メッサーシュミットMe262シュヴァルベ

ページ名:メッサーシュミットMe262シュヴァルベ

登録日:2015/01/17 (土) 19:15:00
更新日:2024/01/12 Fri 10:21:36NEW!
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根源 原点 ナチス ドイツ 戦闘機 兵器 軍用機 航空機 メッサーシュミットme262シュヴァルベ ジェット戦闘機



この機体こそが、ナチス・ドイツの技術力の象徴である



メッサーシュミットMe262シュヴァルベとは、1942年にドイツ空軍に採用された世界初の実用ジェット戦闘機である。
科学力と偶然が交差することにより誕生し、これ以降の空の戦いのあり方を変えてしまった伝説的な機体である。「第二次世界大戦における最大の発明とは?」と聞かれればこの機体を上げる人は多いだろう。
それまでの戦闘機はプロペラを回しエンジンを前方に置くものが主流だっただけにこの機体は革新的な存在であった。なお、シュヴァルベとはドイツ語で「燕」という意味である。
くっそカッコいい。








性能諸元(Me262 A-1a)

分類:戦闘機   
設計:メッサーシュミット社
製造:メッサーシュミット社
   アヴィア・モータース社(チェコスロバキア)
全長: 10.58m
翼長: 12.5m
全高: 3.83m
翼面積:21.73㎡
自重:3,795kg
空虚装備重量:4,413kg
最大離陸重量:6,387kg
発動機:ユンカース Jumo004B-1 ターボジェットエンジン 2基
最高速度:869km/h(高度6,000m)
上昇限度:12,190m以上(高度9,000m)
上昇率:1,200m/h
航続距離:1,050km
乗員:1名
武装:30mm MK108機関砲 ×4 装弾数360発
   55mm R4Mロケット弾 ×24





背景

第二次大戦前、ヨーロッパの各所ではジェットエンジンの開発が盛んに行われていた。
このエンジンを飛行機に搭載することでそれまでのプロペラ機を凌駕した実力を持てるとして、大いに開発に全力が注がれたのである。
まず、ドイツのハインケル社がHe178を、イタリアがカプロニ・カンピニ N.1を、イギリスがグロスター E.28/39をそれぞれ初飛行させる。
しかし、いずれにしてもこれらは研究機であり実用の域に達することはなかった。
その後、第二次世界大戦が始まり各国は総力を挙げて軍用機の性能を引き延ばすことになる。
ジェットエンジンは性質上レシプロエンジンより開発が手間取るため、戦争が始まるとイギリスとドイツだけドーバー海峡を挟んで細々と研究する状態になった。実際、当時はまだレシプロが主流だったのである。





開発まで

そして、ドイツ国内では様々な形でジェットエンジンを搭載した軍用機を飛ばすことに執念を燃やした。
ところが、研究や開発は持続されたものの戦局は連合軍側が有利な展開に導かれてしまう。
この状況下でもメッサーシュミット社はベストセラーである「Bf109」や「Bf110」の生産を続ける合間で、新たな機体の開発を行った。それは当時開発中であったジェットエンジンであるBMW003を搭載する(予定の)機体であった。


同じく、世界初のジェット機を飛ばしたハインケル社の既に実用化されていた「Jumo004」を搭載したHe280も初飛行にまで漕ぎ着けたが、なにやら軍上層部は大型機の設計に定評のあるハインケル社の戦闘機を冷遇していたらしく、性能がMe262に劣ることもあってキャンセルしてしまった。
結局実用化はメッサーシュミット社が勝ち取ることになる。
この辺りまでは良かった。しかし、この後が大変だった。なぜかというと、初飛行の最中でこんな会話があったからである。


ヒトラー「実に素晴らしい機体だ。」


ゲーリング「連合軍では考えられない機体ですよ。」


ヒトラー「この機体に爆弾は積めるのかい?」


ゲーリング「一応出来ますが?やればですけど。」


ヒトラー「そうか。じゃあこの機体は納入され次第爆撃機として使おう!!それでいいね?」


ゲーリング「なっ!!///」


ヒトラー「なにか悪いこといったかね?」


この時の両者の会話は、それ程重要視されず単なる語らいだと思われていた。実際、メッサーシュミット社が目指していたのはジェットエンジンで高高度を飛ぶ戦闘機なのだから。
なお、初飛行地点ではまだ搭載予定のエンジンが未成だったため既存のプロペラで飛びました。





特徴

この機体は、後世の戦闘機に重大な影響を与えており、如何にも本機が偉大だったかお分かりいただけよう。ただ、世界初のジェットエンジンを搭載した戦闘機という事もあり問題点も抱えていた。



ジェットエンジン

翼に2基のジェットエンジン「ユンカース jumo004」を搭載している(本来は前述の通りBMW003エンジンが搭載される予定だったが、信頼性がマジで0点レベルだったため変更された。ただjumo004も決して信頼性が高いわけではない。)。
従来の機体はレシプロエンジンを前部に搭載するのが主流だったが、この機体はエンジンを翼に搭載しており結果として機首に空白を開けることが出来た。よって大口径砲が積める。
このエンジンの出力は優れており、従来の研究機はもちろんレシプロ機より数倍以上のスピードで飛ぶことが出来たのだ。
エンジンを翼に配置する辺りメッサーシュミット社のBf110に通じる部分があるので、この機体が改めて戦闘機であることを感じさせる。
このエンジンは軸流式であり、シンプルな構造であるが依然大型化はできない。
しかし、問題点として精密機械であるため初期のエンジンは壊れやすかったという。
また、お察しの通り大量の燃料を燃やして飛ぶため燃費がレシプロより悪かった。



後退翼

こちらはただ単に偶然生まれた産物である。
エンジンを搭載した際に重量配分がおかしくなるため、後方に翼を張り出してバランスを取らせるようにしていたのだ。
その結果、空気抵抗がそれまでのテーパー翼の機体より軽減されより高速で飛べるようになったのである。
ただ、あくまで重量配分をよくするための配慮であり、実質空気抵抗を完全に減らせるものではない。



その他

本機を運用するためには、不整地ではなくコンクリート製の滑走路が必需とされた。
アスファルトで実施したところ、エンジンが異物を吸収して破損してしまったという。
また、着陸する際は胴体の形状により視界が不足するため困難を来したことから連合軍に見抜かれて狙撃されるようになり、そうならないためにも上空を常に護衛機でカバーする必要があった。





長所

加速が悪い(というより急加速が出来なかった。なぜならエンジンに負担がかかってエンジンが壊れるから)、旋回が苦手(こちらもエンジンの信頼性の低さが原因)、燃費が悪い、エンジンが繊細など数多くの欠点を抱えていたMe262だが、それが気にならない程の長所も持っていた。



速度

Me262の最大の武器、それはジェットエンジンによってもたらされる870Km/hという俊足さである。
アメリカ軍の最優秀戦闘機といわれるP51Dが703Km/h、日本戦闘機最速の四式戦闘機疾風が624Km/h、実戦参加したレシプロ戦闘機として最速クラスのTa152ですら750Km/hである。
Ta152ですら120Km/hの差があり、もはや別次元の速さだったのだ。
速度が速いということは敵機にすぐに追い付けるし、逃げたり引き離したりするのも簡単なため、速度は戦闘機には非常に重要なファクターだったのだ。Me262はこの神速と後述する重火力で連合軍の重爆撃機を数多く仕留めたという。
なお、単純な速度だけならさらに別次元のMe163コメートというロケット戦闘機が実戦化されているのだが(最大時速960km/h!!)、こちらはあまりにも扱いにくく、失敗作に近い評価を受けている。



重火力

Me262には機首に30mm機関銃が4門積まれていた。


……30mmである。戦闘機に。それも4門まとめて。


かのルーデル閣下のスツーカは37mm機関砲を積んでいたが、こちらは対戦車攻撃機であるし、それでも翼内に2門だけである。Me262の火力の高さがよくお分かりだろう。集結して飛んでくる30mm弾の威力は凄まじいものである。
また、Me262にはR4Mという空対空ロケット弾を24発装備することができた。1、2発で爆撃機を粉砕する代物だ。
直進性が低く、敵機に近づかないと当たらないという欠点はあったが、Me262の俊足の前では殆ど気にならず、文字通りMe262の「必殺技」になった。





実戦投入

遂に、Me262シュヴァルベは1944年6月より運用が始まった。初飛行の42年から遅れている感が否めないが、初めてのジェット機であるためいろいろ手間取ったからである。
それまでのレシプロ機より優れた高速性能と超火力は連合軍の恐怖の的になった。いずれも猛威をふるい制空権を維持できるはずだった。そのはずだった・・・・。


ヒトラー「おい!爆撃機Me262はまだ出来ないのか!?」


メ社「いや、戦闘機として生産していますが?そして成果を上げていますが?」


ヒトラー「この愚か者めが!なぜ爆撃型を作らない!?」


軍上層部「そう申されましても・・・・。」


ヒトラー「すぐに任務を爆撃に切り替えるんだ!!」


こうしてMe262は戦闘機のはずが爆撃機として運用されることになる。
元々、戦闘機として設計されたため翼に爆弾を搭載するスペースはない。だからこそメッサーシュミット社は戦闘機として運用するよう設計したのだ。
そんな中、爆弾を開いた胴体下部に搭載するようになったため著しく運動性と機動性が悪化。クリアランスはある程度確保されていたものの、運用面で多大な支障を来すことになる。どうしてこうなった。
現代の戦闘機は、マルチロールと題して強制的に爆弾を積んで機動性を悪くしたまんま運用している様子だが、そんなやり方をドイツは先取りしてしまったのだ。
なぜ爆撃機にしたかと言えば、ドイツ空軍の爆撃機に問題点があったのだ。ドイツが運用していた機体はHe111やDo217、Ju87やJu88といった機体であり連合軍の機体と比べると速度で劣るものがあった。実際にこれらの機体は護衛を付けないとカモにされたのである。
そんな中でMe262は理想的な機体に見えたのだろう。戦闘機は既存のBf109やFw190でエースパイロットが多く輩出されていたのだからヒトラーの心情も頷けるかもしれないが……。
だが伍長の頑迷さは高速性しか取り柄のない当時のジェット機を、爆弾の重量により低速化して戦場に投入するという本末転倒な事態を招き、
結果として貴重なジェット機の無駄な浪費になってしまった。
結局、Me262は本命であるジェット爆撃機のAr234が戦力化されるまで爆撃機として運用される羽目になったのだ。


その後、Me262は再び戦闘機として運用されることになる。前述したようにレーダーも搭載できるため夜間戦闘機としても猛威をふるった。
が、既に制空権をほとんど掌握されており、運用の練度も人材も払拭していては、いくら機体が先進的であろうとも大局を変えることなどもはや不可能であった。


また未熟な訓練生向けに、本機と同じエンジンを搭載した「国民戦闘機(フォルクスイエーガー)」He162も末期に急遽開発された。
木の板と接着剤をも使用し(!)、焼き付きや停止の多発する初期のジェットエンジンを1基だけ(!!)背負って900km/hで飛ぶという全力で安全性をぶんなげた機体である。
本格投入の暁にはヒトラーユーゲント達の生命も全力でぶん投げられることになっていたであろう。撃墜ではなく事故で。


一方、イギリスはグロスターミーティアやデ・ハビランド・バンパイアなる機体を完成させ、Me262との交戦を目指したが、既に戦局は終盤を迎えていたため、ついに迎え撃つことはなかった。
終戦時には、一部の機体が連合軍に投降したり接収されたりした。



この技術は日本にも輸出され、後に海軍で橘花、陸軍で火龍なる機体が開発されたが、本機とはMe262とはエンジンも目的も異なる。





戦後

その後、本機はチェコスロヴァキアでライセンス生産されアビアS-92、アビアCS-92として戦力化された。
なお、当機の技術は世界中より注目され、本機をぶんどって様々な研究が行われた。が、ソビエト連邦だけは違った。
後に航空産業の基礎になるスホーイ社が製造したMe262そのまんまの姿であるSu-9(数年後に登場する同名機とは別)は、最終的に「敵国の機体である以上、墜落しそうで怖い。」「これは敵が作ったのだから国民から危険視される。」という理由で製造中止になったという。


今を思えば、現在まで続くジェット機の盤石を創ったのに、技術遺産に指定されないのが不思議でならない。本国ではどう思っているのだろうか?





余談

  • メッサーシュミット P.1101
    メッサーシュミット社ではさらなる革新的戦闘機を目指した次の機体の開発も進行していた。
    『P.1101』と名付けられたこの機体はすでに超音速戦闘さえ見据えていた。

  • 第44戦闘団
    戦争末期に結成された、シュヴァルベを多数擁した著名な部隊。司令はエンブレムが夢の国の鼠ということでも有名なアドルフ・ガーラント*1中将。
    「好きなパイロットを引っ張ってきていいよ」と言われた結果、ドイツ中のエースパイロットに声をかけ、所属パイロットのほとんどが騎士鉄十字章の持ち主という、創作でしか聞かないようなエース部隊となった。
    活動期間は敗戦前の数か月だったが、パイロットと機体共にその力を存分に発揮し、ドイツの防空に活躍した。




登場作品

仮想戦記ではドイツ空軍を代表する起死回生の兵器として出番は比較的多い。
改設計されて空母艦載機としても登場する作品もあるが、RATOやカタパルトの助けを借りても戦力になるか怪しいところ。
ペーパープランで終わってしまった改良型のHGIIIは世界初の実用ジェット艦上戦闘機マクダネルFH-1(XFD-1)ファントムとやや似ているが、
艦載機ではよりネックとなる運動性や加速性能の悪さがどこまで改善されたのか実機が無い以上は確かめようがなく、成立の可否は不明。



インベーダー四大幹部で元ナチス・ドイツ軍人の機械将軍が、稼働前のBシステム(自動警戒監視装置)破壊を目的とした奇襲作戦計画で実戦投入した。
瞬間物質電送装置で10数機が送り込まれて、入間基地と浜松基地から5機ずつ発進した航空自衛隊のF-86を30mm機関砲MK 108で全機撃墜した後、
主戦場の府中基地では先述したR4M空対地弾頭型のパンツァーブリッツ2と機関砲掃射で対地攻撃に従事し、超重戦車マウスとともに機械化軍団を支援した。
しかし事前展開していた陸上自衛隊ら守備隊の対空射撃で4機まで撃ち減らされた末、地球防衛機構イージス極東支部に所属する特殊遊撃隊員で
超人的な身体能力を発揮する迫撃のゲートキーパー近衛かおるによって、M24軽戦車チャーフィーの残骸を攻撃進路上へ投げ飛ばされた結果、全滅した。



TV特撮版のイナズマンでは新人類帝国ファントム戦闘機として度々登場。
イナズマンの駆るライジンゴーと空中戦を繰り広げた。
ちなみに続編の『イナズマンF』に登場したデスパー軍団の主力機は同じドイツ製のロケット戦闘機・Me163コメートが使用されていた。







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  • いくつか間違いがあったので訂正しました。Me262格好いいですよね。 -- 名無しさん (2015-01-19 17:13:52)
  • まあこの機体が世の中に重大な影響を与えたのは間違いない。 -- 名無しさん (2015-01-31 19:15:07)
  • コイツといいホルテンといい、当時のドイツはマジで時代先取りしてる -- 名無しさん (2023-09-27 11:32:27)

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*1 日本での表記はガラント、ガーランドとも。

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