ウルトラマンタロウ(石川版)

ページ名:ウルトラマンタロウ_石川版_

登録日:2011/03/19 Sat 21:28:53
更新日:2023/08/08 Tue 13:58:28NEW!
所要時間:約 5 分で読めます



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ウルトラマンタロウ ウルトラマン 漫画 石川賢 ドワォ 週刊少年サンデー グロ注意 小学館 人類には早すぎる漫画 鬼畜ヒーロー きが、くるっとる おぞましき書物 僕達の知ってるタロウじゃない 素顔 zatは出ません 先駆者 ウルトラマンの皮を被ったゲッターロボ 時代が追いつかない ウルトラシリーズ漫画リンク



ヒーロー…それは子どもたちの憧れる希望の光。
だが、世の中には決して子どもに見せてはならないヒーローもいる。


その一つが、石川賢が描いた漫画版の『ウルトラマンタロウ』である。週刊少年サンデー1973年17号~34号連載。


「え?でもウルトラマンでしょ?シリアスも適度にソフトに伝えてくれるんじゃないの?」と思うそこのアナタ、そりゃ考えが甘い。
何故なら、あのケン・イシカワだからだ。
原作ブレイカーたる石川先生の狂気が存分に味わえる作品に仕上がっている、それこそ「ただならぬ」仕上がりだ。


それと言うのも、原作に登場する防衛隊のZATが出ないとか、ウルトラマンがウルトラマンじゃないとか色々あるが……
最もたる理由は「超絶グロテスクだから


首は飛ぶわ、内臓喰いちぎられるわ、頭は潰れるわ……少なくとも子どもに見せて良い作品ではない。
東映で言えばニチアサで『仮面ライダーアマゾンズ』を放送するようなものである


大体カバーからして
「地球滅亡の危機から人類を救うため、地球七億の若者の中から選ばれた、ウルトラファミリー六番めの息子、ウルトラマンタロウ!強大な力を秘めた奇形獣を相手に、タロウの怒りが爆発する!」


うん、これはアウトだね



原作が全53話で放送されたのに対し、この物語は全4話で構成されている。
なお、原作に奇形獣といったキャラクターは存在しないがウルトラの母曰く「貧困!!疑心!!欲望!!人間精神の産物!!」であり
80』のマイナスエネルギー怪獣や『ネクサス』のスペースビーストの先駆けとも言うべき存在である。



各エピソード解説

「タロウ誕生」


物語の初っぱなから、犬が犬を咬み殺し、頭部を切断、内臓をバリバリ喰らうという恐ろしい展開。
場面は変わり、空き地であそぶ少年――名をケンちゃん。彼を上級生の悪ガキがボッコボコに叩きのめすので、主人公・あずま光太郎が助けに入る。
ちなみに、光太郎は天涯孤独のキックボクサーという設定である。


犬の奇形獣に何故か狙われる東光太郎と、これも何故か光太郎の周りに付きまとう、コナンの犯人2人の男。
犬の奇形獣によって鉄骨の下敷きになった光太郎が目覚めたのは、ウルトラの母と名乗る不思議な光の体内だった。


ウルトラの母の体内で光太郎は奇形獣に滅亡させられる未来の地球の姿を見せられる。
その後、ウルトラマンタロウに変身し奇形獣を倒すのだが、非常にグロい。
具体的に言うと、奇形獣の上顎と下顎を持ち、バリーン!と引き裂く。


ちなみに、変身した時の奇形獣のセリフ


「フフフ…ついにタロウになったな!これで俺と同じになったんだ!(中略)…俺やお前のような怪物をな!フフフ…」


それを受けた光太郎は、「俺は怪物じゃねえ…地球を守る使者だ」と力無く答える。


もはやこれはウルトラマンではない。


ちなみに光太郎に付き纏っていた男2人の正体は、ウルトラセブンウルトラマンエース
何故かモロボシ・ダン北斗星司には変身せず、ウルトラマンの姿の上に覆面やコートを着て変装している
彼ら曰く、自分達の初陣の時もタロウの時のようなものだったらしい。




「失われた町」


地面に口が開いてケンちゃんが飲み込まれた、それを助けに行く光太郎。
入った先はビル街の地下のようだったが、壁がぬるぬるしてまるで生き物の様。
案の定、正体は奇形獣な訳だが、タロウの言動が凶悪。


「こんなものは今の内に殺してやる」


決着は光線ではなく素手による引き裂き攻撃。


奇形獣のセリフ


「このままいけば人類と共に地球も滅びる…お前はそれをみるたびに…私を倒した事を後悔するだろう」


タロウ「人間はおまえの考えるほど愚かではない、そうさ…愚かじゃないさ…」




「小さな独裁者」


操られた子供達が、大人に反旗を翻した。
物を略奪し、暴行を働き、放火に殺戮を繰り返した。
子ども達を止めようと前に出てくる光太郎、しかし、相手がどんなに酷いことをしていても操られている子どもなので手を出す事が出来ない。
全国から特殊な電波で操られた子どもが集まって来たが、大人は誰も手が出せない。


「ダメだ…撃てない」


この一連の描写はホラー以外の何でも無く、大人すら今読んだら戦慄するだろう。


最終的にタロウに変身するのだが、子ども達が動かす戦車の砲撃で、
なんとタロウの顔にヒビが入る。
しかしそのヒビからフェイスフラッシュの如き光が発し、子どもたちが正気に戻った。


この際、石川版ウルトラマンタロウの衝撃の事実が語られる。


画像出典:ACTION COMIC『ウルトラマンタロウ』
石川賢/双葉社/1999年12月11日第1刷発行
©1973円谷プロ/ダイナミックプロ/FUTABASHA 1999 Printed in Japan.


「ウルトラマンの顔は実はマスクだった」


マスクを脱げばヒゲのおじさん……ね!


それどころか、ウルトラマンの顔から出る光によって、霊長類は人類に進化したらしい。ノンマルトなんて無かった
そしていつか共に同胞として宇宙の平和を守る時が来るまで、ウルトラマン達は人類を守り続けていくのだ。
どうやらウルトラマンではなく『ゲッターロボ』だったようだ。


……まぁ、後々になって、ウルトラマン達は元来地球人とさほど変わらないヒューマノイドタイプの種族であり、ディファレーター因子(光線)という特殊な放射線を浴びたことによって現在の姿に進化を果たしたであった事が公式に明かされ、「ウルトラマンと人類の絆」が重要なファクターになったりしているため、割と現在のシリーズの世界観や作風にも通じる内容ではある。


……実にダイナミック、いやイシカワ。




「鬼がくる…」


鬼型のロボットが出現したので、ハンマーパンチで頭部を粉砕し、ロボを操っていた宇宙人は自爆。
このエピソードにはこの二年後に描かれるサーガ版『ゲッターロボG』と類似した点があり、ベースになったと思われる。


余談だが、大都社や双葉社の単行本では「小さな独裁者」と「鬼がくる…」の掲載順序が入れ替わっていた。
実際、前者の方が雰囲気的には最終回っぽくもあるので妥当な編集だろう。



余談

物理の単行本は長らく入手困難であった*1が、ウルトラシリーズ50周年記念の年である2016年6月に、これまでの単行本で未収録だったカットや、『小学一年生』掲載版も併録した「完全復刻版」が小学館から発売された。
今回初収録となる『小学一年生』版は流石に掲載誌の対象年齢もあってか、TVシリーズの怪獣や宇宙人、ウルトラ兄弟が続々登場するという比較的シンプルなストーリーラインではあるものの、怪獣や宇宙人を容赦なく串刺しやミンチにするバーサーカーじみた戦闘スタイルなど、やはり石川イズム的なナニかが所々に垣間見える。
それと客演ウルトラ兄弟の殉職率が尋常じゃない。それこそ内山まもる先生の漫画版ウルトラシリーズなんて目じゃない程に。



ウルトラシリーズで脚本等を担当している足木淳一郎氏も本作を所有しており、


石川賢版タロウは先生の作風に相応しく、いい感じに虚無ってますよね。
ウルトラの光とはゲッター線なのでは笑 ウルトラ族も時天空を倒すために神々に創造されたんじゃないだろうな…


ともかくオススメです。


とツイートしている。



追記・修正はバルタン星人とメフィラス星人を串刺しにしてからお願いします。


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  • ドワトラマン -- 名無しさん (2013-10-02 14:51:51)
  • ディファレーター光線が実はゲッター線だった可能性が微粒子レベルで存在する……? -- 名無しさん (2013-10-02 17:14:00)
  • 連載が続いていたらデビルマンの様に中二病患者がタロウといえば石川賢版!と持ち上げていそうだ。 -- 名無しさん (2013-10-10 22:06:05)
  • そういえば漫画版宇宙刑事ギャバンに石川賢先生が描かれた宇宙刑事ギャバンのイラストが寄稿されていたそうでその写真を見たけど、スマートでスタイリッシュなコンバットスーツがやたらマッシブなフォルムで描かれ、無茶苦茶強そうな姿になっていたの印象的だったな… -- 名無しさん (2013-11-07 17:33:41)
  • ロジックがライダーだよ!! -- 名無しさん (2014-01-16 22:28:16)
  • なんでも「なぜウルトラマンが地球人類を守るのか?」って疑問に最初に答えを出したのがこれらしいな -- 名無しさん (2014-01-16 22:37:25)
  • やっぱり円谷だなww -- 名無しさん (2014-01-22 11:13:50)
  • こええ -- 名無しさん (2014-02-22 10:56:45)
  • >どうやらウルトラマンではなくゲッターロボだったようだ←ここで腹筋持ってかれたww -- 名無しさん (2014-03-02 19:13:11)
  • ウルトラマンもまた、時天空に対抗する為の力の一つ…なのかも知れない。 -- 名無しさん (2014-03-22 23:34:31)
  • 切られた怪獣から臓物が飛び出すのは前年にやってるんだよなぁ... -- 名無しさん (2014-06-21 22:19:20)
  • ↑超獣惨殺祭りのAだな -- 名無しさん (2014-06-25 02:20:56)
  • 円谷は何も言わなかったのか -- 名無しさん (2014-09-05 19:27:04)
  • なんか全体的にヌボーッとした印象を受けるんだよな、このタロウ。ケンイシカワ作品の割には野暮ったいというか。表紙はカッコいいんだが。 -- 名無しさん (2014-09-05 19:32:41)
  • なにこれふざけてんの? -- 名無しさん (2014-09-05 19:37:01)
  • 大真面目にやった結果こうなったに決まってんだろ -- 名無しさん (2014-09-05 19:44:16)
  • 実はULTRA N PROJECTの元ネタなんじゃないかと思う。異生獣と奇形獣って似てるし -- 名無しさん (2014-09-05 19:47:34)
  • 首は飛ぶ←よく飛ぶしタロウは本人の首さえ飛ぶ、内臓食いちぎられる←許してボルケラー、頭は潰れる←ええと… -- 名無しさん (2014-10-09 19:05:31)
  • 結論:いつも通りじゃね? -- 名無しさん (2014-10-09 19:05:57)
  • いつも通りのケン・イシカワと言えるし、いつも通りの円谷とも言える -- 名無しさん (2014-10-13 21:28:39)
  • 本文でも触れられているが、80とネクサスに遺伝子を残しているし、ウルトラの歴史に欠かせない存在ではある。 -- 名無しさん (2014-10-31 20:52:15)
  • 電子書籍版出てるのか・・・ --   (2015-01-25 18:26:05)
  • ウルトラマンAのコミカライズをお願いしていたらどんな惨事になっていたやら… -- 名無しさん (2015-01-30 07:01:57)
  • ↑2 新装版のドワォ感全開の表紙イラスト、この項目の冒頭にも載せたいんだよな~・・・画像掲載はいろいろ面倒くせーからイマイチ踏み切れんけど -- 名無しさん (2015-07-30 23:36:21)
  • ウルトラマンではなくゲッターロボとはいうが、そもそもウルトラ戦士の出自を考えるとあながちでたらめなお話とも言えないのがまた…… -- 名無しさん (2015-07-31 00:09:37)
  • マスクフラッシュで発した光が完全にゲッター線… -- 名無しさん (2015-11-18 20:25:26)
  • この作品に出てくる怪獣はウルトラマンの光で間違った進化をしてしまった人間って感じだな。それでタロウはウルトラの母(っていいのかな、あれは)に正しい進化をさせられた使者って感じだな --   (2015-11-27 03:30:52)
  • ↑TV版最終回でバッジを捨てる光太郎がゲッターを降りる竜馬に見えてくるじゃないか! -- 名無しさん (2015-11-27 09:13:38)
  • 操られた子供達に大人は誰も手を出せないって辺りは,セブンの時のチブル星人の作戦が成功した結果でもあると思うんだけど,そこは誰も突っ込まないのかな?後,両方共読んだことないんだけど楳図かずお版ウルトラマンとどっちがトラウマなのか比較して欲しい -- 名無しさん (2016-03-07 22:35:34)
  • 「俺は怪物じゃねえ…地球を守る使者()だ」 -- eba (2016-04-07 21:35:54)
  • 小学五年生掲載のタロウでも思ったんだがハード路線が流行ってたのか?小五の方はそこまで描写自体は怖くないけどさ。 -- 名無しさん (2016-04-23 22:49:37)
  • 通販サイトを見てたら、6月復刻との事…いやマジで驚いた -- 名無しさん (2016-06-04 01:01:13)
  • 第2話で対決したゾブァー?だっけ?あいつの言ってたことは割と深い気がしたけど何言ってたか覚えてねえ… -- 名無しさん (2016-06-25 17:19:47)
  • 石川版タロウみたいなウルトラ戦士の特撮を作ってほしい -- 名無しさん (2016-08-29 14:25:27)
  • いずれ一緒に地球を~って感じのセリフを先取りしてしまった作品、ウルトラでそういうセリフを言われても『石川賢版リスペクト』に見えてしまう -- 名無しさん (2016-09-12 06:44:07)
  • 上でも少し書かれてるように、「タロウは英雄か、それとも奇形獣と同様の怪物か」ってジレンマをテーマにしようとしてたっぽいと思う。もしそうだとすればやはりロジックはライダーっぽい、というかN projectの源流になってるかもしれん -- 名無しさん (2017-01-03 16:38:49)
  • 操られた子供たちのエピソードって実は「子供がよりよい世界を作るために大人を倒しにかかる」みたいなのだったような?で、そのエピソードは学生運動から発想を得たものでは?って考察してる人が居て石川センセすげぇな・・・ってなった。実際のところどうなのかは知らないけども -- 名無しさん (2018-03-03 11:18:49)
  • ストナーサンシャインの構えでフォトンスクリューを打つアグルが浮かんだ。M87光線で敵の大軍を跡形もなくドワォする隊長も浮かんだ。あと、opはJAMprojectか影山さんで。 -- 名無しさん (2018-07-18 21:39:03)
  • これなんてレッドマン? -- 名無しさん (2018-09-28 16:02:30)
  • こんなもん息子のタイガに見せられんぞww -- 名無しさん (2020-07-17 12:53:01)
  • トレギアおじさんに見せたらどう思うんだろ -- 名無しさん (2020-08-21 02:50:22)
  • 「血を吐きながら続けるマラソン」を果てしなく続けることが宿命づけられた石川世界をウルトラマンたちはどう思うのか。血を吐きながら続けるマラソンをやめるのは時天空に食われる未来を許容するのと同じだからね -- 名無しさん (2020-11-16 00:18:17)
  • アホか、ゲッター線は人類大好きヤンデレ線だからM78星雲人とは相容れないやろw -- 名無しさん (2021-05-07 00:49:18)
  • ゲッター線って號ラストとか見るに実際には必ずしも人類以外滅ぼす線とは限らない節があるからなぁ… むしろこの作品においてもM78星雲人と引き合わせようとしていた可能性すら有り得る(グルグル目) -- 名無しさん (2021-05-07 01:17:58)
  • 本家ウルトラも星間連盟みたいに腐敗した宇宙はゲッターエンペラーに大掃除してもらいたくなる -- 名無しさん (2021-07-08 09:39:41)
  • ゲッター線はM78星雲と相容れないがスパロボ補正付きでなら問題ない。逆に言うとケン・イシカワ時空じゃ永劫の時を掛けても共存なんか絶対に無理。そもそもエンペラーが存在してる未来は人類が侵略者になってんだぜ?誰がそいつらを「地球人」と見れる? -- 名無しさん (2021-07-12 11:41:40)
  • トラウマンタロウ。 -- 名無しさん (2021-09-30 12:09:26)
  • 比較的初期の石川賢作品だから主人公が傷つきのたうつ展開になったけど、もしも後期の作風で描かれていたらタロウが人類の敵となる宇宙人や怪獣を無双というか虐殺しまくる展開になってたかも -- 名無しさん (2022-03-16 14:58:17)
  • ↑3 「人類よ!なぜ間違った⁉︎」てゲッター軍団と戦うウルトラマンも少し見たいかもしれない。エンペラー相手にはキングとかノアとかチートラマン集合しても厳しそうだが.. -- 名無しさん (2022-04-09 22:08:22)
  • 上でも指摘されてるが、漫画版ゲッターロボはこの翌年の74年連載。進化以外にも地球人には無害なウィルスで死ぬ宇宙人などゲッターロボにネタを流よ…いや、影響を与えた面がチラホラ。 -- 名無しさん (2022-04-29 09:13:27)
  • シン・ウルトラマンで人類が生物兵器として極めて優秀な素質を持っていると語られた時、石川版タロウを知っている人はゲッター軍団よろしく全宇宙征服に乗り出す人類を幻視したかもしれない -- 名無しさん (2022-05-21 22:46:27)
  • 夢の世界で内海くんを誘ったシーンで挙げた作品からするとアカネちゃんだいぶマニアックな作品も知ってるし見たことあるらしいけどこの作品は知ってるんだろうか……? -- 名無しさん (2022-05-22 08:09:58)

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*1 尤も、現在では電子版が発行されているため読むこと自体は比較的容易である

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