タルゴ(鉄道)

ページ名:タルゴ_鉄道_

登録日:2012/11/08 Thu 14:31:49
更新日:2023/10/30 Mon 12:13:41NEW!
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鉄道 スペイン 客車 フリーゲージトレイン 高速鉄道 タルゴ tren articulado ligero goicoechea-oriol



タルゴ(Talgo)とは、スペインを中心に世界各地で運用されている客車列車のブランド名である。『Tren Articulado Ligero Goicoechea-Oriol』の略称で、「軽量連接列車」と開発者の二人の名前をとっている。
また、この製造元の会社の名称ともなっている。


○概要


タルゴの外見上の大きな特徴は、その背の低さだろう。大きさ自体も従来のものと比べて小さく、一見すると車内が窮屈そうに見えてしまうが、勿論そんな事は無い。タルゴは敢えて高さを低めにする事で重心を低くし、高速運転を可能としているのである。似たような構造の車両として、フランスのTGVの一階建て客車も先頭の機関車に比べて背が低い。
それに伴い、列車自体の構造にも工夫が加えられている。小さな車内を最大限に生かすため、二両の客車の間に車輪が左右1セットついている、いわゆる連接式という構造を取っているのだ。車両の中間にあるために、車輪の構造によって室内が狭くなる事がない。
また、その車輪にも特徴がある。普通の鉄道車両の場合、左右の車輪は一本の車軸と呼ばれる鉄の棒で結ばれているのが基本だが、このタルゴはこの車軸が存在しない。左右の車輪が独立して車体にくっついているのだ。これによって通路も広く取る事が出来ると同時に、カーブでの車輪の摩耗を軽減できる効果を持つ。
そしてこの構造が、タルゴを特徴づけるもう一つの要素をもたらすのだが、それは後述。


○歴史


タルゴの歴史が始まったのは1942年。前述の通り、スペインの鉄道網の高速化を目指して製造が始まった。
最初に作られた「TalgoI」だが、試作車という事もあり、出入り口が後ろにしかついていない、そして先頭車両の凄まじい外見と色々と衝撃的な車両である。敢えて画像は掲載しないので、ぜひとも検索してその外見に驚いてもらいたい。ただ、無事に試験は順調に進み、その成果を基に営業用の「TalgoⅡ」が1950年に登場した。
ただ、この二つの形式には一つの欠点があった。普通の列車は前後自由に動く事が可能なのだが、タルゴの場合は先程述べた左右独立車輪という構造上、一方向にしか動けないのである。そのため、いちいち編成ごと方向転換するという面倒な作業をしなければならなかった。さすがにこの構造は問題となったようで、1964年以降に製造された「TalgoⅢ」では自由に前後移動が可能となった。赤い車体が特徴的な車両である。


さて、この「TalgoⅢ」のバリエーションとして、1968年に「TalgoⅢ-RD」が登場した。この系列の特徴として、線路の幅(軌間)が違う路線にも自由に乗り入れができるという点が挙げられる。
世界の鉄道において多く採用されている線路幅は1435mm。日本では新幹線や京浜急行電鉄、多くの関西私鉄が採用している。だが、線路の幅が各地で同じと言う事は、もし他の国と繋がっていたら戦争などの有事の時にそれを伝って簡単に敵国が侵入する事が出来てしまう。島国である日本と違い、フランスと国境で結ばれているスペインはこれを恐れ、線路幅をより広い1668mmにしてしまったのである。
確かに戦争中は有効に働くかもしれないが、線路の幅が違うと言う事は列車の乗り入れが非常に難しいと言う事になる。客車や貨車は、国境を越えるときはいちいち台車を交換する必要が生じてしまった。他にも建設費もかさんでしまうという結果を招いてしまっている。そんな状況を打破したのが、このタルゴであった。車軸が存在しないという構造を応用し、車輪の位置を自由に変更できるようにしたのである。いわゆる「フリーゲージトレイン」の誕生である。
「TalgoⅢ-RD」は運用開始後たちまち人気となり、フランスのみならずイタリアやスイスなど欧州各地とスペインを結んで走るようになった。長年に渡って孤立していたスペインの鉄道網が、本格的に欧州の一部となったのである。


しかし、タルゴの進歩はまだまだ終わらない。



1980年には、これまでどこか丸っぽい形状だった外見をがらりと変えた新型車両「Talgo-PENDULAR(TalgoIV)」が登場。振り子式構造を採用し、高速運転を実現した。また、これまでのタルゴは専用の牽引機(ディーゼル機関車)を必要としていたが、このシリーズではその必要が無くなり、電気機関車を始めとする様々な機関車が牽引を担当するようになっている。この系列はタルゴのいわば決定版となり、以後の増備車の基本となっている。この系列をフリーゲージトレイン仕様にしたのが「TalgoⅤ」である。
その後、タルゴは「軌間可変」「高速運転」という二つの要素を軸に開発が進んでいる。


1990年代に入り、スペインにも高速鉄道「AVE」が登場した。各国の高速鉄道(TGV、ICEなど)との相互直通を視野に入れたため、日本とは逆に在来線より軌間が狭い1435mmを採用している。その日本の場合、在来線との直通運転には在来線の方の軌間を高速鉄道(新幹線)に合わせると言う手段を取ったが、スペインはそんな事をする必要は無かった。タルゴの持つ「軌間可変」機能がスペイン国内でも活かされる事になったのである。これらの高速運用に適した「TalgoⅥ」や「TalgoⅦ」が運用に入り、在来線と高速鉄道それぞれの機関車に牽引されている。この運用方法はさらに進化し、なんと機関車まで「軌間可変」機能を持った車両(130系)が2007年に登場している。
また、タルゴの本来の目的である「高速運転」の方も進化を続けており、高速鉄道「AVE」専用の車両「Talgo350」が運用に就いている。営業最高時速は300km/hだが、名称の通り最高時速350km/hを出す事が出来る性能を持つ。


また、冒頭にも述べた通り、タルゴはスペインのみならず世界各地でその姿を見る事が出来る。
1988年以降アメリカ、ドイツ、カザフスタンで導入されており、それぞれ長距離列車や寝台列車など様々な運用で活躍している。ただ、ドイツに投入された編成は2008年をもって運行終了、その後は定期運用を持っていない。連接式という独特な構造のために自由に編成を組み直す事が難しく、運用されていた列車の系統変更に対応できなかったのである。とはいえ、あくまで「運用上の都合」という一面が大きい。


○余談


  • タルゴ以外にもスペインでは多くの軌間可変車両が運行されており、2005年にはCAF社が開発した世界初の軌間可変電車が登場している。中には自由に乗り入れ可能なように改造された気動車もある。なお、前述の130系の牽引機関車はタルゴ社では無くカナダのボンバルディア社製。
  • 日本で長年研究が続けられているフリーゲージトレインはタルゴの技術も活かされている。研究ばかりとか言うな!

ちなみに、「フリーゲージトレイン(FGT)」は和製英語であり、「Gauge Changeable Train(GCT)」や「Gauge Convertible Train(GCT)」というのが実際の英語名称である。



追記・修正は無理やり線路幅の違う線路には乗り入れないようにお願いします。


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