様は無性生殖で増えてる -- 名無しさん (2016-01-24 20:23:52)
  • ×3基本神話は勝者が残すもんだからなぁ、侵略者ガーって被害者気取りで言うのは引くわ、天津神にも様々な神がいる中、そんな一纏めにして欲しくないし -- 名無しさん (2016-01-24 23:19:41)
  • アニオタwikiにしてはおふざけ要素なくて真面目すぎない?ここまでまともだとWikipedia先生で十分な気が -- 名無しさん (2016-01-24 23:54:11)
  • 人物の人柄を何かの作品のキャラで例えるとか -- 名無しさん (2016-01-25 10:53:41)
  • メガテンやってたから一発で読めたわ~ -- 名無しさん (2016-01-25 15:30:32)
  • ↑3こういう項目もあってもいーじゃん -- 名無しさん (2016-01-25 15:50:42)
  • タグの侵略者ってどうかと思う。被害妄想強すぎて引く -- 名無しさん (2017-03-10 11:12:44)
  • 国津神と天津神の抗争は実質戦国時代のそれと同じだしな。複数の勢力を併合して覇権争いに勝ったのを侵略者呼ばわりしてたら江戸幕府や名のある武家なんか軒並み侵略者になってしまう -- 名無しさん (2017-03-10 12:08:58)
  • そもそも大国主の国づくりに天津神が深く関わってる(大国主の蘇生、共同作業者であるスクナビコナは天津神系)し、アマテラスが隠れた時に葦原中国も暗くなって荒れ果てたのを見ると、最初っから地方都市みたいなもんでは -- 名無しさん (2017-03-10 12:52:46)
  • YHVH -- 名無しさん (2017-11-30 00:34:50)
  • 武御雷と経津主神でも倒せなかった天津甕星を倒した建葉槌命もまた詳細不明な神様なんだよね。織物の神で天津神だっていうのはわかってるけど -- 名無しさん (2017-11-30 00:54:15)
  • マガツヒノカミ(漢字変換できなかった…)達は悪神というより、穢れを司る神なんだよね。信仰すると厄から守ってくれるみたいな。あと別の人によると悪に対する義憤を司る神ともされてるいい神達。個人的に好きな神達。(長文失礼) -- 名無しさん (2019-06-06 13:26:51)
  • ↑日本のカミってのは司ってるものに関わらずヒトに障らない様にするために奉ってるのが基本。 -- 名無しさん (2019-06-06 13:55:23)
  • カムヤライド(ルパパトとかリュウソウジャーの怪人デザインやってた人の漫画)に出てくる敵キャラの元ネタ。あっちは神様じゃなくて宇宙人っぽいけど。 -- 名無しさん (2020-05-23 14:46:59)

#comment

*1 こちらは天神(雷神)信仰が道真公に集約した呼び名である。
*2 ※大和朝廷により信仰を断絶させられたと考えている女神。天照のルーツとも。
*3 ※家屋・海・山・川・風・草・木・土地…火と、人間の生活の基盤となる神々である。
*4 ※火→金→土→水→木の五行相生の神から食物の神が生まれており、大陸思想(陰陽道)の影響が見られる。
*5 ※古事記ではサルタビコは溺れ死ぬが、民間信仰では幸せに暮らしたとされている。
*6 ※文化レベルの観点からも某国の主張は真逆でナンセンスである

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