登録日:2014/03/31 (月) 04:37:24
更新日:2023/12/14 Thu 11:46:39NEW!
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『寒い国から帰ってきたスパイ』は、1963年に出版されたジョン・ル・カレによるスパイ小説。
冷戦下のイギリスや東西両ドイツを舞台に、イギリス秘密情報部(SIS。またはMI6。作中ではケンブリッジ・サーカスとも)に所属する主人公:アレック・リーマスの、とある活動の一部始終を描いた作品である。
あらすじ
イギリスの情報機関である秘密情報部(通称ケンブリッジ・サーカス)のベルリンにおける責任者アレック・リーマスは、東ベルリンとの間にある検問所でスパイのカルル・リーメックが現れるのを待っていた。
東ドイツ政府高官であるリーメックは、これまでケンブリッジ・サーカスのためにスパイとして働いてきたが、スパイ網の構成員が大量に逮捕され危険が迫り、西ドイツへと亡命することになっていた。
検問所を無事に通過したと思われた瞬間、東側の人民警察が発砲しリーメックは射殺されてしまう。
リーマスはこの事件の裏に、元ナチスで冷酷な東ドイツ諜報部副長官のムントがいることを確信する。
ベルリンでの諜報網が壊滅し、リーマスはイギリスに呼び戻された。解雇されることを覚悟していたリーマスは、秘密情報部の長官である管理官により経理部へ左遷される。次第にリーマスは酒に溺れていき、ついには横領の容疑で情報部を解雇されてしまう。
そして様々な仕事を転々とした後、ある図書館の整理係に雇われた。リーマスはここでイギリス共産党員の司書リズ・ゴールドと恋人となる。
人並みの安らぎを取り戻したように見えたリーマスだったが、ある日、食料品店の店員を殴り、監獄へ入れられてしまう。
服役を終えて出所したリーマスは、街で出会ったベルリン時代の知人と名乗る男から、ある仕事の口を提供される。実はこの男、東ドイツ諜報機関のスパイで、リーマスにイギリス情報部に関する情報の提供……つまりは金と引換えに国を裏切ることを依頼してきたのだった……
概要と特徴
冷戦下を舞台としたスパイ小説らしく、西側国家と東側国家の水面下の戦いが描かれている作品で、イギリス情報部の花形・MI6の駐在諜報員であるアレック・リーマスが主人公となっている。
しかし取り上げられる一番のテーマは「西側諸国の諜報活動が民主主義と矛盾する現実」で、当時MI6に在籍していた著者ジョン・ル・カレの立場からすれば、かなり自虐的な内容になっているのが特徴。(しかも西ドイツ駐在中であった)
そのテーマ性の高さとミステリー小説としての完成度の高さを賞賛され、英国のゴールド・ダガー賞と米国のエドガー賞 長編賞を共に受賞し、世界的なベストセラーとなった。現在でもその高い評価は変わらず、「スパイ小説のオススメは?」という質問があれば、ほぼ必ずといっていいほど名前の挙がる作品の一つである。
1965年にはマーティン・リットが監督の映画版も製作されている。
なお、同じMI6のスパイを描いたイアン・フレミングの『007』ことジェームズ・ボンドシリーズとは正反対の作風となっていて、娯楽性が強く華麗な主人公のボンドシリーズに対し、『寒い国から帰ってきたスパイ』を含めたル・カレの諸作品は、徹底した苛烈なリアリズムや中年の冴えない主人公が特徴となっている。
登場人物
●アレック・リーマス
ベルリンにおけるイギリス秘密情報部(ケンブリッジ・サーカス)の責任者……だったが、前半の時点で左遷された挙句、解雇になる。
中年のオッサンで、妻との関係はよろしくない様子。見た目は特に麗しいわけでもないようだが、かなり年の離れている(であろう)リズと恋仲になったりする。
さすがに駐在スパイだけあって頭はキレる。
●ハンス=ディーター・ムント
東ドイツの諜報部(アプタイルンク)副長官。現場作戦の指導者。元ナチスで反ユダヤ主義者。
リーメックを殺害し、リーマスの解雇の遠因を作った人物でもある。
●フィードラー
ムントの部下。対敵諜報局長。東ドイツの人間だが、ユダヤ人なので少々白眼視されている。
●リズ・ゴールド
イギリスの図書館員。イギリス共産党員。つまり思想的には東側寄り……なのだが、特に活動へ熱心というわけでもないらしい。
●ジョージ・スマイリー
イギリス秘密情報部の元職員。同作者ル・カレの人気シリーズ、スマイリー5部作の主人公。しかし今作ではサブの役回り。
●管理官
イギリス秘密情報部の長官。名前は出ない。こちらもスマイリー5部作に登場している。
●ピーター・ギラム
イギリス秘密情報部の職員。あまり名前は出ないが、実は重要人物。
●カルル・リーメック
東ドイツ政府の高官。ドイツ社会主義統一党最高会議メンバー。イギリスに情報を流しているスパイ。
物語冒頭で亡命しようとしているところを撃たれ、呆気なく死んでしまう。
日本では
正直、007の知名度に比べるとかなり人気は低いと言わざるを得ない。が、スパイ小説ファンの間では確かな人気を誇っていることは間違いない。
おそらく一番手に入りやすいのは、お馴染みハヤカワ文庫から出ている文庫版だろうか。
元々の文体にクセがあるのか、訳文も少々クセがあるが、翻訳モノにある程度慣れていればさほど苦にならない程度だと思われる。
興味があるなら是非買って読んでみて欲しい。その鮮烈なメッセージは出版から50年以上たった今でも、色褪せることなく読者の胸に飛び込んでくるだろう。
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▷ コメント欄
- まさかの項目。ル・カレ作品は読んでて疲れるけど読むのやめられないから困る。 -- 名無しさん (2014-03-31 07:01:09)
- この本と同じようなことが今もどこかで起こってる -- 名無しさん (2014-03-31 09:05:14)
- 頭はキレるって書いてあるけどベルリンのスパイ網の統括という当時の最重要任務の責任者にアホを据えられてもそれは困るだろw -- 名無しさん (2023-03-28 15:56:46)
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