ホーカー ハリケーン

ページ名:ホーカー ハリケーン

登録日:2014/11/29 (土) 04:16:20
更新日:2023/12/21 Thu 13:40:44NEW!
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大英帝国 英国空軍 戦闘機 名機 性能がすべてじゃない 救国戦闘機 ハリケーン 邀撃機 防空戦闘機 ホーカー



ハリケーンは、ホーカー・エアクラフトが開発、英国空軍によって運用されたレシプロ戦闘機である。
モノを知らない人からは「旧世代のポンコツ」とpgrされるが、スピットファイアとともに英国空軍を支え続けた紛れもない名機。



性能諸元(Mk.2B)

全長:9.82m
全高:3.99m
全幅:12.19m
翼面積:23.92㎡
自重:2.50t
最大重量:3.30t
最高速度:550km/h(高度6,700m)
上昇限度:11,100m
航続距離:770km(内部燃料のみ)
巡航速度:476km/h(高度6,100m)
発動機:ロールス・ロイス「マーリンXX」液冷V型12気筒 1,185hp 1基
総生産機数:14,231機
武装:7.7mm機銃12門
爆装:227kg爆弾最大2発



開発経緯

1930年代初頭、英国空軍は防空戦闘機の更新を計画する。この頃の主力戦闘機は最高速度360km/h、武装は7.7mm機銃2門のみの複葉戦闘機、フューリーだった。
航空省は全金属製で現行機を上回る機体の開発要求をメーカーに提示したのだが、世界恐慌の真っ只中で軍事費がゴリっと削られてしまったこともあり、
結局複葉機のグラディエーターの選定を強いられる羽目になった。
一方その頃、フューリーの開発元であるホーカーは、フューリーの近代化&単葉化プランの研究・試作機開発を開始する。
ロールス・ロイスによる新型エンジン(後のマーリンシリーズ)開発と「(いくら何でもこのままじゃ)いかんでしょ」という航空省の思惑も重なり、
ホーカーの設計案向けの開発要求仕様書F.36/34が作成される。


完成した試作機は1935年11月6日に初飛行を行い、その後まもなくハリケーンの名を与えられる。
英国空軍初の低翼単葉・引き込み脚・密閉風防を採用した近代的戦闘機……と言いたいが、実は微妙に違う。
何故かと言うと、わずか4ヶ月後に登場するスピットファイアが全金属製のボディにモノコック構造を採用した新世代型英国空軍機の雛形であったのとは対照的に、
こちらは羽布張りや木材を使用(エンジンやコクピット周りは分厚いアルミ合金被覆)した、複葉機製造技術の延長線上にある旧態依然と言っていい構造だったのだ。
これは、ホーカーの製造技術がスーパーマリンに劣っていたというのもあったが、何よりも全金属製機に全ての生産ラインを今すぐ転換するのは困難だったという事情もあった。
あと生産コストとかその他諸々のやむにやまれぬ事情と、設計主任のシドニー・カム技師が戦雲を欧州情勢に見出していたため、生産性を念頭に置いて設計されたというのもある。



性能

攻撃力

初期型の時点で7.7mm機銃8門という(開発開始当時は)極めて強力な火力を有していた。
しかし全金属製の新世代型軍用機が戦場の主力となると、豆鉄砲をたくさん持っていても意味がないということで、後期には20mm機関砲4門を装備した重装型も登場している。
また、後には翼下に40mm機関砲ガンポッドを懸架した対戦車襲撃仕様も開発された。


防御力

複葉機に近い構造なだけあり、防弾性能は基本的に皆無と言っても過言ではない。
弾が当たった端から貫けて行く様は見ていて乾いた笑いが浮かぶものだ。
しかし軽くて頑丈な構造であり、なおかつ余裕があったため、戦局や戦訓対応を元にした改修が容易だったこと、
また被弾時のサバイバビリティに優れていたことは忘れてはならないだろう。
布張りゆえに金属外皮と違って馬鹿でかい破孔を生じることがなく、また失速・墜落時にも軽量なために降下速度が遅く、脱出が容易だったからだ。死んでなければだがな


飛行性能

飛行性能では同時期の他国の戦闘機に劣る。しかし、低高度での格闘戦に限っては、Bf109などとも互角に戦えたようだ。
まぁ、あっちは直線番長的な性能特性だし、迎撃戦闘を主眼に開発されたからこそ抗しえたのだろう。


その他、直接的には戦闘に関係ない部分

前述の「複葉機の延長上」にあるがゆえに生産性や整備性が高く、修復難度が低かったこともあって、スピットファイア以上に重宝されていたようだ。
とはいえ、生産ライン転換により量産効率が上がって以降は、スピットファイアに生産性では劣るようになった。
また、足回りが頑丈なために不整地での運用能力にも優れており、その辺が脆弱なスピットファイアと違い、着陸時の事故喪失は少なかったとされる。



戦歴

元々の生産性の高さから、第二次大戦開戦時には既に19個戦闘機中隊がハリケーンへの機種転換を完了しており、
ドイツの北欧侵攻に呼応して初期型を有する第46戦闘機中隊がグラディエーターの在庫処分とともに送り込まれる。
彼らはナルヴィク上空の防空をよくこなし、ドイツ空軍から港湾と海軍、陸軍を守った。
また、ドイツ侵攻下にあったフランスにも4個戦闘機中隊が派遣されているが、さすがに緒戦の「ガンガンいこうぜ」には抗しきれず、
後の6個中隊の増援も虚しくダンケルクから逃げ出している。


戦闘機としての本機の真骨頂はバトル・オブ・ブリテン(BOB)であった。
より機動性に優れたスピットファイアが護衛戦闘機を引き剥がし足止めしている間に、爆撃機隊をハリケーンが全力でぶん殴るという役割に専念し、
BOB期間中の総撃墜数の過半数、敵爆撃機の約8割をハリケーン隊が稼ぎ出したという。
自国上空での戦闘でパイロットの帰還が容易、かつ損害の割にベテラン喪失比が低かったのも活躍の一因だろう。
しかし、生産ライン転換等でスピットファイアに生産速度で上回られると、本機は本土防空の任を解かれ、植民地にその主な任地を移す。


しかし、太平洋戦線では航続距離や運動性で絶望的な差を持つ大日本帝国軍にフルボッコにされ、本土防空戦に従事したような活躍はできなかった。
とはいえ、ハリケーンの登場した時期の帝国軍機といえば九七戦であり、零戦と比較するのは少々アンフェアだ。
性能でもパイロットの練度でも劣っているのだから、負けるのはある意味では必然だったのだろう。


また、本土防空こそしなくなったものの、本機は高い拡張性を活かし、欧州やアフリカ戦線で戦闘爆撃機として終戦まで現役を張り続けた。
それ以外にも艦上戦闘機開発をことごとくポシャったためにそっち方面でも改修運用され、艦戦としての適性は専用機に劣ってはいたものの、
例によって足回りを酷評されたシーファイア(艦戦仕様のスピットファイア)よりも海軍からは好評だったようだ。
生産は44年まで続けられ、45年の終戦をもって本国での任務は完了。戦後に余剰化した機体はトルコやエジプト、南アフリカ等に売却され、
そこそこ長いこと現役機として奉公したという。


性能的には第二次大戦機のほとんどの単葉戦闘機に劣る本機ではあるが、祖国の実情に即した設計と生産、運用を行われた結果、
必要な時期に生まれ、必要な数を作れ、必要な分だけパイロットを養成でき、必要な戦場に送り込むことができた。
運用の容易さから常に稼働率と機数を維持し続け、適切な戦場に送り込まれた本機もまた、スピットファイアと並んで、
大英帝国の救世主と呼ぶに相応しい戦闘機だろう。



バリエーション

拡張性の高さからちょくちょく手を加えられているため、バリエーションは極めて豊富。


○K5083
プロトタイプの社内ナンバリング。この当時は7.7mm機銃4門を装備していた。


○ハリケーンMk.1
最初期生産型。機銃搭載数を倍の8門に増やし火力増強を図ったほか、エンジンをマーリンMk.Ⅱに換装している。
また、このタイプの後期型では主翼が金属製の高強度タイプに移行した。


○〃Mk.2A シリーズ1
より高出力化したマーリンXXエンジンを搭載した出力強化型。武装はMk.1準拠。


○〃Mk.2A シリーズ2
シリーズ1をベースに、主翼下に爆装用アタッチメントを追加したもの。
この頃から戦闘爆撃機としての運用を視野に入れた改修が本格化する。


○〃Mk.2B
シリーズ2をベースに機銃を12門にまで増強した武装強化型。
豆鉄砲とはいえ、こうも大量に積み込めばさすがに脅威ともなった。


○〃Mk.2C
搭載機銃をイスパノ・スイザ製20mm機関砲4門に更新した重装型。


○〃Mk.2D
翼下アタッチメントにヴィッカース製40mm機関砲ガンポッドを装備した対戦車襲撃仕様。
対戦車のみならず、小型舟艇攻撃などの様々な対地・対小型船舶襲撃に運用された。
また北アフリカで枢軸国の地上部隊相手に無双し、「缶切り」の渾名を頂戴した。


○〃Mk.3
さらなる高出力化を図り、マーリン28にエンジンを換装した機体の予定名称。
諸事情により実現せず。


○〃Mk.4
試作名称Mk.2E。マーリン24エンジンに換装し、速度性能の強化を図った。
また、翼下アタッチメントを増槽や対地ロケット弾ラックに対応させた多目的タイプに変更している。
多目的な換装を可能としたが、前線では対地特化装備の方が好まれたようだ。


○〃Mk.5
マーリン32エンジンを搭載した高出力化試作機。


○〃Mk.10
カナダのカナディアン・カー・アンド・ファウンドリーで製造された機体群。
Mk.2A準拠の機体だが、エンジンはマーリン28。


○〃Mk.11
Mk.10をベースにMk.2B相当の武装を施した機体。


○〃Mk.12
Mk.10をベースにMk.2C相当の改修を施した機体。


○〃Mk.12A
マーリン29エンジンを搭載した出力強化仕様。主にソ連へ供与されたそうな。


○シーハリケーンMk.1A
CAMシップでの運用を前提にカタパルト発進用に小改装された仕様。ベースはハリケーンMk.1。
カタパルト射出後は最寄りの飛行場に帰還するか、機体を捨てて脱出し友軍艦艇に救助されるかの二択。


○〃Mk.1B
ハリケーンMk.2Aをベースに、着艦フック増設やカタパルト射出に対応した改修が行われた艦戦型。


○〃Mk.1C
Mk.1をベースに艦戦改装を行い、さらに主翼を原型機のMk.2C相当に置き換えることで火力を強化した強化型艦戦仕様。


○〃Mk.2C
原型機のMk.2Cを艦戦改修した海軍仕様標準型。本仕様をもって、シーハリケーンは一応の完成となった。


○〃Mk.12A
ハリケーンMk.12Aを艦上機改装した仕様。






追記・修正は本機でバトル・オブ・ブリテンに従軍してからお願いします。


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