デ・ハヴィランド モスキート

ページ名:デ_ハヴィランド モスキート

登録日:2014/04/18 Fri 21:08:45
更新日:2023/12/15 Fri 13:25:39NEW!
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航空機 傑作機 爆撃機 偵察機 戦闘爆撃機 英国面 イギリス モスキート 変態兵器 夜間戦闘機 英国面の本領発揮 フィーヒヒヒ! フィーヒヒヒ!←ではない 木製 エンジン以外は家具です(キリッ 猫目のカニンガム やっぱりやらかす中国人 ぅゎ木造機っょぃ デ・ハヴィランド



デ・ハヴィランド モスキートは、英国空軍が運用した全木製高速爆撃機であり、伝説的英国面である。



性能諸元(爆撃機型)

全長:13.57m
全高:5.3m
翼幅:16.52m
空虚重量:6.49t
運用時重量:8.21t
最大離陸重量:11.35t
エンジン:ロールス・ロイス マーリンV型12気筒液冷(1,710hp)2基
最大速度:667.9 km/h(高度8,535m)
航続距離:2,400km(1,500海里)
実用上昇限度:11,280m
上昇率:14.5 m/s
固定兵装(戦闘機型):20mm機関砲4門、7.7mm機銃4門
爆装:最大1.8t



開発史

デ・ハヴィランドという航空機メーカーの起源は、破産した企業の航空機部門を同社のチーフエンジニアが買収することで存続させたものだった。
また、民間機ではあるものの合成木材を用いた高速機の開発ノウハウをもっており、ダブついている家具業界の資源と組み合わせれば不足する金属資源に依存しない軍用機が開発できると見込んだ。
とはいえ、当時の時点で木造機は本来、時代遅れ。
いくらネタ兵器の本場とはいえ、当初はたいした期待はされておらずしょちゅう生産延期されたり、製造ラインを現行主力機に譲っていたりする。


当初の設計では機銃砲塔を3基備えた爆撃機となっていたが、シミュレーションであまり芳しい結果が得られなかったため、まさかの


自衛装備取っ払って速力全振りとかどうよ?


という大日本帝国でさえ踏み込まなかった領域に到達。本当に自衛火器を全撤廃することで高速かつ高積載を実現させてしまった。
試験時の最高速度は630km/h。当時英国空軍が保有していたどの戦闘機より高速ということで関係各所の度肝を抜いた。
それでいて当時最強のエンジンのひとつマーリンエンジン積んでいたのでまさに鬼に金棒であった。


英国面は「バランスとか常識とかそういうのを「知らんわHEY」して求められた性能一点に全振りする」事から産まれる事例がよくあるが、このDH98が産まれた経緯はまさに典型例といえるだろう。


1940年に試作機を含む50機が発注されたが、折悪しくダンケルク撤退と被ってしまったことで一時全キャンセル。重戦闘機型との混合発注に変更された。
また、同時期に写真偵察仕様の試作要請も受けている。


性能とそのバリエーション

当初はイロモノ機とみなされていたモスキートだが、実践運用が始まると空軍はその利便性に歓喜することとなる。
何より喜ばれたのが最大のイロモノ要素だった「全木製」であることで、このおかげで航空機用金属資源をより注力すべき計画に集中することができた。
また、金属をほとんど使わないがゆえに優れたパッシブステルス性を持っていたことも特徴の一つだ。
成形加工が容易で表面を平滑にできる木製外装のため空気抵抗を抑えやすく、爆装しても高速性を維持できたのもポイントだった。
言ってしまえば、イロモノであるがゆえに高性能かつニッチを突けた。


双発爆撃機としてはかなりコンパクトだが、同時にその体に見合わないほどの大型爆弾倉を備えているため爆装能力もばっちり。
枢軸国の大半の機体を抜き去る速力は反復爆撃にも効力を発揮し、他の爆撃機が一往復する間に二往復することさえ可能だったという。


なによりモスキートの特徴といえるのが「単発機より速い爆撃機」であること。当時のドイツ軍機のレシプロでは追いつけない。


当時、爆撃機の防御力のインフレーションと戦闘機P-51の登場、ドイツ側の技術的問題もあって「火力を取るか速度をとるか」のジレンマに悩んでいた中、
「火力も速度もないと落とせない」モスキートが登場したのはまさに泣きっ面に蜂と言うほかない。


一説にはとても実用機とはいえないジェット&ロケット戦闘機を半場無理やり動員したのは、モスキートとP-51が決定打が要因とか…。


最終生産機数は7,781機。エンジン以外は家具の要領でポンと作れるがゆえの大量生産も、本機の強みだった。


その活躍ぶりにはささいながらも固有の欠点もなくはなかった。


まず木造故に火災に弱かったこと(とは言っても意外にも「着火しやすい」訳ではなく、「一度火災が発生すると鎮火させるのが難しい」という意味だったという。)。
金属のような柔軟性を持たないため、被弾後の胴体着陸で分解する危険が大きかったこと。


なにより木造故に運用期間が短命だったことだろう。
そのためその八面六臂の活躍ぶりとは裏腹に、戦後は一瞬にして引退していくことになる。
戦後に長く飛び続けられる機体が少なかったのだ*1


爆撃機型

当初の計画に沿った基本仕様。胴体内爆弾倉に500ポンド爆弾4発、両翼パイロンに増槽か500ポンド爆弾を選択懸架できた。
当時のドイツ空軍のどの戦闘機よりも速かったがゆえに、Me262の配備までモスキートは大なる妨害を受けることなく爆撃を実行できた。
最終仕様では4,000ポンド爆弾を搭載可能なように改良され、それ抜きにしても爆弾倉のみで500ポンド爆弾6発を搭載可能。


他にも夜間爆撃の際の先導機(パスファインダー)*2としても活躍した。
逃げれる性能を持つが故といえどなかなか剛毅だが、以外にもこの任務での損失数は少なかったという。


戦闘爆撃機型

胴体前方下部に20mm機関砲4門、機首に7.7mm機銃4門を備えた重戦闘機型。無論、木造なのは外装であって防弾設備はバッチリ。
後に機首にレーダーを増設され、主として夜間戦闘に使用された。
その際、レーダー開発の秘匿のために「“猫目の”ジョン・カニンガム*3以下夜間戦闘機のパイロットは人参食って夜間視力を得た」という風聞を流布させている。
なお、ナチスの皆さんはこれを信じちゃった模様。


ちなみになぜ爆撃機を戦闘機化するかというと、ペイロードに余裕があるので夜間戦闘機の素体にはもってこいだからだったりする。
モスキートは元々脚が速いから尚更だった。
さすがに単発単座の戦闘機には運動性で負けるので直接戦闘ではなく、主な運用は長距離爆撃機の護衛や対地攻撃といった雑務。


英国空軍のみならず、アメリカやイギリス連邦各国など様々な国の空軍で運用された。


写真偵察機型

飛行に不要なすべての装備をオミット、空中撮影用の写真機を胴体下部に搭載した空中撮影仕様。


戦闘爆撃機型

原型機よりやや爆装能力は低下したが健在で、さらに夜間戦闘仕様と同じく機首レーダーと20mm機関砲4門を備える極めて強力な対地襲撃仕様。
後には3インチロケット弾の発射能力を得てさらに火力が増した。
モスキートの全バリエーション中最多の2,718機が生産され、ドイツ陸軍相手に猛威を奮った。


また、57mmオートカノンを搭載した対艦対地砲撃仕様も開発され、対艦攻撃でその火力を存分に発揮した。


戦歴

夜間軽攻撃部隊(LNSF:Light Night Striking Force)の主力ユニットとして、重要度の高い小規模施設への精密爆撃と重爆撃機掩護のためのチャフ散布を主任務とした。
特に重爆撃機隊の出動がない場合でも、ドイツの防空ユニットへの嫌がらせに襲撃することもあった。


本機が投入されたミッションで最も大胆なものがジェリコ作戦で、フランスのレジスタンス収容所を爆撃しメンバー脱出を支援した。
またノルウェーのゲシュタポ司令部空襲の際には低高度精密爆撃を完遂し、囚人開放と記録資料の破壊を遂行。


爆撃機として28,000回ものミッションに参加、爆弾総投下量は35,000tにもなるが、その過程での喪失機数はわずか193機。
高速で敵機を振り切れるがゆえの成果である。


一方極東戦線ではパッとしなかった。
当然だが、全木製機に高温多湿な南方の気候は致命的すぎたからだ。
戦後には安価な対地攻撃機を求めた国民党軍に180機が売却されたが、寿命の短い木製機の中古、しかも何をトチ狂ったのか


船積み露天繋留で輸送する


というドアホ極まることをやらかしたせいで、輸送段階で28機が脱落するという体を張ったコントを披露した。
接着剤が弱る・木材がカビるのは当たり前で、木製部材からキノコが生えてきた機体がいた…というジョークまで存在する。
おまけに移動を夜間に限定していた軍閥ゲリラ共産党軍に対してはあまり活躍できなかったというオチもついた。



創作におけるモスキート

基本はウォーシミュレーションかIl-2をプレイして、どうぞ(モロマ)


  • DH98モスキートをプレイアブル機体としてクローズアップしたゲーム作品の先遣者はカプコンの縦スクロールSTG「1942」シリーズ、その第3作「1941:Counter Attack」(1990年発売)だと思われる。1Pがシリーズ伝統のP38なのに対して2P側機体で、若干の性能差がある。その6年後の第4作「19XX」で完全に差別化され、動きが重いが広範囲大火力機体という位置づけになった。

  • 彩京のシューティングゲーム「ストライカーズ1945Ⅱ」にも登場。こちらも動きは遅いが火力が高い機体となっている。ボムは同型機が”上空からの高速爆撃>5機の編隊で壁になりながら射撃援護”という二段構え。

『633爆撃隊』という本機が主役の映画もあるのでそちらもチェックだ。


モスキトー計画。

安価で高性能…そうまさに当時劣勢のドイツや日本が悲願した機体だったため当然真似しようとした。
ドイツ版木造機の機体名はまんま「モスキトー」。…恥も誇りもあったもんじゃないな…。


なお全くと言っていいほど成功しなっかた
理由は木造に適した接着剤を作れなかったから。これにつきる。
おかげで高速化での強い負荷に耐え切れない事案が大発生。


なお接着剤の開発に成功した英国では軍事機密扱い。


ロールスロイスエンジンといい、接着剤といい、木造という時代遅れな肩書とは裏腹に先進技術の塊でできているのがモスキートなのである。


追記・修正はモスキートで夜間爆撃に従事してからお願いします。


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  • ・・・凄い兵器だ... -- 名無しさん (2014-04-18 21:19:30)
  • ジュラルミン製の機体と同じ感覚で洗おうと水ぶっかけたらあっという間に腐ってしまったとかいう逸話もあるな…… -- 名無しさん (2014-04-20 10:22:54)
  • 戦争兵器では航空機は消耗品だから、長持ちさせることを考えなくていい木製ってのは合理的であったんだな -- 名無しさん (2014-12-10 19:20:02)
  • 大規模な生産施設が必要な金属製に比べて規模の小さな工場でも作れる事もメリットだな -- 名無しさん (2015-06-07 01:29:17)
  • 金属と違って素材の性質にムラが出そうだから、ワンオブサウザンドみたいな個体差が出ちゃいそうだよね… -- 名無しさん (2016-03-18 12:36:38)
  • ちなみに基本的な材木はべニアらしい -- 名無しさん (2017-05-29 13:05:11)
  • 日本でも木製機の計画はあったが、必要な強度を持たせようとすると重くなりすぎて断念した。木製というと技術力がいらないと勘違いされがちだが、実際にはエンジン技術や材料技術あっての木製機 -- 名無しさん (2017-05-29 13:45:35)
  • ちゃうやろ!普通DH98との初めての出会いは1941か19XXやろ!!(おっさんの絶叫 -- 名無しさん (2018-06-18 20:38:07)
  • 現代なら宮大工とか神輿の巨匠を引き込んで前人未到の境地に行ける気がする -- 名無しさん (2018-08-05 09:47:36)
  • 「大日本帝国でさえ踏み込まなかった」←100式司偵がおるやん -- 名無しさん (2018-09-28 22:55:57)
  • 二次大戦ほとの総力戦の規模かつ技術だからこそ生まれてしまったというか… 平時だと摩耗が激しいから嫌われるだろうけど、戦時なら使い捨ててもしゃーなしと判断されるから、合理的っちゃ合理的 -- 名無しさん (2020-09-02 15:55:16)
  • 前線の兵士にも後方のお偉方にも歓迎されたのが、兵器としての凄さだと思う。量産性優先で性能に不満があったり、スペック優先で生産維持の負担が大きすぎたりと、バランスを欠いた兵器が多いだけに -- 名無しさん (2020-09-11 23:11:08)
  • 五臓六腑? 八面六臂じゃなく? -- 名無しさん (2022-04-06 17:21:04)

#comment

*1 速度や積載面で優れた名爆撃機は、戦争が終わった後も輸送機などに転用されて活躍することが多い。例えばサンダーランドやB-29が該当する。
*2 夜間爆撃を先導し、目標上空で照明弾を投下するのがお仕事
*3 モスキートを駆って夜間迎撃戦で活躍したエース

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